真・恋姫†無双 裏√SG 第48話
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ナイフを抜き、体の出力を全体の75%まで引き上げる。

ここまで上げるのは、恋姉さんや華雄さんとやる時ぐらいだ。

それだけ、目の前にいる奴の力量は高い

 

油断はしない

 

徐福「ほぉ?更に強く…いや、全力を出しつつあるのか。まこと、素晴らしい力じゃ」

 

出力を上げた事に気付いたらしく、徐福は無邪気な子どもみたいな笑みを浮かべていた

 

そして、それと同時に、視界が一瞬ボヤけた。

というより、五感に違和感を感じた

 

咲希「……?」

 

何をした?

 

徐福「フハ!やはりお主、感覚全てを共有化しておったのか」

 

共感覚に気付いた?何故…

 

咲希「!?」

 

突然、目の前の光景がグニャリと歪み始め、薄い霧の様なものが辺りを覆い、徐福の姿が数十に増え始めた

 

なんだこれは?何が起きている?

 

徐福「五感で感じるものを全て共有化する事で、音や感情を視覚として捉える事が出来るのであろう?それこそが、鬼の能力じゃ。じゃが、余とは相性が悪かったな」

 

複数の徐福が一斉に語り掛けてくる。

 

これは…幻覚?

 

徐福「その鬼の能力が、弱点となる」

 

そして一斉に、襲い掛かってきた

 

咲希「数揃えたってなぁ!」

 

あたしは手近な奴の顔面に拳をぶち込む。

すると、拳が当たると同時にそいつは煙となって霧散した。

全く手ごたえを感じない。それこそ、煙を殴ったかのような感覚。

さらにその煙は、再び一つに纏まり、徐福の形を構築した。

 

間違いない。こいつは幻覚だ。幻覚自体に脅威はねぇが…

 

 

ガキン!

 

 

徐福の魔手をナイフで止める。運が良かったのか、そいつからは確かな物量を感じた

 

だが…

 

 

グサッ

 

 

咲希「!?」

 

背中を刃で貫かれる感触があった。

私は気になり、少し背後を見てみると、そこには徐福の幻覚と思しき奴が、細剣で私を刺している姿があった

 

さらに、他の徐福の幻覚も、次々に私に向かって凶刃を突き刺す。

ある奴は剣を、ある奴は鎌を、ある奴は槍を、またある奴は弓矢で私を射抜いた

 

ドバドバと血が垂れ流れる。

流れる血が、激痛が、これが幻覚などではないと認識させた

 

どういう事だ?

私が殴った時は、質量を全く感じさせなかったのに、向こうの攻撃はしっかり通っている。

何故だ?そんな一方的な真似が出来るものなのか?

 

それに、私の共感覚を持ってしても、本物がどれか見分けがつかない。

複数居る徐福のどれからも、全く気配を感じないのだ

 

とりあえず私は、ナイフを振り回し、周囲にいた徐福の幻覚を打ち払い、そこから距離をとった。

その間に体に刺さった刃物を抜き取り、瞬間回復で傷を塞いだ

 

徐福「ほぉ!瞬間回復か!流石は鬼じゃな!」

 

そんな徐福の嬉しそうな声を無視し、魔力を集中させてある世界にいる子に念話を飛ばした。

その子は程なくして出てくれた

 

ティアナ『はい、ティアナです。どうしたんですか、咲希さん?今の時間はお仕事中なのでは?』

 

とある世界の私の妹分、ティアナだ。

ティアは幻覚魔法を得意としている筈だから、何か突破口が開けるだろう

 

咲希『あぁ。ちょっと聞きたい事があってな。ティア、幻覚使えたよな?その幻覚って、質量も含まれたりするのか?具体的には、幻覚の攻撃が物理的に人間の体を傷付けるみたいな』

 

ティアナ『幻覚に質量ですか?出来ない事はないですよ。ただ、それをやろうとするには、膨大な魔力量が必要ですけど』

 

ティア曰く、魔力で作る幻覚は、ある程度の質量を含むこともある様だ。

その硬度は魔力量が高ければ高いほど良いらしい。

ただ、物理的に脆いらしく、私レベルの奴が攻撃すれば、余裕で消し飛ぶらしい

 

なるほど。それくらいの芸当なら、私でも出来そうだ。

つまりは、魔力や氣で構築された剣の様なもの。

ただ、それが人間のカタチをして、人間みたいに自在に動くだけ。

脅威はさほど無い

 

だが、これと私の共感覚が狂った事の関係がわからない。

幻覚が魔力の塊なら、魔力の色だけが視える筈なのに、ここに居る徐福からは同じ色しか視えない。

まだ何か、見落としがあるのか?

