真・恋姫†無双魏√EDアナザー 外史の統一者2-9
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一刀は洛陽の街の様子を見て・・・そして愕然としていた。

 

表向きはそれなりに栄えている様に見せかけていて・・・その少しでも裏を覗けば本当に酷い有様

 

だった。本来街を守るはずの警邏兵は裏路地で人を殴り何かを奪い、そして表通りの店では店主と

 

何事かを話して物を奪うように取っていく。少し格好の良い身分が高そうな文官の風体をした男

 

は、金を確かに渡すが店主に何か言われ・・・その店主に何事か言うとその顔が真っ青に染め上げ

 

られ・・・俯いた。それを満足そうに見てその文官は店の前から立ち去る。前の外史では覇王を目

 

指す華琳の厳格な統治、そして今回は月の優しい統治・・・それらを見ていただけに一刀はその街

 

の有様に怒りを覚えた。

 

(なんだよこれ・・・董卓の暴政云々のくだり以前に酷すぎるじゃないか)

 

そうした思いと怒りをもちながらも一刀は街の中を歩き続ける。

 

子供に笑顔が少ない、店に活気が感じられない、何よりも暮らしている市民が安心していない。

 

(市民同士の小競り合いは無いのに・・・上が腐っている・・・)

 

だからこそ一刀はその店主達に話しかける。この街をどうすればいいか、この街にどうなって欲し

 

いかを聞いていく。最初は一刀の服装が見たことも無いものであるが故に、偉い役人と勘違いさ

 

れ、脅えられるか対応すらしてもらえない。けれど

 

「俺はここを変えたい・・・前にいたところみたいに活気のある街にしたいんだ・・・だから・・・貴方たちの意見も聞かせて欲しい、お願いします!」

 

そう言って頭を下げる一刀に次第に民衆が答えをくれる

 

治安を回復して欲しい、上のわがままを何とかして欲しい、それらを筆頭として数多くの意見が得

 

られていく。そして一刀は本来の目当てとしていた行商人たちを見つけると

 

「この街は今度来た董卓の元で良い方向に変わる」

 

そんな話をして風潮として広げるように、そしてそれを証明するために少しでも長く滞在してもら

 

おうと頼み込んだ。そんなことをしていると・・・見覚えのある赤みがかった髪をした一人の少女

 

が、肉まんを売っている出店の前で物欲しそうにそれを眺めているのを見かけた。

 

「・・・呂布・・・?」

 

そう呟きその少女を見ると・・・ひたすらに肉まんを眺めていた。時折自分の腹を見て・・・そし

 

て懐に手をやって何かを探し、ものすごく落ち込んだ顔をしてまた肉まんを見つめる。

 

「お嬢ちゃん・・・買わないなら他所へ行ってくれないか?」

 

そんな店主の声も聞こえているのかどうか、その目があまりにも肉まんを見つめるので

 

「おっちゃん、肉まん2個頂戴」

 

「へい!」

 

少女はその様を羨ましそうに、そして一刀は肉まんを受け取ると

 

「はい、食べたいんだよね?」

 

一つを少女に差し出した。

 

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「・・・・・・・・」

 

沈黙と一緒に子犬のような目で見つめられる、なんで?と言いたそうに

 

「・・・俺の知っている人に似ているから・・・かな」

 

そう言って苦笑、似ているどころかかつての敵なのだから。

 

そして少女は肉まんと一刀に視線を見やり。グゥゥゥゥ〜〜〜、と鳴った腹に手をやってから。

 

「・・・・・・ありがとう」

 

そう言って肉まんを受け取りもくもくと口に放り込む。すごい勢いで肉まんがなくなり

 

また物欲しそうな目を浮かべる、その様子に笑顔を見せて

 

「おっちゃん、肉まん10個」

 

「・・・へい?いいんですかい?」

 

その店主にいいからいいからっと肉まんを催促、その一刀を驚く目で見つめる少女は。

 

「・・・・・・・・いいの?」

 

その言葉にも

 

「いいよ。美味しそうに食べてる姿をみちゃったからね、もっと見たいんだ」

 

そう言って聞かせる、程なくして肉まん10個が少女の手へと渡り

 

「ところで・・・名前はなんていうのかな?」

 

「・・・・・・・恋」

 

「真名・・・だよね?いいの?」

 

「・・・・・肉まん一杯くれたから・・・・いい」

 

そんな会話もしながら少女、恋と一刀は肉まんを食べつつ街を歩いていた。

 

「・・・・・・名前」

 

「俺は一刀だよ、北郷一刀。字と真名は無いから・・・一刀って呼んで欲しい」

 

こくっと一度うなずいて

 

