咎を受けし御使いの最後の旅〜二人の御使いと二人の劉備〜
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 咎を受けし御使いの最後の旅〜二人の御使いと二人の劉備〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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小覇王と賢王

 

 

 

 

 

 

 

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 江夏城の正門から5キロほど離れた場所に布陣する冥軍の元に、江夏に援軍の軍勢5万が入城したと報告が来て二十分後、大天幕に今回の攻撃に参加する将が集まっていた。ちなみに将の数が多いので参加しない将は後方で輜重隊の指揮をしている。

 

 今回の攻城戦に参加するのは総大将の雪蓮。軍師に風。武官筆頭に一騎、副官に華琳。その下に斗詩、季衣、流琉、霞、香風が名を連ねた。春蘭、秋蘭、柳琳、栄華、華侖と言った面々は輜重隊の護衛に回っていた。凪はハウスでお留守番。

 

 そして軍議が始まった。

 

 雪蓮「さてと・・・これから江夏を攻めることになるんだけど・・・風。」

 

 風「はいは〜い。何故援軍が来るのを待っていたか?ですよね〜。それはですね〜敵の戦力を小分けにして確実に減らすためです。」

 

 雪蓮「報告では総兵数は三十五万は居るって聞いてるけど?」

 

 一騎「まあ、こっちはたかだか三万だからな。そりゃあ減らしたい。」

 

 風「そうなんですよね〜。まあこちらの兵は三万でも十分な兵力ですので心配はしてませんが・・・というよりお兄さんがいる時点で敵の兵力はあって無い様な物・・・」

 

 華琳「風、それは一騎のプライドが許さないからこうして人の戦に興じているのよ?兵達を一線級の実力まで引き上げる事はしても魔法の類は使いたくないと言うのをちゃんと理解してあげなさい。」

 

 風「分かってますよ〜。だからこうして策を弄しているんじゃないですか〜。ではではこれより攻城戦の配置等を説明して行きましょう〜。」

 

 一騎「俺は一応風から事前に相談されていたから内容は知ってる。だからあらかじめ言っておくぞ?俺は今回の戦は基本戦場に出ない。斗詩、季衣、流琉、香風。四人の実力を見る。何処まで強くなったか見せてもらうぞ?」

 

 風「そう言う訳です〜。ちなみに雪蓮さんも先陣ですよ〜。嬉しいですか?」

 

 雪蓮「うれしい!」

 

 華琳「言うと思ったわ・・・」

 

 風「風は周瑜さんみたく雪蓮さんの手綱はうまく引けませんからね。中央に雪蓮さん、斗詩ちゃん。左翼に季衣ちゃん。右翼に流琉ちゃんでお願いします〜。」

 

 霞「ウチと香風はどうすんねん?」

 

 風「遊撃隊として中央に布陣してください〜。」

 

 香風「遊撃・・・機動力が無いと駄目だから?」

 

 風「そうですよ〜。香風ちゃんは武に関しては申し分ありません。ただ・・・力に関してだけです。速度を今回は見せて下さいね〜。」

 

 香風「分かった。」

 

 流琉「季衣、私が傍に居ないんだからしっかり周りを見て判断してね?」

 

 季衣「分かってるよ。流琉こそ僕が居ないんだから油断しないでよ!」

 

 配置は決まり、兵の振り分けも終わった所でそれぞれの隊の所に散っていった。一騎は華琳と共に、それぞれの隊の編成状況や、兵達のメンタルケアに奔走した。

 

 部隊編成が終わり、冥軍の最初の戦が始まる。

 

 その進軍の報がいち早く、孫権軍に知らせが行ったのは周囲の敵斥候を重要な情報以外は分かってても放置を事前に決めていたからなのだが、それは孫権が知る由もない。

 

 

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 江夏城前。

 

 進軍を開始して数時間後。雪蓮が前に出て口上を述べる。

 

 雪蓮「我が名は孫策伯符。冥国よりこの呉を攻略するために総大将として此処に立っている!冥国は此処より大陸に覇を唱えると知れ!反董卓連合の戦いで彼の者ケ艾士載を見た者は覚悟せよ。この戦にて彼は居ないが、彼に鍛えられし将兵が貴様等に地獄を見せることだろう。これより冥国の戦いを貴様等の魂に刻むと知れ。全軍・・・攻撃を開始せよ!!」

