魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百五十一話 愛ゆえに……
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 『進級おめでとう勇紀』

 

 「あざーっす」

 

 正確に言うと明後日から2年生だが。

 

 『昇進もおめでとう。あ、これは理もだね』

 

 「これまたあざーっす」

 

 「どうも」

 

 こんにちは。長谷川勇紀です。

 早朝とも言える時間帯。

 現在俺は鳴海少将……いや、昇進したから鳴海『中将』だな。

 で、中将の執務室にいます。

 俺もこれまでいろいろあり、今回は鳴海中将に協力して難事件を解決した事から昇進し、今の階級は『准将』。

 遂に『将官』入りを果たしました。

 俺の年齢で将官入りとか異例過ぎる異例の超出世だが、何つーかさ……多いのよ。

 原作の事件程ではないにしろ高ランク魔導師が赴かなけりゃいけない規模の事件がさ。

 そういう時に限ってミッドにいるシュテル達や本局所属のなのは達原作キャラは別世界での任務中とかで大抵は俺達転生者が駆り出される羽目になる。

 

 「(これ、世界に何かの補正働いてるんじゃね?)」

 

 と、何度も思いましたよ。

 ただ別世界に行く度レジアス中将を始めとする地上本部上層部の皆さんは不機嫌になる。

 そりゃそうだね。『何で『海』の担当に俺達『((陸|おか))』所属の魔導師が…』という理由だ。

 しかも俺達が鳴海中将と繋がりがあるから中将経由で依頼して来るのだ。

 その度に上層部の皆さんを宥める俺達の身にもなってほしい。てか『海』の事情は『海』でどうにかしろよ、と思うのであります。

 ま、過去の事を愚痴っても仕方ない。ここまで階級も上がったんだし、今後は堂々と文句言ってやる。

 

 『私は嬉しいよ。転生者の皆が無事にここまで成長してくれて。今後とも無理はせず、頑張って長生きして天寿を全うしてくれたまえ』

 

 「ういっす」

 

 ディスプレイ越しに神様が心配してくれた。

 てか言われんでも誰かに殺されるつもりは無いッスよ。自分の職務で命の危険が常に付き纏うと理解はしてるけど死んで誰かを悲しませる様な真似だけは絶対にしねぇ。

 

 『そんな君達に報告があります。心して聞く様に』

 

 んあ?

 ディスプレイの向こうの神様は『コホン』と咳払いして

 

 『その世界に転……』

 

 シュパッ!!

 

 神様が言い終える前に俺はクリュサオルでディスプレイを真っ二つに斬り伏せた。

 だがこれは無駄な行為。

 すぐに新たなディスプレイが表れ、神様の顔が映し出される。

 

 『人の話は最後まで聞きなよ!!』

 

 「あんた『人』じゃなくて『神』じゃないッスか。だったら聞かなくても良いでしょ」

 

 『神の話は最後まで聞きなよ!!』

 

 言い直しやがった!?

 

 「……だって、また面倒な単語が出てきそうだったんで」

 

 『……………………』

 

 神様無言になっちゃったよ。

 

 「一応先に尋ねておきますけど、さっき神様が言ってた『転』の次に続く言葉、まさかとは思いますけど『せ』と『い』と『しゃ』じゃないですよね?」

 

 『……………………』

 

 「まさか『新たな人物が〜』なんてこたぁないですよね?」

 

 『……………………』

 

 「何とか言ってくれませんか?ん?」

 

 『……一応今回の事に関しては理由有るんで聞いて貰えるかな?決してミスとかうっかりじゃないんだ』

 

 …ほぅ?理由があるとな?

 

 「良いでしょう。聞こうじゃないですか」

 

 聞くだけは聞くよ。だからといって許すか否かは別問題だがなフフフのフ。

 

 『今回その世界に転生者を転生させたのは私じゃなくて私の幼馴染みの神なんだ』

 

 「幼馴染みの神って…」

 

 ちょい待てや。この世界の管轄は俺達を転生させた画面の向こうの神様であって、この世界へ転生させる権利は目の前の神様以外には決してない筈…

 

 『勇紀の考えてる事は大体わかるよ。けど以前に言ったと思うが私が承諾した場合はその限りじゃないんだ。で、今回は私自身許可を出したからという訳さ。別の神が転生させた人物をその世界から排除する理由は今回は無いよ』

 

 …そういう事ッスか。じゃあいつぞやの転生者の時みたいに殺害したりする必要は無いって事ね。

 

 「どうして許可したんです?」

 

 俺と一緒に聞いていた鳴海中将が質問する。

 

 『…実は私の幼馴染みには何度か仕事のうっかりに対しての処理を手伝って貰っていたんでね。今回はその貸しの1つを返すという意味で、君等がいる世界への転生を承諾したんだよ』

 

 『ま、そーいうこっちゃ』

 

 ん?

