超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス
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人の肌に触れている様な温かな真っ黒い闇の中で、人の輪郭を描いた二つの影があった。一つの影は落ち込んだ様子で膝を抱えて体育座りをしている。もう一つの影は呆れる様にため息を吐いて、こちらを向いた。まだルウィーの双子女神候補生を思い出せる程、その背は小さかったが、歴戦の戦士の如く凄みを感じるオーラを放つその影は穏やかで、幼い少女特有の高い声を発した。

 

『漸く目覚めね後輩』

 

誰だ、と声を上げようとするが声は出ない。否、体の感覚すらなかった。ただ茫然と意識がだけがここにあって、まるで幽霊にでもなってしまった様な奇妙な浮遊感に少女の影はクスクスと笑った。

 

『本当に半人前ね。貴方はどうしてブラッディハードになったのかしら?……ああ、思うだけで通じるわよ。ここはそういう空間だから』

 

………。

 

『答えたくない?答えられない?−−−それとも忘れちゃった?』

 

ルウィーで初めてブラッディハードになった事は覚えている。ただ、なんでそうなったのか、そうさせたのか

どれだけ思い出そうとしても、知らない誰かの記憶が混濁して本当の自分の過去が分からない。

 

『素質と才能、体すら過去現在未来でもこれほど最高に合う物はない。けれど本人の意志が全然ダメで取り込まれつつあるって感じね……』

 

はぁ、と深いため息を少女の影は付いた。道端で捕食される弱い生き物を見る様な可哀そうな眼差しだった。

 

『とりあえず自己紹介をしましょうか、私はアブネス。貴方と同じブラッディハードよ。こっちでいじけているのもブラッディハードのアイン・アル』

 

少女の影はアブネス、体育座りをしているのをアイン・アルと呼んだ。少女の発言に気になる要素があった自分と同じブラッディハードでこちらを”後輩”と少女の影は言った。ブラッディハードという存在は様々な状況と運が絡む為、一体だけしか存在しないということを彼は教えられていたので、少女達が既に滅ぼされたブラッディハードであることが想像がついた。

 

『アイン・アルが貴方達のゲイムギョウ界に迷惑をかけたわね。ごめんなさい……この娘はブラックハートにちょっとおかしなほどに固執しているから』

 

『……ふんっ』

 

ブラックハート……ノワールのことだろうか?アイン・アルと呼ばれた影は一瞬こちらに視線を送るとつまらないように口を鳴らして、そっぽを向いた。嫌われる様な事をしたのだろうか。

 

『気にしなくてもいいわよ。特に意味なんてないだろうし……さて、どこから話したらいいものか』

 

『……アブネス、こいつに何も期待しない方がいい。ネガティブエネルギーの残留思念に簡単に意志が左右される程度の案山子のような奴は、大禍津日神になる定めだ』

 

『否定はしないわ。けどそれは私達も同じ、どれだけ力を得ても……必要悪である以上は最低限の義務があるのよ。女神に打ち倒され人々の希望を再認識させる。女神を滅ぼして人類を絶望の深淵に叩き落とす。そういう存在なのは……零崎 紅夜−−−貴方も分かっているわよね』

 

この暗黒の空間の中で閃光の様な鋭い眼差しが、例え体の感覚を失っていてもなお畏れを感じさせた。これが女神に打ち倒されたブラッディハード、世界の為に散った滅ぼされる為の悪神。恐怖を感じながら彼ーー紅夜は体が合ったのなら冷や汗を掻きながら何度も頷いていただろうとアブネスに応対した。

 

『よし、そこまで分からなくなるまでに他人に乗っ取られたのなら|女神を要求する未来《ゲハバーン》に喰われた方が幸せだったわ。……っと、もっと話していたいけど、どうやら時間みたいね』

 

暗黒の大地に太陽が照らすように、徐々に白くなっていく空間と同時に意識が徐々に上へ上へと上がっていく。

 

『あなたに三つ、心に留めてほしい事があるわ』

 

