短編ネタ 真・恋姫†無双 〜俺が、俺達が、運び屋だ!〜
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前書き

 

 

シリアス「私じゃなくてあの女(シリアル)を選ぶなんて!!許さない!!許さない!!許さないぃいいいいいい!!」

 

作「シリアスが包丁持って追っかけてきたぁああああ!?」

 

はいというわけで、今回はこの作風に似合わない真面目風味なお話です。

 

しかし俺としてはシリアルちゃんも捨て難いので……。

 

作「俺は、シリアルちゃんも、シリアスさんも、どっちも選べない!!二人が欲しい!!」

 

シリアス「ッ!?///」

 

シリアル「えへへ?皆仲良しなら良いよ〜♪」

 

と、シリアスさんを上手く丸め込んでシリアル成分も合成!!

 

 

結果。

 

 

軽いノリも含まれてるのでシリアスだけでは無いww(何時もと一緒ww)

 

 

 

 

この話はスターウォーズのBGM『HERE THEY COME』を聴きながら拝見する事をお勧めします(これマジで)

 

若しくはこの話を読んだ後にですね……

 

https://www.youtube.com/watch?v=xPZigWFyK2o

 

↑の動画を見て頂くと、状況が理解しやすくなるかと思います。

 

 

 

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あの倉庫での密談から二ヶ月の時が流れ、遂に呉蜀同盟軍と魏が赤壁で対峙した。

 

 

 

曹操軍四十万に対して、呉蜀は十五万。

 

 

 

この絶望的な状況と流れを変える為に周瑜さんと黄蓋さんが取ったのが苦肉の計。

絶望的な数字の前に策が中々決まらない首脳陣を黄蓋さんが一喝して、周囲に不仲を見せつける。

そして軍議の場で侮辱された周瑜さんは怒って黄蓋さんを棒打ちの刑に処し、それを憎く思った黄蓋さんは魏に投降。

更に慣れない水軍の行軍で思う様に動けない曹操軍に、黄蓋さんが船同士を鎖で繋ぐという方法を提案。

これが本来?統ちゃんが提示する筈だった連環の計である。

更にこの時期には吹かない東南の風を諸葛亮ちゃんが祈祷で吹かせ、火計の下準備を整える。

そして後は呉を裏切ったと見せかけていた黄蓋さんが内部から火を付けて、曹操軍の船を焼き払う。

 

 

 

――というのが、『順調』にいってた場合の筋書きである。

 

 

 

しかしここは歴史を辿る世界ではなく、ほぼ何でもありのハチャメチャな恋姫の世界なのだ。

 

 

 

赤壁から離れた長江の川沿いに無数に存在する運河の一本。

俺こと尾美一と愉快な仲間達(乗組員二十人+乗客八人)は、曹操軍の船の裏側を通る川沿いに居た。

 

 

 

いや、正確には居たでは無く――。

 

 

 

「全員配置に付きました。何時でもいけますぜ、軍師殿?」

 

『分かったわ。なら突入まで秒読み開始……攻撃態勢を維持しなさい』

 

「了解」

 

森の中の入り組んだ狭い河をファルコン号で爆走中なんですよ。

客室に居る詠ちゃんの指示の本、ファルコン号は全ての明かりを消した状態で入り組んだ森の中を走る。

今の所魏軍の姿は見えないが、相手はあの曹操ちゃんだし何が起こるか分からないねぇ。

 

「ほ、本気でやるんですかい船長!?こんなの命が幾つあっても足りませんぜ!?死にに行く様なもんでさぁ!!」

 

おやっさんが副操縦席に座りながら涙目で叫んでる間にも、前方の河から頭を出してる岩を操縦して避ける。

まぁそう言いたくなる気持ちは分からんでもない。こりゃ完全に特攻隊の扱いだからな。

 

 

 

俺達は?統ちゃんと諸葛亮ちゃんに、というか蜀に依頼された『少数精鋭の奇襲作戦』。

 

 

 

その決死隊の運び屋をしているのだ。

 

 

 

実はもしも火計が失敗した時の為に、呉には内緒で蜀の方でも火計の準備をしてある。

火で燃やした船を別の船で押して突っ込ませるという大胆にぶっ飛んだ作戦だ。

その二段構えの火計を用いて相手の数を減らし、ファルコン号に乗ってる厳顔さん、黄忠さん、馬超さん、馬岱さん、馬鉄さん、馬休さん。

更に神速の張遼さん。そして三國無双の恋ちゃんの八人で曹操ちゃんの乗ってる本船を奇襲して潰そう、という作戦なのだ。

その作戦の為に、俺はファルコン号を戦場から離れた河沿いまで走らせ、そこから曹操軍側の背後に位置する森の中の河へ侵入。

現在に至るまで休憩無しで森の中を走り回っていたという訳だ。

そして夜の闇に紛れる頃には、もう曹操軍の背後が目と鼻の先という所まで侵入したのである。

かなり歴史とは違うけど、まぁ恋姫の世界だし良いんじゃないだろうか?

依頼料もたんまりと弾んで貰ったし、給料分は仕事しねぇとな。

 

俺は意識を切り替えて、慌てるおやっさんに笑顔を向けて宥めの言葉を掛ける。

 

「大丈夫。仲間を信じろよい。時間になったら火計は成功してるさ」

 

「で、ですが……もし失敗したら?」

 

「……そん時は全滅するしかないだろうな」

 

何せ何十隻と居る敵陣のど真ん中に入るんだ。嬲り殺されるのは目に見えてるし。

通るのもギリギリってぐらいの細い運河を爆走しながら、俺は火計が失敗した時の事を考える。

正直、俺にもどう転ぶかは分かんねーけど……。

 

『必ず、帰って来て下さいね?……朕を……桜華を、一人にしないで下さい』

 

「約束しちまってるし?生き残るっきゃねぇだろ」

 

出撃前に涙を堪えながら、万が一の為に蜀の城へ避難する前に見送ってくれた桜華ちゃんとの約束。

それを思い出しつつも俺はフォースを使って先を予知し、運河の障害物を避けていく。

スマホのチートマップもあるし、これなら迷わずに戦場へ出れるだろう。

接近してるのをバレない為にランプを全て消した夜間の航行だが、俺はその前をフォースで予知して走っている。

たとえ一寸先は闇でも、このまま進むのなんて俺には問題じゃない。

そしてそのまま走り続けていくと、等々細道を抜けて赤壁に繋がる河口の開けた場所にまで到達。

さぁ、いよいよお仕事の時間だ。

俺は舵輪をしっかり握り締め、パイプ電話に向かって口を開く。

 

「突撃隊報告」

 

『……後部砲台。準備良し』

 

『物見櫓。準備良し』

 

『ぜ、前部砲台。準備良し、だな』

 

『前方大型砲台も大丈夫です』

 

『船体横砲台。全員準備完了しました』

 

「良し。全員明かりを灯さずに戦闘体勢のままで待機」

 

『『『『『了解』』』』』

 

短く用件を伝えると、口々に返事が返ってくる。

そして俺の次の指令に従って、ファルコン号の彼方此方で体勢が整えられていく。。

今回の作戦を受けるのに、俺は蜀の城の兵士達の中から射撃や偵察に優れた人物達を選んで、ファルコン号の臨時の船員として雇った。

ミレニアムファルコン号の性能を十二分に発揮するには何時ものメンバーだけじゃ足りねぇからな。

射撃兵士の殆どは黄忠さんと厳顔さんの部隊で、偵察は諸葛亮ちゃんの所から来てもらってる。

更に輜重隊から力持ちの兵士を呼んで弾薬運びと万が一船が損傷した時の修理工も乗せた万全の態勢だ。

連携なんて考えてもいねぇけど、この船を操る分には問題無いだろ。

 

『周囲の警戒は怠らないで。最初に話したけど、偵察部隊の報告では赤壁に布陣している曹操の船団が前情報よりも少なかったらしいの。それがちょっと気になるわ』

 

「確かに気にはなるけど、ここまで来たら問題無くね?火計が成功すれば、後はこのまま真っ直ぐ魏の本陣に突入するだけっしょ?」

 

『……えぇ……確かに僕の気にし過ぎかもしれない……風向きが変わり始めたし、そろそろ火計が始まる時刻よ。全員気を引き締めて――』

 

『ほ、報告!!魏の船団に火の手が上がりました!!』

 

と、俺と詠ちゃんの会話を遮って、アンテナ型の物見櫓に座る兵士から報告が届く。

このまま火計が成功したら、早速俺達の出番だな。

 

