真・恋姫†無双 裏√SG 第24話
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私が徐福と出会ったのは、司馬昭隊が解散となって一年と少し経った頃だ

 

 

 

あの頃の私は、馬超と言う私が討つべき仇を調べる毎日を送っていた

 

 

 

原動力は怒りと憎しみ

 

 

 

今思えば、それがあいつを引き寄せたんじゃないかと思う

 

 

 

ある日、私はいつもの様に情報収集をしていると、そいつが話しかけてきたのだ

 

 

 

「お主、全てを取り戻してみたくはないか?」

 

 

 

そしてその言葉が、私の道を大きく歪めた

 

 

 

 

 

王異伝其五

 

 

 

 

 

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五胡から戻った私と花栄、武松は、一路許昌へと戻って来た。

私がしておかねばならない事をしなければならないからだ

 

許昌の街に着く頃には既に夕方だった。

夕焼けが街を茜色に染めている。

その光景を美しいと思うと同時に、懐かしいとも感じていた。

まさか、もう一度この景色を見られるとは思っていなかったからだ

 

花栄「それにしても、ホントにやるんですか?聞く限り、五胡の代表拉致るより難易度高いんですけどー」

 

花栄がブツブツと文句をたれていた。

だが、それもそうだろう。いま、私がやろうとしている事は文句が出てもおかしくない

 

咲希との試合

 

私の目的の為に、これは経験しておかねばならない事だろう。

そうでもしないと、ヘタを打った時、あの怪物を仕留めきれないかもしれない

 

友紀「いいから、頼むよ。あいつが来たら、私があいつの気を引く。その隙に爆矢を撃ちまくれ。いいな?」

 

花栄「別料金っすよー」

 

花栄はブーたれながらも、屋根の上に上がり、身を隠した

 

さて、じゃああいつを…

 

 

きゃーーー!!?

 

 

友紀「!?」

 

突然、悲鳴が聞こえた。悲鳴のした方を振り向くと、街の住人が男に襲われていたのだ

 

友紀「チッ!」

 

私が助けに行こうとすると、その手を武松が止めた。

武松は私の手を掴みながら、よく見ろと促した

 

住人を襲っている男は、生気のない虚ろな目をして、ヨダレを垂らしながら人を襲っていた

 

友紀「!?まさかあれ…」

 

武松「…あぁ、徐福の準備が整った」

 

………あぁそうか、そういう事か。

五胡で事を起こせということは、もうあいつの準備は済んでいたんだ。

三国を乗っ取る為の準備が…

 

今頃洛陽は制圧されているだろう。私自身も、その助力をしてしまった。もう後には引けない

 

一度深呼吸をする。心を落ち着かせ、目の前で起こる狂気に目をそらす

 

友紀「……武松、お前も配置に着いてくれ」

 

武松「了解した」

 

武松も屋根の上に登る。

それを確認した私は、徐々に燃えつつある許昌の街の中で、あいつに向けて殺気を放った。

その殺気が、本当にあいつに向かって放てている事を信じて

 

 

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程なくして、そいつは現れた。そいつは私を見ると、ニタァと歪んだ笑みを浮かべていた

 

【晋】最強の女、司馬師こと咲希

 

私は気を引き締める。ここからは、少しの油断も許されない

 

咲希「よぉ、久しぶりだな、友紀」

 

友紀「………」

 

目の前の女の一挙一動に目をやる。少しでも動いたら、私もすぐに動かなければならない

 

咲希「これはお前の仕業か?」

 

その問いに、私は少し困惑してしまう。

これとは恐らく、この暴動の事を指しているのだろう。

私がこんな事をする筈ないだろと叫びたい。

曲がりなりにも、私はここを気に入っていたのだ。

無関係の人間を傷付ける趣味もない

 

友紀「さぁ、知らないな」

 

だが、私はそう答えるしかない。少なくとも、私もこれに関わっている一人ではあるから

 

咲希「お前…どうしてここにいる?」

 

しまったと思った。たった一言喋っただけで、こいつに見抜かれてしまっていた。

忘れていたが、こいつは感情を読めるのであった。

恐らく、私の感情を読んでこの暴動が私の預かるべき所ではなかった事に気付いたのだろう

 

そして、それと同時にもう一つ失策していた。

あいつに伏兵は意味がない。

武松の隠しきれない殺気と、花栄の存在にも気付いている

 

気を引かなければ

 

友紀「私がここに居る理由は、お前に会いに来た為だ。お前を、倒す為に!」

 

そんな気はないし、倒せるなんて思っていない。

だが、ダメージを与え、あいつがある技を見せてくれないと、私は帰れない

 

私は二刀の小太刀を引き抜き、全速力で咲希に接近する。それと同時に花栄も弓を構え、矢を放った。

咲希はそれに気付き、放たれた矢を掴んで止めるが…

 

 

チュドーン!

