艦隊 真・恋姫無双 104話目
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【 赤城との初接触 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城 内城 一階 にて ?

 

桂花「…………………」スタスタ

 

赤城「あ、あれっ? 聞こえませんでしたか………?」

 

桂花「…………………ふんっ!」 

 

ーー

 

赤城からの声掛けを完全無視する桂花。 

 

自分の命運を生か死かと選ぼうとしている最中に、一刀の居る場所に連れて行けと申し出る赤城。 呆れて物も言えず、チラリと一瞥してから無視する形で立ち去る。 

 

桂花は、そのまま、外に出ようとする素振りを見せていた。 

 

ーー  

 

赤城「お願いします! わ、私を提督の──アワワワァァァァァッ!!」

 

桂花「─────ッ!?」

 

ーー

 

正座の姿勢より立ち上がったばかりの赤城は、桂花が自分を無視して離れて行くので、慌てて追い掛けた。 

 

だが、詳細に説明すれば『長時間の正座から解き放ち、生れたての小鹿のように震えながら立ち上がった』赤城が………である。 追い掛ければ、当然ながら足を前に出すことも容易では無く、すぐに赤城の意思に反した。

 

それは、一方の足に引っ掛けた赤城の悲鳴で分かり、しかも上半身を前に出していたため、片足でチョンチョンと進む。 しかも、赤城の悲鳴で足を止めて振り向いた桂花に、速度を上げて突っ込んで行く!

 

「「 ─────!! 」」

 

──────ドォン!

 

桂花も、急に上がる赤城の悲鳴、予測しなかった行動で身体が固まり、仲良く激突する羽目に陥った!

 

ーー

 

桂花「い、痛いじゃないっ! 何やってんのよ、アンタはぁっ!?」

 

赤城「だ、だって………呼び止めたのに止まってくれないから──」

 

ーー

 

双方とも、頭を抱え涙目になり、自分と衝突した相手を睨み付ける。

 

普通に考えれば、『艦娘にぶつかって、生身の桂花が大丈夫なのか?』と思われるが、艤装を装着していない為、普通の女の子と接する事ができるらしい。

 

その御蔭で、桂花は無事に済み、尚且つ毒舌も吐けるようだ。

 

ーー

 

桂花「ふん! アンタの事はワザと無視したのよ! それなのに……身体ごと私に突っ込むなんて! ───はっ! まさか………それを根に持って偶然を装い、私を暗殺する気だったの!?」

 

赤城「ち、ちち、違いますよっ! 長時間の正座で足がつって、上手く動かせなかっただけです! 貴女に恨みなんかある訳ないじゃないですか!」

 

桂花「───じゃあ、何で正座なんかしてたの?」 

 

赤城「─────えっ? そ、それは…………」

 

ーー

 

赤城は、桂花からの言葉で目が泳ぐ。

 

まさか『摘み食いがバレて、罰として正座を命じられました☆』などと説明すれば、間違いなく天の御遣いの威厳が確実に落ちる。 特に自分(赤城)の評価が著しく下落する恥を………誰が語りたいだろうか?

 

赤城は、何か適当な事を言い繕うとするのだが、相手が非常に悪かった。

 

ーー

 

桂花「昔ね、一刀より聞いた事があるの。 天の国で正座とは、儀礼の姿勢の動作。 相手を重んじるからこそ動作に制約を課し、相手へ敵意が無い事を示す物。 それが、相手が居ないのに関わらず姿勢を正す理由は──何?」

 

赤城「────!?」ギクッ!

 

桂花「それと………その姿勢には違う意味合いでとる事もあるそうね? 確か、長時間放置すると、軽度の懲罰に適している姿勢だとか…………」

 

赤城「そ、それは………そう! 貴女が居るから──! こうして姿勢を正して待っていたんです!」

 

ーー

 

あたふたする赤城は、真相を誤魔化すために口を開いたが、訝しげる桂花の追及は終わらない。 見下ろすようにして冷ややかな視線を浴びせつつ、桂花の舌鋒は更に赤城へと向かう。

 

ーー

 

桂花「私は、アンタから声を掛けらて対応するのに、大して時間を掛けていないわ。 それなのに、アンタは躓いた理由を『長く姿勢を貫いた為』と抜かしたわね? これは───どういう意味?」 

 

