寂しがりやな覇王と御使いの兄 最終話前編
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三ヶ月

 

 

一刀や軍師達が同じ見解を示した袁紹軍との決戦の日取り

決戦の地は曹操・袁紹の因縁の地でもある”官渡”

 

史実で”赤壁の戦い””夷陵の戦い”と共に三國志の時代の流れを決定付ける重要な戦いに挙げられる

 

奇しくも天下を巡る最終決戦が官渡の地で行われようとしている

 

 

袁紹陣営

 

 

盧植「盧植及び董承、ご命令により参上いたしました」

 

顔良「あたいと斗詩もいるぜー」

 

陳宮「待ってたのですぞ、お前達!」

 

董承「陳宮殿、なぜ袁紹様の幕舎では無く、この小娘達の幕舎に集まったのだ」

 

 

地和(誰が小娘よ!このおっさん!)

 

天和(お姉ちゃんこいつらきら〜い)

 

人和(天方姉さんとちぃ姉さん抑えて、いまはまだ反抗したら駄目!)

 

地和(人和はむかつかないの!?)

 

人和(確かに腹は立つけど、私達の目的は三人無事に一刀さんと会うこと、だからいまは抑ええて)

 

地和と天和は董承の発言に暴れそうになるが、いま暴れては自分達の身の安全が危うくなる。

人和は必死に2人を諌める。三人は自分達の中に眠る微かな記憶・・・内容は思い出せずとも、とても心が安らぐ記憶・・・

この記憶を頼りに三人は歌い続けていた、しかし一刀と会合を果たす前に陳宮に目を付けられ捕らわれの身になってしまう。

記憶を取り戻した彼女達の目的・・・必ず一刀の下に帰る、これを成し遂げるためにも、いまは耐えるしかなかった

 

 

 

陳宮「敵は恐らく麗羽殿の幕舎付近に大勢の斥候を放ってるはず、そんな見張られているところで軍議を行うなんて馬鹿のすることなのです」

 

董承「では、なぜここで行うのですかな」

 

陳宮「少しは考えて欲しいものです。ここは本陣の中でも屈指の警備網を敷いているのです、こんな四方から見張られている場所に忍び込める間者なんて、一握りなのです」

 

顔良「麗羽様の本陣を囮にして、本命のこちらで軍議を行うですか。しかし、敵は張三姉妹を探していると聞きます。それに、敵方には甘寧・周泰と言った諜報員が控えています。私達が集まって気取られないでしょうか」

 

陳宮「顔良殿の発言も最もですが、むしろこの陣も敵を欺く”囮”なのです。曹仁・劉備・袁術・孫策等の連合軍が甘寧・周泰を用いるのは予想の範囲内。その2人が麗羽殿の陣で何も掴めなければ、警備が厳重のこの幕舎に忍び込むと踏んでるのです」

 

顔良「つまり、敵方に私達重鎮が張三姉妹の幕舎に集まって、密かに会議をしているという情報を持ち帰らせるのが目的だということですか」

 

盧植「奴らは甘寧・周泰の能力に全幅の信頼を寄せている、その信頼が仇となる偽報の計と言う事じゃ」

 

文醜「でもよ、なんでそんなまどろっこしい事するんだ?張三姉妹の居場所が知られたら、精兵が殺到するんだろ?奪われる危険が高まるだけじゃないのか?」

 

顔良「文ちゃんがまともに発言してる!?」

 

文醜「ひどいな斗詩〜私だって将だぜ?」

 

顔良「だって・・・普段の言動があれだから」

 

盧植「気持ちはわかりますがなのぉ〜文醜殿の疑問ですが、張三姉妹を餌にして敵軍を呼び込み、袋叩きにするのが目的です。むろん張三姉妹は会戦前に違う場所に移動してもらいます」

 

文醜「つまりだ、あたい達は何も気にせずに敵を打ち倒せばいいんだな!」

 

顔良「それはそうなんだけど・・・間違ってないから何も言えない」

 

董承「虚誘掩殺の計か、敵には名を馳せる軍師が多い、上手くいくだろうか」

 

陳宮「信じ込ませる演技も必要、騙し合いは既に始まっているのですぞ!」

 

 

陳宮達の話し合いが深まったある時、幕舎の周りを見張っていた兵が駆け込んできた

 

 

見張り兵「会議中失礼いたします、この幕舎の周りに擬態している者からの伝令です!甘寧及び周泰を目撃、こちらに向かって来ている模様です」

 

陳宮「やはり来ましたな、姿が見えない周泰は猫で釣ればいいという噂は本当だったのです」

 

盧植「お主は朱儁と皇甫嵩を呼んで参れ」

 

見張り兵「っは!直ちに!」

 

盧植「顔良殿と文醜殿は幕舎の外に控えてくだされ」

 

顔良「わかりました、私達が警備に出ることで、更に警備が厳重にと思わせる為ですね」

 

盧植「顔良殿は理解が速くて助かる、頼みます」

 

顔良「お任せください、行くよ文ちゃん」

 

文醜「へ〜い」

 

 

 

盧植「陳宮殿にしては珍しく受身で策を練りますな」

 

陳宮「兵力ではこちらが圧倒的とはいえ、将の質はかなり劣ってるのです。真正面からぶつかれば分が悪すぎるのです」

 

袁紹軍60万に対して連合軍は40万、兵力では圧倒しているが、陳宮の懸念は将の数と質の差だった

袁紹軍には2枚看板、漢の四名将、張?が居るが、連合軍の人材は袁紹軍の比では無い。

 

豪傑・知将がきら星の如く集結している連合軍に正面からぶつかるのは愚策。

よって陳宮が取るのは敵の性質を利用した偽報や攪乱や奇襲作戦、そして敵が疲弊すれば数の暴力で喰い破る

 

陳宮が反連合まで表に出てこなかったのは、各陣営の将の特長を調べつくし、来るべき戦いに備えての為だった

 

 

盧植「いくら勇猛な兵が居ようが、それを率いるのが凡将ならば意味が有りませんからな」

 

陳宮「そういう事なのです、盧植はこの会議が終わり次第、三姉妹を例の場所に移すのです」

 

盧植「承知」

 

 

 

 

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連合軍陣営

 

 

一刀「麗羽は総勢60万か、流石肥沃な河北四州(幽州・并州・冀州・青州)と徐州を支配してるだけあるな」

 

稟「名門の威光に惹かれる者もまだ多い、袁家健在と言ったところでしょう」

 

風「袁家に惹かれる者と、張三姉妹に惹かれて集まった若者、どっちが多いか気になりますねぇ〜」

 

桂花「それは間違い無く後者ね、張三姉妹さえ奪還出れきれば、戦況は一気に傾くわ」

 

華琳「問題はどうやって乱戦の中、張三姉妹を連れ出すかね。張三姉妹の居場所は特定できたのかしら?」

 

一刀「今思春と明命が袁紹軍を探らせてる、そろそろ戻ってくるはずだ」

 

詠「あの身軽で気配を隠すのに長けた2人なら、情報を持ち帰ってきてくれそうね」

 

一刀「出来れば俺も偵察に行きたかったんだけどな〜」

 

詠「馬鹿じゃないの!この大事な時に敵陣をうろつく君主がどこに居るのよ!」

 

一刀「ここに居る!」

 

詠「やかましいわ!いいからここに居なさい!」

 

 

いつもの一刀(ボケ)と詠(ツッコミ)といつもの光景が始まる。

どんなに成長しようと一刀はやはり一刀であった。

そして2人が漫才している時、偵察に向かっていた明命・思春が帰還してきた

 

 

 

明命「お取り込み中すみません、明命戻りました!」

 

思春「同じく帰還しました」

 

一刀「ご苦労様。早速で悪いんだけど、報告を聞かせてもらえるかな」

 

明命「本命の張三姉妹の居場所なのですが、袁紹軍本陣の一角に捕らわれている模様です。警備が厳重でして、接触する事は出来ませんでした」

 

華琳「明命と甘寧でも接触出来ないってどんな警備だったのかしら」

 

甘寧「幕舎の外には顔良・文醜、中には朱儁、皇甫嵩が入っていくのが見えました。陳宮・盧植・董承も中に居たと思われます」

 

朱里「なるほど・・・袁家二枚看板と名将が控えているわけですか」

 

雛里「現段階で実行は不可能。やはり奪還するとすれば、戦が始まってからになりますね」

 

稟「袁紹軍の陣容はどうなってますか」

 

思春「先陣に張?、顔良・文醜 中軍に皇甫嵩・朱儁・盧植・董承 後詰に袁紹・陳宮の陣容です。顔良達は作戦の打ち合わせと警戒を兼ねて、張角の幕舎に居たと推測します」

 

風「2枚看板と名将張?、その後ろに漢の四英傑が控えますか・・・・グゥZzzzzz」

 

一刀・稟「「寝るなあ!!」」

 

風「おぉう!面倒な相手なので、ついつい寝てしまったのですよ〜」

 

桂花「面倒な相手なのは認めるけど、うちらの人材見てみなさいよ」

 

 

ワンコ隊(呂布・楽進・関羽・周泰・典韋)を筆頭に、五虎将(趙雲・張飛・黄忠・馬超)魏の双璧・夏侯姉妹 虎痴・許?

 

白馬将軍・公孫讃 西涼の馬岱 著しい成長を見せた名門袁家・袁術 驍将・霞

 

呉の暗殺部隊・甘寧 呉の柱石・周喩、黄蓋 呉大都督の系譜を持つ陸遜・呂蒙

 

一刀直属の部下・李典、于禁 弓腰姫(孫尚香) 呉の大器(孫権)

 

魏の三軍師(荀ケ・郭嘉・程c)天下の伏龍・鳳雛(諸葛亮・?統)反董卓連合で大立ち回りを見せた董卓軍・軍師(賈?)

 

 

蜀の大徳・劉備 小覇王・孫策 覇王・曹操

 

 

そして・・・いまだ能力の底を見せない張勲

 

 

 

稟「負ける要素が見当たりませんね、劉備軍の程普、韓当、徐栄、魏延も一線級の豪傑です」

 

雛里「これだけ将の質が高ければ、兵法の基礎”敵より多くの兵を集める”を守れてなくても、戦力差を覆す事が可能です」

 

朱里「兵の調練も完璧です、打つ手を間違えなければ、負ける事はないと思います」

 

春蘭「私が居て負けるはずがなかろう!すぐに袁紹軍など蹴散らしてやる!」

 

張飛「そうなのだ!袁紹軍をぶっ飛ばして、幽州を取り戻すのだ!」

 

春蘭「お?言いこと言うじゃないか!気に入った!」

 

 

桂花「この脳筋達は全く・・・はいはい静かにして、いまから発表を言うわよ。一刀頼むわね」

 

一刀「あぁ、それじゃあ決戦の編成を発表する、一度から言わないからよく聞いてくれ・・・先鋒中央を春蘭・張飛・季衣・思春・韓当さん・桂花・詠の7名で率いてもらう」

 

春蘭「おー!私が先鋒とはわかってるじゃないか!」

 

張飛「鈴々も先鋒なのだ!」

 

季衣(げぇー張飛と一緒か〜)

 

一刀「桂花は春蘭と季衣を、韓当さんは魏延と張飛ちゃんの手綱をお願いします」

 

桂花「努力はするけど・・・あの馬鹿が聞いてくれるかわからないわよ?」

 

一刀「それは大丈夫、春蘭ちょっとこっちに来てくれるか」

 

春蘭「ん?なんだ」

 

一刀(ゴニョゴニョゴニョ)

 

春蘭(なんだと!それは本当か!)