『火計は成功してるの!?』

 

『い、いえ!!火の手が上がって直ぐに最前列の船の鎖が外され、後方の船団が離れました!!燃えたのは最前列の船だけです!!』

 

しかしまだ俺達が突入するタイミングでは無いっぽい。

確かにコックピットに居る俺でも、この森の隙間から赤壁の様子はチラッとだけ見えるが、殆ど小さな炎しか見えないな。

情報通りの船団の数なら、もっとでかい炎が上がっても不思議じゃ無い筈だ。

つまり、呉の火計は失敗したって事になる。

うーむ……北郷一刀君が居ないのに、連環の計を見破って逆に逆手に取るとは、やっぱ末恐ろしいねぇ曹操ちゃんは。

しかしこうなると、魏に偽の投降をした黄蓋さんは……俺達が間に合えば、助けられるかもな。

まさか赤壁の戦いだけが魏のシナリオルートで進むとは思わなかったぜ。

 

『く!!まさか鎖を一瞬で外すなんて……でも、まだ策が尽きた訳じゃないわ。尾美、この先の入口からの侵入は変更よ』

 

「あいあいさ。って事は予定通り?」

 

『えぇ。雛里と朱里の策が成功するまで一度距離を取って、火計が成ったら別の入口から赤壁に突入になるわね』

 

「了解。おやっさん、予定してた道に入るぜ。船首左へ旋回、速度調整を頼む」

 

「わ、分かりやした」

 

呉の火計が失敗したとしても慌てず騒がず、という当初の取り決め通りに、俺は別の運河への入口に舵を切る。

この諸葛亮ちゃんと?統ちゃんの策は漫画でのみ登場してたけど、読んでて正解だったよマジで。

 

もしこの後の展開もその通りに行けば、魏の船団はちゃんと燃えて――ん?

 

かなり楽観的な思考で船を予定してたコースに向けるが、暗闇の中に何やら薄い陰が見えた。

それが河の真ん中辺りに見えているので少し気になり、フォースを集中させて暗闇の中をジッと見つめる。

んん?……何だ?あのちょっと黒っぽいの――。

 

「――はぁッ!?くそ!!おやっさん緊急旋回!!」

 

「へ?船ちょ、うわぁあああ!?」

 

急に悪態をついて舵輪を回し、ファルコン号の向きを九十度変えて本来の道を逸れていく。

おやっさんが横で叫んでいるが、今はそれに構ってる暇は無い。

 

「お、おいどうした!?あのまま行けば予定通り曹操軍の背後を突けたんだろ!?何で方向を変えちゃったんだよ!?」

 

『何があったの尾美!?状況を説明して!!』

 

と、俺が舵輪を戻してこれからどうするかを考えていると、馬超さん達がコックピットに来て質問してきた。

パイプ電話からも詠ちゃんの切迫した声が聞こえてくる。

その問に対して、俺は表情を険しくさせながら答えるしかなかった。

 

「やられた……ッ!!道を大量の岩で塞がれてた!!多分曹操軍の仕業っすよ!!」

 

『なんですって!?』

 

「なんやて!?そんなアホな!?」

 

「……まさか、知られていたのか?儂らのこの襲撃が?」

 

「多分、ファルコン号が来る事を軍師達が予想したんでしょうや!!俺の船はちぃと無駄に有名になりすぎたみてぇですし……やってくれるぜ……ッ!!」

 

『まずい……ッ!!この流れは――!!』

 

話してる間にもファルコン号は更に細い道を進み続け、また岩の進路妨害に押し止められてしまい、またコースを変えざるを得ない。

あ〜くっそ、あっちこっちの道を潰しやがって!!……焦るな焦るな、強かにいかないとフォースが乱れる……良し。

焦りで軽率な行動を取らない様に、俺はフォースに集中しながらスマホの画面を見る。

恐らく道を塞がれてるのは赤壁の運河に戻るこの辺りの道全てと考えていいだろう。

曹操軍にはそれをやってのける兵数があるし、あの曹操ちゃんやその軍師達がその辺りで手抜かりをやるとは考えにくい。

 

と、なれば……。

 

『ほ、報告!!この先の開けた運河全域に敵艦隊!!』

 

『ッ!?罠に嵌ったわ!!』

 

「オゥ、シィット!!やっぱそうきちゃうのかよい!!」

 

岩で塞がれて航路を誘導された俺達を待ち受けていたのは、広がった運河を埋め尽くさんばかりの巨大な戦艦の大軍だった。

その全ての戦艦がファルコン号を明かりで灯しながら、此方に狙いを付けている。

更に四〜五人で漕いで操舵する小型船の群れが俺達に向かってきているではないか。

 

「敵機接近!!灯りを点けて戦闘態勢!!甲板の奴等は客室に避難しろぉ!!」

 

俺の叫び声を聞く前に、弓矢を持たない武将達は客室へ避難し、黄忠さんと厳顔さんは一階ラウンジの端で武器を準備していた。

その瞬間、まるで雨が降ったかの如く降り注ぐ弓矢がファルコン号を襲う。

だが、船体には一本として刺さらずに河に落ちるか乾いた音を立てて甲板に転がる。

生憎と一般兵の弓程度じゃ問題にはならねえが、こっちも応戦しねぇとマズイ。

 

『物凄い数です!!このままでは囲まれて進路を阻まれるかと!!』

 

『尾美!!何とか時間を稼いで!!今地図を見て次の動きを考えてるから!!』

 

「あぁ分かってるって!!皆聞こえたな!!船を攻撃速度に上げる!!軍師殿が方針を思い付くまで、敵を船に乗り込ませるな!!」

 

『『『『『了解です船長!!』』』』』

 

小型船の奴等は明らかにファルコン号へ乗ろうとするだろう。

そうなると数の上じゃこっちが不利だ。

それに物見の報告通り、あの大型戦艦に囲まれたら面倒になる。

こうなったら大型戦艦を霍乱しつつ、詠ちゃんが策を思い付いてくれるまで時間を稼ぐしかねぇな。

 

『くそ!!速過ぎて矢が当たらない!!』

 

『慌てなくていい!!中型船で左右から連弩を撃ち込め!!陣形を崩すな!!』

 

辺りから撃ち込まれる矢の追い着かない速度でファルコン号を操縦しつつ、デクさんと兵士が砲台の矢を撃ちこむ。

普通なら船上の兵士に当たれば絶命するっていうぐらいだろうけど……。

 

「食らうんだな!!」

 

ドドドドドドドドドドッ!!

 

『『『『『ぐわぁああああ!!?』』』』』

 

速変竹で威力がおかしい事になってる所為で、砲台から放たれた杭は兵士の身体を貫いて船を木っ端微塵にしてしまう。

さっきから船上の兵士を討ち取ってるというより、船を沈めてるの方が正しいのです。

さながら撃ち落とされてる小型船はTIEファイターって所か。

そして河に投げ出された兵士がファルコン号に轢かれて御臨終というパターンも。保険効かねぇぞ?

そんな感じで大軍を蹴散らしていくと、進路上にファルコン号の左右を挟み込む様に中型船が配置された。

 

「船長!!あいつら連弩を出してやすぜ!!」

 

「あいあい!!問題ねぇ――よぉ!!」

 

ファルコン号が挟み込まれる寸前にフルブレーキングで速度を殺し、連弩を回避。

そうなれば、連弩の向かう先は向かい合った味方の船になる。

それはつまり、果てしなく哀れな自滅であった。

 

『な!?船が急に速度を――』

 

『ぎゃぁあ!?』

 

『い、いかん!?射撃を止め、ぐげぇ!?』

 

哀れにも連弩の矢は全てお互いの船の兵士の命を奪った。

俺は連弩が途絶えたのを確認して、再びアクセルを踏み込み、船体の間を通過する。

 

「船体横砲台!!発射ぁ!!」

 

「撃ちなさい!!」

 

ドドドドドドドドドド!!

 

『『『『『ぐわぁああああああ!?』』』』』

 

そして二階甲板のタラップ近くに布陣していた黄忠さんと厳顔さんの合図で、ファルコン号のバリスタと二人の矢が中型船を食い荒らした。

 

「なってませんわね。挟撃の際には――」

 

「射線が互いを避ける様に配置するのが常識じゃ。素人め」

 

片やにこやかに、そして豪快に笑いながら次の獲物を見定めて矢を、杭を撃ち込んでいく。

やれやれ、流石だな、あの二人の腕前はよぉ。

しかし魏の船団の割には随分とお粗末な布陣だな……軍師は居ない、と考えて良いんじゃね?

