新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第041話
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新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第041話「作戦会議」

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襄陽にて劉表率いる荊州軍、孫策率いる呉軍はそれぞれ自らの陣地にて着陣しており、劉表側としても自らの庭である為に、土地勘の持っている荊州軍側に有利に傾く。

だがそれだけではない。

荊州軍が籠る襄陽の砦は山の上に築かれた砦であり、そこに向かうまでの通りは急な斜面であるのだ。

無理に砦に攻め入ることになれば手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。

「それでは軍議を始める」

程普の号令と共に、呉陣の天幕では天幕内に集まった呉の重臣たちの顔も締まる。

彼が孫家の家臣として復帰したことで、周瑜の立場は程普に空け渡され、現在では周瑜は陸遜と同じ副軍師の立場におり、呂蒙に関しては経験を積ませる為に、周瑜から程普の軍師補佐の配属に変わった。

「それではまず大まかな事柄を決める前に、策殿よりこの戦いの方針を決めて頂こう」

先日黄蓋と語りあった時と違い、彼は公の場では『穣』などの呼び方は控えていた。

その祭であるが、これまで通り、この戦いには参戦する意思を固めている。

彼女のお腹には泊地の子が眠っており、彼も必死に帰国を薦めたのだが、雁に聞かず、この戦が終わり次第速やかに療養生活に入ること。戦にて決して無理をしないことで程普も折れた。

勿論周りには知られてはいない。

もし知られることになれば、確実に強制送還されることになるからだ。

一度は泊地もその方法も考えたのだが、周りに諭されるほど反発する性格を熟知している為にあえて告げることを控えた。

だが手は打ってある。

同じ新しき学び舎、影村塾で苦楽を共にした((赤飛|チーフェイ))……凌統にのみ話し、祭の影の護衛を任せたのだ。

勿論赤飛も祝福と相まって直ぐに祭の帰還を助言するが、既に行われた行為をまた行えば、祭はより無茶をすると思い、彼の助言のみ有難く頂いたのだ。

泊地は今回の戦において、表立っては赤飛を祭と同じ編成にし、もし祭の身に何かが起ころうとした時は、例えどんなことがあろうとも祭を気絶させて逃がす様に頼んだのだ。

例えそれが泊地や孫呉の大黒柱である雪蓮の命の危険であろうとも。

そのような自らの主に半ば刃をたてるような願いも赤飛は喜んで引き受け、泊地はそれを聞くと嬉しさで目じりが熱くなったという。

そして変わり軍議である。

「勿論。私が先頭きって敵を蹴散らす……って言いたいとこだけど、あの母さんが勝てなかった相手。今回は流石に自重するわ。敵の劉表を知っているのは父さんと母さんの時代から仕えてくれている泊地と祭よね。今回の戦は二人の指示に任せるわ」

「おう。任されたわ」

黄蓋はその大きな態度と胸を張り、存分に威張る。

「あの時白龍には手痛い目にあい、結果、前主の堅殿を失うことになったが、今回はそうもいかん。策殿、冥琳、穏、赤飛の様な経験者。亞莎、明命、銭姫の様な若い世代が居る。これだけの人材がいるんだ。負けるはずがない」

「な?」っと言わんばかりに程普は黄蓋の顔を覗くと、彼女は彼女で少し頬を染めながら穏やかな笑みで微笑む。

そのいつもとは違った妖艶な表情に、程普は年甲斐も無く顔を祭以上に染め上げ、雪蓮からは何があったのかを軽い気持ちで聞かれ、慌てて場を取り繕う。

情緒不安定な泊地を見ると、察しのいい面子である雪蓮と冥琳は面白い道具を見つけた子供の様にニタつき、赤飛は墓穴を掘った泊地の行動をやれやれと思いながらため息を吐き、若い他の面々はどういう事か首を傾げる。

程普は大きく喉を鳴らすと、元の将の顔に戻りまた軍議を再開した。

「敵方の劉表、黄祖は両者とも頭が切れ、剣や権を振らせても一線級。さらに加えて敵の陣には劉備もいる。彼女だけであれば荊州軍に対した影響はないが、その配下の武将が問題だ。その配下に関羽・張飛・趙雲・馬超・馬岱の豪傑。軍師には諸葛亮・鳳統の賢人あり。まさに何でもござれだ。ここまでで何か質問はないか?」

「ほいな」

程普の饒舌に一番最初に質問をしかけたのは敵方諸葛亮の姉でもある諸葛瑾である。

「泊地はん。そないな鉄壁の人材の宝庫に、どうつけ入ろうと思うとるんどすか?」

「いい質問だ。まず敵方の最大の頭脳と言っていい諸葛亮と鳳統に関しては、後ほど彼女達の姉弟子である銭姫に存分に話を聞きながら戦略を考える予定だ。彼女達の趣味、仕草、癖、好きな物。ありとあらゆる事を聞くから、銭姫、今のうちに改めて思い出しておけ」

