地球防衛軍4 車両
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・ネグリング自走ロケット砲

 フォーリナーの飛行ドローンや巨大生物は数百体で押し寄せることも稀ではなく、2017年の戦いではその圧倒的な人海戦術によって世界各国のEDFは押し潰されてしまった。

 戦後のEDFシベリア方面軍は、迫り来る数百体もの敵を押し返す陸上兵器を求めた。その結果、レーザー兵器を搭載した車両と、小型誘導ロケット弾を搭載した車両のふたつの案が生み出された。

 両者に共通するのは衛星や無人偵察機、歩兵のアーマーに装備されるセンサーなどとリンクしてマルチロックできるシステムを持つことである。発射源となる母機のレーダーも活用されるが、ほかの兵器と連携した情報確保圏の構築によって高い命中精度と制圧力を得ようと試みるものであった。

 レーザー兵器を搭載する案はあっさりと廃案となった。レーザー兵器は対空兵器として高い実績を持っていたし、実際にレーザー兵器を搭載した自走対空砲を開発配備している国も存在していたが、レーザー兵器は遮蔽物によって簡単に射線が遮られるため、航空戦力はともかく地上戦力を攻撃することは不得手であった。

 その一方で歩兵用マイクロミサイルのMLRAは弾頭の小ささから威力は低く、巨大生物や飛行ドローンを確実に撃破できなかったが、複数回の射撃が許される状況では敵を圧倒し一方的に殲滅できたのである。小型誘導ロケット弾にはすでに一定の実績があり、このことから誘導ロケット案は採用に至った。

 試作段階では50発の誘導ロケット弾を装備する仕様であったが、シミュレーションでは巨大生物を阻止しきれなかったため、仕様が大幅に改変され100発の誘導ロケット弾を装備することとなった。誘導ロケット弾10発で1セットのポッドを形成し、それを10個の発射口にそれぞれ搭載する。50発搭載の第1試作車を経て、第2試作車で100発の搭載が可能となった。通常のロケット弾も開発されており、砲撃任務にも転用可能である。

 最大ロックオン数は発射口に合わせて最大で10個である。射撃時には10個の発射口からそれぞれ1発の誘導ロケット弾がポッドから分離し、合計10発が連続発射される。ポッドごとではなく発射口ごとに発射するのは、ひとつの発射口にミサイルの噴射熱が集中しないようにするためである。

 ネグリングに搭載される誘導ロケット弾は歩兵用のものと比べると大型ではあるが、通常のミサイルと比べると小型なことから推進剤の搭載量が少なく射程は短く、最大で700メートルほどである。誘導方式は指令誘導と赤外線/画像誘導の複合である。空軍や宇宙軍とデータリンクし精密な位置情報を取得し目標まで推進し、終端誘導時に赤外線と可視光線で目標を捉える。

 エンジンは非力である。小型の誘導ロケット弾といえど100発も搭載すればその重量で速度が出せなくなってしまった。装甲も薄めで簡単な防弾にとどまっているにも関わらず、非常に機動力に欠けるものとなっており、戦車や装甲車に追従できなかったとされ、その後も研究が重ねられた。

 また第2試作車のミサイルは火力が低い問題を抱えていたが、火力が解決すればEDFの切り札的な戦力となるため試作は続行し、XM型を経てD1型へと発展していった。

 なお搭載するロケット弾は誘導性能を持つため本来であれば「ミサイル」と呼ばれるべきだが、開発国のロシアでは無誘導ロケット弾もミサイルもまとめてロケットを意味する「Ракета(ラケータ)」と呼称しているため、EDF日本支部が日本語に訳する際に「誘導ロケット弾」と表記された。

 とはいえ専門家の間でもミサイルと呼ぶ人も多く、それで問題が起こっているわけでもないので、誘導ロケットでもミサイルでも呼ぶときはどちらでも問題ないだろう。

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・ネグリング自走ロケット砲XM

 ネグリングは配備されるまでにいくつか試作車両が作られているが、その中のひとつにXM型と呼ばれるものがある。このXM型は第3試作車とも呼ばれており、第2試作車のすぐ後に製造された。

 ネグリングは100発の誘導ロケット弾を搭載することで仕様が確定していたが、開発者の間でこの誘導ロケット弾の命中率に疑問が持たれていた。もともとネグリングとその誘導ロケット弾は偵察機や歩兵とのデータリンクを前提とした仕様であるため、これらが欠けている場合はネグリング自身のレーダーだけに頼らなければならず命中率が低下する。またロケット弾自体が小型のため終端誘導に使うシーカー部分も性能が低く、これも命中率に疑問が持たれる一因となった。