「・・・・・・・一刀、ありがとう」

 

そのお礼が妙に暖かい。だからつい

 

「もっと食べる?」

 

なんて風に聞いてしまう、それを聞いて恋は何かを欲しそうに見るが。

 

「・・・・・・食べない、お土産」

 

そう言って残っていた肉まんを大事そうに抱え込んだ。

 

「・・・優しいね、恋は。誰にお土産?」

 

「・・・・・・・・・・セキトやチンキュ、恋の家族」

 

それを聞いて恋の頭を優しくなでて。

 

「ちょっとここで待っててね」

 

そう言って一刀はもと来た道を少し戻り、一刻もせずに戻ってきた、手に肉まんやらなにやらと食

 

べ物を抱えて。

 

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「じゃあ優しい恋に俺からのプレゼント・・・じゃあ通じないか、贈り物」

 

そしてそれを恋へと差し出す。やはり疑問の目で見られるが

 

「恋が優しい女の子だって知って嬉しくてね、俺の知り合いが似ているって言ったけど、その子が

どんな子なのか俺は一面しか見ていなかったんだ。それを覆してくれた恋にささやかだけどお礼代

わりにね」

 

そう言って笑みを浮かべる一刀を

 

「・・・・・・・一刀、いい人」

 

そうして恋はどこか恥ずかしそうにその食べ物を受け取った。その時間は

 

「呂布様!丁原様がお呼びです、お戻りください!」

 

そんな一人の近づいてきた兵の言葉で終わりを告げた

 

「・・・・・・・一刀、お礼今度する」

 

そう言って立ち去る恋を一刀はかなり軽くなった懐具合とともに見送った。

 

「・・・さて・・・俺は月のためにやれることをやりますか!」

 

そう言って一刀は城へと足を向ける、すでに街の実情は掴んだのだから。

 

城へ帰ってきて一番初めに受けたのは華雄や霞、星からの怒号だった。

 

「いきなりどこに行ってたのだ!(行ってたんや!)(行ってたのですか!)」

 

三者三様しかし同じ言葉に「後で話す」とだけ残し詠の下へと急ぐ。

 

それから詠と一刀は二時間ほど部屋の中、二人きりで話を続けていく

 

この街で何が足りないか、この街に何が必要か、この街に何が不要かを

 

詠が城内で集めた情報と一刀が城下で知りえた実情を照らし合わせてこれからの方針を、政策を取

 

り決めていく。そしてこの密室だからこそ話せる会話もする。

 

「詠、信頼できる人は何人いた?」

 

「月や献帝、僕やあんたの身辺守らせている十数人以外だと・・・6人ね。」

 

「じゃあその6人には後ほど」

 

「・・・本当に一刀の言ったとおりになるの?」

「なるかどうかは正直分らない、けれど詠、最悪の筋書きを予想して対策を立てるのは悪くないと

思うんだ」

 

「・・・そうね、月や僕を一刀が裏切りはず無いから信じるけど・・・」

 

「まぁそうならないように急いでこの街を建て直そう、この有様は酷すぎる」

 

「そうね、上層部が完全に腐りきってるわ、賄賂の横行は当然、身勝手し放題のようね。兵の質も最悪の部類よ。・・・あの霞や華雄、星が調練するときに溜息をつくほどにね」

 

そう言って肩を竦める詠に苦笑を漏らして

 

「変えればいいさ、基盤はあるんだ。一度排斥して立て直す。この街は月に見せられない」

そうね、と頷く詠とともに一刀はさらに献策を続ける。その二人の話は日が沈むまで続く。

 

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そんな彼等の方策は見事に的中していき、二ヶ月立った時には洛陽は見違えるまでに立て直してい

 

た。具体的にやったことといえば兵の再教育、警邏隊の再編成と制度の完全変換、文官や宦官の裏

 

帳簿などをつきつけての一斉排斥、そしてそれに伴う新しい文官の抜擢。

 

税制の見直しと上げればきりが無い。これだけを2ヶ月でやり遂げたのは一重に天水での経験と洛陽

 

の基盤の出来上がり故である。それに伴って街の中は子供に笑顔が戻り、警邏は幼年の迷子の相手

 

から老人達の話し相手、そして犯罪への対処など実績を上げて信頼を取り戻した。もっともこの警

 

邏隊の責任者を一刀が引き受けたことで街の人たちからはすぐに受け入れられたのだが。そして行

 

商人達も頻繁に出入りするようになったり物流が栄え、そこにさらに人が集まるといういい循環も

 

生まれていた。この二ヶ月の変動には流石の献帝も唖然としていたのはまた別のお話。

 

