秋月八雲争奪編! 後編
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いつもの穏やかに雰囲気を出していた結花とは正反対の腹黒さのようなものを醸し出していた結花がその場を去っていくと八雲の手には新と結花に手渡された紙だけが残り、由真の方は解説席でうなだれたまま完全に放心状態となっていた。

 

 

「由真君がこの調子だから、勝手に進めて行かせてもらうよ。それじゃ~次の人は入って来ていいよ」

 

 

由真に代わり、平良が促すと八雲の前に詠美が現れた。

 

 

「吉音…いえ、徳田さんには正直に言って驚かされましたが…私も負けるわけにはいきません」

 

 

「あれは俺も想定外と言いますか…まさか、あんな事を言い出すとは…」

 

 

結花と新の衝撃の攻め手に未だに驚きと困惑を拭い切れない八雲の前に詠美は仁王立ちすると、再び八雲はパニックに陥った。

 

 

しかし…それは八雲だけでなく、会場にいた全員にも言えることだった。

詠美のしたこと…それは八雲へのキスだった。

 

 

「ほほぉ〜彼女はこんな大胆なことするとは思えなかったんだけどね。これまでの挑戦を見てきて触発されたかな?」

 

 

この光景を見た由真はさすがに我に返っていて…

 

 

「ちょっと!!!あれはさすがにアウトでしょ!!!」

 

 

「朱金とは違って下心があるとは思えないし、露出があるわけじゃないから大丈夫だとおもうんだけどね」

 

 

興奮している由真をよそに平良は平然とした様子のままで詠美を止めるような事はしなかった。

 

 

会場が完全に静まり返ってから、一分もたたないうちに詠美はキスをすることをやめるとこれまでに挑戦して来たメンツからの大ブーイングだけが会場にこだましていて、観戦だけをしていた人達は未だに静まり返っていた。

 

 

「ど、どうして…こんな大胆な事を…」

 

 

「吉…新や他の方のやり方を見て思いました。生半可なものではダメなのだと…ですから、今の私にできる最大限のアピールと言うものをさせてもらいました!」

 

 

「いや…詠美さんほどの人なら少し考えれば、他にも方法は嫌って言うほど思い浮かぶと思うんですけど…」

 

 

「勝たなければ意味がないのです!!!」

 

 

突然、拳を握って目からは炎が見えそうなくらい燃え盛っているように高らかに宣言している感じで八雲の声が聞こえているのかも疑わしいほどに興奮し始める詠美。

 

 

「確かに本来ならば破廉恥な大会は中止させて公平中立かつ、清廉に行わせる立場の私ですが、今回は優勝すれば秋月君と言う特典があるのなら、それは別の話です!!!」

 

 

「おぉ〜珍しく、あの子が感情で物を言ってるねぇ〜」

 

 

「皆さんのしている事を見ていて思いました…。遠山さんや越後屋さん、眠利さんに徳田さんのような人として問題があるような人達に秋月君を安心して渡せるはずがありません!!!秋月君のような真面目な方には私のように文武両道、才色兼備な私こそがふさわしいと分からせる必要があるのです!」

 

 

詠美に言われた人は全員が反応をしていたが、詠美はそんなことは気にもしていなかった。

 

 

「そのためにもこうして唇を合わせれば、私と秋月君の関係が如何に固いものかを全員が嫌というほど理解することが出来るはず…あとはゆっくりと待たせてもらいます。」

 

 

「あ、あの…俺の立場は…と言うか、なんか色々と終わってるような気が…」

 

 

余裕の表情を浮かべたままで詠美はその場を去っていき、詠美の勢いに押された八雲と結花のショックが続く由真は放心状態からは完全には抜け出せずにいたため、平良が代わりに続けていく。

 

 

「あれ?もう終わりなのかな?もっと面白い事があるかと思ってたんだけどねえ〜では、次の人は始めてもらえるかな?」

 

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「やっと、私の出番ね。本当に待ったわよ〜。見てるだけって言うのも退屈なものね。」

 

 

次に八雲の前に現れたのは新も通ってた寺子屋で勉強を教えていた由比雪那だった。

 

 

「ん?あの人は参加者の名簿にはなかったと思うんだけどな…どうやって参加したのかな?」

 

 

「少し裏道を使わせてもらっただけよ?」

 

 

