真・恋姫SS 【I'M...】12話
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「り…琳音さん!!」

 

敵と味方が入り乱れた戦場の中、一刀はさけぶ。

だが、その声も雨や兵の声によってかき消され、それが向けられた相手へ届くことはなかった。

普段、女性としてみていた琳音が修羅のごとき戦いをみせる。

まったく隙など見せず、一度に3人は相手にしながらも、次の狙いを定める。

銀色の刃が描く円形の軌跡が雨に照らされ、美しくも見えた。

 

そんな姿に一瞬魅入られながらも、一刀は本来の目的を果たそうとする。

 

「くっ…」

 

足がずいぶん重く感じる。

ずっと走ってきたからか、それとも先程の事でなのか。

 

「死ねーーー!!」

 

「ちっ」

 

また、兵士が襲ってくる。

杖のように使っていた剣を前に構える。

…俺は死ねない。

そんな言葉が頭に浮かぶ。

死んではいけない。死にたくない。

だから…

 

「どけええええええええええええ!!!!」

 

ガキィン!!

 

「ぐわ!」

 

思い切り相手の剣に自分の剣をたたきつける。

覚悟しないといけないんだ。

覚悟して、相手を倒してでも、進まないといけないんだ。

 

一瞬鍔迫り合いのような形になるが、力はこちらの方が込められていた。

相手の腕が吹き飛ぶように体の後ろへ流れる。

振り下ろした剣を今度はそのまま突進しながら横薙ぎへ―――

 

「胴おおおおおおおお!!!!」

 

―――。

 

生々しい音を立てながら剣が相手の体にめり込む。

そしてその刃で腹を裂き、血があふれ出た。

 

極限状態というのはこういうのを言うのかもしれない。

あらゆる感覚が麻痺し、さっきまで吐き気がするほどだった光景が今では当然のように見下ろす。

敵が死んでいくのを見守りながら、自分がしていることを確認する。

こんな状況でなければ、一刀はすでに二人の人間を殺した殺人犯。

だが、それは現代での話。

この戦乱の中で彼が行ったことを誰が責められようか。

 

「………」

 

こんな状態でも昔から続けていた剣道が役に立つとは思わなかった。

無意識に胴なんて叫んでいるのが、今になって少しおかしくなる。

 

視線をあげ、今救うべき人に目を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

「はああああ!!」

 

ザシュ、ブシャァ、バシュッ!

 

独特の形状の刃を操り、何人もの兵を一度に葬る。

優しげな普段からは想像もつかない、残酷な武力。

彼女が死神と呼ばれたのはただ、その武器や、彼女自身が行ってきたことに基づいただけでなく、この武力を知るものがいたからかもしれない。

 

「でぇええい!!」

 

 

バシュ!、ザン!!

 

銀色の軌跡が赤色へと染まっていく。

血しぶきを上げながら相手を殺し続けるその姿はまるで舞いのようで

ひとつの美しさを現していた、

 

 

「はぁぁああ!!!…………………ぇ」

 

周りにいた兵士が全て倒れ、視界が開ける。

そんな中で、二人の視線が重なる。

それに気づき、一刀が歩を進めた。

 

「な…どうして!あなたがここにいるんですか!?」

 

やがてようやく声が聞こえる距離まで近づき、琳音が叫んだ。

 

「……琳音さんを迎えに来ました。」

 

「華琳はどうしたんですか…」

 

「その華琳と約束したんだ。あなたをつれて帰るってね」

 

「………………戻って」

 

琳音は少しうつむき言葉を続けた。

 

「…戻ってください、一刀さん。華琳と…にげて…」

 

「逃げるなら、琳音さんも一緒じゃないとだめだよ」

 

「私は……………」

 

ドドドドドドド

 

二人の間に流れる一瞬の静寂は、その地鳴りによってかき消された。

あまりに大きなその音はそれまでのふたりの会話をなかったものにするように注目を集める。

何…と琳音がつぶやくと、伝令が入った。

 

「袁成の軍が進軍方向を変え、陶謙へ突撃をはじめました!!」

 

 

 

 

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/another side

 

「伝令!!袁成軍がこちらに向かって進軍してきます!」

 

「な、なんだと…、どういうつもりだあの女…っ!」

 

苦痛の表情を浮かべつつ、陶謙はひねり出すようにつぶやいた。

この状況で袁成が進路を変える理由など、ひとつしかない。

だが、その事実は彼にとって認めがたいものであり、受け入れるには彼の器はあまりに小さい。

 

陶謙がその事実を認めるまでに、袁成はさらに軍を進め、ついには陶謙軍との接触を始めた。

 

味方が突然敵に回ったことで、陶謙の兵達は混乱に陥る。

 

 

 

 

「はっ!」

 

ザシュ!

