真・恋姫無双 〜今度こそ君とともに〜 第11話
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一刀と炎蓮の連合軍は巧みな連係により揚州の黄巾党を撃退し、本拠地に戻った一刀に新たな問題が発生していた。

 

その問題とは…

 

「それで私たちに袁術殿の傘下に入れと言うことですか、張勲さん」

 

「ええ、そうです。袁術様は何れ揚州を支配する事が決まっていますから、先に傘下に入った方が何かといいですよ」

 

張勲は一刀の『天の御遣い』の立場や言葉を利用して、自分たちの傘下に収め勢力拡大しようと企んでいたのであった。

 

「もし断れば?」

 

「そうですね〜あまり手荒な事をしたくないので、できる限り穏便に済ませたいですがね…」

 

「手荒な事ね……それは一刀を殺すという風に聞こえるわよ」

 

「アンタ私たちの事、完全に舐めているわよね」

 

張勲の言葉は慇懃であるが、言っている内容は脅迫に近い物であったので傍にいた雪蓮や梨?が殺気を押さえながら張勲に言い返す。

 

「あら〜私はそんな事言ったつもりは無いですけどね〜」

 

張勲は殺気立った雪蓮の言葉を笑顔で否定するが、周りを見ると雪蓮や冥琳、梨?、包、流琉などはその言葉を全く信じていなかった。

 

「貴方達が正式に揚州刺史等になれば話は別ですが、現段階ではこの話に受けることはできません。どうぞお引き取りを」

 

一刀も明確に拒否の姿勢を見せた事で、張勲もここは流石に分が悪いと思い引き下がる事を決めたが去り際に

 

「そうですか、“今回”はこれで帰りますが、後で泣いても知りませんよ〜」

 

不気味な捨て台詞を残して帰ったのであった。

 

張勲が帰った後に雪蓮は

 

「何よ、あの性悪女は!」

 

周りに怒りを表しながら文句を言う雪蓮に

 

「でも最後にあの人が言った言葉が気になるのですが…」

 

流琉は張勲が去り際に残した言葉が気になるのか心配そうな表情を見せる。

 

「流琉、あんな女の悔し紛れの言葉、気にしなくていいわよ」

 

「しかし名門と言われた汝南袁家、表面上では何もしないかもしれませんが裏でどう動くは分からないわよ。警戒するに越した事はないと思うわ」

 

「そうだな。まだまだ力では向こうの方が上だ、今後どういう手を使って仕掛けてくるか分からない。油断は禁物だな」

 

梨?は、流琉に楽観する言葉を言うが、包と冥琳はやんわりと釘を刺す。

 

「包や冥琳の言う通りだな。包、すまないが寿春の様子を探ってくれないか?」

 

「分かったわ」

 

一刀は念の為、商人としての情報網を持っている包に袁術側の動きを探る事で、万が一向こうが戦の準備した時に対応できるとして頼んだのであった。

 

この張勲の言葉が、後日一刀に新たな災難を降りかかるとはこの時誰も予想しなかったのであった。

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一方、洛陽では何進と十常侍との政権抗争に明け暮れ、当初黄巾党の乱が勃発した際も手つかずの状態で放置したため、乱は拡大。

 

各地での被害が相次ぎ、ここで漸く事の重大性に気付いた朝廷は慌てて軍を編成した。

 

だが朝廷内の将は黄巾党を侮っていた者が多く、その結果その者たちは各地で敗北、慌てた朝廷は更に各地の豪族たちにも黄巾党の討伐令を発し、何とか乱を喰い止めようとした。

 

この有力豪族の力で漸く乱の拡大は防げたものの、まだ一進一退の攻防が続き、誰の目から見ても朝廷の支配力の低下は明らかであった。

 

そんな中、一刀の元に朝廷から一通の手紙が届いた。

 

内容は黄巾党主力に対する討伐の参戦命令であった。

 

これには大きな意味があった、命令とは言え朝廷が一刀を認めた証拠であり、そしてそれは手柄次第では更なる勢力拡大の好機に繋がるからだ。

 

「一刀、ここは参戦すべきだ。袁術の動きは気になるが、今、我々に手出しする余裕も無いだろし、ここらに他の大規模な黄巾党や賊はいないから安心して兵は出せる」

 

「私も冥琳の意見に賛成よ。ここは一つ勝負すべきね」

 

「それにここらで他の諸侯にも顔を売る必要もあるでしょうし、今後の繋がりも欲しいですわ」

 

冥琳と雪蓮は今後の勢力拡大の為、包は今後何らかの取っ掛かりの好機として賛成とした。

 

