Another Cord:Nines = 九番目の熾天使達 = ???篇
[全3ページ]
-1ページ-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――始まりは、なんてことのない日常の中で起こったことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-2ページ-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= なのはEXの世界 =

 

 

 

とっぷりと夜の色が辺りをその染め上げる時間。

医務室でひとり事務の後始末を行うシャマルだが、その傍らであるものを作ることに勤しみ、それが今やっと終わりの時を迎えた。

 

 

「………できた。これで完成…」

 

PCの中には無尽蔵と呼べるほどのデータが表示され、そこには様々な化学薬品のデータなどが記載されていた。そこから何度も実験と失敗を繰り返し、ひとつの結論へと導くために記されていたものは、今その役割を終えて彼女の手によって無へと回帰する。

全てはこのために。完成した物と今までのデータを見て、優越感に満たされた彼女はホッと安堵して椅子に座り込む。

 

「みんなから隠れながら制作すること約半月。色々とあったけど…これでようやく…」

 

彼女の目の前には一つの小さな小瓶が置かれており、中身には一杯の粉末が詰め込まれていた。

周りにはそれを制作するための材料と思われるものと薬草などを調合するために使うすり鉢などがある。粉末であるのは彼女の技術的な意味と「そうでなければならない」という条件があるからだ。

 

 

「あとはこれらを片づけて…」

 

あとはそれをどう実行するかだけ。方法は分かっているが、彼女の立場上そう迂闊に動けばなにを企んでいるのかと怪しまれてしまう。どうにかしてと考えつつも、シャマルは周りのすり鉢などを片づけ始め、本来の仕事である事務の紙束を置き始める。

元々それが本来の仕事なのだが、今の彼女にとって偽装用でしかない。

 

「フフフフフ…私は既にコレの抗体を摂取してる。あとはこれを空調とかに流せば…」

 

不適な笑みを浮かべ、片づけをしていくと次第に彼女が座っていた机周りは今まで事務の後始末をしていた光景に変化していく。

先ほどまで何か薬品を作っていた風景は、彼女の隙の無い行動と野心によって覆い隠されていき、やがては何処か風のように消え去って行った。

 

 

「あ。そうだ。後は写真とかも用意しないと…」

 

野心を堂々と表に出すのは誰も居ないからか。すっかりと顔が愉悦に浸りきっている彼女の顔はもはや誰もが知る彼女の顔ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その所為で。シャマルはギリギリまで辺りの気配に気づくことができず

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャマルー胃薬ちょーだーい!」

 

「ひゃあ!?」

 

ドアからひょっこりと顔を出したはやてに、シャマルは後ろから脅かされたように反応してしまう。

 

「…? どないしたん?」

 

「あ…は、はやてちゃん…ビックリしたぁ…」

 

ドキドキと鼓動する心臓に手を当てて気を落ち着かせる彼女の姿に、何か集中していたのではないかと思い気を落とす。

何をしていたかまでは知らない彼女だが、驚かせてしまったことには悪気を感じていたらしい。

 

「…ゴメン…驚かせた…」

 

「い、いえ別にいいのよ…私が自分の世界に入り過ぎてただけだから…」

 

気にしないでと言って気遣うシャマルに、そうなのかと問う。逆にそれ以上自分のことを責めたりしたらそれはそれで相手を悪くしてしまう。

特に長い間の関係であるなら、相手を察するのも大切だ。

 

「…大丈夫なん? なんかすっごい驚いてたけど…」

 

「ええ…本当に大丈夫…自分の世界に入り過ぎてたわ…」

 

「時間も時間やし…少し気が抜けたってこと…なんかな」

 

「かもしれないわね…もう少ししっかりしないと…」

 

シャマルは彼女と言葉を交わしつつ、いつもの場所から小瓶に入った錠剤を取り出す。中身は胃薬で、最近何かと腹を痛めたりすることからよく使うものだ。

効果として胃痛に効いたりもするが、その他には便秘や胃の粘液をよくしたりと胃に関する効果が一まとめにされている。

また、水なしで飲めるのも特徴的だ。

 

「はい。いつものね」

 

「ありがと、シャマル。あ、あと昨日言うたアレある?」

 

「アレ…? アレ…アレ………ああ。アレね」

 

唐突に聞かれたことに首をかしげるが、直ぐに思い出した彼女は机に置かれていた箱をはやてに差し出す。

 

