真・魏ルートIF 〜3
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「華琳様もお戯れが過ぎる・・・・・・」

 

 部屋を出、大通りに出ると、一刀は警邏の兵から剣を一本借りた。

 手合わせをしないという選択肢はもちろん存在しない。

 そして対峙する夏候惇と一刀。殺るき満々の夏候惇に対し青い顔の一刀。無理もない。

 

「ふふ・・・・・・あれだけ言ってのけるのだか不様な姿は見せないと思うわよ?」

「しかし姉者相手でしたら誰が相手であろうと結果は目に見えていると思いますが」

 

 夏候惇は強い。お世辞でも何でもなく、その力は本物だ。曹操が誇る最強の矛であり、切り札と言っても間違いではない。夏候惇自身も己の力を自負しているし、誇りを持っている。そんな武人と戦わされるのだ・・・・・・正直同情も禁じ得ない。

 

「そうね、春蘭は勝つわ。でも、それは分かりきっているし、北郷と言ったかしら? あの男も力量差を察しているみたいだし」

「では、何故?」

「私はね、勝てとは言っていない、参ったと言わせろと言ったの。確かに真正面から戦ったら春蘭はあの男を容赦なく叩きつぶすでしょう。でも、何も戦いとは真正面から武器を交える事が全てではないでしょう? 時には戦略的撤退が必要なように、頭を使い、策を練り試行錯誤を繰り返せば勝機はあるかも知れない。でも、今回はそんな時間も与えていないのだけどね」

 くすくすと笑う曹操。楽しそうにこの見せ物を鑑賞している。

 夏候淵も苦笑しながら成り行きを見守る。

 

(しかし、あの北郷という男・・・・・・憐れだな)

 

 実いうと、一刀の保護は決定している。

 天の御使いという肩書き以前に、人手はいくらあっても邪魔にはならない。

 武が足りなくとも、知が足りなくとも、雑用などの仕事はいくらでもあるのだ。元々曹操はくる者を拒みはしない。値踏みはしても、害がなければ最終的には配下の末端に席を用意するだろう。募集をかけてもいないのに志願者がやってくるなど逆にありがたいことだ。

 だから、こんな茶番に興ずる必要は無いのだが・・・・・・。

 曹操はこの手合わせで一刀の力量を推し量るつもりなのか、それとも只単に遊んでいるだけなのか・・・・・・。

 

「そうね、もし春蘭に一撃でも入れて見せたらそれなりの待遇を考えるわ」

「無茶をおっしゃる・・・・・・我が軍の兵でも一対一では無理ですよ」

 

 一騎当千の武を誇る夏候惇。彼女は一切の手加減も容赦もせずに一刀を叩き伏せるだろう。何せ、一刀は身内の兵でも何でもない只の不審者だ。手をゆるめる理由などありはしない。

 

「さて・・・・・・さっさと構えろ、一瞬で終わらせてやるからな!」

「うわ・・・・・・マジで洒落になんねぇって・・・・・・」

 

 夏候惇は大剣を構えて臨戦態勢。もちろん一部の隙もない。それに加えて体中から溢れる凄まじい殺気・・・・・・これはどう考えても死ぬ。

 いつの間にか周りに集まっている兵士や町人も固唾を飲んで見守る。

 

「うわ・・・・・・人集まってるし・・・・・・ちくしょー」

 さながら公開処刑だ。夏候淵は命まで取りはしないと言ったが、このままじゃ多分死ぬ。死ぬ前に曹操が止めてくれると信じたい。

 現状では一刀の勝機はゼロだ。勝てる要素が見つからない。

 せめてハンデでもあれば・・・・・・あったところで敗北は揺るぎないだろうが。

 

「ん、ハンデ?」

 一つの策が思い浮かんだ。

 策といってもお粗末なものだが、もうこれに頼るしかないだろう。最大のピンチで浮かんだこの作戦に全て賭けよう。もとより負ける事前提の手合わせ・・・・・・もう、こうなったらやけくそだ。

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「夏候惇、戦う前にハンデくれないか?」

「はんで・・・・・・? なんだそれは! 私から貴様にやるようなものなど何もないぞ!」

「ええと・・・・・・ほら、俺とあんたじゃ実力に差がありすぎるだろ? だからさ、俺に最初の一撃をうたせて欲しい。もちろん防御してくれてかまわないが、反撃は勘弁な。俺の初撃が終わればそちらも討ってでてきて貰ってかまわない。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

 生きるか死ぬかの別れ道。上手くいけば、もしかすると勝機があるかもしれない。

 