なにより本命は向こうの赤壁の筈で、こっちにまで軍師を割く余裕なんてないだろう。

そうやって小型船や中型船を潰していく俺達だが、さっきから気になる事がある。

 

「小型船ばっかりに攻撃させて、大型戦艦は何をしてるんだ?」

 

操縦しながら気づいた事だが、何故か大型戦艦は俺達の行方を遮ろうとさえしない。

只ずっと小型船を放出して俺達に攻撃させるだけだ。

まさかとは思うが、何か狙いが――。

 

 

 

『放てぇええええええ!!』

 

 

 

ドシュッ!!!

 

 

 

と、向こうの船団から何かが打ち上がる音がして――。

 

 

 

ドボォオオオオオンッ!!!

 

 

 

ファルコン号の直ぐ側の水面が思いっ切り弾けた。

 

 

 

――へ?

 

 

 

「「なぁにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」」

 

いきなり持ち上がった水面の波にファルコン号の挙動を揺らされるが、俺はそれを必死に舵輪を切って抑える。

おやっさんも叫びながらも俺のフォローをする体勢を崩さない。

船が安定したのを確認して水面を見やると……ここまでの運河の入り口を封じてたのと同じサイズの岩が河のド真ん中に鎮座してるではないか。

 

 

 

……いや。

 

 

 

いやいやいやいやいや!?

 

 

 

「今のは……投石なの!?」

 

「石というよりは岩というべきではないか!!なんという兵器を乗せておる!!」

 

「あ、あんなもん当たったら幾ら”ふぁるこん”号でも持ちませんよ!?」

 

「オマイガー!!これが大型戦艦が近づかなかった理由って事ね!?ここに来て新型兵器のおでましかよい!!」

 

俺とおやっさんはファルコン号を再び加速させながら叫ぶ。

あんな岩が降ってきたらファルコン号は文字通り只の木材になっちまう。

まさか魏の発明王こと李典ちゃんがここまでのモンを造るとは……サイズでかすぎだろ?

いや、それどころか……。

 

ドシュッ!!ドシュッ!!ドシュッ!!

 

「ッ!?ま、また来やしたぁ!!」

 

「わーってるって!!全員船にしがみつけぇえええ!!」

 

パイプ電話で注意を促しながら、俺はファルコン号を縦横無尽に操舵する。

くねったラインを描きながら滑走するファルコン号を追う様にして、天から降り注ぐ大岩が河へと着水していく。

ったく、無茶苦茶しやがるなあの”馬糞ビシャァアア!!娘め”、船が走れなくな……げっ、そういう事?

ジワジワと河の面積を減らして俺達の動きを止めようって事か?

こりゃ確実にまずいぞ。

 

「はやいとこ何かしらの手を打たねぇとジリ貧だよこれまじ……詠ちゃん!!」

 

『分かってるわ!!撤退よ尾美!!』

 

「おいおい待てよ詠ちゃん!!こんな千載一遇の好機はまたと無いのに放棄しちゃうの!?」

 

『このままじゃ航行出来なくなって一貫の終わりよ!!そうなる前に一度撤退して再起を図るのが一番安全だわ!!』

 

「?統ちゃんが必ず火計を成功させてくれるって!!それまで頑張ろうじゃねえか!!」

 

俺は軍師である詠ちゃんに反論して、この場での交戦を申し出る。

聞きたかったのはこの場を乗り切る策で、撤退の策じゃねえ。

っていうかここまでドツボに嵌められて撤退とかマジ有り得ねえだろJK。

必ずトラウマ再発させちゃるから待ってろあの馬糞め。

 

『もし雛里と朱里が策を成功させるとしても、こっちにはあの投石機を止める手立ては無いのよ!?必要な時期に僕達が動けなくなる事が一番最悪なのを分かってる!?』

 

「うんにゃ!!あの投石機を無効化する手立てはあるぜ!!近づくんだよ!!」

 

『はぁ!?近づくって……まさか、あの大型戦艦の群れに!?』

 

「そう!!近づくんだ!!デカブツ戦艦にぴったり張り付いて、零距離射撃を浴びせてやるのさ!!」

 

『馬鹿言わないで!!それじゃこっちも大型戦艦の集中砲火をまともに浴びるじゃない!?』

 

俺の提唱した策を即座に否定する詠ちゃんだが、実際今はこれぐらいしか手は無いぞ。

それに一般兵の撃つ矢ぐらいならファルコンは傷付かないけど、あの投石機はさすがに無理。

退却では無く持ち堪えるなら、これしか手は残って無い。

 

「戦艦からの巨大投石を受けるよりマシだぜ!!もし投石してきても周りの戦艦を道連れにできるしよぉ!!」

 

『ぐ……分かったわよ!!もう一度考えるからもう少し粘って!!あーもう!!あそこもあそこも封鎖されてたんじゃあ、もう赤壁に突入出来る河口なんて遠くにしか無いじゃない!!』

 

と、最終的に俺の作戦を飲んだ詠ちゃんは悪態交じりに策の見直しを再開してくれた。

よし、じゃあ俺も自分の仕事に取り掛かるとしよう。

俺は予定通りにファルコン号で大型戦艦に肉薄し、スピードを生かして戦艦を攪乱していく。

それにより投石は一時的に止んだのだが、利己的に考える軍師が向こうの軍に居ないのがここで災いした。

何と味方の船が居ようともお構いなしに投石してきやがったからな。

勿論それを察知した俺はファルコン号を急いで退避させたので事無きを得る。

更に速変竹で強化された連弩砲台が戦艦にダメージを与えて沈めているが、このままじゃ本気でやばいぞ。

 

『……待って……ねぇ尾美!!この”ふぁるこん”号は急な登りの運河でも問題無く航行できるって言ってたわよね!?』

 

「んん!?滝とかみたいな絶壁じゃねぇ限りは問題無いけど!?どうしたよいきなり!?」

 

『……あるのよ……この”みれにあむふぁるこん”号だけが通れる道が、一本だけ。この近くに』

 

囲まれそうになって舵輪を回転しながら船を回避する最中、詠ちゃんの質問に答える。

すると、詠ちゃんは神妙な声で言葉を紡いだ。

っていうかそんなルートあったっけ?

スマホの画面を見ても、特にそれらしい『運河の入口』は無いんだけど……。

 

『……それは、この先にある洞窟から流れ落ちてる河を越えて山に上って、そこから赤壁に突入し直す方法よ』

 

『はぁ!?ちょ、ちょお待てや詠!!本気で言うとるんか、そんな事!?』

 

「そ、それじゃ赤壁に入る前に山から落ちますぜ!?」

 

『分かってるわ。だから僕もお勧めはしない。今まで見てきた”ふぁるこん号”の速度なら、山の頂上まで登る速度で”山から赤壁に飛び込めるかもしれない”って思っただけだもの。でも、船の強度が耐えられるかは保証出来ないわ……この道が使えないなら、撤退以外に選択肢は無いわね』

 

ふむ、成る程?つまりは一発勝負の賭けって事ね?

確かに普通なら考えもしない頭のイカれたクレイジーな作戦だろうけど……面白そうじゃない?