「はい。胃薬のビン、一ダースね」

 

「どーもッ」

 

「確か、旅団のメンバーに渡すんだっけ?」

 

「そうそう。支配人さんがなーんか唐突にくれって言うから…」

 

理由は定かではないが唐突に言われ不思議がるはやては、連絡相手である支配人の様子から些細なことではないと分かり、彼らに一ダース分の胃薬を渡すことにした。

旅団であれば別に問題ないのではと思っていた彼女も渡すときに聞けばいいとその時はあえて聞かない事にした。

 

「まぁ…((六課|ウチ))には腐るほどの胃薬ストックがあるから別に問題はないのだけどね…消費も殆どはやてちゃんかフェイトちゃん、あとティアナぐらいだし…」

 

「…ティアナが来るって初耳なんやけど」

 

「…多分原因は分かると思うわ」

 

「………あー…」

 

理由は現状を思って察したはやてが失笑し、シャマルは何も言えないという顔で笑うとため息をついた。

 

 

 

「ほなっ、そろそろ行くなー」

 

「ええ。時間も遅いから、出来る事なら早く寝てね。明日もあるんだし」

 

「わかってまーす」

 

胃薬の塊をもって軽い口を返したはやては、自動ドアをくぐっていくと非常灯と僅かな明かりが灯る廊下の道を歩いて行った。

後は彼女から連絡を入れて物資を届けるだけ。それであのケースは旅団のもとへ運ばれるだろう。

ケースの行く末と医務室を去った彼女を見送り、聞こえない程度に息をつく。

 

 

「…ふぅ。びっくりした…」

 

突然の来客に失敗するのではないかと思っていたシャマルは、無事に彼女が帰って行ったことに安堵し額ににじみ出ていた汗を袖で拭き取った。

この時間でもまだ起きているという事を忘れていたが、もう他には当直のメンバーくらい。他の面々は今頃自室で眠っている筈だ。今夜の当直のシフトを思い出した彼女は今日が安全な時であると再度確認すると、再び自分の世界に舞い戻ろうとした。

 

今日やっと完成した小瓶。それを決行日まで隠しておかねばと計画の練りあげと共に大切にしなければと机へと振り返るが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――あら?」

 

 

気が付けば。彼女の目の前から、完成した小瓶は忽然と姿を消していた

 

 

 

 

 

-3ページ-

 

 

 

 

 

 

―――翌日

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ…ううん…」

 

旅団の本拠、楽園の一室で眠っていたルカは体感でそろそろ起きる時間だと感じたのか自然と目が覚めて目蓋がゆっくりと上がった。

暗い室内だが、使い慣れた部屋でどこに何が置かれているのかはハッキリと分かっているので、手馴れた動きで目覚ましのデジタル時計の時間を確認する。

 

「………七時…起きるか」

 

もそりと音を立ててベッドの上から体を起こすと昨日は感じなかった体の違和感に頭を抱え、寝起きの頭の運動のがてら昨日の事を思い返す。

 

「ッ…昨日飲まされたんだっけ…」

 

妙に頭の痛さに体をふら付かせるが、彼の感じていた違和感はそれだけではない。

昨日はなにもしていないというのに肩が重く、服もいつの間にかぴっちりとして動きやすくはあるが肌から伝わる感覚が妙に気持ち悪い。

全身タイツを着ているようで息苦しいのだ。

 

 

 

「…なんだってんだ…」

 

取りあえず、まずは服を着替えるかと近くの机に置いていたリモコンを使い部屋の明かりを灯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽよん。

 

 

 

 

 

 

 

「………………………え?」

 

すると。ルカの体には、いつの間にかふくよかな山が二つ、小さく揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。直後、((彼女ら|・・・))の絶叫が楽園内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――昨日の事を思い返す。

 

昨日は旅団ナンバーズたちはほぼ全員で宴会をしており、サポートメンバーたちと共にどんちゃん騒ぎをしていた。

その後、自然とお開きになったのでそれぞれの部屋に戻り就寝。何事なく一日は終了した

 

 

 

 

…ハズなのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………どういうこった。コレ」

 

「さぁ? 少なくとも、昨日は「こう」はなって無かったのですから、私たちが寝ている間に起こった現象でしょう」

 

「随分と悠長なこと言ってんな、竜神丸」

 

「ええ。別にこういう幻象は慣れてますから」

 

「…慣れる方もどうかと思いますが…」

 

 

 

 

 

「………兎も角。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これって一体どういう事ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!??!?!?!?!!?!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

刹那。本日二度目の絶叫が響く。

五月蠅いと思いながらもその場にいる全員は叫ぶ声に同情するしかない。

 

目の前に居るのはほぼ全員だが旅団の中枢メンバーだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員女だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!??!?!?!?!

