恋姫英雄譚 Neptune Spear
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Mission26: Premonition of a New Civil War

 

 

 

夜の襲撃を受けた翌日の昼、俺達は無事に天水に帰還した。城門にて今宵の出迎えを受け、彼女と燕に第6師団の指揮を任せると俺は霰を引き連れて天水本城へと向かった。

 

衛兵に帰還報告をすると玉座の間に案内され、中に入ると月、詠、嵐、迅、雷、鷲、鷹に討伐から帰って来たであろう霞、丁原殿、恋、愛、ネネが待機していた。

 

なお、霞が俺を見ると駆け寄って来て満面の笑みを浮かべながら俺に抱き付いて来た。

 

 

「おっかえり?♪リアン♪」

 

「おう、相変わらず元気な奴だな」

 

「ウチはいつも元気やで♪」

 

 

そんなやりとりをしていると恋と愛も再びトコトコと俺に歩み寄って来て、俺の左右に抱き付いて来て頬づりを始める。

 

 

「あらあら、やっぱり人気があるわね♪」

 

「くぉらあぁあああ??なに恋殿と愛殿を誑かしているのですか??は…母上??離して下さいなのです??」

 

「へぅ………霞さん……大胆です……」

 

「ちょっ??ゆ…月??頼むから戻って来てよ??」

 

「はぁ……そういうことは何処か別の場所でやってくれ」

 

「はははっ??やっぱリアンは面白いな??」

 

「迅……あなたは何を言ってるのかしら?」

 

「あの霞がまさかここまで男に興味を示すだなんてな………」

 

「はっはっはっ??若いってやっぱいいもんだねぇ??」

 

 

今の状況にその場にいた全員がそれぞれの声を発する。

話をしたいので霞の頭を撫でながら傍にどかせ、恋と愛にも同じようにすると月に歩み寄った。

 

 

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「月、西涼での任務は完了した」

 

「へぅ……は……はい。ご苦労様でした。椿さんはお元気でしたか?」

 

「あぁ、それに向うでも面白い奴等に出会えたしな」

 

「リアン、誰なん?」

 

「冀州頓丘県令の曹操に車騎将軍の皇甫嵩の2名だ」

 

「曹操……確か宦官曹騰の孫娘だったわよね?」

 

「そんなに有名なのか?」

 

「有名もなにも……僅かな期間で県令に抜擢されただけじゃないし、洛陽で北部尉してた時にも夜間通行禁止の禁令を破った十常侍蹇碩の叔父を棒打ちで殺したり、張譲に喧嘩を売って何の手出しもさせない実力もった奴らしいからな……」

 

「私も曹操という人の噂は聞いたことがあります。文武両道で自信家。しかも強い野心を持って敵であったとしても才があれば自軍に引き込む考えを秘めていると………」

 

「その曹操に勧誘されたって……まさか受けた訳ないわよね?」

 

 

詠の言葉に全員が一斉にこちらを見た。

 

 

「心配無用だ。今の俺は董卓軍の将……国や主、仲間に忠を尽くすのは軍人として当然の役割だからな」

 

 

その言葉に全員が安堵の表情を浮かべ、特に詠は手を胸元に置いて息を大きく吐き出していた。

 

 

「よかったな詠、リアンが俺達の下を去らなくて」

 

「ち…ちょっと鷹??なんで私に振るのよ??」

 

「お前とは何かと付き合いが長いからな……だから嬉しいっていうのが嫌でも伝わってくるさ」

 

「なっ??ななななななっ??」

 

「ははっ♪詠はそんなに俺がいなくなって貰いたくないのか……嬉しいな全く♪」

 

「な…なにいってんのよこの馬鹿ぁあああっ??」

 

 

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それだけいうと詠は顔を真っ赤にしながら勢い良く駆け寄って来て両腕で叩こうとするが額に手を置いてそれを阻止。すると可愛らしく両腕を回転させながら前に出ようと足掻く。

 

 

「まぁまぁ………ツン子の可愛らしい反応「ツン子って言うなぁああ??」は置いておいて………まだ報告することがある」

 

 

先ほどとはうって変わって真剣な表情をすると全員が和みムードから指導者、軍師、更には軍人の表情に変化させる。

 

 

「ここ天水への帰還途中、俺達は夜営をしたんだが、夜空を眺めていたらいきなり20人弱の襲撃部隊の奇襲を受けた」

 

「奇襲……ですか?」

 

