恋姫OROCHI(仮) 参章・壱ノ壱 〜明命の過去へ〜
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剣丞は詩乃、小波、湖衣、明命、翠の四人を引き連れ、明命の過去へと渡っていた。

目的は、何者かに誘拐された小蓮の救出だ。

小蓮が人質に捕られている以上、呉の分裂を解消する術はない。

逆に言えば、小蓮さえ敵の手から奪還できれば、呉一国の協力が得られることになる。

なので、調査任務に強い小波と湖衣の二人をここに割り当てたのだった。

 

「それではまず、蓮華さまたちの元へご案内します!」

「待ってください明命さん。確か孫仲謀殿は、孫伯符殿に追っ手を差し向けられてると聞いています。なのに、呉国内に拠点を構えているのですか?」

 

軍師として同行している詩乃が疑問を投げかける。

現在地は、建業から南東に約二百里ほどの場所。

つまり、呉の只中といっていい。

 

「はいです!本来なら雪蓮さまの追撃は、例え嘘でも、呉国内では逃れられるものではないのですが…」

 

と一息入れて、声を潜める。

 

「実は今、蓮華さまたちは建業の南方に発生した、異変の中にいるんですっ。そこに逃げ込めば、蓮華さまたちを探し出せない理由を敵に与えられるだろう、という穏さまの献策があったそうなのです」

「「「えっ!?」」」

 

その言葉に驚いたのは戦国勢。

 

「異変、ということは…」

「私たちの仲間が居るかもしれない…」

「と、いうことになりますね」

「…だな」

 

台詞割をすべて取られてしまった剣丞。

しかしその目には、希望の光が宿っていた。

 

「小波が復帰してくれてて助かったよ。誰かが居ることが分かっていれば、句伝無量でどうにかなりそうだな」

 

先の京攻めを共に戦った勢力には、一勢力に一つ以上、小波のお守りが渡されている。

小波さえいれば、探すことも繋ぎをつけることも簡単だ。

 

「それでは改めて、蓮華さまたちの元へご案内いたします!」

 

明命がやる気満々、といった風に先頭を張り切って歩き出した。

 

 

 

 

 

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………………

…………

……

 

 

 

「越後かなぁ〜?」

「越後でしょうね」

「越後ですね」

「越後かと」

 

『異変』の内部に入り、全員がすぐにピンときた。

呉の気候が暑いということもあったが、中はとにかく肌寒かった。

甲斐のそれとも似ていたが、湖衣がいる以上、残るは越後くらいしか思いつかない。

もちろん、もっと北。東北地方などが来ててもおかしくはないが、今のところ剣丞たちに縁のある土地しか現れていないので、ほぼ越後と断言してよいだろう。

 

「こちらです」

 

剣丞たちの見覚えのない風景、恐らく越後の北部なのだろう、を通り、森を分け入った山の麓にポッカリと空いた洞窟があった。

そこが蓮華たちの拠点のようだ。

 

「蓮華さま〜明命です〜」

 

小声ながら良く通る声が洞窟内に反響する。

 

 

……………………

 

 

無反応。

 

「あれ?おかしいですね。前のときはすぐに出てきてくれたんですが……祭さま〜思春殿〜」

 

小首を傾げながら、他の面子の名を呼んでみる明命。と――――

 

「「――っ!」」

 

忍びの二人が反応を見せたが、それは間に合わなかった。

 

「動くな」

「ひっ…」

 

一番後ろに居た詩乃の首筋に小刀が当てられる。

 

「詩乃っ――」

「ご主人様!」

 

詩乃を助けようと動いた剣丞の足元に、タンッタンッと音を立て、矢が立て続けに突き刺さる。

小波が咄嗟に手を引かなかったら、当たっていたかもしれない。

 

「動くなと言うておろうっ!!」

 

洞窟内から矢を番えた状態の女性が姿を現す。

剣丞たちは前後を挟まれた状況となった。

 

