真・恋姫†無双〜物語は俺が書く〜 第19幕
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真・恋姫†無双〜物語は俺が書く〜

 

第十九幕「さぁ、―――しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 不意に足が止まる。

 

 

「ほんと、月日が経つのは早い。あの出会いから二ヶ月ですか…」

 

 

 たかが二ヶ月、されど二ヶ月。あの時から血畏怖といれば、過去を思い出す事が無くなった。血畏怖談によれば、心的障害…(トラウマ?と言うらいし。)は心にゆとりを持つ事が大事らしい。きっと、血畏怖からは心を落ちつける何かが発せられているに違いない…うん。

 

 私様は暇さえあれば、血畏怖の近くに居るようになった。

 

 警備隊の休憩時間、警備の時も、調錬の時も時間の許す限り。

 

 

 

 そして、ある夜に血畏怖の部屋にお呼ばれされた。

 

 あの時の私様は、其れはもう絹娘のように顔を真赤にするは、身体を清めたり大慌てだった。

 

 …まぁ、朴念仁、唐変木と知ったのもこの時であるが………。

 

 

 

『………』

 

『んぁ?おぉ、零。如何した?部屋の前で固まって。まるで「どうして?このお方が、この様な場所に?」みたいな顔して』

 

『まさしく、その通りですよ』

 

 

 私様は血畏怖から視線を逸らし、部屋に置いてある椅子に優雅に座っている―――。

 

 

『一刀、その娘が例の?』

 

 

それは『覇王』。

 

その方は我らが太守。

 

 

その名は―――『曹操孟徳』

 

 

はっきり言って、理解が出来ない。我らが血畏怖は飽くまでも、警備隊の隊長であって太守の傍に居れる…ましてや、太守自ら隊長の部屋を尋ねる事など間違っても無い。

 

下手をすれば、変な噂を立てられて曹操さまの立場が危うくなると言うのに…。

 

 

『そう、こいつが今話していた例の娘♪可愛いだろ?でも、摘み食いするなよ?』

 

『―――貴方、私をなんだと思って…#』

 

 

 血畏怖が冗談めかしく、曹操さまに悪戯な笑みを向ける。その言葉に曹操さまの額に青筋が浮かんでいる!?

 

 というか、血畏怖!?ツッコミどころが満載ですね!??太守の真名を呼ぶとか、冗談をいうとか、つか、なに、私様は喰われる!?比喩的にですか!?それとも物理的に!?捕食はいや〜〜!!!

 

 脳内でその様なやり取りをしている間にも、血畏怖は不思議そうな顔を浮かべていた。

 

 

『???「この世の美しい娘は全て私の物」と豪語する女傑じゃないの?』

 

 

いやいや、違うでしょ?確かに曹操さまの周りにはその様なお噂は絶えないが…この世全ては流石に――『間違って無い(キリッ』―――ほら、って!?えぇ〜〜!!!??

 

 

『ボケ殺し!?なんて、高度な技を…!!!華琳、恐ろしい娘!?いや、寧ろ否定してくれ!』

 

 

 血畏怖が目を見開き、驚くが正直に言いましょう。

 

 

『うん、ついていけません。無理ですね。「空気[くうき]」を「からけ」と読むくらいに』

 

 

 それより、この方は本当に私様が知っている、太守なのか?少なくとも私様が知っている曹操さまは『覇・道・一・筋』な御方だったはず…。

 

 そう、戦の鼓舞[こぶ]などで見る曹操さまにはそう言った気迫…と言って差し支えがないだろう。そう言った物があった。その気迫があるからこそ、人を引き付ける事が出来る。

 

 

『(しかし、それも最初だけ…。多くの者は気づいていないだろうが、その気迫もここ最近、徐々に…日に日に弱まっているような?)』

 

 

 まぁ、飽く迄も私様が勝手に思っているだけでありますが。

 

 もし…もしも、この考えが正しいなら。曹操さまを堕落させつつある要因[者]……それは。

 

 私様は、横目で気づかれないように血畏怖を盗み見る。覇王を堕落要因があるとするなら彼を置いて他にいない。だって、周りに居る武将・軍師は神を崇めるかのように『曹操さま、曹操さま』。ハッキリ言おう。私様はあれが何より嫌いだ。百合百合しい所とか、何か劣る度に『曹操さまを見習え』とか。

 

最近、血畏怖と勉強するようになって理解した。

 

 