 

 冥全軍「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」

 

 雪蓮の号令と共に全軍が江夏に向かい進軍を開始した。敵は籠城を選択しているが、それも関係無しに彼らは進む。

 

 雪蓮「さてと、私達は正面切っての攻城戦になる訳だけど・・・どう見る?斗詩。」

 

 斗詩「そうですね・・・門に張り付ければ私の鉄槌で壊す事も出来と思いますし、いざとなれば一騎さんから預かった双幻で細切れに出来ますから。」

 

 雪蓮「えげつな〜。でもそれが一番か。全体に通達。敵の矢をかいくぐり、正門へと取り付く。出来るな?」

 

 冥兵「我ら大盾隊に防げぬ物など有りません!」

 

 雪蓮「ならばそれを見せてみろ!突撃!!」

 

 雪蓮の号令により、孫策隊は正門に向けて突撃する。降り注ぐ矢を防ぎながら・・・

 

 正面で孫策隊に矢を放つ隊は太史慈隊。その旗を見た瞬間雪蓮は顔を一瞬歪ませたが、すぐに切り替え攻撃を指示した。

 

 雪蓮「相手は梨晏かぁ・・・正直会いたくないなぁ。でも、仕方ないか!さぁて。死合うわよ〜!!」

 

 孫策隊(((((めっちゃ嬉しそうだなぁ・・・)))))

 

 右翼左翼も順調に城壁へ攻撃を仕掛けていた。

 

 斗詩「雪蓮さん。季衣ちゃん、流琉ちゃんの部隊が城壁に取り付きました。それと同時に左翼には周の旗が、右翼には甘の旗が当たるようです。」

 

 雪蓮「今のあの子たちなら問題ないでしょう。それよりも・・・うざったい矢ねぇ。」

 

 雪蓮は飛んでくる矢を弾きながら正門へと軍を進めるが、やはり兵力差から来る矢の数はどうしようもない。しかし此処はさすが一騎が育てた冥軍きっての精鋭大盾隊。指揮官格の樹や叢雲が居なくともその実力は発揮された。負傷者の数も少なく、城門に取り付くと今度は斗詩が前へ出る。

 

 斗詩「後は私に任せてください。せ〜の!えぇぇぇい!!!」

 

 ドォォォン!!!

 

 ビシビシィ・・・ガラガラ。

 

 斗詩の鉄槌の一撃で城門がまるでガラス細工のごとく粉々に崩れ去ってしまった。

 

 雪蓮「全軍突撃。敵兵を屠りながら要所の制圧を行いなさい。斗詩、貴方は太史慈の足止めをお願い。私は愚直な愚妹を相手するわ!」

 

 斗詩「分かりました。えっと・・・捕らえたほうがいいですよね?」

 

 雪蓮「無理に捕らえなくていいわ。いざとなったら逃がしてあげて。どうせ最終的に捕まえることだし♪」

 

 斗詩「た、楽しそうに言いますね・・・ですが分かりました。ではこれにて!」

 

 雪蓮「よぉし。覚悟しなさい蓮華!」

 

 こうして城内に突入した雪蓮達一行はそれぞれ将の確保へと動き出した。

 

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 場所は変わって右翼。流琉が担当する城壁にはもう梯子が掛けられ、兵が場内に進入を果たしていた。左翼も城門の上に許の旗が右往左往している所から城壁上には侵入を果たしているようだった。

 

 流琉「皆さんは兵士の捕縛を最優先してください。殺さず、生かしたままこの兵力差を埋める事は冥軍の力を大きく示すことになります。皆さんの実力を示す時ですよ!!」

 

 典韋隊兵(一部)「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 流琉「・・・・・・ちなみに成功した暁には皆さんに天和さん達のライブ招待券プレゼント。」

 

 典韋隊兵(全部)「「「「「ほわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」」」」」

 

 流琉「あれぇ!?一部だと思ったら全部釣れた!?」

 

 甘寧「変な士気の上げ方をする奴がいた者だな。」

 

 流琉「っ!?貴方は?」

 

 甘寧「甘寧だ。貴様は冥軍の将か?まだまだ子供じゃないか。」

 

 流琉「残念ながら子供と侮っている貴方に負ける道理はありません。甘寧さん・・・覚悟してもらいます。悪来典韋、参ります!!」

 

 シュゥゥゥゥン

 

 流琉はそのまま氣を練ると武器に流し充填する。

 

 甘寧「貴様、氣を扱えるのか?」

 

 流琉「私だけではありません。冥軍の将は氣の使い手しかいませんよ?なので・・・さっさとやられてください!!」

 

 ギュオォン!!

