Dear My Friends! ルカの受難 第10話 ソニカvsシユ
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             (アフス城内・開発武器試験場・バトルアリーナ)

 

 対戦試合関係の全員がアフス城内にある、“開発武器試験場”、通称“バトルアリーナ”に移動した。その外観は、まさに“闘技場”だった。

 

イロハ「お前達を一方的に追撃するのならともかく、お前達やこっちの駒が本気で本格的な試合をして、城内を派手に破壊されたらたまらん。フォーリナーや我々の開発した武器の試験をするために使っている、このバトルアリーナを使うことにする」

アル「ここは頑丈に作ってある。ちょっとやそっとの攻撃ではびくともせん」

テル「流れ的に、やはりここを使うか…。回避は出来ても、逃げ回って城全体を道具にする事はできんか…」

 

ユキ「フィールドは実戦を想定して作ってある。対戦が始まると同時に数個の障害物などが設置される。魔法でも物理攻撃でもどちらでも破壊できるシロモノだ。自由に使えばいい。但し破壊されても試合中は補給しない。使う場合は注意しなさい」

アペンド「死角から攻撃する私には好都合だが、そのルールなら使用には注意しないといけないな…」

学歩「拙者にはあまり歓迎できないシロモノでござるな…。敵に使われないように破壊すべきか…」

 

イロハ「基本ルールはあってないようなものであるが、大きな物は2つ。1つ目は、相手を行動不能か死亡させた時点で、その者を勝ちとする。2つ目は、攻撃を100%使えるようにするため、試合に出ている対戦相手以外を意図的に攻撃してはいけない。但し対戦相手を攻撃する時に使った攻撃の流れ弾などが当たった場合は、この限りではないので、他の戦士達は試合を注視して、回避も行うようにすること。そこまで責任は持てん!」

 

ミキ「了解だ。アン、お前のボディは“重機動兵器”だ。気を付けろよ?」

アン「気を付けるが、イロハ様の言った通り、お前達も気を付けろよ? 私の武器は、ちと凶暴ですからねぇ。ふっふっふっ」

 

アル「テル対ミキ以外の対戦カードは、こちらにも不利益なので出来るだけ異種対戦にならないように作っておいた。これが対戦カードだ!」

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 アルは闘技場の掲示板に、大きく以下の様な“対戦カード”を表示した。

 

            第1回戦: ソニカ  vs  拳闘士シユ

            第2回戦: レン   vs  圧殺兵士ローラ

            第3回戦: 学歩   vs  剣士レオン

            第4回戦: アペンド vs  重機動兵器アン

            最終戦 : テル   vs  ミキ(ミリアム)

 

         回復担当: リン   &   導士オリバー (非戦闘員)

                約束事項での非戦闘員 ミク

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イロハ「我々の分析データから作ったが、粗方問題ないだろう。これで、双方、文句はないな?」

 

ミキ「私とテルとの試合さえあれば、文句はない」

テル「解っているとはいえ、これも運命か。腹をくくるしかあるまい」

 

アン「そうかぁ〜、私の相手はあの魔導師かぁ〜。くっくっくっ、楽しみだなぁ〜」

アペンド「あの全身武器が相手か。いいだろう。相手になってやる」

 

レオン「なるほど、“剣には剣”か。いいだろう。まさに字の通り、“真剣勝負”だ」

学歩「むしろ感謝する。一騎打ちとして、本気で行かせてもらうぞ

 

ローラ「私の相手は、あの勇者ちゃんね。いいわ、相手をしてあげるわ」

レン「女性が相手か…。やりにくいなぁ…」

 

シユ「第一回戦で、あの変身女を叩きつぶせばいいのね。ナクスン(楽勝)…」

ソニカ「私の相手は、異国の拳闘士か…。さて、どうしよう…」

 

 双方、各人、悲喜こもごものようであった。総じて、テル側は様子見、アフス側は好戦的である。それぞれ固まって簡単なミーティングを行った後、第1試合のコールがされたのだった。

 

ユキ「さて、早速、第1回戦を行う。ソニカ、シユ、両名、真ん中の闘技エリアに降りなさい」

 

シユ「了解」

ソニカ「行くしかないか…」

 

