艦隊 真・恋姫無双 80話目
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【 誓い の件 】

 

? 洛陽 都城内 控えの間 にて ?

 

控えの部屋には、華琳、秋蘭、季衣、流琉の四人が待っている。 洛陽に訪れたのは……春蘭、桂花、左慈も来ていたが、春蘭と桂花は別行動中。

 

左慈は群れるのが嫌いだと言って、その場を離れていた。 しかし、不思議と集合時間を破る事は全くない。 言い付けた仕事も真面目に行う為、かなり重宝がられた。

 

ただ、華琳も左慈の才能こそ認めていたが、将としてただ一人の男。 どうしても『何か』違和感を感じ……落ち着かなかった。

 

―――

 

華琳「秋蘭、季衣、流琉……北郷側の将を見た?」

 

季衣「うーん、そうですね? 前の人達は……春蘭様のように賑やかな人達が多かったですけど、今度の人達は秋蘭様のような人が多いかな?」

 

流琉「立ち振舞いも立派で、凄いなぁ……って思っています!」

 

秋蘭「……先の者達と全く違う者達でした。 先の御遣いは『才華蓋世』の者が多く、眼下の諸侯を驚かす働きを見せる者ばかり! 今回の御遣い一行もまた、何やら力を秘めていると考えて宜しいかと……」

 

華琳の側に居る将が、感嘆しながら答える。

 

確かに前月に洛陽で出会った北郷側の将は……先の騒動において大活躍。 それに、見慣れぬ兵器、飛び交う奇策、戦術、戦法は、華琳の知的好奇心を大いに刺激させる物であった。

 

そして………今回の拝謁で見た将は、前月の将とは別の将。 それを見て、華琳は北郷側の人材層の厚さに驚きつつ、ある将の顔が……見えず落胆していた。

 

華琳「そうね……確かに全員が違っていた。 まるで、百戦錬磨の将が集まった雰囲気があったわ。 だけど………私としては、あの将に再度……顔を合わして話をしてみたかった。 『電』という天の御遣いに!」

 

流琉「……あの子だよね?」

 

季衣「うん、『破廉恥なのですぅ』とか言って大声で叫んでた………」

 

秋蘭「華琳さま………」

 

華琳「私の過ちを、御遣いとしての力で抑える訳ではなく、言葉を持って説き伏せようとした『礼』『智』。 自分の身を厭わず身体を張って諫言、桂花を助け出した『義』『仁』。 北郷に忠を示し働く『信』──これ即ち!」

 

秋蘭「──儒教の五常……ですか!」

 

流琉、季衣「「 ────!」」

 

華琳「そうよ! かの将は、立場こそ違えど──師と仰ぐ人物。 私は、あの出来事を胸に刻み改過自新し、更なる覇道を天に照らして見定めて貰うまで!」

 

「「「 …………………… 」」」

 

華琳「私の覇道が目指すのは、民を導く玉兎となる事! 民を灼き尽くす古の金鳥になる事では無い!! そのようでは、私が私として生まれ出た価値など……どこにある!? ──天に見放されても、文句など言えない!! 」

 

華琳が……ここまで将を褒める事は珍しい。 大概褒めても一言、二言が多いのに儒教の教えで称えて、尚且つ『師』とまで言い切る。

 

この事は、あの時の怒りに対する羞恥心、桂花を害しなくて良かったとの安心感、自分に対して、本気で怒ってくれた感謝によるものだ。

 

その器の大きさに思わず秋蘭が頭を下げ、改めて忠誠を誓う! 季衣、流琉が更に秋蘭の後へ続いた!

 

秋蘭「我ら臣下は、華琳様に忠の一字を捧げるのみ!」

 

流琉、季衣「「………はいっ!」」

 

華琳「ありがとう。 だけど、秋蘭……桂花が帰ってきたら伝えなさい! 私に過ちあれば、必ず諫言せよ! 貴女に『屈原』のような絶望は──二度とさせない! 『折檻』の二文字……我が座席の銘にすると!!」

 

★☆★

 

『屈原』……楚の政治家にして詩人。 仕える王が、秦の謀略で踊らされるのを必死になって止めるが、結局聞き入れらずに終わる。 そのため、秦に攻められ、楚の首都が落とされ事を知ると、石を抱き入水自殺する。

 

5月の節句に関わる『ちまき』は、この屈原を供養する為に行った事が始り。

 

―――

 

『折檻』……前漢時代、皇帝の行為に腹を立てた『朱雲』が、厳しくこれを諫言。 皇帝は怒り朱雲を宮殿から追い出すようにを命じた。

 

役人が連れて行こうとするが、朱雲が檻(手すり)を掴んで抵抗、とうとう折ってしまった。 これを見た皇帝が、己の間違いに気付いて許したという。

 

身体を痛めつけるのも意味の一つだか、本当は正しい事を強く諫言するのが元。

 

―――

 

二つとも、確認した事実ですw

 

 

◆◇◆

 

【 自業自得 の件 】

 

? 洛陽 都城内 謁見の間 にて ?

