鬼の人と血と月と 第2話 「始動」
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第2話 始動

 

 

 

 

 

…昨日と同じ、モノクロなセピア色の世界

そして、昨日と同じ小さな巫女、

相変わらず顔が分からないが不思議と確信を持っている

巫女は、昨日共にいた“人の様なもの”に近づく

“それ”は怪我をしたのか倒れていた

“人の様なもの”とは、これが夢だからか、自分にはわかっていた

そして今、その証拠となるモノが見える

“それ”は、人の姿であったが、頭には 人には無い「角」が生えている

倒れていた“それ”は、まだ幼いのか、周りにいるものよりは背丈が小さかった

巫女は幼い“それ”に近づき、傷に手をかざした、

手の先から現れた 白き炎が傷を包む、すると膝の傷はみるみる塞がってゆく

その様子に巫女は微笑んでいた。

 

 

リーーーーーッ、リーーーーーッ、リーーーーーッ。

 

…そして目覚まし時計の音で統司は目が覚める

時計を見るとまだ6時だった、しかしこれは自分で目覚ましを設定したからだ

 

起き上がろうかと思った、すると目から大粒の涙が零れる

目を拭って手を見る、どうやらいつもの夢で泣いていたらしい

枕を見ると、左右に何滴か濡れていた

 

「…また、あの夢か」

統司は身体を起こし、しばらくボーっと考える

 

統司は気付いた、今まで夢の内容は起きたらさっぱり忘れていたが、

ここに引っ越してからは夢を微かだが覚えている。

それに連鎖するようにもう一つ気付く、

引っ越す前から見ている悲しくなる夢は、

いつも同じ世界、同じ少女が出てきていた事に。

 

ベッドから立ち上がり、強い寝癖のついた髪を掻きながら1階に下りる

リビングには既に統貴が起きていた。

「おはよう、今日は早いね、朝食はいつも通りでいいかい?」

『あー、うん、ありがとう』

“いつも通り” 朝は紅茶にトーストを食べる。

統司は洗面台に向かい、いつも通り顔を洗い、強い寝癖をさっと直す

リビングに戻ると統貴は朝食の準備をしていた

ほんの少しボーっとテレビ見ていると、統貴がいつもの朝食を持ってきた

 

テレビを見ながら朝食を食べ、その後洗面台で歯を磨く

2階に上がり、部屋着から制服へと着替える

 

前の学校では学ランだったので、勝手が違う

肌着、ワイシャツ、ズボン、と着替え、ネクタイを着け始める

結び方を見ながら、苦戦しつつもネクタイを締める

鏡を見て、「多分大丈夫か」と呟き、ブレザーを着る

 

着替えた後、あまり多くはない荷物の確認をしていると、ノックして統貴が入ってくる

「新しい制服の着心地はどうだ?」

どうやら新しい制服を着ている様子を見に来たようだ

「んー、つか まだ慣れねぇから、着心地は微妙」

立ち上がり適当にポーズする

「ん、ちょっとネクタイ曲がってるな、でも結構しっかりつけられてるな」

そう言いながら統貴は統司のネクタイを直す

「ん、そりゃ見ながらやってるしな」

『よし、これで大丈夫だろう』

そういうと統貴は離れる、そして話す

「何時頃 家を出るんだ?」

その質問に資料を見ながら答える

「んー、8時半から9時の間に着かないといけないから…、調べたけどここから大体1時間位かかるし 7時半頃出るかな」

『ちゃんとバスの定期忘れずにな』

そう言われると、机の上に置かれている定期を取り、見せる

「分かってる、ほら」

『うむ、大丈夫なら良いんだが、注意するに越したことは無いからな』

「あいよ、わかってるって」

統司の大丈夫そうな様子を見ると、統貴は部屋から立ち去る

 

準備を済ますと、前の学校と同じように向かう準備をする

ポケットに、携帯、財布と、忘れずに定期を入れる

(お、内側にポケットがある)

ブレザーを探ると内側にポケットがあり、そこにウォークマンを入れる

そしてウォークマンに繋がっているイヤホンを首から下げる

忘れそうになったが、携帯ゲーム機をバッグの中に忍ばせておく

時間を見ると7時前だった

準備ができた事を確認し、バッグを持ち1階に降りる

 

テレビの時計は7:15と表示している

統司はソファに寄りかかってテレビを見ていた

ピンポーン 

不意に家のチャイムが鳴り響く

「だれだろう?こんな朝に」

呟きながら統貴が玄関に向かう

 

「はい、今開けまーす」

そう言いながらガチャリとドアを開ける、

そこにはセーラー服姿でバッグを両手で持っている“恵”が立っていた

「あ、おはようございます」

『おや、恵ちゃんじゃないか、どうしたんだい?』

「あの、統司くんと一緒に学校に向えられないかなぁって思って、その、統司くんは今大丈夫ですか?」

『ああ、なるほど、統司ならもう準備が終わってるから大丈夫だと思うよ、今呼ぶね』

 

