スーパーヒーロー大戦 DC 2015
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BLACK

「目を覚ませ!お前は、そんな奴じゃない!」

 

「黙れ、ブラックサン…さぁ…決着を…」

 

 

 

銀の戦士が、真紅の剣を手に取る。

 

 

 

BLACK

「未来ある子供達を怪人にするなど、絶対にあってはならない!お前ならわかるはずだ!」

 

「うるさい!」

 

 

 

銀の戦士はBLACKを斬りつけ、蹴りを入れた。

 

 

 

 

BLACK

「ぐっ…もう力があと少ししか…」

 

 

 

真紅の剣が再び振り上げられ、仮面ライダーBLACKに振り下ろされる。

 

しかしBLACKは避けることなく、その刃を肩に受け、更に握りしめた。

 

 

「何??」

 

BLACK

「キングストーンフラーーーッシュ!」

 

「ぐわぁっ??」

 

 

 

 

BLACKのベルトが光を放つと、彼は力尽きたように倒れ、ピクリとも動かなくなった。

 

銀の戦士は強烈なフラッシュを浴び、一瞬だけ意識が飛んだが、すぐに気を取り戻す。

 

 

 

「っ……俺は何をして…?」

 

 

 

ふと見ると、目の前に黒い戦士が倒れている。

 

見ればわかる。死んでいる。そして自分の握っている真紅の剣は、刃の色とは別の紅に染まっている。

 

 

 

「そんな…俺が…」

 

 

 

 

後悔と共に、怒りが沸き起こった。

 

自分自身に、そして自分にこんなことをさせた奴らに。

 

 

 

「許さん…許さんぞ…グレートショッカー…!」

 

 

 

物語は、ここから始まった…

 

 

 

 

 

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D.C.D.作品 1周年記念長編作品

 

 

 

 

 

 

スーパーヒーロー大戦 DC 2015

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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十真

「ん……?」

 

 

 

 

青年『斬峰 十真』は、気がつくと見知らぬ廃工場の中で眠っていた。

 

 

 

 

十真

「何でこんなところに…」

 

「目は覚めたか?」

 

 

 

男の声が聞こえ顔を横に向けると、いつのまにか十真よりも歳上そうな青年が一人立っていた。

 

銀のタキシードに、白いスカーフ。一風変わった格好だが、声がかけられるまで十真は気配に気付けなかった。

 

 

 

 

青年

「君をこの世界に連れてきた時、その際のショックで気絶させてしまった。無事でなりよりだ」

 

十真

「あ、あの…何のことかサッパリ…」

 

青年

「ここは君の生きていた世界とは別の世界、つまり異世界だ」

 

十真

「異世界…?そんなバカな」

 

青年

「窓の外を見てみろ」

 

 

 

言われて十真は起き上がり、近くの窓際まで歩み寄る。

 

覗くと、遠くにビルやデパートなどが広がっており、高速道路なども走っていた。

 

ありきたりな景色だが、十真の知っている世界には、もうこのような光景はどこにも残っていない。

 

本来無いはずの物が存在しているのだ。

 

 

 

青年

「君の世界は、アラガミと呼ばれる怪物の脅威によって人類は絶滅の危機に瀕している…そうだな?」

 

十真

「じゃあ、まさか…」

 

青年

「そうだ。正真正銘、ここは異世界だ」

 

 

 

 

信じられない物を信じるだけの証拠を見せられては、十真も言い返せない。

 

異世界、という物を信じたことは今まで一度もないが、ここは認めざるをえなかった。

 

 

 

十真

「ところであなたはーー」

 

青年

「待て。話の続きは後だ」

 

 

 

青年が睨む方向を見ると、謎の集団がゾロゾロと集まっていた。

 

顔を覆面で覆った黒の全身タイツに、上半身には骨の模様。同じ格好をした男達が何十人もいる。

 

 

 

 

少女

「追い詰めましたよ。ここまでです」

 

 

 

その集団の間から、1人の少女が現れた。

 

色白な肌に、煌めく長い銀髪、蒼く透き通った瞳。

 

雪のような姿とは正反対に、その体には黒いドレスを身に纏っている。

 

歳は小学6年生くらいにしか見えないが、そうとは思えない威厳を全身から放っている。

 

 

 

少女

「裏切り者は抹殺するのみです」

 

青年

「こんなとこでは死ねんな」

 

 

 

青年が十真の前に立つと、彼の腰に光が現れ、一つの黒いベルトを象った。

 

 

 

青年

「変身…!」

 

 

 

ベルトは眩い光で青年を覆い尽くし、その姿を一瞬で変えた。

 

銀に輝く皮膚に、緑の複眼。口元の鋭い大顎と、両手両肘に備え付けられた棘。

 

 

 

 

青年

「俺の名は…シャドームーン!」

 

少女

「いきなさい!」

 

 

 

少女が命じると、男達はあっという間にシャドームーンを包囲した。

 

 

 

青年

「サタンサーベル!」

 

 

 

シャドームーンが右手を突き出すと、真っ赤な刀身を持つ剣が現れた。

 

迫り来る男達を、右手に握りしめたサタンサーベルで一閃、難なく退く。

 

 

 

青年

「はぁぁぁ…せやっ!」

 

 

 

覇気を溜め、サタンサーベルを振るうと紅い光刃が放たれ、男達を一網打尽にした。

 

 

 

青年

「今だ、逃げるぞ!」

 

十真

「は、はい!」

 

 

 

青年は変身を解くと、十真を連れてその場を逃げ去った。

 

 

 

 

少女

「……お兄様…どうして…」

 

 

 

 

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十真が異世界に辿り着いたころ、もう一つの世界のとある喫茶店。

 

 

 

 

祐美

「いらっしゃいませ」

 

 

 

この店のウェイトレス、春條 祐美は、今日も忙しなく接客をこなしている。

 

開店当初と比べ、なかなかに人気が出始めたため最近は忙しさが増している。

 

 

 

 

大河

「アイスコーヒー2つ。出来たよ!」

 

祐美

「OK」

 

 

 

カウンター越しにあるキッチンでは、店長の百瀬 大河と、

 

 

 

雷哉

「バタートーストと、ハムサンド、運んでくれ」

 

 

 

春條 雷哉が、料理やら飲み物を手際よくこなしている。

 

 

 

「お会計お願い?」

 

祐美

「はーい」

 

大河

「なぁ、雷哉」

 

雷哉

「…何だ…?」

 

 

 