 

雪蓮「う〜〜ん! 退屈な儀式が、やっと終わったわ!!」

 

祭「策殿、貴女は孫家の王なのですから、早々気を抜かれては困りますぞ?」

 

雪蓮「珍しいわねぇ……祭が私に小言を言い出すなんて? 明日は槍でも降るのかしらねぇ……」

 

祭「いや、冥琳に策殿の子守りを頼まれたのでの? 形だけでも『注意した』と報告させて貰うためじゃ! それに、策殿のとばっちりを食らうのは、儂らじゃからの? 儂も冥琳の説教を、洛陽に来てまで聞きたくないわい!!」

 

穏「雪蓮さまぁ〜! 冥琳さまに責められる私や祭様、そして『于吉』さんの事も考えて下さ〜い!!」

 

雪蓮「…………于吉ぅ? あんな奴──冥琳から思う存分に、私の分も含めて叱られちゃえばいいのよ!」

 

穏「どうしてですかぁ〜? 仕事も早いですし、皆に優しいから人気があるんですよぉ! 民からも、困った所を救われたという報告が、かなりの数で上がってきているのです!」

 

雪蓮「アイツはね……私がサボっていると、何処からともなく現れて仕事を持ってくるのよ!? この前は、初めて咎められずに町まで出掛けられて、それから密かに戻ろうとしたら、目の前に冥琳と于吉が居るじゃない!!」

 

祭「……現場を見られたからには、言い訳できませんからな?」

 

雪蓮「お蔭で、三日間も部屋に閉じ込められて……仕事漬けにさせらたわよ! その間、お酒も呑ませてくれなかったのぉ! 酷いと思わないっっ!?」

 

穏「う〜ん……………自業自得ですねぇ」

 

祭「まあ……儂は何も言われもせんし、普通に接しているだけじゃがの……」

 

雪蓮「だからぁ! 今は、ちょうど口煩い冥琳が居ないから、ゆっくり羽を伸ばせる機会なの!! 全く、冥琳が私に説教するから悪いのよ! 祭や穏も、あんまり私を叱りつけると、『私』が心労で倒れちゃうわよ? 」

 

祭「策殿がか? ………たかだか煩く注意されただけで、心労如きに倒れるのなら、冥琳など寝台から離れられんわい!」

 

雪蓮「だからぁ──そうなると困るでしょう!? 兵の訓練とか、政(まつりごと)や決済とか〜?」

 

穏「ああ……どうでしょうねぇ〜祭様?」

 

祭「うむ……そう言えばそうじゃの? 武では星、政は稟と風、そして新たに参加した于吉の働きで、賊は討たれ国が富み、街に活気が満ちてきたのは確か。 儂らも余裕が出来て大助かりじゃ!」

 

穏「後……困る事は、決済の仕事ですけどぉ。 だけど、蓮華様が頑張って頂いていますから、直ぐに困る事は少ないんじゃないかなぁ〜と思いますぅ!」

 

雪蓮「ぷうぅぅぅ! そこは嘘でも『居てくれないと困りますぅ』とか、『居ないと灯りが消えたようじゃ』ぐらい言っても、おかしくないんじゃない?」

 

祭「いつも何かと……雲隠れする、我らの王の態度が原因と思うがの?」

 

穏「あははははは…………」

 

雪蓮「ふぅんだ! 此処なら、私の活躍の場があると思ったのに! それに、蓮華やシャオが目を輝かせて語る『御遣い君』の雄姿って……見たかったのになぁ!! 」

 

穏「そうですねぇ……話を聞けば、全然想像が付かない話なんですがぁ……。 でも〜もし本当でしたら、蓮華様に再度洛陽に向かって頂くのは、酷なんでしょうねぇ……。 あまりにも、危険な出来事の様でしたしぃ〜?」

 