 何か神様の声とは違う声が聞こえてきたぞ。しかも関西弁っぽい喋り方だ。

 

 『はろはろ〜。ないす・とぅ・みーちゅーやー』

 

 …………誰?

 グイッと神様を押し退けて画面に映ったこの人は?

 いや、向こうにいるって事は人じゃなく神様か。

 で、誰?この神様は?

 

 『ワイは『((正富|まさとみ))』の幼馴染みで『((裕也|ゆうや))』っちゅーんや。よろしくなー』

 

 裕也さんですか。よろしくです。

 ところで正富というのは?

 

 『コイツの本名にして真名や』

 

 裕也という神様が俺達を転生させた神様を指す。

 真名……『真実の名前』って事ッスよね。

 

 「正富に裕也………何て言うか」

 

 すっげえ日本人っぽい名前ッスね。

 俺はそう言うと神様は即否定する。

 

 『正富?何を言ってるんだ?私は神だぞ。そんな安上がりな名前が真名の訳無いだろう』

 

 「アンタは今全国の正富さんを敵に回したぞオイ」

 

 謝れ。全国の正富さんに謝れ。

 

 『別にそこまで嫌がらんでもええとワイは毎回思うんやがな。ホンマ、面倒な幼馴染みやで』

 

 『う、うるさい!!私の真名はもっとカッコイイ名前だ!!正富などという在り来たりな名前じゃない』

 

 「じゃあ何て言うんスか?」

 

 『個人保護の関係で明かす訳にはいかないな』

 

 『偉そうな事言うなや正富』

 

 『正富じゃねーーー!!!!!』

 

 あくまで自分の真名を否定する神様。

 対して裕也と言う幼馴染みさんはケラケラと笑ってからかっている。

 

 『まあ正富の事は置いといて。あんさん等が正富のミスに巻き込まれた人間か。何つーか災難やったなー』

 

 「はは…まあ、今更愚痴った所で生き返れる訳じゃないッスからね」

 

 「私は不満とか無いですけどね。幸せな家庭も築けてますし」

 

 何だかんだ言って二度目の生を謳歌してるしな。

 鳴海中将は…良いなぁ。俺も結婚とかしていずれは家庭を持ちたいもんだ。

 

 『ほうかほうか。ま、こんな神やけどこれからもよろしゅうしたってや』

 

 何か軽い神様だねこの人。話しやすいのは俺にとっちゃ嬉しいけど。

 

 『で、ワイと正富の真名が知れたことは置いといて…』

 

 「いや、てか真名ってそんな簡単にバレて良いんすか?」

 

 某運命的な作品の英霊達だと真名…ってか正体バレると弱点が露見するというデメリットがあるのに。

 

 『かまへんかまへん。別に知られたかて痛くも痒くもあらへんし』

 

 神様にとっちゃその程度の価値って事ですか。

 

 『まあ真名の事はええんや。それよりワイがその世界に送った転生者がおるっちゅう事は頭の片隅にでも置いといてや』

 

 「どんな転生者なのか聞いても?」

 

 『それは……秘密や』

 

 「おい!!」

 

 情報非公開かよ!

 

 『その方がおもろいやん。街中で気付かん内に実はすれ違ってたとか、会話してたりとか』

 

 ぬぅ…この神、転生者の人生見て楽しむタイプか。

 

 『あんさんが思っとるので合っとるで。ただ言っとくけど娯楽のためにワザと殺して転生させたとかっちゅうオチちゃうから。んな事したらワイの方が裁かれてまうからな』

 

 心の中を読まれた。

 

 『そういう神もごく稀にいるがソイツ等は例外なく裁かれ、無に還されるんだよ』

 

 お、冷静さを取り戻したか正富。

 

 『正富違う!!』

 

 もう否定しなくて良いじゃないッスか。

 同じ日本人の名前で親近感もてますよ。

 