 

一刀(あぁ、ちゃんと桂花の言う事を聞いて、戦果を挙げることが出来たら約束しよう)

 

春蘭「桂花!私に指示を頼むぞ!きちんと遂行してやる!はーっはっは!」

 

桂花「あんた・・・何を言ったのよ」

 

一刀「ちょっとね。韓当さんも頼みます」

 

韓当「任せい、期待には応えてみせますぞ」

 

詠「ボクと甘寧はどうすればいいの?」

 

一刀「2人は詠の判断で前衛の補佐を頼む、斬り込みは春蘭隊と張飛隊になりそうだから」

 

詠「わかったわ、甘寧もよろしくね」

 

思春「こちらこそよろしくお願いします」

 

 

一刀「美羽を大将に、雪蓮・冥琳・亞莎・徐栄は右翼に展開してくれ、左翼は程普を大将に、孫権・孫尚香・穏・祭さん・朱里だ」

 

雪蓮「美羽と同じ持ち場にしてくれるなんて、気が利くじゃない」

 

冥琳「真面目にやれ、少しでもヘマしたら美羽に近づかせないように捕縛するからな」

 

雪蓮「大丈夫よ、本気出しちゃうから♪」

 

 

 

程普「曹仁殿、それがしが大将でよろしいのですかな」

 

一刀「程普さんは知力・統率力の高い将と聞きます、桃香からも程普さんの実力に太鼓判を押されてるので、是非務めて頂きたい」

 

程普「我が主と曹仁殿にここまで期待されてるとなれば断れませんな。程普徳謀、必ずや期待に応えて見せましょう」

 

一刀「働きを期待しています、穏と朱里は程普さんの補佐を」

 

朱里「はい!」

 

穏「お任せください〜」

 

 

一刀「中軍には桃香を大将に、華琳・秋蘭・星・稟・魏延・紫苑・華雄。中軍は戦況に合わせて柔軟に対応してくれ、なにかあればこちらから指示を送る」

 

中軍の陣容を発表されてすぐに、桃香が恐る恐る一刀に編成面に確かめを入れる

 

 

 

桃香「あの〜私が大将でいいんですか?曹操さんの方が適任だと思うのですが」

 

華琳「今回私は一人の将として戦いたいの。それに、否定するかもしれないけど、あなたは立派な指揮官なのだから、自信を持って戦いなさい」

 

一刀「俺も同意見だ、桃香なら安心して任せられる」

 

桃香「曹操さん、一刀さん・・・・・・わかりました、頑張ります!」

 

 

 

一刀「霞・翠・蒲公英・公孫讃・雛里は騎馬隊を率いて遊軍に回ってくれ、指揮は雛里が執ってくれ」

 

雛里「あわわ、がんばりましゅ」

 

霞「可愛いな〜!一刀〜〜これ持って帰ってもええか〜?」

 

雛里「誘拐されて売られちゃうんだ〜〜!」

 

一刀「・・・混乱してるから辞めなさい」

 

霞「ちぇ〜〜」

 

 

公孫讃「騎馬隊の扱いなら目立てる・・・大丈夫のはず・・・影薄くないぞ!」

 

翠「そうだ白蓮!西涼騎馬隊と幽州騎馬隊の融合だ!この騎馬隊なら敵は居ないぜ!」

 

公孫讃「あぁ!私達の騎馬隊の力見せ付けてやろう!」

 

翠「おう!」

 

 

 

 

桃香(一刀さん、白蓮ちゃんって馬超さんと仲良かったの?こんなに生き生きしてる白蓮ちゃん見るの初めてかも)

 

一刀(あぁ〜聞かないであげて、色々あったんだよ)

 

 

桃香は何があったんだろ?と不思議そうな表情をしてるけど・・・あれは言わないであげた方がいいよな

 

一刀「俺と風・ワンコ隊・真桜・沙和は本陣で待機だ、戦況によっては前線に出るから準備は怠るな」

 

愛紗・凪・流琉・明命・恋「わかりました(...ん)」

 

真桜・沙和「了解や、了解なのー!」

 

一刀「風は戦況把握と俺の補佐を頼む」

 

風「フフフ、風とお兄さんと一緒ですか、そんなに風と一緒に居たいなんて〜仕方の無いお兄さんなのです」

 

一刀「風さん、そういう事言うとね・・・怖い人達居るから勘弁してくれないかな」

 

 

華琳・桂花・嫉妬神・凪・流琉・明命「ジトーーーーー」

 

 

桃香「華琳さん達、そういうのは全部終ってからにしましょ!」

 

華琳「そうね・・・全部終ってからゆっくりと問い詰めさせてもらうわ・・・お仕置きも兼ねてね」

 

一同「うんうん」

 

 

 

桃香「あ・・・あれ?どうしてこの流れに?」

 

 

曹嵩(ふふ、私の予想通りお嫁さん候補がいっぱい居るわね!劉備ちゃん・董卓ちゃん・関羽ちゃん辺りが有力候補かしらね♪)

 

 

母さんが俺達を見てニヤニヤしてる・・・嫌な予感がするが、いまは戦に集中しなければ

 

 

霞「それにしても意外やな、一刀なら先陣切って戦うかと思ったで」

 

一刀「それも考えたんだけど、後ろでどっしり構えとけって意見が多くてな」

 

霞「まあ前線に出て負傷したら洒落にならんもんな」

 

一刀「そういう事だ、持ち場の発表は以上だ。各自開戦に備え準備を万全にしてくれ、解散!」

 

 

 

 

一刀の解散命令により、各将が持ち場に戻り各々準備に取り掛かろうとしている、各将の雰囲気は共通していた。

 

先ほど桂花が言ったあの台詞・・・”これだけの将が揃ったいま、負ける要素は無い”

 

それだけ自信がある表れなのだが、度が過ぎれば敵を軽んじる”慢心”に変わる。そしていま感じ取れたのは自信では無く『慢心』だ

 

 

 

 

一刀「・・・・」

 

七乃「大丈夫なんですか?みなさん既に勝った気でいるような雰囲気ですが」

 

一刀「正直不味いな、経験豊富の桂花達も浮かれ気味だ。警戒しているのは数人ぐらいか」

 

七乃「大まかな陣立ては完了してますから、今から変更も出来ませんし」

 

一刀「開戦前に油断するなと伝えるしかなさそうだ、いまの袁紹軍は侮って勝てる相手ではないからな」

 

七乃「麗羽様も以前と全然違いますからね。それはそうと一刀さん、先ほど私の名前が無かったのはなぜですか?美羽様が孫策さんと仲良くしてるのを眺めてるだけを強要するなんて・・・・喜んじゃうじゃないですか!私が!」

 

一刀「少しは自重してくれ・・・。それで七乃の名を挙げなかった理由だが、七乃は自由に動きたいんだろ?だから何か指示を出して縛ったりはしない、俺への報告も事後報告でいい」

 

七乃「隠れて戦況を傾けようと思ってたのに....なんでわかったんですか」

 

一刀「どれだけ七乃と一緒に居たと思ってるんだ?見せてくれるんだろ?七乃の”本気”を」

 

七乃「一刀さん、前にも言ったじゃないですか〜察しても口に出さないでくれてもいいじゃないですかと」

 

 

以前言われたのが、雪蓮が美羽にご飯作ってあげてるのを、影で隠れて見てた時だっけか

七乃は普段自分の本心・感情を隠してるからつい言いたくなるんだよな

 

 

七乃「まぁ・・・一刀さんに言っても無駄なので諦めます。それと、仕込みがあるのでこの辺で失礼しますね」

 

 

一刀「あぁ、頼んだよ七乃」

 

俺に言っても無駄か〜なんか傷つくけな〜

でも以前の外史から鈍いだの色々言われてきて、今もまだ言われるぐらいだから・・・やっぱり無駄なのかな

 

 

華琳「戦前に何ため息ついてるのよ」

 

 

七乃と入れ違いで華琳が幕舎に戻ってきた

どうしたんだ?何か伝えに来たのかな

 

一刀「ちょっと考え事をしててね、華琳はどうしたんだ?何か問題が発生したか?」

 

華琳「別に何もないのだけれど、決戦前で一刀が慌ててないから様子を見に来たのよ」

 

 

自分だって記憶が戻って初めての戦いで緊張してるだろうに・・・

確かに俺一人ならば慌ててたかもしれないけど

 

一刀「華琳を含め俺にはたくさんの頼れる仲間が居るんだ、ここまできたらみんなを信じて戦うだけだよ」

 

 

華琳「・・・それがわかってるなら大丈夫そうね、一人で戦おうなんてしようとしたら簀巻きにして閉じ込めてたところよ」

 

 

こわ!今の口調絶対本気だったよ!

逆鱗に触れる答えじゃなくてよかった。。。

 

 

伝令「伝令!袁紹軍が動きだしました!こちらに向かって進軍中!」

 

一刀「敵の旗はどうなっている」

 

伝令「周泰将軍、甘寧将軍の情報通り張?、顔良・文醜の旗印!約20万にございます!」

 

一刀「わかった、その情報を他にも知らせてくれ、敵を侮るなも加えて頼む」

 

伝令「御意!」

 

華琳「それじゃあ私も持ち場に戻るわ、こちらは任せなさい」

 

一刀「頼んだよ華琳、全軍迎撃態勢を取れ!迎え撃つぞ!」

 

 

 

 

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連合軍・先鋒中央

 

伝令「報告!張?・文醜・顔良が20万を率いて押し寄せて参りました!」

 

春蘭「やっと来たか、退屈で兵に訓練をつけるところだったぞ」

 

張飛「夏侯惇は戦バカなのな〜」

 

春蘭「なにを!?お前だってそうではないのか!」

 

張飛「鈴々はお姉ちゃんの畑仕事の手伝いとかしてるのだ!それに手伝える書類は頑張ってやってるのだ!」

 

春蘭「なんと!」

 

詠「そこ!バカな会話してないで!」

 

桂花「一刀は後何か言ってなかった?」

 

伝令「敵を侮るなとのお言葉です!」

 

詠「総大将から言われてるんだから、しっかり戦いなさいよね。敵に動きがあれば陣から伝令を送るわ」

 

春蘭「当たり前だ、真面目にやらない理由がない」

 

桂花「わかってるならいいんだけど・・・春蘭・季衣・甘寧は顔良・文醜隊に、張飛・韓当は張?隊に当たってちょうだい」

 

季衣「わかりました!春蘭様、ここは盛り上げてください!」

 

春蘭「聞け!我らの同胞よ!敵は我らを滅ぼさんと大軍を率いて押し寄せてきている、だがそれがどうした!我らの軍は一騎当千の猛者達だ!終我らの力を奴らに見せつけよ!我らに仇名す敵を討つのだ!」

 

 

連合軍兵士「ウオオオオオオオオオ!」

 

 

 

春蘭「総員抜刀!全軍突撃!」

 

 

 

 

 

 

 

袁紹軍SIDE

 

顔良隊兵士「敵陣から夏侯惇・許?・甘寧・韓当・張飛の旗印が確認されました!敵兵はおよそ7万!」

 

顔良「左右に展開している軍と中軍の陣に動きはありますか?」

 

顔良隊兵士「まだ動きはありません、前衛中央の戦況によって動くと思われます」

 

顔良「わかりました、持ち場に戻ってください」

 

顔良隊兵士「っは!何かありましたらお呼びください」

 

 

張?「ここまでは予想通りですな」

 

