艦隊 真・恋姫無双 105話目
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【 イクの事情 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城 内城庭園 にて ?

 

洛陽では、洛水の水を内城まで引き込み、庭の池へ循環する水路がある。 

 

その水路は、高さこそ精々人の腰辺りしかないが、石垣で両側を積んでの強度、五人ぐらい横に並んでも余裕がある幅。 その水路に流れ込み、ゴボゴボと音を立てながら移動する大量の水。 

 

まるで、現在の農業用や都市用の用水路と比べても、あまり遜色が無い堅実な水路は、庭園の半分を占める池の維持、そして水質の清浄化に欠かせない重要な物であった。 

 

そうすると……これだけの水路を用意しないと、まともに維持できない池とは、どんな物だと疑問が浮かぶ事になるだろう。 

 

簡単に説明すれば、池の大きさは『長水路』と呼ばれる競泳プール(一般的には長さ50b、幅25b、深さ2b)が三面も楽に入りそうな、巨大さを誇る施設。

 

これは、日ノ本にある回遊式庭園と同じ、池を中心にして周囲を探索できるようにしてある為。 勿論、船遊びにも興じる事もできるようにとの配慮。 他にも、色々と利用する事はあるが、今は語らないでおく事にする。

 

この皇帝専用娯楽施設を維持する為、大池の水を循環させている水路なのだが、何故か全然関係ない行動が起きていた。 

 

ーー

 

イク「鬼さん、こちらぁ〜! 手の鳴る方へぇ〜! いひひっ!!」

 

軽巡棲鬼「マァ、マァアテェエエエッッ!!!」

 

ーー

 

それは、洛水へと向かう──イクと軽巡棲鬼である。

 

イク『……………しっかり付いて来てるのね』

 

イクは、追い掛けて来る軽巡棲鬼を、チラッと横目で見て──ホッとする。

 

明命から軽巡棲鬼が離れ、自分を標的と捉えた事に心底安堵するのだった。

 

★☆☆

 

イクが挑発担当になったのは、偶然ではない。 

 

潜水艦だから、水面下に潜って進む事ができる強みがあり、深海棲艦の攻撃を受けにくいとの考えもあった。 それに、今まで確認できた敵の中に、潜水艦へ攻撃できるのは居なかった事も一因である。

 

だが、実際に配置へと着くと、存在していたのは──軽巡棲鬼。 対潜攻撃もできる相手である。 

 

話が違うじゃないかと………思えるが、戦場でよくある誤差。 それなら、もう少し距離を開けて、軽巡棲鬼を挑発しようと考えに至る。 

 

ところが、更に近付くと──既に誰かと対峙している。 

 

深海棲艦を相手取り、たった一人で攻撃する者に興味を持ったイクは、更に潜りつつ近寄った。 

 

イク『────!?』

 

そこに居るのは、未だ記憶に新しい………昨日の夜戦で、提督の取合いをした将『周幼平』が、深海棲艦『軽巡棲鬼』を対峙しているではないか? 

 

辺りを見渡しても───仲間らしい姿も見えない! 

 

そんな中、自分達も手を焼いている深海棲艦へ、たった一人で戦いを挑んでいると知り、口をあんぐりとさせ、声を出さずに頭の中で叫ぶ!

 

イク『な──何をしてるのっ!? 明命一人で倒そうなんて、無茶なの!!』

 

イクや他の艦娘と違い、周幼平──明命は生身の人である。 

 

身体能力が、幾ら常人より高いといえど人間なのだ。 決して、どこかの改造人間、魔法少女の類では無い。 攻撃を受ければ、人の身体など細切れのミンチになる事は確実。 

 

───よく観察すれば、明命の縄を操る腕は少し震え、足元も覚束無い。

 

『恐怖で……怯えているの………』

 

姿を見て、イクは──そう判断を下す。 

 

一刀を取り合った時に見せた、あの時の明るい笑顔は全く無い。 顔は恐怖で歪み、前面に立つ軽巡棲鬼を捕縛する縄が、一本、また一本千切れて行くさまを、黙って見ているしかないのだ。 

 

このままでは、圧倒的な破壊力を持つ軽巡棲鬼に命を奪われる。 その事は当の明命も理解している。 この縄が全部引き千切られれば、軽巡棲鬼が狙いを定め直ぐに反撃を開始し、確実に死を迎えるということに。

 

だが、顔の表情に浮かぶのは、そんな恐怖から抗うように歯をくいしばる必死の姿。 そして………頬に残る、涙の後が数行。 両手で持っていた縄を片手に集め、空いた手を背中に回し、装備している武器へと手を伸ばす。

 

───イクは、思い出す。 

 

昔、見た『回天』に乗り込む少年達を。 

 

悲壮な決意と裏腹に……笑顔を浮かべ周りの同僚へ挨拶して乗り込み、命と引き換えに国を守ろうとした、帰り道の無い防人達を。

 

その笑顔と明命の顔が、似ていないのに関わらず──重なった。

 

イク『明命は……提督に殉じようとしているの。 提督が死んだって信じてるから、勝てない敵にも怯まず挑んでいるなのね……』

 

明命は真実を知らないから………あんな無茶ができた。 ならば、真実を知るイクには、このような無茶や無謀など出来ないのか? 

