桜ノ舞ウ日ニ…
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春風が運んだ桜の花びらがひらりと目の前を通り過ぎた。

 

 

 「もうすぐ卒業…、か…。」

 

 

私の名前は『春風 遥美(はるかぜ はるみ)』。

もうすぐ卒業を控える中学三年生である。

一応、もう進学する学校は決まっている。

 

 

 「どうしたんだ?外なんか見て。」

 

 「んっ?あっ!!柚貴くん!?」

 

 

私に話し掛けてきたこのかっこいい男の子は『秋島 柚貴(あきしま ゆうき)』君って言って私

の…、好きな人である。

 

 

 「なんだよ。そんなにびっくりして…。こっちまでびっくりするじゃねぇか。」

 

 

柚貴君は私の頭を数回ポンポンと叩きながら言った。

 

 

 「ごっ、ごめん…ね。」

 

 

私は柚貴君に軽く頭を下げた。

すると柚貴君は私の頭に乗せていた手でそのまま私の頭を撫でながら

 

 

 「別に怒ってないよ。多分、卒業の事考えてたんだろ?」

 

 

と微笑みながら、しかし少し悲しげに言った。

 

 

 「う…ん。私、皆と離ればなれになるのが嫌で…。」

 

 

と私は嘘を言った。

本当は柚貴君の事を考えていたんだけど…。

 

 

 「まぁ、しょうがない事だからさ。仕方ないだろ?」

 

 「うん、そうだけど…。」

 

 「だからさ、卒業するまで悔いなく過ごそうぜ?」

 

 

柚貴君はそう言うとゆっくりと私の頭から手を離し教室に戻って行った。

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 「はぁ〜。」

 

 

何で私は勇気がないんだろう…。

さっき、柚貴君があんなに近くに居たのに私は告白する事が出来なかった。

このままでは告白する前に卒業してしまう…。

 

 

 「なーに溜息ついてんの?」

 

 「えっ?」

 

 

振り向くとそこには私のクラスメートの『綾川 凍虎(あやかわ とうこ)』がいた。

名前は男の子っぽい名前だけど、ちゃんとした女の子である。

 

 

 「あっ、凍虎。実はね…」

 

 

私が凍虎の質問に答えようとした時、それを遮って凍虎が言った。

 

 

 「どぉ〜せ、『勇気がでないよぉ〜』とかでしょ?遥美、いつも口癖みたいに言ってるからさ!!」

 

 「当たり。なんで私は勇気がないんだろ…。」

 

 

私はため息を一つついた。

 

 

 「それは、ただ単に遥美がそう思ってるだけなんだと思うよ?」

 

 「えっ?どういう事…?」

 

 

私は凍虎に聞いた

 

 

 

 「『私は駄目だ』、『私は勇気がない』って心で思っているから勇気がないと錯覚してしまっているんだよ。逆に言うと、錯覚してるから勇気がでないんだよ。」

 

 「……。」

 

 

まるで凍虎の言葉は、私の心を見据えて言っているのではないのかと思ってしまう程私にあてはまっていた。

 

分かっているんだ。

自分では…。でも『フラれたらどうしよう』と心の片隅で考えてしまっていて、それが私の告白を邪魔しているんだ…。

 

 

 「まっ、結局何事にもプラスで考えないと駄目だって事だよ。

そりゃあ失敗はこわいけど、人って失敗があるから成長していけるんだと思うよ?

フラれたっていいじゃん、嫌われたっていいじゃん。

自分の本当に伝えたい気持ちを相手に伝える事が出来たんだからさ。」

 

 

確かにそうだ…。

本当の気持ちが相手に伝わったんなら、それでいいじゃな。

私はどこかで勘違いしてたんだ。

 

フラれるのがこわい?