「へぇ・・・・・・」

 曹操が目を細める。

「むむ、何故私がそのような真似をしなければならない!」

「だって、曹操様の右腕で最高の武を誇る夏候惇殿なら俺の攻撃なんて止まって見えるでしょう? 俺の攻撃をその大剣で受け止め、そして刹那に俺の首をはねることなど造作もないはずだ。なんせ、曹操様の最高戦力なんだから! 曹操様の一番の臣下なのだから!」

 褒め殺しだ。

 ここで乗ってくれなかったら万策尽きる。

 

「む・・・・・・ふふ、よく分かっているではないか! そう、華琳様の一番の臣下とはこの夏候惇元譲の事! よし、初撃は貴様にくれてやる。どんな攻撃だろうが、反撃せずに受け止めてやろうではないか! この、華琳様の一の臣下がな!」

 分かりやすく顔を綻ばせ上機嫌になる夏候惇。

 初撃を譲るというハンデを快く了承してくれた。

 ――計画通り。

 

「上手いこと乗せられたわね」

「姉者はわかりやすいですからね。・・・・・・それでも姉者有利は変わりないと思いますが」

 そう、それでも一刀の敗北は必至だ。絶対に反撃されない先制攻撃ができる権利を貰おうとも、実力の差に変わりはない。実力が拮抗している者同士なら話は変わってくるが、一刀と夏候惇はその例には当てはまらない。

「さて、どう魅せてくれるのかしらね、北郷は」

 いじめっ子の顔のまま曹操は一刀を見つめる。

「必死の策がその程度じゃたかが知れてるわよ。――その力、我が覇道に役立つか否か、見極めさせてもらうわ」

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 夏候惇には絶対の自信があった。相手はずぶの素人では無いらしいが、それでも己の障害にならない事くらい分かる。

 初撃を許しはしたが、それでも一刀の攻撃は届かないであろうと確信していた。

 正面から斬りかかろうと、下段から切り上げようと、突きであろうとその全ての攻撃をいなし、即座に神速を持って反撃できる。この勝負、長くは続かない。長引けば長引くほど夏候惇の有利になる。

 夏候惇は一刀をなめきっていた。自分に遠く及ばない格下の相手だと見下していた。

 実際にその通りなのだが、ここで夏候惇に油断と慢心が生まれてしまった。これが命取りとなる。実力差がありすぎるために真剣勝負ではなく、半場遊びと捉えてしまったことが失敗だった。

 夏候惇は生粋の武人だ。当然、相手は正々堂々正面から挑んでくるものだとばかり思っていた。借り受けた剣を構え、愚直に正面から攻撃してくるとばかりと、そう思っていた。

 

「おい、何をしているんだ貴様は?」

 

 だからここで戸惑いが生まれる。

 一刀は抜刀せずに腰に剣を差したままゆっくりと夏候惇に向かって歩いていく。

 

「俺の一番初めの攻撃は受けてくれるんだよな?」

「ああ、二言はない。だから、さっさと剣を抜け。それとも私を馬鹿にしているのか!?」

 いらだちに顔を歪める。正に鬼の形相。ギャラリーの兵士も震え上がる。

 

「反撃せずにだぞ? 今からする俺の攻撃は、防御か避けるか受け流すか・・・・・・ともかく守りに徹して貰う」

「だから、分かったと言っているだろう! すぐに反撃させてもらうがな!」

 

 何度か言葉を交わすと一刀は夏候惇の目の前に来た。目と鼻の先という言葉がぴったりな至近距離。

「・・・・・・」

「なぜ剣を抜かん! くぅ・・・・・・こんな隙だらけの馬鹿など即刻切り捨ててやりたい!」

 約束のため夏候惇からは攻撃できない。ここにきて彼女の苛立ちはピークに近かった。

 

「・・・・・・」

「何を呆けているのだ! 貴様、華琳様が用意してくださったこの手合いの場を何だと思っている!」

「・・・・・・あ、ごめん。見とれてた」

「・・・・・・は?」

 

 夏候惇が首をかしげる。

 その美しく艶やかな黒髪、できの良い彫刻のような整った顔立ち、女性らしいプロポーションと、そのどれもが一線を大きく越えている。

 一刀も男だ、グラビア雑誌などを読んだりすることもある。しかし、どのグラビアアイドルも目の前の女性には敵わないだろう。見とれていた・・・・・・それは嘘ではない。

 