雪蓮「でもねぇ……蓮華は此方に来る気でいたわよ? 珍しく化粧をしたり、衣服を選んでいたりして、普段の蓮華にしては舞い上がっていたわね……」

 

祭「……今度の洛陽行きが策殿が行き、権殿が留守とした時の落ち込みよう………見るに耐えんかったわ。 大事な王としての仕事を、先伸ばしできんからの。 城の窓より寂しげに眺める権殿の顔が、 未だに頭から離れぬわい!」

 

雪蓮「私だってねぇ! 一生懸命仕事をこなしていたのよ! それなのに……蓮華達が洛陽で、あんなに面白い事があったなんて──狡いと思わない? 」

 

穏「でも、結構命懸けだったようですよ〜?」

 

雪蓮「そんな事があるから、心が躍り血が滾るんじゃない! いいわよ……それなら穏は、今度から呉の政務に励んでいなさい。 蓮華を代わりに連れてくるから! 蓮華なら喜んで来るから、シャオを代理に政務を頑張りなさい!!」

 

穏「雪蓮様〜狡いですよ〜! 私も見てみたいでぇ〜すぅ! ───見たことも無い武器、空を駆け回る乗り物ぉ! あああ……考えているとぉ……身体が火照ってしまいまぁすぅぅぅ! 」

 

雪蓮「そうでしょう? だから、渋る蓮華に頼み込んで……じゃなく、姉の威厳で代わって貰ったの! それなのに〜儀式ばっかりなんて面白くない! せっかく仕事から逃れて来たのに、こんなの・つ・ま・ん・な・いぃぃぃっ!」

 

穏「ああ〜ん、穏の知らない道具、未知なる戦術……! か、身体がうずいて……夜泣きしそうぅぅぅぅでぇす!!」

 

祭「──穏は少し黙っておれ! 策殿よ……まだまだ大陸は荒れる。 堅殿の志、策殿たち姉妹が受け継ぐ限り……天の御遣いの活躍は幾らでも拝見できよう。 そして、臣である儂らも……命を懸けて策殿達の志に尽くさん! 」

 

雪蓮「───そうね! まだまだ、私の活躍場所はあるし、御遣い君達の様子も伺えれるわよねぇ!」

 

祭「しかし…………今の状態には……正直……身命を掛けたくないの……」

 

雪蓮「─── (・_・?)」

 

冥琳「……………………雪蓮」

 

雪蓮「───((( ((゚□゚;)) 」

 

于吉「全く……この方は。 あれほど私が周公瑾に告げ口……いえ、報告しても改善の余地がありませんね〜? 己の信じる道に向かうのも、英雄としての条件ですが……臣下の者に迷惑を掛けるのは、流石に困りますよ?」

 

雪蓮「 ───め、冥琳! それに──于吉もぉぉぉ!?」

 

冥琳「于吉が『わざわざ』教えてくれたので、扉に隠れ聞いていたのだ。 ………私が口煩いのは……何処の誰が原因なのか……未だに解って貰えないとは。 さて、于吉……どうすれば気付いて貰えると思う?」

 

于吉「そうですね? 例えば、こんなのは如何です? 孫伯符殿は……自分の存在意義の喪失を心配しておいでる。 ならば、皆との関わりが必ず要るように、三日間ほど執務室に閉じ込めて政務に専念させる………とか?」

 

冥琳「そうだな……ついでに、蓮華様の受け持っていらっしゃる仕事の半分を、雪蓮の仕事に上乗せしようか。 それならば、皆が雪蓮の重要性を認識してくれるだろう! 」

 

雪蓮「そんなぁ───っ!!! 穏、祭、助けてぇええええ!!」

 

――

 

穏「へ、兵法三十六計 走為上の計です〜!」

 

祭「………老将は、ただ去るのみ……じゃな!」

 

――

 

雪蓮「ちょ、ちょっと待ってぇ──『ガシィ』──えっ !?」

 

冥琳「その前にだ。 この口煩い私の小言を聞いてからだぞ? それから帰国後の罰を受ける事……楽しみにしているがいい!」

 

雪蓮「冥琳………ごめんなさい! お願いだから許してぇ!!」

 

冥琳「許す? 誰が……『投げ出す、逃げ出す、誤魔化す』の三拍子揃った愚か者を許すと思うのかぁ!? 何時もの数倍長い説教を、お前へ与え今度こそ真面目な王にしてやる! 覚悟するがいい──雪蓮!!」

