閃次元ゲイムネプテューヌFlash 少年の奪還
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少年は生まれるべきではなかった、故に信仰が毒となって蝕んだ。

少年は生まれるべきではなかった、故に世界は呪った。

少年は生まれるべきではなかった、故に少年が生きれば生きるほど世界は乱れ、捻じれ、壊れていった・・・・・

 

救いを求める声に応え、世界が生み出した((奇跡|ソレ))は、人々を救った。

人々は((奇跡|ソレ))を慕い、崇め、称え、敬った。

人々を救うために生まれた筈の((奇跡|ソレ))は、己に感謝する人々を見て、「自分は人間を統べるべき存在だ」と錯覚した。

そして世界のシステムでしかなかった((奇跡|ソレ))は、あろう事か世界を書き換えた。

人々の想いにより生まれた存在が、神として人々を統べる世界に、人々が己の((夢想|ユメ))に縋る世界に・・・・・

もしかしたら少年を含め、世界と神に敵と見なされた者達は、((奇跡|ソレ))に変えられる前の世界の((意思|コエ))が生み出したものなのかもしれない。

 

「くそっ!どうなってんだこいつは!」

白の女神ブランはあせっていた、唯の人間であるユウザに何故自分達の攻撃が当たらないのかと。

女神化を果たした守護女神とその候補生は、その圧倒的なパワーでいかなる敵を討ち倒してきた。

そんな女神達の攻撃が、どういうわけか一度も当たらない。

風になびく柳のように、つむじ風に舞う落ち葉のように、柔らかに且つ繊細な動きで女神達の猛攻を捌き、いなし、かわしていった。

不意打ちの狙撃と魔法にもすばやく感知して、軽々とした動きでその全てを避けて逃げ回る。

そして外れた弾は電柱を倒し、外れた魔法でビルが凍りつき、戦いが激しくなればなるほどに街が破壊されていった。

「なんで当たんないのよ!」

「狙いもタイミングも完璧なのに・・・どうして・・・・・!」

「落ち着きなさい!こちらは8人!敵はたった1人!確実に追い詰めている筈ですわ・・・・!」

候補生達にそう言って緑の女神ベールが槍を呼び出して飛ばすが、貫けたのは道路にあったトラックだった。

「ちょこまかと・・・・「ノワール!上!」・・・っ!」

紫の女神ネプテューヌに声をかけられて上から来るユウザに気づいた黒の女神ノワールは、持っている剣で咄嗟に奇襲を防いだ。

そしてその後もビルの隙間に逃げていき、紫の候補生ネプギアは逃がさないために追跡した。

街中なので立場的な意味で身動きがあまり取れない女神は、たった一人の人間に手こずっている事へのいらだちも相まってう動きが荒くなっていた。

対してユウザは敵地なので遠慮のかけらも無く、且つ隠れたり身を護ったり足場に使ったりするのにちょうどいい建物があちらこちらにあるのでもう止まらなかった。

「くっ・・・・上手く建物を遮蔽物にしているから援護が・・・・・!」

「それを差し引いても素早いわね・・・・これじゃあ捕らえようが無い。」

「かといって迂闊に離れたら狙われるし・・・・・」

「だったら一発ぶちかましてやるよ・・・・・!」

ブランの体が輝き始め、ネクストシステムによって得た新たな姿へと変わった。そして巨大な銃型のキャノン砲を召還した。

そしてキャノン砲に起動キーを差し込み、発射準備を開始させた。

「待ちなさいブラン!いくらなんでも街を破壊するなんて・・・・!」

「戦っている間に出した危険種侵入警報で、住民は全員地下シェルターで避難済みだ。それに最小限には抑えるつもりだ・・・・・ネプギア、奴の逃走ルートを分析してデータを送れ。」

通信によるブランの指示から数秒後、地図と逃走ルートのデータが送られた。

「流石の優等生だぜ・・・・うちに欲しいぐらいだなっ!」

そう言ってブランはユウザが通ると思われる地点にキャノン砲を向けて発射すると、ドンピシャのタイミングでユウザが出てきた。

その時ユウザは、源がやっていた技と言葉を走馬灯が走るかのように思い出し、剣を構えた。

『川の流れは大岩や丘のような動かぬ物に阻まれることで二手に分かれる。その原理を利用して、いかに強力な流動的な力であろうとも、空に強固たる斬り痕を残せば・・・・』

ユウザは

ブランは直撃を確信した。「どんなにちょこまか動けてもかわせまい」と。だが・・・・・

「なっ!?」

信じられないことが起きた・・・・キャノン砲から放たれたレーザーが二つに割れ、予想だにしない所へ飛んでいってしまった。

ユウザはレーザーが直撃する瞬間、高速の斬撃で空間に斬り痕を残す事で、レーザーの流れを岩に阻まれた川のように真っ二つに分けたのだ。

「そんなばかな」と言わんばかりに、ブランは開いた口が塞がらなかった。それとは対照的にレーザーをしのいだユウザは気配を察知してすぐさま上を向くと、ネクストシステムを使ったノワールと黒の候補生のユニが居た。