 

そんなのただの逃げる為の言い訳だ。

 

 

 「凍虎…。」

 

 

私は凍虎を見つめた。

 

 

 「だからさ、遥美も頑張りな!!当たって砕けろ!!」

 

 「うっ、うん!!ありがとう凍虎。…私、ただ逃げてただけなんだね。フラれるのがこわくて。」

私は凍虎の言葉の一つ一つにすごく勇気を貰った。

 

 「凍虎…。私、今日なら行ける気がする…。」

 

 「マジ!?頑張って告白してきな!!」

 

 

凍虎は笑いながら私の背中を何回もバシバシ叩いた。

 

…ありがとう。凍虎。

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私は放課後、柚貴君を学校近くの公園に呼び出した。

公園は桜の花びらで、辺り一面鮮やかなピンク色に染まっていた。

 

 

 「おーい!!」

 

 

柚貴君が公園の入口の方から私の元へ駆け寄って来た。

 

 

 「ごめん。委員会があって…。」

 

 

柚貴君は息を切らしながら言った。

ここまで走って来てくれたのだと思う…。

 

 

 「ところでどうしたんだ?急に『終わったら公園に来て』って…。」

 

 「ごめんね柚貴君。実は私、柚貴君に伝えたい大切な事があって…。」

 

 

私は手紙を取り出すため、バックに手を入れた

その時だった

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何か大きな音が公園の入口の方からした。

その音の方向を向くと、トラックが物凄いスピードで私達の所へ突っ込んできていた。

 

 

 「危ない!!」

 

 

柚貴君は咄嗟の判断で私を突き飛ばした。

 

それは一瞬の出来事だった。

柚貴君は私を突き飛ばした後、トラックにぶつかり突き飛ばされた。

柚貴君の元へ駆け寄ると、柚貴君は血を流しながら地面に倒れていた…。

 

 

 「柚貴君...?」

 

 

返事が無い。

 

 

 「ねぇ、柚貴君!!死なないでよ…。」

 

 

私は泣きながら柚貴君に言った。

柚貴君の顔の上に涙が落ちた。

涙の粒は柚貴君の頬に当たると、四方に飛び散った。

 

 

 「う、ん…」

 

 「柚貴君!?」

 

 

柚貴君が意識を取り戻した。

 

 

 「遥美か…?泣いてるのは…。」

 

 

柚貴君は力無く私に聞いた。

 

 

 「うん。」

 

 「大丈夫、か?怪我はないか…?」

 

 「うん。大丈夫だよ…。それより…」

 

 

私は柚貴君の右腕を見た。

血が流れている。

 

 

 「柚貴君は大丈夫、なの?」

 

 「あぁ。何、とかな。運がよかった、の、かな?」

 

 

柚貴君は笑いながら言った。

 

 

 「大丈夫ですか?」

 

 

いきなり知らない男性がこちらに寄って来た。

私はふと周りを見回すと人が沢山集まっていて、私達の近くに救急車が止まっていた。

男性は救命救急士のようだ。

 

 

 「頭は打ってないみたいですね。おい、早く彼を救急車の中へ。」

 

 

柚貴君は救急車の中へ運ばれた。

 

 

 「彼女さんも早く!!」

 

 「えっ?」

 

 

私も手を引かれながら救急車の中へ乗った。

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話を聞くと、あのトラックの運転手は数時間前に酒を飲んでおり、そのせいで居眠り運転をしああなったらしい。

 

迷惑な話だ...

 

 

 「それで運転手の方は…?」

 

 「その後、公園の壁にぶつかり、運転手は重体です。」

 

 「そうですか…。」

 

 

自分自身のせいでああなったのだから仕方が無いとは思うが、ちょっと気の毒だ…。

 

 

 「彼は運が良かったですね。彼女さん。」

 

 「えっ?」

 

 「彼は腕しかたいした怪我はしていません。」

 

 「腕のほうは…」

 

 「骨折です。」

 

 

安心した。

私は安心し過ぎたせいで泣いてしまった。

 

 

 「大丈夫ですよ。安心してください…。」

 

 

よかった…。本当に…。

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 「3年2組。淺川 登。」

 

 「はい!!」

 

卒業式当日、体育館では男子生徒がばかでかい声で返事をしている。

 

『もう卒業か…。』と頭の中で三年間の思い出が走馬灯のように駆け巡る。

あの事も…。

柚貴くんは一応、自分の席に座って自分の名前が呼ばれるのを待っている。

 

今日の今朝だった。

急な事を言われた。

 

 

 『今日、これが終わったらちょっと待っててくれるか?』

 

 『えっ…?うっ、うん。』

 

 