一体全体どういうこと!? 昨日の内になにがあったんですか!?

また竜神丸さんの悪だくみですか!??!?」

 

と、言って未だこの状況に戸惑うディアーリーズ(CV伊藤静)

 

 

 

 

「失礼ですね。私も十分、今回は被害者なんですから。

第一。こんな事をするのであればもう少し計画的にしていますよ。それに体ももう少し弄ってます」

 

そのディアの疑いを冷静に返す竜神丸(CV進藤尚美)

 

 

 

「竜神丸が酷く冷静なのはいつもの事として…今回は本当に突発的っていうか………一体どうなってんだ?」

 

現状に未だ飲み込めていない状態で頭を抱える支配人(CV折笠冨美子)

 

 

 

「今回の騒ぎで竜神丸さんが粛清されてない所を見ると…本当に犯人は竜神丸さんじゃなさそうですね」

 

同じく多少は戸惑いながらも冷静な様子で状況把握を務める黒鉄刃(CV日高里菜)

 

 

 

「ちなみに言うが俺も違うぞ。俺の昨日はとばっちりを受けたからな」

 

真っ先に自分も容疑者から外れようと弁明するkaito(CV加藤英美里)

 

 

 

「ま…この状況なら、その言い訳も納得してしまうそうだよなぁ…」

 

その隣では弟(現在は妹)を慰めるロキ(CV田村ゆかり)

 

 

 

「なんで…なんで俺………すっごいナイスバディなんだよ…」

 

と言って状況がつかめず弄られていた過去から落胆しているルカ(CV坂本真綾)

 

 

 

 

「…取り合えず。まずはここにいる全員だけじゃ状況が分からねぇ。どうにかしてこうなった原因とか探らねぇと…」

 

「そういえばBlazさんは結構見慣れた顔ですよね」

 

「うるせぇ、お前にだけは絶対に言われたかねぇよディア」

 

完全に彼女のためにあると言える服装(ラグナ子)に身を包んで腕を組むBlaz(CV佐藤利奈)

 

ちなみに彼女は過去にミィナに女体化されているので慣れてはいるのだが、もう二度と成りたくないと心から思っていた。しかし、それもこうなるといとも簡単に崩れてしまう。

 

 

 

 

「…で。改めて聞くが、一体どういうこった。なんで俺たち全員、またまとめて女になっちまってんだよ」

 

「さぁ? だからと言って私は知りませんよ。kaitoさんと同じ、被害者ですから」

 

「いやぁ…今回は本当に驚いた。朝起きたらこんな胸に…」

 

「冷静だなお前ら…」

 

自分たちが女であることにさほど驚かず、抵抗感もない竜神丸とkaitoは自分たちの体をまじまじと見つめながら胸を触り感触を確かめる。

普通の女性ならそんな事を人前で堂々とすることは絶対に無いが、片や実験で慣れていたり、片やそんな珍事態を何度も経験していることからあまり驚くことも出来ないようだ。

そんな彼女たちに支配人は呆れてため息しか吐けず、自分の体よりもこの後のことについてを心配していた。

 

 

「しかしどうするよ…こんな姿で」

 

「どうもこうもありませんよ。時間になれば元に戻ることもあるでしょうし、私ならワクチンぐらい作れます。

 

 

…面白くないので当分作りませんケド」

 

「なんで僕の顔を見て言うんですか、竜神丸さん」

 

「いえ。違うのですよ。別にディアーリーズだけ女体化を侵攻させて身も心も女にしようなんて神に誓うほど思っていますから」

 

「思ってるじゃないですか!! なに典型的なボケでスルーしようとしてるんですか!!!」

 

完全に悪意のある言葉に怒声を上げるディア。しかし今の彼女の声では高すぎて超音波にも聞こえてしまうことから刃と支配人が直ぐに仲裁に入る。

 

「ッ…ディア。ストップだ」

 

「流石に女の子なんですから、声の五月蠅さには注意して下さいよ…怒声が五月蠅くて耳が痛いですって…」

 