顔良「えぇ、作戦の第一段階を実行に移しましょう。敵と交戦状態に入ったら間者を送り込みます、恐らく突出してくる敵将は猪武将・夏侯惇です、まともに相手せずに受け流してください!少し交戦した後、後退して敵を誘い込みます!」

 

 

 

 

 

 

連合軍SIDE

 

 

連合軍兵士「敵将顔良・張?は方円陣を敷いて我らを待ち構えております!」

 

春蘭「攻め込んできて防御陣形とは軟弱な!季衣、私に付いて来い!敵の守りをぶち破るぞ!」

 

季衣「あ、待ってください春蘭様〜!敵の罠かもしれないですよ!」

 

春蘭「はっはっは!罠など喰い破ってやればいいのだ!」

 

 

春蘭はいつも通り脳筋を発揮し、反対する季衣を無理やり連れて突撃を開始した。

春蘭の脳筋を初めて見る抑え役の韓当は、春蘭の突撃を止めようが無かった

 

張飛「あのお姉ちゃん突っ込んで行っちゃったのだ」

 

韓当「猪だと聞かされていたが、あそこまでだとは予想外だわい」

 

張飛「おじちゃん、鈴々達はどうするのだ?ここで待機するのか?」

 

韓当「・・・いや、あの大軍に夏侯惇殿、許?ちゃんだけで突っ込ませれば全滅の危険もある、合流して一度陣まで退くのだ」

 

張飛「わかったのだ!みんな鈴々に続くのだー!」

 

韓当「甘寧将軍はこのことを荀ケ殿、賈?殿に知らせてくだされ」

 

思春「わかりました、伝えた後すぐに戦線に向かいます」

 

韓当「・・・いや、そのまま陣に留まり軍師達の指示を仰いでくだされ」

 

思春「御意、ご武運を」

 

韓当「韓当隊は友軍の助太刀に参る!合流してすぐに陣まで下がる、合図を見逃すな!」

 

 

 

袁紹軍から接敵したにも関わらず、防御陣形を敷いた事に警戒を促そうとした瞬間に脳筋が突っ込んでいってしまった。

身軽な思春に伝令を頼み、韓当は突出した春蘭・季衣と合流すべく張飛を連れて軍を動かす

 

韓当・張飛が慌てて軍を動かし始めた同時期、春蘭・季衣は顔良・張?隊と交戦に入っていた

 

 

春蘭「袁紹の兵は腰抜け揃いか!この程度で私達に挑むなど笑い種だ!」

 

春蘭は抵抗が少ない敵陣を縦横無尽に暴れていた。春蘭隊の兵士隊も春蘭に続くように立ちはだかる敵兵を薙ぎ倒している

勢いに任せ、敵陣深くまで斬り込んだ春蘭に一人の伝令がやってきた

 

 

伝令?「申し上げます!敵将顔良・張?が撤退を開始しました!我が軍の勢いを止められなかったと思われます!」

 

春蘭「わかった、下がって持ち場に戻れ」

 

伝令?「御意」

 

 

季衣「春蘭様、どうするんですか?このまま韓当さん達が来るのを待った方がいいと思うんですけど」

 

春蘭「そんなに決まってるではないか、もちろん追撃だ!敵兵を掃討するのだ!」

 

季衣「ですよね・・・」

 

 

こうなった春蘭を季衣では止められない、止められるのは一刀・華琳・秋蘭・三軍師ぐらいだ

春蘭を止める為にも桂花を配置したのだが、指示を聞く前に春蘭が突撃したので一刀の目論見が外れてしまった。

 

 

 

前衛中央陣

 

 

桂花「なんですってー!」

 

詠「あーもう!これだから猪は嫌なのよ!」

 

袁紹軍が後退を開始した頃、韓当の指示で陣まで戻ってきた思春の報告を聞き、桂花・詠は頭を抱えてしまった

 

桂花「韓当はどうしてるの!」

 

思春「韓当殿は張飛殿を連れて夏侯惇隊・許?隊を連れ戻しに行かれました」

 

桂花「季衣まで罠の可能性を示唆したのに・・・あの脳筋は!」

 

詠「そこ!すぐに陣まで戻るように伝令に行って頂戴!」

 

 

連合軍兵士「は、っは!」

 

 

 

詠の指示で伝令が前線に赴いたと入れ違いに、一人の伝令が桂花達の幕舎にやってきた

 

 

伝令?「申し上げます!顔良・張?隊は夏侯惇隊・許?隊の勢いに押され後退を開始し、夏侯惇様は追撃を行っております!」

 

詠「韓当達と合流できたの?」

 

伝令?「いえ、夏侯惇隊の勢いが凄まじく、まだ合流できていません。」

 

桂花「このままだと不味すぎる・・・私が一軍率いて止めに行くわ、賈?と甘寧はこの陣を護って」

 

詠「わかったわ、甘寧もいつでも動けるように隊を再編してちょうだい!」

 

 

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袁紹軍SIDE

 

 

伝令「敵陣から荀の旗印が新たに出て参りました!釣れた模様です!」

 

顔良「準備完了です・・・文醜隊に合図を送ってください!」

 

伝令「御意!」

 

顔良「文ちゃんの隊で退路を断ち、敵軍の挟撃に移ります、張?さんは手薄になった中央の陣に攻め込んでください」

 

張?「おう、張?隊続け!我らを舐めてる連合軍に武威を示すのだ!」

 

顔良「みなさんよく耐えてくれました、ここから反撃に移ります!少数で突出してきた敵兵を殲滅してください!」

 

 

 

 

 

文醜隊兵士「文醜様!顔良様からの合図です!新手の荀ケ隊も通過して行きました!」

 

文醜「流石斗詩!上手くやったみたいだな!」

 

文醜隊兵士「文醜様!行きましょう!」

 

文醜「おう!行くぜお前ら!敵の背後から思いっきり噛み付いてやれ!」

 

 

 

 

 

連合軍SIDE

 

 

春蘭「追え追えー!我らの強さを奴らに覚えさせるのだ!」

 

季衣「春蘭様、流石に不味いですって!ぼく達だけで敵陣深くまで斬り込みすぎですって!」

 

春蘭「なんだ季衣、怖気づいたのか?」

 

季衣「そういう事じゃなくてですね!」

 

 

かつて袁紹軍に所属していた季衣はこの程度で退くとは思えなかった、狡猾な陳宮が何も手を打ってないはずがないのだ。

改めて止めようとしてると、韓当・張飛がようやく追いついてきた。

しかし、追いついた韓当には焦りの表情が浮かんでいた

 

 

韓当「夏侯惇殿!すぐに陣まで後退するのだ!我らは陣深くで孤立している、ここで挟撃されたら全滅じゃぞ!」

 

 

顔良・張?によって春蘭は深く、深くまで引き寄せられ、見渡す限り袁紹軍に包囲されてしまっていた。

韓当・張飛が包囲の一角を破り合流を果たしたが、ぐずぐずしてればすぐに再包囲されてしまう、韓当の危惧していた点はそこだった。

 

そんな韓当に更なる凶報が舞い込む

 

 

伝令「申し上げます!夏侯惇将軍を止めようと出陣されました荀ケ様が文醜軍の待ち伏せに合い壊滅!文醜軍はそのままの勢いでこちらに向かっております!」

 

春蘭「桂花はどうしたのだ」

 

伝令「護衛の兵と共に中軍まで落ち延びられました!」

 

季衣「春蘭様!急いで撤退しましょう!」

 

春蘭「そうだな・・・全軍反転!陣に戻るぞ!」

 

 

桂花敗退の報を聞き、ようやく撤退を決めた春蘭だが、判断を下した時には既に遅かった

 

 

春蘭隊兵士「後退していた顔良隊が反転し、我が軍に攻め込んで参りました!このままでは危険です!」

 

春蘭「わかっている!全軍隊を乱さずに後退するのだ!乱れれば被害が増えてしまうぞ!」

 

春蘭が必死に統率を執ろうとするが、桂花の敗退、文醜・顔良隊による挟撃により兵達は完全に浮き足立ってしまっていた

 

 

顔良隊兵士「敵将を見つけたぞ!討ち取って手柄とせよ!」

 

 

張飛「おじちゃん!敵兵が殺到してきたのだ!このままじゃ危険なのだ!」

 

 

韓当「顔良隊を無視して文醜隊に突っ込み血路を開く!これしか逃れる道はないぞ!」

 

張飛「だったら鈴々が道を斬り開くのだ!いっくよー!ウリャリャリャリャリャー!」

 

季衣「ボクだってまだ戦える!ちびっ子には負けないぞ!」

 

軍の先頭に立ち、陣深くまで斬り込んだ春蘭は思った以上に披露が蓄積され血路を開ける状態ではなく、韓当も指揮に精一杯であった。

 

しかし血路を開くは若き武人、燕人張飛・虎痴許?と謳われる豪傑。袁紹軍に居た季衣と、琢郡からの撤退戦での十面埋伏で無双の働きを見せた張飛の姿を間近で見ていた文醜隊は2人の暴れっぷりに思わず怯んでしまった。その隙を逃さず辛くも包囲網を突破する事に成功した

 

 

 

文醜「あっちゃー逃げられたか」

 

文醜隊兵士「申し訳ありません」

 

文醜「あたいも正直あの2人相手にするのはしんどいからな、逃げられるのも想定内だから気にするな」

 

 

 

顔良「文ちゃ〜ん!無事〜!?」

 

文醜「もちろん無事だぜ、あいつらには逃げられちゃったけどな」

 

顔良「将に逃げられちゃったのは残念だけど、戦果は充分だよ」

 

文醜「そうだな〜欲張りは良くないもんな。んで、この後はどうするんだ?」

 

顔良「中央陣はもう陥落するはずだから、私達はこのまま左翼に攻め込むよ」

 

文醜「出来れば右翼に行きたかったな〜孫策っての戦ってみたかったし」

 

顔良「文句ばっか言ってないでいくよ」

 

文醜隊「へ〜い、文醜隊!このまま敵左翼に襲い掛かれ!」

 

顔良「顔良隊も続いてください!情報を攪乱してる為、敵はまだこのことを知りません!速攻を仕掛けます!」

 

 

 

 

 

 

春蘭達が包囲を突破し、戦場を離脱した頃、中央陣では敗戦の報が続々と詠の耳に入ってきた 

 

 

伝令1「荀ケ様が文醜隊の待ち伏せに合い敗退!荀ケ様は一部の兵と共に中軍まで後退されました!更に突出した夏侯惇隊が文醜・顔良隊の挟撃に合い壊滅!辛くも包囲を突破する事が出来ましたが、行方は不明!」

 

 

詠「っく、完全に袁紹軍の術中に嵌ってるじゃないの!」

 

伝令「顔良・文醜隊は程普様率いる左翼に向かっているとの事です!」

 

詠「ボク達を無視して左翼に?そんな事すれな逆に挟撃に・・・!」

 

思春「何か気が付いたのですか?」

 

詠「わからないの!?敵先鋒は顔良・文醜・張?のはずよ!その張?はどこに行ったの!すぐに調べて!」

 

伝令「っは!急いでお調べいたします!」

 

 

甘寧「私達はどういたしますか?ここは退き、仲間と合流するのがいいと思いますが」

 

防御を強化しても兵の差は歴然、主力の離脱で兵の士気も落ちてる・・・ここで戦って各個撃破されるぐらいなら・・・

 

 

伝令「も、申し上げます!張?軍が出現し、陣内に攻め込んで参りました!」

 

詠「なんですって!?なんで陣内に入られてるの!