 

【人は何かしら劣る。人は万能ではない】

 

 

血畏怖はこれを基準に置き、物事をお考えになられる。

 

少し前に私様の部屋で勉強を教えている時、こう仰った。

 

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†††  数 週 間 前  †††

 

 

『うん、零』

 

『なんでしょうか、血畏怖?』

 

 

 勉強。血畏怖が問題を出題し、私様が解く。

 

 至極単純なやり方。そして、そのやり取りを何回か行った結果…血畏怖は良い笑顔を浮かべて……。

 

 

『うん。馬鹿だな』

 

 

 

―――ピシッ。

 

 

 

自分の中で、何かに罅が走る。

 

 

『――あはっ♪』

 

 

 自分も笑顔になりつつ、引き出しの中にあるモノを掴む。

 

 それは竹簡で修正する時に削る為の小刀。切れ味も良い。其れを鞘から引き抜き、自分の首に当てて…。

 

 

『よし、死のう』

 

 

 そのまま、刃を押し当て…。

 

 

―――ドス。

 

 

 

『―――人の話を最後まで聞けぃ#』

 

 

 …る、前に血畏怖の手刀が先に入る。私様はそのまま、机に倒れ込む。

 

 

 

――― 少し、お待ちくだs ―――

 

『………はっ!』

 

『えっ!?そんな、莫迦な!?綺麗に決まったのだぞ、十秒そこら目を覚ます事が出来るか?いや、無い!反語!!』

 

 

 えっ、なに?何が起きたのですか?あ、でもこの感覚は“気絶させられ”かけたのですね。昔から身体だけは頑丈でしたから?。

 

 

『いや、そういう問題でもないだろ(汗)』

 

 

 血畏怖が何か話しているけど、耳に入って来ない。折角に認めて…私様の拠り所になってくれそうな人に、ば…莫迦扱いされるとは!

 

 

『―――そうだ、首を吊ろう。そうでなければ、荀ケさまがよく掘っている穴に落ちてしまおう。その上で血畏怖、この憐れな肉塊を蔑んだ眼で罵った後に土でも被せてやってくださ―――』

 

『ツッコミどころ満載だなっ!?首吊んな!桂花は何掘ってんだよ!?ネコでも掘ったら埋めるぞ!?華琳に言いつけてやるぜ!というより、何で律儀に全てに突っ込むのだ、俺!?つか、本気で待て!?』

 

『ふはははぁはっ!』

 

 

 

―――  閑 話 休 題  ―――

 

 

『落ちついたか…?』

 

『た、大変に見苦しい所をお見せしました…。(汗)』

 

 

 最初に会った時とは、逆に今度は私様が正坐させられていた。………タンコブ付きで、しかも3段です!

 

 血畏怖は疲れたように頭を掻きつつ、溜息を吐いた。私様と話す事はそれほど疲れるものだろうか?そう思っている最中、血畏怖が口を開く。

 

 

『最初に言っておくべきだった。俺は別にお前を莫迦にした訳じゃない』

 

 

『えっ?』

 

 

 どういう事であろうか?

 

 血畏怖は呆ける私様に構わず、そのまま続ける。

 

 

『つまりは、俺は『お前』を莫迦にしたのではなく、お前を莫迦にした『姉妹』を莫迦にしているのだよ』

 

 

 ………か、考えろ、言葉の意味を。

 

 

 ………………あ、諦めるな!私様。

 

………………………………ま、ま、まだいける。

 

………………………………………駄目だ。思考が追い付いて来ない。

 

 

『すみません、血畏怖。司馬懿は…零は出来そこないです(⊃дΠ)』

 

『えっ!?何、俺が何かしたのか!!?』

 

 

 行き成り、泣き出した私様をみて、慌てだす血畏怖。

 

 だって―――。

 

 

『お言葉ですが、私様の姉妹はこの出来そこないの私様から見ても、「博覧強記」・「才気煥発」。例え、陰口であっても莫迦などとは…』

 

 

 ―――言えない。と言おうとするよりも先に血畏怖が口を開いた。

 

 

『?莫迦なモノは莫迦であろう?』

 

 

 うっはー。ぶっちゃけちゃったよ、この上官!

 

 しかも、御顔が『何を言ってんの、このイタ娘は?アホなの、死ぬの?』と、語っていらっしゃる!?

