ゼロの使い魔 AOS 第01話 プロローグ
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少女は憂鬱だった。

 

少女は貴族、そして国を代表する大貴族の娘でもあった。

 

ここは国中の貴族の子供があつまるトリステイン魔法学院。

 

少女は今期の新入生であり入学して1月ほどたったその日の出来事である。

 

「・・・今日の実技もうまくいかなかったな」

 

魔法学院においての実技とはすなわち「魔法」である。

 

「ちゃんと呪文も唱えてるし、杖も振るえているはずなのに・・・」

 

この国では魔法を使えるものを貴族と呼び、それ以外のものは平民と呼ばれる。

 

「私は貴族なんだから魔法が使えるはずなのに、貴族なんだから」

 

貴族と平民、二者の間には社会的にも能力的にも大きな隔たりが存在している。

 

「貴族なんだから・・・、貴族なんだから・・・」

 

そう、魔法使えるものが貴族!!この国において絶対の権益者である!!

 

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは憂鬱だった。

 

 

「おはようございます、みなさんがこの学院に入学して1月が経ちました」

 

教壇に立つ教師がそう話を切り出し、これまでの総括や批評を続ける。

 

「今年は基礎が出来ている方が多くて授業も非常に進めやすいです、今後も油断せずに...」

 

「先生!!基礎が出来ていない方と進めづらい方がいると思いますが、失礼ですが認識が間違っているかと」

 

教師の話に1人の生徒が割って入った、そして席を立ちルイズのほうを指差し話をさらに続ける。

 

「基礎どころか魔法も使えない平民のような生徒がいるようですよ、この学院には貴族の子供しか入学できないはずですが」

 

「・・・先生の話を遮ってはいけませんよ、席に座ってください」

 

教室内が少しづつ騒がしくなり、ルイズのほうに教室中の視線が集まる。

 

「うわさですが大量の資金援助があれば平民でも入学できるという話を聞い...」

 

「それ以上の私語は大きな減点対象になります、よろしいのですか?」

 

教師の静かな一喝に教室は静まり、話を割った生徒もいそいそと席に座った。

 

「学院生活に慣れて気が緩んでいる方がたくさんいるようですね、非常に残念です」

 

「確かに遅れている生徒も居るようですがまだ1ヶ月目です、来年の進級試験まで時間はあります」

 

「使い魔召喚試験までに各自、自分のペースで間に合うように油断無く努力するように」

 

そう言って朝の挨拶は終わり1日の授業が始まったのであった。

 

 

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

 

トリステイン王国でも3本指に入る大貴族ラ・ヴァリエール家の3女である。

 

代々優秀な魔法使いを輩出し、両親と上の姉達も名の知れた魔法使いである。

 

当然、自分もラ・ヴァリエール家の名に恥じない魔法使いになると思って生きてきた。

 

ルイズは魔法が使えなかった。

 

両親や上の姉妹達はもちろん、高名な家庭教師にも教わったが現在まで成功した魔法はゼロ。

 

トリステイン王国において魔法育成機関の最高峰であるこの学院に入学したのがちょうど1ヶ月前である。

 

 

授業を終えルイズは自分の寮室に戻り、窓から夜空を見上げる。

 

今日の実技の授業ではクラスでただ1人なにも出来なかった、クラスメイトや教師からは失笑されたがルイズはもう慣れた。

 

慣れてはいるが、いつまでもバカにされている現状はとても悲しい。

 

15歳の少女が現在の環境で傷つかないわけがないのだから。

 

「貴族なんだから・・・、貴族なんだから・・・」

 

それでも貴族のプライドとラ・ヴァリエール家のプライドを持って心を保っている。

 

「来年は進級できるかな、進級試験で使い魔を呼び出せるのかしら」

 

「誰もが認めてくれるような凄い使い魔を召喚したいな・・・」

 

今朝の教師の話で出てきた進級試験、使い魔召還のことを思い出してルイズはまだ見ぬ使い魔に思いを馳せる。

 

進級試験、1年から2年に上がる時に自分の生涯のパートナーとなる使い魔を呼び出す儀式。

 

自らの手となり目となり耳となり時には命を賭けてマスターを守る、魔法使いが使役する異形のものである。

 

一般的な動物やモンスター、伝説に近い存在であるドラゴンまで召喚可能で使い魔を見ればマスターの力量がわかるとも言われている。

 

「みんなからバカにされているけど、使い魔を召喚できればもう平民だなんて言われないはず」

 

「ちゃんと私の所に来なさいよ!ドラゴンじゃなくても良い、犬でもかまわないわ!!絶対に大切にする!!!だから・・・お願い」

 

バカにされているくやしさからか?進級への不安と恐怖からか?ルイズは強く・・・とても強く、夜空に祈る。

 

・・・次の瞬間。

 

部屋の壁に大きな衝撃があった。

 

 

 

 

 

 

 

ルイズは衝撃で反対がわの壁まで吹き飛ばされた、壁に叩きつけられ切れそうな意識の中で彼女は見た。

 

中庭に崩れ落ちる壁と土煙の中にいる人影と夜空に浮かぶ双月を。

 

 

....第01話 プロローグ 終

 

next第02話 早すぎた召還

 

執筆.小岩井トマト

 

 

説明
ゼロの使い魔の二次創作です。
主役は平賀才人ですが原作より約1年早い召喚で物語が始まります。
転生や強化などは考えていませんが才人くんにハードすぎるので...ちょいお助けも有。
初SSなので誤字と謎文章は大目に見てほしいです(笑)
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コメント
初コメありがとうございます、トマトもゼロ魔のSSをもっと見たいのですが数が少なーという事で自分で書きました。(koiwaitomato)
二次創作界を席巻した記憶も今や久しいゼロ魔。新たな作品の登場に期待を膨らませています。(修一)
タグ
SS ゼロの使い魔 平賀 歴史改変 

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