真恋姫無双〜年老いて萌将伝〜 六
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怒号とともに白刃が煌く。

幕舎の机が断ち切られた。

 

「狼狽えるな!

 相手が呂奉先だからといって勝てぬ戦を挑まぬのが孫呉の精鋭だと心得よ!

 以後、過去の幻影に囚われ現実を見据えぬ愚か者は、この机と同じ末路になると思え!」

 

普段は見せない蓮華のその態度に、場の全員が息を呑んだ。

ただ一人、孫呉の陣内で平常心を保っていた蓮華は全員を見据え続ける。

 

「冥琳、亞莎!」

「は、はい!」

「陣を一旦下げ、迫る恋に備えよ!

 北郷を想定した策を全て放棄し、如何なる敵をも通さぬ陣をはれ!」

「御意!」

「思春、明命も持ち場につき、力をふるう準備をせよ!

 この演習、規則の上で二人の力が必要な時が来る!」

「御意!」

「姉様!」

「は、はい!」

「恋を止められるは、この中では姉様だけです。

 お願い、できますね?」

「…わかったわよ、そんな顔で睨まないで。」

母様を思い出すわ…

と、口には出さないが、誰もがその姿に孫呉初代の姿をみた。

芝居がかったようなその怒号は孫呉の陣を一気に締め上げる。

その激情が、勢いを与える。

戦いは、遂に正念場を迎える…。

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〜〜〜

 

「王道と、奇策。両方に備え、準備せよ!」

 

蓮華の指揮は、時を刻むごとに鋭さを増していく。

その変化は、雪蓮にとっても、冥琳にとっても嬉しい誤算であった。

 

「まさか、こんな収穫があるとはね。」

「あぁ、お陰で天の遣いとやらよりも、良い物が見れたかもしれん。」

 

小声でそう話す二人の顔は喜びと期待があふれていた。

次代の王は我が妹に。

そう言って憚らなかったのは雪蓮であり、冥琳に関してもその器の大きさは感じるものがあった。

しかし、いままで遂にその片鱗を見せることもなくいた蓮華であったが…

 

「ここにきて、こうもあっけなく化けるとはね。人の生ってわからないものね。」

「あぁ、まったくもって。

 さぁ、雪蓮。無駄口を叩いていては怒られてしまうぞ。我らが新しき王の初陣、なんとしても負けられぬ。」

「わかってるわよ。それに私の相手はあの恋よ?腕がなるってもんじゃない?」

「そうだな。ではそちらは任せた。私はこれから献策に参るとしよう。」

「そうね。じゃあ、またあとで!」

 

嬉しさを体いっぱいで表現する彼女を見るのは、なんて久しぶりなのだろうか。

こうあっては、もはや負けるほうが難しいのではないか。

その表情に笑みを、しかし瞳に真紅の炎を湛えて鉄火場に向かわんとする雪蓮をみて、冥琳は思った。

しかし。

 

そんな彼女に、ふっと。

 

陣内に風が吹き抜ける。

 

冥琳が呼び止めた。

 

「なぁ、雪蓮。一つだけ聞いておきたい。」

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〜〜〜

 

 

開始から愚直に、まっすぐと進軍をしてきた恋のもとに追いついてきたやつは、セキトがいたずらをする時のような表情で、声を弾ませる。

 

「奥義だ、奥義。必殺奥義!」

 

てっきりそのまま直進して『おおはしゃぎ』するものだと思っていた恋の頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでいるのが見て取れるようだったが、そんなことはどこ吹く風。

せっせと何かの準備をしているそいつは、ただただあの時とかわらない真っ直ぐな眼をしている。

 

「月から許可がおりたぞ!

 なんにせよ、これ以上長引いたってしょうがない!

 相手も本腰入れてくるようだから、こっから先は速さの勝負だ!」

 

やけに楽しそうなその姿を見るのは、恋にとっては気分の悪いものではないが、この人がこういう顔をする時というのは決まって何か良からぬことを企んでいる時だと知っている。

今日は働かないと言っていたこの人がここにいるのであれば、それはおそらくは誰かの命令で動いているのだろうけど、命令を受けてなおこの人の楽しそうな顔を見ていると、絶対にあとで怒られることをしようとしていることは明らかだった。

でも、止めない。

恋はそれをとめられない。

だってそんな表情をするときのこの人は…

 

「………今日はどんな楽しいことするの?」

 

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萌将伝 真・恋姫無双 恋姫†無双 恋姫 

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