 

 顔が引き攣っている私様に目もくれず、そのまま話し続ける。

 

 

『はんっ!博覧強記?多くの書物を読んで、それを記憶して知識が豊満?だから、何だよ。必要なのは、その“知識”を“如何生かすか”じゃないのか?記憶しているだけなら書物庫にでもなれ。知識を生かさないなら、勉強している意味も無い』

 

 

 早口で捲し立てるように、そして不機嫌そうに語る。

 

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 ………全く、このお方は―――。

 

 

『才気煥発?頭の働きが速く優れている?才能が光り輝き目立つこと?才気が盛んに外に現れる様子?何すか、それ?頭の回転が速いから何?輝き目立つ?宝石だって陽の光に当たらなければ、光らないぜ。才気が盛んに外に現れるって、それを何に役立てるのかご教授願いたいね〜!』

 

 

 ―――この方の御言葉は常に私様に、何かを与え、考えさせ、何所かえ導く。

 

 

 血畏怖は『其れに――』と言葉を紡ぐ。

 

 

『こんな“貴重な原石”をクズ呼ばわりとは、片腹痛いわ!』

 

 

…はっ!危ない。またも思考が停止する所であった。私様も直ぐに『自分はそのような者ではない』と訂正しようと顔を上げた瞬間、眼前に何かを突き付けられた。

 

 

『是は…。この前のて、て…てすためんと紙?』

 

『なんで、不要者駆除器やねん。「テ・ス・ト」、“試験”や“検査”って意味。と言うより、無理に天界〔外来〕用語を使わなくて良いから。―――あぁ、因みにテスタメントは本来、『聖書』って意味だから。はい、ここ次の試験紙に出ま〜す』

 

 

 だって、カッコイイじゃないですか。あと、メモ、メモ。

 

 そんな感想はさて置き、二枚ある内の一枚を私様の前に置く。(因みに、今は椅子の上に座っております)

 

 

『まずはこれ。お前が最初に受けた試験紙。―――まぁ、見るも無残だから敢えてなにも、言う気はない。それでも言うなら「まぁ、最初だもん。生きていれば、良い事もあるさd」だな』

 

 

 舌を出しながら、親指を立て良い顔をしていた血畏怖に向かい、こう叫んだ。

 

 

『それ、試験紙を返した時に肩を叩きながら、言われた言葉じゃないですか↓』

 

 

 あの時の血畏怖の笑顔って言ったら、カッコよ…ゲフン、憎くてしょうがなかった。まぁ、返された答案用紙は赤墨(一刀、お手製)の嵐であった。×印だが。

 

 あぁ、思い出しただけで涙が…と思う傍から、次の紙が出される。しかし、見なくても流れで理解する。これは、つい今し方、受けた“てすと”である。寧ろ、『莫迦事件』はこれから始まったのだ。

 

 

―――ごくん。

 

 

唾を飲み、紙をまじまじ見詰める。冷汗が背中を伝うのが解る。それほど、緊張していると言う事だ。

 

 その試験紙は…、勿体ぶってもしょうがないので結果を言おう。

 

 

『―――赤丸が、こんなにたくさん…!?』

 

 

 自分でも、驚きだ。十問中の八問正解だ。今までこんな事は…!?

 

 

『お前が正解した八問…。それは前回のテストに出した問題をちょこっと、数字をいじったりしたモノ。それは完璧だった』

 

 

 うむ、それは何となく分かった。それに血畏怖が前回の答案用紙を返した後に、復習してくれたから。…一緒に。

 

 

『その他の国語【読解力】(二問)、歴史、地理【地図】、兵法(二問)、社会【政事】。是も出来ていた。というより、驚いた』

 

 

 えっ、何がでしょうか?

 

 机に肘をつきつつ、手で顔を抑えている血畏怖の瞳は私様を捕らえていた。

 

 その瞳には面白いモノを見つけた子供の様な眼だったと、今なら分かる。

 

 

『一つ。良く俺の書いた文を読めたな?正直、苦情を覚悟していたのが?』

 

『それは、血畏怖の文字を何度か、拝見した事がありましたから。確かに文脈がおかしいなと思ったりしましたけど、何となく『こういう事を言いたいのかな?』と思い回答しました』

 

『―――(読解力?違うな。柔軟な思考を持っているからこそ、問題を解く事が出来たんだ。)己れで考え、答えを導き出した…か』

 

『いや、そんな大それた事でも―――』

 

『しかし、それが有るからこそ、俺の意地悪問題にも回答する事が出来たんだぞ』

 

 

 ???意地悪問題…ですか?