 

答えは───

 

イク『もう……明命は《お馬鹿》なの。 戦っても勝てないのに……明命は《お馬鹿さん》なの! だけど………イクも《お馬鹿さん》を助ける《大馬鹿さん》なのぉ!』 

 

軽巡棲鬼へ攻撃を仕掛ける明命に、イクの胸が熱くなる。 昨日の恋敵は今日の友………など言うかは解らないが、黙って見ているような事は無い。

 

それに『潜水艦』枠の艦娘達は、寧ろ地味に苦労を背負うのが運命なのかもしれない。 例えば……オリョクル行き専属扱いだとか、季節感溢れた晴着やら服を………着れる子が極端に少ないとか。

 

まあ、これが艦娘という者だと言われれば、それで終わりなんだけど、それらを差し引いても、イクは仲間思いなのは変わらないのだろう。

 

イク『イクの方が強いから、明命を守るの! それに、この状況……スナイパー魂が滾るのね〜!! イク………頑張るのっ!!』

 

こうして、イクは決意も新たに池の中へ再潜水を開始して、対峙する二人の附近まで距離を寄せる。

 

奇しくも、軽巡棲鬼は捕縛から脱出し、明命へ砲塔を向けた。 明命も動けないままで固まり、砲塔を見詰めるしかない状況に追い込まれる。

 

二人の意識が互いへと集中した時、イクは突如──その勇姿を水面上へ見せたのであった。

 

★★☆

 

そんなこんなで、提督との恋敵(ライバル)である明命の危機を、自分を身代わりにして救い出したイク。 

 

因みに、雛里より作戦変更があった事を……実は、まだ知らない。 雛里が相談した時には、既に此方に向かっていたからだ。

 

しかし、その心が動かした行為は決して無駄ではなく、寧ろ追い風となり荒ぶる軽巡棲鬼を誘い出した。

 

イクは、明命の側に仲間が集まるのを見届けて、水路に潜り込む。 あの後にも、散々からかって軽巡棲鬼を吊り上げ、イクへと憎悪を燃やさせた。

 

対潜攻撃に対しては………………提督諸兄も御存知の通り。

 

されど、軽巡棲鬼の鬼気迫る執念の追撃は、全く油断が出来なかった。

 

 

◆◇◆

 

【 閑話休題 の件 】

 

? 洛陽 都城 街 にて ?

 

 

───今から少し前。

 

『今から水路に近付く事、禁止する! 命惜しければ、近寄るなっ!!』

 

蒸し暑く、夏の強烈な日射しで苦しむ洛陽では、水路を監視していた官吏達より齎(もたら)された勧告を受け、戸惑いと怒りを露にした。

 

★☆★

 

まずは、状況を説明しよう。

 

この地『洛陽都城』は、巨大な壁で四方を囲まれている、要塞みたいな街である。 それは、人災である盗賊や侵略者達から、皇帝を護る為。 人智を持って人災を防ごうという、対抗手段の表れだった。

 

だが、人災から護る為に造られた建造物が、天災の力を強め、己の首を絞める拷問具になったとしたら、これは笑えない喜劇としか言えないだろう。

 

現に洛陽は………その矛盾に陥っている始末。

 

何故なら、強固な壁は──悪意を持つモノを『遮断』する為に造られた。 だが、実際は悪意ばかりではなく、善意に入るモノも、少なからず遮断してしまう。 その気がなかったとしても、壁に理解など出来る筈は無いのだが。

 

それは何かと尋ねられば───『風』であり、また『水』である──と、この状況で苦しむ洛陽の民は、嘆息しながら答えるだろう。

 

何故ならば、長大な壁は……気まぐれな風の進行を遮断し、 寄せては返す大河の誘いをも拒み、頑なに現空間を維持しようとする。

 

とどの詰まり………『暑い』のである。 『厚い』でも『熱い』でもない。

 

こんな事を記載すると、文章に目を通された提督諸兄の中には、『《暑い》と《熱い》どう違うんだぁ!?』と察する方も居られると思われる。 

 

