ゆりおん!6〜唯憂〜
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【憂】

 

 ずっと私の傍に居てくれると思っていたお姉ちゃんが高校に入って友達ができて、

後輩の梓ちゃんができて、和ちゃんとの距離が縮まって。

 

 徐々に私の居場所は狭くなっていって少し息苦しくなって。

お姉ちゃんの卒業の日に私から離れていってしまうことが怖いという気持ちが

私の秘めていた気持ちを押し出して言葉にしてしまった。

 

 もうどうにでもなれと、半ばヤケ気味での発言にお姉ちゃんは少しばかり驚いてはいたが

私の本心を聞くと最後の方では笑顔になっていた。

 

「うれしいよ、憂。ちゃんと話してくれて」

 

 そう言って私の頭を撫でてくれるのが暖かくて気持ちいいけど、これも毎日は味わえなくなるんだ。

本当は大学に受かって独り立ちするお姉ちゃんを応援したり喜んであげないといけないのに。

さみしい気持ちが強くてぼろぼろと涙が零れ落ちた。

 

「あともう一つお姉ちゃんに言いたいことがあるの」

 

 振り絞るように嗚咽混じりで言うとお姉ちゃんは私を抱きしめながら聞いてくれた。

私はお姉ちゃんを一人の女の子として好きだってこと、幻滅されてもいい。

このままもやもやが溜まったまま生きているのが辛かったから。

私のすべてをお姉ちゃんにぶつけた。

 

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***

 

「やっほー、憂〜」

「あ、お姉ちゃん〜」

 

 それから一年くらいして私とお姉ちゃんはお互いの住んでる中間くらいの場所にある

喫茶店で待ち合わせをしてお姉ちゃんが笑顔で手を振るのを私も同じようにして返した。

 

「この時期、思い出すな〜」

「え?」

 

「憂の激しい、こ く は く♪」

「もう、やめてよ〜」

 

 話しているうちに注文した紅茶がテーブルに置かれ、一瞬止まった会話を再開させた。

確かに去年の今頃、私はお姉ちゃんに告白をした。

 

 姉妹で恋愛感情持つことはいけないことだと思っていたからどうせダメだと諦めながらも

吐き出すように言った後、きょとんとした表情のお姉ちゃんが。

 

『いいよ』

『え、どうして』

 

『私も憂のこと好きだから?』

『え、でもお姉ちゃんの好きと私のは違うっていうか。そ、そう!恋人同士のような意味で』

 

 私は混乱しかけた頭を整理しながら説明すると、こういうことでしょ?ってお姉ちゃんが

私の唇に自分のを重ねてきた。そこから伝わるお姉ちゃんのやさしい気持ち。

 

 嘘ではないことを私に伝えてくれた。うれしい、うれしいけれど。

後々問題になりそうなことが山積みだったけれど私はお姉ちゃんの優しさに甘えて

二人は仲良し姉妹で恋人という関係になって、今に至る。

 

 お姉ちゃんが大学生になってからは確かに毎日のように会うことはなくなったけど

その分、お姉ちゃんを想っていることが増えてきて会う時の幸せだと感じるのが大きくなっていった。

 

「憂、可愛くなったね。前も可愛かったけど、もっと可愛くなったよ」

「もう・・・。お姉ちゃんったら」

 

 最初は梓ちゃんか和ちゃんのことが好きだったのかなって私は感じていたけれど

あの日の夜、一緒のベッドで寝ていた時に聞いたら可愛い後輩と大好きな親友までしか

いっていなかったらしい。

 

 お姉ちゃんはいろんな子にいい顔を見せるからわかりにくくて紛らわしいのだ。

そして私はそれ以上に鈍感なのだと思い知らされたなぁ。

 

 調子のいいことを言うお姉ちゃんの額を軽く指で叩いてから、痛そうにするお姉ちゃんの

顔をじっと見ていた。

 

「どうしたの、憂?」

「ううん、幸せだなって思って」

 

 ぽかぽかした陽気、ちょうどいい距離感。ただ形としてではなくてやるべきこともやっている

そういう関係。私も行くべき道をもう考えて、決めていた。

 

「憂は大学どこに行くの? お姉ちゃんのところ行くー?」

「ううん、私は和ちゃんの大学に行くよ」

 

「えー!?」

 

 お姉ちゃんにぞっこんの私のことだから即決でお姉ちゃんの通う大学に行くと

決めつけていたのか私の反応に心底驚いたような顔をして身を乗り出すようにして

聞いてきた。

 

「どうして!?」

「法関係の勉強して、お姉ちゃんとの暮らしをちゃんとした形にしたいからね」

 

「うぅ、せっかく距離がまた近くできると思ったのに・・・」

 

 本当にショックなようで落ち込む素振りを見せて少しの間、項垂れていたが

私の言葉を聞いてすぐに元気を取り戻した。

 

「今のままでも私幸せだから、だってちゃんとこうして今でもお姉ちゃんと

繋がっていられるんだから」

「憂〜・・・」

 