「ああ…すみません…」

 

「慣れない体だからな…何時もの調子でやったらどうなるか分からんから、少し自重しとけ」

 

「ありがとうございます刃さん、支配人さん…確かにいつもの調子だと少し変な感覚で…」

 

すると、ディアの発言に眉を寄せたBlazとキリヤ、そして支配人と刃はそういえば、と呟くと今まで忘れていた事を思い出しその場に居る全員に問うた。

女の姿であるということにすっかりと気を取られていたが、その所為で何か影響があるはずだと思ったからだ。

 

 

「ッ…そういえば、俺たちこの体になってから一度も自分たちの力とか使ってないが…」

 

「ええ…私たちがこの体という事は…」

 

「もしかしたら…か。よし、試しにBlazが魔導書起動させてくれ」

 

「なんで俺だよ…」

 

「多分、Blazさんの方が作者的に動かしやすいからでは?」

 

「ぶっちゃけた事いうなこの黒髪御パイ(ディア)」

 

しかし、言われてみれば気になるのも事実。

ここは大人しく従おうと、Blazは右腕を構えて魔導書を起動する。

未だ右腕には蒼の魔道書があるので起動の詠唱さえ唱えれば使う事は可能だ。

 

 

 

「―――第666拘束機関開放

 

    次元干渉虚数方陣展開

 

    イデア機関接続―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((蒼の魔道書|ブレイブルー))―――――――起動ッ!!!」

 

 

もう一つの蒼の魔道書。その詠唱が完了し、彼女の腕から蒼が吹き出す―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ハズだった。

 

 

 

 

「……………アレ?」

 

例えるならそう。

ぷすん、と音を立てて焦げ臭いにおいを出しながら煙を出す機材のように。

体中に走っていたハズの力、魔力、魔素。そして腕に伝わっていたハズの蒼が。

まるでガス欠でもしたかのように風を吹かせただけで終わってしまった。

 

 

「………ぶ、Blazさん…?」

 

「………」

 

「あー…これはダメですね」

 

「え。」

 

 

 

「魔導書がエラー起こしてます」

 

刹那。まるでPCのメンテナンスをしてくれたが、ダメだったかのように竜神丸はただ平然として彼女に事実を叩きつけた。

蒼の魔道書が起動しない。というよりも反応しないといった方が正しいだろう。

 

「え、エラー?」

 

「ええ。ま、結論だけを先に言えば、何等かの所為で女体化した私たち。この場合はBlazさんの体の情報を受け取ったのですが、キャパシティオーバーしたから魔導書が動かなくなった…という感じです」

 

「キャパなんてあったのか、コレ!?」

 

「一応魔導書ですし。そういう概念はないですが、分かりやすく言えばという事です」

 

簡単な説明を聞き納得はするものの、そんな理由で使えなくなってしまうという事に理不尽さを感じるBlazは眉をひくつかせて黙り込んでしまう。

それを見ていた他の面々は他人事のように同情していたが、実際自分たちも同じような状態であることを再認識し、次第に心配にもなり始めた。

彼女の魔導書が現状使えないのであれば、恐らく彼女たちのライダーシステムも…

 

 

 

 

「………ダメだ」

 

「俺のもだ…」

 

「私のも…」

 

仮面ライダーへと変身しようとしても反応が無い。ベルトは問題なく、故障の類もない。

しかも使用者全員にベルト等から拒絶されているように感じられている。

竜神丸が調べると、ベルトから反応がないのは使用している彼女らを所持者と認識していないからだという。

 

「いつの間にそんな機能ついてたんですか!?」

 

「いやぁ…盗難防止のために試験的に私が作ったのですが…まさかこんな事で発動するとは。良いデータが取れますね(笑)」

 

「いや(笑)じゃねぇだろ!?」

 

完全に他人事のように言っている竜神丸に突っ込む支配人。当人も反省というよりまぁ大丈夫だろうという顔でいるため余計に腹が立ち、最終的には

 

 

「竜神丸、お前も他人事じゃないんだよっ!!」

 

「んっ!?」

 

支配人よりも先にキリヤが行動に出て、彼女の胸を手のひらいっぱいに鷲掴みにする。

そこそこ入りきらない大きさの胸なので掴むのに苦労しているが、それでも力を入れて((捻る|・・))ことには問題ないので、容赦なく捻り回した。

 

「お前なんとかしろよッ………!!」

 