「そうだ……しかもその装備っていうのが友軍……つまりは董卓軍兵士のものだった」

 

「味方ですって?」

 

 

詠に対して俺は無言で頷く。

 

 

「ちょい待ちぃな………それってどっかの陣営がウチ等の装具を盗んだっちゅうんはないんか?」

 

「残念だがそれはない。武器庫の警備は厳重そのものだし、俺から見ても完璧だ。だから内部のものが手引きをしない限りは他陣営の人間が手にすることなどありはしないからな」

 

「………となると……」

 

「あぁ?……安牌じゃねぇがリアンのことが邪魔な人間がいるっつうことだよな?」

 

「……はっ??それはここにいない人物で師団長と対立している人間……」

 

「流石は迅と雷だ。いい箇所を指摘するな………2人の推理と同じで俺も差し向けた張本人は李?と郭と踏んでいる」

 

 

俺が李?と郭の名前を口にした瞬間、全員が唖然とした。

 

 

「それで……あの2人はどこに?」

 

「あのカス共なら確か……ウチ等と途中まで一緒に長安に行って、んで中央に報告するっちゅうことでまだおる筈やで」

 

 

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別任務で長安にいると聞いた瞬間に俺は考え込んでしまった。

 

李?と郭というキーワードに加えて長安。

 

更には今回の西涼騒乱。

 

ここにあと一つキーワードが加わらないことを祈りたい。試しに月達に聞いてみることにした。

 

 

「………ひとつ聞いてみてもいいか?」

 

「なんでしょう?」

 

「近いうちに長安で何かイベント……催し事の類は何かないか?」

 

「えっ?………そういえば長安で王室主催の武闘大会があって確か帝様が来られることになってるわよ」

 

「………くそ??」

 

 

一番最悪のキーワードが来てしまった。

 

帝………つまり漢王朝第12代皇帝の劉宏。年代や対象者が違うが李?と郭の目的がこれではっきりとした。

 

「月。すぐに可能な限りの兵員を長安に向かわせた方がいい」

 

「ちょっ……なんでなのよリアン?」

 

「よく考えて見ろ……長安郊外に出現した賊の討伐に西涼騒乱鎮圧。こんな短期間で……しかもほぼ同時に長安という重要拠点の近くで起きるのは間が良すぎる」

 

「リ……リアン?」

 

「おまけに長安へ報告に向かったという俺を殺害しようとした可能性がある李?と郭。更には帝が来る武闘大会……もし俺の考えが正しかったら……」

 

「………まさか??」

 

「このふたつも2人が絡んでいた可能性が高い。そして奴等の目的は帝と長安の掌握……」

 

 

帝と長安の掌握……これは実際に董卓暗殺から3日後に行なわれた事件だ。本来なら2人の手に落ちたのは14代皇帝の献帝だが、王族であるのは変わらない。

 

 

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もし奴等が本当に実行しようとしているのなら威光を盾にして権力を横暴し、更に民が苦しむこととなる。

 

 

「……もしホンマやったら厄介なことになるで」

 

「はい……たとえ威光が消えかかっているとはいえ、帝は無くてはならない存在です。帝に危険が迫っている可能性があるならすぐに向かうべきです」

 

「月、詠。俺達が先遣隊として向かうぞ」

 

「大丈夫なの?」

 

「大丈夫にさせるんだ……迅、雷はすぐに部隊に戻って出陣準備を半刻以内にやってくれ」

 

「ああ??」

 

「御意??」

 

「詠様、ここは万が一に備えて西涼連合にも協力を要請された方が宜しいかと……

「分かってるわ。すぐに早馬を向かわせて椿に知らせましょう」

 

「それと曹操軍にもだ。奴等ならまだ涼州に滞在している筈だから向かえるだろう」

 

「ウチもリアン等と一緒に行く??おかあはんもええやろ??」

 

「えぇ、だけど流石に軍備を整えなきゃいけないわ。だから恋と愛の部隊をリアンさんに同行させるわね」

 

「すまない……今は時間が惜しい。すぐに長安へ向かうぞ」

 

 

そう話すと俺達は急いで出陣準備を行い、1時間で可能な限りの準備を済ませると長安へと第6師団を進ませた。

 

李?と郭等による長安掌握。これ以上あのくそったれ野郎共の好きにさせたりはしないぞ……………。

 

説明
天水に帰還したリアンだったが、彼の悪い予感が的中してしまう。
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