統司―、と統貴は玄関から呼ぶ

統司はその声を聞いて「はいはい」と呟きながら玄関へとゆっくり向かう

そして統司は、驚きで一瞬固まる

「あ、えっと…」

驚き混じりで、恵の名前をまだ覚えていないからか、戸惑って口ごもる

「ふふ、おはよう統司くん、私は北空恵だよ?」

恵は笑顔で挨拶し、統司の考えを見透かす

「あ、ああ、おはよう」

少し落ち着いて、統司は挨拶を返す

「なんだ 統司、まだ名前覚えてなかったのか」

…と、統司の様子を見て統貴はよけいな事を言う、

統貴の言葉を聞いて、頬を掻きながら統司は苦い顔をする。

恵は統司の顔を覗き込むように聞く。

「えっと…統司君、一緒に学校に行けない…かな?」

『ん? あ、ああ、大丈夫だよ』

それを聞くと恵は満面の笑みを浮かべる

「良かったぁ! じゃあ外で待ってるね」

そう言うと、恵は玄関から出て行った。

 

恵が出て行ったのを見ると、統司はリビングへバッグを取りに行く

リビングへ向かう統司に統貴は話しかける

「恵ちゃん 良い子だね」

『ん?ああ、そうだな』

たった一言だけ答えて、統司はバッグを肩に下げ、ウォークマンを起動させる

そして「行ってきます」と統司は気だるく言いながら玄関から出る。

 

外に出ると、春の暖かく柔らかい空気が身体を包みこみ、朝の日差しが照らしてくる。

恵は門の外で 背を向けて待っていたようで、玄関を開ける音に気付いてこちらを向く

「あ、早いね、もう準備は大丈夫なんだ」

『ああ、もう準備は出来ていたからね』

「そう、じゃあいこっか」

 

隣に並んで、統司と恵は一緒にゆっくり歩く

統司は歩きながら、無心に横目で恵の事を見る

恵は自分と比べると背が高い、恐らく170位だろう

髪は肩に懸かるくらいの長さで、サラリとして歩くたびに微かに揺れ動く

スタイルも良いみたいで、セーラー服の上からでもすらっとしたラインが見える

歩き始めて、見ていたのもほんの僅かの時間だったが、恵はこちらに気付いた。

「ん?どうしたの?」

『ん、いや、なんでもない』

統司は視線を前へと戻す

「そう、…そう言えば統司君は引っ越す前はどこに住んでたの?」

『あー、引っ越す前は、東京の方に住んでた』

「へぇ、東京って都会だね、どうして引っ越すことになったの?」

『理由は・・・簡単に言うと俺の療養かな?』

「療養って・・・、大丈夫なの?学校に通って」

『ああ、大丈夫 大丈夫、精神的なものみたいだから』

「精神的なもの?」

『ん〜、まぁ俺もどうして療養するまでなのかは分からないけどね、

簡単に言うと、不思議な夢を見たり、人影みたいなのを感じたりってのが昔からあってね、まぁ気にしちゃいないけど』

「ふ〜ん、でも療養するってことだから結構酷い状態ってことじゃないの?」

『ん〜分からん、そうかもしれないけども、精神的なものなら俺は気にしてないし大丈夫とは思うんだけどな、まぁ月1で病院に行く事になってるけど』

「ふうん、そうなんだ」

それからも歩きながら恵からの質問を統司は答える、そして恵が

「あ、そろそろバス停だね」

と言った、歩き始めて20分位だろうか、これから毎日来る事になるバス停に着く

バス停には2人、学生が並んでいた

「次のバスまで・・・大体5分位だね」

  「おーっす、メグミー!」

どこからか女子の声が聞こえる

「はぁ、もう新学期か、春休み短かったなぁ・・・、ってあれ?隣の見慣れぬ少年は誰?」

仲良さげに恵の肩に手を乗せた少女は、背中の中位までの長い髪で、恵と比べると痩せており、“スレンダー”と印象だ

『おはよう カナ、紹介するね、ついこの間引っ越してきた、霧海統司君』

「ん?なに?新入生?」

その言葉に統司は、軽くため息をついた後に、慣れたふうに一言返す

『いや、2年生だ』

「そうか、2年生・・・って事は同級生か!ゴメン!」

『いや、ホント、いつもの事だから慣れきってる』

「いやぁゴメンゴメン、じゃ 自己紹介って事で、私は城乃咲(きのざき) 要(かなめ) この子の親友、私の事は“キノ”とでも気楽に呼んで」

『よろしく、城乃咲』

統司がそう挨拶すると、城乃咲は苦笑しながら言い返す

「うぁ、あんま苗字で呼ばないで、キノで良いからさ、なんか名字で呼ばれるの先生から呼ばれるみたいでむず痒くて、・・・それにこの苗字発音すると可愛くないし」

『いいじゃない、カッコよくて』

「いやいや、仮にも女の子なんだから可愛くなくちゃね」

話していると時間になり、バスがたどり着く

田舎であるがバスは比較的新しいもので、統司は定期をかざしバスに乗り込む

 

・・・というか カナ、親友って自分から言うもの?