 

雪蓮「やだ、やだぁ! そんなのやだから逃げてや『ガシィ』──またぁあっ!?」

 

于吉「──では、逃走しないよう……この私が取り押さえてあげますよ! ふっ、左慈に比べれば、可愛い子猫のような物ですからね……」ニヤリ

 

雪蓮「いやぁああああああ───っ!!」

 

冥琳「───于吉、帰ったら雪蓮の監視の強化を頼むぞ! お前の手腕なら雪蓮を容易く押さえ込める事ができるだろう!」

 

于吉「お任せ下さい。 あの手この手で……見事に封じ込めて見せますよ! 」

 

雪蓮「誰かぁ──助けてぇぇぇぇぇ!!」

 

于吉「心配しなくても……私は女などに興味などありません。 私の食指が動くのは……左慈一人……だけですので。 クスクス…………」

 

 

◆◇◆

 

【 劉辯説得戦 の件 】

 

? 都城内 劉辯私室 にて ?

 

《 劉辯の台詞が長い為、『』で訳してあります 》

 

長い廊下を渡り歩いた後、五、六人が一緒に入れる扉の前到着。 扉の横には屈強な衛兵が二人立っている。

 

女官が前に出て、恭しくお辞儀をした後、体に似合わず大きな声で『北郷一刀』の到着を知らせた。

 

女官「………陛下、北郷一刀様と臣下の方々5名が、御到着なされました!」

 

劉辯『入って頂いて……』

 

中より若い女性の声が聞こえ、衛兵が厚く重い扉を……ユックリと開けた。

 

劉辯は、あの皇帝としての重々しい衣装を脱ぎ、代わりに『深衣』なるワンピースのような衣装を着用していた。 色は赤色……最高位である象徴だが、劉辯の美しさを更に際立てるような色でもあった。

 

開いた事を確認した女官は、一刀達を部屋の真ん中まで案内して、劉辯に一礼、一刀達に再度一礼して……その場を離れた。

 

―――

 

一刀「……失礼を。 北郷一刀、ただいま見参致しました!」

 

劉辯 『ようこそ……北郷様、お会いできて嬉しいです! 此処に来て頂いたのは……承諾されたと言う事ですか?』

 

一刀「陛下……お話を伺いました。 しかし、 私には譲れない一念ある故、 申し訳ありませんが……この話をお断りさせて戴きたいと……」

 

劉辯は驚く! 女官に頼んだのは任官の意思の有無。 そして、任官の意思があればこそ、此方に来て欲しいと頼んだのだ。 それが、部屋を訪ねてくれたのに、答えは許否。

 

『 (───それでは、糠喜びではないですか!)』

 

普通ならば、そう叫びたかったが……一刀の後ろにある多数の目があるため、その感情を押さえ込む。 努めて冷静になりながら対応した。

 

『(この場所に来られたのは、少なからず……何か話があるからだ。 ならば、ここで話を受けながら、北郷様には受けて貰えるように誘導しなくては!)』

 

そう考えて──口を開いた。

 

本人は全く知らない………北郷一刀争奪戦の勃発である。

 

★☆☆

 

劉辯『駄目なのですか……!? 北郷様が洛陽に留まれば、洛陽や周辺の人心が定まり、荒らそう事も無くなり、永く大陸は平和を謳歌しましょう! それなのに……何故お断りするのか、納得できる理由を教えて下さいませんか!?』

 

一刀「まず…… 私の本拠地は漢中にあり、益州牧を拝命出来たのも、その地が重なる場所ゆえ拝命した次第。 それが、更に遠く離れた洛陽では──漢中で待機する者たちへの指揮が取れない事! 」

 

劉辯『………………』

 

一刀「それに──陛下の傍に私が付き従うことは、何皇后の意思を受け継ぐと誤解される怖れあり。 それでは、危険を冒してまで抵抗された……陛下や皆の努力が、全くの無駄になります!」

 

戦艦?北郷一刀の口火を切り、攻撃を開始した。

 

その正論は、既に最初の一刀の糠喜びで中破になった劉辯に響き、かなり船体?が傾くが、顔に表す事なく話を聞く。 そして、その攻撃の隙を探す!

 

劉辯『成る程……北郷様の言い分……最もな事だと存じます。 されど、それなら私もお聞かせ下さい。 ………よろしいでしょうか?』

 

一刀「………お伺い致します!」

 

戦艦?劉辯は、巨砲を傾け一刀に標準を合わせ、砲撃を開始!