赤城「貴女が、他の人と関り合いを持ちたく無さそうでしたので、一人になるのを待っていたんです! だ、だから、足が痺れて……」

 

桂花「なるほどね。 じゃあ、アンタは……春蘭達……同じ主を共にする者達が、そこで会話する様子も、私が避けるように隠れた姿も知っていたから、ワザと声を掛けないで姿勢を正して待っていた…………と言いたいようね?」

 

赤城「そうです! その通りですよ!」

 

桂花「私が隠れていたのは……アンタの居る此処を出て、角を曲がった隙間の位置。 つまり、死角になって見えないのに……分かったの?」

 

赤城「ええ、幾ら見えなくても………か、会話! 会話で分かりました!」

 

桂花「…………………」 

 

赤城「貴女と先程の者達が逢えば、必ず貴女は連れ戻されると思います。 だけど、私と貴女は──こうして無事に会話をしていますね? それは、貴女の隠れてやり過ごした………それしか考えられないじゃないですかっ!?」

 

ーー

 

赤城は、桂花の質問に思い付く限りの答えを返す。 桂花の様子を見れば、少々思案顔だが、怪しんでいる様子は無い。

 

赤城『………どうでしょうかね? 何とか信じてくれれば………』

 

多少は戸惑ったけど、合格点を付けれる返答だと……赤城は自己採点の結果を頭に浮かべる。

 

それに、実際───間違いない。 

 

赤城としては、桂花に助けて貰いたかったのだから。

 

────では、春蘭達では……どうして駄目なのか? 

 

赤城を助け、部屋に案内するなら春蘭達の人数が多い。 当然、赤城は春蘭達の事は、先の戦いで見掛けただけ。 だから、怪力自慢の武闘派揃いの三人だから適任という訳で声を掛ければ………との話では無い。

 

普通の者なら、自分の体を運んで貰うのだから人数が多い方に頼む。 一人より複数の方が、運ぶ負担が少ないのだから。 まあ、この三人ならば、一人でも充分の可能性もある。 べ、別に赤城の体重が、お、おも……ゲフン。

 

………………それは捨て置き、なぜ桂花を選んだのか? 

 

これには、答えが二つある。

 

一つは、赤城が正座している真の理由を………もし、バレたとしても拡散させたくなかったからだ。 口止めするには、複数の人数を相手取るより、一人だけの方が、遥かに楽。 ……………物理的にも、精神的にも。

 

そして、もう一つは………… 

 

ーー

 

桂花「ふーん、分かったわ。 ならば…………案内してあげる」

 

赤城「…………あ、ありがとうございますっ!」

 

ーー

 

桂花は、赤城に向けた視線を外し、やれやれと表情を浮かばせながら近付く。

 

赤城は、心の中でガッツポーズを決めて安堵し、次の話を考えていると………桂花が赤城の耳元まで来て囁いた。 

 

ーー

 

桂花「それでね…………ついでに聞かせて貰えない?」

 

赤城「───は、はい? わ、私が解る範囲でしたら……」 

 

ーー

 

普段の桂花には見られない、声を低く落とし、赤城に恐怖心を与えるような言葉を………ユックリと紡ぎ出した。

 

ーー

 

桂花「簡単な事よ。 一刀の死を偽装した理由………それを案内する間に、全部白状して貰いたいの。 ───どうして、私達を騙す必要があったのか? 包み隠さず洗いざらい………全部!!」

 

赤城「────────!?」

 

ーー

 

赤城は驚き、桂花の顔を直視し思わず悲鳴を上げそうになり、口を押さえた。

 

───後に赤城は語る。

 

『加賀さんに洒落にならない悪戯を仕掛けて、本気で怒らせ追い詰められた五航戦の気持ち。 解りたくないけど………解りました。 わ、私は、二度と味わいたくありません!』

 

こうして、赤城は桂花の補助により、皆の集まる部屋に向かった。

 

 

◆◇◆

 

【 理不尽 の件 】

 

? 洛陽 都城 内城 一階 にて ?

