とあるギルドの死神様?
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前書き

 

 

ジョジョかと思った?違いますwww

 

現在、ジョジョやワンサマーを書いてたけど、俺って実はハチャメチャコメディが書きたかったんだ(切実)

 

シリアスなんて脳みそがとろけた作者には(ヾノ・∀・`)ムリムリ

 

なので皆さんも、脳みそ溶かして読んでくだちゃいwww

 

じゃ、これからドラゴンズドグマオンライン行ってきますε≡≡ヘ( ´Д`)ノ

 

 

 

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「ふ〜……やれやれ、やっと依頼完了だね〜」

 

鬱蒼とした森の中でタバコから立ち昇る煙を肺に潜らせてから外に排出。

やっぱ仕事の後はこれだよね〜。

 

「にしても……まさか本当に来る事になるとはねぇ……”異世界”に」

 

時折太陽の側を通る雲をぼんやりと見上げながらそんなことを呟いてみたり。

少し草臥れた紺色のダボッとしたワークパンツ。

そして灰色の地味なシャツの上には、片方の袖にDEATHと白文字で書かれた黒いジャケットを羽織ってる。

頭には青いヘアバンドを結んだ我が衣装。

ドーモ=ミナサン、神様の気まぐれでこの世界に転生トリップした転生者デス。

 

名前は”安田結城”と言いまして、この世界では”ユーキ・ヤスダ”と名乗っております。

 

何故ファーストネームが先になっているかと言えば、ここが日本ではなく『異世界』だから。

要はこの世界の流儀に則って名乗っているわけである。

 

 

 

フィオーレ王国。

 

 

 

俺が転生した世界で、人口は一七00万人。

主な産業は酪農、園芸農業。X六二二年、永世中立国に認められた王国。

しかもこの世界はとある”変わったもの”が普通に売り買いされている、ちょっと変わった世界なのです。

 

「この世界に来て、もう3年になるんだっけ……早いもんだよね〜、月日ってのは、さ」

 

流れ行く雲を見ながら、「あっ、あの雲はキリンみたいだな」などと関係の無い事を考える。

ミーがこの世界に来る事になったのは、前世になる日本での”死”が原因なのよ。

とは言うものの、その苦しみを経験した訳でも無いし、ある日何時もの様にベットに入って寝たら死んでしまったのである。

諸行無常、目が覚めたら神様とご対面って何さー。

 

なのでこの世界に転生しようとも、いきなり過ぎて悲しむ暇が無かったという心境だった。

それに両親も既に他界してたのも大きいかな?

しかも赤ん坊の頃からやり直す転生ではなく、何故か12歳という微妙な年齢からだったため、その変化に慣れるのに精一杯だった事もある。

ちなみに前世が16歳だったため、軽く4歳分という若返りを体験。

何この微妙にアンチエイジングに成功した気分?

まー本来ならアンチエイジング業界に衝撃が走ってるところだろうけど、ここ日本じゃないから何とも。

しかし下手に赤ん坊からやり直して意識がはっきりしていたならば、逆に地獄の羞恥プレイだったしまぁいっか、と考えていたり。

 

ちなみにこの世界では飲酒、喫煙ともに15歳から認められているので、俺は堂々とタバコを喫煙していた。

 

そのままボーッとして大体10分程かけてゆったりとタバコの煙を楽しんでいたが、遂にその時間は終わりを告げる。

他ならぬ、俺自身の身を呈したアラームによって。

 

「ふひゅう〜……(ジュッ)うわちゃちゃちゃちゃ!?あっつあっつぅ!?」

 

燃えているタバコが無限な筈も無く、フィルターの際まで燃えてきたタバコの熱が指に小さな火傷を作りつつ、至福の時間の終わりを告げる。

そのありがたくないアラームを指から痛みで感じ、手を振り払って驚き、焼けた指の部分に息を吹きかけて冷やす。

傍から見ると何とも間抜けな光景であった。

 

「ふー、ふー。あ〜熱かったぁ……そろそろ帰ろうかねぇ……よっこいしょっと」

 

涙目で指に息を吹きかけてたら次第に痛みが治まったので、腰掛けていた”モンスターの亡骸”から飛び降り、地面に着地して背伸びをする。

さて、依頼完了の報告を……。

 

「おぉっとっと、いけないいけない。ちゃんと討伐の印を持ってかないと、おまんまの種が貰えないじゃないの」

 

思い出した様に振り返り、先ほど倒したモンスターの亡骸に歩み寄る。

緑色の体毛に覆われた全身。

腕にはなぜかハートの模様がある凶悪モンスター『ゴリアン』。

通称は”モリバルカン”と呼ばれる亜人の様なモンスター。

その死骸が俺の目の前に”複数”横たわっている。

 

「ゴリアン25体の討伐で30万((J|ジュエル))。まっ、充分でしょ……えっと、確か討伐の証の部位はぁ……」

 

地面に倒れるゴリアンの死骸の報酬額に満足しながら手を開く。

そして次の瞬間、俺の手の平に水色に光る”魔法陣”が浮かび上がる。

 

複雑な幾何学模様を描く魔法陣。

 

これこそがこの世界で普通に売り買いされている”変わったもの”、つまり魔法。

 

そして、俺が神から与えられた”転生特典”だ。

 

とある漫画の能力を欲した俺の為にこの”世界に合わせて”作り替えられた魔法。

その能力でかざした手に光が集まり、一つの”武器”として形が出来上がる。

 

それは、長細い柄に、常識では考えられない大きさの曲刃を誇る”大鎌”だった。

 

「耳と牙、ね――ほいさ!!」

 

草を刈り取る為の物では無く、まるで”死神”を彷彿させる大鎌。

某死神の言葉を借りるなら『命を刈り取る形をしてるだろ?』という禍々しさ。

そして黒い刃に施された赤いギザギザの装飾と、刃の柄に作られた目玉という悍ましさを感じさせるデザイン。

 

この大鎌こそ、俺が尤も良く使う武器であり――不本意ながら俺の”通り名”の象徴でもあったり。

 

その大鎌を何の苦もなく持ち上げると、依頼書に示されていた討伐の証となる部位……モリバルカンの牙と耳を切り落とした。

 

「えいさ!!ほ〜れっと!!」

 

