超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス
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ネクストブラッディの顕現によるゲイムギョウ界全体の【汚染化】モンスターの影響は量りしえなかった。特に顕現したその地であったプラネテューヌはダンジョンはともかく、貿易用に開拓された安全なルートでさえ凶悪なモンスターが出現するほどであった。それ故に教会だけではなくマジェコンヌがモンスターの駆逐やら、被害が出た企業の立て直しなどをお互いに不干渉しながら協力し合う事態になるほど。たとえ相容れぬ組織どうしでも同じ星の上で生きている以上、理不尽な災害には互いに協力することで被害を抑えようとする。

勿論納得しない者も両方に居たが、駄々を捏ねるだけで事態が好転するわけがない。煩い輩は双方、無視するか黙っていてもらうかの対処が早急に取られた。

教会は権力を失うと同時に失われた物はマジェコンヌへと自然と集まっていき、同時にマジェコンヌという組織は大きくなっていく。それは同時に犯罪組織という名目から大きくの人からの信仰を得る為に慈善活動にも力を注がなければならず、主に荒くれ者が多いマジェコンヌの参謀役は日々猫の手も借りたい忙しさでこの事件が起きた。

 

「……この、クソ上司、有休を要請するでちゅ」

「うるせぇ、こうなるなんて誰が想像できるか。あと残業も有休も無しな」

「…………」

 

故に彼らは修羅場だった。

総務と人事部、それ以外にも補助として幾つも部署を受け持つレイス・グレイブハードの電話は常に鳴りっぱなしで各国の対応に追われ、ワレチューは天井に届きそうなほどに積まれた書類の山に目を回しながらペンを持った指を機械的に動かし、リンダは虚ろな目で書類に判子を押しつけている。彼らの激戦は朝から始まり、太陽と月が二回ほど往復して漸く区切りがついた。

精魂を完全に燃やし尽くした終戦の兵士のように三人は、ソファに転がっていた。リンダは既に死んでいるかのように眠っている。ワレチューは意識が薄れながらもプラネテューヌ病院から奪還?拉致?してきたレイスに辛辣な言葉を投げているがその言葉にはあまりに力はなく、蚊を感じさせる程度の小さな声だ。

 

「……起きたら100万ボルトを喰らわせてやるちゅ」

「はいはい、お疲れ様でした。お休み」

 

弱弱しくも毒を吐くワレチューに対して適当に返すとワレチューも直ぐに寝息を立て始めた。錆びた様に動きづらい体を起こしてレイスは自身の机に座って書類整理を始めた。重要な案件を優先して片付けたとは言っても、まだ書類の山は崩れてはいない。むしろ増えてないか?と思うほど。

 

「………はぁ、腹立つ」

 

二人が起きないように小さな声で絞り出すように脳裏に浮かんだ憎たらしい顔を八つ裂きにしたい殺意を抑えながら書類に目を通していく。

あれは−−−対女神システムを積んだ試作型ロボットをバーチェフォレストのモンスターで実験をしていた時だった。

 

 

 

 

 

複数に配置を付いた虫のように動ける災害活動様のカメラ付きの小さなロボットで対女神システムを搭載した六つの砲口を備えた円盤型の兵器でバーチェフォレストのモンスターを相手に耐久度やら火力を実戦で記録を取っていた時だった。

ワレチューの体に刻んでおいた生命保持を目的として魔法が発動した事にモンスターを倒していくロボットが映しだされるモニターを見ながらレイスの肩が震えた。今日はどうしてもいけない理由があったので、ネガティブエネルギーから判断して今日は大丈夫だと判断して向かわせたんだなぁ。

 

「……どうかしたかグレイブハード幹部殿?」

「いや、なんでもない」

 

貫禄のある容姿とは思えない挑戦的な目をしているいい歳したおっさん。

リーンボックスの元教院長、現マジェコンヌ開発部責任者イヴォワール、すげぇ呼びづらい名前だ。

因みにこいつ俺の事を毛虫の様に嫌っている。

まぁ、マジェコンヌという組織を支えている柱の一つということで俺の素顔を知っているのだが、それが自分の積み上げた全てを破壊した奴と顔が似ているのが原因だろう。

 