 

桂花「ねぇ、アンタ…………まだ痺れが残ってるの?」

 

赤城「まだ…………まだです。 あ、後………もう少し、もう少しでぇ。 それに、私の名前は赤城と伝えてました。 どうか、赤城とお呼び下さい……『荀文若』さん」

 

桂花「ふう──っ! ………ったく、さっさと行くから、少しは自分で歩きなさいよ──『赤城』!」

 

赤城「は、はい。 その………御迷惑………かけます………」

 

ーー

 

赤城に肩を貸しながら、普段の足取りより二倍の時間を掛けて進む桂花。 

 

赤城の痺れは、あれより幾らかの時間が経過したのだが、これが中々取れないらしく、少し自力で歩くと『はうぅ!』『おほぉ!』と奇妙な声を上げる。

 

それに、赤城の方が桂花に比べて大柄であり、しかも……桂花は文官ゆえ力も体力も無い。 しかも、他を捜しているのか春蘭達にも遭遇せず、ただただ目指す部屋へと向かうだけだった。

 

こんな状態で、しかも、桂花に説明する事になっている赤城。 だから、二人の呼び方も名前に………となるのだが、腹立つ理由があるため、桂花が赤城を呼ぶ時は、『アンタ』と些か失礼な呼び方で呼んでしまっている。

 

何故かといえば………並んで歩く赤城が、おそるおそる桂花を見る。

 

───っていうか、見下ろしているというべきか。

 

ーー

 

赤城「……………………」

 

桂花「ちょっと! いつまで人の頭を見ているのよ! そんなに私の背が低いのが珍しいの!?」

 

赤城「そ、そうじゃなくて───」

 

桂花「あのね………アンタの方が大きいから、私は首を上げなきゃ見れないのよ! 結構、この姿勢だって大変だっていうのに。 まったく、図体もでかくて胸も大きくて、更に態度もでかいなんて! これだから巨乳人はっ!!」

 

赤城「……………ごめんなさい………」

 

桂花「───ふんっ!」ブツブツブツブツ

 

ーー

 

本来なら、桂花から根掘り葉掘りと、色々尋ねるつもりだったのだが、この状態にキレて、直ぐに聞こうという気は無いらしい。

 

しかし、赤城としては、肩を借してもらいながら、何も聞いてこないので良心が痛む。ただでさえ、やむを得ないとはいえども、非礼にあたる?行為をしているのだ。 明らかに頭二つも違うのだから、どうしようもないとしても。 

 

赤城は、桂花の頭巾をチラリと見ては、溜息を吐く。

 

 

『昔、提督から……桜の木の下には死体が埋まっているから、綺麗に花が咲くんだ……と聞きました。 死体の血を吸って、赤い花を咲かすんだよと………』

 

『花を楽しむ桜には、サクランボが実ると思い、楽しみにしていた私にとって恐怖でした。 ですが、その話は小説の中である事、サクランボは別の桜に実ると聞いて、嬉しさと哀しみを味わった事は、良き思い出ですね………』 

 

『すると、あの猫耳頭巾が可愛らしく見えるのは、その下に青筋がハッキリと浮かび上がっているのが、分かっているからなんでしょうか?』

 

 

よく分からない理由を思い浮かべながら、現実逃避する赤城。 

 

しかし、赤城にも聞きたい事もあった。 なぜ、簡単に一刀が生きている事が分かったのか? 確か、加賀から届いた電文では、かなりの狼狽えようであり、早く保護しなければ命が危ないと聞いていたのだ。

 

───その持ち直した理由を聞いてみたい。 

 

そう考えて、好奇心に赴くまま逆に尋ねてみたのだった。

 

ーー

 

赤城「あ、あの…………『荀文若』さん………」

 

桂花「………………何よ? 何か喋るんなら早くしなさい!」

 

赤城「あ、あの───どこで、分かったんですか? 提督が………死んでいない、つまり生きている事を? これでも、けっこう上手く誤魔化せられたと……思っていたんですけど……」

 

ーー

 

赤城が、これ以上のギスギスした空気に耐えられずに、桂花へ話かける。

 

桂花は、唖然とした顔を一瞬見せると、少し睨み付けるように赤城へと、顔を向けて語りだした。

 

ーー

 

桂花「───あんまり腹立たしかったから、アンタから聞きだすのを、すっかり忘れていたわ! どうしてくれるのよっ!」

 

赤城「────わ、私が怒られる立場なんですかっ!?」

 

桂花「当たり前よ! 私達、貧乳を──その存在だけで乏しい思いをさせる事自体、じゅうぅぅぶん罪作りじゃない! それなのに、私へ反論するして更に罪科を増やしていくつもりなら、それ相応の報いを見せてあげるわよ!? 」