 

 甘寧「く!?」

 

 ガキィン!!

 

 流琉「受け止めるのは愚策です。残歌流転斬!!」

 

 ギュオォォォン!!

 

 甘寧「な、なにぃ!?」

 

 ギャリリリリ!!!!!

 

 甘寧「こ、このままでは!?」

 

 甘寧は突然の攻撃に回避が追いつかず、その攻撃をまともに受け止めてしまっていた。流琉はそのまま残歌の特殊効果を発動させ、そのまま押し込もうとするが・・・

 

 呉兵A「か、甘寧様はやらせん!うおおおおおおおおおお!!!」

 

 その戦いを見ていた呉の兵がそのまま残歌にそのまま覆いかぶさるように突っ込んでいった。

 

 流琉「な!?そ、そんな事をすれば!」

 

 呉兵A「があああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 甘寧「く・・・」

 

 呉兵は見るも無残にバラバラに切り刻まれ、甘寧はさすがに直視できなく目を逸らしていた。

 

 流琉「敵ながら見事です・・・ですが、良い目くらましになってくれました!」

 

 そのまま流琉は残歌を引き戻すと今度は高くジャンプすると地面に向けて残歌を投げつけた。

 

 甘寧「何処を狙っている!」

 

 その攻撃は甘寧の後ろへと延びていったのだが、そのまま残歌は地面に当たる寸前でぴたりと動きを止めた。

 

 甘寧「なに?」

 

 流琉「残歌・・・大暴閃!!」

 

 ギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!

 

 甘寧「がぁあああああ!?!?!?」

 

 甘寧の後方で残歌が氣の斬撃で地面を抉り、甘寧の背に拳大の瓦礫が襲いかかった。一つ二つと叩き落としながら防御する甘寧だが、数があまりにも多くさばき切れず、見事に額に一ついい音を響かせながらクリーンヒットした。

 

 スコーン!!

 

 甘寧「ぐが!?」

 

 ドサ。

 

 流琉「ふぅ・・・さあ、次は貴方達です。バラバラになりますか?それともぐちゃぐちゃになりますか?それとも・・・負けを認めて生き残りますか?」

 

 呉兵B「く・・・Aの死を無駄にしたくないが・・・」

 

 呉兵C「甘寧様が勝てなかった相手だぞ?それこそ無駄路にするようなものじゃあないか・・・」

 

 呉兵D「・・・投降する。だから甘寧将軍の事は・・・」

 

 流琉「甘寧さんの事は安心してください。では武器を捨ててその場に座っていてください。兵の皆さん。投降した敵兵は縛する必要ありません。そのまま本陣に連行して兄様に監視をお願いしてください。」

 

 冥兵A「は!」

 

 冥兵B「縛しなくていいのか??だがケ艾様に何かあったら・・・」

 

 冥兵C「お前新入りか?ケ艾様に限ってそれは無いよ・・・」

 

 冥兵D「そうだな・・・むしろそんな気概を見せる敵兵が居たら・・・」

 

 冥兵E「嗤って殺しそうだな・・・」

 

 呉兵(((((ぜったい敵大将には逆らわないようにしよう!!!)))))

 

 冥兵の話を聞いて呉兵の総意は“絶対ケ艾に攻撃しない”だった。

 

 流琉「さてと・・・一部の兵は私について来て下さい。私達は地下牢と兵舎を抑えます。」

 

 冥兵「「「「ほわー!!」」」」」

 

 流琉(一部が天和さん達のファンクラブの人達だったかぁ・・・)

 

 こうして流琉は甘寧を捕らえ、自分の割り当てられた場所の制圧に向かった。

 

 

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 場所は変わって、左翼。季衣と周泰の戦闘がいつの間にか開始され、周囲はもう穴だらけになっていた。

 

 季衣「どぉりゃああああ!!!」

 

 周泰「当たりません!」

 

 季衣「廻れぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 がががががががが!!!!!