 よって命中率の問題を是正するためにさらに新たなネグリングが試作されることとなった。プランはふたつに分かれ、ひとつは「さらに小型化した誘導ロケット弾を搭載し、弾幕によって命中させる」という方法。もうひとつは「大きく高性能な誘導ロケット弾で命中率を向上させる」という方法であった。

 前者を第3試作車、後者を第4試作車に分類し試作が始まったが、第4試作車は実機が製造される前に計画が終了した。大型の誘導ロケット弾では弾数が不足し少数の敵しか倒せず、大戦以前の普通のミサイル車両となんら変わりがなかったからである。

 一方の第3試作車は、第2試作車に使われた誘導ロケット弾と同サイズの弾にさらに超小型誘導ロケット弾を搭載する仕組みとなった。

 まず親機となる10発の誘導ロケット弾で1セットのポッドを形成する。このポッドを10個の発射口にそれぞれセットするのは第2試作車と同じである。そして親機の中にはさらに小型の誘導ロケット弾が4発内蔵されている。

 親機は発射されるとデータリンクにより情報を取得し目標へ誘導する。ある程度目標へ接近すると親機は自壊し、内部の子弾が露出。4発の小型誘導ロケット弾が目標への追尾を開始する。この子弾は非常に小さく偵察機やネグリングからのデータを受信するセンサーを搭載するスペースも残されておらず、超小型の赤外線/画像誘導シーカーによって誘導する。

 親機に超小型ロケット弾を内蔵するのは、超小型ロケット弾の推進剤消費を抑えるためである。いわば多段ロケットと同じような理由であり、親機は目標の近くまで中身を運ぶためのキャリアーに過ぎない。

 このように複数の超小型誘導ロケット弾によって目標を追尾することで、確かに命中率は向上したが1発ごとの火力が致命的に下がってしまった。またロケット弾の構造が複雑化しコストが非常にかかることが予測されたため第3試作車案は放棄され、第2試作車をベースとした製品版が開発されることとなった。

 だが開発者は子弾に分裂するロケット弾にとても愛着があったとされ、2025年の戦いの末期頃にはXEMと呼ばれるXMの発展型を生み出している。

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・ネグリング自走ロケット砲D1

 D1型はネグリング自走ロケット砲のEDF制式採用型でシベリア方面を中心に配備されたモデルである。

 ネグリングの開発にあたって数種類の試作車が開発されたが、D1型は数ある試作車の中でもっともオーソドックスな形の第2試作車をベースに改良が施されている。試作型のものより改良されているため、誘導ロケット弾の破壊力はさらに向上している。

 エンジンも大幅に改良されたことで戦車や装甲車に追従可能となっており、統合運用が可能となった。しかし履帯が試作段階と変わっていないため、エンジンのパワーに対応できず滑りやすかったという。実際に運用していたロシアでは何件もの事故が起こっており、D2型以降改良されることとなった。

 輸出は多岐にわたりシベリア方面軍傘下の国だけでなく、もともとロシア製の兵器を導入していた国でもライセンス生産やコピー品の製造などがされた。またアメリカもライセンス生産を決定し、こちらはM1型として配備された。アメリカのライセンス生産をきっかけに欧州方面軍にも輸出が進み、世界規模で運用されるに至った。ロシア製のD系列とアメリカ製のM系列に分かれているのは部品の規格が原因で、見た目こそ両者にそれほど違いはないが使われている部品に違いがある。

 配備後も改良が進んでおり、特に誘導ロケット弾の破壊力は目覚ましく進歩していた。初期の誘導ロケット弾では巨大生物や飛行ドローンを一撃で撃破できなかったが、2025年時点では改良が進み一撃で撃破できるほどの火力を有していた。

 実際に2025年の戦いにおいて実戦投入されネグリングは多大な戦果を残しており、100発の誘導ロケット弾によって押し寄せる巨大生物や飛行ドローンを一方的に撃破していった。

 推進剤の搭載量が物理的に限られ飛翔距離が短く、前線で運用する必要があることからネグリング自身が敵の攻撃にさらされることもあった。ネグリングの装甲は簡単なものにとどまっており、まともに敵の攻撃を受けるとすぐさま大破してしまった。だがこの欠点はほかの部隊と共同運用することでカバー可能であり、最前線に敵の注意を引きつける部隊がいればネグリングは攻撃だけに集中することができた。