「さて、この二ヶ月で大分洛陽もいい街になったと思うんだけど、兵のほうはどう?霞、華雄、

星?」

 

「最初に比べれば全然ましやで?戦う意思が無いものは兵役から屯田要員に持っていったことで残ったのは必然やる気のある奴等ばっかりやったしな」

 

「うむ、私たちの科した訓練もしっかりこなしていたようですし、問題は無いと思われますぞ?」

 

「問題点を挙げるとすればまだ初陣を飾らせてないくらいだな」

 

「ありがとう。次に一刀、街のほうは改めてどう?警邏隊長として。」

 

「そうだな・・・天水くらいの治安を維持できるくらいにはなったと思うよ?少なくとも表立ったところで悪いことする奴等はいなくなってきたから・・・月、今度一緒に街へ行こうか?」

 

「へぅ・・・一刀さんと二人きりで街」

 

二人きりとは言ってないですよ月さーん

 

「・・・まぁそういう話は後にしなさい!それで?他にこれといった問題点は無いのね?」

 

その言葉に5人は頷きを見せる

 

「それじゃあ今日はここまで『申し上げます!』・・・何事?」

 

朝議の終わりのところで兵が一人駆け込んでくる、その表情は慌てたもので。

 

「て・・・丁原様が兵を起こしこの城を目指して市街を駆けています!数は約500!しかしそれも

街中のことですので、警邏隊では対処する術も無く、民に被害が出ないようにするのが精一杯です!」

 

「・・・いつか起こる気はしてたけどまさか街中でとはね・・・」

 

とそんな呟きを見せて

 

「霞!華雄!一刀!星!兵をとって鎮圧して!なるべく民衆に被害が出ないように!」

 

「・・・いや、星にはやって欲しいことがある」

 

その詠の言葉に一刀が答える

 

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「なに?」

 

「兵100を連れて行って丁原の屋敷へと強襲をかけて欲しい、まさか城を狙っている自分が自宅を教われるなんて思ってもいないだろう?そこで星には帰る場所と退路を絶って欲しいんだ」

 

「理から外れてはいないわね・・・いいわ!星!一刀の言ったとおりにして頂戴!」

 

「御意!・・・ところで一刀殿?本当の狙いは何ですかな?」

 

そんな星の疑問にも

 

「俺も何かは分らない、けど行けば分ると思うんだ。正直今回は星に掛かっている・・・信頼している、頼んだよ?」

 

そう言って星を軽く抱きしめ後ろに回した手で頭をぽんぽんと撫でる。

 

「・・・い・・・行ってまいります」

 

顔が赤いのを一刀に見られぬように急ぎ出る星と

 

「むぅ・・・・ウチには?」

 

「一刀・・・私にしたあれは何だったのだ・・・」

 

「へぅぅぅ・・・・」

 

「一刀・・・・」

 

四者四様の声と目で見られて苦笑を一つ、背中に流れる汗は冷や汗か・・・

 

4人全員を抱きしめてから

 

「それじゃあ行こう?霞、華雄」

 

その声にはある種の覚悟が篭っていた。そのことに

 

「応!」「う・・・うむ」「気をつけなさいよ!」「無事に帰ってきてくださいね」

 

少し照れて舞い上がっている4人は気づかない。

 

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「駆けろ駆けろ!狙いは董卓の頸ただひとつよ!」

 

丁の旗を翻し馬を駆ける500の騎馬、その騎馬隊の前に、紺碧の張旗、漆黒の華旗、十文字の牙門

 

旗を翻した騎馬300歩兵500の董卓隊が立ちはだかった。

 

「董卓の裏切り者に仕える者たちよ?私のところへ来れば今以上の待遇を約束するぞ!この誘いを断れば地獄を見るものと思え!」

 

その言葉に霞と華雄は呆れて「三下だな(やなぁ)」とぼそりと漏らす。

 

「其方こそ!民衆のための治政を此方がすれば自らの益が減るというそれだけで馬を駆ったまさに愚侯!ならばその誘いに乗るわけにはいかない!おとなしく投降するならば其方の兵の命は保障しよう!」

 

双方元から相容れぬことは分りきっていたのでこれはあくまでただの儀礼、それゆえに

 

「ならば地獄を見るがいい!いけ!呂布よ!」

 

その言葉に2ヶ月前に会った少女が、天下最強の武を誇る少女が静かに騎馬を割って現れた。

 

「な!・・・」「・・・むぅ・・・」

 

両将はともにその少女を見て愕然としている。武将として本能レベルで強さを感じ取った故に、そ

 

れでも彼女達は

 

「・・・面白いやんか・・・ウチが出たる!」

 