 

 

『兵法の問・弐【次の状況から得策を挙げなさい。「今現在、敵三千が本陣に向かって進軍中。貴女はその進行方向の途中の関所に百の兵を連れて籠城しています。どうしますか?」】という、問いに対して回答…まさか、【本陣に伝令をを出した後、門を開き素通りさせる】とは…』

 

『いや、だって勝てる訳無いじゃないですか。人の命だって無駄に散らせる訳にはいかない。それなら、門を素通りさせた後に本陣と共に挟撃した方が有効だと思いますが…。変でしょうか?』

 

『―――(本来、郭嘉と程cが考える作戦…いや、酷似しているだけか?)さてな?常の軍師ならば、【籠城、本陣に伝令して増援を要請する】か【戦場を理解した後、降参】。若しくは【吶喊】などもあるが…。

前者はよくある形式だが、現状を把握していない悪手。戦力差を読んでいない。

 

後者二点は論外。一当てをして時間を稼ぐ事も出来るだろ。

 

吶喊など武将ならばまだしも、軍事としては愚の骨頂。

 

故に俺的にはお前の作戦を押すな。無駄に被害を出さずに敵に大打撃を与える。

 

今後はお前の様な軍師が増えるといいのだが…』

 

 

えっ、それって。

 

 

『あ、あの其れは【お馬鹿】などと言う意味でしょうか?』

 

 

正直、凹んでしまいます。

 

 

『違う。固執した思考、過去のやり方や伝統に囚われるのではなく。柔軟な思考、新たなやり方・考え方を持った軍師…と言う意味だ。お前のように…な』

 

 

『血畏怖は凄いですね…』

 

『んぁ?俺の何処が凄いんだよ?』

 

『だって、その年で軍師に登り詰めて、その上で頭も良くて腕も立つ…。完璧じゃ―――』

 

 

 

―――ビシャァアァァン。

 

 

 

『ハウルゥ!?』

 

 

 その続きを言おうとして、即座に黙った。いや、黙らされた。額の衝撃によって。つーか、座っていた椅子から少し飛んだんですが!?

 

 

『ツッコミ奥義【指弾】。通称、デコピン』

 

 

 その言葉に額を撫でながら、血畏怖を見ると腕を伸ばして私様の頭が有った所で、手を広げていた。

 

 そして、その手を降ろして呆れた顔で私様を見る。

 

 

『―――っ。べ、別に感じたりなんかしてませんからね!?』

 

『…お前へのツッコミは言葉や身体では無く、無視・放置の方が良さそうだな?』

 

 

 あっ、ヤバい。フザケルのも大概にしないと、血畏怖に本気で相手にしてもらえない…!取り敢えずは先ほどの続きを促す。

 

 そうすると、疲れた様な溜息を吐きつつ、こう言った。

 

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【人は何かしら劣る。人は万能ではない】

 

 

『―――…?血畏怖、あの?』

 

『司馬仲達、貴様は俺を『完璧』と言おうとしたな?』

 

 

 真名では名前で呼ばれる。と言う事は真面目な話になると言う事なので、私様も気持ちを切り替えて首を縦に振る。

 

 その様子を見て血畏怖…いや、北郷一刀はそっと瞼をおろしてツラツラと語るように言葉を紡いだ。

 

 

『俺は天才ではない。

軍略は天界に居た時の知識を利用しているに過ぎない。ここでは凄いかもしれないが、天界ではありふれた知識でも有る。あっちでは御遊び感覚(漫画や戦略ゲーム)で戦略を学ぶ事が出来る。

武に置いては、天才と言う言葉で片付けてほしくない。才能は有ったかもしれないけどな、そこで腐らないように腕を磨いたのは俺自身。そこから新たに極めたのは俺が諦めなかったからだ(道は一度、踏み外したけど…)」

 

 

 血畏怖ほどの方でも努力するのか…。確かに『天才』などと言う言葉で片付けて良モノではない。

 

 

『でもな、そんな俺でもどうしようもない事があった』

 

 

 血畏怖にも、如何する事も出来ない事?