皆の意見が否定的な中、俺は笑顔でパイプ電話の向こうに居る詠ちゃん達に答える。

 

「いいじゃん。その方針で行こうや」

 

「え!?船長!?」

 

「このままグルグルしてるよりはマシだろ……下手すれば援軍を差し向けられるかもしれねぇし、もし火計が成功しても俺達が突入出来ないんじゃ曹操を取り逃がす事にもなりかねない……それだけは絶対に避けるんだ……覚悟決めろよぉ!!」

 

「ぐ!?……わ、分かりました!!こうなりゃとことんお付き合いしますよ!!俺らの船長は、アンタしか居ないんだ!!」

 

『勿論、俺達もですぜぇ!!』

 

『あ、あの時、一生兄貴と船長に着いていくって、決めたんだな!!』

 

おやっさんは苦い顔をしながらも最後は俺の案に乗ってくれた。

しかもパイプ電話で話を聞いていたデクさんとチビさんもだ。

 

「ありがとうよ!!馬超さん達もすいませんけど、俺に命預けて下さい!!」

 

『……しょうがないなぁ……分かったよ!!アタシの命、預ける!!ついでに真名も預かってくれ!!アタシは翠だ!!』

 

『蒲公英も預けるよ!!実は結構前から預けよっかな〜って思ってたし♪』

 

『翠姉さん達と同じく、この馬休も真名を預けます!!鶸です!!』

 

『馬鉄の真名は蒼だよ〜!!』

 

「呵呵!!元よりこの老骨の命!!桃香様の為なら!!そして桃香様が信を置くお主の頼みなら惜しみはせん!!遅くなったが、儂の真名もお主に預けるぞ!!桔梗じゃ!!」

 

「ふふっ。私も信頼の証として、真名を預けます。紫苑とお呼びください。信頼して預けるのですから、必ず送り届けて下さいね?」

 

「えぇ。ちゃーんと皆さんを送り届けますって……俺の事はオビ=ワンと呼んで下さい……じゃあまずは、この場を乗り切るとしましょうや!!」

 

「「「「「「応!!!」」」」」」

 

甲板に居た厳顔さんと黄忠さんから、そしてパイプ電話で馬超さん達”馬ファミリー”から真名を預かり、俺は覚悟を決めてファルコン号の操縦に意識を戻す。

どっちみち火計が成功しなきゃ、俺達はこの先に進めもしないんだし、できる可能性があるならそれを取る。

何より、成功するかどうかはファルコン号次第だなんて……堪らなく燃えてくるじゃな〜い!?

 

『……本当に良いの、オビ=ワン?一応僕なりに、かなり無茶な事を言った自覚はあるんだけど?』

 

「良いの良いの!!詠ちゃんがこのファルコン号ならそれができるって感じてくれたんなら、俺がその期待を裏切らない船だって事を証明してあげるってだけさー!!」

 

『…………ありがとう』

 

「んっふっふー!!礼ならこの戦が終わってから、閨の中でたっっっぷりと聞かせてもらうとしようではないか!!」

 

『んな!?ばばば、馬鹿言ってんじゃないわよ!?な、何でぼぼ、僕が、アンタなんかと……ッ!?』

 

『きゃーー!!♪オビ=ワンさんってばだいた〜〜ん!!』

 

『も、もしかして、次は蒼が欲しがられちゃったりして……きゃーー!!♪オビ=ワンの変態〜♪そんなに蒼のが飲みたいなんて〜♪』

 

『蒼!!貴女は馬鹿な事言って無いで戦に集中しなさいってば!!』

 

『せ、戦闘中に何言ってんだよ!!このエロエロ魔神!!』

 

『操縦で一番大変やろうに、ホンマ何でそないお気楽やねん』

 

「まぁどっちみちぃ?諸葛亮ちゃんとの報酬の話で可愛いおにゃのこを貰う約束はしてたしぃ?詠ちゃんでも可?って聞いたら了承してくれたしぃ?」

 

『……しゅ……しゅぅりぃいいいいいいいいいいいッ!!!?』

 

馬岱ちゃんの冷やかしや馬超さんの怒る声もなんのその。

実はまだ誰にも話して無かった裏取り引きの報酬の件を話すと、客室から詠ちゃんのドロドロした怨嗟の声がww

え?お前ロリはノータッチとか言って無かったかって?

いやさ、詠ちゃんてば身長は低いのに身体の彼方此方はしっかり育っててエロいんだよねぇww

あの小さな身体に秘められたムチムチの色気……正直、ずっと食べたくて仕方無かったっていうか?(ゲス顔)

ぐっへっへ。詠ちゃんはどんな顔で、どんな声で泣いてくれるんだろうか?

今から楽しみになってきましたなぁ(見せられないよ、な顔)

 

「つまり事後承諾が事前報告になっただけなんで、逃がすつもりは無いから覚悟するべぇ〜〜!!帰ったら一緒にねっちょりと楽しもうか!!」

 

『うっさい馬鹿ぁ!!何でよりによって皆の前でそういう事言うのよぉ!!……ぼ、僕だって……別に、あんたなら構わないっていうか……ごにょごにょ』

 

『え?』と翠ちゃんが。

 

『え?』と霞さんが。

 

『え?』と鶸ちゃんが。

 

『きゃーーー♪』と、蒲公英ちゃんと蒼ちゃんが。

 

『……詠……ずるい』と恋ちゃんが。

 

客室で待機してる其々が今の詠ちゃんの言葉を信じられないといった感じで反応する。

ついでに蒲公英ちゃんと蒼ちゃんは何か楽しそうだ。

そして恋ちゃんも剥れてるっていうかちょっと拗ねてるみたい。

ふーむ。恋ちゃんもくんづほくれつな事に興味あったのね。また何時か教えてあげようww

 

 

 

っていうか……。

 

 

 

『え?……はっ!?』

 

「あらあらまぁまぁ♪うふふふふ♪」

 

「はっはっは。もてもてじゃのう、オビ=ワンよ?」

 

「詠ちゃんの貴重なデレシーンキターーーーーーーーーッ!!!あざっす!!!」

 

『なっ……なぁ……ッ!?――〜〜〜〜〜〜〜ッ!?ば、馬鹿ーーーーーーッ!!!』

 

 

 

ついにツン期を越してデレ期に突入してくれた詠ちゃんが可愛すぎて叫んじゃったけど愛さえあれば問題ないよね?

 

 

 

詠ちゃんがデレるなんてアレだ。”オオグンタマの貴重な産卵シーン以上に貴重だよ?”

 

 

 

”ヒョギフ大統領の貴重な産卵シーンなんて目じゃ無いよ”?

 

 

 

そんなコントをしながらも戦場の様子はこう着状態に陥ったままである。

一撃必殺の威力を誇る投石機を積んだ魏の船団。

そしてその攻撃を縦横無尽の軌道で回避するファルコン号。

まだこっちはそれ程厳しい状況には陥ってないけど、このままじゃ事態は動かない。

そうなると呉蜀の負けは確定しちまう。

岩が落ちる危ない箇所をフォースで予知しながら必死に避ける。

今の所は問題ないが月明かりのみが浮かぶ空を見て、俺は舌打ちをしてしまう。

まだ火の手は上がってないか……このまま火計が成らないままなら、俺達は間違いなく全滅するだろう。

それに呉蜀の同盟軍も危ない。

 

「頼むぜ、?統ちゃん……俺達を犬死にさせないでくれ」

 

向こうで策を巡らせているであろう軍略の天才に懇願しながら、俺はファルコン号の操縦に精を出す。

久しぶりに神様に祈る様な心持ちの中、縦横無尽に飛来する岩をドンドンと回避しながらその投石or砲撃で戦艦を一隻ずつ沈めていく。

 

そうして戦っていた俺達の耳に、赤壁の方から一際でかい衝突音らしきものが聞こえてきた。

 

『報告!!魏の船団に右翼から燃えた船が突撃し、火が次々と燃え広がっています!!か、火計は成功しましたぁ!!』

 

『ッ!?聞こえたわね尾美!!火計は成った!!赤壁への突撃作戦を開始よ!!』

 

※(推奨BGM『HIRE THEY COME』)

 

https://www.youtube.com/watch?v=XWxG0qDj9Ow

 

「待ってましたぁ……ッ!!野郎共、今から洞窟に向かう!!敵は振り切るから杭の装填を済ませておけ!!」

 

「か、火計が成功したって事は、魏の戦力はちゃんと減ってるって事ですね!?」

 

「はははっ!!あいつらならやるって言ったろ!?」

 

「は、はい!!やったぜぇえ!!」

 

物見櫓から届いた報告に口元がニヤケるのを抑えれない俺と、心底喜ぶおやっさん。

笑みを浮かべつつ、俺はファルコン号の船首を戦艦の隙間を縫う様に操って抜けさせていく。

機動力では他の追随を許さないファルコン号に掛かれば、大型戦艦なんてウスノロを撒くのは簡単な仕事だ。

 

「よーし!!こちら船長の尾美だ!!魏の船に乗り込む武将は全員甲板に出て何かにしがみつけ!!これから洞窟に突入するけど、洞窟を抜けたらすぐに戦場に入るからな!!それと船から振り落とされても迎えにゃいけねえので、あしからず!!」

 

俺はパイプ電話の向かって声を張り上げ、全員に対ショックに備えさせる。

もうここからなら敵の矢に注意を払う必要も無いし、直ぐに動ける様にしてもらってた方が良いだろう。

船室に居た馬岱ちゃん達は俺の声の後に船室から出てきて武器を片手に手すりや壁にしがみついていた。

待ってろよぉ、曹操ちゃん!!今直ぐこの戦況を引っ繰り返して驚かせてやっからよぉ!!