「いや・・・私が出よう」

 

自らの武に多少以上の自信とそして誇りがあるが故に向かおうとする。その二人は

 

「いや、霞、華雄あれの前に行くのは俺一人だ」

 

そう言って一刀が二人の前に飛び出した

 

「何アホ抜かしとんねん!?アレの実力ぐらい一刀も少しは感じられるやろ!?ウチらのどっちかが足止めできるかどうかってもんや・・・なのにウチらより弱いあんたが行くなんて死ににいくんか?」

 

その言葉に華雄も同様の言葉をあげるそれでも

 

「ごめん、これはそういう一騎打ちとかじゃないんだ・・・今俺が出来る切り札というか賭けというか・・・けど二人は信じてみてて欲しい。」

 

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そして二人を一直線に見つめる・・・先に折れたのは

 

「・・・勝算があるんだな?一刀、その賭けに」

 

「あぁ、たぶん二人が戦うよりも高いと思うよ・・・千影」

 

「!・・・ならば信じよう・・・張遼、こいつは大丈夫だ・・・私に約束したのだから」

 

「な!華雄!」そんな言葉もすでに背にした一刀は下馬をしてゆっくりと呂布、恋へと向かってい

 

った。

 

「・・・・・!?」その一刀の姿を見つけて恋は驚愕を隠せない。

 

しかしその姿は丁原には背を向けていたので気づかれずに済んでいた

 

「天の御使いとやらが出てきたぞ!呂布よ!問答無用で殺してやれ!」

 

そんな言葉は耳に入らない、恋はただ一刀を見つめていたのだから。

 

そしてある程度まで近づいた一刀は自分の刀に手を掛け・・・それを地面へと置いた

 

「な!何しとんあのアホ一刀は!」

 

「何だあの馬鹿は!」

 

丁原と霞がほぼ同じ内容の声を上げ

 

「ウチはいく!」そう言った霞を

 

「ダメだ張遼・・・一刀を信じろ!」華雄が推しとどめた

 

「なんでや!何であんたはそんな風に平気・・・で」その言葉は最後まで言えない

 

「一刀が私の真名を呼んで推しとどめた、そして行った賭けだ・・・ならば信じる!」

 

そう言った華雄はどこか静かにけれど・・・

 

「今のあんたとやったら絶対負かされるわ・・・余計な怪我はしたくないからな・・・ここは信じといたる」

 

烈火の如くあらゆる感情を押し殺していた。

 

刀を置いた一刀に恋は戸惑っている、そんな恋を尻目に一刀は恋へとただまっすぐに歩を進める。

 

そこには一切の駆け引きも無く、ただ歩く。そして

 

「・・・・・・・・それ以上近づいたら・・・斬る」

 

そう恋が突き出した方天画戟の切っ先のまん前で歩みを止めて・・・

 

「久しぶり、恋。あの日以来だから二ヶ月ぶりかな?」

 

戦場でにこやかに恋へと話しかけた。

 

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「・・・・・・・なんで?」

 

そこにこめられた意味を吟味して

 

「俺は元々董卓、月の元にいる家臣みたいなものだったからね・・・最近では天の御使いって呼ばれることが多いかな。それと・・・友達に話しかけるのに刀はいらないだろう?」

 

そう言って笑みを絶やさない。その姿に恋は困惑する

 

「どうした呂布!早く殺さぬか!」

 

外野が五月蝿いのは気にしないで一刀が続ける

 

「なんであんな奴のところにいるのかは知らない。けれで恋。君の武はあんな奴のところで振るうものじゃない、もっと優しい人の下で振るうべきだ・・・だからこっちに来ないか?」

 

それに対して少し動揺を見せた後、恋は無言のまま小さく首を横に振る

 

「・・・・・・いけない。」

 

その一言を言う時、恋の目に見えた翳りを一刀は見逃さない。だからこそ一刀は

 

斜め前に、恋の戟の刃の真横に自分の体と頸をもっていった

 

「近づいたけど・・・切らないでいてくれたね?」

 

そう言って安堵の笑みを見せる一刀をやはり不思議なものを見る目で見つめる。

 

その笑みのすぐ隣には何時でも命を奪い去れる刃が構えられているのだから。

 

「その馬鹿を早く殺さぬか呂布!」

 

そう叫んだ丁原の言葉に続くかのように少女の声が二つ戦場に響いた。

 

「呂布殿―――――!」「一刀殿!」

 

その声は戦場の真横から現れ両群に挟まれる位置に、そしてその少女の足元には犬や猫が数十匹集

 

まっていた

 

「呂布殿ご覧下さい!ねねやセキト達は無事ですぞ!もうアレに従う必要はありませんぞ!呂布殿!」

 