「どうでしょう私達が開発した新兵器は」

「それなりのコストと整備性の難航と考えれば釣り合わないな……本丸の実験が出来ない以上はなんとも言えないな」

「えぇ、非常に残念です。私達の組織を脅かす者を上の者が放置していなければ実験できたのに……」

 

女神の居場所くらいなら直ぐに分かるが俺は教えていない。今まさに咲こうと成長している花を踏みつける趣味はない。

後、ロボット兵器に搭載されている女神のシェアエネルギーを吸収して、エネルギーをこちらのエネルギーに変換させる『フォール・ダウン・ヴィーナス』通称FDVシステムの基礎理論設計を作ったのは俺だとばらしてやろうか?それを劣悪品に仕上げて(この世界の技術じゃそれが精一杯なのだが)ドヤ顔を決めるイヴォワールに内心オラオラオララッシュを決めて奴の顔が血と肉の塊になる様を妄想する。

 

「そうだが、物事には順序がある。肝心のFDVシステムが動いても人間形態としての女神の実力を封殺できる程度じゃなきゃガラクタのゴミ山と同じさ」

「ゴ、ゴミだと……!」

 

ギリッと歯を鳴らしてこちらを睨むイヴァワールは激しい怒りを見せる。心地いいぐらいのネガティブエネルギーを感じながら、周囲の部下達の顔はまた始まったよ、とでも言うようにため息をついた。

いいじゃん、あっちから言ってきたのだから、俺は聖人のように右頬殴れたら左を差しださず、間髪入れずに左頬をぶん殴るタイプ。

 

「き、貴様、私をバカにしているのか!!」

「被害妄想乙。女神化封じた時点で勝てるなんて甘い、この世に絶対はないんだよ」

 

肉親の仇とでもいうように今にでも飛び掛かりそうなイヴァワール。俺からすれば器の小さい老害だ。奴の視線を無視して如何にも面倒、時間の無駄と言った雰囲気でロボット兵器のスペックが記載された書類を適当に捲っているとオペレーターの一人が壊れかけたロボットのように震えながらこちらを見つめた。

 

「ぐ、グレイブハード幹部。ちょっと、いいですか?」

「どうした?」

「六番カメラを見てください…ッ」

 

オペレーターが見せたのは俺がゲイムキャラを破壊した場所、そしてそこに立っていたのは俺の外形をそのままそっくりコピーした男だった。

イヴォワールが声を上げ、俺とモニターに映し出された男を交互に見る。そして俺はため息を吐いてオペレーターに現地にいるスタッフに連絡を入れる。

 

「緊急事態発生、今すぐ現地から逃げろ。冗談抜きで死ぬぞ−」

『は、はぁ!?ちょ、待ってください。一体何があったんですか!?』

『主任、モンスターですッ!!う、うわぁぁぁ!!!』

『ひ、逃げろぉぉぉ!!』

 

…………俺が現地に行けば良かった。

既に遅くマイクからは人の逃げ惑う悲鳴とモンスターが獲物に齧り付き、肉を喰らう不愉快な音に何人かが口を抑えた所でマイクを握り壊した。

それがスイッチであったかのように一斉にモニターが真っ黒の巨体と紅く怪しく輝いた瞳が星空のように映りだされ鈍い音と共にモニターはノイズ一色に染まる。

 

「何をやっている!早く何が合ったのかを調べろ!!」

「は、はいっ!」

 

罪遺物を掌握させないために深層心理から完全に隔離しているのか外からの連絡は通じない。

という事は、少なくても暴走の危険性はないということで、ゲイムギョウ界が消滅する可能性は激減したことには喜ばしいことだが、どっちにしろあの元から破綻している神格が暴走し始めているのは変わりない。

バーチェフォレストに出現するモンスターを余裕で撃退できる奴を集めたのだが、それが一瞬で八つ裂きにされたということは、アレはモンスターを強化するかモンスター事態を召喚するのか、どっちにしても碌でもないことが起きていることだろう。

 

「観測装置、一つだけ生きています」

「全モニターに映せ!!」

 

イヴォワールの指示でモニターが復活するが、ゲイムギョウ界を覆う勢いで溢れ出しているネガティブエネルギーを感知している俺には全員がその惨状に唖然する前に顔に手を置いた。