光が満ちていく中で少女達を取り込んでいた影が露わになった。アブネスと呼んだのはやはり幼い少女で派手なピンク色のドレスを着こんで、釣り眼気味で外に撥ねた金髪の少女。もう一人も金髪で脚まで届く程のポニーテイルをしていた。こちらは少女と言うには二十台を思わせる背で蛮族のような露出の激しい服装をしてアブネス程ではなかったが、歴戦の戦士を思わせる気を感じさせた。

 

『まず一つ、貴方の未来は過酷でしかない』

 

紅夜を見上げるアブネスは一つ指を上げる。

 

『二つ目、女神と最後に別れたあの日に貴方は忌々しい”奴”に目を付けられた』

 

全てが光に包まれていく、アブネスとアイン・アルの姿は見えなくなるが最後にと続けられた一言は、先の二つより深く響いた言葉だった。

 

 

 

 

『((守護女神|ハード))は人を超えた力で、私達ーーー((冥獄神|ブラッディハード))は人を捨てた力よ』

 

 

 

 

 

 

 

『目が覚めやがったかこのバカ野郎』

「……あぁ」

 

目が覚めて最初に確認したのは、見知った病院の白い天井、起きて早々に辛辣な言葉を目覚まし時計代わりに放つデペアだった。白い清楚なベットと被らされた布から体を起こして周囲を見渡す。

 

「ここは……」

『プラネテューヌの病院ーーーと言いたい所なんだけどね。僕等監視室にぶち込まれているよ』

 

そうかと無機質に紅夜は返した。全く動揺を見せないのはアイン・アルが行った行動が脳裏に刻まれていたからだった。流石に彼女が気を失った瞬間から糸が斬られたように記憶が全くないが、周りにはこちらを睨むように設置されている幾多の監視カメラと分厚い装甲が自分の行った行動の危険性を示していた。

服装は白いシャツと黒い長ツボンとこちらの世界に来る前と変わらない。リーンボックスのシンボルマークが刻まれた黒コート以外は。

 

「あれから、どうなった……?」

『空亡のお嬢…君がプラネテューヌの病院に居た時に来た娘が雑草を毟るようにバーチェフォレストのモンスターを殲滅して、神殺しの中でも特に負に対して強い武器で結界を作ったからもう大丈夫だよ』

「……空とネプギアは?」

『それは…「おはようございます。紅夜さん」……彼女から聞けばいいよ」

 

無機質な空間の中で、響く幼い声。それはプラネテューヌの教祖であるイストワールの声だと直ぐに理解した。声は部屋の片隅に設置されているマイクから発せられていた。

 

「……おはようございます。イストワール、すまないが聞きたいことがあるんだけどいいか?」

「ええ、こちらも貴方に伝えたい事があります。少々お待ちください、直ぐに向かいますので」

 

そう言い残し、ぶつりとマイクから発せられた音が聞こえなくなった。スイッチを切ってこちらに向かってきているだろうとネプギアや空が無事であるかを焦る気持ちを抑えながら、速く来いを願った。こことイストワールの距離は近かったのか三分程で彼女は分厚い装甲から開けられた扉からふわりと入ってきた。

 

「ネプギアと空は……!」

「貴方の為にその質問には答えかねます」

 

飛び上がりそうな勢いで問い詰める紅夜に対してイストワールは感情のこもってない声ではっきりと言い放った。崩れ落ちるようにベットに腰が落ちる。『貴方の為に』最初に付け足した言葉によって二人の状況は薄らと想像が付いた。同時にそれを見てしまえば罪悪感で狂ってしまう事も不思議と理解できた。

 

「アイエフとコンパは……」

「貴方の体を見て、コンパさんが気を失ってアイエフさんは酷い過呼吸を起こして今病院にいます」

「そう……ですか」

 

紅夜はゆっくりと視界を下に下ろした。

そこには人の腕と化物の腕があった。体中に浮き上がっているのは人の顔。苦しみに悲しみに怒りに歪み狂い叫んだ悍ましい老若男女の顔達。

それが体中に呪うように浮き出ている。唯一右半分の顔だけが何もない顔であったが、まるで体に罪人を苦しめる地獄絵図を刻まれた変わり果ててた姿に嘔吐感を覚え直ぐに目を離す。