 シユは軽くジャンプしながら、身軽そうにして闘技エリアに入っていった。対して、ソニカは不安の塊を背負ったように歩いて入っていったのであった。

 

テル(簡単にアドバイスはしておいたが、今回、その小手先の策が通じるかどうか…)

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                 (バトルアリーナ・闘技エリア)

 

 シユとソニカ以外は、流れ弾などの危険を回避のため、エリアから数m離れた位置で見守ることになった。また双方とも死亡を出来るだけ回避するため、負けを認めるか、ユキとテルの強制敗北宣言が出された時点でバトル終了となり、即、エリア外へ脱出し、リンやオリバーの治療を受ける事になっている。

 

そもそも反則などのルールは、エリア内の二人以外のメンバーから、援助をしては行けない程度なので、危険防止のためレフェリーを置かず、ユキやテル(テルが戦っている場合、アペンド)が直接、選手に文句を言えるように、ミーティングの時に競技して決めたのだった。

 

 そうこうしているうちに、バトルする二人が闘技エリアに到着し、対峙していた。

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シユ「…おまえ、本当に戦えるのか? われらと同じ“フォーリナー”出身の戦士だというのに、なんだ! その弱腰は! 仮にも変身能力を持っているのだろう!」

ソニカ「実戦練習の“試技”ならまだしも、“Dead or Alive(生死を問わず)”のルールでは、弱腰にもなるわよ」

シユ「一度、あの異国剣士に負けて、負け意識が付いたか? 私は、唯一のカードである“同じフォーリナーの戦士と戦える”事に喜んでいたのだが? フォーリナー軍政国家の名前に恥じぬ試合をするため、お前が同国なら尚更本気で行くことを変える気はないぞ?」

ソニカ「そんな理由で変えなくてもいい。私だって腐ってもフォーリナー軍政国家を背負っている。だが、“勝つ”、ことが前提に策を練るなら、慎重にもなる。少しは寛容の心をもて!」

シユ「ふんっ! 策を練らねばならない程、せっぱ詰まっているのなら、私のこの拳と脚で、最後は“華”として散らせてやろう! ありがたく思え!」

 

ユキ「もう、口喧嘩はそれくらいでいいだろう。試合を始めるぞ!」

 

カーン!

 

 ユキは半ば強制的にゴングを鳴らした。

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シユ「破っ!」

 

 シユは、もう闘気を吹き出す勢いで、ソニカにダッシュしていった! ソニカは未だに変身や構えを取っていない状況だった。

 

シユ「ネリチャギ!」

 

 いわゆるテコンドーの“かかと落とし”である。シユは右足のかかとを上に高く上げた後、そのままソニカの脳天目がけて、かかとを落としたのである。正直、このシユのファーストアタックは必中と思われた。

 

 しかし、ソニカもフォーリナーの戦士なのであった。

 

ソニカ「掴んでっ!」

 

 ガシッ!

 

シユ「何!?」

 

 ソニカはシユの右足の足首を受け身で受けて両手で掴んでしまった!

 

ソニカ「捻る!」

 

 グリッ!!!

 

シユ「痛!」

 

 ソニカは足首のスジが伸びるように、思いっきり足首を反時計回り(内側)に捻ったのであった! 片足立ちであって勢いがあったので、シユはダメージを軽くするため、本能的に体ごと空中で回転し、一回転して体を地面に叩き付けたのだった!

 

 バタンッ!

 

ソニカ「はぁ…はぁ…、緊急回避してダメージを軽減したか…」

 

 シユは立ち上がったが、右足を少し引きずるような感じだった。

 

シユ「き・・・貴様・・・・サブミッション以外での反則技を・・・」

ソニカ「この戦いには、反則はないんだろ? むしろ、相手の攻撃力を削ぐ“効果的”な技と言って貰いたい物だ」

シユ「痛… 貴様の最初の仕草は、これを誘うためだったのか?」

ソニカ「テルから貰った策だ。格闘家にありがちなミスだ、と」

シユ「くっ…変身能力は使わないのか?」

 

ソニカ「勿論使う。シユに変身!」

 

 ギューーーーーーン!