「夏候惇ってさ、とんでもなく美人だよな・・・・・・」

「なっ! ななな、何を言っているんだきさ――」

 顔を朱色に染め動揺する夏候惇。

 照れているのか、先ほどまでの張り詰めた空気は何処かへ消え去り、一気に緊張が解けた。はからずとも出来たその一瞬の隙。その隙を見逃すほど一刀は馬鹿ではない。

 

 一刀の手が伸びる。しかし剣は抜いておらず素手のまま。

 夏候惇は対応するタイミングがワンテンポ遅い。隙を突かれもあるが、一刀が剣を抜かずに勝負をかけてきたからだ。一刀のイレギュラーな行動に一瞬だけだが戸惑ってしまった。

 そして何より一刀の使う体術が夏候惇にとっては未知のものであったことが大きい。

 拳を振るうのではなく、蹴りを繰り出すのではなく、一刀は手伸ばし夏候惇の服を掴む。場所は袖と襟。

 

「――くっ!」

 

 袖を掴んだ左手を渾身の力で斜め上に引っ張り上げ、同時に襟を掴んだ腕で夏候惇を思い切り引き寄せる。予想外の一刀の行動で夏候惇は大きく態勢を崩した。

 そして素早く体を回し、屈み込んで懐に入る。背を向ける形になるが、態勢を崩された夏候惇は為す術がない。

 

 そして、一刀はそのまま夏候惇をぶん投げた。

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「え――?」

 

 驚きの声が漏れた。無意識のうちに漏れた小さな呟き。

 気がつくと天地が逆転している。いつの間にか空を仰いでいた・・・・・・。

 何が起こったのか一瞬理解できない。そして理解出来ていないままに。

 

「ごっ――がっは……ごほっ、ぐ……」

 

 地面に叩きつけられた。

 鈍い音と共背中に走る大きな衝撃。

 一瞬意識が飛びそうになるが、苦しい呼吸がそれをつなぎ止める。

 

 しん、と辺りは静まりかえった。

 聞こえるのは夏候惇の激しく咳き込む声のみ。

 マットでも畳でもなく、固い地面に受け身も取らずに叩きつけられた。

 相当なダメージのはずだ。肺の空気も一気に無くなったはず……。苦しそうな咳は止む気配がない。

 そんな痛々しい夏候惇をただ見ているだけなど愚かな真似をするはずもなく、追い打ちをかけるために一刀は動く。

 

「つ……ごほっ、ごほ……く……」

 投げられても剣を離さなかったのは流石というべきか……。その剣を使えないように手首を踏みつけ、ここで初めて一刀は帯刀してあった剣を抜く。

 切っ先は夏候惇の首に……。

 

「……正直、ここまで上手くいくのは予想外だった」

 状況を確認する。

 夏候惇は地面に倒れ、乱れた呼吸は戻らず、おまけに獲物を持つ手は踏みつけられ武器も振るえない。

 対する一刀は呼吸一つ乱さずに剣を夏候惇に向ける。

 これは……誰が見ても明らかだ。

 

「……ぐっ、くそっ……」

 この状況が分からないような夏候惇ではない。

 明らかに詰みだ。夏候惇がいかなる反撃に出るよりも、一刀の剣がのど笛に突き刺さる方が早い。

 

 そのままの体勢のまま数分が過ぎ、静寂に響いていた夏候惇の咳も収まってきた。呼吸も段々と正常に戻り、完全な静寂が辺りを支配する。

 

「……夏候惇、何か言うべき言葉は?」

「ちっ……悔しいが……しかたない・・・・・か」

 

 夏候惇は恨めしそうに一刀を一睨みし、深呼吸をした後ぶっきらぼうに呟いた。

 

 

「……参った」

 

 夏候惇が負けを認める言葉を呟いた後、まるで時が止まっていたかのように固まっていたギャラリーから耳を塞ぎたくなるほどの大きな歓声が上がった。

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「――ふふ」

 

 曹操は久々に己の血が滾るのを感じた。

 絶対に勝てない? あの男が一撃でも入れることができたらそれなりの待遇を用意する? 浅はかだった。最初から決めつけていた。一つの結果しか考えていなかった。

 思考の停止――人の上に立つ者、人を率いる者としてはあるまじき行為に恥じる。

 北郷一刀は想像以上、いや、想像できないほどまでに完全に勝利した。

 良くて舌戦に持ち込み、参ったと言わせればそれで良いと思っていた。戦闘で勝てなくとも話術で勝てれば上等だと思っていた・・・・・・口の上手さも一つの才だ、いずれ大陸制覇を目指すのならば必要になってくる力だろう。実際に曹操は一刀の武よりも、口の上手さを期待していたのだから。

