銀の槍、手伝いをする
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「……スペルカードルールだと? 何だ、それは?」

「新しい決闘の方式よ。そのルールに則れば、お互いに死ぬことなく決闘が出来るというものよ」

 

 銀髪の髪の男に、金髪のドレス姿の女性が説明をする。

 将志はスペルカードルールと言う弾幕勝負の詳細に耳を傾ける。

 

「……つまり、常時手加減状態と言うことか? それでは不完全燃焼を起こす者も居そうだが……」

「ああ、そういうことじゃないのよ。全力を出しても死なないようにするのがこのルールの肝よ」

「……つまり、俺が全力で人間に槍を突き刺しても人間が死なないようになるということか?」

「まあ、端的に言えばそういうことね。そのための道具がこれよ」

 

 紫はそう言うと何も書かれていない長方形の厚紙を取り出した。

 将志はその紙を隅から隅まで眺めると、首をかしげた。

 

「……成程、これがスペルカードか。しかし、何の力も込められていないようだが?」

「ええ、今はまだただの厚紙よ、これは。この厚紙がスペルカードになるには、将志の守護が必要なのよ」

「……どういうことだ?」

「この紙切れに私が簡易的な結界を張る力と貴方の守護神の力を封じて、中で何があっても死なないようになる結界を張れるようにするのよ。そうすれば、中で何をしても平気になるでしょう?」

「……それは分かった。だが、何故この様なカードにしたのだ? 取り出さずとも使えるような形にすれば便利だったものを」

「それはね、ちょっとした遊びを考えているからなのよ」

「……遊びだと?」

「一定の条件化で相手のスペルカードに記された攻撃を終了させると、そのスペルカードが自分のものになるというルールよ。これなら、妖怪達も積極的に戦うようになるでしょう?」

 

 紫はカードにした理由を将志に説明する。

 それを聞いて、将志は納得したように頷いた。

 

「……そういうことか……確かに、それならば飽きることは少なくなるだろうな。だが、そのカードが地味ではつまらないな」

「そうねえ。集めてて楽しくなるようにしたいわね……」

 

 二人はそう言うと、その場で考え込んだ。

 二人の力では、カードの模様を操作することはなかなかに難しいのである。

 

「キャハハ☆ そういうことなら僕に任せて♪ 要するに、この紙が面白くなれば良いんだよね♪」

 

 そこに横から愛梨が現れ、スペルカードとなる厚紙を手に取った。

 愛梨はその厚紙に何やら力を込めると、将志に手渡した。

 

「将志くん♪ ちょっとこれを持って、スペルカードに登録する技を使ってくれないかな?」

「……ああ」

 

 将志は愛梨からカードを受け取ると、言われたとおりに技を使ってみた。

 将志が使った技は、妖力で編んだ銀の槍を流星の様に飛ばす技であった。

 流星は船の立てる磯波のように、星屑のような銀の弾幕を残して飛んでいく。

 そんな中、将志の手に握られたカードに何やら模様が現れた。

 

「……これは……」

 

 出てきた模様は流星が星屑をこぼしながら夜空を翔る絵であった。

 愛梨はそれを見て満足そうに笑った。

 

「カードを一度使うと、その技に合わせた絵柄が出るようにしたんだよ♪ これなら誰が使っても別々の物が出てくるし、取り出したカードと技が違うって言う反則も防げるよね♪」

「あら、綺麗な絵柄ね。これなら集めても満足できそうね。なら、これも採用しましょう」

「……カードとスペルカードに登録した技……まあ、スペルと呼ぶとしよう。それの食い違いを防ぐために、スペルの名前をカードの発動の鍵にしてはどうだ?」

「それも良いわね。ああでも、宣言の前に殺す気で撃ち合いを始めてはどうしようもないわね……」

 

 紫はそう言うと、困った表情を浮かべて考え込んだ。

 それを聞いて、将志が首をかしげた。

 

「……その時のための俺達なのではないのか? 流石に俺達が出てくるとなれば、血の雨が降るような事態は控えるとは思うのだが……」

「……それもそうね。なら、その辺りの事は貴方達に任せることにするわ。じゃあ、スペルカードを作るとしましょう?」

「……ああ」

「おっけ♪ よ〜し、頑張るぞ♪」

 

 三人はそう言うと、スペルカードの作成に掛かった。

 

 

 

 

 

 数時間後、そこには白紙のスペルカードが山のように積みあがっていた。

 

「ふ〜……これだけ作れば大丈夫かな?」

「ええ……予定していた分は出来たわ……」

「……後はこいつらがきちんと機能するか調べないといけないわけだが……」

 

 三人は額に浮かんだ汗を拭いながらそう話し合う。

 三人ともかなり力を消費しており、疲れた表情を浮かべていた。

 そこに近づいてくる影があった。

 

「んあ? 何やってんだ、兄ちゃん達?」

「何やらたくさん札が積んでありますわね」

 

