おにむす!I
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「鬼を・・・殺す?」

矢崎は混乱した頭で聞き返す。

秋穂の中にいるという鬼を殺すということは秋穂も何らかの実害を被ることになる。

「殺すと言っても物理的に殺すわけじゃないさ」

アリスはやれやれといった様子で矢崎の向かいに腰を下ろす。

「簡単に言うと、人格の統合さ」

「どういうことだ?」

聞きなれない言葉に矢崎は頭の上に?を浮かべている。

「そのお嬢ちゃんの意思と中にいる鬼の意思を一つにしちまおうってことさ」

「できるのか?」

「理論上はね」

アリスは複雑な表情を浮かべ呟いた。

「ただ、そのお嬢ちゃんの意思が鬼の意思に取り込まれる可能性もあるのが・・・ね」

「何だそれ!」

矢崎はテーブルを強く叩く。

秋穂は怯えた様子で身を縮こまらせている。

「あ、悪い、驚かせたか?」

秋穂は首を横に振った。

「お父さんが心配してくれるの嬉しいよ?」

言葉とは裏腹に握った手は震えていた。

「どうにかならないのか?鬼の意思を封じ込める手段とか」

「随分躍起になるじゃないか?その子がそんなに大事か?」

「秋穂は・・・、俺を変えてくれた。誰にも干渉できず、触られたくない心と向き合わせてくれたんだ」

アリスも黙って耳を傾けている。

「・・・どれだけ救われたと思ってる・・・、俺はこいつを救ってやりたい、人間として、父親として」

矢崎は不意に涙を流していた。

秋穂はただ気まずそうにおろおろしている。

「へぇ」

アリスは感心したように自身の懐に手を伸ばした。

その手に握っていたものを矢崎に差し出す。

「あんたがそれだけの覚悟を持ってるならあたしもそれに乗るさ」

携帯電話と小口径の拳銃がテーブルに置かれた。

「お嬢ちゃんを救うと言ったからには、殺しはできないなんて甘いことを言うんじゃないよ」

「こっちは?」

携帯電話に目を向ける。

「儀式的なもんだよ。もう一人のあたしへの『パス』だ」

アリスは携帯を耳に当てる。

「あぁ、御堂の奴とやりあうことになった。あんたにゃ辛いかも知れないが、生きてるこの子を救うんだ、鬼を殺すなんて物騒な依頼じゃなくなった、それでいいか?」

誰にかけているのか?

やがてアリスは携帯を下ろした。

「御堂ってのは?」

「御堂財閥のトップにして、裏社会にも幅を利かすマフィアの首領です」

アリスの口調が変わっていた。

「では鬼の力の意味からご説明いたします」

矢崎はその言葉を遮った。

「その前に君は誰だ?」

明らかにさっきまでのアリスと様子が違う。

「あなたからしてみれば初めましてですね、キャロルと申します」

そう名乗ると、キャロルはぺこりと頭を下げた。

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