まぁいいじゃん、実際付き合い長いしさ

バスで2人は座りながら引き続き話し始める

統司はバスの中で立ちながら、イヤホンを着けて曲を聴く

さっきの事が聞こえていたからか、学生がこちらを見ながらヒソヒソと話しているのが分かる

転校生が珍しいのか、バスの中にいる学生は皆 自分の事を見ている

しかしそれを気にし始めると視線はずっと感じる、気にしても仕方ないので、統司はイヤホンから流れる曲に耳を傾けながら、外の景色・・・といっても山の中だが、外を眺める

たまに恵の事を見るとそれに気付き、統司に微笑む

微笑まれた統司は、気恥ずかしくなり視線を外に戻す

そして30分程経つとバスのアナウンスが鳴る

神魅(しんみ)町入口〜、神魅町入口〜・・・

バスの中にいる学生達が降りる用意をする、もちろん恵と城乃咲もその中に含まれている

 

統司は定期をかざし、バスを降りる

3人は学校までの、舗装された桜並木の道をゆっくりと歩いてゆく

そして統貴は恵のほんの少し、一人分後ろの位置で着いていく

すると城乃咲が統司に話してきた

「ねぇねぇ、霧海はどうして引っ越してきたの?」

統司はさっき恵に言った事と同じ事を言う、すると城乃咲は恵と同じ様な事を聞き返すので、統司は繰り返し言った

恵はそれを横で聞いていて、「あはは…」苦笑していた

恵に着いて行くように歩き続け、15分位するとこれから通う学校に着く。

魁魅(かいみ)高等学校・・・ここ神魅(しんみ)町唯一の高等学校であり、生徒は全員神魅町出身らしい、これは後に水内から聞いたことだが

 

校門をくぐり、玄関前まで行くと掲示されているクラス表を見て2年生と3年生が騒いでいる

クラス表前で恵と城乃咲が立ち止まると統司は2人に声をかけた

「それじゃ、俺は職員室に行く事になってるから じゃあな」

それを聞いて恵は、「じゃあね」と言い返す

それを聞くと、統司は一昨日行った職員室へと玄関に向う

その際、ザワザワに混じって何人かの生徒が統司の存在に気付く

 

職員室・・・

イヤホンをブレザーの内ポケットにしまい、統司は「失礼します」と職員室に入り、自分の名前と「水内先生はいますか?」と尋ねる、

すると気だるそうな独特の口調でスーツ姿の水内が近づく

「おー霧海か、ずいぶんと早いなぁ、まぁもう少し時間があるし向こうの

ソファーで待機してな」

それを言われると統司は昨日座ったソファーに腰掛ける

職員室は空気が堅く感じ、統司は心なしか緊張していたためソファーに座って、まさに待機している状態だった

堅い空気の中で少しの間待っていると水内が来る

「そろそろ始業式が始まるから着いてきなー、あ、荷物は置いてきな、後で職員室に戻るからそんときに持ってけば良いから。」

言われたとおりにバッグをソファーの脇に置いて、水内に着いていく

着いていくまま廊下を歩き体育館へ着き、職員がいる体育館の端で共に式を受ける

 

式の前で学生同士で会話をしている中アナウンスが鳴る

静かにして下さい、それでは始業式と入学式を始めます・・・

式は進んでいくが、ポツポツと話し声が聞こえる気がする、端の席ではこちらに気付いてチラリと見ているのが見える、恐らく会話の中に統司の事に関して話しているのもいるだろう

 

式が終わり、新入生、在校生と順に退出していき、水内と共に体育館を退出していき、職員室へと戻る水内は、生徒に配布する色々な資料などを

まとめている、その間に統司は面会室にあるバッグを背負い、職員室から先に出て水内を待つ

ほんの数分待つと職員室から水内が出てくる

「そんじゃ、行くぞー霧海」

統司は「ハイ」と返事をして、相変わらず水内の後ろを着いて行った

 

統司は学校の資料に書いてある校内図を思い出す、

校内は簡単に、「管理棟」と「HR(ホームルーム)棟」と「特別教室棟」で各5階建てであり、そして外に「部室棟 兼 体育館・格技場」となっていた

HR棟は、2階から4階が各学年の教室であり、1階と5階は一部の特別教室となっていた

今 水内と統司が向かっているのは、2年生の教室のあるHR棟の3階だ

・・・そしてこれから自分のクラスとなる2−1のクラスに着く

 