 近づいてきたのは燃えるような赤い髪の小さな少女と、美しい銀の髪に桔梗の柄が描かれた赤い長襦袢の女性だった。

 その二人を見て、将志は二人を手招きした。

 

「……ちょうど良い。お前達、少しスペルカードルールで戦ってみてはくれないか?」

「ん? なんだ、そりゃ?」

「どんなルールですの?」

 

 近づいてきた二人に、将志はスペルカードルールの詳しい説明をした。

 それを聞いて、二人は面白そうに笑った。

 

「……へぇ、なかなか面白そうじゃねえか」

「そうですわね。スペルの名前を考えないといけませんけど、これなら遊び感覚で戦えますわね」

「んじゃま、試しにやってみようぜ、包丁の姉ちゃん!!」

「いいですわよ。じゃあ、まずはスペルカードを作らないといけませんわね」

「そだな。じゃ、ちゃっちゃと作ってくる!!」

 

 二人は楽しそうな表情でスペルカードを手に取ると、それぞれ別々のところに行ってスペルを考えることにした。

 

 

 

 

 

 しばらくして、銀の霊峰の試合場に全員集まっていた。

 勝負をするのは六花とアグナ、観客は将志、愛梨、紫の三人である。

 

「よし、それじゃあ始めるぜ!」

「ええ、行きますわよ!」

 

 二人はそう言うと、一枚目のスペルカードを取り出して発動させた。

 

 

 竜符「ヴォルカニックドラゴン」

 

 

 アグナが発動させたのは巨大な炎の龍を呼び出すスペル。

 炎の龍が地面から飛び出し、相手に喰らい付いては地面に潜っていく。

 それを避けたとしても龍の長い胴体が残り、通り過ぎるまで動きを制限するものである。

 

 

 飛符「燕の巣作り」

 

 

 一方の六花が発動させたスペルは燕を模した斬撃の弾幕が飛びまわるスペル。

 相手の動きを制限するように燕が飛び、動きが止まったところを刈り取る手法のものである。

 見た目としては、燕がまるで巣を作るかのように六花のところに舞い戻ってくる形のものだ。

 

「おいおい姉ちゃん、手加減してんだろこれ!!」

「そう言うアグナも本気ではないですわね!!」

 

 二人はそれぞれ余裕の表情でお互いの弾幕を躱していく。

 二人とも危なげなくお互いの攻撃を避け、スペルの制限時間が過ぎていった。

 

「行きますわよ!」

「おっと、こっちも行くぜ!!」

 

 お互いのスペルが終わると同時に、二人は二枚目のスペルカードを取り出した。

 

 

 花符「六花式フラワービット」

 

 

 先手を取ったのは六花。

 銀色の花弁を持つ花が三つ飛び出し、弾幕を放ちながら相手の周りをぐるぐる飛び回る。

 そしてアグナを中心に円を描くように静止すると、相手を狙ったビームが発射される。

 

 

 渦符「レッドメイルシュトローム」

 

 

 対するアグナのスペルは、赤い炎の弾丸が周囲から渦を描くように集まってくるスペル。

 フィールドの中心に全方位から火球が集まり、中心では炎の大渦が出来上がっていた。

 受ける側としてはアグナが直接放つ蒼白い炎の弾幕を避けるために離れなくてはいけないのだが、そうすると後ろから弾丸が飛んできてなかなかにやりづらいものであった。

 

「ちぃ! やっぱしつけぇなあ、これ!!」

 

 アグナはそう言いながら飛んでくるビームを躱し、相手に蒼白い炎の弾丸を放つ。

 ビームはアグナの髪を掠めて飛んでいき、はらりと宙に舞う。

 

「くっ、前後から来られると少し面倒ですわね……」

 

 六花はは少し嫌そうな表情を浮かべながら相手の弾幕を避けていく。

 前方からの蒼白い炎に気を配りながら、後方から身体を焼く赤い炎を躱していく。

 流石に慣れたもので、パターンを理解した二人はあっさりとお互いのスペルを破った。

 その瞬間、お互いに笑みを浮かべた。

 

「へっ、そうこなくっちゃなあ!!」

「そうですわね! 次、行きますわよ!」

 

 そう言い合うと、六花は三枚目のスペルカードを取り出した。

 

 

 果符「黒緑の大玉ころがし」

 

 

 六花の三枚目のスペルは巨大なスイカを放り投げるスペル。

 相手を狙って投げられるそれは向かってくる弾丸を打ち消し、一方的に相手を攻撃する。

 それを見て、アグナは頭を掻き毟った。

 

「かぁ〜っ、これかよ! そんならこいつだぁ!!」

 

 そう言うと、アグナは三枚目のスペルカードを取り出した。

 

 

 炎符「エアロナパーム」

 

 