生き返ったカメラは運よくモンスターに衝突した勢いで外に飛び出したおかげで損傷が最低限に澄んだんだろう。映し出されたのはバーチェフォレストを埋め尽くす禍々しいモンスター達が蠢く魔境だった。

 

「………なんということだ」

「今日は死者と生者が入れ替わる日かもね」

 

全員の肩が震えた。……やべ、自分で言っておいて地雷踏んだ。

女神の気配を探ると既にプラネテューヌ目指して移動を開始している。

なんとワレチューも一緒だ。後で回収しないといけないな。

 

 

 

 

 

 

「イヴォワールの野郎、確かにあの場所を指定したのは俺だけど、それだけで全部俺の所為にするか…?」

 

レイスが書類を纏め終える頃には既に夜が明けていた。結局三徹したなぁと体を大きく伸ばした。

女神と空が現場に駆けつけた所で闘争が開始された。空間を埋め尽くすモンスターを自在に操るネクストブラッディの余波によって遂にカメラはモンスターによって破壊され、何がどうなったかは分からない。

状況を確認したい所だったが、女神達が負けた時の保険として配置されていたプラネテューヌの軍体が邪魔で詳しく調べることは出来なかったが、バーチェフォレスト一帯が氷漬けになったり轟々と燃え盛ったり、激しい戦闘があったことだけは知ることが出来た。

 

「【汚染化】モンスターの発生は予想していたが、まさかなぁ……」

 

レイスが思い出したんのは薄暗い空間の中で壊れた人形のように笑った同じ顔の少年。ただ、彼の想いを叶える為に武器を与えたつもりだった。それなりの信用を抱いていたが甘かったと言わんばかりに頭を抱えた。

力はただ力、そこに悪や善を入れるのは価値観でしかない。女神が人間の希望たる力を行使できるように、冥獄神は人間の絶望を描く力を行使する。それは人間が日常的に生活するための無意識上での活動なのか。

あともう少し、女神と空がバーチェフォレストに向かわなければレイスは単独であの魔境に突貫していただろう。生み出した者の責任を取る為に自らの欲望を果たす為に障害を排除する為に。

仮に冥獄神を排除できたとしても、数千数万の時を重ねていけばどこからともなく現れるだろう必要悪の存在。

それはマジェコンヌがこの世界を支配したとしても、変わらないだろう。信仰は儚い人間の為にあるが故に、境界は自ずと生まれ、意志のエネルギーは二つに集約されていく。

人間の様な知的性が高い生き物であるのなら、必然的にそれは出来てしまう。

産まれた人の意志の塊が何をするのかによって簡単に善神、悪神と分かれている。人の総意の器である人を超えた存在がどんな物であっても、人の興味を引かすのには十分すぎる。

 

「ま、俺は世界なんてどうでもいいし、朝食作って来ようと。……徹夜続きだし胃に優しい物がいいよな、ヨーグルトとか合ったかな……」

 

今回の失態からイヴォワールが要求してきたのはルウィーに眠る最悪の兵器。嘗て四女神の力で漸く封印できたそれをどうしてイヴォワールが求めるのかそもそもマジェコンヌに入りながら、マジェコンヌを信仰せずに自分自身の溺れた信仰の為に一体何をしようとしているのか凡そ想像は出来ており、それがもし現実の者となればゲイムギョウ界という今の形が崩壊することをは知ってなお、気ままに鼻歌を歌う。

世界も人も神も、生きている以上はどうせ死ぬのだから、そんな軽い気持ちで流して、まずは大切な部下を回復させる方が優先だとレイスはキッチン目指して足を動かした。

説明
レイスからすればリンダ&ワルちゅーとゲイムギョウ界どっち選ぶと来たら迷いなく前者を選ぶような人物です。ある意味、空とは真逆で狂者です
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コメント
ユウザ(R)「う゛あ゛〜〜〜〜〜〜イヴォワールやだ〜〜〜〜」デバッカ「急にどうした!?」ユ(R)「昔の事思いだした…自分の地位や野望の為ならどんなに自分に仕えて来た奴も平気で殺そうとするアレとそっくりだ〜〜〜いなくなればいいのに」デ「…どんなトラウマ背負ってるんだ……」(ヒノ)
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