 

 周泰「あいたたたたた!?!?!?」

 

 季衣の投げた挽歌は周泰にかわされ、地面にめり込んだ。そのまま追加効果を発揮させ地面を抉り石つぶてを周囲にぶちまけた。

 

 季衣「くっそぉ。流琉の残歌みたいな大きなのは飛ばせないかぁ・・・」

 

 そう言いながら落胆する季衣だったが、周泰はそうでも無く・・・

 

 周泰「地味に痛いです!瓦礫が皮膚に当たってバチバチ音がなってますよ!?」

 

 そう言い放つ。確かに肌は細かく赤く腫れている。痛そうだ。

 

 季衣「うわぁ・・・それは痛そう。だったらもっとやるね!」

 

 周泰「やらないでください!?」

 

 季衣の無慈悲な言葉に突っ込む周泰

 

 季衣「えぇ・・・それじゃあつまらないじゃないか!!」

 

 周泰「見た目に似合わず酷い性格ですね!?」

 

 季衣「驚きつかれない?」

 

 周泰「誰のせいですか!誰の!!」

 

 季衣「・・・雪蓮さん?」

 

 周泰「そうそう雪蓮様の行動には冥琳様で無くても頭を悩ませ・・・って違います!」

 

 季衣「そうか〜雪蓮さんに報告しとくね〜。」

 

 周泰「はぅあ!?それは困ります!!って・・・何処に行こうとしてるんですか!?」

 

 ボケと突っ込みの応酬を繰り返す季衣だったが、その隙にさっさと抜けてしまおうと考えていたらしい。周泰に見つかり残念な顔を浮かべた。

 

 季衣「あ、ばれた・・・仕方ないなぁ・・・やっぱり周泰さんを倒さないと駄目みたいだな〜。」

 

 周泰「ば、馬鹿にされてる気がします・・・」

 

 馬鹿にしています。

 

 季衣「あ!?危ないよ子猫ちゃん!!」

 

 周泰「お猫様!?」

 

 季衣「よっこいしょっと!」

 

 ズドーン!!

 

 周泰「あっぶない!?」

 

 雪蓮に聞いていた周泰の弱点を付いて気を逸らし、攻撃を加える季衣。だがそれはぎりぎりの所で回避されてしまった。

 

 季衣「あ、また避けられた・・・」

 

 周泰「ひ、卑怯ですよ!」

 

 季衣「え・・・隠れて情報を集めてあまつさえ暗殺までする人に卑怯呼ばわりはされたくないなぁ・・・」

 

 周泰「それを言われると弱いです!?」

 

 隠密の苦しい所を付かれた周泰はさすがに言い返せなかった。

 

 季衣「と・・・言ってるまに増援到着。」

 

 周泰「へ?」

 

 香風「どっせい。」

 

 周泰「はぅあ!?」

 

 ズガン!!

 

 周泰「無表情で似合わない掛け声を抑揚なく言いながらとんでもない攻撃です!?」

 

 彼女の言う通り、香風は後ろに無表情に立ち、無表情で武器を振り上げ、無感情に『どっせい。』と淡々と言い放ち。無表情に武器を振り下ろしたのだった。

 

 季衣「周泰さん・・・本当に疲れない?台詞のほとんどが叫んでるよ?」

 

 周泰「だから誰の所為ですか誰の!!」

 

 香風「全てのボケは私の所為。」

 

 壮大な事実だった。世界で起こるボケのすべては香風の所為らしい。シラナカッタナー。

 

 周泰「それはそれですごいですね!?」

 

 季衣「と、言う事でよろしくね霞さん。」

 

 霞「そう言う事にしといてやるわ。」

 

 周泰「へ?」

 

 霞「ほいお疲れさん。」

 

 ゴツン!