教室からはざわついた話し声が聞こえる、水内は「ここで待ってな」と言って先に教室に入る

「早く自分の席に着きなー!」

そう言われると、生徒はそれぞれ自分の席へと着き、水内は話し始める

「とりあえず始業式 入学式おつかれさん、今日は早速だが話がある」

ほんの少しだけ話し声が広がるが、水内は構わず話続ける

「この学校としても珍しい事に、このクラスに転校生が入る」

その言葉を聞いたクラスメイトは一様に騒ぎ始める、すると水内は教室の外にいる統司を見て合図の様なものをする

そして統司はガラリと扉開け教室に入る、すると同時にクラスメイトが一層に騒ぐ

統司は教卓にいる水内の隣で止まり、水内は話し始める

「こら、騒ぐ気は分かるが少し静かにしな、それじゃ軽く自己紹介よろしく」

水内の言葉で少しだけで静かになり、水内は黒板に統司の名前を書き始める

「・・・霧海統司です、これからよろしく。」

水内は“軽く”と言ったから、統司は最低限の自己紹介をする、正直特に話す事も思いつかない為、下手に何か言うより良いと思ったからだ

騒ぎ声の中に、どこからか“可愛い”という声が統司の耳に入り、統司はピクリと僅かに眉を顰(ひそ)める

「おや、本当に軽くだな、じゃあ霧海の席は窓側の一番後ろの席だ」

指示された席へと統司は向かう、教卓を横切り 席と席の間を通る、その間通る時に席にいるクラスメイトから、「よろしく」などと言われ、統司は「よろしくな」と軽く返し、自分の席へと着く

統司が席に着くのを見ると引き続き水内は話し始める

「さて、転校生の質問なら放課後とか他の機会にやってくれ、それじゃ

プリント配るぞ」

水内の言葉を聞いて、「え〜」という不満の声が聞こえる、また、統司の周りの席にいる奴はお構いなしにこちらに話しかけてくるが、程なく水内に見つかり「だから放課後にしろ」と一蹴される、しかし小声で話しかけ続けてくるが・・・

そうして午前だけの授業が終わりSHR(ショートホームルーム)も終わり、放課後になる

・・・と同時に統司はクラスメイトに囲まれ、質問攻めとなる

中には他クラスの生徒も教室に入って質問に加わってきている

大体が「好きな食べ物」や「趣味」などと定番の質問ばかりで、途中で「何故転校したのか」という質問が出てからは、朝答えたものを端折(はしょ)って答えた

 

質問されて、それを答えるだけだったのだがそれで1時間経つ

そんなに転校生が珍しいのか、それとも単純に統司の事に興味があるのか、

囲っていた人数も減っていき、質問もスラスラと出なくなる、統司はそれを察知すると

「もう質問が無いなら、そろそろ帰るな」

と言いバッグを背負う、「えっと、えっと」と必死に考えてる女子もいたが、統司はブレザーの内ポケットにしまっていたイヤホンを首にかけながら、

そそくさと教室を出る。

そして統司が教室を出た、僅かに後に恵も一緒に教室を出る

恵は統司の横に並んで「一緒に帰ろう?」と話しかけてきた

その姿をクラスメイトが見ていて「ずるい」などと騒いでいる

「北空か、おう、一緒に帰るか」

統司がそう言うと、恵は微笑む、と同時に、後ろから統司の両肩に手を乗せて

「私もご一緒でもよろしいですか〜?」

その声に振り向くと城乃咲がいた

「おお、城乃(きの)ざ、・・・キノか、いや別に構わないけど」

それを聞くと城乃咲は笑う

「へへっ、あたりまえでしょ? メグの親友なんだから」

『また略した、ちゃんと名前で呼んでってば』

「ああ、ごめんごめん、ところで2人はこれから用事でもある?」

『う〜ん、特に無いかな?』

「俺は特に無いけど」

『それじゃあさ、これからどっか寄ってかない?昼飯ついでにさ』

「だめだよ、寄り道しないで帰らないと」

『俺は特に無いから大丈夫だけど』

真面目に返す恵に対して、統司は誘いに乗り、城乃咲はそれを聞くと

「ほらほら、転校生君は良いって言ってるしさ、町の案内も含めて行こうよ!」

それを聞いて恵はほんの少し考えて答えた

「う・・・ん、それなら良いかな…、それじゃお母さんに お昼ご飯いらないって連絡しないと」

恵はそう言うと携帯電話を取り出して母である滴にコールする

その間に統司は城乃咲に誘ってくれた事に礼を言う

「なんだか手間かけて済まないな」

『いや 良いって良いって、今のは只の名目(めいもく)だし、どーせ暇だしね』

統司は城乃咲の言葉に軽く笑う、そうしていると恵が電話を終えたようだ

「お待たせ、それじゃ行こう?」

そして3人は下駄箱で靴に履き替え、校門を通り抜ける

「さて、まずはどこに行こうか、あ、先に昼飯か」

城乃咲は校門を出てすぐのところで立ち止まり、統司達2人の方へ振りかえり一応統司に行先を訪ねる

「転校生君はどっか行きたいとこある?」

『別にどこでも良いけど、後 俺の名前は霧海統司』

「アハハ ゴメンゴメン、じゃあ先に昼飯で、ハンバーガーで霧海君は良いかい?」

その答えを返して、同時に恵にも聞く

『ああ、大丈夫、北空は?』

「うん、あたしもそれで良いよ」

『了解、それじゃあ一番近い“マク”はあそこだね、じゃあ早速行こう!』

 

“マク”とはファーストフード店の「マクドール」の事だろう、ほとんどの人は“マクド”と略すが、恐らく城乃咲の癖でかなり略されたのだろう

 

