Dear My Friends! ルカの受難 第11話 レンvsローラ
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(アフス城内・開発武器試験場・バトルアリーナ)

 

 ソニカとシユが負傷退場になってしまったが、勝敗はシユの勝ちとなってしまったので、テル側は初戦で黒星を付けられてしまったのだった。

 

テル「うむ…初戦で黒星は考えてなかったな…想定外だ…」

アペンド「シユの潜在能力を安く見積もった結果か…。ソニカ、無事だといいが…」

 

レン「二人とも! それもそうだけど、次、僕の番なんですよ! あんな化け物連中、どうやって戦えば良いんですか!!」

テル「あれ? 君の職業は『勇者』ではなかったか? 自国防衛のため、化け物との戦いには慣れていると思ったが?」

レン「『人間がベースではないモンスター』相手なら慣れてます! でも、“強化された人間”なんて、相手したことないです! しかも相手のローラっておねーさん、巨大なローラー持ってますし…」

 

テル「…君にも“策”が必要か。しかし私の“策”はソニカでうち破られているぞ? それでもいるか?」

レン「当たり前です! アフスとかフォーリナーとかの事を良く知っている貴方の策なんだから、さっきのは“まぐれで失敗”って考えます。あのローラっておねーさんをうち破る策、なんかないんですか?」

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 テルはしばらく考えた後、頭の上に、“幻影の電球”、を灯した後、レンに耳打ちしたのだった。

 

テル「まず、あのローラは、見た目通り、とにかく“怪力”だ。あの“ローラー”で圧殺された試験体は数知れない、と聞いている。正直、武器同士での鍔迫り合いの様なシチュエーションは考えない方がいい。明らかにこっちが圧倒されてペシャンコだ」

レン「ちょっ! それじゃどうすれば!」

テル「弱点は2つ。まず1つ目は“スピードが速い相手に弱い”事。巨大ローラーを持っているんだ、迅速な立ち回りが出来ない。君の俊敏さを利用して、あのローラーの圧殺の攻撃有効範囲外で撹乱し、隙を付いてチクチクとそのブロードソードで、『ローラ本体』に攻撃を加え、ヘタって来た所で、振りかぶる程の強烈な一撃を本体に浴びせる戦法がいいだろう」

 

レン「そうですか! 迅速な攻撃なら自信あります!・・・・あれ? そういえば弱点って、もう1つあるんですか?」

テル「あ、それは、その・・・・・・・・・・彼女は“ショタっ子“に弱い」

 

レン「・・・・は?」

 

アペンド「要するに、レンみたいな“可愛い男の子”に弱いって事だ」

レン「え!? え!?」

テル「相手が攻撃してくるような時は、君が“可愛いしぐさ”をすると、おそらく彼女は攻撃できないはずだ」

レン「か・・・可愛いしぐさですか!?」

 

アペンド「例えば・・・きゅるんとした目つきで『え、お姉さん、ボクを攻撃するのぉ?』とか可愛く迫ればイチコロ、そんな感じだ」

 

 あまりの意外な展開に、レンは真っ赤になって、もう言い返す言葉が無くなってしまったのだった。

 

テル「・・・気持ちは察するが、戦いは“勝てば官軍”。君の“個性”で勝ちを引き寄せられるかも知れないのだ。我慢してくれ」

レン「・・・はい。あくまで“本心でなく作戦のため”と思って、頑張ります」

アペンド「頑張ってくれ」

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 一方、ミキ側のミーティングでは、ローラが半分暴走していたのだった。

 

ローラ「ああ、もう、早くあのコと戦わせてよ!」

ミキ「ローラ、お前のその“悪い癖”、気を付けろよ? おそらくテルは戦闘性能以外の“ソレ”も知っているはずだ。有名だからな」

ローラ「知られていよーが、カンケーないわ! 圧倒して勝って、あのコは私のモノよ!」

ミキ「アル様とかも、そのクセでむしろ勝利できると信じて、このカードを組んだのだろうが、本当に大丈夫かな・・・・」

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(バトルアリーナ・闘技エリア)

 

 双方の軽いミーティングの後、レンはやはり“色々な意味で怖い”のか、少々慎重になりながら、ローラは鼻息を荒くして、先に巨大ローラーが付いている巨大な杖(以下、巨大ローラー)をブン回しながら、両選手ともに、闘技エリアに降りてきたのだった。

 

レン「(このヒト、本当に大丈夫なのかなぁ…)」

ローラ(間近で見ると、もっと可愛い! さぁ、楽しませて貰うわよ!)

 

 そして、刻は動き出した!

 

 カーン!

 

 ユキが先ほどの試合で青ざめた闘技場に活気をもたらそうと、勢い良くゴングを鳴らした。

 

レン「さて、まずは様子m」

ローラ「レンきゅーーーーーーーーーーん!!!!!」

 

 ドドドドドドドド!!!!!

 

 それはレンにとっては“恐怖”以外の何者でもなかった。ショタ感情を120%開放したローラは、巨大ローラーをブン回しながら、レンに突撃していったのだった!