 それがどうしたことか、一刀は話術で夏候惇を誘導し自分に有利な状況を作り出し、なおかつ武で夏候惇を下した。

 これは曹操とて感心せざるを得ない。曹操の一刀に対する評価はここで跳ね上がる。

 

「――欲しいわね」

 

 己の想像を凌駕する結果を残す能力。

 天の御使いうんぬん抜きにしても手元に置いておきたい。有能な人間は大好きなのだ。

 これは・・・・・・思わぬ拾いものだ――。

 

「まずはおめでとうと言っておこうかしらね」

 

 曹操が口を開くと歓声が止む。兵も町人も主の言葉を邪魔するような愚を犯さない。

 

「華琳様・・・・・・申し訳ありません・・・・・・」

「いいのよ春蘭。あなたが負けたことは残念で腹立たしいけど、今の私は機嫌がいいの」

 

 曹操の前で雨に濡れた子犬のようになった夏候惇。

 対する上機嫌な曹操は一刀を見、微笑む。先ほどまでの疑いの眼差しは既にはない。

 

「北郷、私の想像を超える結果・・・・・・素直に感服するわ。約束通り、私の元でその力を振るいなさい」

「はは・・・・・・良かった。正直今でも心臓バクバクで・・・・・・」

 手も足も震えている。

 上手くいったことは奇跡的で、一刀はまぐれだと、運が良かったと思っている。

 しかし、曹操はそれを一刀の実力とし大きく評価した。

 曹操に評価された・・・・・・その重大さに一刀はまだ気づかない。

 

「あなたを侮っていたわ・・・・・・私の眼力もまだまだね。私はあなたを大きく評価する。場の流れを掴み、一瞬の隙を逃さずに確実に勝利に持って行く・・・・・・。天の知識とやらの他に利用価値があるかと問うたわよね? 今の手合わせを見るだけで十分、それに私があなたを今以上に育ててあげる。この私、曹孟徳に相応しい将にね」

 

 ここまで盛大に褒められたら逆に怖くなる。

 

「あなたは何を望む? ただの客人として私に保護される事がいい? それとも別の事を望むのかしら? もう一度言うけどいまの私は機嫌がとてもいいの――」

 

 一刀はただ保護を求めていた。不審者として処断されないだけでも僥倖なのだが、曹操はそれ以上の事を望めば叶えてくれる――多分、そう言っている。

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「じゃ、じゃあさ・・・・・・魏の客将・・・・・・とか?」

 後半は疑問系になった。

 将という立場ならそれなりの地位で安全も保証されるのではないかと思ったからだ。

 実際は将となれば戦闘の最前線に立つわけだから安全とはほど遠いのだが・・・・・・。先ほどの手合いの緊張からか正常な思考ができていないらしい。客将という言葉も何となく頭に浮かんだもので他意はない。三國志の世界だからか、何だかそれっぽい言葉が浮かんだ・・・・・・本当にただそれだけだ。

 

「ふふ――面白い・・・・・・!」

 

 魏という国はまだ存在しない。今の曹操は刺史でしかない・・・・・・一国の主ではない。

 それなのに一刀は魏国の客将と言った。

 これを曹操は国を興し、王と成れ・・・・・・そうしなければ己は使えないと、そう言っていると捉えた。そして加えて客将だ・・・・・・真に忠誠を誓う臣下ではない。王と成っても使える器でなければいつでも出て行くと――そう挑戦的な態度で試していると・・・・・・大きな勘違いなのだがそう捉えてしまった。

 

「私にそうまで言ってのけたのは北郷、あなたが初めてよ。天の御使い・・・・・・ふふその名は伊達じゃないわね」

 心底楽しそうに笑う曹操。盛大に勘違いされていることを一刀は知らない。

 

「こんな気分久々――ええ、本当に気分が良い。この気持ちのお礼と、あなたの力を評価して私の真名を授けるわ」

 

 曹操の言葉に辺りがざわつく。

 

「華琳様っ!」

「何をお考えですか!」

 

 夏候惇と夏候淵が慌てて意見するが、曹操はそれを手で制す。

 

「黙りなさい二人とも。この男にはそれだけの価値があるわ」

 曹操の頑なな態度に二人は納得できなくとも黙り込むしかない。

 しかし、当の一刀は状況について行けていない。首をかしげるばかりだ。

 

「あのさ、その真名って何?」

 

 今度は一刀の発言で周りがざわつく。何故驚いているか一刀には分からないが、この世界にとっては真名の意味が分からない一刀の方が異端なのだ。

 