次々と流れ込む注文に対応しつつ、大河は隣に立つ雷哉に深刻そうな顔を見せた。

 

 

 

大河

「祐美ちゃん、このままじゃ倒れちまうぞ。ウチもそろそろ、アルバイト取ってみようかとおもうんだけど?」

 

雷哉

「…そうだな…賛成だ」

 

 

 

明らかに心配そうな顔をしている大河と比べ、雷哉の顔は数ミリ単位でしか表情が変化していないが、長く付き合ってきた大河にはその心の内が見えている。

 

何を隠そう、雷哉と祐美は夫婦だ。証拠に、2人は共通の指輪をはめているし、祐美は紅い宝石の婚約指輪をはめている。

 

 

 

大河

「店閉めたら、また話するか」

 

 

 

その日の営業が終わると、早速3人でバイト募集についての話を始めた。

 

 

 

祐美

「うん、正直かなり辛かったよ…」

 

 

 

バイト募集の件はすぐに決定され、次の日から店頭には張り紙が貼られた。

 

 

 

その日の午後、閉店間際だった。

 

 

 

大河

「え、アルバイト希望者が来た?」

 

祐美

「うん。今レジ前で待たせてるんだけど」

 

 

 

祐美が指差す方には、マゼンタのシャツに黒いコートを羽織った青年が立っていた。

 

 

 

雷哉

「随分早いな…」

 

大河

「ま、いいや。とりあえず話をしてみるよ。よっぽど変な奴じゃなけりゃ採用するさ」

 

 

 

大河はバイト希望の青年を奥に案内すると、簡単な面接を始めた。

 

 

 

 

大河

「じゃあ、簡単に自己紹介を」

 

士郎

「霞 士郎。25だ。時々カメラ撮影の仕事をしてるが、基本フリーだな」

 

大河

「(ずいぶんと偉そうな態度とるな…)」

 

士郎

「料理は大体できる。接客でも、厨房でも任せておけ」

 

大河

「お、おう…それは頼もしいな。ま、ウチは今とにかく人手が欲しいんだ。よろしく頼むよ」

 

 

 

 

何か引っかかる物を感じつつ、大河は青年を採用する旨を雷哉達に伝え、その日の仕事は終わった。

 

 

 

 

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青年

「もう追っ手は来ないな…」

 

 

 

 

十真達は住宅街の中を駆け抜け、人通りの無い路地裏に逃げ込んだ。

 

 

 

 

青年

「紹介がまだだったな。俺の名前は『暁月(アカツキ)』。よろしく、斬峰君」

 

十真

「どうして俺の名前を?」

 

暁月

「失礼ながら、君のことは少々調べさせてもらったよ。この世界を救える人物かどうか、ね」

 

十真

「この世界を救う…?」

 

暁月

「この世界は、グレートショッカーによって独裁体制を敷かれた世界なんだ。俺はそれを崩すべく、勝手ながら、君をこの世界に連れてきてしまった」

 

 

 

 

異世界、グレートショッカー、独裁。十真の日常では聞くことの無い言葉ばかりを連ねられ、まったく話が理解できず、何故自分がここにいるのかという疑問だけが膨らんでいく。

 

深刻な表情で話を続ける暁月は、そんな十真の疑問を晴らすかのように言った。

 

 

 

 

暁月

「だが、この世界を、いや、グレートショッカーを放っておけば君の世界もいずれ、グレートショッカーによって支配されてしまうだろう」

 

十真

「え…?」

 

暁月

「俺がこの世界から君の世界へ行けたように、グレートショッカーも異世界を行き来する力を手に入れている。侵攻の準備が整えば、異世界へ侵略を始めるのは間違いない」

 

十真

「つまり、この世界以外の世界も、その、グレートショッカーとやらに支配されるってことか…」

 

暁月

「同じ異世界でも、この世界から一番近い世界があるんだが、それが君の世界なんだ。恐らく、奴らは手始めに君の世界を襲うだろう」

 

十真

「それで俺をこの世界に…」

 

暁月

「頼む。俺と一緒に戦ってくれ」

 

 

 

暁月は地面に膝と手をつけて、深々と頭を下げた。

 

 

 

十真

「そ、そんな、頭を上げてください」

 

暁月

「しかし、他人を巻き込んでしまうんだ。簡単に済ませられる話じゃない」

 

十真

「他人じゃないですよ」

 

 

 

異世界だとか、そんなことは十真にとってどうでもよかった。

 

助けを求める誰かを救う、それが今の十真の使命であり、生き方。

 

戦う力を手に入れた時、強く決意したことだ。

 

 

 

十真

「俺の力で救えるなら、全力で戦いますよ」

 

暁月

「…ありがとう。君は紛れもなく、仮面ライダーだ」

 

十真

「仮面…ライダー…?」

 

暁月

「あぁ。人類の自由と平和のために戦う戦士。それが仮面ライダーだ」

 

 

 

人類の自由と平和。それは十真の世界では既に失われてしまった存在であり、それを取り戻すために十真は日々戦っている。

 

それを脅かすグレートショッカーは何としても倒さなければならない、と十真は決意し、暁月と強く手を握り合った。

 

 

 

 

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士郎

「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか?」

 

大河

「(何だ、普通に接客できるじゃん)」

 

 

 

 

昨日の態度とは一転、青年は気持ちのいい笑顔を振りまきながら客の一人一人に丁寧な対応をしていた。

 

新入りのバイトとは思えない、まるで数年はこの職を続けているような手際だった。

 

一週間ほど経つと、常連となら簡単な会話も交わせるようになり、その腕の良さを見せつけていた。

 

 

 

祐美

「何気にすごい子が来たね」

 

雷哉

「そうだな…」

 

士郎

「ふぅ…やっと客がいなくなったか。休憩だな」

 

 

 

珍しく客がいなくなったことを確認すると、厨房の椅子に軽く腰掛け、グラスに水を注いだ。

 

だがタイミング悪く、ランチタイムを過ぎているのに一人の男性客が訪れた。

 

士郎は軽く溜息をつくと、そのグラスを手に客の席まで向かった。

 

 

 

士郎

「ほらよ」

 

大河

「なっ…??」

 

 

 

すると、あろうことか、士郎はグラスに注がれた水を男性客に容赦なくぶちまけた。

 

 

 

士郎

「招かれざる客ってやつだ。さっさと出て行け」

 

「…………」

 

大河

「すすすすみません!本当に申し訳ござーー」

 

士郎

「早く出ていけよ。この世界からな」

 

「…!」

 

 

 

 