一刀の元に1体の耳と牙を切り落としたまま、大鎌を回転させて別の個体の耳と牙を難無く切り落としていく。

まるで大型の電鋸を回しているかのような綺麗な動きでバランスの悪い大鎌を振り回す姿は、死神のソレだろう。

まぁ訓練もかかしてないし、経験だって積んでるからねぇ。不本意ながら。

やがて25体の躯から同じ部位を正確に切り落とし終えると、空中に舞っていた牙と耳が目の前にドサドサと落ちてきた。

 

「これで良〜し……じゃ、帰りま〜すか〜」

 

ユーキは切り落とした部位を袋に詰めると、再び武器を魔法で仕舞い、依頼された村へと歩いて戻る。

モリバルカンの死体は放置ちゃってるけど、まぁ良いでしょ。

普段は誰も近寄らない森の奥深くだし、偉大なる大自然が彼等を何とかしてくれちゃう……と、思う。

そのまま森の中だけで暮らしてれば良かったのに、人里に被害を出しちゃったからねぇ。

 

 

 

出る杭は打たれる、とは自然界でも適用されるお言葉らしい。さもありなん。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

ドドドド、という野太い低音サウンドを吐き出しながら、自分の愛車である魔導四輪バギーで海の側をゆっくりと走る。

モリバルカンの討伐依頼の完了を村長に説明して報酬を貰った帰り道なんだけど、ここで問題が一つ。

 

「うう〜むむぅ……今日はもう寝ようかねぇ……」

 

モリバルカンとの戦いを終えて気が抜けたのか、少し体がお疲れ気味だったりすんのよ。

しかもお誂え向きにもう日が落ちてから大分経っていて、危険な夜道を走っている状態だった。

このままでは居眠り運転等というアホなオチで再び神と相見えるのも近いかもしれない。

そうなったらオーマイガッ、だよマジ。

 

「ふあぁ……いかんいかん。こりゃどっかで野宿しねーと……お?ラッキー」

 

さすがにこのまま運転するのは……まぁ眠気覚ましの魔法薬を使えば問題ないんだけど、勿体無いし。

兎に角危険だと判断し、バギーを停止させて周りを見渡し、お誂え向きの野宿スポットを発見した。

海辺の側に人が入っても大丈夫で崩れる心配の無さそうな洞窟。

こりゃ正に渡りに船ってヤツか?

 

「獣の匂いもしないし、今晩はこちらにちょいとお邪魔しましょ〜か」

 

軽い調子でバギーを隠す様に停めて、バギーの後ろにトランク代わりに牽引してる棺桶トレーラーから寝袋と調理器具を引っ張りだす。

ついでに食材も適当に詰めたバッグも出しておけば、朝には素敵なモーニングにありつけるだろう。

作るの自分なんだけどね。チョットムナシイ。

ってイカンイカン。変な事考えてないでさっさと寝よ寝よ。

調理器具or食材は洞窟の奥に入れて、手前に寝袋をセット、その上に寝転がれば準備完了である。

 

「寝る子は育つ。って事でオヤスミー」

 

誰に言うでもなく挨拶して夢の世界へさぁ行こ――。

 

 

――……ぁああああああああ……うあぁあああああああああん……。

 

 

「ひょ!?何事何事!?」

 

どうやらまだ俺には現世に意識を留めておかねばならぬご様子。どちくしょう。

只ならぬ様子の悲鳴が聞こえてきた所為で飛び起きちゃったので、渋々温まり掛けてた寝袋から這い出して洞窟を出る。

人気の無かったこの海辺で聞こえてくる悲鳴なんて、一体何があったってのよ?

どう考えても面倒事だけど、聞いちゃったからには放っておく訳にはいかないよね〜。

そんなこんなで周囲を警戒しながら、声の聞こえてきた海辺を目指す。

しかしありゃあ、悲鳴って感じじゃなくてどっちかっていえば泣き声かな?しかも女の子の。

こんな夜中の海辺で泣くって……これで彼氏にフラれてつい、とかだったら俺の十八番を叩き込んじゃる。慈悲、必要無し。

 

「ふーむ……声はこの辺だったよーな」

 

とりあえず10分程探し回ったんだが、な〜んか見つからないのよねぇ……帰ったとか?

所謂無駄骨ってヤツ?なにこの胸に湧き上がるモヤモヤ?

 

「人、それを敗北感という……フゥ。帰ろ帰――」

 

ゴスッ!!

 

「へみゅ!?」

 

「……ろ?……なんぞや?」

 

誰も居ないから帰ろっかなーと反転して足を踏み出したら、何か洒落になんない音が足元からしたよーな。

おや?と首を傾げて下を見下ろすと……。

 

「……きゅう」

 

ボロッボロの布切れ一枚という服とも呼べない物を着て目を回す、緋色の髪をした少女ハケーン。

そしーて私の足ーは彼女の頭の上ー♪

それを認識して冷や汗ダラダラと流れ出る我が体。

アカン、これはアカン。

遠くを見渡してて気づかない、灯台下暗しとはこの事か。

 

「って!?ゴゴゴ、ゴメーン!!怪我は無いか少女よ!?」

 

慌てて足をどけ、砂浜に埋もれかけてた少女の体を抱き上げる。

しかし完全に気を失ってて直ぐには目を覚ましそうにも無いですね。

っつうか俺の足がトドメ?そ、そんなこたぁ無いんじゃ……無いかなぁ?

しかもこの少女、かなり酷い怪我が無数にあるではないか。

このままじゃヤバイねこりゃ。

 

「手持ちの薬で大体の処置は出来そうだけど……右目は駄目か……とりあえず戻んないとなー」

 

気絶する少女の体を抱いてキャンプへと戻り、眠気覚ましの魔法薬を飲んでから怪我の治療に取り掛かる。

とりあえず衣服を脱がせて、棺桶から薬と包帯を取り出してパパパッと処置を施す。

フハハッ、前世じゃ全く詳しくなかったけど、この世界での様々な経験が生かされてるのだよ。

更に言えばこの世界特有の魔法薬で傷の回復速度の促進も忘れない気配り。できるだろ?