 

 周泰「キュウ」

 

 最終的に正門から入り込んだ霞が周泰の後ろに回り込み、拳骨一発で気絶させ、そのまま確保した。周囲の兵は許?隊、徐晃隊、張遼隊に完全制圧されていた。

 

 季衣「じょこたん。霞さん。僕はそのまま宝物庫と食糧庫の制圧をして来るね〜!!」

 

 二人「「ん、わかった。」」

 

 そのまま季衣は宝物庫と食糧庫の制圧に向かっていった。

 

 霞「・・・季衣に食糧庫とか采配まちがっとるやろ・・・」

 

 そんな霞の呟きが周囲の喧騒に呑み込まれていった。

 

 

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 此処は正門側の城壁の上。そこには斗詩と太史慈がにらみ合っていた。周囲の兵二人の一騎打ちを手を出さずに見ているように言われ、それぞれ後ろに盾や武器を構えながらにらみ合っていた。

 

 太史慈「さて・・・雪蓮は?」

 

 斗詩「雪蓮さんなら孫権さんの所ですよ。私は貴方を止めておくように言われてます。」

 

 太史慈「はっ。顔良ごときが私を止められるとでも?」

 

 斗詩「昔も私なら無理です・・・ですが私は強くなりました。この双幻の使い手として認められこうして授かった以上・・・簡単に負けられません。そして・・・勝ちます。」

 

 太史慈「言うじゃないか!覚悟しな顔良!!」

 

 二人「「はああああああ!!!」」

 

 太史慈の双戟と斗詩の双剣がぶつかり派手に火花をとびちらす。

 

 太史慈「へぇ、なかなかやるね。ならこれならどうだ!」

 

 交互につきだされる突き攻撃を斗詩は回避と受け流しを駆使して対処する。

 

 斗詩「は、せい、はぁ!」

 

 斗詩も負けじと突きや斬撃を織り交ぜながら交戦して行く。

 

 太史慈「はぁぁぁ!!」

 

 斗詩「せえぇぇぇい!!」

 

 ガリィ、ギャリン、ガギン。

 

 何十合と打ちあいながら時間だけが過ぎ去って行く。両軍の兵もそれをただじっと眺めていた。唯一つ変わった事と言えば、全員武器を下げ。完全に観戦モードに入っていると言う事だった。

 

 斗詩「せい、やあ、でぇぇぇい!!!」

 

 太史慈「く、はあ、ぐぅぅぅ!!」

 

 徐々に斗詩は太史慈を押し始めていた。

 

 斗詩「これで!」

 

 太史慈「いまだ!!やああああああああ!!!」

 

 斗詩「っ!?ふっ!」

 

 斗詩の渾身の一撃の隙を突き、太史慈の攻撃が斗詩に迫ったが、斗詩は双幻をうまくガードに使いながら回転し、太史慈の攻撃を往なす事に成功した。

 

 太史慈「な!?」

 

 チャキ。

 

 そのまま後ろに回り込んだ斗詩は太史慈の首筋に剣を突きつけ、そのまま最終通告をする。

 

 斗詩「私の勝ちです。兵に投降するように呼びかけてください。これに応じない場合、我が軍の兵が貴方達の大事な兵を殺しつくします。」

 

 太史慈「・・・・・・はあ。全軍武器を捨てて投降しなさい。兵の個々人の武も貴方達を凌駕してるのは明確よ。此処は生き残るために大人しくしましょう。」

 

 こうして正門上の戦いは斗詩の完全勝利を確定させた。後に斗詩は一番損害を出さずに出来たとして一騎にいっぱい褒められ、ご褒美を注がれたとか何とか・・・それはまた別の話。

 

 

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 雪蓮「・・・そろそろ向こうは終わるころかしら?」

 

 呂蒙「ここから先は行かせません。」

 

 雪蓮「貴方って確か・・・呂蒙だったかしら?」

 

 呂蒙「はい。よくご存じですね。」

 

 雪蓮「ふふ、こっちの間諜も優秀なのよ。」

 

 雪蓮の言っている間諜は一騎と藍の式神の事なのだが・・・そこは黙っていた方がいいだろう。

 

 雪蓮「私は蓮華に用があるのよ。」

 

 呂蒙「蓮華様はもう此処にはいらっしゃりません。建業へ撤退しました。」

 

 雪蓮「あ、やっぱり??やけに守備兵と近衛兵が少ないと思ったのよね。じゃあ貴方でいいわ。母さんに伝えてほしい事があるのよ。」

 

 呂蒙「・・・つまり私は逃げられると?」

 