疑問に思っている平良を尻目に雪那は由真や山吹、朱金の方を見てまるで感謝するように微笑んでいた。

 

 

「まさかとは思うけど、君も彼女たちみたいに買収されたのかな?」

 

 

「そ、そんなわけないでしょ!!!」

 

 

我に返っていた由真へジト〜とした視線を送っていた平良の問いかけに明らかに由真は動揺していた。

 

 

「と、とにかくさっさと始めて終わらせなさいよ!!!」

 

 

ごまかすように由真が雪那に向かって声をかけてた。

 

 

「それじゃ…遠慮なく行かせてもらうわね」

 

 

そう言うと雪那の雰囲気は過去に遭った悪い感じとは打って変わって、まるで女王の様な気品あふれる感じへと変わっていた。

 

 

「秋月君…貴方は私の所有物なのよ?さっきから見てたけど、あんなお子様たちの方が良いのかしら?」

 

 

雪那は八雲の頬に手を添えるとゆっくりと手を下して顎へと移動させる。

 

 

「まさかあの程度の口付けで骨抜きにされたなんて言わないわよね?私達はもっと深いところまで行ったはずよね?」

 

 

「い、いや…そ、それは今は言わない方が…」

 

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会場の至るところから殺気が八雲に向けられていき、それを感じた八雲は命の危機を覚えていた。

 

 

「ま、そんなことはどうでもいいのよ。大事なのはこれからのことよね…君のせいで私は中古品扱いされてるのよ?その責任を取ってもらわないと困るのよね〜」

 

 

「だ、だから…それ以上は…」

 

 

この大会が始まって以来の殺意と憎悪が八雲自身に注がれていることに本人も当然気付いているためになんとかこの場をやり過ごそうとある事を試みる。

 

 

八雲は座らされていた椅子から立ち上がると目の前に立つ雪那の耳元に顔を近づけて…

 

 

「分かりましたから、続きはまた今度…良いでしょ?」

 

 

囁くように言うと雪那の顔は一気に赤くなっていた。

 

 

「ま、まぁ…今日のところはこれで勘弁してあげるわ。約束よ?」

 

 

最後の方を小さな声で言うと八雲も頷き、それを見た雪那はそそくさとその場から立ち去って行った。

 

 

八雲からは安堵の表情が見て取れたのは言うまでもないことだった…。

 

 

「うん?なにかありそうだったんだけどね〜これで終わりなのかな?ちょっと意外だったね〜もっと面白い展開になると思っていたんだけど…」

 

 

「あんたは黙ってなさい!むしろ、あんな男は早く消すべきよ!!!」

 

 

楽しむ平良と対照的に不満を募らせる由真はある意味、この大会の名物とも言えるほどにまでなっていた。

 

 

「いいじゃないか〜どうせ、次の人で最後みたいだから最後くらいはちゃんと見ててあげようじゃないか」

 

 

「ふんっ…それなら、さっさと最後に人は始めなさいよ!!!」

 

 

まだ入場もしていないうちに由真が開始の合図を出すと、最後に入場して来たのは想だった。

 

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「やっと…やっと…私の番ですね。本当に…本当に…長かったですよ。秋月君も大変でしたね…こんな茶番に付き合わされて…」

 

 

「お、お、想さん?すっごい怒ってます?」

 

 

「怒る?そんなわけないじゃないですか〜私が怒る理由がどこにありますか?貴方は私のモノ…それはこんな茶番が始まる前から分かり切っていた事ですよ?」

 

 

目の前にいる想のいつも以上に重苦しい雰囲気を肌で感じ取った八雲はさすがに今まで以上の危機を感じていた。

 

 

「思い返せば、金の亡者…牛の様に暴れる女に年増のおばさん…挙句の果てに腹黒女に妄想癖etcがいたところで私には何にも関係ありませんよ?」

 

 

「大して若くないクセに色気だけで男性を口説けると思ってる年増と勝手に秋月君との将来を考えてる将軍家の妄想癖に至ってはありもしない既成事実で勝とうという浅ましさ…」

 

 

ついさっきまで参加していた詠美と雪那への暴言に近い言葉を話している想。

 

 

「けれども、こんな茶番ももう終わりです…」

 