 

劉辯『北郷様は、漢中に籍を置くと言われました。 しかし、北郷様は大陸全土を見守るが役目。 その山深く大陸の偏った地で、全土を見守るには弊害が多く存じます。 洛陽なら交通、政務の中心地ゆえ御不便は無いのでは?』

 

一刀「………それは……」

 

――

 

劉辯の問いは当然である。 『山深い土地で、どうやって移動手段があるのか?』と。 洛陽まで一刀が出て来るのは約一週間ぐらい。 それで、大陸を守れるのかと訊ねているわけである。

 

しかし、艦娘は元々海を自在に動くのが理。 川を移動する術を持つ一刀達にとっては、北側、南側両方の河川を利用できるのは強み。 しかし、これは奥の手。 そうそう教えて良い物では無い!

 

奥の手は、隠してあるからこそ意味があり、これが発覚した事態で防御策などが取られ、その効力が薄くなるからだ。

 

そのため、一刀が暫く沈黙を置く事になり、 その間を……更に付け入るように劉辯の舌鋒という名の連装砲撃が、一刀に襲いかかる!!

 

劉辯『それに……北郷様は、私の母の罪を心に掛けられますが……父霊帝の願いを蔑ろになさる……おつもりでしょうか? 父は……非公式なれど、私達姉妹の行き末を心配して、北郷様にお願いをされた筈です!』

 

北郷「───!?」

 

劉辯『儒教の三綱五常……北郷様が私や霊帝に対する忠、私が霊帝に対する孝を蔑ろに為さるのですか?』

 

一刀「─────うぐっ!」

 

儒教の三綱は、臣下が王に対する忠、子が親に対する孝、妻が夫に対する烈を表す。 こちらも、『三綱五倫』として重要視されている。

 

一刀の船体?は浸水を始め、大破に近い中破になり沈没近し!

 

轟沈間近の『旗艦 北郷一刀』が、窮地に追われて行く中、他の艦娘が援護に入る!

 

―――

 

加賀「……それは違うのではないかしら? 提督は天上の遣い、陛下や霊帝の臣下ではない筈よ。 そのような言い方は、詭弁としか言えないわ……」

 

劉辯『北郷様は、仮と言えども州牧を受けられ、漢王朝の臣下として下った身。 ならば……私の命令に従って頂くのが筋! それに、先程……諸侯と共に拝礼を私に行ったのではないですか? 』

 

加賀「───!」

 

―――

 

如月「ふ〜ん、司令官ったら……本当に罪作りな人ねぇ。 ───ごめんなさぁい、私も口を挟ませて貰うけどいい?」

 

劉辯『………はい』

 

如月「私達の目的は、この大陸を破壊しようとする『深海棲艦』っていう化け物退治なのよ。 もちろん、その強さなんて……私達と同等、もしくは上。 とっても危ない奴等達で……対戦すれば……辺りは火の海になるわよ?」

 

劉辯『……………!』

 

如月「言いたい事、分かってくれたかしら? そうなると………司令官が留まる洛陽の街は巻き込まれ、多数の死傷者が出るわね。 そんな事になればどうするの? 皇帝である貴女は……それでも司令官を留める気? 」

 

劉辯『私は……北郷様を………それでも、洛陽に留めます!! 』

 

如月「な、何でなの!? 洛陽の民を──」

 

劉辯『いえ、私の考えは……北郷様を留める事で、洛陽の者達を救いたいと思うのです! その深海棲艦なる者は、大陸を破壊すると言われました。 つまり、逃げ場はどこにもない! ………そうなりませんか?』

 

如月「…………そうなるわね。 だけど、司令官を留める理由には──」

 

劉辯『ですが、護りが堅固になる場所を一つだけ知っています! それが……北郷様の居る場所です!! 皆様が……北郷様を慕う事は、傍目からも存じています。 ならば、北郷様を洛陽に留めく事により、皆様に護って頂ける筈!』

 

如月「──!」

 

劉辯『それに、洛陽の人民、皇帝の私や臣下を人質に取る事も、充分考えられます。 ならば、この地に本拠地を置かれた方が、北郷様や皆様の為になると思われますが──如何でしょうか?』

 

如月「貴女…………なかなかやるわね?」

 

ーーー

 

瑞穂「あのぅ……誠に恐縮なのですが……瑞穂も、意見を述べさせて頂いて宜しいのでしょうか?」

 