 雪蓮「そうそう。私は絶対母さんを倒して呉を冥国に取り込む。これは父祖の地を守るためにも必要なこと。母さんなら大体察しはつくでしょう?って伝えてもらっていい?大丈夫・・・あの人は私よりも直観が優れていて、冥琳曰く軍師要らずの猛将だそうよ?さすがは江東の虎よね。」

 

 呂蒙「それだけですか?」

 

 雪蓮「言ったでしょ?それだけ伝えればほとんど伝わるの。ああそれと・・・」

 

 そう言いながら雪蓮は少し大きく息を吸うと、少し声を大きくして・・・

 

 雪蓮「蓮華は頭堅過ぎだから少し融通を効くようにしなさい。物事を柔軟に捕らえられなければただの堅い方の堅王になっちゃうわよ。賢い方の賢王になりたければまずは人の話をよく聞いて、自分でよく考えて、周囲の判断もしっかり聞く事。いいいわね!・・・・・・って伝えてね。」

 

 呂蒙「・・・わ、分かりました。」

 

 雪蓮「じゃ、行きなさい。これで私の仕事は終わりっと・・・さ〜て、一騎の膝枕で一献やろ~っと。」

 

 そう言いながら雪蓮は玉座の間の前から正門の方へと歩いて行った。

 

 

 

 呂蒙「・・・・・・聞いてましたか?蓮華様。」

 

 孫権「聞いてたわ。姉さまは何を考えて冥国なんかに・・・」

 

 呂蒙「それすらも自分で考えておけという事でしょう。私達は冥国の実力を過小評価してました。まさかこれほどまでとは・・・特に注意するべきは突出した将の実力もさることながら、他の兵を守るあの大きい盾を持った部隊ですね。」

 

 孫権「相手の戦力を分析できたのは良いことだわ。母様に報告に行きましょう。」

 

 呂蒙「はい。」

 

 雪蓮はどうやら孫権の存在に気が付いていたようだった。二人もそれを察知したのであえて確認はしなかった。孫権は戦力分析できたのは良かったと言ったが、それはまったくの見当違いだ。冥軍の兵はあくまで占拠した拠点の防衛隊。つまり守備隊なのだ。本当の冥軍の戦方法は・・・将のみによる全力殲滅戦闘であるのだから・・・

 

 

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 あとがき

 

 

 思春、明命、梨晏の三名を確保した冥軍。蓮華、亜莎は建業に撤退して行った。

 

 だがそこで待っていたのはとんでもない絶望だった。

 

 次回咎旅『建業の戦い』

 

 孫呉は小覇王と冥皇の力を目の当たりにする。

 

 

説明
孫呉攻略戦の初戦。江夏。そこで雪蓮はどんな戦いを見せるのか・・・

では本編どうぞ
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コメント
M.N.F.さん<むしろ一緒に閨に潜り込む算段をして、詠に咎められつつも実行してるに違いない。後で一騎に労って貰わねば。(ユウヤ)
黒鉄刃さん<桃香は何故か愛紗とセットで考えてしまうから仕方ないですよー。(ユウヤ)
あかさん<キットソノママデハタベナイヨ〜。(ユウヤ)
Jack Tlamさん<兵の分析ができても化け物の分析は不可能でしょう。一騎n戦闘力はまだ上がりますよ(笑)(ユウヤ)
↓4 劉備さんは一刀をめぐってへぅーさんと骨肉の争いを演じてるんじゃないでしょうか?(M.N.F.)
・・・アカンリアルに間違えたorz、関羽や張飛や?統・・・この辺か危ないのは(^_^;)(黒鉄 刃)
食料庫の中無事だといいのだが・・・・・・季衣食べ過ぎは駄目だよ(あか)
↓劉備さんは最初から一騎勢力なので無問題。問題になるのは関羽さん。(Jack Tlam)
孫呉は滅ぶと言ってもまだ吸収されるだけだから良いけど、劉備と及川はどうなる事やら・・・(黒鉄 刃)
孫呉絶望まっしぐら。勝つ見込みが無い……常識なんてどこかにうっちゃったような連中だから、相手の戦力を分析できたと勘違いするのは仕方のないことかもしれませんね。(Jack Tlam)
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