参戦決定なり、梨?は嬉しそうな顔をしながら

 

「どんな顔ぶれが集まるのかは、楽しみね♪骨っぽい相手がいて欲しいわ」

 

「梨?様、間違っても雪蓮様と一緒になって他の軍の人と喧嘩しないで下さいね」

 

「「流琉、それどういう意味よ!」」

 

「「「ハハハハハハ!」」」

 

そして3日後、一刀たちは黄巾党が立て籠もる広宗に向け、出陣したのであった。

 

広宗に到着すると一刀と冥琳は今回の大将である皇甫嵩将軍の元に着陣の挨拶に向う。

 

「居巣県県令北郷一刀、皇帝陛下の命により参上しました」

 

一刀は型通りの挨拶を行ったが、その動きなど洗礼された動きであった。

 

そして皇甫嵩から全軍揃え次第全体の軍議を行うのでそれまで休息を取る様に指示を受けこの場を離れたのであった。

 

一刀が皇甫嵩の元から去ると天幕の外から皇甫嵩の副将を務める盧植が現れ

 

「風鈴(盧植の真名)の目から見て彼はどう見えた」

 

「そうね〜楼杏(皇甫嵩の真名)ちゃん。一言で言えば底が見えないですわ。あの曹操さんの様な自信家でも無く、そして孫堅さんの様に覇気を全面に押し出す訳でも無い。と言って凡庸でもない雰囲気を出しているから不思議なのよね」

 

「確かに私の目からもその様に感じたな。で、先に来た風鈴の弟子と比べてはどうだ?」

 

「ハァ……何れは桃香ちゃんも北郷さんに匹敵する実力があると信じているけど……今はね…」

 

風鈴の言葉を聞いて楼杏もこれ以上深く追及はしなかった。

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そして一刀は陣へ戻ると陣には冥琳と雪蓮が残っていた。

 

「はぁ〜偉い人に挨拶するのにこんなに疲れるとは思わなかったよ」

 

「何を言っているんだ一刀、こういう場にこれから何度も出て貰うんだ。いい加減慣れて貰わないとな」

 

「良かった〜こんなめんどくさい役、もう私しなくていいから助かるわ〜」

 

「じゃ雪蓮代わりに俺の軍議に出てくれる?」

 

「え〜何で私が出なくちゃならないのよ」

 

「だって雪蓮、さっきめんどくさいと言って厄介な事よく俺に押し付けたじゃないか」

 

「あ、あれは一刀の為と思って」

 

一刀の切り替えしに雪蓮の旗色が悪くなる中、兵の一人がやって来て

 

「北郷様に面会を求めている者が来ています」

 

「官軍の誰か?」

 

「はい。義勇軍の劉備と名乗っておりますが…どうしましょう?」

 

「来たのは劉備さんだけ?」

 

「あと配下の将と思われる者一人を連れて来ていますが」

 

「分かった、会おう。後、皆を呼んできてくれるかな?」

 

一刀は兵にそう指示した。三人はお互い顔を見合わせ

 

「さて…何の用かな?」

 

「恐らく単なる挨拶だろう」

 

(「何か嫌な予感がするのよね…今は味方だから暗殺とかは無いと思うけど…」)

 

一刀と冥琳は楽観的な話をしていたが雪蓮は気難しい顔をしながら終始無言であった。

 

そして梨?、包、流琉などが集まり劉備を招き入れる。

 

そして陣に劉備と関羽が入ってくる。

 

「義勇軍の劉玄徳です」

 

「劉備さん私たちに何か、御用でしょうか」

 

「……北郷さんにどうしても、お聞きしたいことがあってきました」

 

劉備の言葉は普通であるが、表情に怒りを隠せない様子であった。

 

「貴方たちは賊1万人を討伐する際、賊が降伏しようとする者もいたにも関わらずそれを許さず皆殺しにしたという事を噂で聞きましたが、それは事実でしょうか」

 

その話を聞いて一刀たちに緊張が走る。そして雪蓮の不安は的中してしまった。

 

(チッ!嫌な感じはこの事だったのか)

 

あの時は一刀の暴走があったものの結果的には賊を討伐した。しかしあの場から逃れた少数の賊がおりそれが話を広げる形となったが噂が噂を呼び途中で話が尾ひれが付く形となり、それが劉備に伝わりその話を鵜呑みにしてしまったのであった。

 

だがそんな劉備を他所に一刀は冷静に話しをする。

 

「ええ…何の罪が無い民や子供を無慈悲に殺戮した賊1万人だけですが、それが何か不都合でも?」

 