「いだだだだだだだだだ!! 離してくださいッ!!」

 

 

「…珍しく竜神丸さんが弄られる側ですね」

 

「散々お前弄ってるからな。ディア」

 

「殆ど原因アンタでしょうが」

 

「ディア×BBごちそーさま」

 

直後、Blazもディアに胸を捻られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで一度旅団メンバーの状況を確認しよう。

現在集まっているのはナンバー順に

ロキ、竜神丸、支配人、kaito、ディアーリーズ、ルカ、Blaz、刃の七人。

現状二十名以上いる中で確認されているのは彼女たちだけ。

また団長であるクライシスとデルタは二人所要で昨日から出ている。

残るメンバーたちは全員、楽園の中に居るということだ。

 

「この分だと、他のメンツもやられてるだろうな」

 

「僕ら以外被害が無いっていうのも絶対に無さそうですもんね…」

 

なにせ、彼女たちが居る部屋の外からは多くのスタッフたちの絶叫が響いていたのだ。

内容も全て似たようなもので自分たちの現在の姿に驚き、叫び、そして泣いている。

 

「なんて被害だ…」

 

「他のスタッフたちの声も聞こえているって事は…もしかして」

 

「…恐らく、楽園内は既に男女逆転現象が蔓延している…と考えて間違いないでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急に男の姿になったことに驚く元女性。

その友人の姿を見せ信じられないと叫ぶ者。

そして自分のたわわな胸に欲情しながらも事態を飲み込めず混乱している元男性。

中にはこれが夢であると現実逃避したスタッフもいる。

今までの自分が居なく、目の前には性別が変化した相手。

戸惑い、怯え、驚き、泣き叫び、そして発狂する。

 

斯くして、楽園内は突如として発生した未曾有の幻象によって、男女性別が逆転されてしまったのだった。

 

 

 

「…なんつー地獄だよ…」

 

「もはや誰が誰かわかったものではないですね…」

 

楽園内の廊下を移動しながらナンバーズの私室へと向かうBlazと刃。

慣れない体で移動するのに多少苦労はしているが、Blazも伊達に弄られていたワケではなく、歩くスピードは刃よりも少し早い。

 

一室で現状の絶叫を聞いていた彼らだが、黙っていては始まらないということでそれぞれ三方に分かれて行動を開始。

竜神丸は支配人とkaitoと共にラボに籠りワクチンの開発に既に取り掛かっていた。その間に他のメンバーが知っていないかという情報収集と状況確認を彼女たちは頼まれ、急いで向かっていた。

 

また、その間にディアーリーズとロキ、ルカの三人は何処からこの事態が起こったのかという調査を行っていた。といっても情報が無いので漠然としているが。兎も角思い当たりそうな場所を虱潰しに始めていた。

 

「―――ま。漠然とした原因探すよかマシか」

 

「確か、団長とデルタさんは昨日から出かけてたんですよね」

 

「ああ。なんでも団長の用事らしくってな。あの二人の女姿を見れないのは嬉しいのか悲しいのか…」

 

「団長の女体化なんて…想像がつきませんよ…っていうか想像したくない…」

 

「同じく―――――っと。最初はFalsigだな…」

 

ナンバーズの名前とナンバーが書かれたプレートを見て呟く。

ドアはロックされており、パスワードを入力しなければ入ることは出来ないが、マスターキーを持っている彼女らはそれをキーの前にかざすだけでロックを解除することができる。

 

「…開けるのはいいですけど、中がさてどうなっているのやら…」

 

「少なくとも、中の奴は尻もちはついてねぇハズだ」

 

「そうですね…」

 

 

まだあの場に集まっていないメンバーがどうなっているのかは彼女たちにも分からない。

だが少なくとも部屋の奥から奇声が上がっていないことから驚いて騒いではいないことは確か。更に、今入ろうとしている部屋の主の事を考えると本人が驚いている様子は考えられず、むしろ落ち着いているのではないかと思える。

実際、それに近しい感じなのでそれがより現実のものに思えてしまうので別の意味で心配になってしまう。

 

 

「…うしっ。そんじゃ、開けるぞ」

 

「ええ…」

 

興味はある。だが同時に少し怖い。

そんな複雑ともいえる感情を押し殺し、二人は部屋に突入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん。Blazと刃か」

 

 

「………」

 