 

その旨をティアにも伝えてみる。

ティアの方が私より断然頭が良いから、何か手掛かりが掴めるかもしれない

 

ティアナ『うーん…共感覚は確か、一つの知覚的刺激を五感全てで共有するもの……視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚……!?咲希さん!もしかして、その周辺で煙みたいな物が撒かれていませんか?』

 

咲希『ん?そう言えば、あるな』

 

ティアナ『多分その煙が、咲希さんの感覚を狂わしてるんだと思います。視覚、嗅覚、もしかしたら味覚も。その煙を払わないと、咲希さんにはキツイかもしれません』

 

あぁ、そりゃそうだ。

普通に考えりゃ、この煙が出始めてから異常が出たのだから、これが原因で間違いないのだろう。

問題は、これをどう払うかだ

 

軽く体を回転させ、私を中心に竜巻を発生させる。

煙は天高く上がり、一面を晴らして行くが、程なくして再び辺りに煙が覆った

 

咲希『ダメか』

 

ティアナ『え、何したんですか?』

 

咲希『竜巻起こして晴らそうとしたけど、直ぐに元通りだ』

 

ティアナ『た、竜巻……相変わらず咲希さんは……咲希さん、何処かに煙を発生させる装置みたいなものはありませんか?』

 

微妙に呆れた感じの声を漏らしていたが、ティアはすぐ様真面目な声音に戻し、問い掛けてきた。

 

咲希『煙を発生させる装置?そう言えばさっき、煙を晴らした時に一瞬だけ、人の大きさと同等くらいのお香の陶器らしき物があったような…』

 

本当に一瞬だったからわからないが、この屋上の四隅にあった気がする

 

ティアナ『お香の陶器?きっとそれですね。それで嗅覚を麻痺させる煙を出してるんだと思います。元を断つには、まずはそれの破壊からですね』

 

ティアに意見を聞いて正解だったかもな。

突然妙な事聞いてんのに、咄嗟に返せる機転の良さは士希以上にピカイチかもな

 

咲希『サンキューティア!助かったよ。この礼は、また会った時に返すな!』

 

ティアナ『ふふ、いいですよ。日頃からお世話になってるんですから。それでなくても、協力出来てこっちも嬉しいです!』

 

なんて、可愛いことを言いつつ、ティアとの念話を切った。

あの子にはちゃんと、礼をしないとな。

 

さて、突破口は見つかった。後は実行するだけだな

 

私は反転し、この屋上の角へ全力で向かった。

煙が濃く、視界は悪いが、空間把握能力に秀でた私なら、方向さえ分かっていれば余裕で辿り着ける

 

徐福「ほぉ!気づいたか!」

 

徐福の分身が背後から襲い掛かってる。

目の前には、行かせないと言わんばかりに立ち塞がる分身の姿もあった

 

咲希「邪魔だ!」

 

手に氣を溜め込む。

氣は熱を帯び、拳が炎の様に燃え盛り、大気を焦げ付かせる。私は拳を前に突き出して、一気に放出した

 

 

紅蓮鉄鋼拳

 

 

目の前の徐福が炎の熱で蒸発する。

地面は焼け焦がれ、前方にあった陶器は瞬時に溶けていった

 

私はそれを確認し、再び反転する。対角線を意識しつつ、他の角にあるであろう陶器に狙いをつける

 

咲希「フレア・ストライク」

 

両手から魔力で生成された砲撃を撃つ。

その砲撃は二方向に真っ直ぐ伸びていき、やがてジワジワと中心に寄って行く。

そして私の対角線上を通過するの確認して、砲撃を一時止めた

 

今の攻撃で徐福の分身も粗方消し飛ばした。

後はこの煙を晴らすだけだ

 

私は中心地点に駆け出し、ナイフを握り締め、氣を高めた

 

咲希「螺旋戒牢」

 

私は一本足を軸に高速回転する。

その回転は風を起こし、やがて竜巻へと進化する。

その竜巻の中で吹き荒れるのは、雷雨ではなく、斬撃だった

 

周囲のあらゆる物質を斬りつけて行く。徐福の分身はもちろん、煙すらも斬り刻み、周辺を晴らしていった

 

咲希「ふぅ、すっきりしたな」

 

 

ガキン!

 

 

咲希「だから、視えてるぜ、徐福」

 

頭上から降ってくる殺気の塊をナイフで受け止める。

上を見上げれば、そこには満面に広がる喜色の笑みを浮かべた徐福が居た

 

徐福「素晴らしい!よもやこうも早く対処されるとはな!」

 

徐福の姿をしっかり確認する。

衣類が細切れになっている辺り、螺旋戒牢を直撃したのだろう。

あれを受けて四肢が繋がっている事に驚きだが、まぁ化け物だしな

 

徐福「それに、あの波動の攻撃も見事じゃ!流石の余も、あれを受けて一度死んでしもうたわ!」

 

……なに?一度死んだだと?

 

徐福「じゃから、余も撃たせてもらうぞ。必殺の波動を!」

 

私が抱いた疑問より先に、徐福の手が光りだし、そこから氣と魔力による圧力が発生した。

 

砲撃

 

それを理解する頃には、私が立っていた足場はガラガラと崩れ、私は圧力やな押されるまま下へと堕ちていった

 

 

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一度死んだ

 

その言葉の意味がそのままなら、何故あいつは生きている?

不死身なのか?それとも、私の様に瞬間回復したのか?