ここまで良い様に翻弄された意趣返しを考えつつ、俺はスマホのマップを見ながらファルコン号を洞窟の入口に向かわせていく。

 

「ッ!?あ、あの穴蔵じゃないですか船長!!」

 

「おう、位置的に間違いねぇだろ……よし……突入するぜ!!」

 

「……ぼ、僕から言い出した事だけど……本当に、かなり無茶な作戦ね……ッ!!」

 

おやっさんが副操縦席から指差した穴蔵に向かって、ファルコン号を無理矢理旋回させて山から流れる細い洞窟に航路を定める。

そして客室からコックピット席に移った詠ちゃんもコースを見て緊迫した声でぼやいた。

まだ顔が真っ赤で俺と視線を合わせない様にしてる初心さに心癒されたぜ☆

詠ちゃんから分けてもらった勇気と萌を糧に、俺はコースをしっかりと見つめてラインを見極める。

ほぼ90度の直角だが……曲がってやれねぇ事は無い!!

しっかりと舵輪を握りながらコースを見定める俺に、隣に座りながらレバーを握るおやっさんがゆっくり口を開く。

 

「……もう腹は決めやしたけど……これ、失敗したら死ぬんじゃ?」

 

「死んで元々ぉ!!」

 

いやー!?という悲鳴を無視して、俺は舵輪を一気に回してファルコン砲の船首を回頭。

ファルコン号の船首が洞窟の入り口を向いた瞬間、おやっさんはレバーの左右調整を巧みにズラして左右の噴射量をズラし、ファルコン号をスムーズに進行させる。

おやっさんが定めた噴出量を感じ取りながらアクセルとブレーキを調整しつつ、船を直角に曲げていく。

 

さすが副船長。悲鳴あげててもその技量は間違い無いぜ。

 

そして洞窟の入り口に無事船首を突っ込んだ所でおやっさんが解放レバーを二つとも最下段より少し手前まで下ろし、俺達は掟破りの洞窟登りを開始した。

当然、整備なんて全くされていない自然の洞窟内の河の流れ。

それを中型とはいえかなりの大きさになるファルコン号で突破するのは至難であった。

岩はゴツゴツとはみ出しているし、急に道が細くなってしまう箇所もある。

しかしその箇所の全てがファルコン号の前方ライトで照らされている上に、俺にはフォースがある。

しっかりと確保された視界とフォースの予知を使って、俺は何とかファルコン号を航行させる事に成功していた。

更に洞窟の半分近くを水が流れてるお蔭で、ファルコン号の動きも普段より四次元的に動けている。

良し!!これなら問題無く行けるだろ!!俺とファルコン号に越えられねぇ河は無いぜ!!

ここまで順調に航行出来たので、俺は若干テンションが上がってしまっていた。

 

……此処で調子に乗ってフォースを乱したのが不味かったんだろうか。

 

曲がりくねったS字カーブを抜けた俺達の目の前に現れたのは、斜めに下りた大きな鍾乳石の大群だった。

しかもその鍾乳石の潜れる隙間が、ファルコン号よりも少し低いぐらいしかない。

 

「あ、危ねぇええええええええええッ!?」

 

「ッ!?ちっ!!」

 

おやっさんの悲鳴をBGMに聞きながら直ぐ様舵を切り、ファルコン号はギリギリの所で鍾乳石の下を潜るが――。

 

バギャァアアアアッ!!!

 

『『『『『うわぁああああああああ!!?』』』』』

 

一際大きな鍾乳石に左側のアンテナ型望遠スコープをもぎ取られてしまった。

スコープ座席に座っていた兵士は間一髪の所でラウンジへと飛び込んで事無きを得たが、助かったのは奇跡だ。

固い木の砕ける悲痛な音が聞こえ、船体が上下に大きく揺れ、船底を岩が掠る。

それでも舵輪から手を離さずにファルコン号の暴れる挙動を制御して、やっと挙動が落ち着いた時に俺は冷や汗を流した。

 

「ぐぅ……ッ!?今のはやばかった……ッ!?」

 

「だ、誰も落ちて無えですかい!?」

 

「あ、あぁ。何とか大丈夫だ」

 

「さ、さすがに今のは僕も焦ったわ……まるで奇跡ね」

 

「えぇ……今のは本当に肝が冷えたわ……」

 

「危うい所じゃったのぅ」

 

さすがの歴戦の武将達も今のはビビったらしく、其々が大きく溜息を吐く。

今の危機一髪な状況で気を引き締め直した俺達は、更に奥へ奥へと洞窟を下る河を駆け登る。

段々と鍾乳石の数が少なくなり、等々洞窟を抜けて山の頂上の川の流れに合流。

暗い洞窟の天井では無く、清々しいまでの夜空や山の下の景色が見えてきた。

 

そして――。

 

「ッ!?船長、魏の船団が見えましたよ!!」

 

「うっし!!等々来たか……ッ!!」

 

「でも、やっぱり予定とずれて大分遠くになっちゃってるわ……ッ!!」

 

おやっさんの言葉にそちらへ視線を移せば、この山の下を流れる赤壁の河で燃え上がる魏の船団から火が移らない様に離れた場所に鎖で繋がれ横一列に並んだ軍艦三隻が止まっているのを確認。

大きさから見ても恐らく真ん中の船が曹操軍本陣の船だろう。

しかし歯噛みする詠ちゃんの言う通り、所定のコースとは大分かけ離れてしまった所為でこっからだと横合いからしか見えない上に遠い。

さてどうしたものか、と悩んでスマホのマップに目を移すと、この先のコースがちょいとマズイ事になっていた。

山頂に向かった河の流れはそのまま横合いに流れていて、このままだと更に戦場から離れてしまう事になる。

河から少し陸地を行けば、曹操軍の船に真横から奇襲を掛けられる位置に居る訳だが……良し。

 

此処は例の『秘密兵器』を使う事にしよう。

 

まだおやっさん達にも教えてないファルコン号の隠し玉とも言える兵器。今使わなきゃ何時使うんだってな。

 

「チビさん!!例の『杭』は装填してあるか!?」

 

『勿論でさぁ船長!!何時でも発射出来ますぜ!!』

 

パイプ電話で前方大型砲台の砲室に居るチビさんに確認を取ると、返ってきた返事はOK。

ならばと俺は秘密兵器の『燃料』である『日ノ本酒・炎』を供給口のストッパーを外して流し込み、更に指示を与える。

 

「いいか、良く聞いてくれ!!今からファルコン号を更に加速させて赤壁に突入する、!!突入したらチビさんは曹操軍本陣船の横を固めてる船二隻に、その『杭』をお見舞いしてやれ!!できるか!?」

 

俺の問い掛けに対してチビさんは黙りこむが、俺は大丈夫だという確信があった。

チビさんはデクさんやおやっさん達三人の中で一番射撃の腕がある。

俺がフォースで豪天砲を操作する事も可能だが、今は操縦で手が離せないからこそ、この役目はチビさん以外には出来ない。

今も真っ暗な道をひたすら走る為にフォースを集中させてるから、他の事にそれを割く余裕が無いんだ。

 

『……任せて下さい!!必ずぶちこんでみせますよぉ!!』

 

「よしきた!!そんじゃあいっちょ、秘密兵器のお披露目と行くか!!」

 

チビさんの承諾を聞いて直ぐ、

そうこうしてる間にファルコン号は竹林を抜けて完全に姿を現す。

もう障害物も無いし、フォースを別の事に集中させなきゃな。

道の先を予知する事に割いていたフォースを止め、俺は今までに無い程に集中する。

 

 

 

――さぁ……いざ赤壁へ!!

 

 

 

「おやっさん!!開放弁横にもう一本引き棒があるだろ!!それを一番下まで降ろせぇ!!」

 

「了解ぃ!!いきやすぜぇええ!!」

 

両手で舵輪をしっかりと握った俺の叫びにおやっさんは答え、レバーを一気に引く。

そうして先ほど注入した燃料が『動力部』に流れ込んでいく――。

 

 

 

そして、月夜に浮かぶ星々の光が無数の筋を引き――。

 

 

 

――ゴォオオオオッ!!!

