九番目の熾天使・外伝 運命の獅子
[全2ページ]
-1ページ-

「はあ…はあ…ううっ」

 

金髪の少年は姿を現したかと思えば、直後に地面に倒れ伏してしまう。

よく見れば、彼の服装は粗末な白い布を纏っただけの簡素なモノだ。

 

「だ、大丈夫!?」

「ウル、迂闊に近づくのは危ないにゃん!」

 

しかし、黒歌の制止も聞かずにウルは少年へと走り寄る。

 

「酷く衰弱してる…。それにこれは毒?早く治癒しないと」

「やれやれ、まったく…ウルのお人よしはビョーキの域にゃん」

 

呆れながらも黒歌は治療のための仙術を手際よく組んでいく。

ウルもまた、魔法によって治療を行っていく。

 

「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。((汝が為に|トゥイ・グラーティアー・))((ユピテル王の|ヨウイス・グラーティア))((恩寵あれ|・シット))。『((治癒|クーラ))』」

 

魔法と仙術による治療の甲斐あってか、荒かった少年の息はだんだんと落ち着いていき、脂汗が滲み苦しそうな顔をしていた彼の顔も落ち着いてきた。

 

「…黒歌さん、彼はもしかして」

「ウルの考えてる通りだと思うにゃよ。この子から聖なる気配を感じ取れるにゃ。…十中八九、聖剣計画の被験者にゃ」

「…やはりですか」

 

返事をしたウルはしばし考え込む。

そしてしばらく考えた後、黒歌に話しかける。

 

「黒歌さん、リアス部長やカリンさん達に連絡してください。聖剣計画の被験者と思しき少年を保護しましたと。その後、このあたりに結界を張ってください」

「…ウルはどうするにゃ?」

 

その言葉に対して、ウルは答えなかった。

無言で飛行魔法を発動し黒歌と少年に背を向けて浮遊する。

ウルが見据えている方向は、先ほど黒歌が探知した研究所があると思われる方角だった。

 

「…行くにゃん?」

「ええ。部長たちには先行している、と伝えておいてください」

「…行くのは止めないにゃ、でも―」

 

何かを言いたげな黒歌が気になったのか、ウルはわずかに後ろを振り向き黒歌を見やる。

 

「絶対!帰ってくるにゃ!怪我もしちゃダメにゃ!怪我して帰ってきたら、オカ研全員で看病してやるから覚悟しにゃ!!」

「それは不自由ですね、怪我しても自分で治して帰ってきます」

 

軽口を叩きつつ、ウルは飛行魔法で研究所へと向かった。

そしてその場所には『何にゃあの態度!』と怒りながら少年の面倒を見る黒歌だけが残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――着いた」

 

鬱蒼とした森の中に、密かに建っている教会。

聖なる気配を漂わせながらも、どことなく空気が澱んでいる。

さらに―

 

「………これは、毒ガス?少年に回っていた毒はこれですか」

 

気付かずに進んでいたら、いくら人造の体とは言え深刻な影響を齎していたであろう程の猛毒。

あの少年が生き残っていたのは吸い込んだガスがごく少量だったからだろう。

 

「…こんなもの…。ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。((吹け|フレット・))((一陣の風|ウネ・ウェンテ))『((風花|フランス・))((風塵乱舞|サルタティオ・ブルウェレア))』!」

 

魔法で突風を放ち、毒ガスを払いのける。

不自然な突風に気が付いた教会の人間たちが騒めき、ウルの姿を認めるや否や警告も無しに発砲してくる。

―が、しかし。

 

「な、何だ!?」

「何故被弾しない!?発砲音も、弾丸も見えない祓魔弾だぞ!」

 

ウルの曼荼羅のような障壁―『((造物主|ライフメイカー))』に作られた((使徒|人造人間))特有の、何層にも折り重なった魔法障壁に阻まれウルの体を傷つけることは能わない。

 

「…一つだけ、忠告します」

 

底冷えするほど冷たいウルの声が森に響く。

 

「貴方たちの中で、人工聖剣使いを生み出す計画―聖剣計画について少しでも疑問を持っていた人は武器を捨ててください」

 

その言葉に、大多数のエクソシストが言葉に詰まる。

何故なら先ほど行われた実験体たちの『処分』―それには彼らも反対していたからだ。

しかし、少人数―神を盲信しているエクソシストは違った。

その言葉を意にも介さず、ウルに攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

「黙れ異教徒め!神の家を襲撃するとは恥を知れ!!我らが主の御名のもとに貴様を断罪する!」

「…ふん」

 

攻撃を仕掛けてきたエクソシストは8人。

そのうち3人が刀身のない剣の柄から光の刀身を生み出し斬りかかってくる。

残りの5人は後衛のつもりか、光の銃弾でウルを狙い撃ち援護をしている。

 