男は素早いストレートを士郎目掛けて放つが、士郎は片手で受け止め、腕をねじりあげた。

 

 

 

「貴様…何者だ?」

 

士郎

「さぁな」

 

 

 

男は士郎の拘束を振り解くと、羽織っていた上着を脱ぎ捨てた。

 

そして野太い雄叫びをあげるとともに、男の体は瞬く間に変貌した。

 

白い皮膚、腕とは別に肩から生えた吸盤付きの触手、三角頭。その全身は正にイカのようだった。

 

 

 

 

イカデビル

「俺様はグレートショッカー幹部、イカデビル!」

 

大河

「ななななっ??」

 

祐美

「グレートショッカー…?」

 

雷哉

「下がれ、祐美」

 

 

 

雷哉は祐美と大河の前に立つと、構えを取って立ち塞がった。

 

 

 

士郎

「やはり、グレートショッカーの狙いは『ジオ・クリスタル』か」

 

イカデビル

「その通り。かつて世界を創造する力を秘めていたパワーストーンを手に入れられれば、グレートショッカーの野望も大きく前進するだろう」

 

大河

「ジオ・クリスタル…?」

 

祐美

「ジオ、って…まさかあの…」

 

イカデビル

「そうだ。人間によって汚れた世界を創りなおす神でありながら、人間に味方した者…始まりの神『ジオ』の持つ宝石のことだ」

 

 

 

 

この世界ではかつて、人間は間違った未来を歩んでしまったとして、終わりの神『ジェノス』によって滅ぼされようとしていた。

 

本来なら、破壊された世界に新たな始まりを与える、始まりの神であった『ジオ』は、人間の持つ可能性に気付き、ジェノスの脅威から人々を護った。

 

その始まりの神『ジオ』は、その神の力を手放し、一人の人間として世界を見守ることを決意した。

 

その人間こそ、春條 雷哉であり、その真実を知っているのは、祐美と大河以外に存在しないはずである。

 

 

 

雷哉

「ジオ・クリスタルはもう無い。俺は神の力を捨てた…」

 

イカデビル

「ハッタリが通用するものか。我々は既にジオ・クリスタルの在り処を知っている」

 

 

 

 

そう言ってイカデビルが指差した先には…

 

 

 

 

祐美

「え、わたし?」

 

イカデビル

「そうだ。貴様の身に着けている、紅い指輪だ」

 

雷哉

「くっ…!」

 

 

 

イカデビルが雷哉の後ろに立つ祐美に近づこうとすると、珍しく雷哉は焦りの表情を見せた。

 

 

 

雷哉

「絶対に、これを渡すわけには…!」

 

イカデビル

「無駄な抵抗はしない方が身のためだ」

 

士郎

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」

 

 

 

雷哉とイカデビルの間にゆっくりと割って入ると、士郎は白いバックルを手にした。

 

 

 

イカデビル

「そのバックル…まさか貴様…!」

 

士郎

「俺も有名になったもんだな」

 

雷哉

「お前は…一体…?」

 

 

 

士郎はバックルを腰に装着すると、白い本型のケースから1枚のカードを取り出した。

 

 

 

 

士郎

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。変身!」

 

 

 

 

〈KAMEN RIDE:DECADE!〉

 

 

 

 

バックルにカードを装填。瞬間、九つの影が士郎と重なり一体化、全身を装甲と仮面が覆った。

 

黒とグレーの体が光ると、全身がマゼンタと白に染まり、その全貌を一気に変えた。

 

 

 

 

イカデビル

「やはり貴様、ディケイド!世界の破壊者が、こんな場所に何の用だ??」

 

大河

「世界の破壊者?」

 

士郎

「お前らグレートショッカーの野望を、破壊しに来たんだよ!」

 

 

 

 

ディケイドはイカデビルと組み合うと、店の窓を突き破って道路へと飛び出した。

 

もがき抵抗するイカデビルの振るう触手を避け、鋭いキックを繰り出す。

 

 

 

イカデビル

「ぐおぉ…」

 

士郎

「さてと…新しい力を試してやる」

 

 

 

ディケイドは本型のケース『ライドブッカー』からカードを取り出すと、バックルに装填した。

 

 

 

〈KAMEN RIDE:W!〉

 

 

 

 

イカデビル

「くっ、何だこの風は…!」

 

 

 

 

ディケイドの体を竜巻が包み込み、その風がイカデビルの足を止めた。

 

竜巻は周囲の埃を巻き上げながら、やがてディケイドの姿を別のものへと進化させた。

 

右半身が緑、左半身が黒という奇妙なカラーリング。額に輝く銀色のWの角。自らが発する風にたなびく白いスカーフ。

 

風の切り札、『仮面ライダーW サイクロンジョーカー』へとディケイドはさらなる変身を遂げた。

 

 

 

士郎

「さぁ、お前の罪を数えろ」

 

イカデビル

「黙れ!」

 

 

 

ディケイドWは疾風の速さでパンチとキックを叩き込み、イカデビルを攻め続ける。

 

二撃、三撃と、まさに風のように攻撃を叩き込む。

 

しかし、イカデビルの皮膚も強靭であり、なかなか決定打を与えることができなかった。

 

 

 

士郎

「イカ焼きにしてやるぜ」

 

 

 

 

〈FORM RIDE:W! HEAT METAL!〉

 

 

 

ディケイドWが新たなカードを装填すると、左右の色が変化し、フォームチェンジをした。

 

右半身は赤、左半身は銀。

 

攻撃力に特化した姿、仮面ライダーW『ヒートメタル』だ。

 

ディケイドWは背中に現れた棒状の武器『メタルシャフト』を手に取ると、炎を纏わせてイカデビルを殴りつけた。

 

 

 

士郎

「しっかり焼いてやるよ!」

 

イカデビル

「うるさい!これでも喰らえ!」

 

 

 

イカデビルが腕を振り上げると、上空から何かが飛来し、ディケイドW目掛けて落ちてきた。

 

 

 

士郎

「っ!」

 

 

 

慌ててメタルシャフトで防ごうとするが、間に合わず、胸元に飛来物が直撃した。

 

衝撃でWの変身が解け、元のディケイドの姿に戻ってしまった。

 

 

 

イカデビル

「どうだ!流れ星攻撃の威力は!」

 

士郎

「てめぇ…」

 

 

イカデビル

「今回はこの程度にしてやろう。次こそは必ず、ジオ・クリスタルを手に入れてやる!」

 

 

 

そう言い残すと、イカデビルの目の前に銀色のオーロラが現れ、その中へと姿を消した。

 