そう叫んだ、その姿を認めた丁原は「何故あやつがここに!」慌てふためいている。

 

その様を確認した一刀はさらに恋へと踏み込む。

 

人の関係には距離が存在する。敵に許すのは刃が通せる間合い、友に許せるのはそれよりも少し近

 

い間合いというように。

 

その距離を一刀は埋めて行き・・恋を優しく抱きしめて耳元で囁く「よく頑張ったね」と

 

「呂布よ!こいつらを!」

 

叫ぶ丁原を無視して一刀は続ける

 

「俺のところに来て欲しい、恋の力を優しい世界を望む子のために使って欲しい」

 

なにやら外野はまだ喚く早くしろとけれどその声は所詮雑音に過ぎず

 

「・・・・・・・恋の家族も一緒?」

 

「あぁ・・・一緒にだ」

 

「・・・・・・・・・一刀」

 

「ん?なぁに恋?」

 

「・・・・・・・・・ご主人様」

 

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そう言った恋は優しく微笑を一刀に向けて

 

「・・・・・・・一刀、恋のご主人様。ご主人様の敵・・・倒す」

 

そうはっきりと宣言し、一刀の抱擁から惜しむように出ると、戦場の雰囲気が変わった。

 

たった一人の少女が全力を出すために、仕える人のために力を出すことに躊躇を見せなくなっただ

 

けでその戦場は支配され、そして音も無く終わった。

 

もともと丁原の騎馬隊は恋に忠義を示しているものが多く恋が董卓側に付いたことによって自然と

 

流れてきた。残ったのは丁原の部隊たった100。その百人は

 

「えぇぃ!貴様等意地を見せてやつだけでも殺してやれ!」

 

そう丁原に言われ一刀を狙ったが

 

「・・・・・・・無駄」

 

その一言で戟を振るった恋一人に封殺されてしまう。逃げようとしていた丁原に至っては。

 

「どこにお帰りになるというのですかな?丁原殿?貴方のお屋敷はすでにわが部隊が押さえましたが?」

 

「どこ行こうとしとんねん・・・今ウチは最高に不機嫌なんや・・・逃がすかドアホ!」

 

「・・・逃げられるとでも思っていたのか?董卓さまに牙を剥いて・・・あまつさえ一刀のことを

殺そうとする・・・挙句馬鹿呼ばわりしたのだからな・・・・」

 

董卓軍の女傑3人に囲まれ絶望を余儀なくされていた。

 

そんな丁原を尻目に

 

「呂布殿―――!良くぞ!良くぞご無事で!」

 

小さな女の子が恋に抱きついていた。

 

「・・・・・・ご主人様のおかげ」

 

そう言って恋は一刀を見つめる

 

「こんなやつのですか!?」

 

驚きを見せる少女にコツっと方天画戟の柄の部分で恋が叩いて

 

「・・・・・・・ご主人様にこんなやつは・・・ダメ」

 

「呂・・・呂布殿〜〜〜」

 

そんな情けない声が聞こえていた。

 

「それが恋の言っていた家族なのかな?恋?」

 

確認するように恋見やるが

 

「貴様!何故呂布殿の真名を!・・・あぅ」

 

「・・・・・・ネネもご主人様に真名」

 

そう告げられまた柄で軽く叩かれる

 

「・・・・・それとネネ・・・恋でいい」

 

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「呂布・・・いえ恋殿!・・・仕方ないです私は陳宮・・・真名は音々音です。恋殿に免じてよろしくしてやるから感謝しやがれなのです!」

 

「ねねねちゃんだね、よろしく」

 

「・・・言いにくければねねでいいのです」

 

そう言うねねの頭を一刀が撫でると

 

「子ども扱いするなーーーです!」

 

そう言いつつ照れるネネを恋が羨ましそうに見ていると

 

一刀を一匹に犬が襲った。

 

「な!」という驚きの声も束の間、一刀を遅い寝転ばせた犬はその鋭くとがった牙をみせ

 

その隙間から舌を出して一刀の顔を丁寧に舐め上げていく

 

「っく・・・はは、くすぐったいって」

 

「・・・・・・・セキト」

 

その恋の声に犬は反応して舐めるのをやめると

 

「わん!」と一声あげて一刀の足元からはなれようとしない

 

「・・・・・・セキトがこんなに懐くの・・・初めて」

 

そういわれれば悪い気はしない、そのまま嬉しくてセキトを撫でれば

 

「・・・・・・・・恋も」

 

恋が頭をこちらに寄せてモノ欲しそうな声を出す。そんな和やかな雰囲気を楽しんでいると。

 