劉辯『どうぞ……お願いします』

 

瑞穂「それでは、失礼ながら述べさせて頂きますね。 陛下は、提督の事……どう思われています?」

 

劉辯『………………………はっ?』

 

瑞穂「し、失礼しましたっ! 恋愛感情とかじゃなく……必要とする度合いを知りたいんですよ! 例えば──提督が、此処での役割を終えた時、一緒に行きたいのか? その時、全てのモノを置いて提督の側に立っていられるのか?」

 

劉辯『全ての………モノ?』

 

瑞穂「はい、全てのモノ……大事な家族、仲間、高価な衣服、思い出の品物。 そのようなモノを──全て捨てて──提督の側に居る『覚悟』は……おわりでしょうか? その地位を捨ててまで、提督を『慕う』事を出来ますか?」

 

劉辯『──────!!』

 

瑞穂「………提督のお側に多く控える艦娘ですが、その内半分以上……この大陸出身……私も含めて。 だけど──私や他の子も、提督が離れると分かれば、私も命懸けで追随して行きます! この生まれ故郷に感謝は致しますが──」

 

劉辯『わ、私は───』

 

――――――ー

 

ちょっとした海戦のノリで書いてみた。

 

――――――もう少し続きます。

 

 

◆◇◆

 

【 蚊帳の外 の件 】

 

一刀達が、劉辯と会話している最中、後ろで控えていた艦娘三隻。

 

―――

 

赤城「くっ………! ほ、鳳翔さん!」

 

鳳翔「……ど、どうしたんですかっ!?」

 

赤城「この場を……どうすればいいか……思案していたら ……お、お腹が空いてしまいました。 何か食べる物……ありませんか? 」

 

鳳翔「…………磯風さん、確か持っていますよね?」

 

磯風「ふむ………仕方ない。 私が持参している……この磯風特製の戦闘配食がある。 これを渡してやろう!」

 

赤城「……磯風……特製っ!? Σ ゚Д゚≡( /)/エェッ! 」

 

磯風「な、なんだ、その露骨に嫌そうな顔は? 腹が減ってはなんとやら……食っておかねば身が持たぬぞ?」

 

赤城「───た、確かに……私の身体は、補給を盛大に要求しています! しかし……『磯風のお手製』という事実が……私の頭の中に響き、警報を鳴らして! ────わ、私は……どうすれば!?」

 

磯風「ふっ、この磯風……何度も同じ過ちを犯す者と侮るな。 鳳翔の監修、指導の下で作りあげた……会心の作! 鳳翔にも聞いてみるがいい!」

 

鳳翔「ええ……間違いないですよ!」

 

赤城「じゃあ──大丈夫ですねぇ! いただきまぁす〜!!」あむっ!

 

磯風「どうだ──旨いだろう! よく咀嚼して食うがいい! それと、司令官に気付かれては、叱られてしまうからな………静かに食べろ……!?」

 

赤城「はぐぅ、はぐぅ──ふぇ?」

 

鳳翔「まあ……手に持ったお握りが、3つ全部……頬張ってしまうなんて……」

 

赤城「はぐぅ………………うぐっ!」

 

磯風「むっ? 顔色が悪いぞ………大丈夫か?」

 

鳳翔「───あ、赤城さん!?」

 

赤城「ぐ、ぐほっ! ──い、一航戦の誇り……こんなところで……失うわけには……!」バタッ!

 

磯風「喉でも詰まらせたか!? 無理して急いて食べるからだ! ほれ、この竹筒の水を飲め!」

 

赤城「うぐぅ───コクッコクッコクッ……ぷはぁ!! はあぁ──危うく轟沈するところでした!!! それにしても……あのお握りの味はなんですか!? ────ほ、本当に味見を、行っていたんですかっ!? 」

 

鳳翔「えっ? 普通に美味しかったですよ? おかしいですね……私が最終の味付けを確認したのですが……」

 

赤城「だって……もの凄く変な味がして──思わず吐き出しそうになりましたよ!! ですが……皆に気付かれる訳にはいきませんので、無理矢理──呑み込みでぇ………ウップゥ! ま、まだ、お腹が気持ち悪いぃぃぃぃ!!」

 

磯風「ああ……その後で私が確認を行うと、味が薄いのでな。 戦場食に塩味は濃く作成するのが常識。 それに、戦闘配食が傷んで腹でも損なわれると困るからな。 塩を少し掛けて……胃腸薬を新たに具として入れておいたのさ!」

