【獣機特警K-9UG】トリッカーズと挑戦状(後編)【交流】
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ウェスト・ベア・タワーの裏手は高層ビル群に囲まれた暗闇である。

人っ子一人いないような暗がりの中に集まったトリッカーズは、侵入のタイミングをうかがっていた。

 

「こちらバニー、ビルの裏についたよ」

「同じくラピヌ。いつでもOKよ」

「ルプスだ。こっちもいつでも行けるぜ」

「こちらヴィクセン。こちらも準備完了よ。どうぞ」

「OK!じゃあ始めるわよ…。ふっふっふ…思い知らせてあげるわ。トリッカーズの前にはどんな警備システムもムダだってことをね!」

 

ビルを見つめながら呟くディア。だが、よく見ると彼女たちの瞳はやや虚ろで、人工的な輝きを見せていた。

これは一体どういうことだろうか!?

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同時刻、一台のトラックがタワー前にやってきた。

「お疲れ様です熊崎さん。それにラミナ警察署の皆さんも」

「おや、君らは見ない顔だが?」

「はい、ウェスト・ラミナ広域交番所属の警部、((樹津|きつ))((芹香|せりか))と申します」

「同じく警部補の((月河|つきかわ))((雪子|ゆきこ))です」

「同じく警部補の((黒田|くろだ))((鷹三郎|たかさぶろう))ッス」

テムナは首をかしげながら樹津と名乗る警官たちのほうを見つめていた。

「なんや道理で見たことない顔やなー思たわ。なぁミウ?」

「まぁ、あたしらだって全部を全部把握してるわけじゃないしね」

「ところで樹津さんたちはどうしてここへ?」

アードが質問を投げかけると、樹津はにこやかな笑みを浮かべて答えた。

「はい、ここにトリッカーズの犯行予告が届いたとの…」

 

…ビルから離れた、やはり人気のない茂みの中。

「どう、バニー」

「ビンゴ。すっかりダマされてるよ」

そこにいたのは『本物の』怪盗ディアと怪盗バニーである。

「まさかこれからビルに侵入しようとしてる『あたしたち』が偽者だとは誰も気づかないんじゃないかな?」

「そちゃあもちろん!隅々まで再現してもらっちゃったからね。テレジア博士に高いお金払った甲斐があったってもんだよw」

「いい、バニー。ここはいかに警備システムと熊崎さんたちを騙せるかが重要だからね。頼んだわよ」

「おっけー!」

 

そう、実はビルに侵入しようとしているトリッカーズは本物ではない。彼らに似せて作られたマリオネットなのである。

そんなマリオネット・トリッカーズはビルの裏手から侵入を始めた。

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数分後、ビルの前では動きがあったようだ。

「お、どうやら、早速かかったみたいですよ」

「みたいですな。モニターで見てみましょう」

熊崎はノートパソコンを取り出すと、警備システムの回路にアクセスを始めた。

 

「監視カメラ…と。おー、やはりかかっているみたいだな」

熊崎が監視カメラの映像を見ると、そこにいたのは警備システムに引っかかり、身動きが取れなくなっているトリッカーズ。

「ジタバタもがいてますねー…」

「ねえ熊崎さん、せっかくだから…彼らの吠え面でも拝んでやりましょうか?」

「はっはっは、じゃあ音声回路つなぎますよw」

熊崎がカメラの音声回路をつなぐと、トリッカーズたちの叫び声が聞こえた。

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『くそーっ!さすが最新の警備システムだ、手も足もでねえ!』

『油断したわ…まさかこんな巧妙なトラップだったなんて…』

『あーん!どうしよう…これじゃ身動きできないよう…』

 

「でもなんかあっけなさ過ぎやしません?」

「なーに、最新式の警備システムですからなあ。トリッカーズぐらい簡単に捕まえられますよ。さ、あとはあなたたちにお任せします」

「よっしゃ!トリッカーズめ待ってろよ!」

そう意気込むミウの肩を、月河が叩く。

 

「ミウさんミウさん」

「ん?なあに月河さん」

「そのトリッカーズなんですけど、あたしたちが確保してきます」

「あと熊崎さん、木彫りの熊も我々が回収してきますので」

「そうですか、じゃあお願いします」

かくして、樹津、月河、黒田の3人はトリッカーズを確保すべく、ビルの中へと入っていった。

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…さらに数分後。

「お待たせしました。ミウさん、どうですかこのトリッカーズの悔しそうな顔」

月河と黒田の両肩には、がっくりとうなだれるトリッカーズの面々。

「んー、やっぱ警備システムの威力はすごいなあ…」

「ホンマやねえ。あのトリッカーズが一網打尽とはね…」

「いやあ、それにしても熊崎さん、なかなかお見事な腕前でwww」

「いやいやそれほどでもwww」

と、大笑いする熊崎に、樹津が声をかける。

 