 

 

咲希が矢を潰した瞬間、爆発した。爆音が耳を刺激し、爆炎が咲希を覆う。そこへさらに一発二発と、花栄は容赦なく爆矢を放った

 

咲希の体が少しよろける。私はそれを見逃さず、小太刀を握り締め、それを振るっていく。

二刀の小太刀が咲希を傷付けていく。それは、小太刀に着いた血が証明していた

 

友紀「あああぁぁぁぁ!!」

 

私は気合いを入れるように叫び、全身全霊の力で咲希を蹴り上げる。

空中に浮いた咲希の体は脱力仕切っており、そこへ武松が全力で咲希を殴りつけた

 

殴り堕とされた咲希の体は凄い速さで地面に叩きつけられる。落下地点から衝撃波が発生し、砂塵が舞う

 

友紀「手ごたえは?」

 

着地した武松に語りかける。武松は澄ました顔で拳を眺めていた

 

武松「骨を砕いた感触はあった。常人であれば間違いなく致命傷だろう」

 

花栄「と言うか、私の爆矢受けて原型留めてる時点でおかしいですけどねー。小さい小屋くらいなら、木端微塵になるくらいの火薬量なんですから」

 

武松に続くように、花栄が付け足した

 

私自身も手ごたえはあった。

それは小太刀に付着した血の量を見ても明白だ。べっとりと、深く切り裂かれている。

普通ならこれで死なない奴はいない

 

そう、普通なら…

 

砂塵が晴れていく。私も花栄も武松も、晴れていく砂塵の中心部を注視していた

 

そいつは立っていた

 

血を流し、全身の至る所を火傷してなお、五体満足で立っていた

 

そいつは深く息を吸い、そして吐く

 

下を向いていたあいつは頭を上げ、私達を見て口元を歪ませていた

 

とても愉快に、喜色を混ぜて

 

花栄・武松「っ!?」

 

瞬間、花栄と武松の表情が固まった。

表情には出ていないが、瞳には確かに、恐怖の色が滲み出ていた

 

咲希「…瞬間回復」

 

咲希が呟いたと同時に、咲希の体を氣が覆い、体にあった火傷痕が消え、切り傷が瞬時に塞がっていった

 

咲希を最強だと示す技の一つ、瞬間回復だ

 

そしてそれこそが、今回の私の目的だ

 

咲希「今のは良い連携だ。爆矢で先制を取り、友紀に切り刻まれ、最後の拳で肋骨を全て持っていかれた。まぁ、回復したがな」

 

咲希は楽しそうにそう言った。それと同時に、咲希の体から黒い氣が放たれる

 

花栄「ちょ、ちょっと冗談じゃないですよ。聞いていた以上に化け物じゃないですか…」

 

武松「あれで本当に人間か?」

 

人間?いや違う。分類上は人間かもしれないが、あれは間違いなく鬼か悪魔の類だ。

異常な力と、異常な回復力を備えた、生粋の化け物だ

 

咲希「さぁ、来いよ。お仕置きの時間だ。だがまぁ、お前達はさっきの一手で仕留めなければいけなかった。お前達の動きはもう見切っている」

 

咲希に挑発され、ビビる花栄と怒りを露わにする武松。

私は前者だ。それに、目的は達したんだ。これ以上こいつに付き合う気はない

 

友紀「花栄、武松、逃げるぞ」

 

武松「何!?売られた喧嘩を買うなと言うのか!?」

 

花栄「武松さーん?あれは無理ですよ。人の皮を被った形容し難い何かですよ。私達の手に負えません」

 

武松「我ら梁山泊なら尚のこと、あれを放って置くことはならないだろう!悪鬼は必ず討つ。それが梁山泊の矜持じゃないのか!?」

 

花栄はまだ逃げる気があるが、武松はもう使い物にならない。恐怖に当てられ、正常な思考が出来なくなってる

 