 アグナの三枚目のスペルは相手の周りにナパーム弾のような弾丸を発射するスペル。

 爆発した弾丸はその場で燃え続け、相手の行動を制限する。

 それを見て、六花は苛立たしげな表情を浮かべた。

 

「ああもう! 設置系の技は嫌いですわ!!」

 

 六花は煩わしそうに空中で燃え盛る炎を睨みながらアグナの弾幕を避ける。

 途中でアグナに向かってスイカを投げ、反撃をする。

 スイカは進路上にある火球を弾き飛ばし、唸りを上げてアグナに迫っていく。

 

「ちっくしょ〜! 本当にめんどくせえな、これ!!」

 

 アグナはそう叫びながらスイカを回り込むように避け、反撃をする。

 お互いにお互いの攻撃が苦手なのか、両方とも攻めあぐねている間に制限時間が過ぎた。

 

「流石にやるなあ、姉ちゃん」

「貴女もですわよ、アグナ」

 

 二人はそう言いながらお互いに見つめあう。

 そしてしばらくすると、同時に最後のスペルカードを使用した。

 

 

 発火「イグニション・オブ・ザ・サン」

 

 刃符「斬空三徳包丁」

 

 

 スペルの発動と同時に周囲の空気が熱を帯び始め、六花の包丁が光を放つ。

 次の瞬間、フィールドに太陽のような巨大な火の玉が現れ、空気を切り裂く斬撃が飛び出した。

 アグナのスペルで生まれた火の玉は放射状に高密度の弾幕を放ち、全体を火の海に染める。

 六花のスペルで生み出された斬撃はその炎を切り裂きながらアグナに向かっていく。

 そしてしばらくして、その紅蓮に染まったフィールドからアグナが弾き飛ばされた。

 それと同時に周囲を染めていた炎も消え、勝負が付いたことを示した。

 

「……ってぇ……おりょ? けど全然怪我はしてねえな?」

「そうですわね……結構強く当たったと思ったのですけど、切り傷は付いてないようですわね」

 

 アグナは身体を起こすと、怪我のない自分の身体を不思議そうに眺める。

 しばらくして、隣に降りてきた六花もその様子を眺めた。

 その様子を見て、将志は頷いた。

 

「……ふむ、どうやら上手く行ったみたいだな」

「そうだね♪ カードの模様も綺麗に出てるし、これなら問題ないよね♪」

「ええ、そうね。後はどれほど強い攻撃に耐えられるか分かれば良いんだけど……」

「……それなら良い相手が居る。少し待っていろ、呼んでくる」

 

 紫の呟きにそう答えると、将志はどこへともなく飛んでいった。

 

 

 

 

 しばらくして、将志が帰ってきた。

 その後ろには何やら人影があり、客を連れてきたようだ。

 

「……連れて来たぞ」

「おい、いきなりここに連れてきてどうするんだよ?」

 

 連れて来られたのは白い髪の蓬莱人、藤原 妹紅であった。

 訝しげな表情を浮かべる彼女を見て、紫は納得したように頷いた。

 

「ああ、成程。確かにこの子なら適任ね。それで、相手は誰がするのかしら?」

「……火力といえばやはりアグナだろう。アグナ、こっちに来い」

「おう」

 

 将志はアグナを呼ぶと、髪留めの青いリボンを解いた。

 するとアグナの体がまばゆい光を放ち、大人の女性へと変貌していく。

 

「……ふう……封印解くのも久々だぜ」

 

 アグナは色々と大きくなった自分の身体をあちこち見回し、軽く動かす。

 そんなアグナを見て、妹紅は眼をしばたたかせた。

 

「……え、誰これ?」

「おいおいおい、そりゃあねえんじゃねえのか? アグナだよ、前にも会ってるだろ?」

「変わりすぎだろ! 幼女がいきなりこんな風に変わるなんて誰が思うんだ!?」

 

 アグナのあまりの変わりように、妹紅は頭を抱えてそう叫んだ。

 幼女が一瞬でグラマラスな美女に変われば叫びたくもなるであろう。

 それを聞いて、周りの者が苦笑いを浮かべる。

 

「きゃはは……まあ、普通は思わないよね……」

「私達ですらこうなるとは思いませんでしたものね……」

 

 愛梨と六花がそう呟くと、妹紅は疑問を振り払うように首を横に振った。

 

「それで、私は何をすればいいんだ?」

「……今から全力のアグナと戦ってもらう。スペルカードルールでな」

「スペルカードルール? 何だそりゃ?」

 

 首を傾げる妹紅に、将志は事の詳細を説明する。

 すると妹紅は分かったような分かってないような表情を浮かべた。

 

「……はあ。そういうことか。とにかく、私はあのアグナと戦えば良いんだな?」

「ええ、そうなるわね。はい、これがスペルカードよ」

「ん。それじゃあ作ってくる」

 

 紫からスペルカードを数枚受け取ると、妹紅はスペルカードを作りに行く。

 その横で、アグナが将志に声を掛けた。

 