 

「ふぅ、これで良し。後は……何か精のつくモノが要るね……やれやれ、寝るのはまだ先になりそうだよマミー」

 

精のつくモノって言えば代表的なのはやっぱり肉だが、残念ながら干し肉は切らしちゃってるので、肉がごじゃりません。

しかし少女の体力を考えると、やっぱ肉は必要な訳で……。

 

「しゃーない。ちょっくらその辺の命を頂きに……」

 

ゴロゴロ……サアァ。

 

「おいおーい。勘弁してよ神様。こんな時に雨なんて要らねーってばさー」

 

まるで近隣の命を守らんが如く、俺を外に出させない様に降り注ぐ雨。

しかも本降りじゃないですかヤーダー。

……こりゃ、少女にはお肉なしの健康メニューをお出しするっきゃ……。

 

「……グスッ……ひっく」

 

「おっけおっけー!!おいちーお肉をご所望ですねもぉー!!」

 

なんというタイミングで泣きますかねこの御方は。

これはアレか、「テメェ乙女の顔踏んづけてどう落とし前とる気だアァン?とりあえず肉な」というメッセージなんだろうか。

何という肉食系女子。逞しいじゃないの。

……まぁ、別に雨ぐらいは俺の魔法なら問題にならねーし……いっちょ行きますか。

魔法を発動させた証である魔法陣が手の平の前に浮き上がり、次の瞬間には姿を現す大鎌。

そして今回はそれだけじゃなく、足元にも俺の体を覆うぐらいの大きさの魔法陣が出て来る。

 

「いざ、少女の胃袋の為に――”換装”」

 

別空間にストックされた武器や鎧を呼び出して身に纏う換装魔法。

その魔法で隔絶された空間に閉まっていた鎧……というか衣服を身に纏って、俺は大雨の中に出る。

 

 

 

それじゃま、適当に張り切って――行ってみよぅ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「……う、ううん……ッ、ここは?……ぐ、ぅッ!? ――――!?」

 

ユーキに手当されてから凡そ3時間が過ぎた頃、少女は目を覚まし、自分が寝袋の中に居る事に驚き、怪我の痛みに悶える。

しかし抑えた箇所に施された清潔な包帯を確認して目を見開いた。

 

(手当、されてる?一体誰が――)

 

と、自分の怪我が手当されているという事は、自分はあの浜辺に打ち上げられて気を失ってから誰かに助けられたという事だと直ぐに認識する。

幼いとはいえ、直ぐにその辺りを理解出来る程度には、少女は賢かった。

そして、自分が今居るのは洞窟の中で、自分が目を向けたのは洞窟の奥、つまり行き止まりの方だと気付く。

更に、反対側、つまり洞窟の入り口の方から今まで嗅いだ事の無いほどに美味しそうな匂いがしてきたので自然と顔がそちらを向き――。

 

 

 

「ほよ?」

 

 

 

小さな鍋を掻き回す――変な声を出した”死神”の姿を見て、言葉を失った。

 

 

 

――死神――

 

 

 

まだ自分がこうなる前に両親から絵本で見せられた、人の魂を刈り取る神様。

黒いボロボロのローブに骸骨の体で、とても大きな鎌を持って人を追い掛けるとても怖い存在。

それと比べると、目の前の存在はそれ程邪悪な存在には感じられなかった。

 

まず体。

 

ボロボロで見るに堪えない黒いローブに身を包む汚れた骸骨。

 

ではなく。

 

何か所々ギザギザしてるけど汚くない黒い体。既にローブですらない。

というか足が2本じゃなくてデフォルメされた雷の様な角角の1本足。

1本足という異形なのに何か異形らしくない。

 

そして顔。

 

頭まですっぽり被ったローブの隙間から、禍々しいしゃれこうべが見える恐怖の存在。

 

ではなく。

 

煙突の様に伸びた頭のてっぺんに雷っぽい形のとんがりが生えてる。

そして顔はローブに覆われて隠れてるどころか、堂々と外に露出していた。

しかもこれまたデフォルメされた、怖いというより何処か笑いを誘う間の抜けた白い仮面の顔。

眼と鼻の3つの丸が空いて、ヒゲの様に下向きに伸ばされた3本の角。

恐らくあれがしゃれこうべの代わりなんだろう、と少女は何処か遠い頭でそれを考えていた。

 

結論。全体的になんかふざけ倒してる。

 

とてもではないが命を刈り取る恐怖の存在には思えない程に、その死神の姿はなんかおかしかった。

 

 

 

しかし考えても見て欲しい。

 

 

 

ボロボロの体で浜辺に打ち上げられたと思えば、目を覚ましたら誰とも知らない人間に治療されていた。

しかも洞窟の奥側に寝かされて、逃げ道は無い。

そして鍋をかき回している何処か巫山戯た死神?っぽい何かのデフォルメされた大きな白い手には、鍋をかき混ぜるお玉。

 

 

 

反対の手にはナニカの生肉が握られ、それがいい匂いのする鍋の上に翳されてると慣れば、投入されるしか道は無い。

 

 

 

鍋の横の台座には、恐らくさっきの肉であろう塊と、血塗られた包丁。

極めつけは、壁に立てかけられた死神の象徴とも言える禍々しい大鎌。

刃の柄に施された目玉の様な装飾に赤と黒の毒々しい刃。

そしてヌラリと光る赤い鮮血。

その直ぐ隣には、とても……とっても大きな黒塗り銀淵の棺桶。

 

「――」

 

これだけの要素が揃えば、少女が絶句するには充分であり――。

 

ピシャアァアアアアアアアアアンッ!!