「ほいな」

「次に周りの豪傑達に関しては……策殿、主には関羽の相手をしてもらいたい」

「ん〜〜いいわね。『山賊狩りの美髪公 関羽』、今からでも腕がうずうずしちゃうわ」

「いや、策殿には今回、ただ本能のままに関羽と戦うのではなく、常に冷静に関羽のことを分析してもらいながら戦ってもらいたい」

「ん?それはまたどうして?」

何処か渋ったような顔で孫策は程普に質問すると、その問いを彼は淡々と説明しだした。

「関羽雲長。俺は以前、重昌の親父殿に劉備軍で恐れている人材は誰かと質問した時、親父殿は二人の人物を答えた。一人は趙雲、もう一人は関羽だと」

雪(雪蓮)は思い出した。

この世界の関羽は過去の椿(愛紗)であることを。

重昌の下で一線級以上の将へと成長した椿(愛紗)。

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この世界での関羽が果たして同じ能力であるとも言い切れないが、一度出来た事はもう一度出来る法則に基づければ、関羽が別の方法で成長し、椿(愛紗)以上の武将になることは、無きにしも非ず。

それを考えても十分に恐ろしい人物となりえるのだ。

「関羽は劉備の下にいるから霞んでいるが、仮に劉備の下より飛び立ち、劉玄徳の家臣関羽ではなく、自らの理想を示した関雲長となれば、いずれ劉備の魅力など足元に及ばなくなると。趙雲は、普段おちゃらけてる様に見え、相手を舐めた様な態度を取っているが、自らの信念を決して曲げない心根を持ち。戦いに関しても決して無茶や妥協はせず、危険な冒険も最後は勝ち取り、冷静に戦場を見る千里眼を持つ為、失敗はない。だからその趙雲の相手には祭と赤飛を配置する」

「よかろう。そのひよっ子の相手、儂らは喜んで引き受けよう」

「頼む。赤飛も手筈通りな」

「……御意に」

「亞莎、軍師に転換してからというもので悪いが、今回お前にも戦場に出てもらうぞ。人手が足りん」

「は、はい。頑張ります!!」

「うん。銭姫もだ。槍の振り方は忘れてないな?」

「あいなぁ。呉の文官達に護身術を教え取るのはこの私どすえ。いつでもいけますぅ」

「よし。亞莎は明命と共に張飛を抑えろ」

「ちょ、張飛ですか!?」

『燕人 張飛』の抑え役を任された途端、周泰も裏声を挙げて驚いた。

「大丈夫だ。何も討ち取れとまでは言わん。兵を使ってもいい。ただ張飛を”抑えれば”いいだけだ……出来るな……?」

抑えるだけ。簡単に燕人と呼ばれる張飛を抑えれば彼女達もここまで苦悶しないであろう。

「……亞莎、明命。張飛達に無くて、お前たちにあるものとはなんだ?」

張飛に無くて自分達にある物。

そう考えた瞬間に、二人は声を揃えた。

「「頭?」」

頭。知識、頭脳である。

呂蒙は勿論の事、戦いにおければ周泰の武は張飛のソレに及ばないだろう。

だが物事の判断、冷静に相手を分析する能力。戦場を見渡す千里眼に関しては、周泰は負けているとはとても思えなかった。

「そうだ。張飛の近くに関羽がいれば、長年連れ添った二人の息にお前たちは確実にやられるだろうが、今回、関羽の相手は策殿がやってくれる。片方を切り離していれば、お前たちに十分勝機はある」

「「はい!!わかりました!!」」

二人の親友が仲良くハモった元気な返事を聞くと、程普もこの二人なら任せられると思った。

「次に馬超、馬岱だが。奴らは初撃で荊州の騎馬隊を使い突っ込んでくるだろう。冥琳、お前は全軍を指揮して迎撃態勢に入り、奴らの進軍を阻止しろ。穏は冥琳の補佐だ。他にも諸葛亮達が何か奇策を用いた時の対処も任せる。詳しいことは後で言うが、場合によってはこの中で最も仕事の役割が多いことになるかもしれん。覚悟しておけよ」

「お任せを」

「はい〜。わかりましたぁ」

改めて彼は若き軍師たちに頷くと、周瑜はそれに頷きを返し、陸遜はことの重大さが判っているのか判っていないのか、変わらずのほほんとしている。

「だが忘れるな。奴らにはまだ公孫?もいるのだと」

公孫?と名前を出されて二人は何処かピンと来ていない様子だが、程普は淡々と続けた。

「幽州では袁紹を自慢の白馬隊で何度も苦しめている。特に突出したところはないが、心技体、全てに精通している将だ。普段は劉備の傍に控えているが、こちらが不利と見ればすぐさま敵方の援軍、つまりこちらの陣に突っ込み、我らを苦しませること間違いない。十分に注意しろ」

