【オリジナル】「炎の香り」【Twitter300字ss4月分参加作品】
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男は瞳を閉じている。

 

耳に入るのは、薪が燃える音だけだ。

そこにはパチパチと言うほのかな音と、独特の香りが広がる。

 

薪の香り……火の臭い。

 

男にとってそれは、優しさと狂気の象徴だった。

 

優しい香り。

そこには暖炉があり、家族があり、家庭があった。

温かい食卓を囲むのに、火は欠かせない存在だった。

 

狂気の臭い。

それは、それらを全て焼き払った戦の記憶。

男の故郷には既に何も残っていない。

燃え盛る炎が、全てを焼き払った。

全てが奪い去られてしまったのだ。

 

優しい香り、狂気の臭い。

相反する二つの記憶。

 

そして今、男はゆっくりと瞳を開く。

 

男の前にある炎は、香りと臭い、一体どちらなのだろう?

どちらに誘おうとしているのだろう?

説明
https://twitter.com/tw300ss/status/593037120308060160
今回のテーマは「匂い」でした。
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