行く最中、城乃咲が別のクラスで、統司が恵と同じクラスになっていた事に少々気に入らないようで、城乃咲は統司にちょっかいをかけていた

午前授業だった関係で、城乃咲のように学生達がマクドールに集まっている

マクドール店内で、食事を終えた3人は次の予定を話す

「さて、次はどう周る?」

城乃咲の問いに、統司は昨日周ったところを答える

『えーっと、一応学校以外だと、[病院]と[デパート]、[本屋]なら昨日行ったかな、まぁ一人でいける程覚えては無いけど』

「まぁめぼしい所はそんなところか、あ、一応駅も教えとこっか」

城乃咲は恵の方を向き、他に行くところは無いか聞いてみる

「そうだね、あと商店街も教えとこうよ」

『あーそうだね、あそこはちょくちょく行く事になるかもしれないしね』

そんなこんな行く順番を決めて、3人はマクドールを後にした

 

先に神魅駅に向かう、神魅駅はそれほど大きくは無いが、田舎と考えると十分大きな駅となっていた

次に病院へ行くが、ほとんど通ったに等しく、城乃咲はそそくさと先に言ってしまった

次の本屋では、ほんの少し立ち読みした後に城乃咲が買いたかった漫画を買っただけで、通りかかった程度であった

次にデパートに向うが、デパートで城乃咲があちこち周って、既に“統司に町案内する”という名目はどこかへ行ってしまったようで、デパートを出るころには日が傾き始めていた

最後に商店街へ向かう、恵の話によると、「本当はショッピングモールなんだけど、元々は商店街があった所に新しく作っていて、完成しても商店街あんまり大差ないから、みんな商店街って言ってるの」と言っていた

話し通り ショッピングモールと言うよりも“まるで商店街”という感想であった、しかし建っているオブジェや細かな装飾が辺りにデザインされている様子は、ショッピングモールの雰囲気をかろうじて醸(かも)し出していた、・・・が やはり商店街というイメージに負けてしまっているが

 

日は傾き、夕暮れ

バスに乗り帰路へ着き、降りたバス停で城乃咲と別れる、そして2人きりとなり並んで帰る

デパートで城乃咲に引っ張り回され、2人は少し疲れた表情をしている

・・・そして前触れもなく恵は話し始める

「ねぇ、統司君、良かったらアドレス交換、・・・してもいいかな?」

『ん?ああ、良いよ』

そう言うとお互い携帯を取り出す、統司は「赤外線で・・・って使い方大丈夫?」と恵に聞くが、ほんの少し怒った顔で「そこまで心配しないでもよく使ってるからと」言い返すが、すぐ微笑む

そしてお互いに携帯を合わせる、統司は片手で、恵は両手で

・・・

「よし、交換完了だな」

『うん、ありがとね』

「いや、こっちこそ」

そう言いあうと2人は笑いあう

「それじゃ、また明日」

恵の家の前まで来ると恵は立ち止まって挨拶する

「おう、じゃあまた明日」

そして統司は恵と別れた

 

・・・その夜、統司の部屋にて

統司がノートパソコンと向かい合っていると、脇に置いた携帯が鳴る

携帯を開くと恵からだった

 

件名:初メール

君と初めてのメールだね、

特に用は無いんだけど迷惑だった?

今日は良い天気で星がきれいだね、

満月じゃないのがちょっと残念。

それじゃ、また明日。

 

統司はカーテンと窓を開けると、空には小さな雲、大きな肥えた月と星空が広がっていた、それを見ると統司はメールを返信する

 

件名:Re:初メール

確かに綺麗な星空だな

そう言えば一昨日満月だった気がする

それじゃあまた明日

 

そしてと統司は窓を閉め、カーテンも閉める

 

一週間後・・・

放課後の教室、午後の体育での体力測定で 疲れた統司は早く帰ろうとすると

ほとんど私服姿にしか見えない、水内に引きとめられる

「あ、霧海!ちょっと話があるけどいいか?」

『あ、ハイ、大丈夫ですけど』

「それじゃあ面談室で先に待っててくれ」

そう言われると統司は1階にある面談室に向かった

少しの間待つと、水内が「お待たせ」と言いながらやってきて面談室の扉の鍵を開ける

面談室は長机にパイプ椅子と簡単な作りである

水内は奥の席に座り、統司と向かい合わせになる

 