 

 

士郎

「グレートショッカーはあの先の世界にいるのか…」

 

 

 

士郎は変身を解くと、すぐに自身の駆るマゼンタと白のバイク『マシンディケイダー』に乗り込んだ。

 

 

 

雷哉

「待て」

 

士郎

「ん?」

 

雷哉

「…お前は何者だ…?」

 

士郎

「言っただろ。通りすがりの仮面ライダーだってな」

 

雷哉

「仮面ライダーとは何だ?」

 

士郎

「そうだな…お前のような奴のことだ」

 

雷哉

「なに…?」

 

士郎

「ある人が言った。人類の自由と平和のために戦う戦士、それが仮面ライダーだと」

 

雷哉

「…………」

 

士郎

「お前も、この世界の人類の自由と平和を護ったはずだ。だから、頼みがある」

 

 

 

士郎は被りかけたヘルメットを下げると、雷哉の顔を見て告げた。

 

 

 

 

士郎

「こことは別の世界を、俺は救いに行く。力を貸してくれ」

 

雷哉

「だが、俺は既に力を…」

 

士郎

「ジオ・クリスタルの力は、まだ生きているはずだ。あの婚約指輪は、お守りの役目も果たしている。そうだろ?」

 

雷哉

「……知っているのか…」

 

 

 

だが、雷哉はまだ渋っていた。

 

力を解き放つためのあの姿は、酷く醜い。

 

あの姿は自分ではなく、始まりの神ジオの姿。

 

強大な力を手にし、人で無くなるのを怖れているのだ。

 

そんな迷いを顔に浮かべる雷哉の手を、祐美はそっと取り、ジオ・クリスタルが埋め込まれた婚約指輪を差し出した。

 

 

 

祐美

「なんか良くわかんないけど…雷哉を必要としている人がいる、ってことはわかった」

 

雷哉

「祐美…」

 

祐美

「私達は、もう十分雷哉に助けてもらった。我儘かもしれないけど、今度は私達じゃない、他の誰かのために戦って。雷哉」

 

雷哉

「っ…………」

 

 

 

ふと視線を逸らし、大河の方を見てみると、行ってこい、と言うように腕を組んでいる。

 

雷哉は優しく祐美を抱き寄せると、差し出された指輪を握りしめ、愛車『雅2号』に跨った。

 

 

 

士郎

「行くぜ」

 

雷哉

「…あぁ……」

 

 

 

2人の青年は共にバイクを走らせ、目の前のオーロラへと突入した。

 

 

 

大河

「…さてと。あいつが帰ってくるまで、忙しくなりそうだな」

 

祐美

「そうだね」

 

大河

「心配か?」

 

祐美

「ふふ…何を心配すればいいのかわかんないや」

 

大河

「だよなぁ」

 

 

 

2人は消えたオーロラを見つめて笑うと、店番を再開させた。

 

 

 

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イカデビル

「ふぅ…面倒な目に遭ったな…」

 

 

 

イカデビルはグレートショッカーの基地に戻ると、どかっと椅子に腰掛けた。

 

 

 

アポロガイスト

「ジオ・クリスタルは手に入らなかったのか」

 

イカデビル

「ディケイドが現れおった。邪魔をしよって…」

 

アポロガイスト

「まぁいいのだ。そちらは最優先事項ではないのだ。グレートショッカーの異世界大侵攻計画の要…『児童総怪人化』が最優先なのだ」

 

イカデビル

「強靭な肉体は量産できる。必要なのは脳改造をより施しやすい、無垢な脳。それを手に入れるために、児童を総て怪人化する…なかなか大胆な行動に出たな」

 

アポロガイスト

「これが成功すれば、より高性能な怪人の大軍団を手に入れられるのだ」

 

イカデビル

「楽しみだな。フハハハハッ!」

 

 

 

幹部2人の笑い声は、部屋の中に延々と響き渡る。

 

しかし、突然開いたドアが、それを遮った。

 

 

 

 

暁月

「そうはさせん!」

 

十真

「俺たちが止めてやるよ!」

 

イカデビル

「暁月!貴様…!」

 

アポロガイスト

「裏切り者が…!」

 

暁月

「この世界のためなら、当然の行為だ!」

 

十真

「アンタらの悪事は聞いてる。人々の自由を奪い、挙げ句の果てに子供達にまで手を出すなんて……グレートショッカーなんて、今日で終わりにしてやる!」

 

少女

「いい度胸ね。でも…できるのかしら?

 

 

 

 

振り向くと、いつの間にか、十真達を襲った男達を率いていた少女が、部下らしき怪人を引き連れて立ちふさがっていた。

 

 

 

暁月

「リオナ!」

 

十真

「あの子が、妹さん…」

 

暁月

「そうだ」

 

リオナ

「お兄様…本当に裏切ったんですか??」

 

 

 

リオナは悲しさをその小さな体から溢れ出し、全力で叫んだ。

 

 

 

 

リオナ

「お兄様と戦いたくなんかない…でも、お兄様がグレートショッカーを裏切ったのなら…私は躊躇しない。シャドームーンとして…あなたを敵と思うことにする」

 

暁月

「リオナ、目を覚ましてくれ!お前はまだ脳改造を受けていない!今なら、まだ逃げられる!」

 

リオナ

「逃げる?何から?」

 

暁月

「児童総怪人化による怪人軍団…その指揮官としてお前が選ばれてしまった。そしてそのために、お前も脳改造を受けて怪人となってしまう!だから早く逃げるんだ!」

 

リオナ

「何故?グレートショッカーのためなら、この命も捧げられる」

 

暁月

「お前は脳改造の恐ろしさを知らない…自分を失うことの恐ろしさを…」

 

リオナ

「お兄様は、既に脳改造を施されていたはず。何故、今頃そんな世迷言を?」

 

暁月

「俺はあるライダーとの戦いで、脳改造の呪縛から放たれた……そいつが自らの命を犠牲にしたおかげでな」

 

アポロガイスト

「それは…仮面ライダーBLACKのことか?」

 

暁月

「そうだ…俺の…最大の友だった男だ…」

 

イカデビル

「ならば、友の元へとおくってやろう!」

 

暁月

「そうやすやすと、死んでたまるものか!」

 

 

 

 

暁月は構えを取り、十真はバックルを装着した。

 

 

 

 

十真・暁月

「変身!」

 

 

 

[TURN UP]

 

 

 

2人は仮面ライダーブレイドと、シャドームーンに変身し、リオナ率いる怪人軍団を迎え撃つ。

 