 

赤城「……………り、理不尽ですよ…………」

 

桂花「ふん! (それにしても……私を怒らせ、訊問を有耶無耶にしようとする策術。 これは、雛里の考えじゃなさそうね? 惚けた振りして、罠に嵌めようとするなんて………やっぱり巨乳人は油断できないわ!)」

 

赤城「……………あ、あははははは……」

 

桂花「まあ、いいわ。 どのみち私からも、尋ねたい事は山ほどあるし。 アンタの質問にも答えてあげるわよ。 だけど、つまらない質問だったら、無視するか…………貧乳党の総力を持って──潰す!!」 

 

 

赤城「─────!?!?」

 

ーー

 

桂花から出た言葉に戦慄する赤城。 高名な軍師と言えどたかが人、艦娘を轟沈させる筈が無いのだが、その眼差しは、まるで……『その眼光、戦艦の如し』と謳われた駆逐艦を、赤城の脳裏から思い出させる。  

 

背筋に冷たい物を感じさせ、細心の注意を払うようにしよう──そう心に決める赤城であった。

 

 

◆◇◆

 

【 真実は一つのみ の件 】

 

? 洛陽 都城 内城 一階 にて ?

 

 

そんな赤城の様子を見て、一応満足したのだろう。 

 

桂花が口を開いて、先程の赤城からの問いに答えた。

 

ーー

 

桂花「それじゃ、まずはアンタからの質問だけど、簡単な話よ。 赤城、アンタは、あの時……春蘭達の会話を聞いたって言っていたわよね?」

 

赤城「………はい」

 

桂花「春蘭達の話した内容を大まかに纏めると『桂花を捜す』『華琳様達の記憶』『一刀の死』の三点。 これも、充分に理解してるわよね?」

 

赤城「…………ええ」 

 

ーー

 

赤城は、内容を把握したとの意味で、首を縦に振る。 

 

確かに聞こえてきた物の内容を纏めれば、こういう意味合いになるから、間違いないだろう。 桂花も、赤城が首肯するのを見て、次の話に進める。

 

ーー

 

桂花「ここからが要よ。 今の三点、赤城の言葉、そして私の持つ情報を精査すると、おかしな部分が出てくるの。 矛盾と言うか蛇足というか……必要なのに多すぎて変な事になってしまった物とか……それが、原因な訳なのよ」

 

赤城「……………矛盾、蛇足……ですか?」

 

桂花「そう。 加減を知らず、過剰に対応して馬脚を現したと言った方が、いいかもね?」

 

赤城「─────?」

 

ーー

 

赤城は、即座に思った。

 

『加賀さん………貴女は、いったい何を? どんなミスをして、この計画を勘づかれてしまったの?』

 

だが、赤城は桂花の言っていた事を忘れている。 

 

桂花が違和感を持ったのは………赤城の語った言葉も……だと。 

 

ーー

 

桂花「まずは『桂花を捜す』………これは別段いいわ。 だって、真名で誰だか知っていても、顔も知らない相手に声掛けられても──ね。 それに、他の諸侯の者が手を出すなんて、変に疑われる可能性もあるもの」

 

赤城「……………そうですね……」

 

桂花「次に『華琳様達の記憶の回復』………アンタにとって必要な情報かは分からないから除外。 私や他の記憶持ちにとっては、益が大きい情報だったけど、アンタ達には……何かしらの思惑があるんでしょう?」

 

赤城「………………」

 

桂花「………言いたくなければいいわよ。 多分、あの筋肉達が動いているから、言えないんじゃない?」

 

赤城「────ビクッ!」 

 

桂花「やっぱりね。 普段、私達に無関心な左慈達が、華琳様の為に動くから少しだけ邪推したけど……裏で何かしているのは、間違いなさそうだわ」

 

ーー

 

赤城は、桂花の言葉で──ボディービルのポージング(ポーズ)を取る二人が浮かんだ。

 

??『どおぉ〜? 悩殺ポーズよぉん!』

 

??『わしの艶姿、刮目して見るがよいっ! ガハハハハッ!』

 

──非常に良い笑顔で『リラックス』から『サイドトライセプス』に変え、上腕三頭筋脳を強調する場面──が脳内を埋めつくす!