 

 

『「自分から友達を………信頼出来る者を作る」。それが出来なかった』

 

『!!?嘘ですよね?人を思いやれる貴方が、そんな!』

 

 

 信じられない。詰処に来た時の事を考えれば―――。

 

 

―――隊長格の兵を殴り飛ばす血畏怖。

 

 

 考えれば―――

 

 

―――兵を殴り飛ばしながら罵倒する血畏怖。

 

 

 ………―――

 

 

―――『このボケナス共がッッッッ!!お前らは解って無い、解って無い!!』『鉄拳制裁ッ!』『誰が発言権を与えた!!?いいか!俺が許可するまで喋るんじゃない、返事は“イエス”か“sir Yes sir”だ!理解できたか?理解できたなら返事くらいしろ!!この人間の言葉を理解する事も出来ない猿共が!それでも軍人か!!?』『返事しろやっ!?モンキー共!!!』

 

 

『あれで出来る方が―――』

 

『あぁん?』

 

『イエ、ナンデモアリマセニヨ?』

 

 

 おかしい、と。続けようとしたが、ガンを飛ばされたら黙るしかあるまい。零ちゃんはビビりですよ!どうせ、下っ端ですよーだっ(>_<)!

 

 

『まぁ、俺の事はどうでも良いんだよ!取り敢えず、俺が言いたいのはな』

 

 

 血畏怖が頬を掻いた後に、私様をじっと見つめて――。

 

 

『零。お前は阿呆化もしれんが、其れを補うだけの才能もある。そして何より向上心と努力しようという、意思がある。天才でなくて鬼才で無くとも、その二つがあれば、お前は――司馬懿仲達は『歴史に名を残す軍師になれる。』』

 

 

 

 

 

††† 現  在(とは言っても過去) †††

 

 

 

『(あの時の血畏怖、カッコよかった〜。こう、キリッとねぇ、それでいて優しい笑みを浮かべた時にはもう!)』

 

 

 って、思考を飛ばしている時ではなかった。要は劣っていても良いって事!だから、まぁ今の曹操さまでも別に…。

 

 

―――曹操さまと血畏怖が笑っている。

 

 

 ズキリ、っと心が悲鳴をあげる。頭ではお似合いだと理解しているのに、何か…こう、うん。

 

 

『――― 納得いかない(ボソッ)』

 

『ん、如何した零?』

 

 

 私様の呟きに反応する血畏怖。其れを何でも無いと、感情の無い声で否定する自分。嫌になる位最低ですね、私様。

 

 それにしても、何でしょうか?曹操さまが目の前に居るだけで、凄く劣等感を感じる。

 

 その上、何かが私様を黒く塗りつぶすような感覚。

 

 

 

『奪え』っと。

『潰せ』っと。

 

 

 

 段々と意識が遠のく。

 

 

 

―――グラッ。

 

 

 

 あっ。身体が倒れ…。

 

 

『零っ!』

 

 

 身体が倒れる前に血畏怖が、私様の腕を取り、自分の方に引いた。

 

そのまま、懐にダイブ〈とびこむ〉する。

 

 

『……………』

 

 

 なにっ!?この安堵感!吃驚驚愕です!?こう落ちつくって云うーか、あり得なくねーみたいな!って私様は何を言って!?

 

 

『大丈夫か、気分が悪いなら部屋まで送るが?』

 

 

 私様は眼を見開く。聞き間違いか?

 

 部屋まで…だと!?そのまま、送り狼に―――!

 

 

 

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―――ゾクッ。

 

 

 

 殺気!?こんな所で!しかも近い。って、まさか――。

 

 チラっと瞳だけ動かして、横を見ると…。うんっ、思った通り。元凶は覇王さまだ。殺気は私様1割の血畏怖9割って所でしょう。

 

あと、血畏怖。殺気は感じているけど、如何して向けられているのか解らない顔をしていますね?鈍感何ですか?朴念仁ですね?唐変木だな?

 

 

『大丈夫です。少々、脚が縺〔モツ〕れただけです』

 

 

取り敢えず、1割と言っても身体に悪い事は変わりないので名残惜しいですが離れると致します。えぇ、名残惜しいですが!