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そう言っている想の姿を目を凝らしてよく見てみるとなぜかマントの様なもので全身を覆っていて、顔とすね辺りから下だけがはっきりと見える状態に今さらながら気付いた八雲はその謎を思い切って想にぶつけてみる。

 

 

「ちなみにその姿は何のために…?」

 

 

「あぁ、これですか…これはですね〜。」

 

 

いつも困ったときは頬に手を当てている想はその癖なのか、少し考えるような仕草と一緒に頬に手を当てて少しの間考え込むと…

 

 

「さっきまでは普通の服装でいたんですよ?けれど、多分私の姿を見たら秋月君…いえ、他の方が驚くでしょうし、余計な混乱を招くと思ったので。」

 

 

いまだに笑みを崩さない想の姿を見て、これまでに挑戦した人間の何人かが感づいていた。

 

 

そして、感づいた者が一様に「まさか…」と呟くと同時に八雲の脳裏にも一つの可能性が思い浮かんでいた。

 

 

「もしかして、そのマントの下は…」

 

 

「あら、さすがに気付きましたか。そうですよ、秋月君の思っている通りです」

 

 

そう言って想がマントを脱いでみると想の腹部が膨らんでいるのが、はっきりと見て取れた。

つまり、想は既に妊娠していたのだった。そして、その子の父親も一人しか思いつかなかった。

 

 

「見せるつもりはなかったんですよ?ただ、あまりにもバカな女が秋月君の周りに群がっていたので、揺るぎない事実と言うものを見せた方が良いかと思いまして…それにこの子の名前も決めただけじゃなくて、新居も用意してるんですよ?」

 

 

「逢岡さん…ちょっと落ち着いて…」

 

 

全く目は笑っていない想に八雲だけではなく、その場にいた全員が悪寒を感じていた。

 

 

「そうですね。話は帰ってからゆっくりとしましょうか」

 

 

それだけを言い残して想はその場を去っていた。

想が去った後に一人残された八雲には色々な感情が入り混じった視線が向けられていた。

 

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「これで一通り終わったわけだけど、誰が優勝?になるわけ…?」

 

 

「そうだねぇ〜ここは彼自身に決めてもらう方が良いかもしれないね」

 

 

「そうね…私もあとで結花姉に色々と聞きたい事があるし、秋月に決められるのは癪だけど…なにかあっても関わりたくないわね。だから、さっさとあんたが決めなさい!」

 

 

平良と由真がそう言って八雲の方を見つめると、八雲は深く考え込みながら、これまで挑戦して来た女性陣を見渡している。

 

 

「えっと…そ、それじゃ〜………」

 

 

言い淀むような感じの後で一人の女性を指さす。

 

 

「責任取らないとどんな目に遭うか分からないから、想にします!」

 

 

「では、優勝は逢岡君にけって〜〜〜〜〜い!!!」

 

 

平良がそう言うと新が「認めないんだから〜!」と言いながら、八雲を拉致し他の女性陣は2人の後を追いかけ始めた。

 

 

「こんな終わり方で良いの?」

 

 

「まぁ〜良いんじゃないかな?面白ければ…」

 

 

平良の言葉に由真は深いため息をついていた。

そして、勝者である想は…

 

 

「徳田さん…本当にイケない人ですね…これはしっかりと指導をしないといけませんし、秋月君にももっと私のモノという自覚を持ってもらわないと…ふっふっふっ…」

 

 

こうして八雲争奪杯は幕を下ろした。

 

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あとがき

 

 

更新が遅れて本当にすいません!!!m(__)m

 

 

まじめに仕事を探すために県外に滞在していたため、執筆が滞っていました 泣

結果は言うまでもなく、完敗です…!

 

 

あと何年ニートをすることになるやら…(笑)

 

 

最後の方はとにかく急いで書いたために内容の薄い感じになってしまったような気がして…それにこれから恋姫の続きも書かねば…

 

 

天下御免!は一旦ここで終了したいとおもいます。

次にどの作品を書くかはリクエスト次第という事にしようかなと思います!

説明
まさかまさかの中編を書いて、そして最後に後編となりました。

後編に書くキャラは決めていたので、少し書きやすかったこともありますが…個人的に気に入ってるキャラを残しました(笑)

いつものように誤字脱字は遠慮なく指摘してください。
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タグ
後編 詠美 逢岡 八雲 争奪戦 天下御免 あっぱれ! 

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