 

「――はふっ」

 

けたたましい落雷の音と、光で逆行が刺した死神の姿を見れば、気絶するのは世の理であった。

 

「……刺激、強かったかしらん?」

 

まるでコントの様に寝袋に逆戻りした少女を見ながら、死神はポリポリと仮面を指で掻きながら困った顔をするのだった。

尚、これは知らない人間より人間っぽくないナニカの方が安心するんじゃないかと、何処かぶっ飛んだ善意の結果である。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「いやー、ごめんねごめんね?やっぱさー、知らない人よりはアッチの方が受けは良いかなーってさ。考えたわーけー」

 

「……」

 

「まぁ、結果的には裏目に出ちゃったけどねー。一応俺には君を害する気は無いから、そこんとこだけ理解しててちょーだいよ」

 

さて、あの死神の衣装を見て気絶した少女を今度は衣装を脱いで起こし、さっきの謝罪をする。

っかしーなー?見知らぬ人間より”死神様”の衣装の方が良いと思ったんだけどねー。

 

さて、自分の衣装に”死神様”ってどーよって思う人も居るだろうけど、アレが俺の転生特典なんですよ。

 

俺が願った特典は、『ソウルイーター』の登場人物が使う技や武器、技術に乗り物の一部。

但し魔女達や阿修羅、FREEの能力は使えないんだけど。

まぁその特典をこの世界の魔法風に作り直してもらったら、死神様だけあの衣装になってたって訳。

ちなみに俺がさっき兎を狩りに行った時やモリバルカンの討伐で使ったのは、ソウル君の変身した鎌だったり。

 

まぁその辺りの話は置いといて、キチンと謝ったのは良いんだけど……。

 

「……」

 

「……えーっと……」

 

何かさ、むっちゃくちゃ警戒されまくってんのよ僕チン。

寝袋にくるまったまま、俺特製兎肉のシチューを盛った皿を凝視してて食べそうにないんだなこれが。

しかもグググウ〜とか腹の音を鳴らしーの涎垂らしーのしてんのに、俺とシチューを視線で行ったり来たりするだけで手を付けない。

良く良く観察してみると……こりゃあ人を信じきれてない目だねぇ。

まぁ、あのボロ布一枚とか服の下の傷からして、間違い無くこの子は奴隷の様な扱いを受けてきたんだろうなぁ。

……体に染みついた恐怖で善意も疑って掛かっちゃうのね。

ならばーと俺は匙を一つ取り出し、その匙で目の前によそってあげたシチューを掬い上げ、目の前でパクリ。

 

「あっ……」

 

「むぐむぐ……んー、デリシャスだねー♪」

 

「……ごくっ」

 

目の前で美味しそうに食べてあげるとアラ不思議、さっきまでの警戒心が薄れて涎の量が倍増。

このシチューの中に毒が入ってないのが分かったからかな?

まぁとりあえず、俺は笑顔で俺が使った匙を差し出して、匙を凝視する少女に声を掛ける。

 

「今使った匙で悪いんだけどね……シチューにも匙にも毒は無いよ?」

 

「ッ!?な、んで……?」

 

「そりゃまー、あれだけ怯えてたら分かるよん」

 

「い、いや。そうじゃなくて……」

 

「んー?」

 

何を伝えたいのかな?っていうかちょっとさっきの俺の台詞ズレてんじゃん!!恥ずかし!!

自分の予想と外れてて恥ずかしいけど、顔にはおくびも出さない。

頑丈な表情筋をありがとう、お母さん。

首を傾げていると、少女は不安そうなよーな表情で目を背ける。

 

……あっ、そっか。

 

「ダイジョブ!!お兄さんは小さい女の子の裸なんて何とも思ってなごゥえっぷ」

 

「そ、その事でも無い!!」

 

おかしい。グッドサインと笑顔はラブ&ピースの証じゃ無かったっけ?

何故に返ってきた返事が水月蹴りなの?

足の指先を抉りこむとか、的確過ぎるよガール。

変な声が出ちゃった俺だけど、少女は顔を少し赤くしながら咳払いして口を開いた。

ねぇ待って。俺の状況うずくまってんだけどそれはスルー?

やっべぇ油断しすぎたよ。

 

「何故、私を助けた?私は赤の他人だぞ?」

 

あっ、スルーですかそうですか。

とりあえず痛みも引いたので座り直し、俺は少女と向かい合う。

 

「な、何故って言われてもねぇ……普通にさぁ。傷だらけの少女を見つけて放置、なんてしないでしょ?」

 

「……普通、なのか?」

 

「え?逆に聞くけど、君はそんな時に見捨てるの?」

 

「ッ!?そ、そんな訳無い……あっ」

 

「そーいう事。世の中普通の人ならして当たり前の事をしただけ。だから気にしなくていーよん」

 

まぁ、状況というか、手持ちの薬とかも充分だったから助けられたんだけど。と付け加えて、俺は鍋のシチューが焦げ付かない様にお玉で掻き混ぜる。

そして、俺の目の前に立ったまま俯く少女にシチューの皿と匙を再び目の前に出す。

持ってきた干し野菜と、今日の依頼の時に森で採った山菜。

それと村で買ってきたジャガイモやさっき採ってきた兎肉と具沢山のシチューに、また少女のお腹の虫がグーグー。

 

「まずは腹ごなしをしてから、だねー……大丈夫。ここには君に酷い事する奴は居ないから、さ」

 

「ッ!?……ッ!!」

 

少女は俺の言葉に感極まった様に顔を歪ませると、受け取ったシチューを貪る。

まるで何日も物を食べていない浮浪人のようにがっつく少女。

その様子を見ながら、袋からチーズの味がする小麦、チーズ麦で作った柔らかいパンを一切れ取り出す。

 

「シチューでふやかして食べたら美味しいけど、食べるー?」

 

「はぐはぐッ!!た、食べるッ!!」

 

「はいどーぞ」

 

「ッ!!あ、んぐっ!!はぐはぐッ!!」

 

「お代わりもあるけどどうかしらん?」

 

と、軽い調子で言えば、ズビシッと勢い良く突き出される空の食器。

その拍子にシチューのルーがピピピッって俺の顔に飛んだ気がせんでもないが、気にしなーい。

やっと警戒心を解いたのに怒っちゃ逆効果だしねー。

そうやってシチューを掻き回しながら、偶に要求されるパンとシチューのお代わりを出す事数回。

少しづつ、少女の食べる手がスローになり、体が震え始める。

 

「……あった……かい……」

 

そう呟く少女の声は涙声で……左目からポロポロと零れる雫が、地面を濡らした。

 

「あった、かくて……美味じい゛……ッ!!」

 

「……そっか……良かった……好きなだけお食べ」

 

静かに泣く少女になるべく優しく声を掛け、俺は新しいパンを彼女に差し出す。

パンを受け取った少女は、涙と鼻水で汚れた顔を上げて、俺と視線を交わし――。

 

「……う゛ん゛ッ!!」

 

それでも尚、とても綺麗な笑顔を見せてくれた。

 

うんうん、偶にはこーいう報酬も悪くないね。

本当に嬉しそうに食べる少女の笑顔に癒されながら、俺は自分の心が軽やかになるのを感じていた。

 

まぁぶっちゃけぇ!!もう食材尽きちゃったんだけどねー!!