数の差を物ともせず、それぞれの剣を振るい、拳をぶつけ、次々と倒していく。

 

 

 

アポロガイスト

「流石はシャドームーンなのだ。戦闘においては我々以上…だが、一度脳改造を受けた者に、この攻撃はかわせないのだ」

 

 

 

 

そう言うと、アポロガイストは発信機のような機械を取り出し、電源を入れた。

 

 

 

 

アポロガイスト

「簡易脳改造電波機なのだ。本来は一時的な催眠術でしかないが、脳改造手術の痕跡があれば、その効果は倍増するのだ」

 

暁月

「っ…!」

 

 

 

発信機から放たれた電波はシャドームーンに向けられ、シャドームーンは呻き声を上げながら苦しみ始めた。

 

 

 

暁月

「ううぅ……うあぁぁぁぁあっ!」

 

 

 

シャドームーンは狂ったようにサタンサーベルを振り回し、背を向けていたブレイドを斬りつけた。

 

 

 

十真

「ぐあっ…!」

 

暁月

「う、ううぅ……」

 

イカデビル

「面白い!ここまで来て同士討ちとはな!」

 

暁月

「ひ、卑怯な…真似を…」

 

 

 

シャドームーンは苦しみながら、標的をイカデビル達に向けようとするも、その攻撃は全てブレイドに対して向けられてしまう。

 

 

 

暁月

「すまない…体が言うことを…」

 

十真

「どうすれば…!」

 

 

 

怪人達の相手をしつつ、苦しみながらも自分を止めようとする暁月を見捨てることはできず、ブレイドは戦いに集中できなかった。

 

それこそアポロガイストの思うツボであり、十真達は一瞬にして劣勢に立たされた。

 

 

 

暁月

「に、逃げろ…ブレイド…!」

 

十真

「でもアンタを置いてくわけには!」

 

暁月

「俺は元より…生きて帰るつもりはなかった…」

 

リオナ

「お兄様…」

 

暁月

「俺の命を捨ててでも…人類の自由を護りたかった……いや…俺はただーー」

 

 

 

暁月は銀の仮面越しに、自分を見つめるリオナの顔を見た。

 

 

 

暁月

「リオナを…護りたかっただけ…なんだろうな……」

 

リオナ

「っ……!」

 

 

 

リオナは理解できなかった。血の繋がった兄妹といえど、どうして命を簡単に捨てるような行動に出たのか。

 

しかし、そこに理由などなかった。ただ純粋に、兄として、代わりのない妹の命を護ろうとしていただけなのだ。

 

 

 

アポロガイスト

「死ぬのだ、ブレイド!」

 

 

 

アポロガイストは銃身の長いピストルを取り出すと、ブレイドを容赦なく撃った。

 

それを皮切りに、怪人達は一斉にブレイドに襲いかかる。

 

 

 

十真

「ぐっ…ぐあっ!」

 

イカデビル

「無様だな、仮面ライダーブレイド!」

 

暁月

「早く逃げろ…!」

 

十真

「俺は…逃げない…!」

 

 

 

ブレイドはブレイラウザーを杖にして立ち上がり、残る力を振り絞って怪人達にぶち当たる。

 

 

 

十真

「アンタこそ逃げるな!」

 

暁月

「何…?」

 

十真

「生きることから…逃げるな!」

 

暁月

「っ……」

 

十真

「俺がアンタを止めてみせる!」

 

 

 

ブレイドはシャドームーンと距離を詰めると、全力で拳をぶつけた。

 

シャドームーンもすぐに応戦し、ブレイドに拳をぶつける。

 

互いに望まない殴り合いは止まることなく、またアポロガイスト達の思うツボで、2人はどんどんと体力を消耗していく。

 

 

 

 

十真

「はぁ…はぁ…」

 

暁月

「十真…どうして…」

 

十真

「アンタが生きてなきゃ…意味がない…」

 

暁月

「俺なんかいなくとも…世界が救われればそれで…」

 

十真

「アンタが本当に護りたいものは何だったんだ!答えろ!」

 

暁月

「俺が…本当に護りたい…もの…」

 

 

 

自由の効かない体で、暁月が見つめたのは、妹のリオナだった。

 

 

 

十真

「アンタがいない世界で、一人ぼっちにさせる気かよ!」

 

暁月

「…そうだな…」

 

イカデビル

「馬鹿馬鹿しい。もうお前達の茶番は見飽きた。サッサと死ねぇ!」

 

 

 

イカデビルは触手を振り上げ、2人に向かって鞭のように振り下ろす。

 

しかし、突如現れた銀色のオーロラから二台のバイクが飛び出し、イカデビルの攻撃を弾いた。

 

バイクで現れたのは2人の青年であり、マゼンタのバイクに乗った青年がヘルメットを外した。

 

 

 

 

士郎

「ゲストの登場を盛り上げてくれるとは、気前のいい奴だな。イカ男」

 

イカデビル

「イカデビル様だ!」

 

アポロガイスト

「ん…もう一方の男はもしや…」

 

雷哉

「俺か…?」

 

イカデビル

「奴が仮面ライダージオだ!変身もできぬくせに、何をしに来た??」

 

雷哉

「この世界を助いにきた。ただ…それだけだ」

 

士郎

「行くぜ」

 

 

 

士郎はバックル『ディケイドライバー』を装着し、ライドブッカーからディケイドのカードを取り出す。

 

 

 

士郎

「覚悟はいいな?」

 

雷哉

「あぁ…」

 

 

 

雷哉は祐美から受け取った指輪を握りしめると、目を閉じて額にかざした。

 

すると指輪に埋め込まれたジオ・クリスタルが紅い光となり、雷哉の体に吸い込まれていく。

 

 

 

雷哉

「たとえ世界は違えど…人類の光ある未来のため、俺は戦う!」

 

十真

「あなた達は…一体…?」

 

士郎

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えおけ」

 

 

 

2人はブレイドの前に立った。

 

 

 

士郎・雷哉

「変身!」

 

 

 

〈KAMEN RIDE:DECADE!〉

 

 

 

 

いくつもの影が士郎を包み、烈火の焔が雷哉を包み込む。

 

2人の体から眩い光が放たれると、その姿を変えた。

 

世界の破壊者『仮面ライダーディケイド』

 

人類の守護神『仮面ライダージオ』

 

 

 

イカデビル

「おのれ仮面ライダー!」

 

アポロガイスト

「シャドームーン!やってしまうのだ!」

 