私自身、柚貴くんに用事があった。

 

 

………………

…………

……

 

卒業証書も配り終わり、先生との最後のお喋り等も終え私は柚貴くんが来るのを学校の外で待っていた。

 

 

 「遥美!!」

 

 

柚貴くんが来た。

…学生服のボタンが全て無くなっている。

 

 

 「ごめん。なかなか女子集団から逃げ出せなくて。」

 

 

柚貴くんが目の前で軽く頭をさげた。

 

 

 「別にいいよ…。柚貴くん、モテるもんね…。」

 

 

私は悲しげに言った。

 

 

 「今日は言いたいことがあって…」

 

 

と言うと柚貴くんはポケットからボタンを取り出し、私に差し出した。

 

 

 「これ…。俺、お前の事が好きなんだ。付き合ってくれ!!」

 

 「えっ!?」

 

 

急だった。

急だった故に私は混乱してしまった。

 

 

 「えっ…?すっ、好き?私の、事、が…?」

 

 「あぁ。」

 

 

私はとりあえず、柚貴くんの差し出すボタンを手に取った。

 

 

 「それ、お前の為にとってたんだ。」

 

 「あっ、ありがと…。」

 

 

まだ頭の中が混乱している。

私の用事も告白だった。

 

こんなの卑怯だよ…。

不意打ちだよ…。

 

 

 「じ、実は私も。そっ、その…」

 

 

私は『好き』と言う二文字がなかなか口から出ずにいた。

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 「前から、すっ、すっ…」

 

 

頑張れ、私!!

あともう少しだ!!

 

 

 「す?」

 

 「好きでした!!」

 

 

言えた!!

軌跡だ!!

 

柚貴くんは驚く事もなく私の告白を聞いて笑った。

 

 

 「はははははっ!!」

 

 「えっ!?へ、変だった…?」

 

 

柚貴くんは手を私の頭の上に置きながら言った。

 

 

 「いや。相変わらずお前は可愛いなと思って。」

 

 「もう。笑わなくてもいいじゃん。」

 

 「ごめんごめん。」

 

 

柚貴くんは私の頭を撫でながら言った。

 

 

 「お前の気持ちは『あの時』から知ってたよ。あの呼び出された時だって、大体は何するか見当ついてたし。」

 

 「そんなに私、分かりやすくした覚えなかったのに…。」

 

 「分かりやすいんだよ。お前は。」

 

 

柚貴くんは愉快げにケラケラ笑った。

 

 

 「でも、そんなお前だから俺はお前に惹かれたんだよ。」

 

 「じゃあ、私の魅力は『分かりやすい』から?」

 

 「まぁ、それもあるな。」

 

 

柚貴くんはさっきと同じく笑った。

 

 

 「で、結局OKなのか?」

 

 「あ、当たり前じゃん!!」

 

 

私はそう言うと、顔をぷいっと横にやった。

本当は恥ずかしくて目を背けただけなんだけどね。

 

 

 「高校は別になるな。でも、俺は週5のペースでお前に逢いに行くからな。いや、週5は少ないかな…。」

 

 「週5って多いと思うよ?」

 

 「そうか?」

 

 「うん。」

 

 

私達は笑った。

 

あぁ。こんなに楽しい日々がこれから何年、いや何十年

ずっと、ずぅっと続いていくんだな。

私って、幸せだ。

最初は告白できるか不安だった。

けれど、今はそんな事簡単にできる気がする。

ありがとう。

ありがとう。

 

これから先、たとえどんなに辛い事があろうとも二人は乗り越える事ができるだろう。

『何故?』と聞かれたならばこう答えよう。

『二人の絆は決して壊れず、この絆はお互いをカバーし合う。

辛い時も、悲しい時も…。

一人ならば出来ない事も二人ならば出来る。

そうやって、二人は成長していく。』

と。

 

――――――――――

逢いたくて

逢いたくて

声にならない声で

君の名前を呼び続ける

 

悲しくて、苦しくて

一人の夜が怖いから

夜空見上げて君を捜してる

 

by初音ミク『Dear』

 

説明
今回の小説は恋愛(?)系のお話です。

途中、ぐだぐだかも知れませんがよろしくお願いしますwwwwww
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