「兄ちゃん、俺も新しいのが欲しいぞ。俺が全力を出すと、さっきのスペルじゃ収まんねえんだ」

「……そうか。なら、持って行くと良い」

「よし、んじゃ作ってくるぜ」

「……アグナ。今のお前の最大の威力の攻撃を入れてくれ。一撃で勝負が決するような奴をな」

「へへっ、言われなくてもそのつもりだぜ!!」

 

 アグナはそう言って笑うと、数枚のスペルカードを持って遠くへと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 しばらくして準備が完了し、アグナと妹紅が開始線に付く。

 アグナの手には二本の白い三叉矛が握られていて、準備は万端のようである。

 

「……双方とも準備はいいか」

「ああ、こっちは大丈夫だ」

「俺も平気だぜ、兄ちゃん!!」

 

 将志が確認を取ると、二人はそう言って答えた。

 それを聞いて、将志は一息ついた。

 

「……では、始め!!」

 

 将志がそう言うと、二人は一斉に飛び出した。

 

「始めから飛ばしていくぜ!!」

 

 アグナはそういうと早速スペルカードを使用した。

 

 

 烈光「ウルトラノヴァ」

 

 

 アグナの両手の三叉矛に、それぞれ強烈な光と熱が集まってくる。

 その純白の光が極限まで集まると、アグナは両手を振りかぶった。

 

「いっけええええ!!」

 

 アグナはそう言うと三叉矛を放り投げた。 

 妹紅がそれを飛んで避けようとすると、突如として圧縮された光が凄まじい勢いで広がっていった。

 

「え、ちょ……」

 

 そのあまりの変化についていけず、妹紅は光に飲み込まれた。

 光がはじけると共に周囲の温度が急上昇し、熱風が辺りに吹き荒れ、砂礫が空へ高々と舞ってキノコ雲を作り出す。

 その様子を見て、紫は思わず手にした扇子を取り落とした。

 

「……将志。アグナ、前に見たときよりも凶悪になってないかしら?」

「……前よりも威力が格段に上がっているな。封印されている間に妖力が熟成されたのだろうか?」

 

 二人は冷や汗をかきながらそう話し合う。

 何故なら、アグナが封印される原因となったあの攻撃を遥かに上回る威力であると推定される攻撃だったからである。

 どうやら、封印で抑圧された妖力は大変なことになっているようである。

 スペルカードルール下での戦いでなければ、周囲はマグマの海と化していたことであろう。

 その一方で、アグナはあっさりと倒れた妹紅を見てキョトンとした表情を浮かべていた。

 

「おりょ? もう終わりか? まあ、人間がまともに喰らえば終わっちまうか」

「けほっ……なんだよ、この無茶苦茶な火力は……って、私生きてる?」

 

 妹紅は大火力の攻撃を受けても無事であることに首をかしげる。

 それを見て、将志と紫は頷き合った。

 

「……アグナの最大火力を受けてなおその程度の傷で済むのか。実用面でも申し分ないな」

「弾幕による周辺の被害も抑えられるから、その面でも良さそうね」

「おお〜……これなら気にすることなく全力を出せるな! よっしゃ、包丁の姉ちゃんにリベンジしてくる!!」

 

 アグナは大喜びでそう言うと、一直線に飛び出していった。

 それと入れ替わりに、二つの人影が飛び込んでくる。

 

「何でござるか、今の閃光は!?」

 

 一人は黒い戦装束に身を包み、頭に鉢金を巻いた少女。

 

「今凄い光が見えたけど何事!?」

 

 もう一人は白い胴衣と袴を身に纏った黒髪の少年であった。

 その少年を見て、妹紅は首をかしげた。

 

「ん? 何で銀月がここに居るんだ?」

 

 妹紅がそう呟くと、今度は銀月が首をかしげた。

 

「……あれ、父さんから聞いてないのかい?」

「は? どういうことだ?」

 

 二人は揃って将志の方を見る。

 すると将志は小さくため息をついた。

 

「……それ以前に、お前と妹紅が顔見知りであることが初耳なのだが?」

 

 将志はそう言って二人を見やる。

 そんな彼に、妹紅が詰め寄って質問をする。

 

「おい将志、あんた銀月とどんな関係なんだ?」

「……どんな関係かと言えば、親子だが?」

「……はあ?」

 

 将志の発言に、妹紅は唖然とした表情を浮かべる。

 そんな妹紅に、今度は将志が質問を投げかけた。

 

「……こちらからも聞くが、銀月とはどういう関係だ?」

「銀月には陰陽道を教えたり戦闘訓練をつけたりしてるんだ。成程ね、道理で筋が良いと思ったらあんたの息子か」

 

 妹紅はそう言いながら納得したように頷いた。

 それを聴いた瞬間、将志は目頭を押さえた。

 

「……銀月。逃げるな」

「うっ……」

 