 

伝令「それが・・・陣内に敵兵が紛れており、外の張?軍と呼応して陣を開門されてしまいました!」

 

詠が後退を命じようとした時を見計らっていたようなタイミングで攻め込んでこられてしまった。それをなんとか鎮めようと指揮を振るう

 

 

詠「動揺するな!いま慌てふためけば敵の思う壷よ!落ち着きなさい!」

 

詠の鼓舞で慌てていた兵達は少しずつ落ち着きを取り戻した。指揮系統が生きてればまだ動揺を最小限に抑える事が出来る。

もちろん詠の統率力あっての話しだ

 

詠「甘寧!奇襲部隊を率いて張?隊を攪乱し、勢いを殺いでちょうだい!その後は長居は無用、引き上げて!」

 

思春「賈?殿はどうなされるのですか」

 

詠「私も残って戦いたい・・・けど!私には直接戦う戦闘力は無いわ。ここは退いて態勢を整えて”生きて”袁紹軍を困らせてやるわ!」

 

 

詠は一刀の信頼を裏切り、敵に裏をかかれて陣を、大切な兵を失ってしまった悔しさを堪え、撤退を決意していた

 

思春「わかりました、賈?殿が撤退完了するまでの時間は稼いで見せます」

 

詠「頼むわね甘寧。賈?隊はこの陣から撤退するわ!」

 

 

思春「お前達!賈?隊が無事に撤退するまでの時間を稼ぐぞ!一刀様、周泰殿仕込の技を奴らに見せつけるのだ!」

 

暗殺部隊「っは!」

 

 

 

顔良・文醜が連合軍先鋒を下し、手薄になった中央陣に張?軍が殺到し、賈?隊は撤退した。しかし、一刀・明命の技術を仕込まれた思春及び甘寧隊の暗殺部隊は少数ながら素早い動きで敵の死角から的確に攻撃、死者の山を築き完全に張?隊を翻弄していた

 

 

張?隊兵士「張?様!敵兵の動きが全く読めません!」

 

張?「連合軍でこのような真似が出来るのは周泰だけと聞いていたが、油断したか」

 

チリーン チリーン

 

張?「なんだこの音は!」

 

 

張?隊兵士「て、敵将!ぐは・・・」

 

 

思春「そこに居るのは張?か!鈴の甘寧これにあり!張?覚悟しろ!」

 

 

思春は時間稼ぎが終了した後も残って戦っていた。

追撃部隊を出さないように防いでいたのもあるが、一騎打ちで張?を倒し、連合軍は侮りがたいと認識させるのが目的だった

 

 

張?「こしゃくな!この張?が相手だ!」

 

 

思春と張?は激しい打ち合いが始まるが、一合、また一合と回数を重ねるも両者譲らずに戦いが続く

 

現状を打開しようと、思春は持ち前の素早さで張?を翻弄しようとするが、張?は惑わされる事なく冷静に対応している。

 

史実で魏の五将軍に数えられ、半世紀近く蜀の侵攻を防ぎ続けていた名将・張?と思春の実力は拮抗していた

 

 

暗殺部隊「甘寧様、敵の増援が近づいております。この辺りが潮時かと思われます」

 

思春「張?!勝負は預けるぞ!」

 

 

張?「甘寧逃げるか!」

 

思春「我らの目的は時間稼ぎ、それに戦果は充分だ。引き上げるぞ!」

 

 

張?隊兵士「張?様追撃をかけましょう!奴らは危険です!」

 

張?「辞めておけ、少数の兵でここまで攪乱する事が出来る連中だ。不用意に追えば返り討ちに合うぞ」

 

張?隊兵士「しかし」

 

張?「決戦はまだ始まったばかり。前哨戦は勝利したが、本隊との戦いが控えているのだ、ここで兵を失うのは得策ではない」

 

 

思春率いる暗殺部隊の実力を目の当たりにした兵達の気持ちも理解できるが、敵本隊の突破力は暗殺部隊の比ではないのを理解している張?は、ここは無理をする場面ではないと考えていた

 

張?「一部の者はこの陣の守りに就け、残りの者は俺と共に顔良殿達の増援に向かう!」

 

 

 

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張?は任務だった陣掌握を完了し、左翼に向かい始める。

その同時期、左翼には顔良・文醜隊が殺到。猛将・黄蓋を中心に反撃に移るが、勢いに乗った袁紹軍相手に盛り返すのは困難を極めていた

 

 

 

祭「小童共!この黄公覆の首が欲しければもっと腕をあげてこい!」

 

尚香「雑魚兵なんかにシャオはやられないわよ!弓腰姫の名は伊達じゃないもんね!」

 

孫権「下がれ下郎!孫仲謀の首易々と取れると思うな!」

 

 

程普「黄蓋殿達が奮戦してられるが長くは持ちそうにない・・・か。中央はどうしたというのだ」

 

朱里「恐らくですが・・・中央は壊滅したと思います。そうでなけば顔良・文醜軍がここにこれるはずがありません、中央を無視すれば確実に挟撃にあってしまいます」

 

穏「中央先鋒は猪夏侯惇さん・・・誘き寄せられて各個撃破されたと考えるのが妥当かと」

 

朱里「ですね、荀ケさん、賈?さんの制止が間に合わなかったのかもしれません」

 

穏「そして私達を救援に行かせないために偵察隊を拿捕し、情報を遮断させた。そして怪しまれないように私達には偽情報を伝えてた・・・敵も狡猾な手を打ってきますね」

 

 

 

祭「えぇい!冷静に分析しとらんで、この窮地を打開する策を出さんか!」

 

 

祭に言われずとも朱里・穏は打開策を必死に考えているが、中央の壊滅・敵にかなりの接近を許し持ちこたえるのがやっとの状況だ

ここまで劣勢の状況を打開する為には敵を上回る武で圧倒するしかない。現状の戦力でそれを行うのは力不足で不可能。

仮に互角まで持ち直したとしても、まだ来ていない張?軍が到来すれば退路も危うくなる。

2人が考えているのは戦闘を継続するメリットは既に無く、桃香率いる中軍まで撤退して被害を少しでも減らす事だった

 

 

朱里「陸遜さん、ここは・・・」

 

穏「一度下がるしかありませんね」

 

程普「確かにここで無理をして戦う理由はありませんな、ここは軍師殿の意見に従いましょう。黄蓋殿、孫尚香殿と某で殿を務めます、朱里殿、陸遜殿、孫権殿は先に退いてくだされ」

 

 

孫権「わかった、可能であれば劉備殿・曹操殿に救援の軍を依頼してみる。行くぞ穏!」

 

穏「は〜い、陸遜隊は孫権隊と一緒に下がりますよ〜」

 

 

朱里「程普さん、撤退時の追撃が激しいようであれば、この紙の内容を行ってください。いざという時の為に借りてきました、多少の時間稼ぎにはなるはずです」

 

程普「なるほど・・・上手く駆け引きを行ってみせますぞ」

 

朱里「あくまで時間稼ぎでしかありません、撤退時を見誤らないでください」

 

程普「承知した。朱里殿も速く退きなさい」

 

朱里「ご武運を」

 

 

 

 

祭「やっとひよっこ達は退いたか。それで、伏龍殿からはなんと指示がきたんじゃ?」

 

 

 

程普「指示はこの手紙に」

 

 

程普は朱里から託された手紙を祭に手渡し、手渡された祭はすぐさま手紙を読み進める。

 

祭「なるほどの、この戦場には陳宮を含む知恵者は不在、だからこそ単純な手じゃが・・・効果は期待できそうじゃ」

 

程普「えぇ、少しでも時間を稼ぎば軍を引き離す事が可能です」

 

孫尚香「ちょっとー!いつまで話してるの!もう敵がこっち来てるわよ!」

 

程普「長々と話してる場合ではありませんね、すぐさま軍を後退させましょう」

 

祭「兵達よ!戦況は確かに不利だが、我らには天下の伏龍殿が授けてくださった策がある!隊列を崩さずに整然と後退するのだ!」

 

 

突然の顔良・文醜軍による奇襲より劣勢に陥り、孫権・穏・朱里が戦場を離脱する事になり兵達は浮き足立っていたが、祭の鼓舞と、程普達が一歩も退かずに奮戦する将の姿を見て、完全に落ち着きを取り戻していた。

 

 

 

 

 

 

 

顔良「ん?文ちゃん、なんか敵の乱れが収まってない?」

 

文醜「ん〜?確かに言われてみれば隊がまとまってる気がする、なんかあったのか?」

 

顔良「報告では諸葛孔明、陸遜、孫権隊が退却したって聞いたけど」

 

文醜「なら普通は乱れるもんじゃねえの?なんで整然と退却してるんだ?」

 

顔良「それはわからないけど・・・先に退いた孫権さん達が救援を呼んで戻って来るのは流石に早過ぎるし」

 

文醜「じゃあ開き直ったんじゃね?気にせずに突っ込むっしょ!」

 

顔良「あ!文ちゃん待ってよー!」

 

 

顔良は隊の乱れ、動揺が治まったのは気が付いていたが、救援を呼びに行ったにしては戻るのが早過ぎる為、援軍の線は捨てていた。何かの策かと思考しようかと思っが、文醜の言う通り追撃の手を緩めて逃げられれば本末転等。なので文醜に引きずられる形ではあるが、追撃を再開していた

 

 

祭「っく、そう易々と後退させてくれんか。程普殿!まだかー!」

 

程普「まだです!顔良、文醜の姿が確認されてません、もう少し踏ん張ってくだされ!」

 

 

袁家が誇る2枚看板、顔良と文醜率いる軍はやはり錬度が高く、徐々に被害が拡大してしまっているが、いま行っても効果が薄いため、もう少し引き寄せる必要があった

 

 

文醜隊兵士「申し上げます!敵部隊はいまだ後退を継続中!こちらはたいした反撃を受けておりません!」

 

顔良「敵の隊列はどうなっていますか」

 

文醜隊兵士「先ほどと変化なく隊列は乱さずに後退しております!」

 

 

顔良「やっぱり何かの罠なのかな」

 

文醜「確かになんか不気味だよな〜奴らのとれる手なんてもうないだろ?」

 

顔良「敵軍の様子を直接観察するから文ちゃんも前線に付いてきて」

 

文醜「あいよー」

 

能天気な文醜も流石に違和感を感じ取ったのか、顔良と共にどうするべきかと考え始めていた

。そこで直接様子を見て判断しようと前線に赴く。そしてこれを程普達は狙っていた

 

 

 

 

程普隊兵士「程普様、敵将顔良・文醜が前線に姿を現しました!」

 

程普「ようやくきおったか、お主は例の物を用意しろ!こちらから合図を聞き逃すな!」

 

程普隊兵士「御意!」

 

祭「ようやくじゃな」

 

程普「えぇ、ここからが勝負です。全軍後退中止、方向転換!そして合図の銅鑼を鳴らせ!」

 

ジャーンジャーンジャーン

 

祭「兵達よ!我らを舐めて追撃してくる愚か者に目に物見せてやれい!」

 

孫尚香「親衛隊のみんなー!シャオの為に戦って!」

 

 

兵達「ウォォォォォォォォォォォーーー!」

 

 

 

 

ジャーンジャーンジャーン

 

 

文醜「ん?なんの音だ?」

 

文醜隊兵士「大変です!敵軍は方向を変えてこちらに向かってきております!」

 

文醜「お、連中向かってくるのか!おもしれえ!」

 