暁月

「くっ……!」

 

雷哉

「俺が相手をしてやろう」

 

十真

「待ってくれ!」

 

 

 

シャドームーンと対峙するジオの前に、ブレイドは飛び出した。

 

 

 

 

十真

「あいつは操られてるだけなんだ!殺さないでくれ!」

 

雷哉

「……わかった…任せろ…」

 

 

 

 

ジオはアッサリと返事をすると、額に輝く紅い宝石『ジオ・クリスタル』の前に拳を掲げ、その拳に紅い焔を纏わせる。

 

 

 

 

雷哉

「お前を縛る鎖…俺が断ち切る…」

 

 

 

 

シャドームーンはサタンサーベルを振りかざすと、ジオ目掛けて走り出した。

 

サタンサーベルはジオの胴を真っ直ぐ狙いーー

 

 

 

暁月

「避けろ…!」

 

 

 

確実に捉えた。しかし…

 

 

 

 

雷哉

「…その程度か…?」

 

 

 

 

ジオの胴に当たったサタンサーベルの刃はボロボロに欠けてしまった。

 

そして懐の空いたシャドームーンの腹部にジオは握りしめていた拳をぶつけた。

 

 

 

暁月

「…!……体が…自由に動く!」

 

アポロガイスト

「ば、バカな!」

 

士郎

「さてと、反撃開始だ!」

 

 

 

ディケイドはライドブッカーをソードモードにすると怪人の群れに突貫し、華麗な剣戟を見せつけた。

 

 

 

 

雷哉

「っ…!」

 

 

 

ジオも鋭い蹴りとパンチを繰り出していく。

 

 

 

十真

「強い…」

 

暁月

「見てる場合じゃない。俺たちも行くぞ!」

 

 

 

ブレイドとシャドームーンはそれぞれの剣を手に取ると、背中を合わせて怪人達と対峙した。

 

 

 

アポロガイスト

「無駄な抵抗を…」

 

士郎

「それはこっちのセリフだ」

 

 

 

〈ATACK RIDE:SLASH!〉

 

 

 

ディケイドはスラッシュのカードをバックルに装填すると、ソードモードのライドブッカーにエネルギーを纏わせてアポロガイストに斬りかかる。

 

アポロガイストは盾で防ぐが、その威力を抑えきれず、後ろに押されてしまう。

 

 

 

士郎

「赤い敵には、赤いライダーだ」

 

 

 

 

〈KAMEN RIDE:DRIVE!〉

 

 

 

 

ディケイドの周囲に赤い装甲が現れ、瞬時に彼の体を包み込む。

 

ディケイドライバーから、なんと一輪のタイヤが飛び出し、左肩から襷がけになるように上半身に埋め込まれた。

 

赤いフレームに、車のマフラーを象ったような口元。フロントのような胴体。

 

まさに車そのものを戦士にした新たな仮面ライダー、『仮面ライダードライブ タイプスピード』だ。

 

 

 

アポロガイスト

「な、何なのだその姿は??」

 

士郎

「仮面ライダードライブだ。おいお前…ひとっ走り付き合えよ」

 

 

 

ディケイドドライブはレーシングのロケットスタートの如く走り出し、アポロガイストの体にパンチを浴びせる。

 

 

 

アポロガイスト

「ぐおっ!」

 

士郎

「タイヤ交換だ」

 

 

 

〈ATACK RIDE:SHADOW!〉

 

 

 

再びディケイドライバーからタイヤが飛び出し、胸に掛けられた黒いタイヤを弾き出すようにして『タイヤコウカン』が完了した。

 

紫の手裏剣型のタイヤ『ミッドナイトシャドー』だ。

 

 

 

士郎

「はぁっ!」

 

 

 

ディケイドドライブは両手に紫の手裏剣型エネルギー刃を持ち、アポロガイストに投げつける。

 

襲いかかる無数の手裏剣を防ぎきれず、地面を転げ回るアポロガイスト。

 

その間に、ディケイドはカードを装填。

 

 

 

〈ATACK RIDE:FLARE!〉

 

 

 

再びタイヤコウカンが行われ、オレンジ色の炎を纏ったタイヤ『マックスフレア』を装着した。

 

 

 

 

士郎

「フルスロットルで行くぜ」

 

 

 

 

〈FINAL ATACK RIDE:d d d DRIVE!〉

 

 

 

ディケイドドライブは全身に炎を纏うと、地面を駆けて飛び上がった。

 

 

 

士郎

「たぁぁぁぁぁぁあっ!」

 

 

 

ディケイドドライブはライダーキックを炸裂させるも、その勢いが止まらず、足と膝を地面に擦らせてブレーキをかけた。

 

 

 

 

アポロガイスト

「お、おのれディケイド…私はいつか…宇宙で最も迷惑な存在として…蘇ってやるのだ…」

 

士郎

「そん時はまた倒す。それだけの話だ」

 

アポロガイスト

「グレートショッカーに…栄光あれぇぇぇぇぇえっ!」

 

 

 

断末魔の叫びを残すと、アポロガイストはその体を爆散させた。

 

 

 

イカデビル

「アポロガイストがやられただと??」

 

雷哉

「次はお前の番だ…!」

 

 

 

 

ジオは飛び上がった勢いでイカデビルに殴りかかり、拳のラッシュを浴びせる。

 

 

 

雷哉

「はっ!」

 

 

 

最後に回し蹴りを食らわせ、イカデビルを部屋の壁に叩けつけた。

 

 

 

イカデビル

「き、貴様…」

 

雷哉

「…トドメだ……」

 

 

 

ジオの右脚に焔が灯ると、地面を強く蹴って飛び上がり、キックの体制をとった。

 

 

 

 

雷哉

「っ!」

 

 

 

 

ジオの右脚がイカデビルの胸に直撃すると、ジオの焔がイカデビルを一瞬にして包み込んだ。

 

 

 

 

イカデビル

「ぐ、ぐわぁぁぁあっ!」

 

士郎

「イカ焼きの完成だな」

 

十真

「これで、俺たちの勝ちか…」

 

 

 

全ての怪人を倒したブレイドとシャドームーンも、ディケイド、ジオと肩を並べた。

 

 

 

 

イカデビル

「わ、我々を倒して勝った気になるなよ!グレートショッカー首領が倒れぬ限り、我々を止めることなどできん!」

 

雷哉

「そいつはどこにいる?」

 

イカデビル

「ふふ…フハハハハハハ!」

 

 

 

 