「一刀殿!此方は一通り終わりました!帰る支度も済みましたのでおはやく!」

 

その星の声で城へと戻ることになった。

 

その時に霞と華雄に・・・

 

「まさかアレだけ我慢した私に何も無いなんてことは無いだろうな・・・一刀」

 

「まさかあれだけ呂布といちゃついてウチに無いなんて言わへんよな?一刀?」

 

それを聞いた星までも

 

「おや、一刀殿?別働隊としてしっかりと仕事を果たした私には何も無いのですかな?」

 

そんな声を少し嬉しく、かなり恐怖しながら聞きつつ、丁原を討った面々は城へと戻る。

 

事のあらましを詠と月に話、そして話題は恋のことに移動した。

 

「それじゃあ呂布さんは」

 

そう切り出した月に

 

「・・・・・恋でいい」

 

恋が少し被せるように言う

 

「それじゃあ私のことは月と呼んでくださいね?・・・それで恋さんは一刀さんをご主人様にする

んですね?」

 

その言葉にコクリと頷く

 

「けど俺は月に仕えているからね。恋も月の下って立場になってもらうけれど構わないかな?」

 

それに対しては

 

「・・・・・・セキト達いい?」

 

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「はい、それは構いませんよ?・・いいよね、詠ちゃん?」

 

そうして振られた詠も

 

「まぁ一刀にこんなに懐いているし・・・霞や華雄が感じた武の話を聞く限りそれくらいの代償な

ら是非いて欲しいわね」

 

実質のトップ二人にお許しをいただいて

 

「・・・・・・それなら、いい」

 

了承を示す恋。

 

「ほんならウチも恋って呼ばせてもらうで?ウチは霞やよろしくな!恋」

 

「私は華雄だ、わけあって真名は・・・なので呂布と呼ばせてもらおう」

 

「我が真名は星、よろしく頼むぞ、恋」

 

「僕は詠、軍師をやってる。よろしくね」

 

いつものように真名の交換。それをきいてコクリと一度頷く恋は

 

「・・・・・よろしく」

 

その一言でそれを終わらせた。

 

「ところでそっちのちっこいのは?」

 

「ちっこい言うなです!ねねは陳宮!真名は音々音です!いい難ければねねでいいです!」

そう叫び

 

「何ができる?」という詠の質問に

 

「ねねも軍師をやってるのです!ただねねは恋殿つきの軍師なのでそこらへんよろしくお願いするのです」

 

元気に両手を天に向けて突き出して宣言する

 

「いいわ、僕も月付きの軍師みたいなものだしね。」

 

そんな和気藹々とした空気の中で恋とねねが陣営に加わった。

 

(俺が知っている状況より星一人分優位にある・・・あとは)と考えている一刀をよそに

 

詠の放っている密偵の一人が血だらけでその場に現れた。その手にはたった一枚の書状が握り締め

 

られており「賈?様・・・これを・・・袁紹」そこまで言って事切れた。

 

それを手にして読んだ詠は「なんなのよこれ!」と叫ぶ。

 

その紙に書かれていることを要約するならば

 

「幼い帝を擁して相国の座に治まり実権を手にし、洛陽で暴政を行っている董卓を皆さんの力で倒

しましょう、集まりなさい」

 

そう書か、。その紙を見て月は慌てふためき、詠は憤りをあらわにする、他の武将達も何がなにや

 

らわけが分らないという表情を浮かべ。その中で詠がこっそりと一刀に近づき

 

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「あんたの言った最悪の筋書きが始まったわね・・・間者の仕込みはしてあるからあとは任せるわ

よ?」そう詠は一刀に囁く。

 

「あぁ、こっちも行商人達とは仲良くさせてもらったからね、風潮を広げることは出来るはずだよ。」一刀も詠に囁く。

 

(俺が知っているこの連合は袁紹が自分の我侭と嫉妬のために諸侯を焚きつけた茶番劇)

 

だからこそ前の世界で詠達が取れなかった行動に

 

(ならばその茶番を終わらせるためには連合を崩すしかない)

 

しかし名家・袁紹が発した連合に飛びつくのは自身の名声目的であるものが多い・・・

 

(事実華琳もこの連合で名声を手に入れた)

 

軍勢の規模では勝てない、ならばやれることは一つ

 

(この連合に正当性をなくさせる!)