 将志の言葉に、その場を立ち去ろうとしていた銀月がぴたりと足を止める。

 将志は銀月の手を掴んで妹紅のところに連れてくると、事の真相を問いただすことにした。

 

「……お前、修行禁止されていた時によく人里に行っていたな? あれはこのためか?」

「ちょっと待て、修行を禁止ってどういうことだ?」

 

 将志の発言に、妹紅が割ってはいる。

 それに対して、将志は質問で返した。

 

「……銀月に最後に講義したのはいつだ?」

「五日前だけど?」

「……その日は前日に一日中戦闘訓練を行っていてな……全身ボロボロになって帰ってきたのだ。そこで休養させるために修行を禁止したのだが……」

「おい、そうなのか銀月?」

 

 将志の話を聞いて、妹紅は睨むような視線で銀月を見る。

 すると銀月はそれから眼を逸らしながらそれに答えた。

 

「えっと……うん、はい、そうです……傷も完治したから大丈夫かな〜って思って……」

「馬鹿野郎、そんな無茶するんじゃない!! 今度それが発覚したら二度と教えねえぞ!!」

「あう……分かりました……」

 

 怒鳴りつけられ、がっくりと肩を落とす銀月。

 その後ろで、紫が深々とため息をついた。

 

「はあ……銀月って、無茶を無茶と思わないのが問題ね……」

「……熱心なのは良いが……もう少し抑えて欲しいものだ」

 

 紫の後を追うように、将志もため息をつく。

 その隣で、妹紅が首をかしげた。

 

「……けど、実際教えたときは疲れたりどこか痛めたような様子は無かったんだよな……」

「……そうなのか?」

「ああ。実際、そんな無茶をしているなんて今言われるまでちっとも気付かなかったしな」

「……もしかして、それも銀月の能力の影響かしら?」

「……可能性はあるな。しかし、だとするとどんな能力だ?」

 

 妹紅の発言を受けて、将志と紫は考え込んだ。

 それを聞いて、妹紅がキョトンとした表情を浮かべた。

 

「まさか、銀月の能力は分からないのか?」

「……ああ。それが俺が銀月を預かっている理由でもある」

 

 将志がそう言った瞬間、突如として巨大な火柱が上がった。

 三人がその方を見ると、二つの人影が将志達のところへ向かってきていた。

 

「ひゃっほう! 俺の勝ちだ、姉ちゃん!!」

「あ、アグナ……貴女幾らなんでも大人気ないのではなくて……?」

 

 勝って大はしゃぎするアグナと、若干髪が乱れて煤まみれになりながらアグナに抗議の視線を送る六花。

 勝敗の行方は明らかであった。

 そんな二人を見て、将志が苦笑いを浮かべた。

 

「……まあ、この手の勝負は六花は苦手だろうからな。逆に、この手の勝負はアグナや愛梨の得意とするところでもあるから、まあ仕方のない結果ではないか?」

「くっ……次は負けませんわよ、アグナ」

「おう! いつでも来いってんだ!!」

 

 立ち去っていく六花に、アグナはそう言って声を掛ける。

 そんなアグナに、将志はため息混じりに話しかけた。

 

「……封印を解く時は俺に言うのだぞ?」

「分かってるって兄ちゃん!!」

 

 アグナは将志にそう返事をすると、近くに居る人影に気がついた。

 

「お、槍の姉ちゃんに銀月じゃねえか。修行中だったか?」

「え、ええっと……どちら様?」

 

 銀月は突然声を掛けてきた見慣れない人影に、困惑しながらそう質問した。

 アグナはそれを受けて、自分の身体を見下ろしてハッとした表情を浮かべた。

 

「ん? ああ、そういや銀月にこの姿で会うのは初めてだったな。アグナだよ」

「え、アグナ姉さん? あれ、アグナ姉さんが何で「お姉さまああああああああああ!!」……あ」

 

 銀月が質問をしようとすると、どこからともなく少女のソプラノボイスが聞こえてきた。

 それを聞いて、アグナがうんざりした表情を浮かべた。

 

「……また面倒なのがきたよ……」

「わぁ〜!! 久しぶりの大きなお姉さまああ「落ちろぉ!!」きゃうん!!」

 

 飛び込んでくるルーミアに、アグナのジェノサイドカッターがカウンター気味に当たる。

 振りぬかれた長い足はルーミアの顎を正確に捉え、意識を混濁させる。

 ルーミアは激しく縦回転しながら顔面から地面に落ちた。

 

「ル、ルーミア姉さん、大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃないわ……でも、銀月の右腕を食べればきっと「でりゃあああ!!」ぎゃうっ!?」

 

 うつぶせに倒れているルーミアを、アグナは首を掴んで持ち上げ壁に勢いよく叩き付けた。

 後頭部を激しく打ちつけ、ルーミアはその場に崩れ落ちる。

 

「銀月、ルーミアに情けを掛けてやる必要はないぜ。むしろ遠慮なくトドメをさしてやれ」

「え、いや、でも……」

 