 

「ぐわぁ!!」

 

金色の剣が次々と兵をなぎ倒す。

 

「敵が混乱している今が好機だ!一気に押し切るぞ!!」

 

さっきまでの弱気を振り切るように、袁成が叫ぶ。

これは好機なのだと。

襲い掛かってくる兵を倒しながら、彼女自身迷いをなくしたかったのだろう。

これが、自分のやるべきこと。自分の役割なのだと。

 

「………陶謙殿……やはり私には、あなたを認めることはできない…」

 

悲痛の表情を浮かべ、つぶやいた。

彼女にとって、陶謙のしようとしたこと、今自分がしたことは何も変わらない。

同じ、ただ命を散らせる行為。

だけど、それでも…

同じならば、どうせ同じことになるのなら、せめて…

自分の意思でその選択を選びたい。

それが君主というものなのだから。

 

進軍する馬上でそんな事を考える。

敵がいつ襲ってくるかわからないこの状況。

それでも、答えは出しておかなければいけなかった。

あの時は答えられなかったけど、今度はきちんと答えてあげたい。

 

「麗羽…」

 

―――あの娘に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーーーーーーーーほっほっほっほ!!さぁ、皆さん!わたくしについていらっしゃい!」

 

「麗羽さまーー、そっち逆です〜」

 

「…はぁ」

 

 

 

伝わるかは……また別の話……。

 

 

 

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「袁成様が!?」

 

「はっ」

 

伝令を聞いた琳音が声をあげて驚く。

元々穏やかな人だと思っていたが、だからといって誰かを裏切ったり、自分から攻め入るような人ではない。

 

「そうですか…」

 

聞けば、陶謙の軍がそれによって大混乱に陥り、一気に崩れ始めているという。

当然と言えば当然。

きちんと統制されていない兵など、一度崩れてしまえば脆く、立て直すのは厳しい。

 

「だったら、今のうちに!」

 

一刀が叫ぶ。この間に退けば、逃げ切れるはず。

そう、考えた。

 

「いえ、それは出来ません」

 

「な、なんで…っ!」

 

「これは…私達の戦いなんです。戦の前にあれほどの事を言っておいて、今更逃げたらどういう風評がつくと思います?私達のほうこそが臆病者ではないですか。それではダメなんです。今まで逃げてきた私達が、ここで留まり、戦う意味がないんですよ。」

 

「…意味…?」

 

「………戦に意味を求めるのは…おかしいでしょうか…。誰かを守るために、誰かを殺すのは…矛盾しているんでしょうか…」

 

「それでも…あいつはあなたを待ってますよ」

 

「………………」

 

「それに」

 

「―――え?」

 

「俺も琳音さんともっと一緒にいたいですから…だから、逃げてほしい。」

 

「…………………ふふ。こんな時によくそういうことが言えますね」

 

「??」

 

「いえ、いつの時代も男性が鈍いと言うのは同じなんですね」

 

「??そう…なんですか?」

 

「えぇ」

 

沈んだ顔が、少しはれたような気がした。

 

「伝令です!袁成より文が届きました!」

 

「袁成様から…」

 

文を受け取り、中を確認する。

 

中には『我々はこのまま陶謙を抑える。貴殿らは今のうちに撤退の準備をせよ』とあった。

 

「まったく…いい人が多すぎて困りものですね」

 

「あはは…」

 

「袁成様にまでいわれては仕方ないですね……退きましょうか」

 

ずいぶん楽しそうに負け戦を終えるものだ。と思わず考えてしまうほど、そのときの琳音の顔は明るかった。

 

 

 

 

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そして、数刻後。

 