 

赤城は、顔を青ざめながら………悶え苦しんだ。

 

そんな赤城の状態を見て、桂花は次の話に移す。

 

ーー

 

赤城「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ブホッ!!」 

 

桂花「──? まあ、いいわ。 それよりも……最後の『一刀の死』………これが私に疑念を再び懐かせたの。 この話とアンタ……赤城の行動、そして……私の持つ情報を合わせるとね、一刀の死は偽装だったと推測できるのよ!」

 

赤城「ゼエェ、ゼエェ………し、失礼しました。 で、でも……それは?」

 

桂花「まず一つ。 春蘭達が一刀が死んだと遠回しに喋るのに、赤城は平気な顔で、私に部屋へ連れて行くように頼んだ事。 あの時、一刀が殺されたのに関わらず、余りにも艦娘達の冷静な態度が、今更ながら疑問に思えたのよ!」

 

赤城「ですが………こういう時こそ……冷静沈着に動くものだと………」

 

桂花「そう、緊急事態には沈着冷静な判断が大事、私も……そう思うわ」 

 

赤城「ならば…………」

 

桂花「───だけどねぇ………貴女達全員が全員、主である一刀の死を簡単に受け入れたのよ? 誰もが普段と変わりない表情のままで、数カ所に固まったり、窓の景色を見てたり………不自然過ぎて可笑しいじゃない?」

 

赤城「……………………」

 

ーー

 

まるで『ここからが本題よ………?』と、妖しい笑顔を赤城に見せ付ける桂花。

 

赤城は震える身体を、両手で抱きしめて桂花の言葉を聞いていた。

 

ーー

 

桂花「私はね……今まで見てきたわ! 華琳様に怒りをぶつける『電』という子、私達軍師の挑発で反論してきた四人の子達。 一刀に全力で信頼を預け、自分達の感情を見せる艦娘達を、この目で見てきたのよ!」

 

赤城「……………」

 

桂花「だから………あの冷静な行動に違和感を覚えるのよ! アンタ達のね、命を救う矜恃って……そんな物なの? 一刀を慕う気持ちなんて、そんな簡単に割り切れる物だったの? 有り得ない……有り得ないわよ!!」

 

赤城「…………私は、別に………」

 

桂花「因みに一番違和感があったのは、赤城………アンタよ! 摘み食いが原因って前代未聞な騒ぎを起こした女が、何で冷静に対応してるのよっ!? 幾ら、天の御遣いに属すって言っても、事の善悪ぐらい分からないのっ!?」

 

赤城「───ほあっ!?」

 

ーー

 

赤城は──桂花から驚きの指摘を受けて、口から変な声を出してしまう! 

 

あの闇に葬りたい黒歴史が……何故か目の前に居る桂花より、告げられたのだから!

 

ーー

 

桂花「アンタが正座していた理由なんか、私は最初から知ってたんだから! 全く………加減ってものを知りなさいっ!! 私はね……アンタが笑いながら『実は深海棲艦でした☆』と言っても、今更過ぎて驚き様が無いわ!!」

 

赤城「────い、いいい、言っている意味が………よく判りませ……!?」 

 

桂花「ふん、裏も取れているのにしらばっくれるつもり! なら、教えて上げるわ! ………アンタ、明命を知ってるでしょ?」

 

赤城「え、ええ……! 先の夜戦で、提督や私達の道案内とか、色々と手伝ってくれた髪の長い明るい子ですね?」

 

桂花「そうよ。 その子は細作も兼ねているから、何かあれば上司である周公瑾……冥琳に報告するようになっているのよ。 だから……冥琳より話を聞いて、私が知ってるのよ!」

 

赤城「あ、あぁ──────っ!?」

 

桂花「大陸の情勢は、私達の前居た時に比べて、かなり変化しているから、他の諸侯の軍師達と情報交換するようにしたんだけど。 そうしたら、早速アンタが暴れて取り押さえられ、罰則受けてるって話を聞いたのよ」

 

ーー

 

ここで、赤城は気付いた。 今の話は………自分が罰を与えられた理由のみ。

 

これの何処に………違和感があるのだと。

 

そう思い、桂花に反論をしたのだが───

 

ーー

 

赤城「で、でも………それが、何の関係があるんです!? 私は、このまま長時間に渡り、彼処で正座していたんですよ!? そんな私が、遠くの部屋の実情を知る訳ないじゃないですか! 貴女は、出任せで私を騙して──!?」

 

桂花「騙す………? 馬鹿な事を言わないで頂戴。 先程も言ったでしょ? 赤城、アンタの言葉にも───矛盾があるのよ」

 

赤城「────う、嘘です!」

 

ーー

 

桂花は、赤城が発した言葉にも矛盾があり、それで計画が判明する一助になったと指摘した。 だが、赤城は信じられず不定する。

 

何も矛盾するような事は、一切合切していないと───言い切った!