刹那。部屋を入って最初に目に飛び込んできたのは、今にも本当に飛び込んできそうなほど幼い少女だった。

 

 

「………。」

 

「…? 二人ともどうしたんだ。鳩が豆鉄砲を食ったような顔で」

 

「………」

 

知り合いであるかのように振る舞う少女。

部屋には他に誰も居ない。

居るのは彼女と自分たちだけ。

 

「…えっと…そこのガキンチョ。この部屋に居たと思うお兄さんは…?」

 

「そうです…Falsigさんって言って、旅団メンバーなんだけど何処か影が薄いっていうか、最近出番が少ない人っていうか…」

 

「……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テメェら二人そろって線切ってやろうか」

 

そういって彼女の目は「直死の魔眼」となっていた。

まるで見て見ぬフリをされているのだ。そうなれば誰だって苛立ったりはするだろう。

特に、目の前であからさまな事と暴言を吐かれたFalsig(CV釘宮理恵)は。

 

 

 

「―――――――え」

 

 

その後。二人の絶叫が部屋の中で響いたのは言うまでもない。

 

 

 

「あ…え…え…」

 

「う、嘘…ですよ…ねぇ!?」

 

「嘘だと思うなら魔眼についてどう説明する」

 

「………。」

 

直視の魔眼は魔眼と呼ばれるカテゴリーの中でも上位に位置づけられるもの。

しかもそう簡単に現れるものではなく、とある世界でもやっと二人は居る程度だ。

相手の死の線を見て、そこを切る事が出来る。切られれば万物何物も問わずにそれは「死ぬ」と言われる眼。例外ありきだが、事実その魔眼に敵は無い。

 

旅団メンバーでも魔眼というカテゴリーを持つのはFalsigただ一人。

後はPSI、オラクル細胞、蒼の魔道書、森羅万象を操る程度の能力、蟲、コジマ粒子といった物で神秘のレベルでいうならば同じく上位だ。

 

そんな理由からではないが、魔眼が現れたという事で直ぐに彼女たちの脳裏に「この子はFalsigだ」という確信が沸き上がってくる。

だがだからといって直ぐに納得できるハズがなく、二人は未だ信じられないという顔で先ずはどうしてそうなったのかという理由を聞くことにする。

 

「…なんでそんな姿だ?」

 

「知らん。起きたら服がダボダボだと思ってな。明かりをつけたらこのザマだ。最初こそ驚いたが…ま。慣れれば結構いい体だぜ?」

 

「能力低下があるのにか?」

 

「あるのか? 俺は逆に魔眼の使用時間が長くなった気がするけどな…」

 

「えっ…!?」

 

「試したのか?」

 

「なんかそんな気がするって思ってやってみたらな。けど、伸びたのは精々二分ってとこだ」

 

Blazが魔導書を使えなくなってしまい、ディアーリーズたちは変身が出来なくなってしまったのにも関わらず、彼女はその逆で僅かではあるが魔眼の能力が上がったという結果になぜなのかという疑問と共に本当にそうなのかという疑いを持ってしまう。

一応本人は今は魔眼を閉じているが、その時が来れば分かることなのだろう。

 

「…でだ。今度は俺からも質問させてもらうが…お前らBlazと刃だよな? なんだよその格好。特にBlaz」

 

「うるせッ。俺のはこれしかなかったの。男の時の服がデカくて入らないんだよ」

 

「私も似たような理由で…」

 

「…なら仕方ないな。特にBlazは無駄にだし」

 

「オイ。なに人の胸見て言ってんだよ。このまな板」

 

「まな板じゃねぇよ。Cはあるわ」

 

「ハッ。何処がだよCは「しけた」のCか? あ?」

 

(何揃って二人で卑猥な喧嘩してるんだか…)

 

 

 

その後。五分ほど口論していた二人を無視し更に他のメンバーの様子を窺いに行く刃。

この後に他の面々がどうなっているのかと先行きに思いやられながらも、一先ずは次のメンバーの居る部屋へと向かう事にする。

 

「えっと…次はmiriさんで…」

 

「そっか。次は俺か」

 

「ええ、次はmiriさんで―――――」

 

 

 

振り向くと、そこには整った顔とスタイルを持つ女性が一人。平然とした顔で立っている。

先ほどのセリフで、もう迷う事も疑う事もない。

 

 

ただ純粋に後ろに居たことだけに驚き、そして当然のように問うた。

 

 

 

「み…miri…?」

 