 

 

『そうか。一応は大事を取って休め、用件も手短に話す』

 

 

 そう言って血畏怖は、曹操さまに向かい直してこう言った。

 

 

『華琳、こいつを俺の後継者に仕立て上げたいんだけど良いかな?』

 

『いいんじゃないかしら』

 

 

 んっ?今、何て言ったのかしら?零ちゃん、解らないわ〜。

 

 

『はい?…って、えぇ!?何を仰られておられるのですか!私が血畏怖の後継者?なに、あれですか?上げて落とすって云う物ですか!??血畏怖の鬼畜・悪魔・鬼・悪鬼・羅刹・排出鬼・精造鬼!!ここまで下郎だったなんて…私の純情返せ!』

 

『じゃあ、ある程度まで使えるように教育しておくよ』

 

 

 無視!?ここまで言われても動じない!どれだけの忍耐力!??って、其れよりも―――。

 

 

『いい加減に、説明をお願いしてください。どういう事ですか!?』

 

 

 もう、ボケとかやりませんから誰か、説明を!

 

 その言葉に、血畏怖が此方を向き説明を始める。

 

 

『零は俺の仕事範囲を知ってるか?』

 

 

 血畏怖の仕事範囲?確か。

 

 

『街の警羅に兵の調錬、及び調錬項目の作成。あと、軍師である以上部下からの報告を聞いて、報告書を作成して曹操さまに弄られる。戦闘面において軍略を練って、夏候惇将軍と許緒将軍の手綱を握りながら戦闘をこなして、そして最後に吹き飛ばされる。荀ケ軍師ともに政治や法律を考えて、最後に罵倒される。そして曹操さまの護衛…で、合っていますか?』

 

『――あぁ、嫌になる位。合っているよ』

 

 

 血畏怖が頭を押さえこんで返事を、してくれる。やはり、警羅の際に店の人に商品を貰っていたりしているのは、言わなくて正解でした。

 

 しかし、こうやって口にしてみると、凄い仕事の量ですね。

 

 

『まぁ、そこで俺も補佐が欲しい訳なんですよ?』

 

『それが…私ですか?』

 

 

 私様は頭を傾げつつ、血畏怖に問う。

 

 その問いに対し、血畏怖は頷きながら…そして、私様の眼を見てこう言い放った。

 

 

 

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『そうだ、零。俺には“お前が必要だ”』

 

 

 (――-必要…私様が?この零が…司馬懿仲達が必要とされている!)

 

 

 心が歓喜し、震え上がるのがわかる。身体も小刻みに震える。顔もきっとにやけているに決まっている。

 

 笑い出してしまいそう。でも、今は駄目だ。曹操さまがいる前で、あのような笑い方は失礼極まりない。

 

 そう思いつつ、視線を横にずらして曹操さまを盗み見る。

 

 

 すごく、つまらなそうにこちらを見ていた。

 

 

 苛だっている…、そう捉えても過言ではない。そういった感じに見える。

 

 そう感じていると、曹操さまがゆっくりと立ち上がる。そして、血畏怖に向かい言葉を投げかけた。

 

 

『一刀、では“それ”の教育は任せたわ』

 

『“それ”って、華琳。その言い方は、あんまりじゃ…』

 

 

 曹操さまのお言葉に、血畏怖がムッとしながら反論しようとする。ですが、私様は血畏怖の裾を引っ張りながら首を横に振る。

 

 血畏怖に進言して頂けるのは、嬉しい事ではあります。

 

 

 でも、曹操さまは『王』。私様は駐屯『兵』。

 

 

 この差は、逆立ちしたって覆ることはない。どうしようもない差なのです。

 

 それに『王』が『兵』を物扱いすることが、いけない事とは思えない。故に怒りなど感じません。

 

 血畏怖も私様の意思を感じ取ったのか、ゆっくり眼を瞑る。そして、一呼吸置いて曹操さまに向き直った。

 

 

『わかった、引き続き零の教育を行う』

 

『そう、では話はここまでね。明日も早いからもう寝ないさい』

 

 

 そう、言って曹操さまは扉のほうへ歩き出した。私様は頭を垂らして、退出を見送ろうしたときであった。

 

 

『華琳』

 

 

――- 血畏怖が、『王』の真名を呼び…

 

 

「賭けをしないか?」

 

 

――― 『王』に賭けを持ちかけた。

 

 

 

 

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あとがき

 

感を取り戻せたら、昔みたいなあとがきを書かせていただきます。

 

今回は、ここでおいたまさせていただきます。

 

では皆さん、次の作品でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
以下に記す事項が苦手の方は、閲覧しないほうがいいです。
1:この作品の一刀は強いです。最強ではないですが…。
2:オリキャラが出ます。

めっさ久しいです、ブランクもあります。
ですが、マイペースにやっていこうと思いますので
これからもよろしくお願いいたします。
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