 

とまぁ、俺は表情にはおくびにも出さず、心の中で涙するのだった。

 

彼女の笑顔。俺の涙。プライスレス。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「さてさて。お腹も膨れて落ち着いたとーこーろーでー。自己紹介なんかしちゃったりしちゃっても良い?」

 

「あ、あぁ。というか、普通はまず先にするんじゃ……」

 

「チッチッチ。こーまかい事は気にし・な・い・の・?」

 

「わ、分かった……」

 

さて、食器も鍋も、ついでに袋も空になっちゃった所で、お互いの自己紹介タイムでござんす。

ランタンに火を灯した洞窟で向かい合う形で座る俺と少女。

まぁ俺は入口側なので、吸い始めたタバコの煙が少女の方に向かわない様に時折外に顔を向けてるけど。

 

「ふしゅうー……さて、俺の名前はユーキ・ヤスダ。仕事帰りにここで野宿しようと思って立ち寄った魔導士だよん」

 

「わ、私はエルザ……エルザ……スカーレット」

 

ふーん?ファミリーネームが髪の色と同じ、ねぇ……まっ、深くは聞かないでおきましょ。

まーた悲しそうな顔させるわけにもいかないし。

 

「おっけー。じゃあエルザちゃん、聞きたいんだけどー……これからどうするの?」

 

「ッ……」

 

「まぁ、深くは追求しないけど、さ。行くトコ無いんじゃないかなって」

 

「……」

 

面倒くさいの抜きで核心を突くと、エルザちゃんは俯いて無言になってしまう。

さすがに、あんなボロボロの姿で浜辺に打ち上げられたエルザちゃんに「両親は?」なんて間違っても聞けないし、ね。

だからなるべくソフトに聞いてみたけど、この質問にも芳しくない表情を浮かべてる。

うーん……さすがに引き取る、なんて子供の俺にも出来ないし……まっ、いざとなったら方法はあるんだけど。

とりあえずはエルザちゃんの答えを待ってみようと、俺は彼女が話すまでゆっくりとタバコを堪能していた。

 

 

 

「……((妖精の尻尾|フェアリーテイル))」

 

 

 

「……ひょ?」

 

「魔導士ギルド……((妖精の尻尾|フェアリーテイル))……私は、そこに行きたい」

 

やがてゆっくりと静かな口調でエルザちゃんは言葉を紡ぎ、出てきた言葉に今度は俺が驚いた。

え?((妖精の尻尾|フェアリーテイル))に行きたい?

俺が驚いた表情で首を傾げていると、エルザちゃんは目を見開いて俺に詰め寄ってきた。

 

「ッ!?もしかして、貴方は((妖精の尻尾|フェアリーテイル))を知っているのか!?」

 

「え?いやその……」

 

「た、頼む!!((妖精の尻尾|フェアリーテイル))までの道のりを教えてくれ!!私は……私には、もうそこしかないんだ……ロブおじいちゃんが教えてくれた、外の世界……私には、もう……」

 

ロブっていう人の名前?らしーものを呟いたエルザちゃんはまた泣きそうな顔になってしまう。

話しぶりからするに、長い奴隷生活でここが何処なのかも分からないんだろうねぇ……でもさー。

 

「じゃあ、連れてってあげよーか?」

 

これってすんごい偶然じゃない?

 

「……え?」

 

「いやねー。一気に話されちゃって言う暇無かったんだけどさーあ」

 

呆然とするエルザちゃんに微笑みかけながら、DEATHと書かれた方のジャケットを捲る。

ジャケットの下、腕の素肌に刻まれた黒色の”妖精”を象った紋章をエルザちゃんに見える様に掲げて一言。

 

 

 

「ドモドモ。フィオーレ王国マグノリアのギルド。((妖精の尻尾|フェアリーテイル))所属の魔導士、ユーキ・ヤスダだよ〜ん」

 

 

 

俺、実は((妖精の尻尾|フェアリーテイル))の一員だったんだ。

そう、この世界はあの大人気魔法バトル漫画、FairyTailの世界なのです。

俺も最初は全然気づかなかったんだけど、まぁ俺と((妖精の尻尾|フェアリーテイル))加入の物語はまた何時かって事で……。

未だに事態が飲み込めないでポカーンとしているエルザちゃんに微笑みながら、手を差し出し――。

 

「((妖精の尻尾|フェアリーテイル))はどんな奴でも受け入れる。だから、君が望むなら連れてってあげるよん……この世界で一番あったかい((ギルド|家族))へ、さー♪」

 

朝日が立ち昇る早朝に、新たな家族を迎えるのであった。

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

さて、俺の転生特典が『ソウルイーター』の世界の武器や技、そして技術に乗り物の一部という時点でお気付きだと思う。

俺が今乗ってるのはソウルイーターの登場人物の一人、ジャスティン・ロウが運転してたスペシャルチューンの四輪バギーだ。

何でバギーに拘るかって?ハンドルがバイクなんだからバギーだよ。そこは譲れない。

まぁしかし、この世界ではガソリンなんてモノは無いときてる。

だからこのバギーは魔力を燃料として動いていたりすんのよこれが。

この世界では一般的に魔導四輪って言い方されてる乗り物だね。

魔道四輪やバイク、つまり魔導二輪はまだ市場に出回ってないんだけど、このバギーは俺が一から作ったって事でゴリ押した(笑)

まぁ分解整備してる内に構造は把握したからやろうと思えば出来るし、あながち嘘じゃないでしょ?