「ああ。朝起きたらこんなのになっててな」

 

そういって自分の胸を持ちあげるmiri(CV大原さやか)は、どことなくその手にある重量感を見せつけているようにも思えた。

ちなみに他のメンバーの中では恐らく上位に入る大きさだろう。

 

「…というか。お前らもどうしたんだ、その格好」

 

「いや、宝塚みたいな奴に言われてもどうも言い返せないっていうか…」

 

「なんでmiriさんそんな美人になってるんですか」

 

「知らん。だが、正直言ってこの体は動きにくくてなぁ…」

 

成ってしまった体についてぼやきながらも、その実りを喜ぶかのように振るうmiri。

胸のない女性たちに見られれば完全に挑発としてみなされるだろう。

特に、ディアーリーズのメンバーについては…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え。こなた…こっちに来るの…」

 

「来るみたいだな。昨日の続きがしたいって言ってたし」

 

 

 

 

そして。波乱は少しずつ、彼らの中で広がりを見せ始めていた…

 

 

説明
さてさて。暇だと思い、思いついたこのネタ。
ちなみに中のひとについては一応聞きますのでご安心を

え。戻せ?

………さて。どうしてでしょうかね(愉悦顔)
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
909 644 2
コメント
げんぶ : 知らん(書いといて)(Blaz)
Blazさん>CV上坂すみれさんでお願いします(朱雀)
ZEROさんの女体化………。………駄目だ、ブラクラのバラライカしか想像できん…(ディアーリーズ)
(男性化した白蓮さんに×××される可能性は考慮していないのだろうか…)(竜神丸)
CV了解しましたー…初めからこうしたかった…いや、それでは奇襲の意味が…(Blaz)
杉田「今井さん可愛い」 コンドム「今井さん可愛い♪」  ひろし「今井さん可愛い」  イマジン「え、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!?///」(竜神丸)
イマジンさんか…今井さんは可愛いby杉田(ZERO)
竜神丸:喰わんで殺すだけかな…ある程度の戦闘力がないと喰う価値もないんで(ZERO)
cv川澄綾子(ランサーアルトリアぐらいのトーンで)でお願いしますww(ZERO)
…残念ですが…(Blaz)
げんぶ:デブでブサイクだった男子が、女体化したら超綺麗な女子になったパターンが某少年漫画であったので油断は出来ない(竜神丸)
誤字報告ありがとうございまーす(Blaz)
え、俺は漢女道継承者の姿になるんでしょ?(yunagamon)
誤字報告&その他;漢数字で「壱ダース」より「1ダース」の方が読みやすいかと。  起こった幻象→起こった現象(支配人)
この世界の六課に胃薬常備って… フェイト、はやて、ティアナは犠牲者か…  というか理由くらい話せよ、俺ぇ…(支配人)
ZEROさんの場合はどっちの性別でも危険性は変わらない。仮に女体化した場合、近付いて来たナンパ野郎共を(物理的に)喰い荒らして回りそう(竜神丸)
げんぶ : 全員女性です(Blaz)
あ、俺のCV若本規夫さんで(yunagamon)
モンスター娘のいる日常(yunagamon)
モンスター娘になるん?(ZERO)
まー…今回ギャグ回ですので。そんな事をいうと容赦なくネタ枠にボッシュートされます(Blaz)
だって本来異業種よ旅俺?(ZERO)
性格的に男で 喰らった人間のなかで気に入った者の姿をとっている(ZERO)
ZERO : そんなこと言ったら大変ですよ。(既に被害者が出ているので)(Blaz)
因みに旅俺には性別がない…あくまで普段の姿は擬態のため(ZERO)
げんぶ::実際そんな表記が作品内にあったから……(−−;)(黒鉄 刃)
何?、旅の今の自分は男装の麗人みたいな感じなの?(黒鉄 刃)
いやぁ〜盗難防止でロックかけた筈が、まさかこんな形で仇になってしまうとは〜(←完全に“焦り”のあの字も無い男…いや、女)(竜神丸)
ライダーシステム…使えなくなりそうなのは戦極ドライバーとマッサドライバーくらいかな…(ディアーリーズ)
え、まさか俺も……?(yunagamon)
旅俺よ!サイドポニーにして髪染めて六課行こうぜ!(キリヤ)
タグ
シリアスとカオスのごっちゃ混ぜ OTAKU旅団 

Blazさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com