顔良「待って文ちゃん!あれ見て!」

 

文醜「あれは・・・関 楽 周 典の旗と真紅の呂旗だ!?」

 

顔良「あとは曹の旗も見えるよ!」

 

顔良隊兵士「申し上げます!敵総大将・曹仁の姿が確認されました!恐らく一般兵に扮して紛れていた模様です!」

 

文醜「どうするんだ斗詩!あたい達だけじゃ太刀打ちできねえぞ!」

 

顔良「わかってる、このままでは我らは全滅してしまいます、すぐさま軍を後退して敵軍から離れます!」

 

 

 

祭「敵兵が退いたぞ!追うのじゃ!」

 

 

連合軍が隠れていた一刀・ワンコ隊を中心に反撃を開始したと聞いた

袁紹軍の兵達は、狩る立場から狩られる立場に変わったことで総崩れとなってしまった

 

 

程普「黄蓋殿ー!深追いは無用、そろそろ引き上げますぞ」

 

祭「暴れたり無いが仕方ないのぉ、尚香殿!引き上げますぞー!」

 

孫尚香「えーシャオまだ暴れ足りない〜」

 

程普「我らの策が見破られれば、今度は我らが窮地に陥ります。暴れるのはまたの機会にしてくだされ」

 

祭「尚香殿、文句ばっかり言うのでしたら、今度穏との勉強時間を倍にしますぞ」

 

孫尚香「うげ、撤退するからそれだけは勘弁してー」

 

祭「程普殿、説得完了ですぞ」

 

程普「わかりました、兵達よ!よく戦ってくれた!敵が逃げている間に後退し友軍と合流するぞ!」

 

 

 

 

 

中央、左翼が壊滅、撤退する中、同じように襲撃を受けながらも、逆に圧倒する戦線があった

 

 

雪蓮「あはははは!漢の名将と呼ばれる力はその程度なのかしら!」

 

朱儁「っく、なんと凄まじい力だ!」

 

雪蓮「ほらほらほら!もっと頑張らないと殺しちゃうわよ?」

 

朱儁「孫堅の娘め、わしの力を舐めるでないわ!」

 

 

美羽率いる左翼にも朱儁・皇甫嵩が軍を率いて襲い掛かるが、美羽が弓兵隊、戦闘狂・雪蓮が騎馬隊を率いて迎撃。

 

雪蓮が突撃で討ちもらした敵を美羽隊が仕留め、美羽隊が一斉射で怯ませたところに雪蓮が突撃と息の合った連携を見せる。

そして冥琳、亞莎が敵の崩れた箇所を的確に見つけ、見つけた場所を指示された徐栄が吶喊して撃破

 

 

 

美羽「朱儁は雪蓮が圧倒している!徐栄・亞莎は皇甫嵩を抑えるのじゃ!」

 

徐栄「おう!もう一仕事だ、幽州で負けた鬱憤をいまここで晴らすぞ!」

 

亞莎「呂蒙隊も皇甫嵩隊を抑えます!そうすれば美羽様が自由に動く事が出来ます!」

 

 

 

皇甫嵩達は奇襲で怯ませるどころか、美羽達の連携を見せ付けられ、予想外の反撃を受けてしまう。そして雪蓮との一騎打ちで身動きが取れない朱儁を助けに行けないように美羽は徐栄、亞莎に足止めを指示。

 

個人の武勇では2人より勝る皇甫嵩だが、それでも徐栄と亞莎を同時に相手にしては速攻で勝利を掴むのは難しい。

皇甫嵩も朱儁と同じように足止めを余儀なくされてしまった

 

 

美羽「冥琳!弓兵隊の指揮をお願いするのじゃ!」

 

冥琳「引き受けた、美羽も行くのか」

 

美羽「うむ!歩兵隊を率いて統率の執れていない箇所を乾坤一擲、粉砕してくるのじゃ!」

 

冥琳「気をつけてくれ、美羽に何かあれば・・・雪蓮がどうなるかわからないからな」

 

美羽「一般兵相手なら遅れは取らぬから安心してほしいのじゃ....歩兵隊!雪蓮達が作った好機を見逃してはならぬ!妾に続くのじゃ!」

 

 

朱儁・皇甫嵩が足止めにより軍の指揮を執れなくなり、敵軍の統率が低下したのを見逃さず、脆くなった箇所を美羽率いる歩兵隊が各個撃破に成功した。

 

 

皇甫嵩「これはこの隊の連携を甘く見たか・・・ここは一旦退き、態勢を立て直すのが優先事項か」

 

亞莎「そこです!やあああ!」

 

皇甫嵩「いい腕だが・・・・それではわしには勝てんぞ!」

 

亞莎「きゃ!」

 

徐栄「呂蒙殿!」

 

皇甫嵩「一騎打ちの最中に余所見は命取りだぞ、徐栄!」グサ

 

徐栄「っく、しまった・・・迂闊だった」

 

 

亞莎の放った鋭い3連撃を皇甫嵩は巧みにいなし、すぐさまカウンターを叩き込む。亞莎は間一髪のところで防いだが、勢いを殺せずに吹き飛ばされてしまった。

徐栄は亞莎の安否を確認しようと皇甫嵩から目を離してしまい、利き腕を負傷してしまう

 

 

 

皇甫嵩「お前達は先に退け!わしは朱儁を連れて後から退く!」

 

皇甫嵩・朱儁隊兵士「っは!」

 

 

 

 

朱儁「はぁ・・・はぁ・・・これが孫策か、江東の虎と称された孫堅より武は上回ってるかもしれん」

 

 

雪蓮「私とここまで打ち合うなんて・・・なかなかやるじゃない」

 

 

朱儁は本気となった雪蓮の斬撃になんとか食らい付いていたが、体力・気力共にかなり消耗しきっている。

対する雪蓮は終始優位に立っていたが、粘りに粘る朱儁に苛立ちを隠せず、長時間フルパワーで戦っていた為、その反動で雪蓮も疲労困憊になっていた

 

 

皇甫嵩「朱儁無事か!」

 

朱儁「あまり無事とは言い難いがなんとかな」

 

 

雪蓮「ッチ、面倒な状況で面倒な奴が来たわね」

 

皇甫嵩「江東の虎の娘・孫策か、なかなかいい殺気を出しよる。情勢は不利だ、一度退くぞ朱儁。兵達はすでに退かせている」

 

朱儁「わかった、悔しいがここは素直に退こう」

 

雪蓮「私が素直に見逃すと思ってるの?」

 

皇甫嵩「いま貴様と殺り合うつもりはない、貴様もかなり消耗してるからな、そんな状態ではわしには勝てんぞ」

 

雪蓮「ピク」

 

皇甫嵩「来ないか、ならば退かせてもらう!」

 

 

表面上は気丈に振舞っているが、皇甫嵩の指摘通り体力は底をついているため、皇甫嵩と連戦する余裕は雪蓮には無く、撤退していく2将を見ている事しか出来なかった

 

 

雪蓮「・・・・はぁ、しんどいわね」

 

 

美羽「しぇれーーん!無事かえ!?」

 

雪蓮「なんとかね・・・敵はどうなったの?」

 

美羽「大打撃を与えて追い払ったから、いまはゆっくり休むのじゃ。雪蓮も限界じゃろ?」

 

雪蓮「悪いけどそうさせてもらうわね。美羽〜立てないからおんぶして〜〜!」

 

美羽「バカ言う元気があるなら大丈夫そうじゃの」

 

雪蓮「あ〜ん美羽のいけず〜」

 

美羽「妾と雪蓮の体格差を考えぬか!おんぶしたら妾が潰れてしまうのじゃ!」

 

雪蓮「美羽が潰れたら問題ね・・・」

 

 

伝令「申し上げます!敵軍は完全に撤退しお味方の勝利ですが、皇甫嵩の足止めを行っていた呂蒙様、徐栄様が負傷されました!」

 

 

美羽「なんじゃと!2人は無事なのかえ!?」

 

伝令「命に別状は無いとの事です」

 

美羽「不幸中の幸いじゃの・・・心配じゃから早く戻るのじゃ!」

 

 

雪蓮「あ、美羽待って〜〜置いていかないで〜〜!」

 

 

 

 

 

場所は変わり、劉備率いる中軍には先鋒壊滅・敗走の報が続々と舞い込んでいた

 

 

伝令兵「先鋒中央陣から出撃した我が軍は敵の挟撃に合い壊滅!手薄となった陣は張?によって陥落!」

 

伝令兵2「先鋒左翼は情報を封鎖され、後手に回った事により中央を打ち破った顔良・文醜の奇襲によって敗走!程普様率いる殿部隊は諸葛亮様の策を用いて辛くも戦場を離脱する事が出来ました!」

 

 

 

華琳「中央の詳しい経緯は知ってるかしら」

 

伝令兵「敵将顔良・張?が陣近くまで突撃してきました、その後陣には攻め込まずに方円の陣に切り替え、我らを待ち受ける姿勢を見せてきました。」

 

伝令兵「それを見た夏侯惇様が軟弱だ!と言いながら陣を飛び出し、夏侯惇様を連れ戻そうと続々と陣内から出陣して行き、顔良等に深くまで誘い込まれ、背後に回っていた文醜隊に挟撃されたと聞いております!」

 

 

秋蘭「誰か姉者を止めなかったのか?」

 

伝令兵「許?様が罠だと止めたのですが、罠など喰い破ればいいと一蹴され、出陣したと。韓当様は慌てて張飛様を連れて出陣されたと」

 

星「やれやれ・・・あの猪武者は厄介な事をしてくれる」

 

 

桃香「・・・わかりました、また何か情報が入り次第報告してください」

 

伝令兵'S「御意!」

 

 

稟「袁術殿率いる右翼の戦況はまだ入ってきてませんが・・・」

 

華琳「前哨戦は完全に敗北・・・ね」

 

魏延「どうしますか桃香様、前衛を助ける為に軍を動かしますか?」

 

華雄「動かすにも味方がどこにいるか把握しないと無駄になる」

 

 

 

中央・左翼の惨敗を聞き、味方を助ける為に軍を動かすか否かの協議を始めようとしてたところに、美羽率いる右翼の戦況を知らせる伝令が桃香の下に到着した

 

 

伝令兵「袁術様からの伝令です!右翼に襲撃してきた皇甫嵩・朱儁は追い払ったが、留まるのは危険と判断し、後退するとの事です!」

 

 

桃香「皇甫嵩に朱儁・・・盧植と董承の旗印はありましたか?」

 

伝令兵「いえ、盧植・董承の旗は確認されておりません」

 

桃香「わかりました、下がって休んでください」

 

 

紫苑「なんとか前衛全滅だけは免れましたね」

 

星「流石袁術殿と孫策殿と言ったところか」

 

華琳「これぐらいなら美羽達の実力ならやって当然よ」

 

秋蘭(素直に喜べばいいじゃありませんか、華琳様)

 

華琳「秋蘭、何かいったかしら?」

 

秋蘭「ふふ、いえなにもいってませんよ」

 

紫苑「それでどうしましょうか・・・偵察隊を出し友軍を捜索するか、それとも敵の奇襲に備え護りを固めるか」

 

 

 

華琳を始めとする諸将はどう動くか・・・熟考を重ねている桃香の邪魔をしないよう静かに判断を待っている。

普段であれば華琳が今後の方針を口にしていたかもしれないが、この隊の総司令官は桃香であり、華琳は1武将の一人に過ぎないのと、名実共に名君と民から称されている桃香の能力を見てみたい好奇心に駆られ、発言せずに沈黙を保っていた