 

ーー

 

桂花「じゃあ、そこまで言うのなら……確認させて貰うわ。 赤城、アンタは罰を受けて、あの場所に正座していた………これは認めるのね?」

 

赤城「は、はい……………認めます」

 

桂花「次は…………その罰を命じた者………これは一刀なの?」

 

赤城「………………そうです」

 

桂花「──解ったわ。 それじゃ………最後に聞くわ」

 

赤城「…………………」

 

桂花「貴女に施した罰を──『誰が』『何時』『罰を赦したの』?」

 

赤城「……………!?」 

 

桂花「一刀の命令なら、本人から赦しがないと、罰則なんて簡単に解かれないわよ? それなのに、こうも罪人が自由に動いてしまっていいの?」

 

赤城「そ、それは…………………」

 

桂花「答えられないようね。 それじゃ、別の質問をさせて貰うわ。 まず確認させて貰うけど、私と鉢合わせした時、春蘭達の会話を聞いたと言っていたわよね? 聞こえてきたからだとか………」 

 

赤城「勿論です!」

 

桂花「ならば、何故……『私』を一刀の居る場所に向かわせるの? 一刀が居るのなら、我が主『曹孟徳』も当然居るわよね! それを考えれば、春蘭が私を探すのは──すなわち我が主『曹孟徳』──華琳様からの命令!」

 

赤城「…………………」

 

桂花「春蘭は私を捜していた……つまり、華琳様が私に用事がある。 だけど私は隠れた……私自身は、お会いたくしたくなかった。 それなのに、どうして私に案内を頼むの? これが矛盾と言わないで、何て言うの?」

 

赤城「わ、私は………曹孟徳殿の為に動くのではありません! 提督に、提督にこそ緊急の用事があったからです!」

 

桂花「緊急の用事……ね。 もしかして……それは……」

 

赤城「………………?」

 

桂花「一刀が死んだと勘違いして、跡を追い掛けようとしている馬鹿な女を止めて、事実を見せる為に部屋へ連行する……であっている?」

 

赤城「────!?」

 

ーー

 

赤城は、この時ばかりは───心底から驚いた。

 

桂花を選んだ理由……もう一つの答えとは、『桂花の保護と部屋までの随伴』だったのだから。

 

ーー

 

桂花「私は、あの時………気が動転して部屋を飛び出し………自害するつもりだった。 自害用の短剣は、何時でも所持していたから、場所を選んで実行するだけ。 だから、邪魔が入らない場所を目指して走っていたのよ!」

 

赤城「……………」

 

桂花「そうしたら、偶然………赤城に出会えた。 いえ、偶然を装って待っていたんじゃない? 赤城が正座していた部屋は、ちょうど二階へ向かう階段の近く。 降りて来る者を監視するなら、絶好の場所よ!」

 

赤城「……………………」

 

桂花「それに、私が走り去った方向の出口には、別に何名か張り付いているんじゃない? そして、包囲網を形勢してから、別の『物』を放って私を捜し、捕縛しようとしていたと思うの。 そうじゃない………赤城?」

 

赤城「な、何を仰有りたいか……手前ではとんと………分かりません…………」

 

桂花「あのね……何が冷静よ。 全然、言葉使いが変わっているじゃない? この位の指摘を相手からされて、顔や言葉に出てくる時点で駄目ね……」

 

赤城「───!?」 

 

桂花「それに───気が付かないと思っていたの? 頭上を高速で飛ぶ物が……時折見えたのよ。 あれは──『かんさいき』とか、他の艦娘が言っていたものよね? 空を飛ぶ絡繰り………アンタのとこの物でしょう?」

 

赤城「………し、ししし………知らない子……ですね…………」プイッ

 

桂花「そう? さっきから………赤城の頭上を飛び回っているけど………」

 