灼熱の業火に焼かれながら、イカデビルは不敵な笑い声を響かせた。

 

 

 

 

イカデビル

「首領は…この世界にはいない!既にグレートショッカーは、別の世界を幾つか支配下に置いている!ここはその一部に過ぎんのだ!」

 

暁月

「何だと??そんなことは聞いてないぞ!」

 

イカデビル

「この情報は俺とアポロガイストしか知らないのだ。貴様のような裏切り者が出るかもしれないからな!」

 

士郎

「ここは本拠地じゃない、ってことか」

 

イカデビル

「貴様らに、我々は止められん!グレートショッカーに、栄光あれぇぇぇえっ!」

 

 

 

 

イカデビルは爆発を起こして燃え尽き、チリ一つ残さずに消えた。

 

 

 

士郎

「こいつは一本取られたな…」

 

 

 

士郎は変身を解くと、軽く頭を掻いた。

 

 

 

十真

「…でも、少なくとも、この世界は守ったんじゃないんですか?」

 

 

 

同じく変身を解いた十真は、ある場所を指差した。

 

その先には、暁月と、リオナが、向かい合って立っている。

 

 

 

 

暁月

「リオナ…」

 

リオナ

「お兄様は…大馬鹿者です。何で、危険な目に遭ってまで…私を…」

 

暁月

「理由なんか、考えなかった。強いて言うなら、『お前だから』だな」

 

リオナ

「お兄様…!」

 

士郎

「美しきかな、兄妹愛…ってところか」

 

 

 

脅威を退け、皆一安心していたが、雷哉だけが、ギラリと目を光らせていた。

 

 

 

 

士郎

「どうした?」

 

雷哉

「…何かが来るぞ…!」

 

 

 

 

雷哉が告げた瞬間、地面が大きく揺れ、部屋のあちこちがボロボロと崩れ始めた。

 

 

 

士郎

「まずい!出るぞ!」

 

 

 

五人は急いでグレートショッカーのアジトを抜け出し、表に出た。

 

そこで見たのは、全長約50メートルにも及ぶ巨大な影。

 

岩のような体と、赤く光る瞳、側頭部に生えた二本の角。

 

 

 

 

士郎

「何だありゃ…??」

 

リオナ

「あれは、キングダーク!」

 

暁月

「アジトを守るために、防衛システムが作動したみたいだな」

 

十真

「だったら、こいつも倒せばいい!変身!」

 

 

 

 

[TURN UP]

 

 

 

 

士郎

「第二ラウンド、か」

 

 

 

 

〈KAMEN RIDE:DECADE!〉

 

 

 

 

雷哉

「…変…身…!」

 

暁月

「変身!」

 

 

 

四人が変身すると、キングダークもその存在に気付き、鈍重な動きで接近してきた。

 

しかし、その一歩一歩は巨大な振動を起こし、彼らの動きを制限する。

 

 

 

士郎

「こいつで行く!」

 

 

 

〈KAMEN RIDE:RYUKI!〉

 

 

 

 

士郎

「来い、ドラグレッダー!」

 

 

 

 

〈ATACK RIDE:ADVENT!〉

 

 

 

 

ディケイド龍騎に変身すると、赤い龍『ドラグレッダー』を呼び出した。

 

ドラグレッダーは咆哮をあげるとキングダークに向かって火球を飛ばした。

 

しかし、ドラグレッダーでもそのサイズはキングダークに及ばず、致命傷を与えることはできていない。

 

 

 

雷哉

「せめて、もっと戦力が揃っていればな…」

 

「俺が加勢しよう!」

 

 

 

背後から聞こえた声に振り向くと、そこには1人の黒い戦士が立っていた。

 

 

 

士郎

「BLACK RX…」

 

BLACK RX

「久しぶりだな、暁月!」

 

暁月

「その声…まさか!」

 

BLACK RX

「お前のライダーへの目覚めが、俺を蘇らせたんだ。共に戦おう!」

 

暁月

「俺を、憎んでいないのか?」

 

BLACK RX

「お前は、俺の親友だ。憎む必要なんかないし、俺はお前が目を覚ましてくれると信じていたしな!」

 

暁月

「…ありがとう」

 

BLACK RX

「加勢に来たのは俺だけじゃないぞ」

 

 

 

 

BLACK RXの両脇に銀色のベールが現れ、揺らめきと共に何者かが現れた。

 

 

 

 

竜見

「やぁ、士郎」

 

 

 

 

現れたのは1人の青年。士郎の友人であり、仲間である『長森 竜見』だった。

 

 

 

 

士郎

「竜見…来るのが遅いぞ」

 

竜見

「無茶言うなよ。君に頼まれたとおり、人は集めてきたんだから勘弁してくれ」

 

 

 

 

そう言うと、銀色のベールから、何人もの影が現れた。

 

 

 

 

智樹

「久しぶり!士郎」

 

士郎

「来てくれたか、智樹」

 

リンドウ

「助太刀してやるか」

 

コウタ

「よぉし!張り切っていきましょう!」

 

エリック

「安心したまえ、この僕が華麗に戦ってあげよう」

 

十真

「リンドウさんに、コウタ…何でみんなが…??それに、エリックさん死んだはずじゃ??」

 

竜見

「勘違いしないでくれ。彼等は君のいた世界とは別の世界に住んでいるゴッドイーターだ」

 

リンドウ

「他人とはいえ、同業者を見殺しにはできねぇからな。絶対に、生きて帰るぞ!」

 

十真

「リンドウさん…」

 

エリック

「さぁ、華麗に変身と行こうか」

 

 

 

 

ゴッドイーターの各々は、バックルを取り出すと、ラウズカードを手に取った。

 

 

 

 

智樹

「俺も行くぞ」

 

 

 

 

智樹は腰に両手をかざすと、銀色のベルト『アークル』が現れ、その中央部が紅蓮の炎で真紅に染まる。

 

 

 

 

竜見

「クライマックスの始まりだ」

 

 

 

 

竜見は青色の銃『ディエンドライバー』を手に取り、カードを装填した。

 

 

 

 

《KAMEN RIDE》

 

 

 

 

リンドウ・コウタ・エリック

「変身!」

 

 

 

 

[SPADE KING]

 

[DIA 10]

 

[CLOVER JACK]

 

 

 

 

ゴッドイーター3人は、橙色のオリハルコンエレメントをくぐってラウズトルーパーへと変身。

 

 

 

 

 

竜見・智樹

「変身!」

 

 

 

 

 

《DI・EーーーND!》

 

 

 

 