 

 

桃香「決めました・・・周囲への偵察隊は出しますが、陣からは動きません」

 

華琳「どうしてそう判断したか・・・教えてもらえるかしら」

 

 

華琳は桃香の意見に反対ではなく、むしろ賛成だった。

だからこそ、自分と同じ判断に至った劉備の考えを知りたかったのだ

 

桃香「中央の夏侯惇さん達は誘い込まれ挟撃で壊滅、左翼は情報を封鎖した上で、中央を突破した顔良・文醜の奇襲で敗退、右翼は撃退に成功しましたが朱儁・皇甫嵩の奇襲に合いました。」

 

桃香「袁紹軍は私達より圧倒的な兵力を持ち、それを率いる将も顔良・文醜・張?の三枚看板、漢の名将と呼ばれた四英傑。兵の将の質も充分な袁紹軍ですが、電撃作戦を用いるのは将の数が影響してると思うんです。」

 

桃香「曹仁さん、袁術さん、馬騰さん、そして私達の将が集まってる連合軍に比べて圧倒的に将の数が足りない。大軍の行軍で嫌がるのは小部隊による波状攻撃です」

 

桃香「なので奇襲作戦で私達に強さを見せつけ士気や戦意を挫く事に成功すれば、数の暴力で押し切る事が可能になります。現段階で既に物量で押し切る事が可能な手段があちらにはありますからね」

 

 

星「なるほど、劉備殿の読み通りとするならば、ここにも敵が奇襲してくる可能性があるわけですな」

 

桃香「報告では袁紹・陳宮・盧植・董承の姿がまだ確認されていません。それらの動向が掴めるまで迂闊に出撃するのは危険だと判断しました」

 

 

稟(いかがですか、一刀さん、風が絶賛した劉備殿は)

 

華琳(見事の一言に尽きるわね。一刀達から劉備の能力について聞いていたのだけれど・・・甘い理想だけを振りかざしていた以前の世界の劉備と全く似つかないわ)

 

稟(この劉備殿ならば前の世界でも仲良く出来ましたかね)

 

華琳(それはないわね、本来五虎将を率いる劉備がこれほど切れ者なのよ?わくわくするじゃない)

 

稟(まったく、華琳様の悪い癖も変わりませんね)

 

 

桃香「以上が私の弾き出した考えなのですが・・・あと何か聞きたいことはありますか?」

 

華琳「いえ、大丈夫よ。あなたの考えでいきましょう」

 

 

伝令「ただいま見張りの者からの報告です、ここから北東5里ほどの場所に盧植・董承の旗が確認しました!」

 

桃香「北東ですか、敵の規模はわかりますか?」

 

伝令「まだはっきりとはわかりませんが、15万規模の大軍だと思われます」

 

桃香「・・・わかりました。見張りを続けるよう伝えてください」

 

伝令「はは!」

 

 

魏延「どうしますか桃香様!15万なんて大軍に押し寄せられたらこちらも相当被害が出てしまいます!」

 

稟「・・・そちらの対応もそうですが、一刀殿の居る本陣も危ないと思います」

 

華琳と一緒に桃香の解説を聞いていた稟が何かに気が付いたのか、華琳との会話を一度止め、発言をした

 

 

紫苑「郭嘉さん、それはどういう事ですか?」

 

稟「劉備殿の推測通り、袁紹軍と言うより陳宮が部隊の小出しを嫌がるでしょう。ならば各陣に同時攻撃を仕掛けると思われます。盧植・董承がこちらに攻め寄せるならば、張三姉妹の影響を受けた黄巾兵が我々の本陣に攻め寄せると思います」

 

 

稟が懸念したのは袁紹軍による全陣への同時攻撃。これまでの袁紹軍の動きを見ると、おおいにありえる動きだった

 

 

桃香「私も本陣への救援を考えましたが、ここの戦力が半減して防げるほど相手も甘くはありませんので・・・」

 

 

桃香も稟と同じよ考えに至っていたが・・・桃香の言うとおり今でも兵力が劣っているのに、援軍で兵を割くのは自殺行為だった

 

 

華琳「まあ一刀の下には一刀を筆頭に、一刀を守護する五人と沙和・真桜が控えているのだし、私達はここに襲撃してくる袁紹軍に集中しましょう」

 

桃香「そうですね、本陣は一刀さん達を信じて、私達は私達のなすべき事をやりとげましょう!」

 

 

偵察兵「劉備様申し上げます!袁紹軍来襲、旗印は董と盧!その数およそ10万との事!」

 

 

稟「私達のおよそ2倍ですね、そして予想通り董承と盧植が出てきましたね」

 

 

桃香「焔耶ちゃん、曹操さんはすぐさま敵の迎撃に向かってください!手加減は無用です!」

 

焔耶「っは!お任せください桃香様!」

 

華琳「わかったわ、任せなさい」

 

桃香「敵に注意すべき将は董承のみです。でも無理はしないでください、劣勢の場合はすぐに退いてください」

 

 

焔耶「盧植は従軍師だとわかっているのですが、董承はどのような武将なのですか?」

 

桃香「私も董承の事はそこまで詳しくないんだけど、董承は皇甫嵩・朱儁よりかは劣るけど武力型の将だよ。油断はしないでね」

 

焔耶「わかりました、遭遇したら全力で戦います」

 

 

紫苑「わたくし達はどうしますの」

 

桃香「黄忠さん達は・・・・でお願いします」

 

紫苑「わかりましたわ、お任せください」

 

 

桃香「私達の役割は重要です、ここで負ければ連合軍は瓦解する恐れがあります。なので・・・・みなさん絶対に勝ちましょう!」

 

 

一同「「「「「「おう!」」」」」」

 

 

 

-6ページ-

 

 

 

 

董承「盧植よ、劉備達が出てきたぞ。曹操・魏延率いる5万だそうだ」

 

盧植「5万のう・・・桃香は出てきて来ぬし・・・なにかの策か」

 

董承「敵には諸葛亮達より戦経験豊富な郭嘉がおるのだろ?どう出る」

 

盧植「流石に大陸屈指とも言われる郭嘉の考えを見抜くのは骨が折れるの」

 

董承「ひとまずわしは迎え撃つぞ、全軍わしに続け!」

 

 

 

盧植(敵には郭嘉、桃香と共に、曹仁の影に隠れているが曹操も知恵者・・・じゃが陳宮が予定通りに動けば奴らに勝利はない)

 

 

 

 

 

華琳「敵が見えたぞ!総員抜刀・・・全軍突撃ー!」

 

魏延「曹操殿に続け!我らの勇姿を見せ付けるのだ!」

 

 

董承「連合軍が来たぞ!迎え撃つのだ!」

 

 

魏延「だあああああああああ!」

 

華琳「っは!っや!せい!」

 

 

魏延による鈍砕骨による豪撃、一刀から譲り受けた黄龍偃月刀で無駄のない流れるような斬撃で群がる袁紹軍を次々と屠っていく。

 

それに続く兵士達も華琳や魏延に負けるかと言わんばかりに武勇を奮い、兵力の差を感じさせない戦いぶりを袁紹軍に見せ付け、襲来してきた敵軍を3里(1.2km)押し返すことに成功した

 

 

 

しかし、袁紹軍の兵力は中軍の2倍。序盤は押していた連合軍だったが、盧植・董承の冷静な指揮を受け落ち着きを取り戻した袁紹軍の反撃を受け状況は次第に劣勢となっていく

 

 

華琳「っく、斬っても斬っても次々に沸いてくる、流石に数の暴力には抗いきれないわね」

 

華琳は出陣前の宣言通り軍の先頭に立ち、獅子奮迅の働きで袁紹軍の兵士に恐怖を植え付けたが、退けても退けても袁紹軍の襲撃が続き疲れが蓄積されていた。

 

別場所で戦闘を繰り広げていた魏延も華琳と同様に、袁紹軍の兵力の多さに頭を悩ませていた

 

 

魏延「不味いな、完全に戦線を引き戻されたか・・・主導権を引き戻さなければ・・・」

 

 

袁紹軍兵士「余所見とは余裕だな!俺が討ち取ってくれん!」

 

魏延「ふん!お前のような雑兵に討ち取られる私ではないわ!どっせーい!」

 

袁紹軍兵士「グホ・・・」

 

 

魏延「雑兵では相手にならん、私を倒せる者はいるか!」

 

董承「小娘が粋がりおって、わしが相手じゃ魏延!」

 

魏延「出てきたな董承!私の武器の錆びにしてくれる!」

 

 

魏延の考えた打開策は一騎打ちで流れを引き戻す事だった。一騎打ちで魏延が勝てば袁紹軍の勢いを挫く事ができ、自軍の勢いを盛り返す事が出来る。

 

しかしそれは袁紹軍側にも言える事だ、前線で踏ん張っている華琳・魏延を打ち倒せば連合軍は総崩れになる。

 

互いの思想を乗せ、猛将魏延と董承は激突する

 

 

 

魏延もつ棍棒・鈍砕骨と董承の武器・大斧とお互い力を生かした乾坤一擲による豪撃。互いの力と力がぶつかり、矛を交えるたびに両者手に痺れを覚えるが一騎打ちを継続。

 

両者の実力は伯仲している、兵達も両者の一騎打ちを見守っていたが・・・次第に優劣がはっきりと見て取れるようになった

 

 

 

 

 

 

 

董承「どうした魏延よ、さっきまでの威勢はどこにいった!だんだん速度が遅くなってきているぞ!それではわしの首は獲れぬぞ!」

 

魏延「まだまだこれからだぁぁぁあ!」

 

 

魏延は強がるが、猛将・豪傑と言えど人間だ。戦線を押し上げるために武を奮い続けていた為、鈍砕骨を奮う矛先が鈍ってしまっている。そんな満身創痍な状態で勝てるほど董承は甘い相手では無く、鈍砕骨は弾かれ魏延は吹き飛ばされてしまう

 

 

 

 

董承「わしの勝ちじゃな、魏延よ」

 

魏延「・・・く・・・そ・・・負けるわけには・・・いかないんだ」

 

董承「やれやれ、そのような体でまだ立ち上がるか」

 

 

乱戦により負った擦り傷、董承に吹き飛ばされて出来た打撲やあざなどで既にまともに戦える体ではなかった。

 

立ち上がったが動けずにいる魏延の下に董承はゆっくり近づく、死を覚悟した魏延の耳に出陣を知らせる銅鑼が入ってきた

 

 

董承「何事だ!」

 

袁紹軍兵士「大変です!敵陣から劉備が出陣!それに呼応するように潜んでいたと思われる連合軍が出現!我が軍は包囲されております!」

 

董承「残りの将が出てきたか、予定通り慌てずに落ち着いて対応するのだ!騒ぎを大きくする者は斬ると伝えよ!」

 

袁紹軍兵士「御意!」

 

 

 

 

 

稟「敵は包囲されて浮き足立ってます、一気呵成に攻め込んでください」

 

桃香「傷ついた焔耶ちゃんを救い出すよ!みんな続いて!」

 

紫苑「わたくしの部隊は一斉射後、曹操さんの加勢に参ります。指示を見逃さないで下さい」

 

星「我らは劉備殿に続く、各員遅れるな!」

 

秋蘭「我らは黄忠殿の一斉射の後に各部隊の進路上の敵に向けて連射する、われの合図を見逃すな!」

 

 

 

 

盧植「完全に包囲されたか・・・郭嘉の入知恵もあるだろうがこの兵の動かし方は桃香の用兵か、わしに気づかせずに包囲を完成させるとは見事・・・だがこの戦線はもらった」

 