簡単に説明をすれば、気温に関係する物が『暑い』、気温以外に関わる物が『熱い』と言い表す。 『それじゃ《熱帯夜》は、どうなるんだ?』と問われると……非常に困る。 調べても分からなかった………から。

 

───閑話休題。 

 

そんな事で、洛陽に冷房器具など無く、温度調節する筈の川も水害の元だからと……外に追い出したため、洛陽は毎年毎年、必要以上に暑くなり喧騒が絶えない。 

 

しかも………洛水まで水を汲みに行くのも重労働であるので、水を買うしかない。 だが、その水売りも暑さで足元を見て、売り値を上げてくるのだ。 そうされば節約するしかないが、必然的に衛生管理が疎かになる。

 

そんな苦しい生活の中で人々の楽しみが、水路付近の夕涼みである。 水路の風下に移動し、存分に涼を求める。 

 

これが、洛陽での風物詩であったのだ。 

 

★☆★

 

そんな状況の中、一方的に禁止する命令を出した官吏に、どれだけ納得した者がいようか? 軽くブチギレる洛陽の民達。 ただでさえ熱いのに、更に行動までも熱くさせてしまったというのに。

 

ただ、官吏に対して弁明を少しだけすれば、この件に対して……どう明確な日時と納得できる理由を説明すれば、民達に理解して貰えたのだろうか?

 

『若い娘の姿をした者が二人、《私を捕まえて御覧なさい、ウフフッ》的な事を水路で行動してる。 あまりに危険だから離れろ』

 

この説明で納得させられるのは、

 

『曹孟徳のような頭脳と弁舌』

『劉玄徳のような人望』

『孫伯符のような胆力』

 

を持つ人物でなければ、まず不可能と言えるだろう。 

 

だが、そのような英雄豪傑など下級官吏に居る筈が無い。 居れば昇進を重ねているか、地方で雄飛している頃だ。

 

だから──そんな人物が居ない為に、官吏は──王朝の権力で排除した。

 

虎の威を借る狐の如く、獅子の皮を借りる驢馬の如く、居丈高(いたけだか)に、または怒鳴りつけるがように、民達へ申し渡したのだ。

 

だが、その事は……更なる裏目を見せる事になった。

 

 

◆◇◆

 

【 野次馬 の件 】

 

? 洛陽 都城 郊外 にて ?

 

 

その簡略かつ腹立たしい物言い、また興味を懐かせるに充分な命令に、洛陽城内外の民達が、官吏の言葉を逆に無視。 水路に向かい長蛇の列を連ねさせて、見物する行動を起こした。

 

官吏が声を張り上げて制止を呼び止めるが、民達は『聞こえんなぁ?』と言いつつ急ぐ。 最期は五月蠅いと言わんばかりに、口を布で縛られ黙秘する事になった。 

 

漢王朝の首都といえど、娯楽が少なく、命の危険にも地方に比べれば、まだマシと思われる程。 そんな中で、このような祭り騒ぎが起きれば、行ってみたくなるが人情である。

 

だが、人々は──水路の間近までは近寄らず、かなりの距離を開けて待機している。 他の官吏の部下も、人々の行動に思う事があるのか、強くは規制せず安全な距離を確保するように動いていた。

 

そして、そんな折り…………洛陽の城壁より二人の影が見えた!

 

ーー

 

「 ( ̄□ ̄;)!! 」

 

「……… (゚A゚;) 」

 

「── (◎-◎;)」

 

ーー

 

そして、その現れた瞬間──人々は驚愕と羞恥の表情を見せた。。 

 

水路周辺では──無音に近い状況。

 

ただ、稀に聞こえるのは、『何かを呑み込むような音』『荒い呼吸』『歯軋り』『軽く痛みを訴える声』『感激した涙声』などなど。

 

擬音で表すと『───ゴックン』『ハア……ハア…』『ギリッ……ギリギリ』

 

言葉で表すと『痛っ! なんで、つねるんだよ!?』『長生きはするもんじゃ……』と、こんな具合。

 

この興奮の坩堝は言うまでもなく、水路で戯れている(ようにしか見えない)二人の女の子の仕業である。 

 

ーー 

 

軽巡棲鬼「忌マ忌マシイ……人間ドモメ………!!」

 

イク「ほらぁー! イクから目を逸らしちゃ──ダメなのぉ!! えい、えーいっ!!」

 

軽巡棲鬼「グウワァ! ソノ程度デ……カァァァァァッ!!」

 

ーー

 

左右を石垣で組まれた水路に、イクがバシャバシャと音を立てながら泳ぎ、軽巡棲鬼も深海棲艦の姿に戻って、後を追い掛けている。

 

