恋姫英雄譚 Neptune Spear
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Mission19: Jormungand

 

 

 

月達を訪問しにきた丁原は次の日の朝に帰っていった。

なんでも近々大規模な賊討伐が計画されていて、朝廷にいる大将軍の何進に増援を進言したが却下され、数が心持たないそうだ。

 

そこで丁原軍の将兵200人を第6師団に派遣将兵として回すことを条件に援軍を要請してきて、月は了承。出陣は霞が指揮する第3師団に任された。

本来なら第6師団も向かわせたかったが編成がまだ完了していない状況下では危険と判断されて今回は天水で待機することになった。

 

その影響で月から3日間の休みを貰い、俺は晴れた日に手拭いとサバイバルキットを持って郊外にある滝にいた。

 

 

「ふぅ、いい場所を見つけたな」

 

 

川の水は澄みきっており、川魚がたくさん見受けられる。ここに来た理由は水浴びをするため。

この時代は日常的に風呂に入れる訳ではなく、月や詠達でもこの時期は4日に1回しか入られない。風呂やシャワーが好きな俺にとってはまさに致命的なことであり、時間があったら川で水浴びをしているのだ。

 

俺は川岸に荷物を置いてコンバットユニフォームを脱ぐ。それを綺麗に畳むと下着で川に入る。

 

 

「……冷たくて気持ちいいな。やはり水浴びもいいもんだ」

 

 

この辺りは湧き水が豊富で、加えて滝の影響でマイナスイオンが非常に豊富。滝の手前で立ち止まりマイナスイオンを全身に浴びせていくと不意に川岸に誰かの気配。慌てて振り向くとそこには………。

 

 

「なんやリアン、あんさんも来とったんかいな?」

 

 

胸をサラシで巻いて、下着を身につけてこちらを見ている霞がいた。普段は束ねている彼女の髪は下ろされ、一瞬だが誰か分からなかったが刺激的な姿であることには変わらないので背中を急いで向ける。

 

 

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「なんでここにいるんだ?」

 

「なんでって言われてもなぁ……ここはウチの気に入っとる場所やし、水浴びに来たらリアンがおったんや」

「そ……そう……なのか………だったら俺は上がるとしよう」

 

「まぁまぁええやん♪折角来たんやから一緒に入ろうなぁ♪」

 

「い……いつの間に?」

 

 

気が付けば霞が腕を掴んで上がろうとする俺を引っ張っていた。水の抵抗で普通は速度も遅くなる筈なのだが、流石は神槍張遼。速度に関しては誰にも負けないようだ。

 

俺の腕を掴みながら霞はジロジロと俺の身体を見るが、はっきりいって恥ずかしすぎる。

 

 

「うっは?……体格がええから予想してたけど、やっぱエライ筋肉しとるで♪」

 

「あまりジロジロと見るな」

 

「ええやん♪減るもんやないし………そやけど流石は天界の戦士様やで。傷だらけやん………」

 

「まぁな……これでも修羅場をくぐり抜けて来たからな」

 

「腹の刺傷は分かるけど脇腹と左肩の傷はなんなん?」

 

「これか?これは手榴弾の爆発に巻き込まれて出来た傷だ。こっちのは敵から銃弾を受けてな、下手をすれば片腕を失ってた処の重傷だったらしい」

 

「な……なんやエライごっつい話やな……おろ?」

 

「どうした?」

 

「なぁ、この刺青はなんなん?」

 

 

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そういいながら霞は俺の右上腕を軽く触る。そこには俺が24歳の時に参加したテロ組織殲滅作戦‘‘オペレーションヨルムンガンド”達成を記念して彫った翼と腕の生えた大蛇‘‘ヨルムンガンド”。

そのヨルムンガンドがRPG-7を締め上げ、AKを噛み砕き、共産主義の象徴である鎌とハンマーを握り潰すというタトゥーがそれだ。

 

「あぁ、こいつは昔参加した作戦で成功を収めてな。それを記念して仲間と一緒に彫ったものだ。ヨルムンガンドといって神話に出てくる大蛇だ」

 

「ヨルムンガンド………なんやえらい強そうな名前やな♪」

 

「まぁな、だが神話ではこいつは邪神とも言われてる」

 

「邪神?」

 

「こいつはその悍ましい姿と力で神々に恐れられてな、それでヨルムンガンドを含む兄弟達は実の両親に捨てられた」

 

「……………ほんまなん?」

 

「どうした?」

 

「いや……まるでウチと姉やなぁ……って思うたんや。ウチら姉妹も……親に捨てられよったさかいな………」

 

 

そこで前に霰から聞いた話を思い出す。確か霰がまだ5歳の時に実の両親は幼かった霞と一緒に自分達を捨てて行方をくらまし、路頭に迷っていた処を丁原こと椿に拾われた。

 

そのことを思い出したのか、霞は悲しそうな表情で空を見上げており、俺は彼女の頭に手を置いて優しく撫でてやる。

 

 

「………すまない、辛いことを思い出したな」

 

「えぇんよ、もう昔のことやし、せんで今の親は椿お母はんや。お母はんだけやない。月や詠、嵐等も今やとウチの大事な家族や」

 

「…………」

 

「やから……ウチ全く寂しぃないねん♪」

 

それだけいうと霞は満面の笑みを浮かべながらこちらを見上げてくる。そこにいるのは泣く子も黙る名将張遼ではなく年相応の笑顔がよく似合う明るい女性の霞だ。

 

俺は暫く見惚れてしまっていたがすぐ我に戻って視線を逸らした。

 

 

「……早く上がるぞ。さすがにずっと水に浸かっていたら風邪をひく」

 

「せやな♪」

 

 

話を逸らして平常心を保ちながら俺は水から上がって身体を乾かし、服を着ると霞と一緒に天水に戻った。

親に見捨てられたヨルムンガンド。出来ることならもう彼女にはヨルムンガンドと同じ運命を辿ってはもらいたくない……………。

 

 

 

説明
水浴びに来たリアン。そこで神話に出てくる大蛇を語る。
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