 『それにワイ、ミスって殺したんとちゃうし』

 

 「ほえ?そうなんスか?」

 

 『せや。今回の転生者は事故で死んだけど、それは予め決められとった運命やからなぁ』

 

 普通に輪廻転生に沿った形での転生であり、ミスによる突発的、予想外の形での死ではないという事らしい。

 それは幸か不幸か…。

 

 『ま、どんな奴が転生したかはワイだけが知っとるっちゅー事や。正富にも教えとらんし』

 

 不安だ……すっげー不安だ。

 どんな転生者か分からないだけで不安に蝕まれてしまう。

 俺の立場から見て敵となるのか味方となるのか…。

 マジメな人間なのか西条みたいな自称オリ主なのか…。

 

『あ、そろそろ仕事再開せな。転生者の件は伝えたから。ほなまたなー』

 

 そう言い残し、裕也はディスプレイを消した。

 …結局転生者の事は何も分からぬまま。

 

 「…で、君はこれからどうするんだい?」

 

 「…とりあえず、俺は用事があるんでこれで失礼します。亮太、椿姫、澪には今回の件についてメールで連絡しときますんで」

 

 西条に連絡は……まあ要らんだろ。聞いてくれるかどうかすらアレだし。てか聞かんだろうし。

 ペコリと一礼して中将の執務室を後にする。

 あぁ……神様てヤツぁ、どうしてこう、面倒な展開を用意してくれやがるのかねぇ………。

 

 

 

 しばらく時間を潰して早朝から午前と言える時間帯になった。

 とある道場にて…。

 

 「はあぁぁぁっっ!!!」

 

 気合の入った掛け声と共に、俺の目の前にいる俺より年下の女の子……少女は鞘に納めた刀……彼女のアームドデバイスを抜き、水平に振るう。

 

 「天瞳流抜刀居合--------水月!!」

 

 その技の名の通り、このままだと水月……鳩尾の部分に直撃する。

 だがそう易々と食らうつもりなんて更々無い。

 

 「ふっ!」

 

 俺は迫りくる刀を持つ少女の手首を下から蹴り上げる。

 

 「っ!!まだです!!水月・二連!!」

 

 少女は俺が手首を蹴りあげた事によって握りから手を放しそうになるが、しっかりと握り直した事で得物を放さずに済んだ。

 そのまま俺に向かって振り下ろされる刀を

 

 「フェニックスウイング!!」

 

 下から片手を上げて正面から受け止める。

 受け止めた刀の刃をしっかりと掴んで

 

 「どりゃあぁぁぁ!!!」

 

 少女ごと強引にブン投げる。

 

 「あぐっ!」

 

 少女は道場の壁に背中を打ち付けて止まる。

 強引にとは言え、手加減はしたし道場の壁には衝撃を緩和する魔法や壁自体の強度を上げる魔法等、壁が壊れたり人が勢いよくぶつかっても大丈夫なように被害を抑える類の魔法による保護が予め施されている。故に大きなダメージにはなってない筈だ。

 少女は刀を杖代わりにしてゆっくりと立ち上がるが、膝はガクガクと震えている。

 

 「……どうする((ミカヤ|・・・))?俺としてはもう終わるのを奨めるんだが」

 

 俺は目の前の少女----『ミカヤ・シェベル』に問い掛ける。

 非殺傷設定の特性として相手の肉体に怪我を負わせてはいないものの、魔力値はかなり消耗してるだろう。

 

 「いえ……もう少し……お願いします」

 

 その瞳からはまだ降参の意は感じられず、むしろ不屈の闘志が燃え上がっている様にすら感じられる。

 杖代わりにした刀を鞘に収め直し、息を整えて膝の震えも徐々に抑えていく。

 

 「ふむ……じゃあこれでラスト一本にしておくか」

 

 そう言って俺も構える。

 ただし、((いつもの構えではなく必殺の構え|・・・・・・・・・・・・・・・))だ。

 

 「っ!!」

 

 ミカヤもそれを肌で感じ取ったのだろう。表情が厳しいものへと変わる。

 

 「流石ミカヤ。この構えを見て本能的に悟ったか」

 

 「…………はい。ただ立っている様にしか見えませんが、全くもって踏み込めない…一撃を入れるイメージが湧きません」

 