400年も生きてる奴なんだ。今さら一度死んで蘇るくらいなら、驚きはしないが。

仮に殺しても殺せない化け物だとしたら、どうやってあいつを無力化すればいいんだ?

 

私は堕ちていく。

そろそろ地下に到達する頃だろう。

屋上からここまで約50m。それをとんでもない速度で堕ちる私。

 

咲希「ん?」

 

地下に堕ちる直前、ふと、見慣れた3つの気配が確認された。

二つは、私の愛すべき妹、秋菜と凪紗の二人。

そしてもう一つは、私の片割れとも言っていい男の気配…

 

士希「おいおい、俺自身は普通だ。人外の姉を見る様な目で見るのは止めろ」

 

そいつは、そんな失礼な事を言いつつ、鼻で笑っていた

 

あいつ、来ていたのか

 

私がそれを確認するのと同時に、地下の地面に叩きつけられる。

それを見て驚く凪紗と、案外冷静な士希と秋菜の二人を見て、微笑みながら口を開いた

 

咲希「人外で悪かったな」

 

士希「酷ぇ様だな」

 

ケンカ売ってんのか、こいつ?なんて事も思ったが、今の私の姿は確かに酷かった。

徐福の砲撃を受けて、衣服はボロボロ、体も至る所が焼き焦げていた

 

私はスッと立ち上がり、瞬間回復で傷を癒す。

その時、士希の姿を見て、少し妙な気分になった

 

今の士希は銀髪の碧眼で黒いスーツを身に纏い、背中からは白い羽根を生やしていた。

士希の身体からは、士希意外の気配も感じ取れる

 

なんだこいつ?しばらく見ない間に何があったんだ?

 

咲希「なんだテメェのその格好。女に振られてグレたのか?」

 

士希「イメチェンってヤツだ。あと、彼女とは今もラブラブだわ。テメェこそ、ずいぶんボロボロじゃねぇか」

 

咲希「イメチェンってヤツだ、黙ってろ」

 

士希「んなイメチェン、聞いた事ねぇよ」

 

秋菜「姉者も兄者も!場所を考えてください!こんなところで睨み合ってどうする!?」

 

おっといけない。秋菜のツッコミがなけりゃ、士希と延々、口喧嘩するところだった

 

だかまぁ…

 

咲希「わかってるよ。あいつ、待てずに降りてきたみたいだしな」

 

私が堕ちてきた穴から、徐福が降りてきた。

徐福は私を見つけるやいなや、満面の笑みを浮かべていた

 

徐福「ふむ、何やら鬼意外もおるな。男は鬼とよく似ておるようじゃが、これまた異質じゃの。羽根の生えた人間なんぞ、今まで見た事がない」

 

士希・秋菜・凪紗「ッ!?」

 

徐福が喋ると同時に発せられた邪悪な氣に、士希と秋菜と凪紗の三人は表情を凍りつかせていた

 

士希「おいおい、アレが噂の化け物か?想像以上にヤバイ奴じゃねぇか」

 

凪紗「空気が…重い…」

 

秋菜「姉者は今までこれと戦っていたのか?やはり姉者も普通ではないな」

 

萎縮しちまってるな。秋菜と凪紗は下がらせるか

 

咲希「おい、秋菜と凪紗は離脱しろ」

 

秋菜「無論だ。こんなものと当たる気はない」

 

凪紗「私も…とてもではありませんが…」

 

秋菜と凪紗はゆっくりとこの地下室を後にした。

それについて行く様に歩いて行こうとする士希は、私が肩を掴む事で止めた

 

士希「…おい、この手を離せ」

 

咲希「アホか。お前は残れ。当然だろ」

 

士希「お前こそアホか。あれ見ろ。どう見ても実力差がハンパねぇぞ」

 

咲希「うるせぇ。いつぞやの、テメェが肩に穴開けた時の借り返せ。男だろ」

 

士希「今それを持ち出すたぁ、ズルいんじゃねぇのか?」

 

咲希「ハッ!借りなんざ作ったテメェが悪いんだ。恨むなら自分の…!?」

 

士希「!?」

 

私と士希に向けられ、氣弾が飛んでくる。私も士希も咄嗟に気付き、飛んで回避した。

先ほどまで立っていた場所には、大きな穴が開いていた

 

徐福「もぉよいか?」

 

詰まらなさそうに言う徐福。

放置された事が気にくわないようだ

 

咲希「あぁ。悪いが、一対一じゃねぇがな」

 

士希「マジかよ…あれとヤんのかよ…」

 

士希は不機嫌な様子を隠す事もなく、面倒臭げに白い大剣を出現させた

 

咲希「まぁいいじゃねぇか。私とお前が組めば…」

 

士希「敵なし…だよな」

 

久しぶりの姉弟全力の共闘だな

 

 

説明
こんにちは!
Second Generations 司馬師伝其三
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コメント
咲希1人で勝てない?徐福は本物の化け物ですな……にしても姉弟の共同戦、これは次回が楽しみです!(ohatiyo)
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