 

 

 

噴射口から溢れる爆音と共に、ファルコン号は河を越え大地を滑走し――空を『飛んだ』

 

 

 

――この時、戦場の全ての視線が『空を飛ぶ貨物船』に注がれたのは言うまでもない。

 

 

 

俺が指示しておやっさんが稼働させたのは、『爆風管』と呼ばれる宝貝の一種だ。

この管は油なんかの燃える要素がある液体を入れる事で、それを燃料に反対の筒から爆風を発生させる。

スマホの概要では、導師が身を守る為に、そして相手を殲滅させる為に作った道具らしい。

しかし反動が強すぎて人間が持つと文字通り撃った人間が打ち上げ花火になってしまうデンジャー極まりない失敗作だとか。

 

その対人間用失敗作兵器を、俺はミレニアム・ファルコン号の隠し玉、『ハイパードライブシステム』に相当する代物として取り付けた。

 

燃料に入れた『日ノ本酒・炎』は、酒を蒸留させて作ったガソリン並みに燃えやすい液体だ。

とても飲めた物じゃない失敗作で、そのまんまの意味で燃料としては最適だったのでブッこんでみたわけだが、結果は前述の通り。

誇張でも無く、本当に空を飛んでいるのである。

 

「う、おぉぉ……ッ!?マジかよ……ッ!?”ふぁるこん”が……ッ!?」

 

「ちょ!?一体、何度僕の常識を壊せば気が済むってのッ!?何で”飛び込む”んじゃなくて、”飛んじゃう”のよぉお!?」

 

「そ、空を飛んでる……ッ!?すげぇ……ッ!!?」

 

「いやーーー!?蒲公英ってば夢でも見てるのぉおおおおおお!?」

 

「おーーー!?凄いすごーい♪!!」

 

「何で蒼はそんなに呑気なのよぉ!?わ、私もう……も、漏れちゃ……ッ!?」

 

「さ、さすがにこんな光景は考えもしなかったわ……でも、良い景色ね」

 

「はっはっは!!生きてる内にこの様な光景を味わえるとは、なんたる僥倖!!広がる空!!眼下の敵陣!!そして星々の散らばる月夜!!これぞ絶景じゃのう!!」

 

「うはぁ……こら馬でも味わえん感覚やで!!ホンマ最高や!!」

 

「……風……気持ち良い」

 

恐らく、いや間違いなく人生初のフライトに乗船している皆の反応はまさかこうなるとは考えていなかっただろう。

こんなにも空高くを飛ぶなんて、鳥にしか出来ない事なのだから。

かくして本当に飛んだファルコン号だが、このままでは宇宙の彼方まで本当にドライブしかねない。

よって、俺は全神経を集中させてフォースを使い、船の軌道を下向きに修正。

 

目標は勿論、曹操軍の本陣船と、その護衛艦二隻。

 

 

 

……もう駄目!!叫びたい衝動を我慢出来ません!!って事でいっちょう大きく息を吸い込んで――。

 

 

 

「YEYAAAHUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」

 

 

 

デススター攻略戦で美味しい所を掻っ攫ったハン・ソロの気分に浸って、俺は景気良く叫び声を挙げた。

 

 

 

『……ここだッ!!喰らいやがれぇえええええッ!!!』

 

気分爽快といった感情を叫ぶ事で露わにした俺に続き、チビさんが大型豪天砲を撃つ。

鉄と鉄がぶつかり合う射撃音を轟かせて豪天砲から発射された『先端に筒の取り付けられた杭』は、見事に周りを囲む二隻に吸い込まれ――。

 

ドゴォオオオオンッ!!!

 

着弾と同時に盛大な『爆発音』を鳴らし、河の水面に船の残骸を撒き散らすのだった。

火で燃えるのでは無く、爆発による破壊。

木造の船なんてあっという間に見る影も無くなってしまった。

その光景は見る者の目を強制的に奪い、その黒煙を目に焼き付けさせる。

 

これが俺の作った豪天砲用の新たな弾薬、なんちゃって『振動ミサイル』だ。

 

長めに作った杭の先端の筒に黒色火薬と『日ノ本酒・炎』を仕切って詰め込み、筒の最初に潰れる蓋の位置に癇癪玉と鉄の破片や石を詰め込んだ簡単な作りの爆弾。

それを豪天砲で射出し、目標に当たった衝撃で先端の筒が潰れ、破裂した癇癪玉が内部の黒色火薬を発火させて『日ノ本酒・炎』に引火作動するミサイルとして使用したのだ。

時間と材料が足りなくて結局3本しか作れなかったけど、まぁ仕方ねえ。

それに、此処一番の局面じゃ役に立ったから良しとすっか。

これまたオーバーキルな新兵器の登場に驚く皆さんを尻目に、フォースの力でファルコン号をスムーズに水面へ着水させ、俺は曹操軍本陣の船へと接近させる。

 

「もう邪魔者は居ないっすよ!!はえぇとこ終わらせて帰りましょうや!!」

 

俺の言葉に意識を戻したりハナから戦闘モードだった突入隊の皆は口々にお礼を言いながら船の縄梯子を伝って甲板へ登っていく。

ちらっと後方を振り返るが、向こうとこっちでは船の間隔が開きすぎていて直ぐには救援に来れないだろう。

しかも火計で部隊は混乱してるだろうから、直ぐに救援部隊を作るのも難しい筈。

更に曹魏の武を司る夏侯姉妹は前線に出てるし、恐らくこの船に居るのは魏の頭脳とも言える軍師とロリっ子親衛隊長が二人って所だ。

さすがにあの二人じゃ突入隊の面々を一度に相手にすんのは無理だ。

あれだけ魏の有利だった戦局は、たった一隻の貨物船が登場しただけで蜀呉に大きく傾いていた。

 

『くそ!!あの船を狙え!!火矢を打ち込めぇ!!』

 

『曹操様をお守りするんだ!!』

 

「やらせないん……だなぁ!!」

 

背後の船からファルコン号に向けて火矢を打ち込んでくる兵士達に、デクさんは前部回転砲台を反転させて迎撃を開始した。

速変竹のバレルを取り付けたクワッドファイヤーレーザーキャノン風の連弩の攻撃は向こうの火矢より何倍も速い。

更に三人組に作って渡したスコープのお陰で命中率もバッチリだ。

 

「だなだなだなだなだなだなだなだなだなぁ!!」

 

『ぎ、が――』

 

『く、杭!?何だこの威力は、ごっ――』

 

「だなだなぁ!!お前等なんか、蜂の巣なんだな!!」

 

何処かで行われてる”獣戦争”のサイさんばりの叫び声をあげながら次々と向こうの船に立つ兵士を撃ち抜くデクさん。

戦場の空気に当てられているのか、何時もより随分と興奮してるご様子。やるねぇ。

後部砲台に座ってる兵士も頑張って向こうの頭数を削っていってる。

となれば、俺達もぼうぅっとしてる訳にゃいかねえな。

 

「おやっさん!!俺はデクさん達の援護に向かうから詠ちゃんを頼む!!チビさんも最後の爆発杭を装填したら援護よろぴく!!」

 

「了解ぃ!!」

 

『了解です船長!!』

 

「おーし!!船倉の皆も弓を持って甲板に上がれ!!無賃乗車する奴は容赦無く叩き落としてやんな!!」

 

『『『『『了解しました!!』』』』』

 

「お、オビ=ワン……し、死ぬんじゃ無いわよ……絶対だからね……ッ!!」

 

「あたぼーよ!!すーぐに帰ってきて今晩はたっぷりヒィヒィ言わせてあげるから待っててねーー♪!!」

 

「ぶほぉッ!?こ、この変態ぃ!!やっぱりやられちゃえば……あ、足の先くらい斬られちゃえば良いのよ、アンタなんかーーーー!!」

 

「にっひっひ♪果たして俺の”愛の四十八手”を受けても同じ事が言えるかなー?」

 

「うっさいうっさいうっさい!!ちょ、ちょっとでも怪我したら、約束は無しなんだから!!」

 

おっふぅ。死ねと言おうとして軽めに言い直してくれる詠ちゃんに萌え尽きたぜ(良い笑顔)

パイプ電話でチビさんに指示を飛ばしつつ操縦権をおやっさんに渡して、船倉の兵士達にも指示を飛ばす。

そしてデレ期突入の詠ちゃんをからかいつつ、俺は3階デッキに立ってライトセーバーで向かってくる火矢を跳ね返し始めた。

火矢の数はそれほど多くないので、俺一人でも迎撃は充分に事足りる。

それにデクさんと兵士の射撃で向こうの頭数も減ってるので、そう時間も掛からず撃退は完了。

しかしまだ終わりじゃないんだよねぇ。

 