 冷や汗を垂らしながらミカヤは答える。

 やっぱ才能あるわこの娘。

 俺の構えは片手を上げ、逆の方の片手を下げて、両足を肩幅程度に広げる。

 一般人が傍から見たら『何あのポーズ?』としか思わないだろうが、武を嗜む者、しかも熟練者であればある程この構えのヤバさが理解出来るのだろう。

 

 「これが俺の切り札の1つ----『天地魔闘の構え』だ」

 

 かの大魔王様の奥義とも言える不動の構えにして最高峰のカウンター技。

 勿論この奥義とて原作ではダイ&ポップのコンビに破られているので完璧な技とは言えないだろう。

 が、それでも大概の技なら迎撃し切れる。

 

 「最後の一本を締めるに相応しい大技だと思うんでな」

 

 さあミカヤ。この構えを前にしてどう攻める?

 しばしは膠着したかの様に双方動かない状況が続くが

 

 「……行きます!!!」

 

 ミカヤの声と共に足元に展開された近代ベルカ式の魔法陣。

 俺の足元にもミッド式の魔法陣が現れる。

 やや前屈みの体勢で彼女の手は鞘に収められた刀の握りを力強く握り、視線は俺を射抜くと思える程鋭いモノになる。

 

 「天瞳流抜刀居合----」

 

 そして彼女の

 

 「天月・霞!!」

 

 全力の踏み込みと超至近距離での一刀が放たれる。

 

 「フェニックスウイング!!」

 

 俺は下げていた片手でミカヤの居合を防ぐ。

 先程の一撃よりも重い攻撃だが、俺も負けてはいない。足を踏ん張り体勢を崩す事無くしっかりと堪える。

 ここまでの状況は先程と同様の攻防だが、天地魔闘の構えには更なる続きが待ち受ける。

 

 「カラミティエンド!!」

 

 ミカヤの左肩から右脇腹の方向へ向けて手刀が軌道を描き

 

 「カイザーフェニックス!!」

 

 最後に放つのは不死鳥の姿を模した炎での追加攻撃。

 この3つの動作を彼女が距離を取ったり防御の姿勢に変える間もなく即座に行われる。

 炎に包まれ再び道場の壁際にまで追いやられ、カイザーフェニックスと共に壁にぶつかると不死鳥は消滅し、ミカヤも不死鳥の炎から解放される。

 解放されたミカヤと言えば

 

 「きゅ〜〜〜〜〜〜〜……」

 

 目を回して気絶していた………。

 

 

 

 〜〜ミカヤ視点〜〜

 

 「本日もご指導ありがとうございました」

 

 「いや、今日は組手しかしてないから指導なんてらしい事はしてないよ」

 

 目の前の男性、長谷川勇紀さんは苦笑を浮かべながら答える。

 

 「わざわざ私のお願いを聞いてインファイトオンリーで戦って頂いて手も足も出ないなんて……まだまだ勇紀さんの背中は遠いんだと実感させられましたよ」

 

 勇紀さんの戦闘スタイルはオールラウンダー。

 本来なら対戦相手のスタイルに合わせて((近距離戦|クロスレンジ))、((中距離戦|ミドルレンジ))、((遠距離戦|ロングレンジ))を使い分け、自分に有利になれる距離で攻めるのが定石だが、『((近距離戦|クロスレンジ))を得意とする相手の対策を練りたい』という私の願いを聞いて貰い、((近距離戦|クロスレンジ))のみで相手をして貰っていた。

 場所が道場内と事もあって元より((中距離戦|ミドルレンジ))、((遠距離戦|ロングレンジ))を行えるだけの距離を取れないが。

 

 「でもミカヤだって会う度に強くなってるぞ。今回は切り札の1つを出したけど、切り札を見せる程腕が上がってるっていうのが俺なりの評価だよ(流石にオーバーキル過ぎる技だけどな)」

 

 「私もいつかは追い付けるでしょうか?」

 

 「ミカヤはまだまだ伸びしろがあるよ。自信持って」

 

 嘘偽りの無い称賛を貰えた。

 

 「けど簡単に追い付かれるのもアレだからまだまだ負けてやるつもりは無いけどな」

 

 「むむ…そう言われると一日でも早く追い付きたくなります」

 

 と言っても勇紀さんの全力、それこそ((中距離戦|ミドルレンジ))も((遠距離戦|ロングレンジ))も含めた本来の戦闘スタイルで来られたら未だに勝てる自信が無いが。

 