花栄「あぁもう、なら一人でどうぞ。私はあんなのごめんですよ」

 

武松「腰抜けが…好きにしろ」

 

武松は単身、咲希の前に立った。

何秒持ってくれるかわからんが、精々逃げる時間くらいは稼いでくれよ

 

友紀「お前が正気で助かったよ、花栄」

 

花栄「……正気?私は正気なんですかね?」

 

花栄の体は震えていた。もう、意識を保つのも限界だと言わんばかりに顔が青い。

私はそんな花栄を見兼ねて、担いでやる事にした

 

咲希「おいおい、逃げるのか?」

 

友紀「あぁ。お前とガチでやれるか。じゃあな咲希。お前の瞬間回復、頂いたぜ」

 

咲希「!?チッ…そういう事か」

 

武松「オオオォォォォ!!」

 

私は武松が突っ込んで行ったと同時に、咲希とは反対方向に全力で駆け出した。

出来るだけ遠くに遠くに、そう思いながら駆けていくと、途中背後から爆音が聞こえた

 

 

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花栄を担いだまま走り続けると、いつの間にか許昌の外へ出る事が出来た。

事前に用意していた馬の元まで行き、花栄を馬に乗せてから私も馬に乗る。

そして馬が走り始めた所でようやく緊張の糸が切れた

 

友紀「はぁっ…はぁっ…くっ…はぁ…はぁ…」

 

盛大に息が切れる。体が空気を欲していた。

体内に酸素を取り入れれば取り入れるほど、生きているという実感が戻ってくる。

本当に、死ぬかと思った

 

友紀「おい…はぁ…はぁ…花栄…はぁ…無事か?」

 

返事はない。

花栄は辛うじて手綱を握っているようで、こちらを向いても笑う程の気力はなかったようだ

 

花栄「むしろ…あなたはなんで、そんなにも平気なんですか?」

 

平気?バカ言え。さっきまで全く生きた心地がしなかった。

だが、確かにそうだな。初見の奴らに比べたら、慣れがある分まだマシなのだろう

 

花栄「ホントに、こんな事する必要…あったんですか?」

 

だいぶ調子を取り戻してきたのだろう。花栄の顔色が幾分か良くなりつつある

 

友紀「さぁな。念のための保険だ。化け物を討つには、化け物の力が必要なんだよ」

 

もうすぐだ

 

もうすぐで私は、全てを取り戻せる

 

友紀「さぁ、気を引き締めるぞ」

 

私達は馬を走らせた。最後の決戦の舞台になるであろう、洛陽へ…

 

 

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咲希視点

 

 

 

咲希「逃げたか」

 

友紀の後ろ姿を見て、そんな事を呟いてみる

 

正直、その気になれば追い付く事もできるだろう。

そして追い付いてしまいさえすれば、友紀を捕獲する事も容易い

 

ちょうど、私の足元にいるやつみたいに

 

武松「クッ!あ、あああぁぁぁ!?」

 

私の足の下で、ジタバタと動く友紀の同伴者。

動きのキレも、パワーも十分だが、いかんせん防御面がお粗末だった。

一度組み伏してしまえば、もう二度と抜け出せないだろう

 

しかし、このまま暴れられても面倒かので、私は思い切り踏ん付け、意識を奪う事にした。

グシャリという音と共に動かなくなり、静かになってくれた

 

咲希「さて、追いかけてもいいが…」

 

私自身は、あいつにそこまでの興味はない。

それに、あいつを倒そうと必死に力をつけ始めている凪紗の存在もある。

ここで私が倒してしまっては、凪紗の努力も報われないだろう

 

咲希「まぁ、いいか。お父様成分が足りない」

 

結局、追うのはやめることにした。猛烈に面倒臭くなってしまった。

それに、足元にいるこいつにも、どうやら一癖ありそうだし。

まずはこいつを【晋】に連れ帰らないとな

 

 

 

説明
こんにちは!
Second Generations王異伝其五
王異VS司馬師
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コメント
いえ、友紀は他人の技を一度見れば覚えるだけです。ただ、魔力を使うようなものは覚えられないけど…という感じです!(桐生キラ)
え?どういうこと?能力が奪われたってこと?友紀にそんなことができるのか!?(ohatiyo)
タグ
真・恋姫†無双 オリキャラ 王異 司馬師 

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