 アグナの一言に銀月は困惑した様子で答える。

 すると、アグナの足元に転がっていたルーミアがゆっくりと身体を起こした。

 

「ひ、酷いわ、お姉さま……」

「まだ息があんのか……ふん!!」

「げふっ……」

 

 起き上がろうとするルーミアに、アグナは非情なる一撃を加える。

 すると、ルーミアは再び倒れ臥し、小刻みに痙攣し始めた。

 それを見て、銀月の顔がサッと蒼くなった。

 

「うわぁ……本当にトドメさした……」

「大丈夫だって、どうせしばらくしたらまた起きてくる。で、修行してたんじゃないのか?」

「違うよ。今日大会の日だったからそれに参加してたんだ。これ」

 

 銀月はそう言うと、収納札から一枚の紙を取り出した。

 それは銀の霊峰の武術大会の優勝を示す表彰状であった。

 

「お、優勝してきたのか。しかも無敗か。まあ、銀月なら出来んだろうな」

「……ふむ、もはや下にいる妖怪達では相手にならんか。となると、次からは門番クラスを相手にすることになるな」

 

 その表彰状を見て、将志はそう呟く。

 それを聞いて、銀月の眼が期待に輝いた。

 

「門番クラスって……涼姉さんと同じクラス?」

「……いや、涼はもうそのクラスではない。涼はそのクラスでは敵が居なくなってしまったからな、俺達と同じクラスだ。俺達と一緒に暮らしているのが何よりの証拠でもある」

「だからと言って、決してその門番達が弱いわけではござらぬぞ。お主も対戦者達から聞いたなら分かるであろうが、ここの門番というのは一つの称号のようなものでござる。言ってみれば強者の証、拙者も始めてここに来たときは凄い眼で見られたものでござるよ」

 

 涼は当時のことを思い出しながらそう語る。

 それを聞いて、将志は笑みを浮かべた。

 

「……涼の場合はいきなり門番を頼んだからな。あの頃が一番きつかったのではないか?」

「あれは本気できつかったでござる。門番や門番に近い者達が次々と勝負を仕掛けてくるから、寝る暇も無かったでござるよ……つまり、ここの門番というのはそれほどの意味があるんでござる」

 

 涼は苦笑いを浮かべながらそう言い、銀月に言い聞かせる。

 その言葉に、将志が言葉を継ぐ。

 

「……まあ、そういうことだ。門番の連中は古くから俺に付き従っている者も居る。俺と同じところに立ちたければ、大会であいつらを相手に全勝して見せろ。そうなった時、お前はもう一つの門をくぐったことになる」

「もう一つの門?」

「……銀の霊峰の一員としての社の門だ。お前が普段俺の家族として潜っている本殿の戸は、本来であるならば俺が強さを認めた人間しか入れないことになっている。実力で勝ちあがってきたのは今のところ涼だけだな」

「他の門番の人はダメなのかい?」

「……重鎮達に認めても良い奴は何人か居るが、奴等はそれぞれに家庭を持っているからな。無理強いはしていない。その代わり、ここを目指すものが越えるべき壁となってもらっているのだ」

「つまり、本当なら俺はその重鎮達に勝たないとここでは暮らせない訳だ」

「……そういうことになるな」

 

 将志がそう言うと、銀月は黙り込んだ。

 そしてしばらくすると、何かを決意した眼で将志の方を向いた。

 

「……分かった。そういうことなら俺もそれに従おう。父さん、俺一人暮らしをして、もう一度ここを目指してみるよ」

「それはダメよ、銀月。貴方は何が何でもここに住んでいないといけないわ」

 

 銀月の言葉に、即座に反対の声が飛んでくる。

 それを聞いて、銀月は反対した人物の方を向いた。

 

「……紫さん。それは俺の能力が分からないから?」

「そうよ。自由にさせて上げられないのは可哀想だけど、将志には貴方を監視する義務がある。だから、貴方は将志と一緒に居ないといけないのよ」

「……はぁ……分かったよ、そういうことなら従うよ」

 

 銀月はそう言って肩を落とす。

 その様子に、紫が意外そうな表情を浮かべた。

 

「随分聞きわけがいいわね。自分の能力がわからないことにもっと腹を立てると思ったのだけど?」

「……そりゃあ、腹が立たないといえば嘘だ。これまで能力が分からないことに何度腹を立てたか分からないさ。けど、そのお陰で俺はここに居られたわけだし、みんなと仲良くなれた。そう思うと、仕方ないかなって思うんだ」

 

 銀月はため息混じりに紫の疑問に答えた。

 それを聞いて、紫は感心したように頷いた。

 

「そう……そういう考え方もありね。出来るだけ頑張って貴方の能力は調べるから、それまで辛抱してね?」

「ええ。ここまで待ったんだし、この際死ぬまでなら待つよ」

 