「さて、どこから話すかな・・・、それじゃあまず この町に伝わる言い伝えを知ってるか?」

水内の口調はいつも通りであったが、周りの空気は真剣そのものであった、

周りの音が静かで面談室で話してる所為なのかもしれないが・・・

『あ、はい、確か“鬼が住んでる”ってやつですよね確か、父から聞きました』

「うん、その通り、ではここからの話は突拍子の無い話かもしれないが“信じてほしい”」

その言葉を聞いて、統司の感想としては「え?」だった、その口調は真剣だったからだ

「ここ、神魅町に住む人は、君・・・いや、君たち家族以外は皆“鬼の血を宿した人間”[鬼人(きじん)]だ」

『え?鬼人?ですか・・・?』

「そう、無論私も、隣で住んでいる北空恵もそう、この町に住む全ての人間は鬼人だよ」

『北空も・・・』

統司は驚きしかない、まさか自分が空想の様な出来事に遭うとは思わなかったからだ

「クラスメイトも皆鬼人、いや、学校にいる生徒も皆だな、この学校の生徒は全員神魅町出身だからな」

『みんな鬼人…ですか』

「北空から聞いたけど、君は一昨日ここに来た時、高校生に襲われたんだろ?・・・ああ、別に隠さなくてもいい、むしろ話しやすくなるから」

「・・・ええ、ここの生徒みたいですね」

「まぁあんときの奴はもう普段通りに戻ってるから、あんまり責めないでやってくれ、…鬼人、というか鬼ってのは月の満ち欠けによって力が変わっていってな、満ちる程力が強まって、新月だと逆に 一切力が出ないで、常に力が抜けてる状態になるんよ」

『そう・・・なんですか』

「そんでな、私も不思議なんだが高校生までの“純粋な人間”は感受性が高いから神魅町(ここ)の空気というか雰囲気に慣れないから住まないはずなんだよ、両親ともここ出身って訳でもないし・・・、っと話を少し戻すで?鬼人も高校生までは何かと不安定で、力が暴走しやすいんよ」

『暴走ですか、と言う事はあの時襲ったのは』

「君は話が早くて良いな、その通り、あの時のあいつは暴走していて、まぁもう大丈夫だから安心してくれ」

『・・・と言う事は皆危険という事になりませんか?』

「君は本当に頭の回転が速くて助かるな、ここまで来てそろそろ本題よ」

『本題・・・ですか』

「そう、さっき言った通り高校生までは暴走しやすいって下りに戻ってだ、この暴走が“満月の日”が多いんよ、そんであの時君を助けたグループ、というか集団覚えてるか?」

『ええ、北空もいましたね』

「そう、…ところで、霧海は何か入る部活動とか決めたか?」

『えっと、いえ、まだです』

「そうか、なら話しを続けるよ、あの集団に加わって欲しいんよ」

「え、あの集団ですか?」

「そうよ、あの集団、一応部活動になっていてな、活動名は“鬼焚(きたく)部”」

「キタク・・・ですか?それって帰るって字・・・」

「そっちじゃない、というかそれは未所属扱いや、文字は“鬼”に焚き上げるの“焚”よ」

そう言いながら水内は適当なメモ用紙にどこからか出したボールペンで「鬼焚部」と書く

「鬼焚部・・・ですか、…それ、“只の人間”の俺にはかなり厳しいんじゃないんですか?」

「ん?・・・まぁどうにかなるやろ、君は運動神経良いみたいだし」

確かに運動神経は高いのは周りから言われているし、実際に結果も良い、それとこれとは別だとは思うのだが

「それに鬼焚部ってのは自主的に入るんじゃなくて、顧問がふさわしいと認めた生徒しか入部できないんよ、ちなみに入っているだけで、ここ付近の進学・就職の内申は高いぞ?ちなみに私は顧問の一人で 2年担当の顧問なんよ、

まぁとにかく入りなって」

先ほどの真剣な表情はどこかに行って、今では普段通りの気楽な様子だった

「・・・わかりました、入部します」

それを聞くと水内はケラケラと笑いながら言う

「よし、本人確認も取れたし、詳しい事は部の本入部の日に言うわ、実の所  拒否られても強制的に入部させる気やったんけどな、君が利口な子で助かったわ、…話は終わりや、もう帰って良いぞ」

水内は「あー、疲れた」と言って席を立ち、背伸びした後窓を開けて煙草を吸い始める、「あ、ここで煙草吸ってんの内緒にしてくれな?」

統司も席を立ち バッグを背負う、そしてふと思いついた疑問を聞く

「・・・ところで先生、もし既に部活決めてた場合どうしたんですか?」

咥えていた煙草を外して、水内は答える

「ん?ああ、強制的に転部させるつもりよ、実際一人、他の部から引き抜いたしな」

『はは、それじゃ失礼します、先生さようなら』

「おう、さよなら、気を付けてな」

 

面談室を後にし、統司は校庭に出る

「・・・あ、今日は病院に行かないと」

その事を思い出し呟くと、この間 恵達と一緒に行った道を探り、病院へ

向かった

 