 「ま、焦らずにゆっくりと強くなればいいよ。まずはミカヤが天瞳流を完全に極める事が目標かね」

 

 勇紀さんの言葉に私は頷く。

 天瞳流へ入門して5年近く。未だ私には習得出来ていない技が多数存在する。

 

 「じゃ、もう今日はお暇させて貰うよ」

 

 「この後用事があるんでしたっけ?」

 

 「ん、別の娘を指導しにな」

 

 「ご苦労様です。あ、後そのタオル私が洗濯しておきますから」

 

 「毎回毎回言ってるけどタオルぐらい持って帰って自分で洗うぞ」

 

 「いえ!これぐらいはさせて下さい!ご教授頂いてるお礼みたいなものです!」

 

 私は、勇紀さんが汗を拭くのに使用したタオルを引き取る。

 

 「次回来た時にちゃんと返しますから」

 

 「……本当にいいのに」

 

 そう言いつつもタオルを取ろうとしない辺り、私に預けてくれるということだろう。

 それからは挨拶を済ませて道場から去る勇紀さんの背中を見送った。

 その後、私は再び道場に戻り、他の門下生や師範と少しだけ手合わせをして今日は上がる事にした。

 両親は共に仕事で家を出ているため、この時間帯自宅には私1人だけだ。

 自室に戻った私はバッグから洗濯する物を出す。

 私の着替えと……勇紀さんが汗を拭くのに使ったタオルを。

 

 「ふぅ……」

 

 今日の道場での手合いを振り返る。

 私と相対してる時の勇紀さんの姿は

 

 「……格好良かったなぁ////」

 

 思い返すだけで顔が赤くなるのを感じる。

 

 「しかも私にはまだ伸びしろがあるって言ってくれたし」

 

 ミッドチルダでも有名な魔導師である勇紀さんが認めてくれたんだ。こんなに嬉しい事は無い。

 

 「次はいつ道場に来てくれるんだろう…」

 

 勇紀さんは天瞳流の門下生ではないため、滅多に来る事は無い。

 だからこそ今日来てくれた時は一緒にいられる時間がもっとあると思っていた。

 しかし勇紀さんは私とは別に指導してる人の元へ行った。

 その相手は私と同年代の女の子らしい。その子のために私は勇紀さんと一緒にいられる時間が削られたという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふざけるな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナ!!!!!

 

 「どこの馬の骨とも知らない雌豚の分際で!」

 

 部屋の壁をガンッと拳で殴りつけた。

 私と勇紀さんが共に居られる時間を奪われたという事実に湧き上がる怒りを抑えきれない。

 

 「そもそも勇紀さんはどうしてそんな雌豚の所へ…」

 

 そこまで口にして1つの解答が浮かび上がる。

 ひょっとして雌豚の指導に勇紀さんが付き合わされているのは本意ではないのでは?

 雌豚がダダをこねて勇紀さんの優しさにつけ込み、無理矢理付き合わせているのでは?

 

 「きっとそうだ、そうに違い……いや……」

 

 そうではなく、勇紀さんは何らかの弱みを握られ、それをネタに脅されて拒否する事が出来ないのでは?

 勇紀さんが有名な高ランク魔導師とは言っても人間だ。他人には知られたくない秘密を1つぐらいは抱えていても可笑しくは無い。

 そしてそのネタを偶然にも知った雌豚が……

 

 「ああ、そうだ。こちらの方が理由としてはしっくりくるじゃないか」

 

 許さない!許さない許さないゆるさないゆるさないユルサナイユルサナイ!!!!

 勇紀さんの目は私だけを見てくれればいい…。

 勇紀さんの耳は私の声だけを聞いてくれればいい…。

 勇紀さんの口は私にだけ語りかけてくれればいい…。

 勇紀さんは私だけの((男|モノ))だ!私は勇紀さんだけの((女|モノ))だ!