 

桃香の指示により潜み包囲を完成させた桃香と星率いる歩兵、稟率いる騎兵、紫苑と秋蘭率いる弓兵隊が劣勢に立たされている華琳達を救うべく総攻撃を開始。袁紹軍は前後より攻められる事になり桃香の策が成功した・・・しかし殲滅戦に移ろうとしていた桃香の耳に新たに出撃を知らせる銅鑼が鳴り響いた

 

 

陳宮「敵は既に陳宮の手中に落ちたのです、今こそしぶとい劉備や妹の曹操を討つのですぞ!」

 

袁紹「・・・ここで連合軍を打ち破りなさい、褒美は約束しますわ」

 

 

ほぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

 

盧植「わしらも袁紹様に続くぞ、袁紹様の前で手柄をたてるのじゃ!」

 

 

 

 

 

 

桃香「!? 何の音ですか!」

 

連合軍兵士「た、大変です!黄巾兵が戦場に現れました、逆に我が軍が包囲されております!」

 

桃香「・・・黄巾兵を率いている将は誰ですか?あと張三姉妹の姿はありますか」

 

連合軍兵士「敵将は陳と袁の旗印です、張三姉妹の姿は前線では確認されておりません」

 

桃香「陳宮だけでなく、総大将の袁紹さんまで・・・全将兵に伝令、私の旗に集結するように伝えてください、一点突破で戦線を離脱します。」

 

星「劉備殿は魏延の傍に居てくだされ、敵兵は私が引き受けます!」

 

桃香「趙雲さん・・・いまはあなたが頼りです、よろしくお願いします!」

 

星「承知、劉備隊・趙雲隊に告ぐ!敵の包囲を突破するために血路を開く!この趙子龍に続けえええ!」

 

 

袁紹・陳宮。黄巾兵の出現はすぐさま桃香によって全軍に伝えられた・・・このまま戦えば全滅は免れない。戦場を離脱するためには全軍を集結させての一点突破しか道は残されていなかった

 

 

 

 

稟「一杯食わされましたか・・・すぐに劉備殿の下に赴きます、急いでください」

 

華琳「一刀のいる本陣では無く私達に黄巾兵をぶつけてくるか・・・完全に裏をかかれたわね」

 

紫苑「これは・・・曹操さん、すぐに劉備さんの下へ参りましょう。このままでは各個撃破されますわ」

 

 

華琳「そうね・・・すぐに戦線を退き劉備軍と合流する、みな遅れるな」

 

 

秋蘭「不味いな、完全に逆包囲されたか」

 

夏侯淵隊兵士「夏侯淵様、我らも長く留まるのは危険です」

 

秋蘭「わかっておる、華琳様や劉備達の退却と援護しつつ後退する!」

 

 

中軍の策は逆手に取られ、袁紹軍に逆包囲を許してしまったため、すぐさま退却の姿勢を取るが・・・袁紹軍軍師・陳宮はそれを見逃す事は無かった

 

 

 

 

陳宮「敵は我らに対抗できる兵力はないのです、一気呵成に攻め込み武功を挙げれば張三姉妹のらいぶの開催を約束するのです!」

 

 

ほああああああああああああ!!

 

ほああああああああああああ!!

 

ほああああああああああああ!!

 

 

袁紹「・・・劉備軍の北西が手薄ですわ、騎馬隊は手薄な箇所を吶喊し掻き乱しなさい」

 

董承「袁紹様の本隊に負けるな、わしらも勇を奮って戦うのだ!」

 

盧植「戦線を押し込み包囲を完全に完成させるのだ」

 

 

 

盧植、董承、袁紹軍本隊、黄巾兵が孤立した劉備軍に殺到。桃香は防御陣形である方円陣で持ちこたえているが兵力の差は歴然、別戦線にいた華琳や紫苑や稟はなんとか桃香と合流を果たし死地からの脱出を試みようとしていた

 

 

 

 

桃香「曹操さん達!無事でよかったです!」

 

華琳「これを無事と呼べないけどね」

 

稟「黄巾兵だけでも手が余ると言うのに袁紹本隊まで戦線に投入するとは・・・」

 

紫苑「黄巾兵はわたくし達の本陣に行くという先入観に捕らわれすぎました」

 

星「御託は後だ、いまはなんとしてもここから退却しなければ!」

 

 

桃香「趙雲さんの言うとおり反省は後にしましょう、いまはここを脱し本陣まで撤退しないと・・・曹操さん、黄忠さん、趙雲さん、夏侯淵さんはまだ戦えますか?」

 

紫苑「わたくしは問題ありませんわ」

 

星「っふ、あれしきで疲れるほど軟ではありません」

 

秋蘭「私も問題ない、華琳様こそ疲れが溜まっているのではないですか?」

 

華琳「誰に言ってるのかしら?私も問題ないわよ、これでも体力には自信があるから。それよりも魏延は負傷したと聞いたのだけど大丈夫かしら」

 

桃香「利き腕が軽く斬られたのとかなり疲労が溜まっていたので、治療させ休ませてます」

 

稟「魏延殿が戦えないとなると・・・突破するには圧倒的に将の数が足りません」

 

桃香「ですがここで踏みとどまっているだけの兵力はありません、なんとしても突破しないと」

 

 

桃香の言うとおり魏延も負傷し策も覆され反抗するだけの戦力は既に残されていなかった。

諸将はいかに突破するか考えようとするが、袁紹軍の攻勢は激しさを増し、中軍の将達に考えを与える隙を与えようとしない

 

 

 

 

 

そんな絶対絶命の桃香達に起死回生を知らせる銅鑼が鳴り響く

 

 

ジャーンジャーンジャーン!!

 

 

華琳「今度の銅鑼はなんだ!また敵の増援か!」

 

桃香「これ以上増えたらもう総崩れしかない・・・」

 

稟「お待ちください、進軍路がこちらではありません!」

 

紫苑「いえ、あの旗印は味方です・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陳宮「何事ですか!」

 

袁紹軍兵士「敵の援軍のようです、それほど兵数は多くないようですが」

 

陳宮「将は誰が来たですか」

 

袁紹軍兵士「旗印は袁・孫・周・呂・徐にございます」

 

陳宮「袁と孫・・・袁術一派・・・皇甫嵩達しくじったですか」

 

袁紹軍兵士「信じられません、朱儁将軍・皇甫嵩将軍が敗れたと言う事でしょうか」

 

袁紹「陳宮さん、敵の援軍ですの?」

 

陳宮「袁術、孫策の軍なのです、勢いを増してこちらに近づいているのです」

 

袁紹「美羽さん・・・」

 

陳宮「麗羽殿、袁術は既に我らの敵ですぞ」

 

袁紹「・・・・わかってます、兵を割き増援部隊にぶつけなさい」

 

陳宮「御意」

 

 

 

 

亞莎「袁紹軍が我らに気が付きました、こちらに兵が向かって来ています!」

 

雪蓮「なんとか間に合ったわね」

 

美羽「噂では聞いておったが・・・雪蓮の勘は凄まじいのじゃ」

 

冥琳「奴らの切り札である黄巾兵のみならず、袁紹本人も参戦しているとは・・・我らの到着が少しでも遅れていたら全滅は免れなかっただろうな」

 

亞莎「敵軍を撃破し劉備さん達の救援に向かいましょう!」

 

美羽「ならば・・・雪蓮は突っ込んでくる敵軍を蹴散らし、道を斬り開くのじゃ、余力があるようなら全力を出しても構わないのじゃ」

 

雪蓮「わかったわ、任せてちょうだい」

 

美羽「亞莎・徐栄は雪蓮が斬り開いた道を駆け進み、華琳ねーさま達と合流し、護衛するのじゃ」

 

亞莎「わかりました!」

 

徐栄「承知、桃香様達を必ずや護りいたします」

 

雪蓮「美羽と冥琳はどうするの?」

 

美羽「妾と冥琳は華琳ねーさま達の側面の敵に向かうのじゃ、すまぬが冥琳にも戦ってもらうつもりじゃ」

 

冥琳「わかった、今でも鍛錬はかかしてないし一般兵程度なら蹴散らしてみせよう」

 

美羽「皆のもの、これは友軍を救う戦なのじゃ!深追いせずに攻め寄せる敵のみ相手にするのじゃ!銅鑼を鳴らし旗を多く掲げ我らの存在を知らしめるのじゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

紫苑「旗印は袁と孫、美羽様率いる右翼の援軍です!」

 

桃香「袁術さん達はどう動いてますか!?」

 

稟「少々お待ちを・・・孫策殿が道を切り開き、亞莎と徐栄殿がこちらに向かってきております。袁術殿と周喩殿は我らの側面に回っており、後退する我らの援護をしてくれていると思います」

 

桃香「ありがたいです、これで面前の敵だけに集中できます・・・趙雲さんと曹操さんと先頭に突破を図ります!黄忠さんと夏侯淵さんは弓で援護をお願いします!側面・退路の敵は友軍に任せ面前の敵だけに集中してください!」

 

 

 

美羽や雪蓮が到着した事で桃香達は退路を塞ぐ目の前の敵だけに集中出来るようになるが、分厚い壁と化している包囲網を突破するにはまだ足りなかった

 

 

 

 

盧植「袁術・孫策軍の出現には驚いたが、包囲網を突破するには至らないようだな。攻めを緩めるでないぞ!ここで討ち取るのだ」

 

盧植隊兵士「っはは!」

 

 

 

 

 

董承「くそ、連中は取り逃したか」

 

董承隊兵士「孫策軍の突破力を侮っていましたが、なだ追いつける距離です、追って奴らを討ちましょう!」

 

董承「よく申した!ここで逃がすわけにはいかん、追撃だー!」

 

 

 

 

 

陳宮「孫策は止められなかったですが、ここまでは予定通りなのです、奴らに余力はもう無いはず、さあ一気に攻め滅ぼすのです!」

 

 

ワーワーワーワー!!