病院内・・・アナウンスで統司は呼ばれ、この間と同じ診察室に入る

そこには統司の担当医である咲森が待っていた

「お久しぶり、あれから何か変わった事ある?」

『・・・そうですね、強いて言うならば、今まで見ていた不思議な夢が、いつも同じようなものだった事を思い出した・・・?って事位ですね』

それを聞くと咲森は机の上の何かにメモのように書くと話を続ける

「そう・・・ね、そうじゃあ いくつか質問するから気楽に答えてね」

そう言われ、統司は軽く返事をする、そして咲森はいくつか簡単な質問をする、そして統司はそれに答える

「・・・そう、質問はおしまい、それじゃあ診察はおしまいね、お会計はアナウンスするから待ってて」

そう言うな否や、統司は気になる事を聞く

「先生、聞きたい事があるんですが…」

『うん、なにかな?』

「えっと、先生も鬼人・・・なんですよね」

それを聞くと、ほんの一瞬固まった気がしたが、先ほどと変わらず、寧ろ診察していた時より優しい物腰で答えた

『そうよ、ところで誰に教えて貰ったの?』

「担任の水内先生からです」

それを聞くとまた何かをメモのように書く

「本当は、ここに住む人は大体小学生の頃に“私たちは鬼人だ”って教え込まれるのよ」

『そうなんですか?』

「そうなの、私は鬼人に関して他の人より詳しいからなにかあったら聞いて?そうね、貴方には連絡先教えといたほうがいいわね」

そう言うと、メモ帳を取り出しサラサラと書き、書いたメモを破って統司に渡す

「これ、私の携帯番号、あ、一応君の番号教えてくれない?」

そう言われ、統司は口答で携帯番号を言うと、水内はメモに書いた番号を復唱する

「あ、多分お父さんは“このこと”知らないと思うから 言わない方が、知らない方がいいと思う」

『あ、わかりました、・・・でもなんですか?』

「“このこと”はここの地域だけの問題だから、外部からの大人とかに広まれないようにしないといけないの、君の場合は知らないといけなかったみたい

だから話したみたいね」

『はい、わかりました、要するに秘密ですね』

「簡単に言うとそうね、それじゃあ、なにかあったら連絡してね、気になった事でもいいから」

統司は「失礼します」と部屋を後にする、会計を待っている間に、咲森の番号を登録する

そしてアナウンスが鳴り、統司は会計を済まし病院を後にする

 

数日後・・・

管理棟の3階、そこに鬼焚部の部室があった

統司は気を引き締め扉を開ける、中には恵以外に“3人”先に来ていた、確かもう一人いた気がするが…

統司は恵の隣に座る、静かな部室に緊張するが、

「ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫、統司君」

と恵に言われ、統司は少し気を落ち着かせる

すると、廊下を走る音が聞こえ、扉の近くで止まる、そしてゆっくりと扉を開ける

「・・・あれ、やっぱりもう集まってる?」

それはいないと思っていた“陽気な高校生”の姿だった、

「遅いぞ、無駄話をしてないでさっさと来ないか」

…と、四角いメガネをかけた生真面目そうな高校生が一蹴する

陽気な高校生は「スマンスマン」と恵の隣、統司の座る反対側に行き、座ろうとすると、ガラリと扉が開き、3人の教師が部室に入る、そしてその内の水内が早速一蹴する

「おら蒼衣(あおい)、さっさと来いっつったろ!しかも走って来るとは・・・」

『あ、すいません、ってか走ってたのバレてたんですね…』

やはり陽気な高校生が答えた

「あたりまえだ、階段を駆け上がる音もしっかり聞こえたぞ、さて本入部の説明を始める、とりあえず顧問の方から紹介しようか」

水内がそう言うと、隣にいた教師が自己紹介を始める

「どうも〜、3年の顧問の文由(ふみよし)です〜、統司君〜だっけ?よろしくね〜」

とても教師が生徒に言う発言と思えない程、和やかなのんびりした優男といった様子の教師だった

「お前本当に教師か?・・・それで私は2年顧問だ、この間説明したな?」

水内がそう言うともう一人の教師が、自己紹介であろうものをを始める

「・・・1年顧問の金林(かなばやし)だ」

静かな、か細い声でたった一言だった、ただ 言う時にこちらを見ていたのだが、キツイ目つきでこちらを見ていた、もう少し上から目線であれば

“見下している”様な目つきだった

「相変わらずだな、それじゃあ“コイツ”みたいにビビるぞ?」

水内がチラリと視線を変えた事から、恐らく蒼衣の事だろう、しかし金村は少し俯(うつむ)いて黙り続ける

「まぁいい、これから活動内容を説明する、他のメンバーは知っているが一応部活だから形式的に集まって貰った」

「鬼焚部の活動内容は“鬼の血が暴走した者を”[更生]ということで静める事だ、まぁ要するにおかしな状態に暴れたやつと戦って気絶させるってことだ、そして時には、暴走して行き過ぎた事をした奴を“粛清”する事になる事もなる、…簡単に言うと処刑だがこれはほとんど特例だ、活動内容に関しては以上だ、何か質問はあるか?」

水内は説明し終わると、なぜか蒼衣が先に質問する

「えっと、すんません!粛清に関して俺聞いてないんですけど、“行き過ぎた事”ってどういうことですか!?」

水内は統司に対して言ったが、蒼衣が質問してきて呆れている、すると金村が質問に対して答えを返す

「行き過ぎた事・・・、大勢の人を傷つけたり、人の命を奪ったり・・・、後、何度も何度も更生されたり、・・・する事」

金村の目つきは、先ほどの自己紹介の時より鋭く、真剣だった

しかしその視線が突き刺さった目標は蒼衣であり、蒼衣はビビって「あ、ありがとうございましたーー」と、静かに黙った

「・・・さて、質問はもう無い様だな、まぁ活動は不定期だからな、基本は部室(ここ)