 

鳳翔「ごめんなさい、赤城さん。 私が大丈夫だと思い目を離した為ですね。 だけど………提督が召し上がらなくて……良かった!」

 

赤城「わ、私は……噛ませ犬扱い…………」

 

 

◆◇◆

 

【 居酒屋 鳳翔 開店の経緯 の件 】

 

劉辯『わ、私は……………』

 

瑞穂「陛下……一刀提督の御側に仕える方は……御自分の幸せを捨てても良い覚悟がある方だけ留まる事ができます。 提督の向かわれる道は……修羅の道! 従う方々にも安息は無く……ただただ提督に勝利を捧げるのみ!」

 

劉辯『──わ、私には………………無理です。 自分の幸せの為に、他の方を見捨てるなんて………』

 

瑞穂「………でしたら、提督を洛陽に留め置く事は……できません。 その覚悟がなければ、必ず提督の足枷になり………提督の天命を阻害する事になるでしょうから──」

 

劉辯『……………分りました。 北郷様の昇任は、取り消しましょう………』

 

―――

 

援護に入った二隻が論破され、最後に瑞穂の攻撃で劉辯が沈黙した。

 

一応『A級勝利』で、一刀を守り切る事ができた。

 

―――

 

瑞穂「………ふう、このような席は初めてです。 瑞穂、かなり緊張してしまいました。 陛下、御無礼な事を申し上げ……陳謝いたします!」

 

劉辯『いえ…………仕方がありません。 私の想いなんて、皆様に比べれば。 北郷様がいらっしゃれば、相談に乗ってくれると思っていたものですから。 皇帝と言われる私ですが、信用できる人物は、あまり居ないんですよ』

 

一刀「…………………………」

 

「「「「 ──────! 」」」」

 

劉辯『北郷様が側にいらっしゃれば、安心できると思ったのです。 沢山の信頼できる仲間が居る、北郷様でしたら……………』

 

劉辯が哀しげな顔で呟く。

 

────そんな折、一人の将が手を上げた!

 

雛里「しゅ、しゅいましぇん! あわわわわ………わ、私からも意見を言わせて下さい!!」

 

劉辯『…………なんでしょう?』

 

雛里「陛下の仰る事も正しいです。 洛陽という漢王朝の中心部、陛下という重要人物を、相手方が放っておくわけがありません! ですから、何人か交代制で駐在し、護衛の任務をした方が良いと献策します!」

 

劉辯『護衛………?』

 

雛里「はい、先程……如月様が申し上げた『深海棲艦』は、普通の武人では相手はできません。 ですので、護衛として洛陽に駐在して頂こうと思います」

 

劉辯『だけど……それでは……』

 

紫苑「陛下……失礼して意見を挟ませて頂きます。 今までの話は、我が主の身の上。 今度は従う皆様が主に成り代わり、陛下や洛陽の民達を護らせて頂くとの上申させて頂いております!」

 

劉辯『───それでは、都城内に住まわれて………』

 

劉辯が、雛里と紫苑か代案を出してくれた事に、喜びを示す。 そして、その案で行けば、劉辯の側に護衛名目で最低二隻の艦娘を置ける筈。

 

だが、その案に………一刀が反対した!

 

一刀「………いえ、それでは王允殿の機嫌が悪くなるばかり。 幾ら数日前に司徒へと昇任されたとはいえ、私達の事を良く思われない王允殿から、陛下が責められるのは見えています。 だから───」

 

劉辯『だから───?』

 

一刀「居酒屋を開き、そこを私達の拠点にして、陛下や洛陽を万が一に備えて守りたいと思います! 勿論、資金、道具、人材等は私達が準備、漢王朝からの出費は無し。 陛下にも御来店を頂けるように繁盛させます!」

 

劉辯『い、居酒屋………とは?』

 

一刀「簡単に言えば……飲食店です。 そこで、実際に営業を行ないつつ、私達の任務を進める。 漢王朝の資財を使わず、私達の手で店を出して営業をすれば、如何に王允殿でも文句は言わないでしょう!」

 

劉辯『すると、料理は…………』

 

一刀「こちらに控えて………あ、あれ? 」

 

後ろを振り向いた一刀が見た者は、腹を抱えて小刻みに蹲る赤城、溜め息を吐く磯風、心配する鳳翔だった。

 

★☆☆

 

一刀「ど、どうしたんだい!? 赤城は何を蹲(うずくま)っているの!? 体調が悪いのなら早く戻っていいから───」

 

赤城「あ、ありがとうございますぅ。 飛行甲板の修復に、少し時間がかかりそう………あうっ! お、お腹が───っ!!」ダッ!