 

 ソニカは、元のままの“シユ”に変身した。当然“怪我がないシユ”だ。

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シユ(ソニカ)「私の変身は相手の核を元にして変身するので、“元の状態”、に変身する。すぐには治らない『足の捻り』という大きなハンデがあるお前と、100%状態のお前と同じ能力を持つ私、どっちが勝つと思う?」

シユ「き・・・・貴様・・・・“フォーリナー”の名を汚すのか!」

シユ(ソニカ)「この試合に関しては、“勝てば官軍”だ。悪く思うな」

 

ユキ「・・・テルらしい策だな・・・」

アル「ぬぅ・・・・・なんたる侮辱・・・・・シユ!!! フォーリナーの名にかけて、絶対に勝て!」

 

シユ「ぬぅ・・・解っている!」

シユ(ソニカ)「おらおら! ボディがお留守だぜ!」

 

 ドシュ!

 

 シユ(ソニカ)はシユの“がら空きの腹部”に、思いっきり手のひら全体をぶつける“掌底”(拳技)を繰り出した!

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シユ「ごふっ!」

 

 さすがシユ自身の力である。シユは後方に3mほど吹き飛んで、かがみ込んでしまった。

 

シユ(ソニカ)「とりあえず距離は取りたかった。ダメージは無くてもいい。これから自分自身の技で削っていけばいいからな」

 

学歩「うむむむむ・・・・・さすがテルの策でござる、卑怯であくどいでござるな・・・」

アペンド「仲間になって、本当に良かった気がする・・・」

レン「これじゃ、こっちが悪者だよ・・・」

 

 どういう形にしろ、お互いは少し離れた位置で対峙する事になっていた。しかし、シユは捻挫、シユ(ソニカ)は100%の状態。シユが攻撃を回避できる能力が低いのだから、技を喰らって体力を削り取られていくのは、納得が行く話である。

 

 しかしソニカは、“拳闘士”等の格闘を扱う職の“特殊性”にまだ気づいてなかったのだった。

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 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・

 

シユ(ソニカ)「? な、なんだ?」

シユ「カ・・・・・カサネガサネノ・・・・ヒレツナコウイ・・・・」

シユ(ソニカ)「覚醒だと? なら私にもできるはずだ!」

 

                       ・・・

 

シユ(ソニカ)「何!? 覚醒できない!? そ、そんな馬鹿な!?」

 

 シユの体にはオーラが纏っており、目は白目で覚醒状態だった。対してシユ(ソニカ)の方は、普通の状態で、何も変化がなかった。

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 そう、格闘家は“潜在能力を引き出す力”を持っているのだった。それは個々に固有の能力であり、変身などの“借り物”の体には宿らない、特殊なスキルなのである。ソニカはこの大事で基本的な事実に気づかなかったのである。

 

シユ「カクトウカノ・・・・マコトノソウルヲモタナイ・・・・ヨゴレタココロデハ・・・メザメラレヌヨ・・・」

シユ(ソニカ)「なら、受けるまでよ! そのスキルはこの肉体にも備わっている!」

シユ「アシキコブシデ・・・・ウケラレルカ? コノワザガ!」

 

 シユは、捻っている右足の膝を上げて、怪我をしてない左足で立ち、“気”を爆発的に高め、左足のキックから繰り出せる瞬発力を使ってダッシュした!

 

シユ「奥義! 黄龍脚!!!!!!!!」

シユ(ソニカ)「全て受ける!!」

 

 シユの右足は見えないような速さでシユ(ソニカ)に襲いかかってきた。まず右足のつま先が“最初に飛んできた”のは、腹部だった。

 

シユ(ソニカ)「はっ!」

 

 シユ(ソニカ)は両手を腹部にクロスして配置し、シユの右足のつま先を受けようとした。しかし、それは“受けて”はいけなかったのだった。

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 バキッ!

 

シユ(ソニカ)「ごふっ!」

 

 シユの右足は捻っているはずなのに、そのつま先は、シユ(ソニカ)の両腕の骨を砕き、威力が衰えずに、腹部を直撃したのだった!  しかしシユの右足は捻っているのに無理に動かしたため、関節がはずれ、“突き刺さった”というより、かかとから先を塊のように腹部にぶつけた状態だった。

 

 技はまだまだこれからだった。

 

 シユの2弾目が繰り出された。瞬時に腹部から右足の塊を抜き取り、回転撃をシユ(ソニカ)の左頭部にぶつけたのだった。シユ(ソニカ)も折れた左手を左頭部の横に移動させ、防御しようとした。シユ(ソニカ)の左手の塊と、シユの右足の塊が、鈍い音を立ててぶつかった。シユの右足の威力は、シユ(ソニカ)の予想を超えていた。威力が一弾目以上だったのだ。シユの右足は、シユ(ソニカ)の左手と一緒になり、そのままシユ(ソニカ)の左頭部を直撃した! 脳しんとうを起こすシユ(ソニカ)!