 そんな勇紀さんを縛る雌豚は必ず…

 

 「…私の手で斬り伏せてやる」

 

 私は自分自身に固く誓う。

 いずれインターミドルで相対した時には雌豚を完膚なきまでに叩き潰し、勇紀さんを自由にしてみせると。

 

 「勇紀さん、もう少し…もう少しだけ我慢していて下さい」

 

 私は部屋の壁に掛けてある勇紀さんの姿が写されたタペストリー(←公式の販売物)に語りかける。

 タペストリーに移されている勇紀さんの顔はいつもと変わらない笑顔を私に向けてくれていた。

 ああ、この笑顔を向けてくれるだけで私は………。

 

 

 

 〜〜ミカヤ視点終了〜〜

 

 〜〜ヴィクトーリア視点〜〜

 

 「ひうっ!!」

 

 「???どうしたんだヴィクター?」

 

 「い、いえ……何か凄まじい悪寒を感じて……」

 

 首を傾げる勇紀様に私は答えます。

 今は1対1でDSAAのルールを用いた模擬戦にてご指導を頂いている最中。

 そんな中、突如感じた悪寒。

 

 「……少し休むか?風邪でも引き始めたとしたら無理させるのはいけないし」

 

 「だ、大丈夫ですわ!感じたのは一瞬だけで今は何ともありませんから!!」

 

 私は自身のデバイス『ブロイエ・トロンベ』を豪快に振るってアピールします。

 

 「そ、そっか……。なら続けるって事で良いんだな?」

 

 「勿論ですわ!!」

 

 わざわざ時間を割いて貰ってまでご足労頂き、ご教授して下さってるんですもの。1分1秒と手無駄にしたくはありませんわ!

 改めて構え直した私は勇紀様との模擬戦に意識を集中させます。

 その後は模擬戦を通じて技術的な指導だけでなく、魔法の指導も随時行って頂き、日が暮れ始めた頃まで私にとっては得る事が多い有意義な時間を過ごす事が出来ました。

 その後勇紀様はエドガーに地球の料理がレシピと共に紹介されている料理本を渡し、その中の一品をエドガーに教授しながら作り、そして自分は食べる事も無く帰られた。

 私は『一緒に夕食を食べていかれませんか?』と誘ってはみましたが、生憎勇紀様はご家族の方との先約があるそうで。

 夕食を共に出来ないのは残念でしたが。

 

 「エドガー、この料理の名前を勇紀様は何て言ってたかしら?」

 

 「『トムヤムクン』もしくは『トムヤンクン』と言うそうですよお嬢様」

 

 「そう……美味しいわね」

 

 「ええ、このような料理が存在するとは……勇紀様の出身世界『地球』の食文化は実に奥深い」

 

 何度もスプーンを口に運んではうんうん、と首を縦に振って味を噛み締めてるエドガー。

 スープから漂う香りも、辛味と酸味が入り混じった味も実に美味ですわ。

 

 「お嬢様、今日は早くお休みになられてくださいね」

 

 エドガーが唐突にそんな事を言って来たので私は聞き返しました。

 

 「何故ですの?」

 

 「お嬢様が『風邪を引かれて体調を崩してるかもしれない』と勇紀様より言われておりましたので」

 

 「もう……勇紀様にも仰ったけど私は大丈夫ですわよ」

 

 本当に風邪なんて引いてませんのに。

 あ、でも私の事を心配して下さってるのは凄く嬉しいですわ。

 

 「(しかし……)」

 

 私は視線を窓の外に移します。

 あの時感じた悪寒……首筋に鋭利な刃物を添えられたかのような感覚は一体何だったのかしら?

 夜の暗闇に覆われた外景を見ながら私はそんな事を考えていました………。

 

 

 

 〜〜ヴィクトーリア視点終了〜〜

 

 「ユウキ〜、こっちですこっち〜」

 

 ダールグリュン邸でエドガー君に料理の師事を終えてすぐに俺はユーリと待ち合わせの場所にやってきた。

 ふにゃっと表情を崩し、笑顔で手を振りながら俺の名を呼ぶユーリを見て俺は微笑ましくなる。

 

 「早いなユーリ。まだ時間に余裕はあるっつーのに」

 

 「そうですか?」

 

 そうだよ。まだ本来の待ち合わせ時間の15分程前だ。

 

 「でも主役を待たせる訳にはいきませんよ。何たって今日はユウキの昇進祝いなんですから」

 

 ユーリがそう言う。

 そうなのだ…今日の晩ご飯は俺の昇進祝いと言う事で現在ミッドに住んでいるシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリがわざわざクラナガンの高級料亭に予約を取ってくれたのだ。

 で、待ち合わせ場所にはユーリが迎えに来てくれる手筈になっていた。

 他の3人は既に料亭にいるのかも。

 

 「今日は私達の奢りですからユウキはお金の事を気にせず何でも食べて下さいね」

 