 

そして一刀は自室へと戻りそこにいる6人を見回した。

 

詠から託されたその信頼できる人数は6人・・・その6人を

 

「君達は今から俺が言う場所に行って風潮を流して欲しい、洛陽の街は董卓が来てから住みやすく

 

なり、よりよい街になったと。暴政などは事実無根であると」

 

南陽・啄県・陳留・長安・健業・西涼へと一刀は向かわせる。それぞれの場所に現在いるはずの

 

人々を考えながら。

 

そして一つ考えるのは・・・この連合で絶対に回避できない二つの関でのこと。そのことをひたす

 

ら頭の中で考え、何度も両軍を戦わせる。自分が感じた連合軍と、自分が今いる董卓軍を何度も何

 

度も戦わせる。そして一つの答えを出した一刀は。次の日の朝議に備えその身から意識を手放し

 

た。・・・その時に赤い髪の毛が左右に揺れて一刀の寝台に横になったのに気づかずに。そしてそ

 

の赤い髪の少女は一刀に抱きついてすやすやと眠る。

 

翌朝の騒ぎなど眼中になく。これから起こる戦のことなど考えになく。それは気持ちよさそうな寝

 

顔だった。

 

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番外A

 

−side???−

 

「あの馬鹿がえらく思い切ったことをするわね・・・」

 

「いかがいたしましょうか?華琳様」

 

「どう思う?桂花」

 

「洛陽でそのような暴政の話は私は知りえません・・・しかしこれは好機かと」

 

「・・・そうね、けれど董卓のところには天の御使いなんてのもいるそうじゃない?」

 

「それは本当みたいですね、かなり画期的な政策をしているとか」

 

「そう・・・欲しいわねその天の御使い」

 

「華琳様がお望みでしたら・・・しかし私では足りませんか?華琳様」

 

「ふふ・・・貴女も必要よ?けどその天の名声が私は欲しいの」

 

「それでは・・・」

 

「えぇ・・・あの馬鹿からというのはしゃくだけれど・・・参加するわよ・・・けれど今は、たっ

ぷり可愛がってあげるわ」

 

「あぁ・・・華琳様〜〜〜」

 

閨の中で彼女達はこの連合に参加することを決めたのだった。(ナニ

 

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−あとがき−

 

あぁぁぁ昨日更新できなくてごめんなさ~~~い(待っててくれる人がいるなら

 

言い訳させてください!えっとですね昨日は午前中、学校に顔出してまして

 

その帰りの電車の中で電話がなりましてね?

 

支店長「今日の深夜の人一人来れなくなったみたいだから入ってくれるよね?」

 

私「・・・はい?」

 

支「だから深夜入れるよね?」

 

私「えと・・・」

 

支「いいから入れ」

 

私「はいorz」

 

そんな感じの会話をして深夜はいりまして更新できなく・・・

 

はい、すみません、完璧私用ですね!・・・あぁ石は!石は辞めてください!

 

そんなわけで今日は昨日の分を一緒にして少し長めの更新となりました。

 

友人などから受けた質問と答えを晒しときますね。

 

1、丁原などの扱いについて:MOBキャラだから男でいんじゃね?すぐ殺すことになるし・・・第一

女キャラにしたら殺すのが忍びない。

そんな理由で宦官や彼などは男のまま死の運命に・・・(合掌)

 

2、この話ってどんな感じに作っているのか:だいたいプロットみたいなものが一本だけ大まかに作ってありまして・・・それを元に妄想力を使って作成しております。

大体一話あたり2時間〜3時間で話しつくって書いている感じですね。話の辻褄は大きくは外れないように作っていますがたまにおかしなところがあるのはそのためかと。

 

3、趙雲と張遼出番少ないんだけど?:この話での主役は月、詠、華雄である。星にいたってはこのままだと俺の脳内で戦争したら確実に董卓負けちゃうよ・・・どこかに一刀についてくれそうな都合の良いそこそこ以上の武将は・・・あ、ハムのところの趙雲は放浪してたな、ならこいつは本筋に引っ掛けずに優秀な手勢となるだろう。・・・こんなノリで引き入れました。実際今回とか前回、それに黄巾は星がいないと手駒不足なんですよね。

 

こんなところで・・・それではまた次のお話で!

 