 

 

話を戻すけど、このバギーは運転手の魔力を使って動くので、運転手から魔力を吸うS・Eプラグってのが付いてる。

これを腕に刺して魔力を充填する訳。

けーどねー。これじゃいざって時に魔力足りないーって事にもなりかねないのよ。

だから、俺は稼いだ金と睡眠時間をつぎ込んで、こいつを更に強化しちゃった。

こいつはS・Eプラグともう一つ、燃料として魔力を充填出来る水晶、((魔水晶|ラクリマ))を搭載したSPECIALなマスィーンだったり。

 

 

だーから魔力の消費を考える必要もいざってときまでは無いし、重たい棺桶トレーラーだって運べる。

 

 

但し、欠点としては……。

 

「ごめんねーエルザちゃん。このバギーって一人乗りなんだー」

 

運転席のみという、タンデムが出来ない仕様なのだ。

なので、エルザちゃんには申し訳ないんだけど……。

 

「……オイ。待てコラ――だからといって”この中”は無いだろう?」

 

後ろの棺桶トレーラーに入ってもらうしかなかったり?

エンジンを掛けて後ろに連結し直した棺桶トレーラーの隅に道具を寄せて、その真ん中でお行儀よく手をお腹の上で組んで寝転ぶエルザちゃん。

しかーし、その表情はアリアリとした不満に満ちてる。

俺はそんな不満たらたらのエルザちゃんと視線を合わせながら――。

 

「…………はい?」

 

「いやどう考えても聞こえてるだろう」

 

聞こえなーい。俺にはなぁ〜んにも聞こえなーい。

 

「そんじゃま、ササッと行っちゃおっか!!((妖精の尻尾|フェアリーテイル))に〜」

 

「おいちょっとまっ――」

 

「はいドアばたんの鍵ガチャン!!」

 

文句を言おうとしてたエルザちゃんの言葉を無視して棺桶クローズ。

そんで鍵ガチャンっと。

何か内側からドンドンって音がするけど問題無し。

俺は素知らぬ顔でアクセルを捻り、バギーで次の街へと向かうのだった。

どーでも良いけど、これって前世じゃ誘拐に入るんだろうか?おまわりさん私です。

 

 

 

そんでまぁ、次の街でエルザちゃんの服を買ったり使った薬や食料の補充をしたりと大忙し。

 

 

 

戻って棺桶を開けたら即座にテンプルに叩き込まれる鋭いフック。良い拳してんじゃないの。

まぁそんなこんなでエルザちゃんの薬を変えたり服をプレゼントしたり。

途中遭遇した盗賊をバギーで引き飛ばし全治6ヶ月の刑に処したり途中の宿でエルザちゃんに請われて換装魔法を教えてあげたりする日々。

え?途中変なのが混ざってた?キノセイキノセイ。

 

そしてあの浜辺での出会いから凡そ3日後の昼過ぎ。

 

俺は愛するマグノリアのギルド、((妖精の尻尾|フェアリーテイル))に帰還した。

ギルドを出て大体1週間ぶり、ってとこだね。

まぁ特に変わり無く、騒々しい喧騒がここまで聞こえてくる。

うんうん。やっぱ((妖精の尻尾|フェアリーテイル))はこうでなくちゃーねぇ。

 

「よいしょっと。着いたよエルザちゃん。ここがフェアリーテイ……ありゃ?」

 

「すぅ……すぅ……むにゃ……」

 

と、棺桶の蓋を開けてみればあら不思議。

そこには俺がプレゼントしたゴスロリ服に身を包んで、まるで遺体の様なポーズで安らかにお眠中のエルザちゃんの姿が。

そーいえば昨日の夜中から今日の朝まで換装魔法の練習してたんだっけ。

そりゃ眠ってても仕方無い、か。

 

「うーむ……しょーがない……このまま連れてっちゃおっか」

 

寝てる所を無理に起こすのもアレだし、よいっしょっと。

棺桶の中の調理器具とかの袋を避けてバギーの運転席に積み込み、台座から棺桶を取り外して担ぐ。

むっ、ちょっくら俺じゃ背丈が足りないな……しょーがない。

 

「換装。死神様っと……うん。これでオッケー」

 

背丈が伸縮自在な死神様の影を伸ばして、棺桶を引きずらない様に浮かしてギルドの扉をOPEN。

 

「ウスウスウィーッス!!おぉ〜つかれさぁ〜ん!!」

 

「おっ!?ユーキが帰ってきたぞー!!」

 

「よー!!早かったじゃねーか!!」

 

「おかえりー!!」

 

「つーか、何で死神モード?」

 

「それ以前に棺桶担いでくんなよ!?」

 

「不吉過ぎるわ!!」

 

「あぁ……棺桶に入れられて、連れ去られてみたい?」

 

「アンタ脳みそ大丈夫!?」

 

扉を開けて挨拶すれば、そこらかしらから返ってくる労いのお言葉。

これが((妖精の尻尾|フェアリーテイル))の魔導士達。

何時も陽気で気の良い家族の様な奴等なんだよねー。

 

「ユーキ!!もう帰ってきたのか!?ゴリアン25体の討伐なんてしてきたのに早すぎだろ!!」

 

「ん?おぉ、グレイ君じゃなーい。相変わらずの脱ぎっぷりだねぃ」

 

「あわわ!?しまったぁ!?」

 

何時も通りパンツ一丁の格好でにこやかに話しかけてきたグレイという黒髪の少年。

本人は自覚の無い重度の脱ぎ症なのです。

今、俺が指摘して初めて気付いたーって驚いてるし。

 

「おう!!帰ったか、ユーキ!!」

 

「ちゃ〜す。今戻ったよ〜マスター」

 

と、俺の姿に気づいてカウンターの上に胡座で座ったまま声を掛けてきた小柄な老人。

彼こそがこのギルド、((妖精の尻尾|フェアリーテイル))の三代目マスターのマカロフ・ドレアー氏。

俺達を纏めるマスターにして、人間として尊敬できる人物……なんだけど。

 

「モリバルカンの討伐、ご苦労じゃったのう」

 

「いやいや。あれぐらいチョチョイのチョイだけどさー、ウェイトレスの尻を見ながら言うの止めて。俺こっちだからー」

 

「うむうむ!!よーやってくれた!!」

 

「マスター俺こっちだよー?かーのじょのお尻に俺居ないからねー?」

 

スケベにも程があるんだよねーこの人。

遂には俺の言葉でお尻を見られてるのに気付いたウエイトレスが怒ってマスターの視界から消えたことで、やっと視線がこっちに向く。

まぁため息のオプション付きだけど。

寧ろため息吐きたいのはこっちなんだけどなー。

 