で待機という事になる…が、まぁほとんどいないしな、…まぁいつも来ている奴も、ほとんどじゃなくて一切こない奴もいるがな」

そういうと水内は再び蒼衣を睨みつけ、蒼衣は申し訳なさそうに苦笑いする

「それじゃあ、自己紹介といこうか、簡単で良いぞ、先に霧海から」

そう指示され、統司は椅子から立ち上がり自己紹介を始める

「2年1組の霧海統司です、足を引っ張る事になると思いますよろしくお願いします」

自己紹介を終えると統司はパイプ椅子に再び座る、そして水内が話す

「本当に簡単だったな、知っての通りこの間の活動の時に人質にされた高校生だ、補足すると 霧海は鬼人ではなく人間だ、ただ運動能力はかなり高く、この話の理解も早かった、恐らく活躍も期待できるだろう」

説明している間、蒼衣は「え、同級生だったの?つーか人間ってマジ?」と騒いでいたが、金村に睨まれ黙りこむ、そして水内は指示する

「新入部員の紹介は以上だ、それじゃあ2年生から紹介して それで本入部の説明は終了とする、それじゃあ北空から」

そう指示されると北空は立ち上がり簡単に自己紹介する

「コホン、同じく2年1組の北空恵です、鬼焚部でもよろしくね統司君」

笑顔で統司に自己紹介する、そして恵が座ると、向かい側に座っていた

生真面目そうな高校生が立ち上がる

「2年3組所属の魁(かい)魅(み) 月(つき)芽(め)だ、生徒会にも所属している為、部室に待機はできず 放課後は主に生徒会室にいる、以上。」

統司は立ち上がった魁魅を見る、統司より背が高く170位だろうか、身なりもキッチリしている

簡潔に自己紹介して、魁魅は静かに椅子に座った、そこで水内が補足を始める

「補足すると、魁魅は理事長の息子となっている・・・が、まぁそんなに堅い付き合いはしないで、単純に同級生として付き合えばいいさ」

水内がそう言うと魁魅は軽くうなずいて「よろしくな」と言ってきた、そして蒼衣の番になり、蒼衣はガタッと椅子から立ち上がる

「えっと、2年2組の蒼(あお)衣(い)陸(りく)聖(たか)です、趣味はゲームと映画鑑賞です、好物はステーキというか肉で、神魅町出身です、…えっと簡単にと言ったんでこんなもんで、これからよろしくお願いします!」

蒼衣は魁魅と同じ位で恐らく175位だろう、肩近くまで髪が伸びていて、ツンとしたくせ毛だったがサラリと揺れる

魁魅の隣に座っている小さな女子はクスクスと笑っており、恵は思わず笑っていた、大柄な高校生は微笑んでいるような顔で、魁魅においては不機嫌そうにしかめっ面をしていた

自己紹介をしてガタンと座ると、呆れた様子で水内が補足を始めた

「・・・簡単につったろ、特にお前はクラスと名前だけで十分だ」

そして水内はなにやら「…全く蒼衣はこんな弟で大変だな」と呟いていた

次に、小さな女子の隣に座っていた、大柄な男子が立ち上がる

「3年1組所属の詩(し)月(づき)鬼(き)央(お)だ、鬼焚部の部長を務めている、風紀委員の委員長でもあるため待機していない事もある、まぁあまり気張りすぎるなよ」

詩月はとても大きく、身長は190位だろう、スポーツ選手の様な大柄な体格で髪型は短髪である

詩月が座ると、水内が補足する

「詩月は校内で1番鬼の血が濃く、鬼焚部内最強だ、ちなみに鬼焚部の2番目は北空だ、詩月は家の都合で1年留年しているから現 在学生で最年長の生徒だな」

補足が終わると、詩月は水内に「最後のは余計です」というが水内はほとんど無視に等しかった

最後に小さな女子が立ち上がる

「えっと トリになってしまったけど、3年2組の月(つき)雨(あめ)魃(ばつ)乃(の)です、気軽に“ツーノ”って呼んで良いからねっ」

月雨は、詩月の後になった事も含めて とても小さく、統司より小さい 150位だろう、ツインテールのように二つに縛った髪は腰近くまである

水内が補足と一緒に纏める

「月雨は詩月の次、校内で2番目に血が濃い・・・まぁ補足することはほとんどないな、よし、全員自己紹介が終わったところで本入部の説明を終わりにする、それでは解散だ」

そう言い終わると顧問の3人は部室から出て行った

統司が「さて、帰るか」と言うと、恵が「一緒に帰ろう?」と言い、共に帰ろうとするが、蒼衣がお構いなしに話しかけて来る

蒼衣からの質問攻めを適当に返し続け 統司は玄関を出る、周りには同じように部活の説明が終わった生徒が下校している

日が傾いた夕暮れを、統司は立ち止まって見上げる

 

しかし鬼焚部に入った統司には、これから波乱に満ちた高校生活が待っていた・・・

 

 

 

2話  終

 

説明
鬼の人と血と月と 第2話 です。
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