 

「本当は……」

 

ぽつりと紅夜は両手を見ながら呟いた。

右は人の憎悪に満ちた顔などが浮かび上がった狂気の腕。左は一つ一つが刃の様に鋭く逆立った血を浴びて黒く染まったドラゴンを思わせる凶悪な腕。

 

「助けたかったんです。そうしなきゃ、俺は本当に何もかもを失う」

 

自分がこうなったのは結果的に弱かった。ブラッディハードになる覚悟と意志が思い出せないどこかで挫けて他人に乗っ取られる様な貧弱な自分。女神を別れた最後の夜、何を話して、何を感じたのかすら他人の強い憎しみの記憶がその光に溢れていたかもしれない夢を潰してしまった。

もしかしてここで会話しているのは、アイエフ達が知っている零崎 紅夜ですらないのかもしれない。ただそれを思い出すことが出来るだけの別の人格かもしれない。それほどまでに己を証明する材料が不足していていた。

 

なにより、もう、女神の声は覚えていても。

紅夜のかき集められる記憶の中ではーーーネプテューヌ達の顔は燃やされたように闇の中なのだから。

楽しかった感情が合っても、何が起きて楽しかったと思える出来事は消しゴムで消されてしまった様に思いだせない。

 

「ブラッディハードについて空さんに聞きました。貴方は超濃縮なネガティブエネルギーを吸収し続け、自己意識は徐々に人々の負の意識に乗っ取られ始められている。今回は前代のブラッディハードの強いネガティブエネルギーを取り込んでしまい体を一時的に乗っ取られたのではないか、と」

「……違います」

 

それは全く異なっている。何故ならあの時、((女神を要求する未来|ゲハバーン))の詳細を聞いたときに紅夜は魅了された。そしてアイン・アルの意志を勝手に自分の意志だと勘違いをして、気づけばゲイムギョウ界を滅ぼうとした。既に顔が分からないネプテューヌと共に行ったことがある筈の場所を自分の意志でモンスターが蠢く魔境にしたのだ。

 

「俺は間違いなく俺自身の意志なんです。何もかもを滅ぼしてして人々に絶望に与えて女神に討たれるって、本気でそう思って……ゲイムギョウ界が平和になると思って……」

「……少しだけ、昔話をしましょうか」

 

幾多にも目の様な物が浮かび上がっている左顔とまだ何も穢されていない右顔、その両方から川の様に涙を流す紅夜にそっとイストワールは自分と同じサイズのハンカチを紅夜の左手に置いて、ベットに腰を下ろす。

 

 

 

「五年前、世界が本当の意味で自由を得た日に私は少しだけ昔の事を思い出しました」

 

イストワールから話してくれた内容は、失われた時代のゲイムギョウ界、既に統治していた四女神が人々の記憶から完全に忘却され存在は消滅した。ゲイムギョウ界の最大に過酷を極めたと言わされた転換期の話だった。

説明
いつか自分の物語をやる夫スレでやってみたいと思うこの頃。
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コメント
空「イストワールが胃に穴が空きそうと言いながら情報規制していたね」レイス「世界を滅ぼす程の邪悪を倒したのは旧世界をぶち壊す新世界の唯一神という女神の入り込む余地ねぇよな。これ国民にばれたら女神ってなに?ってレベル」空「君だって似たような事できるよね」レイス「HAHA俺は精々精神支配からのグラウンド・ゼロだぜ?」空「(早くコイツなんとかしないと)」(燐)
チータ「あの荒れっぷりだ、いずれ神の祟りっつぅ噂になるな」ユウザ「じゃあその内社が建って、大きい三色シロップパンが供えられるんだね」チ「待て待て社はともかく何で三色パン?しかも何でシロップ?」ユ「人の絶望(フコウ)は【蜜/三つ】の味だし」チ「びみょー…」(ヒノ)
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