 

レン「う、うわぁぁぁぁああああ、怖いよぉ!!!!!」

ローラ「その声もたまらない! きゅんきゅんするぅ!!!!!」

レン「うわああああああああ!!!!!」

 

 レンはもう“本能的”に、ローラから逃げまくった。闘技場のエリア外周を、全速力で逃げまくった。そしてそれを巨大ローラー担いだローラが、目をギラギラさせて追いかけていたのだった。

 

 これでは、“試合”、どころではなかった。

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ユキ「こらぁぁああああ!!!! ローラ! 感情を抑えて、ちゃんと試合せんか!」

アル「あああ・・・・・このカードだけは“賭け”だったが、裏目に出たか・・・・・」

ミキ「あっっっっちゃーーーーー、やっぱり、やっちまったか・・・・」

 

リン「レン逃げて! 全力で逃げて!」

アペンド「レン、不憫な・・・・・」

学歩「拙者には、よくわからんシチュエーションでござる…」

テル(・・・・これは良い展開かもしれん。これが続けば、ローラの試合放棄でレンの勝ち、最低でも引き分けは固いな。レン、逃げられるだけ逃げろ、その先に勝利が待っているぞ)

 

 しかしレンはあまりの恐怖に“素で可愛い少年”になってしまって、逃げながらローラに向かって、涙目で怒鳴った!

 

レン「うわーんっ! おねーさん、本気で怖いよぉ! もぉう、やめてよぉ!」

 

 ピタッ

 

 その声を聞いたローラは、急に立ち止まり真顔に戻って、レンを涙目で見つめたのだった。

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レン「お・・・おねーさん???」

 

 レンもローラのあまりに急激な変貌ぶりに驚き、立ち止まってローラを見つめ直したのだった。

 

ローラ「レンきゅん・・・・・怖いの・・・・私が怖いの?」

レン「そ、そりゃ怖いですよ!! “そういう感情”丸出しで追っかけられたら、誰でも! それと“レンきゅん”って呼称、やめてよ!」

ローラ「レンきゅんが・・・“私の”レンきゅんが、私を嫌っている・・・怖がっている・・・可愛い男の子が、本気で嫌がっている・・・」

 

レン(こ・・・・この“ヒト”、マジでヤバイ人だ・・・)

 

 チラッ チラッ

 

 レンはテルやアペンド達に目配せしたが、それに気づいたテルもアペンドも、冷や汗を垂らして首を振るだけだった。彼らでも想像してなかったほどの“異常者”だったらしく、万策尽きている状態だった。

 

レン「そ…そんな…」

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ローラ「わ…私が嫌われた…可愛い男の子に嫌われた…た…た・・・・・・・・!!!!!!」

 

 ブンッ!

 

 ローラは“怒り”の感情を前面に出した表情に変わり、巨大ローラーを振りかざした!

 

ローラ「そんなの、認めない!!!!!!!!!!」

 

 ブンッ!! ブンッ!! ズチャ!!

 

 ローラは巨大ローラーを頭上で振り回し、最後に、あろうことか“レン”に向かって、ローラーの先を突きつけたのだった!

 

ローラ「嫌がるなら、嫌うなら、怖がるなら、『力ずく』でも、私のモノにする!!!!!」

レン「うわっ!!! 本気でヤバい!!! もうこんなの戦いじゃないよ!!! ユキさん! これはノーゲームだ! 引き分けで良いから試合を中止してよ!」

 

 しかし、ユキのいる場所からは、ゴングの音は鳴らなかった。その代わり、ユキの説明の声が流れてきた。

 

ユキ「追いかけ回している時はどうかと思ったが、今になってようやく“戦闘”らしくなった。レン君、君もローラに“色々な意味で攻撃”されたくなかったら、戦ったらどうだ?」

レン「くっ! こんな相手と戦闘かよ!」

 

ローラ「レンきゅん、ぜっっっっったい、私のモノにしてみせる!」

レン「やなこった! こうなったら全力で“戦って”やる!」

 

 ジャキッ! カチャ!

 

 ユキの言うとおり、ようやっと“お互い”に武器を構えて戦闘態勢に入る事が出来たのだった。

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レン「もう、撹乱とか牽制とか、そういう問題じゃない! とにかく攻めて攻めて攻めまくるしかない!」

 

 バシュッ!

 

 レンは、勿論自身の俊敏さを生かして、ローラの懐に入ると、構えていたブロードソードを思いっきり振りかぶって、ローラの腹部を斬りつけた、いや、ソードの刀身をぶつけて破砕しようとした。

 

 ガスッ!

 

レン「よしっ! 会心の一撃! その“重い武器”が徒(あだ)になったな!」

ローラ「・・・・・・嬉しい・・・・・・」

レン「えっ?」

ローラ「レンきゅんが・・・私を・・・斬ってくれた・・・」

レン「そんな! ダメージは確実にあるはずなのに!」

 

 つつーーーーーー

 

 ローラの口元から血が流れてきた。レンの言うとおり、確実に腹部へ大ダメージを受けているのである。しかしローラは跪きもしない、目元も力を失っていない、言動も代わっていない、いや、むしろ、“喜んでいる”のだ。

 

ローラ「嬉しい、やっと私に接触してくれた・・・」

レン「ひぃ! まだ1回しか接触してないけど、やっぱり耐えられないよ! この人おかしいよ!」

ローラ「だから、もっと私のモノにする!」

 

 ブンッ!  ガチャンッ!