「……わかりました。その忠告、しかと胸に刻んでおきます」

皆の配置を告げ終わり、もう一度周りを見渡すと、視線が全て程普に向かっている。

皆作戦の指示を出す程普がどのような行動を取るのか注目が集まっているのだ。

「俺は……劉表と黄祖の相手をする」

その一言は、まわりの空気を凍りつかせるのに十分であった。

先程劉表と黄祖は油断ならない相手と助言しておきながら、その二人を相手にするというのだ。

正気の沙汰とは到底思えなく、皆は程普に自重を促した。

「ちょ、ちょっと泊地。あたしには慎重になる様に言っておきながらそれはないんじゃないの?」

「そ、そうですよ!!無茶はしないで下さい!!」

「そうですねぇ。ホントに一度落ち着いた方がいいと思いますよぉ」

「それに、泊地殿は足が……」

孫策。周泰・陸遜・周瑜がそれぞれに泊地に言うが、彼はニヤリと笑う。

「祭、俺たち塾生達の実力を皆に教えてやれ」

そう言われると、黄蓋は渋る様に答え始めた。

「……当時、堅殿達とで誰が一番、武力が上か競ったことがあってな。参加メンバーは孫堅・劉表・黄祖・儂(黄蓋)・韓当・程普・孫景じゃ」

韓当と言葉が出た時、雪蓮達呉の重鎮組は耳を澄ませた。

当時孫景に仕えていた将の一人で、雪蓮が物心ついた時には既に蒸発していた。

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当時、母親にその話をふれば韓当は既に死んだとのこと。

「結果を挙げるのであれば、堅殿の圧勝で続いて程普・劉表・儂と続き、韓当と黄祖同列じゃったな。景殿は何故参加したのか判らない程圧倒的に弱かったのう」

そんな話を聞き、雪蓮の頭にはありありとその光景が目に浮かんだ。

昔より自らの父孫景は、何をやらせてもなんでもそつなくこなし、政に関しては神がかって力を発揮していたが、武の方はからきし駄目であり。いつも母親の孫堅に殴られては転がっていた。

逆に母孫堅は、何をさせても不器用で、唯一武と軍の統制だけは神をも超越した才能を見せており、何故二人が結婚できたのか当時は不思議に思っていたが、今思えば互いに足りない所を補わせ合っていたからこそ全て上手く言っていた気がした。

実際、こと子育てに関しては父の方が上手くやっており、雪蓮が馬に括り付けられ母に戦場に連れて行かれた日。帰ってから、いつもは父を無茶苦茶にする母が珍しく、激怒する温厚な父にタジタジになり、いつも感じていた大きな母の背が、その日は恐縮する様に小さくなっているのを今でも記憶している。

その様な事を考えながら、雪蓮は黄蓋の話に耳を傾けていた。

「……と言う事だ。策殿であれば堅殿譲りの武で圧倒出来たのだが、この軍で関羽に匹敵する武将は策殿以外いない。だから俺があいつらの首を取る。大将さえ討ち取ればこちらの勝ち。それまで皆は耐え忍んでくれればいい」

「せやけど泊地はん。あんさん足が不自由とちゃいますの?」

そう。忘れてはならないのは、程普の左足は戦での負傷により腱が完全にイカレ壊れてしまい、膝より下の自由が利かないのだ。

「ふふふ、自らの弱点をそのままにしておく俺ではない。俺はその為に重昌の親父殿の下で修業したと言ってもいい」

皆、程普の言っていることの意味が分からずにいたが、次の彼の行動で、その本当の意味を知ることになる。

 

説明
コメントが欲しいですね。

やっぱりこういう作品投稿する上で楽しいことは、皆さんの感想なんですよ。
じゃなければこんな一円にもならない作業なんt……ゲフンゲフン。

まぁ、とりあえず皆さん、作品に対する感想や誤字脱字などの指摘があれば、遠慮なく呟いてください。
炎上さえなければたえれると思うので!!

それでは投稿です。
てか私もよく40話以上も書いたもんですよ。

まじかるー
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コメント
kazoさん〉ギャグ書くのも疲れるので、どうしよか悩んでます。日常パート辺りで挟めたらと思ってますが。(IFZ)
1話から読み返してみて思ったのは、最近ギャグ回が無いな〜って感じました。【ジェ○トビーム】とか(笑)(kazo)
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