「な〜んじゃい、折角の楽しみを……って、お前さん何で棺桶なんぞ担いでおる?」

 

「あーこれ?そーいえば言うの遅れちゃった」

 

と、俺に視線が向いた事で漸く俺の担いでる棺桶を疑問に思った様だ。

ドスン、という重たい音を立てて床に置かれた棺桶に周りの顔馴染み達も「何だ何だ?」と視線を向けてくる。

 

「いやねー。日頃お世話になってるマスターにお土産を、って思ってさー」

 

「なんと!?くうぅッ!!な、泣かせてくれるじゃねえか……ッ!!」

 

「まーあれよ?マスターがどんだけスケベでだらしないじーさんでも、尊敬してるからねー。お土産の一つくらい当たり前じゃない♪」

 

「うっうぅ、そうかそう、あれ?今わしディスられた?さらっとディスられてね?」

 

「そんな訳でー!!サクッと開けちゃおっかー!!」

 

「お、おおう。で、何を持ってきてくれたんじゃ?」

 

「あ、気になるー?」

 

「当たり前じゃろう。気になって酒が進んどるわ」

 

あーあーそんなカポカポ飲んじゃって。

まぁ別に良いけどさ。

 

「じゃーん。浜辺で拾ってきちゃったー♪」

 

「ング?」

 

「むにゃ……」

 

「ぶっふうぅうううううううううううううううううううううううッ!!?」

 

『何拾ってきたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?』

 

「……むにゃむにゃ」

 

中に寝かされていたゴスロリ姿のエルザちゃんを目撃して、酒を豪快に吹き出す。

周りで俺達の様子を見てたギルドのメンバーもマスターのリアクションに騒然としてるではないか。オッカシーナー?

しかしエルザちゃん、この騒ぎの中で身じろぎ一つせずに静かに寝てるなんて……やるじゃない。

 

「ぶっぶほっ!?ごほごほ、げえっふぇあ!!――な――なんちゅうもんを拾ってきとんじゃお主はぁああああああ!?」

 

「可愛いっしょ?これって俺がこーでぃねーとしたんだけど、どう?」

 

「話聞いてる!?ねぇ話聞いてる!?ここで爆走されるとおじーちゃん困っちゃうんだけど!?」

 

にゅっふっふ。やっぱギルドで巫山戯るのは最高だねぇ。

打てば響くツッコミの嵐。

さすがギルドマスター、こーゆうところは素直に尊敬しちゃう。

 

「あれ?何か今、わしの株が一気に下がったよーな?」

 

と、まぁ悪巫山戯も程々にしておいて、マスターに聞こえる様にだけ、エルザちゃんとの出会いを話す。

最初は訝しんでたマスターだけど、ロブって人の名前が出てきたら目を見開いて驚いた。

 

「この娘は確かに、ロブに教えてもらったと言ったんじゃな?」

 

「うん。確かにそ〜言ってたよ?」

 

「そうか……ロブの奴か……」

 

「知り合い?」

 

「ワシの友であり、嘗て((妖精の尻尾|フェアリーテイル))に所属していた男じゃ。魔力が枯れて引退しちまったがのう……」

 

どうやらロブなる人物は俺の先達だったらしく、マスターは懐かしそうにヒゲを擦る。

 

「んぅ……あれ?……ここは?」

 

「おっ、目が覚めた様じゃぞ?」

 

「だねー。おっはろーんエルザちゃん。どーよ調子は?」

 

やっと眠りから覚めたゴスロリ姫に声を掛けると、何故かエルザちゃんは俺を視界に捉えるなりビックゥ!!と驚きながら身構えた。

……え?何故にWHY?

 

「ユ、ユーキか……脅かさないでくれ」

 

「ほえ?今のどっか驚く要素があった?」

 

「……そ、その衣装は……ちょっと、な」

 

と、俺と目を合わさないようにしながらそんな事を仰る。

あぁ、そういや初めてこの衣装を見た時に気絶したんだっけ。

すっかり忘れてたぜい。

 

「まっ、その辺は置いといてぇー。エルザちゃん、このちんまいスケベっぽいじーさんが、((妖精の尻尾|フェアリーテイル))のギルドマスターのマカロフさんだよ〜ん」

 

「お主本当にワシの事尊敬しとるの?」

 

ちょろっと涙目っぽくなってるマスターは放置してエルザちゃんの動向を見守りましょう。

棺桶からゴスロリ服に片目眼帯というレベルの高い美少女が出てきたもんで、酒場の奴等がやかましい。

とりあえず大事な話してんだから散った散った、と全員追い返した所で、お話再開。

やがて目の前のじーさんがマスターだと気付いたエルザちゃんは居住まいを正し、マスターに頭を下げる。

 

「は、初めまして。エルザ・スカーレットです……あ、あの……私、ロブおじいちゃんにこのギルドの事を聞いて、そ、それとユーキに出会って……」

 

「あぁうむ。大体の事情はユーキから聞いておる。お前さんが((妖精の尻尾|フェアリーテイル))に入りたいと言うなら、ワシは歓迎するよ」

 

「……」

 

まだ何も話していないのに歓迎すると言われて、エルザちゃんは信じられない様な目でマスターを見る。

しかしそんな視線を受けても、マスターはニヤリと笑ったまま動じない。

そしてマスターの目には、とても深い優しさの光が感じられた。

 

「ギルドは……身寄りの無いガキにとっては家みたいなものじゃ。このギルドにも何人かそういう奴がおる」

 

俺達の話に混ざらず、何時の間にか元の喧騒を醸しだした酒場を見渡しながら、マスターは続ける。

俺も全員の過去を知ってる訳じゃ無いけど、((妖精の尻尾|フェアリーテイル))のメンバーは皆何かを抱えてるんだよねー。

でも、そういった辛さとかも全部飲み込んじゃう様な暖かさが、ここにはあった。

俺は特に何も抱えてないけど、この喧騒と雰囲気が好きだから、このギルドに入った口だったり。

 

「((妖精の尻尾|フェアリーテイル))は居場所を求める者が居るなら、それが例え悪人でも受け入れる……その者がギルドに仇なし、ギルドの仲間……家族を傷つけない限りはな……」

 

「……家族」

 