「でやぁああ!!」

 

「食らえぇええええええ!!」

 

「ふんぬ!!ほれほれほれぇ!!」

 

背後から襲い掛かってきた魏の兵士の動きをフォースで停止させて、無防備な兵士をなで斬りにする。

火から逃れる為に河に飛び込んだ兵士達が乗り込んできた様だ。

 

「ぎゃあ!?あ、熱いぃいいいい!?」

 

「うわぁあ!?俺の腕がぁああああああああ!?」

 

「な、なんだこいつの剣!?ひ、光ってるぞ!?」

 

「こ、こいつらの手とか足が……焼き切れてる!?」

 

「んっんー。俺の船に無賃乗車とは、良い度胸してんじゃないのぉお!!」

 

「全くだぜ!!”ふぁるこん”号に無賃乗車できんのは、良い女だけだぞテメェ等ぁああああああ!!」

 

良い事言うじゃないのおやっさん。但しその場合は無賃乗車じゃなくて体で払ってもらってますけど(笑)

おにゃのこもノリノリだから良いんです。正にWin-Winな取引ってヤツww

俺のライトセーバーに驚いて腰が引けた兵士達を、おやっさんは手持ちライフル型のコンパウンドボウで次々と撃ち抜いていく。

 

 

更に船倉から上がってきた兵士達やチビさんの援護もあって問題無く撃退に成功。

程なくして鎮圧は完了したが、上の船から河に兵士達が飛んでいく所を見ると、もう少し時間がかかりそうだ。

なので油断せずにライトセーバーを構え直す。

 

「さてさて、お代わりは来るのかね……ん?……あっらぁ!?」

 

再び3階のデッキに戻って辺りを見回してたら、ちょっと信じられない光景を見てしまって素っ頓狂な声を出してしまう。

丁度ファルコン号の真後ろ、燃え盛る船団の一番奥の船に、肩を抑える黄蓋さんの姿を確認したからだ。

かなり遠いが、フォースの恩恵で視力を強化している俺の目にはしっかりと見えていた。

満身創痍みたいだが、まだ生きてる。

っていうか、まだ生きてて良かったぜ。さすがに死なれるのは目覚めが悪いし。

……帰りに仕事が増えちまうけど、仕方無えか。

 

「悪い!!待たせたな!!こっちは終わったぜ!!」

 

「投降した将兵全員降ろすで!!」

 

と、船に突入していた馬超さんの言葉と共に全員が降りてきた。

更に縄で縛った曹操ちゃんや軍師、近衛兵達も一人づつ降ろされて、ファルコン号に乗せられていく。

それを眺めていたら、何時もより殺気の漲った視線で俺を見る曹操ちゃんと目が合ってしまう。いやーん怖いー。

 

「……尾美……貴方、誰にも仕えないのでは無かったのかしら?」

 

「勿論そこは曲げてませんぜ?俺は蜀の軍師様から今回の運び役を依頼されたんで、ここに居るだけですよい」

 

「……只の、運び屋風情が来ただけで、この曹孟徳の覇道が散るとは……天命は、私を選ばなかったという事ね」

 

「お兄さん一人、いや船が一隻増えただけで、全てがおじゃんになっちゃうなんて誰も予想できませんでしたからね〜。予防策で河を封じたのに、大した効果も見込めなかった様ですし〜」

 

「くっ……やはりあちらの船団にも軍師を一人置くべきでしたか……」

 

「……こんな奴に……こんな奴にやられるなんて……こんな奴にぃぃ……ッ!!」

 

儚く笑った曹操ちゃんの言葉に合わせて程cちゃんも自分の心情を吐露する。

それに荀ケと郭嘉ちゃんはかなり悔しそうに俺を睨み付けていた。

っつうか河塞いだの程cちゃんなのね。

案外えげつない作戦を考えちゃうもんだな。

まぁともあれ、今はそんな事を言ってる時間はちょーっと無いな。

 

「全員乗ったか!?ちょっと今から行く所あるから早く乗ってくれよ!!遅刻したら怒られちまうぜ!!」

 

「??これから行くって、後は燃えてる船を迂回して本陣に戻るだけじゃ……」

 

俺の言葉に首を傾げる馬超さんの可愛らしさに癒やされながら、俺は乗船を急がせる。

やがて全員が乗り込んだのを確認して、コックピットに戻る途中に馬超さんの疑問に答えた。

 

「ちょっくら妖艶な美女をナンパしに行くんすよ」

 

それだけ言った俺はコックピットに座り、おやっさんから再び操縦権を受け継ぐ。

さあて、ちとサービス残業に励むとしますか。

手動扇風機を回して速変竹に風を送り込み、左右の出力レバーを調整してアクセルを踏み込む。

 

「船首反転!!死にたくなかったらしっかり掴まってなさいよぉお!!」

 

「へ!?わ、わぁああああああああ!?」

 

「ちょ!?む、無茶すんなやオビ=ワンーーーーーー!?」

 

一気にアクセルを踏み込んでその場で180度回転しつつ、ファルコン号は燃え盛る船達の業火の中へ飛び込んだ。

既に辺りは火によって崩れたマストが河に着水してたり、船が斜めに沈みかけたりしてる。

その中をファルコン号は速度を増しながら障害物を避けつつ黄蓋さんの居る船へと疾走していく。

ラウンジから悲鳴や怒号が聞こえるが、知った事じゃ御座いません☆

やがて肉眼でも向こうが確認できるくらいの距離に着き、黄蓋さんもファルコン号に気付いたっぽい。

まぁランプも点いてるし、こんな独特な形の船は大陸中でもファルコン号だけだ。

 

「黄蓋さぁああああん!!飛べぇええええええええ!!」

 

ポォオオオオオオオオオオオオ!!

 

「ッ!?ハァ!!」

 

船の縁に立つ黄蓋さんに向かって叫び声を挙げながら、汽笛も鳴らす。

それでこっちの意図に気付いてくれたのか、黄蓋さんは船からアイキャンフライ。

そのまま二回転がって綺麗にラウンジへと着地した。

どうやら間に合ったみてぇでよござんした。

 

「は、ぁ……助かったぞ、尾美!!」

 

「いえいえ!!黄蓋さん程の良い女を見捨てちゃあ、男が廃るってなモンですよい!!」

 

「ぬ!?……はっ!?こ、この前は熟しただどうだ言うてた癖に、よう言うわ!!生意気な孺子めが!!」

 

あっ、まだ覚えてたんですねそれ。

意外と執念深い黄蓋さんに苦笑いしながら、船を進める。

っていうか助けなかったら文台さんとか怖いし(震え)

それに今の不意打ちで頬が赤くなった黄蓋さん可愛いかったので役得でしょコレ(笑)

 

後さ、詠ちゃん?あんまりボクチンのちっちゃいポニテ引っ張らないでくれる?地味に痛いんだけど?

 

「うっさい。馬鹿」

 

ふーむ、どうやら拗ねちゃったご様子。そんなツン具合が堪らんとです(ハァハァ)

仕方無いなぁ。蜀に帰ったら念入りに御機嫌窺いするとしようかww

と、そんな事を考えていたら、進路を塞ぐ様に燃えた魏の船が倒壊してきやがった。

どうやら連環の計で繋がった鎖に引っ張られて横倒しになったご様子。

しかしこんなもんでファルコン号の暴走を止められるとでも?

 

「最後の一発!!景気良く吹き飛べやぁああああ!!」

 

右へ左へとファルコン号を操舵しつつ、進路上の障害物に照準をロックオン。

虎の子である振動ミサイルもどきをフォースで撃ち込んで、目の前の障害物を吹き飛ばす。

しかしその更に後ろにもう一隻沈んだ船が!!

そーゆうオチはいらねーって。

しかもかっこ良く決めたつもりの台詞がダダ滑りになっちゃったジャマイカww

 

「いかん!?尾美、船を回頭せい!!」

 

「冗談じゃねえ!!人がかっこ良く決めようとした台詞を台無しにした罪は重い!!疾く散れえぇぃい!!」

 

「え!?ちょ、船長!?」

 

ドドドドドドドドド!!

 

喚くおやっさんの言葉を無視して、燃え盛る船の船体横に豪天砲をフォースで操って発射。

装填されてた弾丸をありったけ撃ちこむ。

一本一本が途轍もない破壊力を秘めているので、曹操ちゃんの軍の船の横に、綺麗に○の形を作る様に点が穿たれる。

後はその穴に向かって全速前進んんんんんん!!