だが、光の剣も銃弾も。

ウルの魔法障壁を突破するほどの威力は無く、刀身は甲高い音を立てて砕け散り、銃弾は先ほどの再現かのように障壁に阻まれる。

勿論のこと、ウルは微動だにしていない。

 

「なっ…何故だ!主の祝福を賜っている我らの剣が!」

「子供を犠牲にする実験を容認するのが貴方がたの神ですか?…それが本当ならばそれは神ではなく―本物の悪魔ですよ」

「黙れぇぇぇ!!!」

 

激昂した一人のエクソシストは、剣の柄を手放しウルに殴りかかってくる。

それは技術も何もない、やぶれかぶれの拳だった。

そのような拳が当たるはずもなく、ウルはひらりと身をかわす。

エクソシストは拳が空を切り、バランスを崩したのか無様に転んでしまう。

 

「き、貴様ァ〜…!!」

「もういいです。貴方は黙っていてください。((解放|エーミッタム))『((石化の邪眼|カコン・オンマ・ペトローセオース))』」

 

地面に跪きウルを睨み付けるエクソシスト。

そんな彼をウルの右手から発された一条の光線が射抜く。

すると彼の体は、地面に跪いた格好のまま、瞬時に石化してしまった。

 

「…ほかの方々はどうします?まだかかってきますか?」

 

石化されたエクソシストを目の当たりにし戦意を喪失したのか、残りのエクソシスト達は全員が銃と剣の柄を放り捨てた。

 

「今この場に魔王サーゼクス・ルシファー様から聖剣計画の調査を命じられたリアス・グレモリー様が向かって来ています。僕たちに危害を加えない限り、貴方がたに危害を加えるつもりはありません。この施設の責任者はどなたですか?」

 

ウルがそう問いかけると、ほぼ全てのエクソシストが口を噤む。

まるでその事には触れたくないと言うように。

 

「…まあ良いです。…そうだ、先ほどこの施設から逃げ出したと思われる少年を保護しました。その少年は金色の髪をしていましたが、心当たりは?」

 

その言葉を聞いた一人のエクソシストが驚き、顔を手で覆った。

見るとその手の間からは涙が零れている。

 

「イザイヤ…生きていてくれたか…」

「彼の名前はイザイヤと言うのですか?あなたは?」

「彼の指導をしていた一介のエクソシストだ。良かった…一人でも生き残ってくれていて…」

 

彼はそれ以上の言葉を紡げず、とうとう地面に付して泣き始めてしまった。

 

 

リアスたちオカルト研究部が到着するまで、森の中には彼の鳴き声が響いていた―

 