本人達にとっては、命懸けの戦いなのだが…………周囲の民(主に男)達の視線を釘付けにし、更に様子を(鼻息荒く)窺うのだった。

 

ーー

 

イク「悔しかったら、イクのこと……捕まえてみるのぉ!」

 

軽巡棲鬼「今一度………水底二還ルガイイワァ!!」

 

イク「わあっ!? ふふん………こんなんで、イクを追い込んだつもりなの? 逆に燃えるのねっ! えいっ! ええいっ!!」

 

軽巡棲鬼「──────ッ!?」

 

ーー

イクが輝かしい笑顔で笑い、後方の軽巡棲鬼に誘いを掛けた。 白い肌が、機能美を追求尽くした水着より、少なからず露出した健康美を魅せつけた。

 

頭だけを水面に出したかと思えば、急に上半身を水面上まで現し、後ろに迫る軽巡棲鬼に豆を投げるイク。 その時、彼女の目立つ胸部装甲が大きく揺れ、官能的な刺激を周囲に与える。

 

それを見守る者に大いなる歓声、驚嘆、怨嗟の声が溢れ、周囲に更なる魅惑と嫉妬、興奮と敗北感の坩堝に陥らせるのだった。

 

また、追う軽巡棲鬼にしても、胸部装甲がイクより劣るとはいえ目立ち、人目を惹く美しさがあるので、視線を少なからず集める。

 

老若男女の注目と瞻望咨嗟(せんぼうしさ……羨ましがり溜息を吐く)の中を、イクと軽巡棲鬼の争いが続く。

 

だが、付近で好奇心旺盛な者が数百名規模で集り、かなりの人垣が出来上がっているのだが、誰一人も水路の傍に近付こうという者は居ない。

 

────というか、それが出来ない理由がある。

 

それは、水路に入った時点で、水は皇帝の物。 それを少しでも汚せば、不敬罪で即日牢屋へ突っ込まれてしまうのだ。 だから、皆が皆、充分承知しているために、距離をおいて遠くから眺めるしかないのが現状だった。

 

これだけの見せ物だから、この様子を間近で見たいと思う者は多数いる。 だが、それを行うと、今度こそ牢屋行きになる。

 

中には、血涙を流さんばかりに、近付けない事に悔やむ者も居るのだが、二隻は思うままに振る舞うと、先を急ぎ水路を進んで行くのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 新たな の件 】

 

? 洛陽 都城 郊外 にて ?

 

 

追いつ追われつつ艦娘と深海棲艦の二隻が向かう先は──洛水。 

 

黄河の支流ゆえに、対岸が見えないような幅を持つ黄河ほど大きくはなく、ほんの数十b離れている河。 ゆったりとした流れで、比較的船の移動が取りやすい事と洛陽が近い為、多くの渡し船や漁船で賑わう場所でもある。

 

しかし、毎日数多くの漁船や渡し船等が移動して、生活のために稼いでいる筈なのだが、洛水の水面上に一隻たりとも姿が見えない。 

 

それもその筈、この周辺の船舶や住民の避難は、完了済みだ。 

 

万が一の被害を想定しての避難だが、此方に時間が掛かりすぎて、水路の官吏には、話を通す事が間に合わず、イク達の行動で大混乱が起きた様子である。

 

その洛水には、水面上で攻撃準備を整え、何時でも迎撃できるように待ち受けていた。

 

ーー

 

愛宕「龍驤ちゃん、そろそろイクちゃんの姿………確認できた〜?」

 

龍驤「バッチリやでぇ! もう数分後に──ウチらの前に姿をみせる。 そないなってんら、全艦でぇ一斉斉射して轟沈させるのも悪かへん。 せやけど……イクに雛里からの作戦変更、伝えなくて良かったんかぁ?」

 

愛宕「問題ないわ。 イクちゃんだって、提督にベタ惚れだもの。 愛する人の一番嫌う事を行う訳ないじゃない。 黙っていても、確実に実行してくれるって……私は信じていたわよ〜!」

 

龍驤「はぁ………巨乳は巨乳を知るってかぁ? まあ、ウチにも大体見当つおってたねんけどな。 せやけど、確実かは分からんから……艦載機を幾つか飛ばして、様子探ってみたんやけど………ほんま杞憂だったわぁ………」

 

ーー

 

高雄「……だけど、これだけの戦力を預けられ、尚且つ支援艦隊の掩護を受入れる態勢まで、こうして整えさせる意味があるのかしらね?」

 