「ゆ、許せません!それは賊がやったことは決して許される事じゃありません。でも同じ人間である以上、降伏した人を許して改心する可能性は十分にあったはずです!それを許さずに皆殺ししたことはどんな理由があっても許される事はありません!私は、貴方たちがしたことを、絶対に許せません!」

 

劉備はすさまじい形相をしながら一刀を睨み大声を出す。

 

それを見ていた雪蓮や冥琳、梨?、包は逆に事情が知らない者が何を言っているんだと怒りの表情を劉備に向ける。

 

「言いたい事はそれだけですか、劉備さん」

 

「どういう事ですか!」

 

「俺はあの事については決して後悔しない。また同じ場面があればもう一度同じ決断しますよ」

 

「………」

 

一刀は劉備の感情に振り回さずに冷静に答えたが、雪蓮たちと逆に無表情で流琉は劉備に話し掛ける。

 

「劉備さん、私はここの将でもある典韋と言います。貴女は例え賊でも話し合いをするという素晴らしい人ですね。では貴女に聞きますが私が村を必死で守っていた時に貴女は何をしてましたか?」

 

「えっ…?どういう意味ですか」

 

「私は貴女がさっき言っていた賊を皆殺しした時にその賊に村が襲われ何とか生き残った一人です。私たちは賊に襲われる中必死で戦い、何とかお兄様たちに助けて貰いました。もう一度聞きます、貴女はその時何をしてましたか?」

 

「…そ、それは」

 

「わ…私たちも別のところで賊と戦っていたのだ!」

 

流琉の問いに劉備が詰まったので代わりに関羽が答える。

 

「そうですか…それは立派な事ですね。それで戦ったという事は、貴女たちはその賊に対して話し合いをして降伏した人を助けたのですか?」

 

「「………」」

 

流琉の問いに劉備たちは答える事ができない。

 

「私たちが賊1万人殺すことと貴女たちが賊を殺すこととどう違うのですか!自分たちの考えを私たちに押し付けないで下さい!!そして何も私たちの事を何一つ知らないのに好き勝手な事を言わないで下さい!!!」

 

更に涙を出しながら訴える流琉に劉備たちに返す言葉は無かった。

 

「流琉、もういい。もうこれ以上君が傷つくことはない。劉備さん、悪いがこれで失礼させて貰う。最後に一言言わせて貰うけど、俺はこの手の中で助けを求めて死んでいく子供を見た…あれは一生忘れる事ができないしあのような子を二度と出したくない。その為だったら俺たちはどんな手段でも取るよ」

 

一刀は流琉を連れてこの場を離れると雪蓮たちも同じ空気を吸いたくないとばかりに劉備たちを睨み付けてこの場を後にする。

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そして皆が去った後、その場に残された劉備と関羽がただ立ち尽くしていると

 

「あら桃香ちゃん、ここで何をしてるのかな〜」

 

ここに現れたのは劉備の師匠である盧植であった。盧植は今後の打ち合わせの為に一刀の陣に来ていたが先に劉備が来ていたので陣の外で待っていたところ一刀たちの会話を全て聞いていたのであった。

 

「せ、先生聞いて下さ…」

 

盧植が話を聞いていないと思い劉備は師匠である盧植なら自分の考えを分かってくれるはずだと、盧植に近づこうとその瞬間

 

パーン

 

盧植の右手が劉備の顔の左頬を叩いていた。盧植の予想外の行動に驚きを隠せない劉備は盧植に批難の声を上げるが

 

「な、何をするのですか!先生!!」

 

「話は後ろで全て聞かせて貰いました。それでこれは馬鹿な弟子に愛の鞭かな〜」

 

盧植の顔こそは笑っているが、目は全く笑っていない状態であった。

 

「桃香ちゃ〜ん人を救うのに力は必要だと散々教えたでしょう。そして力無き正義はただ単なる理想論の振り回しや青臭い書生論にしか過ぎないと。貴女は何時になったらそれが分かるのかな〜」

 

「だ、だけどあの人のやり方は!」

 

「それは貴女が口出す必要は全くありません。それぞれの事情や色んな状況があるのですから」

 

「では盧植様はあのような暴挙を容認するのですか!」

 

この言葉は劉備の後ろに控えていた関羽であったが盧植は

 

「暴挙ね…ならば関羽ちゃん。貴女が賊を討伐した事と北郷さんが賊を討伐した事とどう違うのか説明して下さるかしら」

 

「……」

 

「だけどあの人は降伏しようとした人までも…」

 