 涙目で伸ばした私の手をゆっくりと絡ませてきて手を繋いだ。

お姉ちゃんの手の柔らかさと温かさに少しドキドキする。

所々皮膚が硬くなってるのもちゃんと部活動をしているのがわかってホッとした。

 

「ところで憂」

「なに、いきなり?」

 

 急にころっと表情を変えて今度は甘えん坊な子猫のような愛くるしい表情を

浮かべて私の耳元で囁いてきた。

 

「私、今日と明日時間取れたから。泊りに家へ戻っていいかな?」

「あ、うん。いいけど・・・」

 

「お父さんとお母さんは?」

「また仕事の都合で出張。私一人だよ」

 

「だったらちょうどよかったよ〜」

「うん・・・」

 

 話し終えてから時計を見ると3時間くらい話をしていたことに気づいて、その間に冷めた

紅茶を飲み干してから会計をしてお姉ちゃんと一緒に外へ出た。

 

 まだちょっとだけ冷える外の空気に触れながら、そっとお姉ちゃんの手を握る。

そのあとゆっくり近況を話しながら買い物をして楽しんだ後に自宅へ戻った。

 

 既に外は日が落ちて少し暗くなりかけていた。

家のキッチンに買った材料を冷蔵庫に入れながら私の傍に立っているお姉ちゃんに

声をかけた。

 

「今日はお姉ちゃんの好きなもの、なんでも作ってあげるね」

「うーん、憂の作ったものなら何でも好きだから。お任せで」

「えっとね、じゃあこれとこれ・・・」

 

 それからいつものように楽しく料理をしながら二人で話をしていた。

前と違うところはお姉ちゃんがテレビを見てくつろいでいるのではなく

料理を手伝ってくれていて、一人暮らしの影響は出ているのかなって思った。

 

 あの頃だってそれでさみしいと思ったことはないけど、こうやって一緒に

同じことできることはすごく嬉しいと思える。

 

 フライパンに油をひいて音を立てる。その間にお姉ちゃんには野菜を切ってもらう。

少しまだぎこちないけれど、昔と違ってずいぶん上手くなったように感じられた。

昔はほんと見ているのが怖いくらいだったし。

 

 できる度にドヤ顔を私に見せてくるのがなんか可愛かった。

あの頃のようであの頃とは違う新鮮な感覚。

 

 止まっていたかった私の感情が徐々に解けて前に向かうようになったのは。

今のお姉ちゃんのおかげだった。

 

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***

 

「ふー、ごちそうさま」

「おそまつさまでした〜」

 

 ご飯を食べた後、二人で片付けをしてから部屋に戻ろうとすると。

 

「憂」

 

 名前を呼ばれて振り返ると、お姉ちゃんがちょっと悪戯めいた笑顔で私を手招きをしていた。

 

「なぁに、お姉ちゃん」

 

 呼ばれてホイホイお姉ちゃんの元に歩いていくとグっと腕をつかまれて引き寄せられる。

その先は一年間使っていなかったお姉ちゃんの部屋の中で。

 

 使っていなくても自分の部屋を掃除する時、ついでにお姉ちゃんの部屋の中も綺麗に

していたから埃もほとんど見当たらなかった。

 

 そしてお姉ちゃんが部屋にいた当時のままにして、さみしいときは思いふけながら

寂しさを紛らわしていたこともあったけど、それはお姉ちゃんには伝えていない。

 

「すごい綺麗にしてあるよね、ありがとう。憂」

「どういたしまして」

 

「でも用はそれだけじゃないんだよね〜」

「きゃっ」

 

 引き寄せられた後にお姉ちゃんは私をベッドの上に押し倒すようにして私の上に乗って

顔を近づけてきた。お風呂に入った時の入浴剤の匂いと少しだけ出た汗の匂いが

混じったものが私を興奮させてくる。

 

 みるみるうちにまわりの雰囲気が出来てきて私は目をとろんとさせてお姉ちゃんの

させたいようにすると、お姉ちゃんは私の名前を呼んで好きと言った後にキスをした。

濃厚で長いキスは私の心をとろけさせるのには十分でこの先のことも考えていたとき。

 

「今のキスの味は夜ごはんの味〜♪」

「おねえちゃん・・・」

 

 雰囲気ぶち壊しの一言だった。

でもすごくお姉ちゃんらしい空気の壊し方に思わず笑みがこぼれてしまう。

 

 少しずつ大人になっていくお姉ちゃん、けど根本的なところは変わらなくて

すごく安心できる。

 

 互いに笑い合って、でも距離は近いままでしばらく見つめ合った。

その日は深く深く、お互いに愛し合った。この先ずっとこうやっていられるかわからないけど

私は今、すごく・・・すごく幸せだ。

 

お終い

 

説明
純粋な姉妹百合、そういうのも目指したい。果たして純粋になったかどうかは不明だけれどw少しでも楽しんでもらえたら幸いです♪良いよね、姉妹百合♪
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けいおん! 平沢唯 平沢憂 百合 キス 

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