天津風「さあ〜? それは、この作戦を考えた雛里に聞いてみるのね。 でも、この重厚な護りは、あの人の考えだって言っても通じそうよ?」

 

高雄「ええ……いつも私達を労り心配される、提督と同じ考えを根底に窺えます。 でも、何だか寂しいですね。 私達以外にも提督を信頼し、その考えを理解する方達が、こんな離れた場所にも……いらっしゃるなんて………」

 

天津風「全く………こんな想いを語らせる司令にも、困ったものよ。 だけど、あの人はね、私達の想いに何時も……どこ吹く風なんだからぁ………」

 

ーー

 

第一艦隊 旗艦『愛宕』──他には、高雄、龍驤、北上、大井、天津風が並ぶ。 大部分が、新たに到着した新たな艦娘達で編成したので、気力体力とも充分。 

 

だが、同時に──昨夜、戦闘に参加した那珂、扶桑、山城も予備隊として再び参加している。 実は、山城は昨日の夜戦で小破したのだが、本人曰く『まだ戦えます!』と言って参加。 扶桑、那珂と共に少し離れた場所で待機中だ。

 

目的は、イクが誘い出した軽巡棲鬼を捕縛、若しくは迎撃である。

 

ーー

 

大井「はあ………幾らなんでも、一隻の深海棲艦を相手に用心し過ぎよ。 出撃命令が無ければ、もっと北上さんと……キャッキャウフフする時間が続いていたのに。 作戦も作戦だけど、指揮を許可した提督も提督だわ………!」

 

北上「あはは………大井っちは怒ってばっかりだねぇ? でも、あんまり怒ると、可愛い大井っちの顔が怖くなっちゃうのは……嫌だよぉ。 いつも、笑ってくれないと。 …………ねぇ、大井っち?」

 

大井「き、北上さん───っ!!」

 

ーー

 

一隻の深海棲艦を相手にするのに、十隻以上で挟み撃ちをする………その余裕から和気藹々な雰囲気を艦隊から発しられていた。

 

このまま行けば、まず圧勝できる数なのだが───そう簡単に行かないのが、戦場と言う物である。 

 

現に……愛宕達が気が付かないうちに、一機の偵察機が附近を飛行していたのだ。 丁度、雲が飛び飛びに浮いていたので、それを隠れ蓑にして探りをいれていた様子。

 

そして、洛水を少し遡った場所で、とある場所へ偵察機は着艦した。

 

ーー

 

??「………偵察機ヨリ……電文。 コノ先……ヤクタタズ……ドモガ……待チ構エテ……イルトノコト。 ……………『サウスダコタ』様………」

 

??「…………クックックッ………雑魚ナド………恐レル必要ナド……ナイ。 ソレヨリモ………ソノ名ハ………伏セロ。 今ハ………不要…………ダ」

 

??「…………………ハイ」

 

ーー

 

───愛宕達が存在する上流から『ニ隻』……川より浮かび上がり、洛陽へと距離を縮めているところだ。 洛水の水面上を、艦娘と同じように移動しながら、その禍禍しい姿に圧倒されそうになる。

 

 

『黒く巨大な顎(あぎと)を持つ艤装を引き連れた深海棲艦』

 

『白き大蛇を思わせる艤装を操る深海棲艦』

 

 

その深海棲艦の名は───戦艦棲姫と重巡棲姫──といった。

 

 

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最期まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

色々と事情が重なり遅れてしまいました。

 

今後の展開とか話の終わり方など考えていましたら、先に進まなくなりまして。 今度は、もう少し早く出したいと思います。

 

 

 

説明
イクと軽巡棲鬼の続きです。
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コメント
スネーク提督 コメントありがとうございます! 御推察の通り……この世界でのサウスダコタが来襲中です!(いた)
近くまでサウスダコタが来てるのか!?(スネーク)
天龍焔提督 コメントありがとうございます! 次回は、色々と混戦になります………良くも悪くも。(いた)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 作者も西南戦争で一部の西郷軍と政府軍が仲良く戦見物したと云う話を読んだ事が。 他人事ならこうなるのでしょうか。(いた)
日本でも戦国時代には庶民が弁当持参で戦見物をしていたなんていう話もありますし、洛陽の民の方々も自分の命が危険に晒されなければという感覚なのでしょうね。(mokiti1976-2010)
雪風提督 コメントありがとうございます! 『袖振り合うも多生の縁』と言いますが、対面しなければ運も変わっていたのかも。 そして、あの艦も登場です。(いた)
いくが明命と過去に対面してなかったら、行動が変わってたかもしれない・・・。おや?鬼ごっこ中に春眠から覚めた虫?が来てるようですな・・(雪風)
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