 特に顕著なのが日本の関東にてマザーシップから無数の飛行ドローンが発進したが、2両のネグリングがこれを殲滅したことである。歩兵部隊が最前線で囮となり飛行ドローンの注意を引きつけ、その間にネグリングが飛行ドローンを瞬く間に撃墜したのである。

 ネグリングがフォーリナーの飽和攻撃に対抗できる兵器であることを証明した戦闘であり、これをきっかけに各国でネグリングの大量生産が始まり、大戦を通して活躍を続けた。

 とは言え最前線で囮となる兵士にとって頭上で炸裂する誘導ロケット弾は恐怖以外の何者でもなく、爆風に巻き込まれた戦死者も決して少なくはない。

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・ネグリング自走ロケット砲M3

 ネグリングはロシア製造のD型とアメリカ製造のM型に分かれているが、M3型はアメリカ製にあたる。

 アメリカとソ連の冷戦は長期に渡り、ソ連が崩壊し冷戦が終結したあとも米露の対立は緩やかに続いていた。2014年のウクライナ内戦で米英がロシアへ経済制裁を行い、ロシアがドネツク人民共和国やルガンスク人民共和国を支援したことは、紛れもない対立構造の現れであった。だが2017年にフォーリナーという人類共通の敵が現れたことで両者の関係には大きな改善が見られた。

 戦中にシベリア方面軍の主要国であるロシアは、EU諸国などによって構成される欧州方面軍と相互協力体制を整えた。これはロシアが西の国境や飛び地のカリーニングラード、そしてシベリア方面軍区の突起部にあたるベラルーシを防衛するにあたって、欧州方面軍の協力を必要としたためであるが、それでもこの協力関係によって軍区の境界付近ではシベリア方面軍と欧州方面軍の共同戦がたびたび行われた。

 また戦後においてはロシアとアメリカは戦闘機を共同開発するなど、両者の態度は軟化し地球規模の対宇宙防衛体制が整えられつつあった。ロシア製のネグリング自走ロケット砲がアメリカでのライセンス生産が認められたのも、両国の関係が改善されたからである。

 こうして西側と東側の対立は過去の出来事と化したが、それでも長きに渡って続いた冷戦はそれぞれに独自規格の流通をもたらしていた。ロシアなどのCIS諸国ではGOST規格(国家標準規格)が使われているが、アメリカではANSI規格(アメリカ国家規格協会規格)が使われる。両国共にISO規格(国際標準化機構規格)になるべく合わせようとする動きがあったためある程度の共通化が果たされているが、それでも細かい部分では独自の規格が幅を利かせていた。西側は西側で、東側は東側で規格が統一される傾向にあったが、西側と東側では差が比較的大きかった。この差は、たとえばロシア製の兵器をアメリカが運用する際、ねじやボルトにGOST規格のみに対応したものが使われていると整備の際に障害となる。

 ネグリング自走ロケット砲もGOST規格のみに対応した部品が数多く使われており、アメリカなど西側諸国が運用すると稼働率が低下しがちになる。そのためアメリカはロシアにGOST規格の部品をなるべくISO規格に合わせ、できない部分はANSI規格にするという形で自国導入を図った。ロシアから許諾が得られると、アメリカの規格に合ったM型が作り出された。

 西側諸国ではロシア製のD型ではなくアメリカ製のM型を欲しがる声が出始めた。ロシアはアメリカと合意の上で、ロシアにもライセンス料を支払うことを条件にアメリカの生産品を輸出することを許可した。

 こうしてネグリングはD型とM型に分派した。ロシアとアメリカは改良にあたってお互いに使用した技術を公開する協定を結んだため、どちらかが改良を施すともう一方にも技術がフィードバックされるようになっていた。そのためD型とM型はお互いの発展に合わせて同じ改良が施され、世界中でネグリングが活躍する一因となった。

 2025年の戦い当初はD1とM1が主に配備されており、一部アップデートされた車両がD2とM2として配備されていた。そして戦中にはD3とM3に発展した。

 ちなみにネグリングの導入を早期に決定した日本では、GOST規格のD1型が配備されていた。その後アメリカがネグリングを導入しM型を生み出すと、日本も以降はM型を導入したが、整備員は両方の整備方法を学ばなければならなかったため不評だったという。

説明
最終更新:15/7/3 誤字修正とネグリング自走ロケット砲M3の追加した上で再公開
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