「桃香ちゃん関羽ちゃんそれを見てちゃんと確認したのですか!貴女たちの目は一体何処に目を向けているのですか!北郷さんや典韋ちゃんの言葉を貴女たちはしっかり聞いていたのですか!」

 

全く反省の色を見せない劉備らに盧植は怒りの声を上げる。

 

「……桃香ちゃん。貴女の右手を見せなさい」

 

「はい…」

 

盧植は気になる事があり劉備の右手を見てその予感は的中してある事を決断するが、今この事を劉備に告げなかった。

 

「さ〜て、今から北郷さんに馬鹿弟子の謝罪に行ってくるわね〜ああ桃香ちゃんら付いてこなくていいわよ〜。今、貴女が謝罪しても相手の心に何一つ響かないと思うから」

 

盧植は劉備を今まで教育した成果が何一つ生かしきれていない現実に落胆し、この責任はちゃんと教育できなかった自分にもあると考えた盧植は、弟子である劉備の不始末の謝罪との為そして劉備の誤った考えを矯正しないとこの先未来がないと考え、この場を離れたのであった。

 

説明
昨年4月以来の投稿で恐らく内容を忘れている方が多いと思います(苦笑)、これも不定期更新の作品なので大変申し訳ありません。

今回はある方が登場しますが、また劣化が酷いと思います。この方のファンには先にお詫び申し上げます。

では第11話どうぞ。
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コメント
はこざき(仮)さん >桃香は後先考えずに理想のためなら周りをよく見ず喧嘩を売ってしまいますから…星や朱里などのストッパー役が居ればいいのですが愛紗じゃ同調してしまいますからね。 (殴って退場)
北郷は曲がりなりにも県令なんだから上の喧嘩売るのはさすがに不味いのではないんですかね桃香さん…理想と現実、きちんと把握して埋めないといかんですね…(はこざき(仮))
睦月さん>次回、桃香にとって厳しい現実が待っています。(殴って退場)
いやぁ〜‥桃香は相変わらずの甘ちゃんですねて〜‥続きを楽しみにしてます。(睦月)
雷起さん>余裕があればそのあたりも書いてみたいと思いますが…多分それは厳しいかと。(殴って退場)
kiraさん>それについて多少ネタばれになりますが、この後今の桃香たちにとっては厳しい試練が待っています。これによってどう変わるか…(殴って退場)
h995さん>お嬢さまというよりは…大将という名のニート状態といった方がいいかも。(殴って退場)
Jack Tlamさん>今の桃香は感情論だけで動く我儘な子供状態ですから…手についてはその通りです。次回それについて風鈴が動きます。(殴って退場)
聖龍さん>桃香は理想の成功までの行程を全く考えずに行き当たりばったりで動いている様な物ですから。(殴って退場)
アストラナガンXDさん>本音と建前を使い分けれたらいいが、桃香にはそんな腹芸できないから…。(殴って退場)
陸奥守さん>桃香は人の醜い部分を全く見ていないからこういう発言をしてしまう。そして愛紗について桃香の考えを信じてしまう盲信的な信者ですからある意味怖い。(殴って退場)
たっつーさん>さてこの後どうしましょうw。(殴って退場)
この外史の桃香の生い立ちや、愛紗と鈴々との出会いがどんななのかとても気になります。どうしてこんなになっちゃったんでしょう?(雷起)
この物語の桃香も、理想だけをみて現実を見ていないようにみえる。また、関羽のように主に諫言せず追随するだけの部下だけで構成されている集団では前途は暗いものとなりそうですね。(kira)
右手を確認したという事ですが、もし綺麗であるというのであれば、剣や筆だけでなく畑仕事に必要な鍬さえも持った事がないという事に。……一体、何処の家のお嬢様なんでしょうか?(h995)
義勇軍だから情報収集能力の低さは仕方ない。だから猶更、下手な物言いは慎むべき。立場も無い相手を斬ることくらい、この時代の権力者なら造作も無いんだから。理想云々ではなく礼節の段階からして、なっていない。風鈴は桃香の右手を見て……多分、マメが潰れた痕だとかそういうのが無いのを確認したんでしょうね。筆や剣を握っていれば、マメ位できるしね。(Jack Tlam)
更新待ってました。今の桃香は理想の果てしか見えてない、現実を一歩一歩自分で進みながら頑張る事を出来ないか……(聖龍)
世の中綺麗事だけでは成り立たないけれども、人間綺麗事を無くしたら堕ちる所まで堕ちる。(アストラナガンXD)
桃香のは誤った考えというより現実を見てなくて視野が狭いんだろうね。愛紗達が現実見て諫言してるなら問題なかったんだろうけど。(陸奥守)
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