「そう、家族じゃ……((妖精の尻尾|フェアリーテイル))はお前さんを受け入れよう。今日からここが君の家であり、ギルドの仲間は君の……家族じゃ」

 

呆然とするエルザちゃんに対し、マスターはニカッと笑いながら言葉を紡ぐ。

マスターってば、一々かっこいい事言うよなー。

それからマスターは俺に視線を向けてきたので、俺は頷いて酒場の喧騒に向かって声を張り上げる。

 

「はいはぁ〜い。皆ちゅうもぉ〜〜く!!」

 

俺の掛け声に皆は「なんだなんだ?」とか「喧嘩か?」なんて言いながらも体ごと俺達の方に向き直る。

これで用意は整ったのでマスターに目を向ければ、マスターはコップを片手にカウンターの上に立つ。

それでマスターから話があると分かったのか、皆の喧騒も次第に収まっていく。

そして静かになった所で、マスターは咳払いを一つ。

 

「うぉっほん!!えー、さて。今日からこの((妖精の尻尾|フェアリーテイル))に新しい仲間が増えた!!ついてはめでてぇって事で――」

 

そこで言葉を切ったマスターはコップを掲げる。

その動きで納得した者達も笑いながら次々とマスターに倣ってコップを掲げた。

勿論俺もウェイトレスから受け取ったコップを掲げてます。

まだこのギルドの事を知らないエルザちゃんは一人「え?え?」と混乱中。

 

 

 

そして、マスターはコップを掲げたままニカッと微笑み……。

 

 

 

「我らがギルド、((妖精の尻尾|フェアリーテイル))の新たな家族!!エルザ・スカーレットに!!」

 

 

 

『かんぱぁあああああああああい!!!』

 

 

 

俺達の新たな家族を祝福した。

マスターの音頭に従って杯を掲げた皆は思い思いに騒ぎ、飲んで食って喧嘩をおっ始める。

そんなギルドの様子を見てポカーンと口を半開きにしてるエルザちゃん。

あーらら。主役が置いてかれちゃってんじゃないの。

 

「おーいエルザちゃん。大丈夫?」

 

「あ、あぁ。大丈夫だが……何時も、こうなのか?」

 

「んー。まぁその場のノリかな?騒ぎたい時は何かしらお題目掲げて騒ぐ連中だし」

 

「そうか……」

 

「あっ、でも皆エルザちゃんの事に無関心って訳じゃないよん?仲間が増えた事が嬉しいのはホントだから、さ」

 

「それは分かる。皆……本当に嬉しそうな顔だからな」

 

と、騒いでる連中の顔を見渡して、エルザちゃんは小さく微笑む。

まっ、この調子なら直ぐに馴染めるだろーね。

俺はウェイトレスのお盆からコップを一つ頂戴して、エルザちゃんに手渡す。

いきなりコップを渡されて戸惑うエルザちゃんに、死神様の衣装を別空間に戻して、俺もニコッと笑った。

 

 

 

「それじゃ、俺からも改めてぇー……((妖精の尻尾|フェアリーテイル))にようこそ。これからよ〜ろしくねぇ、エルザちゃ〜ん♪」

 

「……ああ!!よろしく頼む、ユーキ!!」

 

「じゃ、かんぱぁ〜い♪」

 

 

 

言葉の意味を理解してくれたエルザちゃんも、微笑みながら差し出したコップに自分のコップをぶつける。

そのままコップの中身に二人同時で口を付けてグイッと飲み干した。

 

 

 

 

 

「――酸っっっぱぁああああああああああああ!!?そ、それに痺れれれれれれ」

 

「あっ、それ果汁100%のシビレモンサイダーだったわ」

 

 

 

 

間違えて大人向けドリンクを渡しちゃって喉を抑えて転げ回るエルザちゃんに、軽い調子で謝る俺であった。

ちなみに完全回復したエルザちゃんにガゼルパンチを貰う事になるのはまだちょっと先のハ・ナ・シ・?

 

 

 

-3ページ-

 

 

 

後書き

 

 

さて、脳みそ溶かしてどこまでいけるか……いっちょいってみよーかwww

 

 

 

説明
EP1〜拾っちゃいました♪
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
4750 4387 5
コメント
海平?さん>超絶不定期更新ですけどwww(piguzam])
いつの間にか新作が来ていた(  Д ) ゚ ゚!!?これは楽しみにせざるを得ない(海平?)
ドゥルジさん>差し入れドモです(腹の中でコジマ炸裂口元血塗れ)まぁこの作品は超・不定期更新作品なのでバランス良く他の作品も頑張りまっすwww(piguzam])
死神様かあの人ナチュラルにチートキャラじゃなかったか?(・・;)勝てるやつそうそう居ない気がす(ギャグ補正的な意味でも)、しかしpiguさんよ、作品増えてきたけど更新大丈夫かや?(・・)ワシャエタらんかったら構わんがの(むしろ楽しみが増えてありがたいw)とりあえずコジマ汚染を広げながら楽しませてもらいますか。あ、これ久しぶりの差し入れです、受け取ってくれぇ!(`・Ο・)ノΞ●~*←コジマ爆弾おにぎり(ドゥルジ)
ディアーリーズさん>私ファンタジーも好きでしてwww(piguzam])
ソウルイーターにFAIRYTAIL…僕得のクロスキタコレ!!(ディアーリーズ)
Type_002ptさん>やっぱ頭溶かして読める方が良いッスよねwww(piguzam])
ふ、ふ麩府不負腐フヽ(´ー`)ノ……又々面白いのを書いてくれおってからに………オモシレーじゃねーか!!!ドチクショ〜〜〜!!!!(Type_002pt)
プロフェッサー.Yさん>えーそんなこたぁ無いっすよ?ジョジョ二人は……まぁやってるけど、元次君してないし、他の短編主人公は……あっ、結構な頻度でおるわww(piguzam])
げんぶさん>棺桶を運ぶ際、身長が足りなかったからDEATHwww(piguzam])
XXXさん>一体誰が頼んだのダロウナー?(piguzam])
…今更感が半端ないがどうしてこの作者の描く主人公は何度ボコられてもヒロイン弄りを止めない奴ばかりなんだろうwww(プロフェッサー.Y)
うわぁ…100%はキッツいわぁ…(XXX)
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