竜見はシアン色のライダー『仮面ライダーディエンドライバー』に、智樹は紅蓮の炎を纏うライダー『仮面ライダークウガ アメイジングアルティメットフォーム』に変身した。

 

 

 

 

 

BLACK RX

「俺たちライダーの力の全てをぶつけるぞ!」

 

士郎

「あぁ。行くぜ!」

 

 

 

 

 

ディケイドが飛び上がると、それに合わせて全員が飛び上がり、ライダーキックの構えを取った。

 

 

 

 

士郎

「たぁぁぁぁぁぁあっ!」

 

雷哉

「とぁぁぁぁぁぁあっ!」

 

十真

「えぇぇぇぇぇえいっ!」

 

 

 

 

キングダークの胸元に、ディケイド、ジオ、ブレイドを模した紋章が現れ、全員はライダーキックでそれを突き破ると、蹴り足にエネルギーを充填させた。

 

そして全員のライダーキックが一斉にキングダークに命中し、その体に大きな風穴を開けた。

 

キングダークの動きがピタリと止まると、その全身がボロボロと崩れ始め、巨大な爆発を起こして散った…

 

 

 

 

 

-8ページ-

 

 

 

 

 

 

 

 

リオナ

「お兄様、お茶が入りましたよ」

 

暁月

「あぁ、ありがとう」

 

リオナ

「にしても、世界を統一する王様というのも大変そうですね」

 

暁月

「なんか俺が世界制服したみたいだな…」

 

リオナ

「グレートショッカーの支配から解き放たれた今、この世界には正しい未来へと導く長が必要なのです」

 

暁月

「それで俺が選ばれた…俺としては、少々荷が重いんだがな」

 

 

 

暁月は妹の淹れた紅茶を一口飲むと、再び机に並べられた書類に目を落とした。

 

 

 

暁月

「にしても政務とは結構疲れるものだな。こういう仕事は慣れてない」

 

リオナ

「我慢してください。お兄様しか任せられる人はいませんし、この世界を救ったお兄様の国民から支持は絶大なんですから」

 

暁月

「世界を救ったのは俺だけじゃないんだがな…」

 

 

 

 

十真達の活躍により、暁月の世界からグレートショッカーの脅威は消え去った。

 

暁月は世界を救った英雄として、全世界の王となった。

 

暁月以外の戦士達の存在を、この世界で知っているのはリオナとBLACK RXの2人だけであり、そのことは決して口外されていない。

 

そのため、暁月は全世界からたった1人、英雄として注目されることとなった。

 

 

 

 

暁月

「何だか申し訳ないな」

 

リオナ

「だったら、もっと政務に励んでください」

 

暁月

「わかったよ」

 

 

 

 

暁月は大きく伸びをすると、机に置かれた写真立てを見つめた。

 

 

 

 

暁月

「あいつらの護ってくれた世界、俺が護り続けなきゃな」

 

 

 

暁月は万年筆を手に取ると、頭を悩ませながら作業に取り掛かった。

 

 

 

 

-9ページ-

 

 

 

 

雷哉

「…ただいま」

 

 

 

喫茶店の扉を開けると、いつものように客で賑わっていた。

 

2人の店員が、手慣れた様子でそれを対応している。

 

 

 

祐美

「あ、おかえり、雷哉」

 

大河

「よ、ご苦労さん」

 

 

 

特に特別な言葉ではない。特に特別な口調でもない。

 

いつも通り、用事を済ませて帰ってきたのを迎えるように。

 

2人にとっては、その程度の事態にしか思っていない。

 

それこそが、雷哉に対する信頼。必ず帰ってくるという、信頼の証。

 

雷哉は柔らかな笑みを浮かべると、1枚の写真をポケットから取り出し、壁に飾った。

 

 

 

 

雷哉

「…俺も厨房に入ろう」

 

 

 

 

そしてエプロンを着けると、厨房に立ち、彼等と笑顔を交わしながら仕事を始めた。

 

 

 

 

-10ページ-

 

 

 

十真

「ん…」

 

 

 

目が覚めると、自室のベッドに寝そべっていた。

 

 

 

十真

「俺の部屋…帰ってきたのか」

 

 

 

十真はベッドから起き、部屋を一通り見てみた。

 

何も変わりはない。いつもの部屋。

 

まるで、あの戦いが長い夢だったかのように感じてしまう。

 

しかし、あれは現実だった。そう十真に伝える物が、彼のポケットの中にしまわれていた。

 

 

 

十真

「仮面ライダー…か…」

 

 

 

 

十真はポケットから出てきた写真を写真立てに入れ、カウンターに飾った。

 

 

 

十真

「俺も護ってみせる…人類の自由と平和を…」

 

 

 

十真は素早く任務用のスーツに着替えると、ミッションを受けにエントランスへと向かった。

 

 

 

十真

「(仮面ライダーとして…!)」

 

 

 

 

-11ページ-

 

 

 

 

竜見

「これで、この世界は救われたことになるのかな?」

 

士郎

「この世界は…な」

 

竜見

「首領は今も何処かで、ほくそ笑んでいるんだろうね…」

 

士郎

「見つけ出してやるよ。絶対にな」

 

 

 

士郎はライドブッカーを開き、1枚の写真を取り出して空にかざした。

 

写真には、右から士郎、十真、雷哉が写っており、その背後にはディケイド、ブレイド、ジオの影が写っていた。

 

 

 

 

士郎

「そん時は、こいつらにも手を貸してもらうか」

 

竜見

「それにしても、仮面ライダージオ、それとラウズトルーパー。僕達の知らないライダーがまだまだいたとはね」

 

士郎

「ライダーの歴史は止まらない。今も何処かで、新しいライダーが誕生している」

 

 

 

士郎はライドブッカーに写真を入れると、マシンディケイダーに跨ったら。

 

竜見もヘルメットを被ると、シアン色のバイク『マシンディエンダー』に乗り込んだ。

 

 

 

士郎

「そのうち…通りすがらせてもらうさ」

 

 

 

二台のバイクは勢いよく走り出すと、目の前に現れた銀色のベールの中へと消え去った。

 

 

 

 

 

 

-12ページ-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く…

 

説明
D.C.D.作品1周年記念の長編作品です。

?登場作品?

・仮面ライダーディケイド?破壊者と天使達?(ディケイド×そらのおとしもの)

・仮面ライダージオ(D.C.D.オリジナルライダー作品)

・仮面ライダー剣×ゴッドイーター?掴み取る運命?(ブレイド×ゴッドイーター)
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