-2ページ-

一応教会も人でなししか居ないってわけじゃないと思うのです

説明
第二十四話 獅子と祓魔師達
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
1593 1472 2
コメント
そういえば、俺とティアナとの関係を知ってるのって誰だ?  アグスタで6課に疑われてクリウスからマウザーにか?(支配人)
………(そのクリウスも関係している人)(ディアーリーズ)
支配人:よく分かりましたね、その通りですよ(主にティアナ、後はマウザーやクリウス関連で)(竜神丸)
逆に俺はシリアス場面が今のとこ幽霊騒動時のみ。(アザゼルとクレア絡み)  まぁ、今後増えるんだろうが…巻き込まれたりで…(支配人)
何度も言うように、ディアさんのキャラ設定だと一番シリアス書きやすいんですよねぇ〜(※悪い顔(竜神丸)
………(←そのシリアスの主な標的)(ディアーリーズ)
私が書くと大抵はシリアス描写が必ず入るというジンクス←(竜神丸)
超えるんじゃなくてくぐるんかいw  ギャグテイストかシリアルか…(支配人)
まあでも…ハードル上げられたらもう、くぐる勢いで行こうと思います(開き直り)(ディアーリーズ)
いやいや竜神丸さんは文才も構成力もありますよ…アレとかストーリーとか。僕両方無いですもん…。(ディアーリーズ)
ディア:分かりました?書く側の苦労が…(遠い目(竜神丸)
文才無いのでハードル上げないでくだしあ…(ディアーリーズ)
そうか…ちと安心。  どうかくかディア(作者)の腕の見せどころだな…(支配人)
うちの師匠誰彼かまわず襲い掛かるような小物じゃないので…(ディアーリーズ)
あれ?これエヴァに知られたら俺ら血を狙われるんじゃね?(支配人)
俺(天使、悪魔、竜の因子持ち)、フィアレス(天使)、ユイ(エレブ大陸の神竜族の巫女)、シグマ(大悪魔)、ヴァニシュ(異世界の竜皇)、ユリス、(”契約”による運命共同体)フレイア(DOD世界の神竜族)(支配人)
…そうだ、麻帆良行ったらついでに魔法世界まで行ってセクンドゥムやプリームム達を竜神丸さんに素体として提供を…←(ディアーリーズ)
いや、そんな事はありませんよ?>任務ない限り出て来ない  時には自分のウイルス研究の実験台を確保する為に次元犯罪者捕まえたりとか、そこらのヤンキーやチンピラを捕まえたりとか……うん、やっぱ出て来ない方がその世界は安全ですね←(竜神丸)
そもそも竜神丸さんは何か任務でもない限り絶対に楽園から出てこない気がする(ディアーリーズ)
異世界の天使や悪魔、竜に興味あるならウチだな。(支配人)
私は絶対無理ですね。普段から怪しさバリバリな白衣着てますし、そうでなくても雰囲気で悪人だとすぐバレる←(竜神丸)
あ、プラス刃さんと朱雀さんくらいですかね(ディアーリーズ)
安牌な旅団メンバー…タカナシ一家、支配人ファミリー、Unknown組、awsさん、ガルム夫妻、kaitoさん、げんぶ親子、FalSigさん、Blaz艦隊…?(ディアーリーズ)
竜神丸のだと時系列は加入前だな…  加入後ならエヴァやリアスからメールで顔出せ的なのでもできそうだが…ディアメンバーと安全牌な旅団メンバーも連れて行くか(支配人)
ありゃま(竜神丸)
支配人さんのは書きやすそうですけど、竜神丸さんのはちょっと難しいかも…。(ディアーリーズ)
旅団メンバーの誰かが学園祭に来て、たまたまウル一行と擦れ違った際にウル達の潜在能力に目を付け、ちょこっとだけ殺気を出す。ウル達もそれに気付いて警戒するも、その旅団メンバーは既に立ち去った後で……という感じはどうでしょう?ちなみにこの手のパターンは、調査任務を担当するokakaさん辺りが適任かと(竜神丸)
旅kaitoがサボリで逃げた先が麻帆良や駆王町で、俺と数人が追いかけてきたとか? ディアもいるから案内人として…(支配人)
ただ旅団メンバーの何人かが麻帆良に来る、と言うところは考えているものの肝心の理由が思いつかない…。学園祭に興味があったってことで良いだろうか…(ディアーリーズ)
そうなのか…  まぁ、番外編で出番あるしいいか。  さっきも書いたが、必要な情報があれば言ってくれ(支配人)
出せそうなのはディアラヴァーズくらいですもんね。後は咲良さんやハルトさん、それからショウさんやエリカさんくらいで(竜神丸)
正直言って、このストーリー中は旅僕の過去編なので支配人さんやkaitoさんに出番があるわけが無かったりします(ディアーリーズ)
鬼がいた(-_-;)  降伏勧告のタイミングか…最初のがいいのか、アン娘みたいに圧倒的戦力差を思い知らせてからの方がいいのか…(支配人)
必要な情報とかあったら渡すよ? 番外編だけじゃなくても』ゲスト出演てきなものもしていいし(支配人)
……え?降伏勧告って最初にするの?最初にグラビトロンカノンで全員制圧して絶望を与えてから降伏勧告するのって間違ってるの?(Unknown)
支配人さんやkaitoさんを出すのはひと段落してからですかねー。ストーリー中に出すわけじゃなく番外編で出すので(ディアーリーズ)
まあ教会なのでだいたいの人は善人ですが、狂信者やバルパーみたいのもいるのでこんな感じにしました(ディアーリーズ)
一応降伏勧告とかはする。戦意のない奴を殺すのはしない。←   ってか俺とkaitoを出すとかこの間言ってたが、やるの?(支配人)
善人か悪人か、戦ってる最中にいちいち見極める暇はありませんがね(←見極めるのめんどいから纏めて潰そうとする人)(竜神丸)
どんな組織にも善人はいるのだよ………(キリヤ)
ん?間違ったかな?(Unknown)
最後ォォォォォ!!(ディアーリーズ)
流石ディアさん…私には真似できないことを平然とやってくれる!そこに痺れる!!マジザマァ!!(Unknown)
建てるんですね、分かります(竜神丸)
ソソソソンナワケナイジャナイデスカーイヤデスネーモウ(ディアーリーズ)
そしてフラグを乱立すると…(Unknown)
まだ他にも実験体の子供がいるかもしれませんしねー。毒だと一分一秒が生死を分けますし(本当はちゃっちゃと話を進めたかったんです)(ディアーリーズ)
相変わらずお人好しなディア。衰弱してる子供だからって油断はできないのに…関係者を生かしておくのも。  あと突入するの急ぎすぎw(支配人)
さ、流石にウルも自分を傷つける人に対して容赦は…(雲雀さんの事を思い出す)………(ディアーリーズ)
戒斗「お人好しも…ここまで来ると、病気だな!!」  思わず思い出してしまった台詞(竜神丸)
調べてきた、そういうことね。(支配人)
原作のネタバレになりますが…Wikiかどこかで木場の項目を見てきてください。そこに答えがあります(ディアーリーズ)
ん?あれ?木場じゃないのか?(支配人)
タグ
OTAKU旅団 もはや何でもあり オリ主 オリキャラ ネタまみれ ハイスクールD×D 

ディアーリーズさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com