 

加賀「提督、ごめんなさい──赤城さんに付いて行くわ!」

 

許可を得て、水を得た駆逐艦のような素早い動きで部屋外に出る赤城、追い掛ける加賀! 事情が全然掴めない一刀は、首を捻るだけである。

 

一刀「飛行甲板の修復? この部屋で戦闘なんかあったか?」

 

如月「もぉう、司令官ったら。 あの言葉はねぇ『お花を摘みに行く』と言う意味なの。 あんまり詮索したら、赤城さんの乙女心まで大破しちゃうわよぉ?」

 

一刀「そ、そうか? そう……なんだ…………。 ええっと、鳳翔! 前に来てくれっ!」

 

鳳翔「は、はい……お呼びでしょうか?」

 

一刀「道中で語っていた事、早々と叶いそうだけど……どうだい? 洛陽で店を開いてみないかい? 『居酒屋 鳳翔』を───」

 

鳳翔「ほ、本当で──い、いえ! 今の大事な時期に、このような事を!」

 

一刀「この大事な時期だから、お願いしたいんだよ! あくまで店は表の顔、裏では鎮守府の出張所の役割がある。 その纏め役を頼みたいと思うんだ!」

 

鳳翔「で、でも…………」

 

一刀「この役割には──鳳翔──君しか任せれられない! 非常に調整が難しい事だが、『お店を開きたい』と笑顔で語った君なら、俺の期待に応えてくれると思うんだ! だから、頼む! 引き受けてくれないか!?」

 

鳳翔「……………わかりました。 ならば、私も条件を一つだけ……付けさせて下さいませんか?」

 

一刀「無理を言うんだ。 俺に出来る事なら幾らでも………」

 

鳳翔「………お店が開店しましたら、月1で宜しいです。 私の料理を食べに来てくれませんか?」

 

「「「「『 ─────! 』」」」」

 

一刀「約束するよ! 鳳翔の料理は絶品だと聞いているからな? 今から鳳翔の店に行くのが、すごい楽しみになっちゃうよ!」

 

鳳翔「まぁ──提督ったら………」

 

「「「「『 ………………… 』」」」」

 

―――――――

 

こうして、もう少し後になるが………洛陽に『居酒屋 鳳翔』が開店した。

 

鳳翔は、一刀の期待に応えて、二つの任務をやり遂げて行く事になるが、詳しい活躍は『居酒屋 鳳翔 編』を読んで頂きたい。

 

『居酒屋 鳳翔』の賑わいは、とてつもない勢いで広がり、洛陽での名店の一つに確立される。 そして、その裏に隠された真の目的を知る者は、客の中には居ない。 ただ、『蛇』と言われる伝説の傭兵が現れるまで。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

 

今月は忙しくて、投稿できるか心配でしたが、何とかあげています。

 

できれば、後一つ書いて………二週間ぐらい休みたいです。

 

お祭りの準備が忙しくて……………………

 

説明
やっと居酒屋の話が、くっつきました。 恋姫達との切っ掛けは、また次回。
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コメント
スネーク提督 コメントお待ちしてましした! スネークにも活躍して貰いますが……いつの間にか登場人物になってしまい、作者も困惑していますw(いた)
( ▼ω・)待たせたな!(スネーク)
雪風提督 コメントありがとうございます! 艦これ風の論破合戦でした。 一人尊い犠牲が出てしまいましたが……(いた)
今回の護衛としての随行者の選抜が成功した形ですね。互いの論破合戦・・。(雪風)
一応、出て来る子達の活躍する所は、一つは作ります。 二つ以上は……運ですかね。(いた)
天龍焔提督 再コメントありがとうございます! 赤城もちゃんと活躍して………います。 今後もね。(いた)
天龍焔提督 コメントありがとうございます! ( ▼ω・)b「やはり、ダンボールは必要だな。 戦士の必需品だ!」(いた)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 他の艦娘達も其々行ってくれるでしょう。 磯風は……料理以外を目指して貰うと。(いた)
さすがは鳳翔さん、任務を受けつつしっかりアピールまでするとは。(mokiti1976-2010)
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