 紫の言葉に、銀月は笑みを浮かべながらそう答えた。

 

「……その慰めになるかどうかは分からんが……銀月、お前に渡すものがある」

 

 そんな銀月に、将志は一本の槍を取り出した。

 その槍は全身が鈍く光っている槍であった。

 銀月はそれを無言で手に取った。

 

「これ……俺が昔買った鋼の槍……」

「……そろそろ返しても良い頃だと思ってな。だが、驚くのはまだ早いぞ。これもやろう」

 

 将志はそう言うと、布にくるまれた長さは大体三メートルくらいの長い棒状のものを銀月に手渡した。

 

「え……って重っ!? 中身、何だ!?」

 

 受け取ろうとして、銀月はあまりの重さに思わず地面に落とす。

 地面に落ちたそれは重々しい音と共に地面を少し揺らした。

 そして布を解いてみると、中には二本の槍が包まれていた。

 槍はそれぞれ鈍い光沢を放つ黒い槍と青白い光を放つ銀の槍であった。

 

「槍か……二本入ってるけど……」

「……試しに振ってみろ」

「あ、ああ。んしょっ!?」

 

 将志に言われて銀月が青い槍に手を掛けて力いっぱい持ち上げようとすると、銀月は勢い余って後ろにひっくり返った。

 

「か、軽っ!? 何だこの軽さは!?」

 

 銀月は手にした槍のあまりの軽さに驚き、それを振り回す。

 そんな銀月の様子を、将志はニヤニヤと笑いながら見つめていた。

 

「……軽いからと言ってあまり振り回すな。そっちはミスリル銀で出来ている。切れ味は並の刃物とは比べ物にならんからな。そこらの岩など容易く徹すぞ」

 

 それを聞いて銀月が実際に足元の岩場にさしてみると、まるでバターに突き刺すように刃が沈んでいく。

 それにも驚いた後、銀月は再びその青い槍を軽く振った。

 

「それにしても軽すぎるぞ、父さん。これ、すっごく使いづらいんじゃ……」

 

 実際、銀月がそれを振るうとあまりの軽さに槍の起動が波を打っている。

 これがある程度重みのある槍ならば真っ直ぐになるので、銀月には非常に使いづらく感じることであろう。

 だが、将志は銀月の言葉に首を横に振った。

 

「……それを使いづらく感じると言うことは、無駄な力が入っている証拠だ。それを使いこなせるようになったとき、お前の槍は今よりももっと上達しているはずだ」

「成程ね。そういう事なら使いこなせるように頑張るかな。それじゃ次は……」

 

 将志の言葉に頷くと、銀月は次に黒い槍を手に取ろうとする。

 しかし、銀月の動きがそこで止まる。

 

「……どうした? 早く振って見せろ」

 

 将志はその様子を意地の悪い笑みを浮かべて眺める。

 つまり、こうなることが分かっていて銀月に渡したのであった。

 

「くっ……と言っても、黒い方は重すぎて上がんないんだけど……」

 

 銀月は全力を出し、全ての霊力を筋力の増強に当ててまで持ち上げようとしたが、槍はピクリとも動かない。

 そんな銀月を見て、将志は笑みを浮かべて種明かしをした。

 

「……まあ元は武器ではなく、神珍鉄と言って錘に使う凄まじく重い棒だったものを槍にした物だからな。試しに俺の力を借りて持ってみろ」

「分かった」

 

 銀月はそう言うと、眼を閉じて将志の力を自分に取り込み始めた。

 銀色の光の粒が銀月の体の中に入り込んでいき、銀月の体が光を帯び始める。

 ある程度集まると、銀月は眼を開いて槍に手を掛け、重たそうに振り回した。

 

「やっ……何とか振り回せるって感じだな。父さんの力を使う特訓にはちょうど良いかも……」

「……ははは、それでも随分軽くしたのだぞ? それに、その槍の面白いところはそれではない。少し貸してみるが良い」

「何があるって言うんだ?」

 

 銀月は首をかしげながらも将志に黒い槍を渡す。

 将志はそれを受け取ると、槍を縦にして地面につけた。

 

「……伸びろ!」

 

 将志がそう言った瞬間、槍は凄まじい勢いで天に向かって伸びていった。

 銀月はそれを唖然とした表情で眺めた。

 

「の、伸びた?」

「……とまあ、使用者の意思によって伸びたり縮んだりするのだ」

 

 将志はそう言いながら伸びた槍を元の長さに戻した。

 それを見て、銀月は楽しそうに笑った。

 

「何だか、西遊記の如意棒みたいだな」

「……おや、知らないのか? 如意棒の大本は神珍鉄だぞ? あれはこれよりも太くて重いものだ」

「そうなのか……そういえば、父さんさっきこれを片手で持ってなかったか?」

「……戯け、人間と妖怪を一緒にするな。腕力でなら人間になど絶対に負けん」

 