「はぁ・・・・・・知らない? 真名というのは姓や名、字とは違う神聖な名前・・・・・・家族以外には最も親しみ信頼するものにしか呼ばせない。許可無くその名を呼べば殺されても文句は言えない・・・・・・そういう名前の事よ。その神聖な真名を呼ばせると言っているの。私があなたに対する期待と評価と思ってくれてかまわないわ」

「それは・・・・・おそれおおいというか、何と言えばいいか・・・・・・」

 一刀はまだイマイチ理解できていない。

 

「夏候惇達のことを別の名前で呼んでいたけどそれのことか?」

「そうよ。あぁ気をつけなさい、春蘭達は真名を許していないのだから不用意に呼べばくびり殺されるわよ?」

「うっ・・・・・・分かったからそんな怖い顔しないでくれよ夏候惇・・・・・・」

 その表情は般若か羅刹か・・・・・・失禁してしまいそうだ。

 

「天界には無いのかしら? あなたは姓が北、名が郷、字が一刀でしょう?」

「いや、違う。姓が北郷で名が一刀、字は持っていない」

「字がない?」

「あぁ、それに真名だっけ? 多分俺、の場合は『一刀』というのが真名に当たるな」

 

 更にざわつくギャラリー。

 曹操、夏候惇、夏候淵は驚愕の表情。一刀にしてみれば、何故そこまで驚くのか理解できない。

 

「なら貴様は初対面の我々に真名を許していたというのか!?」

「まぁそういうことになるかな?」

 

 むむむ・・・・・・とうなり黙り込んでしまう夏候惇。夏候淵も同じよに黙り込んでしまう。

 

「あはははっ! ますます気に言ったわ北郷、いえ、一刀。相当の器の持ち主か、それとも只の馬鹿か・・・・・・」

 

 間違いなく後者なのだが、残念なことに曹操は前者と捉えてしまった。

 

「春蘭、秋蘭、あなた達も真名を教えなさい。一刀に対し無礼でしょ?」

「むぅ……華琳様がそうおっしゃるなら・・・・・・」

「しかたがありませんな」

 

 夏候惇はまだ納得いかないという顔をしているが、夏候淵は割とすんなりと真名を告げた。

 

「私の真名は秋蘭だ。もちろん真名で呼んでくれてかまわない」

「く・・・・・・華琳様が決めたことだ、しかたがない。私は春蘭だ」

「私は華琳よ――ふふ、これから楽しくなりそうね」

 

 三人が真名を告げた所でまた大きな歓声が上がった。

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 後書き的なものを……。

 受け身もとらずに背負い投げが綺麗に決まり、なおかつ下は固い地面……と。下手すりゃ死にますね。

 柔道の知識なんざ無い……はずですから流石の春蘭もまともにくらってしまう……ちと苦しいかなぁ……。

 

 

 

説明
三話目になります。
春蘭と手合わせ・・・・・・うん、普通死んじゃうよね^^
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コメント
一刀は複数の武術をやっているようですね。(ブックマン)
おもしろかったです!!! 続きが気になります。(よしひろ)
続きが楽しみです!!(クロ)
次が見たい(RAVEN)
一本背負いか・・・・という事はあのたわわな胸が背中に密着して・・・・・さすが一刀・・戦いの中でもやるべき事を忘れていないな(霊皇)
出会いは勘違い……一刀と華琳がどういう関係になっていくのか、すごく楽しみですね。(伏宮真華)
馬鹿みたいに俺強ぇぇぇな一刀じゃないこう言うの頭の回る一刀なら続きが楽しみになる(libra)
俺は投げられたら反射的に受け身を取ってしまう。そんな体になってしまった(いずむ)
幸せな勘違いは後に何を生むのだろうか!(ぉ(cheat)
柔道やっていると投げられた後に受身が上手く取れないとすごく痛いんだこれが(YOROZU)
naintale様、修正しました、指摘ありがとうございます!(θ)
まぁ、本作でも似たようなことやられてますしありじゃないですか?二人の盛大な勘違いは笑うしかありませんがwww(フィル)
まさか春蘭に勝ってしまうとは、次回がたのしみです。(もっさん)
秋蘭と手合わせ→春蘭では?(naintale)
う〜んまぁ春蘭は体が頑丈そうだから何とかなるかも?受身取れなかったことにたいしては一刀に動揺させられてたからということでいいんでは?(ふもふも)
いや・・・これはこれで良いと思いますよ。 さて・・・・ 武もなかなかの持ち主な一刀・・・どんな物語が見れるか愉しみです^^w(Poussiere)
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真・恋姫無双 恋姫  一刀 華琳 春蘭 秋蘭 

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