ニヤリと笑いながら速変竹のレバーを限界まで下ろして、アクセルを全開で踏み込む。

 

「え?え?……船。壁。船……壁?……ギャーーーー船長うぅうう!?待っ、お願いですから待ってくだせぇええええええ!?」

 

「こ、このままじゃ突っ込んじゃうよ!?と、止めてオビ=ワンさぁああああん!?蒲公英まだ彼氏も出来てないのに、死にたくないよぉ!!」

 

「天国に行ってから、ゆっくりと愛し合え!!」

 

「まだそっちには行きたくないし、彼氏も居ないんだってばぁあああ!!」

 

「だ、誰でも良えからオビ=ワンを止めるんや!!このままやとマジにうち等心中してまうで!?」

 

「ヒーーーハーーーーーーーッ!!早く帰って詠ちゃんと”人には口が裂けても言えないエロエロNIGHTPARADE”するんだから邪魔すんじゃねーーーよーーー!!」

 

「ギャーーーーッッ!!?い、いいい一々口にすんなーーーー!!そんなに僕を苛めて!!辱めて楽しいのかアンタはーーー!?」

 

「だ、駄目だ霞!!あいつなんかすっごく良い笑顔でえ、エロい事叫んでる!?とても止まる気配なんか無いぞ!?」

 

「ハーレルヤ!!ハーレルヤ!!」

 

「おいぃいいいいい!?遂に何か歌い出しとるやんけぇええええええ!?」

 

「……オビ=ワン……楽しそう…………はーれるや♪」

 

「恋ちゃんも歌ってないでオビ=ワンさんを止めておねがぁああい!!」

 

何やら背後から複数の足音と怒号が聞こえるが、俺はそれに構わず大声で熱唱しながら船を最大で加速。

後ろからもファルコン号の後を追う様にマストが何本も倒れてくるので、どっちみちスピードを落とす事は不可能だ。

スピード落としたら火の海に呑まれちまう。

 

この状況を例えるなら、第二デス・スターの核にミサイルを撃ち込んで背後から迫る炎から逃げるファルコン号にそっくり。

 

つうかこの程度でファルコン号を止められると思うなよコラァアアアア!!

俺は再び爆風管を作動させ、船を限界スピードまで加速。

恋姫達の悲鳴をBGMに某”白いクレイジータクシーの運ちゃん”の気分に浸りながら熱唱を続ける。

 

 

 

そのままファルコン号は○の形が開いた船の土手っ腹に突っ込み――。

 

 

 

「ハレルヤ!!ハレルヤ!!ハレルヤハッハッハーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

『『『『『『『『『『わ――わぁあああああああああああああああああああああああああ!!?』』』』』』』』』』

 

 

 

ドゴォオオオオオオッ!!!

 

 

 

船の土手っ腹を突っ切って、火の海から抜け出した。

眼前に広がるのは、火計の火が燃え移らない様に船を下げていた呉蜀の連合船団。

うっし、脱出は無事に完了したな。

船を刳り貫く形で飛び出したファルコン号は水しぶきをあげて再び着水し、河を猛スピードで走り抜ける。

背後では丁度俺達が抜け出た船の横から倒壊が重なり、魏の船団が沈んでいく所だった。

やれやれ、間一髪セーフで俺達は生きてるって訳だねぇ。

あのままあそこで速度落としてたら絶対にあの炎に囲まれてお陀仏だっただろうし。

小紆余曲折あったが何とか依頼を完遂出来て満足気に頷く俺の隣で、おやっさんが舵輪にもたれながら深い溜息を吐く。

どうやら他の武将達もお疲れの様で、皆して甲板に突っ伏したり重い溜息を吐いてるではないか。

 

『『『『『オメーの所為だよ!!!』』』』』

 

皆の様子を見て首を傾げていたらまさかのユニゾンツッコミ。

失敬な、俺は”常識の範囲内で可能な行動しかしてない”ってのに。

 

「……ハァ……寿命が縮みやしたぜ……」

 

「まーだそんな事言ってんのかよおやっさん?いい加減俺の事信用しろって」

 

「そうは言いやすがね……俺達は船長みたいに度胸の塊じゃ無いんですぜ?寧ろ漏らさなかっただけ上出来でさぁ」

 

 

 

大の男が疲れた表情で漏らすだなんだと何とも汚い話である。

ちなみに今回のジョブでは馬一族の誰も漏らさなかった事に驚いた事を明記しておく。

やれやれ。天下の”失禁馬ファミリー”が何を”見せ場で漏らさない”なんて愚行をしてるんだか。

無論俺の船で漏らしたら”水分無くなるまで漏らしてもらうつもりだったがね”(ナニを、と言うのは伏せておく)

まっ、兎にも角にも全ての仕事を終えた俺は一つ頷き、ファルコン号のスピードを緩めて呉蜀同盟の本陣船に横付けするのだった。

 

 

 

-3ページ-

 

 

後書き

 

 

もうこの短編も終わりが見えてきましたねー。

 

 

まっ、短編なのでサクッと終わらせて、他の小説の執筆に取り掛かるつもりです。

 

 

説明

第7話〜 赤壁……よりエンドアの戦いを生で体験したかったww
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コメント
オビは陣営問わず(原作だと呉のみ)命中弾出し(hrmせ)た挙句Uターンすんのか?消え一刀みたくにか?(道産子国士)
科学忍法兵器ガッチャフェンサーアタックw(鬼姦)
劉邦柾棟さん>気のせいww(piguzam])
鬼姦さん>寿命縮むどころか楽しんでますww(piguzam])
Unknownさん>何この輸送船?宇宙戦争で戦闘機に混じって活躍、いや一番目立ってた貨物船ですが何かww(piguzam])
禁玉⇒金球さん>ちょww汚いww(piguzam])
↓『科学忍法:火の鳥』だ!?(劉邦柾棟)
↓自分にはなぜかガッチャッマンが頭に浮かんで仕方がないのですがw、まあオビは寿命縮んでいないんだろうけど・・・(鬼姦)
何この輸送船www まるでガミラスの観艦式に乱入して中央突破してくヤマトを見ているようじゃないか…(Unknown)
もしも一刀がここに居たら名は-穴金-に決まり、アナ○と金○デスネ(禁玉⇒金球)
劉邦柾棟さん>それも考えたけど、今回は旧三部作の方でランド・カルリジアンが言ってた台詞で纏めておきましたww(piguzam])
ハン・ソロが言ってたセリフも良いけど・・・・・・EP3の冒頭で「アナキン」が言ってたセリフを入れて欲しかったな〜。 『This is where the fun begins!』(劉邦柾棟)
D,さん>さぁ、お祭りの始まりだ……ッ!!(piguzam])
この後起こるであろうお祭り(修羅場)が楽しみですねぇ…(D,)
プロフェッサー.Yさん>えぇ。追い詰めて同意を(強制的?)取らせてから、若しくは自分に好意ある人物の言葉を引き出させて(ツンデレの天敵)から事に及ぶという確信犯ww(piguzam])
tttさん>いえ、ちゃんと曹操ちゃんは荀ケ程c郭嘉や許?典韋達と共に捕まえてファルコン号に乗せてますよww(piguzam])
鬼姦さん>大丈夫、ちゃんとシリアスっぽいのも含まれてたからww(piguzam])
劉邦柾棟さん>馬一族が四人居たので全員漏らしたら大惨事ww(piguzam])
海平?さん>笑えて頂ければそれで良しww(piguzam])
XXXさん>まぁ本当に漏らされても困るんですがww(piguzam])
…そうか成程、コイツ食う相手は選り好みするけど食うと決めた相手には一刀よりタチ悪いんだな、ようやく分かったwww(プロフェッサー.Y)
曹操は死んだのか?にしてもさすがファルコン号wwwww(ttt)
なんてシリアルw(鬼姦)
↓お漏らしをしてこその馬一族だろがwwwww!!!! orz(劉邦柾棟)
YEAAAHUOOOOOOOO!!!最高にハイってやつだァ!!今回も笑いと爽快感が体の芯を突き抜けるぅーーッ!!あと自分は3ヶ月間も船に鮨詰め状態だからとうとうテンションぶっ壊れちまったぁッ!!ごめんなさーい!!(海平?)
馬一族が漏らさないだと!?なんてこったい!!(XXX)
げんぶさん>前書き通りBGM聴きながら読んだらテンション上がる事間違い無しww(piguzam])
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