「では、この木彫りの熊は私たちがご自宅までお送りしますので」

「ええ、頼みます」

「おら、さっさと乗れよトリッカーズども!」

こうして、逮捕されたトリッカーズを乗せたパトカーは、闇の中へと消えていった。

 

「やっぱりあたしらの出番なかったんじゃ…」

「言うなアード…ウチらまで悲しくなるやろ」

「…しかしあっけなさ過ぎる。なんかイヤな予感しない?」

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…さて、走っているパトカーはしばらく道を走ると、幹線道路を離れた茂みの中へと入ったところで動きを止めた。

そしてそのパトカーを出迎えていたのは…。

 

「マリオネットの回収終わったわよ」

「木彫りの熊もねw」

と、中から出てきた樹津、月河、黒田の目の前にはディアとバニーが立っている。

「なかなかの演技だったわよ」

「へっへっへ、そうかい?」

ディアの言葉を受け、樹津ら三人は自分の首筋に手をかけると、思い切り上に引っ張った。

そう、彼らの正体こそ、本物の怪盗ヴィクセン、ラピヌ、ルプスだったのである!

 

「それにしてもバニーもよくがんばったな」

「えへへへーw本物っぽくマリオネットを操作するのも大変だったけどねw」

「さぁ帰りましょ!メッセージカードも忘れずにね!!」

「だけどディア、この熊返さなくっていいの?」

「いいのよ。相手をギャフンといわせるのが目的なんだから。今回はあたしらの気が晴れればそれでいいのww」

「あ、それもそうかw」

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…同時刻、ビルの前。

「イヤな予感って?」

「まさか、トリッカーズは先ほど逮捕されたのでは…」

「いいや熊崎さん。こんなにあっさりあいつらがお縄につくなんて絶対何かおかしいよ。イヤな予感がする…」

と、ミウが言いかけたそのとき、上空から地面に一枚のカードが刺さった!

 

「こ、これは…」

「トリッカーズのカードやん!あいつらお縄になったんとちゃうのんか!?」

騒ぎ立てる警官隊をよそに、熊崎はカードを拾い上げる。

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熊崎さんと愉快な仲間たちへ

 

どうやら、今回の勝負はあたしたちの勝ちみたいですね。

実は先ほど現場に来た三人の警官が、本物のトリッカーズだったんです。

木彫りの熊、確かにもらいましたよ。チャオ♪

 

                   トリッカーズより

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「や、やられたぁぁぁぁぁぁぁぁ…あの新米警官がトリッカーズだったなんてぇぇぇ…」

思わず地面に膝をつき、力なく叫ぶ熊崎。

「ちくしょう!どうもイヤな予感すると思ったんだーっ!!」

かたや、拳を握って空に向かって怒鳴るミウ。

 

「ああ、自信作の木彫りの熊がぁ…」

がっくりとうなだれる熊崎の背中に、テムナはそっと手を置きながら声をかけた。

「まぁまぁ、人生なんてそんなもんですわ熊崎さん。全部が全部思い通りっちゅうワケやない。完璧な人間なんていてませんって」

「そ、そうだね……」

と、テムナの声に熊崎は顔を上げると、声を張り上げて言った。

 

「警備システムはまだまだ改良の余地があるぞ!それに木彫りの熊も、また彫ればいいんだ!!ようし、勝負はここからだーっ!!」

「「「立ち直り早ーーーーーーっっ!?!?!?」」」

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かくして、この前代未聞のとんでもないバトルは、トリッカーズの勝利に終わったわけであるが、

懲りずに闘志を燃やす熊崎に対して、ミウ、テムナ、アードの3人はただ何も言えず呆然としているだけでしたとさ。

お後がよろしいようで。

説明
熊崎さんのコンセプトは「なんか愉快なおっさん」。

◆出演
トリッカーズの皆さん
ミウ:http://www.tinami.com/view/610063
テムナ:http://www.tinami.com/view/610065
アード:http://www.tinami.com/view/691435
テレジア博士(名前のみ):http://www.tinami.com/view/617442
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コメント
きっと熊崎さんのことだから懲りずに挑戦状を叩きつけたりしてwwwww(古淵工機)
やはりトリッカーズ[やつら]は一筋縄では行かなかったw 「勝ったと思った瞬間負けている」の典型的な例ですなw(Ν)
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