「貴様ら、何が目的でここに来た?」

 

詩乃を後ろ手で無力化している人物が、ドスの利いた声で脅しに掛かる。

 

「あ……ぅ……」

 

元より抵抗出来る力など無い詩乃は、恐怖のあまり声も出せない。

 

「ちょ、ちょっと思春殿!祭さま!私ですよ!明命です!!」

 

仲間の思わぬ攻撃に、わちゃわちゃと慌てて前後を振り返る明命。

 

「……本物の明命であろうな?」

 

祭、弓を構えた女性、が照準を明命に合わせて問いかける。

 

「本物ですよぅ!」

「ならば後ろの者共は何じゃ!?こんな所に居るはずのない翠、一刀の紛い物に、見知らぬ娘たち…怪しむなという方が無理な相談じゃろう」

「あぅあぅ……この方たちは…話せば長くなるのですが…」

「手短にせぃ!!」

 

ギリッと弦を引く。

手を離せば、いつでも矢を放てる状態だ。

 

「え…あと、その……」

 

さらにテンぱる明命。

 

「祭、止めなさい」

 

そんな彼女を救う声が、祭の後ろ、洞窟の更に奥から聞こえた。

 

「権殿、危のうございます!出てきてはなりませぬとあれ程…」

 

矢を番える女性の後ろからは、赤を貴重とした服を着た風格のある女性が姿を現した。

「私は頷いた覚えは無いわよ、祭。それより早く弓を下ろして。思春も、その娘を離しなさい」

「し、しかし蓮華さま…!」

「思春」

「……はっ」

 

蓮華と呼ばれた女性の一喝で、詩乃の拘束が解かれる。

祭も弓を下ろし弦を緩めた。

 

「詩乃っ!」

 

詩乃に駆け寄る剣丞。

 

「大丈夫?怪我はない?」

「え、えぇ…大丈夫です」

 

詩乃を拘束していた女性は、既に蓮華を護るようにして立っている。

 

「おいおい。思春も祭も、いくら何でもちょっとやりすぎなんじゃないか?」

 

翠が抗議する。

 

「ふんっ」

「ごめんなさいね、翠。今の私たちの状況じゃ、警戒してもし足りないくらいなのよ。

 明命も、そちらの方々もごめんなさいね。お嬢ちゃん、大丈夫だった?」

「おじょっ…」

 

蓮華に目線を合わせられ、あらぬ言葉をかけられ、拘束されたとき以上の衝撃を受ける詩乃。

 

「さて、それじゃ明命」

「は、はいっ!」

「話せば長くなる話をしてちょうだい。快適とは言えないけれど、中には陣も張ってあるわ。皆さんも、どうぞ」

 

蓮華、孫権その人に促され、剣丞一行は洞窟内へと入っていった。

 

 

 

 

 

説明
どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、49本目です。

別作品を投稿してたため少し間が空きましたが、今回から第参章に入ります。
参章は、全体を四つの組に分け、各組に少しずつスポットを当てていく予定です。
この参章の壱はメインルートとなります。

組分けは前回を参照していただき、また現在の呉の状況に関しては
http://www.tinami.com/view/735128
http://www.tinami.com/view/736443
こちらを参照して頂ければ、よりお楽しみ頂けると思います。


まだかなり先の話になりそうですが、本編だけでなく幕間として戦国・三国を入り混ぜた拠点フェイズのようなものを考えています。
もし、見てみたい組み合わせやシチュエーションなどありましたら、是非コメントなどでお知らせ下さい^^
まだ出ていない娘でも構いません。
随時募集しております。

なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。
その辺、お含み置き頂ければと思いますm(_ _)m
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コメント
いたさん>ありがとうございます!名だたる名軍師の思考を読み解くのはなかなかに骨です^^;ただでさえこの章は大変なのに…(DTK)
更新お疲れ様です。 そうですか……木の葉は森に隠せ……ですか。 流石の献策ですねッ!(いた)
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