崖の上の法則
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『崖の上の法則』 †

 

作:某犬犬

 

ある時ある所に一人の若者がいた。

その若者は旅をしていた。

晴れの日は一人野を進み、雨の日は木の下でハーモニカを吹いた。

そうしてある日、行く手が途切れ、行き止まりの崖上に辿り着いた。

崖の上からの景色はとても素晴しかった。

 

縁から下を覗き込むと、村人が集って来ていた。

若者は村人に手を振りながら、この景色を皆にも見せたいと思った。

若者「皆さんも登って来ませんかー?良い景色が見れますよー。」

村人「あなたはどうやって、この崖を登ったんですかー?」

若者は少し戸惑いながら答えた。

若者「まず右足を岩に掛けて、次に左足を窪みに嵌めて下さい。」

「そうすれば登れますよー。」

 

皆、垂直の壁に尻込みしていたが、その内の何人かが前に出た。

村人「よし!俺が登ってやる。」

村人「私も!」

村人「僕も!」

右足を掛け、左足を嵌める、そこまでは誰でも出来た。

が、更に上に登ろうとすると、皆ズルズルと滑り落ちてしまう。

村人「こんな切り立った崖どうやったって登りようが無い。不可能だ。」

村人「でも彼は確かに崖の上にいるわ。」

村人「きっと何か秘密の裏技が有るに違い無い。」

 

その様子を見ていた若者はピンと来た。

若者「私がロープを下ろしますから、それに金貨を一人一枚結び付けて下さい。」

「そうしたら、取って置きの裏技を教えて差し上げまーす。」

村人「金貨一枚なら安いもんだ。俺は払うぞ!」

村人「私も!」

村人「僕も!」

若者は金貨が沢山結ばれたロープをスルスルと引き上げると言った。

若者「今、攻略本を用意しますから、暫く待っていて下さーい。」

村人は「誰でも簡単、七歩で登れる攻略本」を待ち侘びた。

しかし若者は姿を消したきり、一向に戻って来ない。

 

やがて日が暮れる頃、村人は言った。

村人「こんな崖を登れるなんて、彼は天才だったんだよ。」

村人「そうさ、俺達は普通の村人なんだから、そんな才能ありっこ無いのさ。」

村人「明日は向こうの崖に行ってみようぜ。」

「向こうなら、もっと楽に登れるに違いない。」

村人「そうとも、こっちの崖は粘土質が多過ぎたんだ。」

そうして村人は皆、家路についた。

 

一方の若者は焚き火の傍らに横たわり、揺らめく炎に金貨をかざしながら呟いた。

若者「急がば回れとは良く言ったものだ。」

 

終わり。

 

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英語がペラペラになった人や
飛んでもない才能を身につけた人達の
高みに登り詰めた秘密の裏技とは?
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