赤城「────あぁぁぁ!! もう! 認めます! 認めますから、どうか許しつて下さい!!!」

 

ーー

 

こうして、赤城は……桂花に全部説明し、他の場所で待機している瑞穂や鳳翔に桂花が見付かった事を知らせるのだった。

 

ーー

ーー

ーー

 

赤城「────なんですよ! 私が知ってる事は以上です!」

 

桂花「…………理由は分かったわ。 一刀が命懸けで行ったのは、華琳様の記憶……だけではないのね?」

 

赤城「そうなんです! だから、お、お願いします──この事を喋ったのは秘密にして下さい! もし、バレたら………加賀さんや磯風に何て言われるか!」

 

桂花「…………その件は黙っておいてあげる。 取り合えず、一刀は無事なの?」

 

赤城「───は、はい! 今、華陀さんが診察してくれているそうです。 傍に左慈さんも居るとの事ですから!」

 

桂花「───分かったわ。 それでも、この目で確かめないと心配ね。 あんなに血を流していたのに、必ず生きていてぇ………一刀!」

 

赤城「荀文若さん………貴女は………提督の事を『──桂花』………えっ?」

 

桂花「私の真名よ。 一度しか言わないから………よく聞きなさいよ。 一刀を守ってくれて、私の心配までしてくれて………ありがとう。 赤城、貴女に真名を預けるわ。 今度からは………桂花と呼びなさい!」

 

赤城「いいんですか? 本当に………呼んで良いんですか!?」

 

桂花「何度も確認しなくても良いわよ! べ、別に呼びたくないんなら、返して貰う『あ、ありがとうございます! 桂花さん!!』────ふ、ふん!」

 

赤城「それなら──早く行きましょう! 皆さん、桂花さんが無事なのか心配しているようですから! 急ぎましょう!!」

 

桂花「ちょ、ちょっと、アンタ………足はっ!?」

 

赤城「桂花さんの御蔭で治りました! もう大丈夫ですっ!!」

 

桂花「な、何それ──アンタ、背中を押すのは止めなさい!」

 

赤城「何を言ってるんですか? 提督に会いたいのなら、全力前進あるのみです! ほらぁ──行きますよ!」

 

桂花「きゃあ────っ!!」

 

ーーーー

 

こうして、赤城と桂花は──華琳達が待つ部屋へと向かう。

 

ーー

 

桂花「こ、こら──そこは曲がる、曲がらないとぶつかるじゃないっ!!」

 

赤城「ご、ごめんなさい! 桂花さんの身体が小さいから──力の加減が難しくって…………」

 

桂花「これだから………巨乳人はっ!!」

 

ーー

 

この後の展開は、また後日にて───

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

何時もは一週間ぐらいで投稿するんですが、スランプに陥り、別のサイトで小説読んでいました。 

 

艦これ改も出ているようですが、作者は未だに購入していません。 やるんなら今の内なんですが……何か……米国艦も出てきたとか噂も。

 

でも、購入すると間違いなく、この小説が1ヶ月ぐらい更新止まりますから考えものですが。

 

次回からは、一週間に一回以上を目標に更新していきますので、よろしくお願いします。

 

 

 

説明
今回は、赤城と桂花しか出てきません。
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コメント
雪風提督 コメントありがとうございます! 他の艦娘に出逢っていたら……どうなっていたかは御想像にお任せです。 此方の艦娘では、情報を拡散するのが1隻いるだけですからね。(いた)
明命タイプの艦娘がいたら、情報漏えいが最小限になってたかも?そして、桂花と会ったのが赤城ではなかったらどうなってたのか気になる。(雪風)
天龍焔提督 コメントありがとうございます! 桂花と似たような艦娘は、曙、霞、満潮………おっと、誰だろう? こんな夜更け──(いた)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! この辺の駆け引きは、やはり桂花の方が上ですね。 身体においては敗北必死……おや、誰か来たよう──(いた)
冷静に状況を分析する桂花が相手では赤城さんもタジタジですね。(mokiti1976-2010)
スネーク提督 コメントありがとうございます! 実はメインヒロイン……まだ決めていませんw 話の状況次第で色々と傾くんですよ。 桂花になる可能性も……あるかも?(いた)
桂花が調子取り戻しましたねー。何だろう、この外史でのメインヒロインが桂花に見えてきた(スネーク)
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