 「ありがとう。けど俺よりレヴィの方が色々注文しそうだけど」

 

 ガツガツと食べまくる我が家のアホッ娘の姿が脳裏に浮かぶ。

 ユーリもその姿を想像したのか『そうですね』と言って苦笑していた。

 

 「ま、祝って貰えるのは嬉しいから今日は素直に奢られるとするかな」

 

 「はい!!一杯奢られちゃって下さい!!」

 

 「けど帰ったらまた祝って貰う羽目になるんだろうなぁ」

 

 「クス。皆に祝って貰えるのは良い事だと思いますよ」

 

 「メガーヌさんが腕を振るって料理に精を出してくれるだろうけど、多分沙砂が食いまくるだろうしな」

 

 レヴィに変わって新たな大食いキャラとなるか?

 

 「ですねー…………って、え?」

 

 「ん?」

 

 どうしたんだユーリは?

 

 「……あの、ユウキ。沙砂って…誰ですか?」

 

 「ああ、そういやユーリ達にゃまだ話してなかったな。今家には沙砂と明夏羽っていう2人……じゃなくて2匹か?とにかく妖も住んで居てな」

 

 「妖……って、お、お化けですか!?」

 

 妖と聞いてプルプルと震え、怯えた表情を浮かべるユーリ。

 おいおい……

 

 「妖と幽霊は分類上は別物だからな」

 

 てか怯える程のものか?第一君、元は『砕け得ぬ闇』でしょうが。エグザミアだってあるんだし、自衛出来るぐらいの強さはあるでしょうが。

 

 「お、お化けとは違うんですか?」

 

 やや涙目のユーリがプルプルと震わせながら尋ねてくる。

 何このロリ巨乳ちゃん……。仕草が小動物過ぎて可愛過ぎるんですけど。

 

 「違うから安心しなさい」

 

 それからユーリには地球での現状を説明して……料亭内でもシュテル達に説明する事となった。

 何て言うかシュテル達がミッドに移住してから今まで地球での事をほとんど話題にしなかったというのも問題ではあったんでしょうかね。

 料亭内では4人に尋問され、正に取り調べを受けてる容疑者の気分だったよ………。

 

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 〜〜あとがき〜〜

 

 『ハーレム要員にさ……ヤンデレ担当がいたって良いじゃない』と思う今日この頃。

 そんな個人的な理由で未来のおっぱい剣士は『ミカやん』ではなく『ミカ病ん』として登場させるつもりです。ミカヤファンの方はご了承ください。

 ただ現状の病み度はまだそこまで高くないです。

 これがガチレベルなら部屋中が勇紀の写真やらポスターでビッシリですし、インターミドルなんかに拘らず((雌豚|ヴィクター))や他のハーレム要員にも斬りかかりに行きますから。

 てかこのまま『ミカ病ん』がガチレベルに近付いていくと抜剣ボクッ娘の勝てる未来が全く見えない……。

 それと新しい転生者の存在を示唆しましたが、この小説で今後登場させる事は無いです。今回の転生者は戦闘能力とか貰ってない設定のキャラですので。

 ………ヤンデレ担当要員はミカヤ以外にも採用すべきですかねぇ?

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
勇希の昇進、昇給の上限が定年前に来るな(二十前に将官入=基本給+役職上限が来てしまい人事担当者の頭痛の種)。(道産子国士)
ヤンデレは一人でいいと思います。(nobu)
ガチのヤンデレはそういえばいませんでしたね。もっとも、一人で十分ですが・・・増えません・・・・・・よね?(海平?)
ヤンデレは一人で十分です。むしろミカヤはこのままで、悪化しないで欲しいです。(俊)
ヤンデレは用法と容量を守った上で正しく使って下さい、なを守っていただけない場合・・・・・・・・・・(ガアット)
…みんな一歩間違えばヤンデレって感じだし間違っちゃったのは一人で十分かと。ドロドロしたのはこの話には似つかわしくないと思うし。…この話、勇紀にとって最大の脅威ってヒロインたちなんじゃ…。(プロフェッサー.Y)
ヤンデレは人によって好き嫌いありますけど、まあ(わく惑星)
ヤンデレは1人でいいと思います。多分(ohatiyo)
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魔法少女リリカルなのは 多重クロス ハーレム 原作ブレイク オリ主 転生者 恋愛 

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