説明
昨日更新できなかった分とあわせて少し長めでお届けします。
物語自体は前回の続きで土台作り
次はいいよというお話の前の部分です
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
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コメント
風潮は流石に誤用 風評もこの場合は少しおかしい なので 間諜が流すのなら流言かな?(zerueru1)
やっぱり華琳は敵になるのか…(ロックオン)
7p ×推しとどめる→○押しとどめる、では?(アルヤ)
全員がデレて可愛いっす(VVV計画の被験者)
3p「・・・そうね、月や僕を一刀が裏切りはず無いから信じるけど・・・」裏切るでは?(抹茶)
華琳に目をつけられちゃったな(零壱式軽対選手誘導弾)
どうなるのやら(零壱式軽対選手誘導弾)
「風潮を流す」ではなくて「風評を流す」ではありませんか?(otbu)
わざと読み辛くしてませんか?(車窓)
誤字報告:5p 自宅を教われる→襲われる だと思います(ж)
続いて誤字報告です。10P「一刀を一匹に犬が襲った。」「一刀を一匹の犬が襲った。」ですね。(タンデム)
誤字報告:8P「なんであんな奴のところにいるのかは知らない。けれで恋」「けれど恋」ですね。(タンデム)
あと、気になったのですがこの時呉メンバーはもう建業にいましたっけ?(いじり)
最近の楽しみssの一つです。(いじり)
さすがは一刀。二回目はだてじゃないね。(ブックマン)
董卓軍VS連合軍どうひっくり返すのかたのしみです(brid)
では、感想です。連合軍の正当性をなくさせるですか。新しい試みですね^^この一刀君の行動がどうなるのか。続き待ってます!(だめぱんだ♪)
誤字報告です。P12 健業→建業ですね^^(だめぱんだ♪)
YOROZU様:正当性がなくなることで・・・・が〜〜〜〜になりますから!(sion)
ロケット様:俺のそのミスこそ情けないw修正しました。報告感謝です!(sion)
cheat様:連合自体はゴニョゴニョそこから○○がモゴモゴw(sion)
長谷川様:が・・・頑張って作りますので少しお待ちを!(アタフタ(sion)
正当性のない連合軍・・・・おもしろいかも!(YOROZU)
「情けない」が「な避けない」になっとりますぞ(ロケット)
果たして連合は如何様に!? ((o(´∀`)o))(cheat)
早く続きが読みたいです!!(北斗七星)
クォーツ様:無言の圧力怖いですよね・・・こんな私の文を待っていてくれる人がいるならとても申し訳なく、出来ればどこかで一報いれたいところなんですよね。(sion)
munimuni様:頑張るのは華琳ですか!?こういう小ネタってどうなんですかね?(sion)
店長に・・・お疲れ様です。上司からの頼みと言う名の圧力は回避不可能ですからね。しかし、遅れた位でそんなに畏まらなくてもとも思います。 蜀、呉、涼州、ハムの反応や如何に 次作期待(クォーツ)
狐狗狸様:お待ちしていただき感謝です!これからも自分のペースでやらせていただきますw(sion)
cyber様:おかしくなかったでしょうか?そう仰って頂けると幸いです。!(sion)
待っていましたが私用なら全然構いませんよーw これからも自分のペースで頑張って下さい!(狐狗狸)
恋のキャラに癒されました。次作の避けられない山場をどうするのか楽しみにしています(cyber)
フィル様:分解というよりは(ごにょごにょ)流されやすい蜀はしっかり者の星がいないことでさらに(ゲフンゲフン(sion)
toto様:ありがとうございます。言葉通り山場ですよ!ミスしたら即滅亡の場所ですからw(sion)
噂で連合を分解するという策ですかw 一番流されやすい蜀がどう方向転換するのか愉しみですwww(フィル)
さぁて・・・最初の山場(?)ですね・・・楽しみにしてます(toto)
とらいえっじ様:ありがとうございます、そう言っていただけると助かります。(sion)
大丈夫。支店長なら仕方ない(とらいえっじ)
ハイドラ様:拠点を書かなかっただけで一刀のことはかなり気に入っている設定です。さてどう関わらせたものか・・・(sion)
yosi様:避けては通れないと思いまして番外を入れてしまいました。満足いくものができれば幸いです。(sion)
VS曹魏戦は避けられないわけですか、華琳とのやりとりが楽しみです(yosi)
Poussiere様:時間があれば番外みたいな小ネタもはさみたいところw連合勢力は・・・モゴモゴ(sion)
はは! いいぞ、もっとやれwww さて・・・・次連合軍で出てくる軍勢はどこなのか? 愉しみですね^^w(Poussiere)
Poussiere様:(・3・)あるぇ・・・修正しました!報告感謝です!(sion)
誤字報告 8p目  「呂布殿ご覧下さい!ねねやセキト達は無事ですぞ!もうアレに従う必要はありませんぞ!呂不殿!」 先のほうの呂布は合ってるのに 後ろが違ってますね^^;(Poussiere)
混沌様:報告感謝です、修正しました。内容のほうは次回で!(sion)
一体どれくらいの人が連合軍に参加して一刀達と戦うのか楽しみです><         誤字?5P3行目一刀の「〜〜そこで星には“変える”場所と退路を立って欲しいんだ」→蛙……じゃなくてw“帰る”?(混沌)
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