 将志はそう言いながら黒い槍を地面に突き刺す。

 槍は重々しい音と共に地面に刺さり、ピクリとも動かなくなる。

 そんな槍を見て、紫が興味深そうに呟いた。

 

「にしても……よくもそんなもの持ってたわね? 神珍鉄もミスリル銀も滅多にお目にかかれないものじゃないの?」

「……鍛冶屋の親父がな、使い道に困っていたのだ。神珍鉄は重すぎて使い道が無く、ミスリル銀は高くて買い手が付かんとな。そこで眠らせておくのも惜しいから、俺が買い取ったと言うわけだ」

「高かったんじゃないの?」

「……当分俺が自由に使える金は無いな」

 

 将志はため息と共にそう言った。

 それを聞いて、紫は面白そうに笑みを浮かべた。

 

「あらあら、無理しちゃって……」

「……なに、金がどうしても必要になれば、人間に化けて用心棒でもやるさ。それにどの道使い道に困るような金だ、俺の懐で死ぬよりは先行投資をして市場を賑わせた方が良いだろう?」

 

 将志は微笑を浮かべて紫にそう話す。

 それを聞いて、紫は胡散臭い笑みを浮かべて話を続ける。

 

「で、本音は?」

「……高い食材が買えなくて自由に料理が出来ない」

 

 そう言うと、将志は少し悲しげな表情を浮かべて肩を落とした。

 そんな将志を見て、紫はくすくすと笑った。

 

「やせ我慢はやめなさい。どうしてもお金が必要になったら、藍に借りればいいわ」

「……そうさせてもらうよ」

 

 将志は紫の言葉に頷いた。

 

 後日、これで金を借りた将志が藍に色々と申し付けられるのだが、それは別の話である。

 

 閑話休題。

 

「さてと、スペルカードも作ったことだし、後はこれを広めるだけね」

「……何それ?」

 

 スペルカードと言う言葉に、銀月は首をかしげる。

 そんな銀月に、紫はスペルカードを数枚差し出す。

 

「新しい決闘法の道具よ。銀月も試してみる?」

「ああ、試してみるよ」

 

 銀月はそう言ってカードを受け取った。

 そんな銀月に、将志が声を掛ける。

 

「……だが、今は一度休め。大会が終わってすぐであろう?」

「えー……」

 

 将志の言葉に、銀月は不満げな声を出す。

 

「ダメだぜ、ちゃんと休め。そしたらちゃんと相手してやっからよ」

「はーい……」

 

 アグナに言われて、銀月は不承不承といった様子で返事をした。

 そんな銀月に愛梨が笑顔を向ける。

 

「その時は僕も相手してあげるよ♪ 色々試してみたいしね♪」

「……広めることに関しては俺も手伝おう、紫」

「宜しく頼むわよ。白玉楼には私が行くわ」

「……人狼の里や紅魔館等には俺が行こう」

「人里と地底はどうしようかしら?」

「……そうだな……妹紅、慧音にスペルカードルールのことを伝えてくれないか?」

「ん。それくらいなら任されてやるよ」

 

 妹紅はそう言うと紫からスペルカードを受け取る。

 紫は妹紅にスペルカードを手渡すと、再び考え込んだ。

 

「問題は地底ね……私達は行けないし、人間である銀月を行かせる訳には行かないわね……」

「……そこは適任が居るぞ。涼! こっちに来てくれ!」

 

 将志はそう言って涼を呼びつける。

 すると、涼は軽やかな足取りで将志のところへやってきた。

 

「どうしたんでござるか、お師さん?」

「……スペルカードルールを地底に広めて来い」

 

 将志がそう言った瞬間、涼の表情は一変した。

 

「え……せ、拙者に、地底に行けと仰るんでござるか!?」

 

 涼は泣きそうな表情で将志に問いかける。

 それに対して、将志は罪悪感を感じながらも頷いた。

 

「……ああ、頼む」

「い、嫌でござる!! 地底には奴等が……」

「私からもお願いするわ。スペルカードルールを地底に広める適任が貴女しか居ないのよ。この通り、お願いするわ」

「……終わったら俺が出来る範囲で願いを聞いてやる。だからこの通りだ」

 

 必死の表情で懇願する涼に、将志と紫は揃って頭を下げる。

 それを見て、涼は口ごもった。

 

「く、くぅぅぅ……分かったでござる……」

 

 涼は震える声でそう言うと、白紙のスペルカードの束を受け取ってフラフラと飛んでいった。

 その後には涙の雫がキラキラと舞い落ちていた。

 

「……では、早速行くとしよう。まずは人狼の里だ」

「ええ。じゃあ、私もこれで失礼するわ」

 

 二人はそう言うと、それぞれ出かけていった。

説明
何の脈絡もなく目の前に現れた妖怪の賢者。
どうやら、彼女には何か頼み事があるようで。
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オリキャラ有 東方Project 銀の槍のつらぬく道 

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