 

シユ(ソニカ)「ぐふっ!」

 

 脳しんとうを起こしたシユ(ソニカ)は、3弾目以降の技を受ける能力を持ってなかった。右頭部、左胸部、右胸部、左足、右足・・・・。シユの“どんどん鬱血して塊となった右足”が直撃するたびに、シユ(ソニカ)の体は、物理的におかしいような“歪み”を受けて曲がり、途中で地面に落っこちていったのだった。

 

アペンド「な・・・・・・」

学歩「まずい! 死ぬでござる!」

レン「ぞぉ・・・・・・」

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テル「!!!! ストップ!!! ストップ!!! 終わりだ! こっちの負けだ!!!!!!! 技を止めろ!!!」

 

 クリプトン側が青ざめ、あの冷徹なテルでさえ、血相変えて試合終了を告げたほどである。その光景は“地獄”そのものだった。

 

 結局、ミキがシユを後ろから羽交い締めにして、変身が解けたソニカから引き離し、喝を入れて覚醒を止め、ようやく試合を終了させたのだった。

 

                       ***

 

 瀕死状態だったソニカは、リンの急速な回復呪文により、とにかく一命は取り留めたが、これから先、他の仲間と一緒に観戦できるような状況ではなかったので、アルとユキの判断で、アフスの城の医務室に運び込む事になってしまった。ユキもアルも青ざめ、アルに至っては、元自分の国の同胞だった情までわき上がったので、敵相手なのに、こういう行動に出たのだった。

 

 尚、攻撃しながらも、その右足が破壊していったシユも、当然、覚醒が解けた後、オリバーの回復呪文で応急治療はしたのだが、怪我がひどいため、ソニカと同じく医務室行きになってしまった。

 

 試合の結果は、試合を途中で止めたテル側の負け。これで、ミキ側の1勝が確定した。

 

ミク「・・・・・これからこの試合・・・・どうなるんだろう・・・・・・・」

 

                      (続く)

 

                       CAST

 

ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ

初音ミク(ミク):初音ミク

 

               <クリプトン(Cripton)王国サイド>

魔導師アペンド:初音ミクAppend

 

僧侶リン(リン):鏡音リン

勇者レン(レン):鏡音レン

 

               <インタネ(Interne)共和国サイド>

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ

 

                <アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>

魔導師テル:氷山キヨテル

 

皇帝イロハ:猫村いろは

神官ユキ:歌愛ユキ

クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki

(ミキの中身=ミリアム:Miliam)

 

              <フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>

変身兵士 ソニカ:SONiKA

 

皇帝アル:Big-AL

重機動兵器アン:Sweet Ann

剣士レオン:Leon

圧殺兵士ローラ:Lola

導士オリバー:Oliver

拳闘士シユ:SeeU

 

その他:エキストラの皆さん

 

                      ***

 

               <バトルアリーナの対戦カードまとめ>

 

            第1回戦: ×ソニカ  vs  ○拳闘士シユ

            第2回戦:  レン   vs   圧殺兵士ローラ

            第3回戦:  学歩   vs   剣士レオン

            第4回戦:  アペンド vs   重機動兵器アン

            最終戦 :  テル   vs   ミキ(ミリアム)

 

          回復担当: リン   &   導士オリバー (非戦闘員)

                  約束事項での非戦闘員 ミク

説明
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第8話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。

☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。

☆この作品はナンバリング的には“第1期”となります。
☆主役はルカさんなんですが…。

☆今回から、テル達vsミキ達の試合です。
☆しかし、第1戦目から、なにやら不穏な雲行きで・・・・。
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Vocaloid 初音ミク 鏡音リン 鏡音レン 巡音ルカ 年長組 インターネット家 AHS 海外組 亜種 

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