その日の夜。

あれから、琳音たちは撤退を迅速に終え、無事帰還することが出来た。

だが、彼女に付き従っていた兵達は結局あの戦にて半数以下にまで減ったしまった。

それでも生き残れたこと自体が幸運だと言えるかもしれない。

しかし、当人達にとっては生き残れたことが幸運だったのか。それとも共に逝けなかったことが不運と感じるのか。

 

戦の終わりと同時に雨が上がり、夜空には星も見える。

晴れたおかげで別の邑へ移動するより野営しようという事になり、天幕を張って休息をとっていた。

明るい星空の下で俺は、今になって訪れた生の実感を噛み締めていた。

今でも手に残る、命を奪う感触。

思い出しただけで吐きそうになるが…それも、生きているからこそだ。

 

「ふぅ…」

 

「何たそがれてるのよ!」

 

バシィ!

 

「っっっってぇ〜〜……なんだ、華琳か…春蘭かと思ったぞ」

 

「ぅ……」

 

そこで黙るのはどういう意味ですか、華琳さん?

 

しばらくどちらとも話すことなく、沈黙が続いたが

 

「ありがとう…」

 

華琳の言葉でそれは破られた。

 

「ん??」

 

「約束守ってくれたわね」

 

「それは華琳もおなじだろ?」

 

「そうだけど…でも、あなたの方が、つらかったでしょう?」

 

「そんなことないさ」

 

本当は死ぬほど大変だったけどな。

いや、実際死にそうになったし。

 

「…………」

 

「…ふぅ。琳音さんとは、もう話したのか?」

 

「うん。さっきまで話してたわ」

 

「そか…。よかったな」

 

ポンと華琳の頭のに手を載せて。

 

「うん…」

 

俺の服をつかんで華琳が答える。

 

「…………っ!!」

 

「一刀?」

 

―――ズキン!!!

 

「ぐ……ぁ、ぁ……なん…で…」

 

突然あの頭痛が来る。

どうして――

それしか頭に思い浮かばない。

 

ドサ…

 

あまりの痛みに膝を突いてしまう。

 

「一刀!?かずと!!ねえ、かずと!」

 

華琳の呼び声にも反応できず、痛みに耐えるしかなかった。

 

 

―――ズキッ!!

 

「ぐぁぁ…」

 

痛みが走るたびに今までみた夢が一気に頭の中に流れる。

 

『お前のせいだ!』―ズキン!

『何が…天の遣いよ…』―ズキン!

『逃げて!』―ズキン!

『お母さん!!おかあさん!!』―ズキン!

『ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…』―ズキン!

『もうすぐ…終るから…』―ズキン!

『だから…』―ズキン!

 

 

―助けて…―

 

 

だから、助けただろ?

偶然が重なっただけかもだけど…もう、お母さんはそこにいるじゃないか。

 

―助けて…―

 

もう、大丈夫だって…

生きられたんだよ。

ちゃんと生きてるよ…

 

―助けて…―

 

ちゃんと、生きて…

 

「一刀…っ!」

 

………いき…て…

 

 

…………。

 

 

ポツポツ…

 

 

ザァァァァ…

 

 

―…時間が…きちゃった……………ごめんな…さい……―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―曹嵩天幕。

 

 

 

「すまぬな、曹嵩殿」

 

「あらあら、ずいぶんご丁寧な刺客さんですね…」

 

 

 

 

説明
12話です。
最近更新が遅くてすみません(´・ω・`)


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コメント
どこまでも・・・・来てしまう運命か・・・・よ・・! どうなるんだ!(Poussiere)
ようやく逃げ切ったと思ったところへ刺客!? 次回の展開はいかに!(cheat)
終わってなかったのか!?次がどうなるか気になる展開です!!!(フィル)
運命はどこまで一刀を翻弄するのか・・・・曹嵩の運命は?(ブックマン)
まだ運命は変わっていなかったのか・・・ さてさて次回どうなるか期待ッスねwww(狐狗狸)
をを! 此処に着ての急展開!? さぁ、一刀君如何する!?(タンデム)
な・・なんだこの急展開は!!気になる!!!(PANDORA)
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真・恋姫無双 I'M... 華琳 一刀 

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