 

 ローラは巨大ローラーを軽々と振り下ろした。ローラー部分は“レンの頭部”を直撃して、レンが頭部にはめていた“金冠”をひしゃげさせて、接合部を破壊し、2つのパーツに分解してしまい、頭部から外させてしまった!

 

レン「ガハッ!」

 

 同時にレンの頭部にも相当のダメージを与えたのは言うまでもない。

 

ローラ「そんな怖い武器、レンきゅんには似合わない」

 

 ブンッ! バキッ!

 

 さらにローラはレンの左手の甲をローラーで思いっきり叩き、左手に握られていたブロードソードを叩き落とした!

 

レン「グワァ!」

 

 当然、左手の骨は一部折れてしまった事になる。

 

 ガクッ・・・

 

 レンはあまりの痛みに耐えかねて、気絶して、その場に倒れ込んでしまった。

 

ローラ「さぁ、身ぐるみはいで、それからが本番よ!」

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 フサッ・・・・

 

ローラ「ん? なんだ? この白い布は?」

 

 それは白いリボンの布・・・僧侶リンが頭に着けていたリボンだった。

 

リン「もう・・・・・やめて・・・・・」

 

 そう、リンはボクシングで負けを認める時にやる“タオルを投げ入れる”のと同じ事をしたのだった。気絶して自分で負けを認める事が出来なくなったレンに代わって、リンが自分のリボンをほどいて、投げ入れたのだった。

 

リン「レンの・・・私たちの負けです。だから、もうやめて!!!!」

 

 カンカンカン!!!!

 

 さすがのユキも耐えられなくなったのか、ローラの行動がまたおかしくなったのを確認したのか、今度こそちゃんと“試合終了”のゴングを鳴らしたのだった。

 

ユキ「テル側が負けを認めたし、ローラ自体の行動も常軌を逸脱した。ローラ、レンから離れろ! これよりレンの救護に向かう」

ローラ「ちぇっ、これからだったのに・・・・・・」

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 レンの周りに、ミキ側の救護班が集まりレンを担架に乗せ、ソニカと同じ医務室に運ぼうとしていた。その時、レンの元にリボンを結い直したリンと、状態を確認するためにテルがやってきた。

 

リン「レン・・・・私がついていてあげる・・・・・・」

テル「ああ、こっちは大丈夫だ。君はレン、それとソニカの所にいてやってくれ」

リン「…ありがとうございます…」

 

 しかし、ローラは平然としていた。むしろ、試合が終わってこんな状態なのに、残念がっていた。

 

ローラ「ちぇっ・・・・・上物だったのに・・・・」

 

 カチャカチャカチャカチャ・・・・・・

 

 テル側の中の一人が、体を震わせてその光景を見ていたのだった。

 

アペンド「・・・・・・学歩、怒りで暴走したら、お前の太刀筋が乱れる。次はお前の試合だ、気を落ち着かせろ」

学歩「・・・・・・・許さん・・・・・・・」

 

 次は、学歩vs剣士レオン、だったのだが、どうも学歩が狙っているのは、闘技エリアの横でドカッっと座っているローラのようだったのだ。

 

(続く)

 

CAST

 

ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ

初音ミク(ミク):初音ミク

 

<クリプトン(Cripton)王国サイド>

魔導師アペンド:初音ミクAppend

 

僧侶リン(リン):鏡音リン

勇者レン(レン):鏡音レン

 

<インタネ(Interne)共和国サイド>

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ

 

<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>

魔導師テル:氷山キヨテル

 

皇帝イロハ:猫村いろは

神官ユキ:歌愛ユキ

クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki

(ミキの中身=ミリアム:Miliam)

 

<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>

変身兵士 ソニカ:SONiKA

 

皇帝アル:Big-AL

重機動兵器アン:Sweet Ann

剣士レオン:Leon

圧殺兵士ローラ:Lola

導士オリバー:Oliver

拳闘士シユ:SeeU

 

その他:エキストラの皆さん

 

***

 

<バトルアリーナの対戦カードまとめ>

 

第1回戦 : ×ソニカ  vs  ○拳闘士シユ

第2回戦 : ×レン   vs  ○圧殺兵士ローラ

第3回戦 :  学歩   vs   剣士レオン

第4回戦 :  アペンド vs   重機動兵器アン

最終戦  :  テル   vs   ミキ(ミリアム)

 

回復担当 : リン   &   導士オリバー (非戦闘員)

約束事項での非戦闘員 ミク

説明
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第8話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。

☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。

☆この作品はナンバリング的には“第1期”となります。
☆主役はルカさんなんですが…。

☆今回は、勇者レンvs圧殺兵士ローラ・・・・だったのですが、どうも試合はおかしな方向に・・・。
☆次は学歩の試合ですが、狙っている相手は違っているようですね。
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