 

 

 

陳宮「何事ですか!」

 

 

陳宮隊兵士「小勢のようですがまた敵増援の模様です」

 

陳宮「呼び兵力を向かわせて撃滅させるのです」

 

陳宮隊兵士「御意」

 

 

 

袁術軍以外の軍が北から来たという報告を受け、陳宮は新たに呼び兵力を割き、踏み潰しに行かせる。

掃討戦に戻ろうとする陳宮にまた別方向から連合軍の援軍が突撃してきたと報告が”複数”入る

 

 

伝令「申し上げます!新たに北西から敵軍を確認しました!」

 

陳宮「またですか!今度は黄巾兵を向かわせるのです!」

 

伝令「はっはは!」

 

 

袁紹「陳宮さん、どうかしましたの」

 

陳宮「いえ、なんでもないです。もうすぐ劉備、曹操、袁術まとめて討てるはずです!」

 

袁紹「いえ・・・討たずに捕まえてください、話す事がありますので」

 

陳宮「はい?わ、わかったのです」

 

 

伝令2「陳宮様ーー!たたたた大変です!」

 

陳宮「やかましいです!落ち着いて喋るのです!」

 

伝令2「も、申し訳ございません。で、ですが大変です!”南”から新たに敵の増援がやって参りました!」

 

陳宮「なんですとー!南といえば・・・これは不味いのです!すぐに北と北西からの敵を打ち破るのです!」

 

 

 

 

 

 

劉備隊兵士「劉備様申し上げます!北と北東より新たに少数ですが援軍が到着しました!」

 

桃香「本当ですか!中央と左翼の人達が来てくれたんですね!」

 

華琳「劉備!まだ前方の敵を蹴散らせてないのよ、安心してる場合じゃないわよ!」

 

紫苑「斬っても斬っても次々とやってまいりますわね、まるでイナゴのようですわ」

 

亞莎「でもこれで更に背後を気にせずによくなりました、もうすぐ」

 

稟「みなさん前を向いてください!我らの前方に新たな軍勢です!」

 

桃香「またですか!これ以上増えたらもう突破はむ・・・」

 

稟「待ってください!あの軍は!」

 

星「遅いですぞ」

 

秋蘭「全くだ、待たせよって」

 

 

 

 

 

一刀「やれやれ、陳宮も随分と面倒な罠ばっかり仕掛けてくれたもんだ」

 

凪「偽兵・偽報・落とし穴・仕掛け網・縄をつるして騎馬の勢いを殺しなど多すぎて途中で回数数えるの辞めてしまいました」

 

真桜「せやけど落とし穴は隊長が完全看破、偽報も風が見抜いて被害は実際なかったわけやしな」

 

沙和「ほんと隊長凄かったの〜なんであんな的確に落とし穴が掘られてる場所がわかったのー?」

 

風「真桜ちゃん、そんなの決まってるじゃないですか〜桂花ちゃんとの愛で培わされた特技です」

 

真桜「あ〜納得したわ」

 

愛紗「一刀様、状況は芳しくありません、すぐに助け出しましょう」

 

一刀「そうだな、話すのは後にしよう。凪・真桜・沙和は桃香達の撤退を補佐してくれ」

 

凪・真桜・沙和「わかりました(了解や)任せろなの〜!」

 

一刀「流琉・明命は美羽や北でまだ戦ってる味方を救い出せ」

 

流琉・明命「わかりました兄様!『お任せください一刀様!』」

 

一刀「風は愛紗を連れて身動きが取れてない霞達を連れてきてくれ」

 

 

凪「霞様達は幾多に柵を配置され、騎馬兵が完全に無効化されてますからね」

 

一刀「だから我が軍随一の武を誇る愛紗と、どんな窮地でも変幻自在に対応できる風に行ってもらう」

 

愛紗「私の事をそこまで信じてくれているんですね・・・この関雲張!一刀様の障害はすべて青龍偃月刀で薙ぎ払ってみせます!」

 

風「御意〜そこまで期待されたら風も頑張っちゃうのです、お任せなのです〜」

 

 

一刀「恋は俺と一緒に袁紹、陳宮のいる分厚い軍に突っ込む。邪魔する者はすべて」

 

恋「ん、任せて。にぃにの敵は全員殺す」

 

 

凪「流石に黄巾兵と袁紹の本隊に突っ込むのは危険だと思います」

 

一刀「大丈夫だよ、恋もいるしちょっと挨拶に行って来るだけだから」

 

恋「にぃには恋が護る」

 

凪「隊長時間がありません、行きましょう」

 

一刀「あぁ。全員に告ぐ!ここは死に場所ではない、役目を全うし”生きて”戻ってくるのだ、俺の許可無しに死ぬのは許さん!」

 

 

 

 

 

 

桃香「一刀さん・・・来てくれたんだね!」

 

華琳(まったく・・・来るのが遅いのよ・・・ばか)

 

稟「劉備殿、一刀殿とその親衛隊である5将が戦場に現れた事で敵に動揺が広がっております、凪・真桜・沙和が我らの援護に回ってくれています。早急に脱出し、態勢を立て直しましょう!」

 

桃香「わかりました・・・みんな!私達の総大将の曹仁さんが助けに来てくれました!辛いと思いますがもうひと踏ん張りです、頑張ってください!」

 

 

 

完全に包囲され撤退が困難を極めていた桃香達であったが、美羽や雪蓮の補佐、撃破され退却していた春蘭達の意地、そして全軍の心の支えとなる一刀の到着により、兵達に生気みなぎり士気も最高潮に達していた。

 

 

袁紹軍は中軍の桃香達に加え戦線に乱入している美羽や雪蓮

 

北より張飛・季衣・回復した春蘭・思春

北西より程普・祭・孫尚香

南から一刀本隊

そして風と愛紗によって足止めから開放された霞や翠の遊撃騎馬隊と全方向に対応しなければならなくなり、形勢は完全に逆転されていた

 

 

 

 

 

盧植「ぬぅ、顔良や文醜達から逃れてきた敵軍がこのような形で桃香の援軍となろうとは予想外じゃ!」

 

盧植隊兵士「盧植様!典韋、周泰の旗印がこちらに接近しております!物凄い勢いで我らだけでは止められません!」

 

盧植「董承はどうしておる」

 

盧植隊兵士「袁術の道を切り開いていた孫策に見つかり交戦中との事ですが、孫策の武勇に恐れを抱き乱れていると報が入りました」

 

盧植「董承は来れぬか。桃香達の進む先には楽進、李典、于禁の旗印が靡いておる・・・無念じゃがここは袁紹様達と合流するのじゃ、無駄に命を散らしてはならぬ」

 

盧植隊兵士「っは!全軍に通達し、すぐに隊を退かせます!」

 

 

盧植隊が後退、董承隊も身動きが取れないとの情報はすぐさま陳宮の下に届いていたが、陳宮も各戦線への指示で手が一杯だった

 

 

 

 

陳宮「盧植が後退し董承も足止め・・・むむむ、まだ北から逃げてきた連合軍は破れないのですか!」

 

陳宮隊兵士「黄巾兵の士気は高いのですが・・・やはり訓練を受けてない雑兵でして・・・統率の取れていない部分を諸葛亮や?統に見抜かれておりまして」

 

陳宮「諸葛亮と?統は陳宮に2度もやられているのですぞ、増援を差し向け蹴散らすのです!」

 

陳宮隊兵士「御意」

 

 

陳宮「曹仁が現れたと言っても兵の数は圧倒的にまだ有利・・・いけるはずです」

 

袁紹「陳宮さん、いらっしゃいますか」

 

陳宮「これは麗羽殿、どうしたのです」

 

 

打ち合わせてでもないのに、本隊を率いているはずの麗羽がなぜ本隊から離れ陳宮の陣に居るのかわからず、袁紹に問いかける陳宮に思いがけない一言が放たれた

 

袁紹「陳宮さん、足止めをしていた一刀さんが戦場に到着してしまった為これ以上戦っても戦況は悪化するだけです、一度退き再度態勢を整えてから攻めましょう」

 

陳宮「麗羽殿、それはどういう事ですか!?」

 

袁紹の放った内容は追い詰めていた桃香達を捨てて撤退する事だった

陳宮は練りに練った策が成功し、連合軍を窮地に追いやってる自負もあり簡単には頷けない

 

 

袁紹「言葉通りの意味ですわ、あなたの策では一刀さんや取り巻きの5将、それに驍将と呼ばれている張遼率いる騎馬隊を足止めし、その間に先鋒、中軍を撃破殲滅する策。その策に一刀さんが戦場に現れた時に対応する内容はありますか?」

 

陳宮「それは・・・」

 

 

袁紹の問いに陳宮は何もいえなかった。自分の立てた策は袁紹の言う通り曹仁と騎馬隊を無効化したうえでの殲滅作戦。

その前提が崩れ、その場凌ぎの対応しか出来ない時点で策として機能していないのは明白だ

 

袁紹「陳宮さんが決戦に向けて策練っていたのは私が一番知っていますわ、それゆえ策が決まりあと一歩だったという気持ちもわかります」

 

陳宮「ならば!」

 

 

袁紹「ですが・・・一刀さんの力を甘く見たらいけません、虎牢関の戦いでも最後の最後で一刀さんに戦況をひっくり返された。あの時と同じ伝を踏んではなりません。」

 

袁紹「大陸有数の軍が集結した敵連合軍の先鋒を壊滅させ中軍も大打撃を与え将を負傷させたです、戦果は充分、敵が少数だと侮って負けるぐらいならここは退くべきだとわたくしは思いますわ」

 

 

陳宮「袁紹殿・・・申し訳ないです、曹仁には邪魔ばかりされていたので意地になってました」

 

 

虎牢関、琢郡攻略、濮陽での撤退追撃戦と一刀本人や将達にことごとく邪魔をされていた陳宮は念入りに一刀達を除外させる策を用いた。しかしそれでも一刀達が戦場に現れたしまった事で陳宮は意固地になっていた

 

 

 

伝令「申し上げます、敵将楽進・李典・于禁の手引きにより劉備達に包囲突破されてしまいました!」

 

 

伝令2「伝令!敵騎馬隊に仕掛けていた罠がすべて破壊されたとの報が届きました!」

 

 

伝令3「も、申し上げます!敵総大将曹仁!それに連れ添う呂布が無人の野を駆けるが如くこちらに進軍しております!」

 

 

袁紹「やはり潮時ですわね、貴方達三人はすぐに全軍に本陣まで後退指示を出しなさい!」

 

伝令'S「「「御意!」」」

 

陳宮「戦況はひっくり返されましたが、依然陳宮達が圧倒的に優位なのは変わりないのです、次こそ確実に息の根を止めてみせるのです!」

 

袁紹「期待していますわ、さあ!ぐずぐずしていては追いつかれます、すぐさま後退なさい」

 

 

 

 

 

袁紹が後退の命を下した頃、一刀と恋は黄巾兵の分厚い壁をひたすらぶち抜いて進んでいた

 

 

一刀「斬っても吹っ飛ばしても次から次へと・・・キリが無いな」

 

恋「敵異常。恋がこれだけ斬っても群がってくる・・・・こんな敵初めて」

 

 

いつからかはわからないが、張三姉妹を取り込み密かに軍団を組織し、武神すら恐れない死兵を造り上げていた。その為圧倒的な武を誇る一刀と恋が一千や二千の敵兵を葬っても絶えず襲い掛かって来る

 

 

恋「進む...?」

 

一刀「どうするかな・・・このまま進んでも簡単に辿り着けない気がするな」

 

 

愛紗「一刀様!ご無事ですか!」

 

一刀「俺と恋は無事だよ、愛紗も無事でよかったよ。でもどうしてここに?」

 

愛紗「っは、風から伝言を頼まれたのでお伝えに参りました」

 

一刀「風から?風はなんて言ってた?」

 

愛紗「お兄さん〜袁紹と陳宮は撤退を開始したそうです、相手が退くならばこちらも軍をまとめて退きましょう〜との事です」

 

一刀「後方の旗が動いてたのはそういう事か・・・わかった、風の言うとおりここは退くのがよさそうだな。それにしても・・・風の口調まで真似しなくてもよかったのに」

 

愛紗「それが・・・この通りに言わないとしばらく一刀様と会わせないと脅されまして・・・」

 

一刀「風も悪戯が好きだなまったく....」

 

恋「にぃに、話すなら後で・・・散ってた敵が集まってきた」

 

一刀「他戦線に回してた黄巾兵か、恋・愛紗!囲まれる前に退くぞ!」

 

恋・愛紗「ん...『御意!』」

 

 

 

 

 

 

 

説明
お待たせいたしました、物語完結です

文字制限がかかったので、2話に分けて投稿します
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コメント
誤字報告を。「お?言いこと言うじゃないか」台詞は、「お?良いこと言うじゃないか」ですね。(アストラナガンXD)
ところで、ワンコ隊が最強戦力なのはいいんですが、強い順に並べるとどうなるんですかね?(M.N.F.)
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恋姫†無双 完結 

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