「行くわよユニ!一気に決める!」

「ええ!ここで終わらせる!」

ユニのライフルから乱射されるレーザーとそれに合わせて四つの剣を呼び出し引き連れたノワールが襲い掛かる・・・が、その時のユウザはある人狼の言葉を思い出す。

『たとえ飛んでいても落ちてきてもさ、実態ならそれを踏み越えて跳ぶ事はできるぜ?』

そう言って実際に、降りかかる瓦礫や鉄塔、岩などを足場に上に登っていた人狼は、軽やかにやってのけていた。

その動きの一瞬一瞬を目に焼き付けてはいたが、足裏の構造的にあんなソフトタッチは再現不能だ。

ならどうやって空中にある物体を蹴って跳べば良いのか。

一瞬だけ後ろから着いてすばやく前で蹴れば・・・・駄目だ、重心移動は一瞬だろうと遅すぎる。

滑らせるように・・・・跳ぶ時の足場が平面とは限らない・・・・・ならばいっそ思い切り蹴ろう、ただし蹴るときは限りなくつま先で!

「なっ!?」

「飛ばした私の剣を・・・・足場に!?」

普段ならこんなに記憶がフラッシュバックしないだろう、一瞬の内にここまで思考できないだろう。

だが今のユウザには8人の女神という圧倒的過ぎる脅威を相手にしているという普通なら死ぬような状況に立っているが為に走馬灯が走っていた。

そしてその心には父を殺しただけでなく、その屍を弄んで来た奴らに対する怒りと憎悪が滾っていた。

そこから生じた殺意が走馬灯を走らせ意識を持っていかれそうなほどに加速した思考を制御し、体を動かしていた。

一つの思考、感情で体を動かし慣れていたユウザの体は、頭が走馬灯を走らせて普通なら体を動かす分まで回されて動けない状況でも問題なく動け、リミッターも簡単に外せた。

更に身に着けている簡易式人用プロセッサユニット、【((継意|けいい))】の強化も相まって、女神に及ばずとも迫る身体能力を持っていた。

そして動きや業を真似るというユウザの才能、【((技能模倣|スキルトレース))】が、欠けた心が戻った影響で昇華した。

これまで動きを真似る事に止まっていた所を自分に合ったものにしようと思い、考え、編み出してものにする所にまで至った。

これによって結果的にオリジナルの動きを超える事、オリジナルの業を凌駕する事を可能にした。

それが進化した((技能模倣|スキルトレース))・・・・「本物に近づける」から「本物を超える」に考えをシフトした事で発言したユウザだけの才能、名づけるならば、【((技能模倣|スキルトレース))・((我流転生|パーフェクトアレンジ))】といったところだろう。

「え・・・・・」

「え・・・ ・・・?」

これまで女神達は、その圧倒的な力でモンスターを殲滅して来た。犯罪神のような世界の脅威にも、想いの力を以って打ち倒した。

だがもし・・・・力には力を以って制してきた女神に多少なりとも対抗できる力を持ち、且つ精錬された業を持っている者がいるならば・・・・

「どう・・・・・    して・・・・・」

ソイツならば或いは、女神に勝る事ができるのかもしれない・・・・そんなあり得ないはずのたとえ話は今、現実となった。

「・・・・・うそ」

「ノワールウウウウウウウウウウウウ!!!」

女神達は信じられなかった、女神の、しかも更なる力を得て進化したノワールが、人間によって真っ二つにされるなんて。

そして真っ二つにされたノワールの肢体は光の粒となって、彼女を斬った剣に吸い込まれていった。

「・・・あのお姉ちゃんが・・・・おねえちゃんが・・・・・」

自分の姉が薪割りのように切り殺された光景を一番近くで見ていたユニは、溢れる感情のままに、激情のままに銃口を向けて

「よくもおおおおおおおおおおおお!!!」

((姉|ノワール))斬った直後で空中にいる((仇|ユウザ))に渾身の((一撃|レーザー))を放った。

ユウザはその一撃を振り向きざまに見て直ぐに大きく両腕をぶん回し、その勢いで身体を回転させて遠心力と共に剣でレーザーを迎え撃ち、弾き飛ばされる事で直撃を避けた。

弾き飛ばされた所から体勢を立て直してビルの壁に着地したユウザはそのまま走り出し、逃がすまいと弾を撃ちまくるユニの((猛攻|ヤケクソ))を駆け抜ける

「てんめええええええええええ!」

そこにブランが叩き付けるが、ユウザは下に壁を蹴ってそれをかわし、重力に身を委ねるように落ちていく。

それを狙ってネプギアは銃剣のエネルギー弾を連射して、ネクスト化したベールは無数の槍を呼び出し飛ばす。そこに上からのユニの乱射も加わって濃厚な弾幕となってユウザを襲った。

投剣も届かない距離に自分を追いやってしまったユウザは剣で自分に来る弾を弾くしかなくなったが、弾き切れずに逃したものが掠る。

そのまま押し切ろうとした女神達だったが、突然ユウザの姿が視界から消えてしまった。

女神達はビルの中に入ったのは感づいていたが、弾幕が濃すぎて何時の間に入ったのか解らなかった。

「けっ、袋の鼠とはこの事だな。わざわざ自分から逃げ場を無くすなんて・・・・・とんだマヌケヤローだぜ」

ブランが再びキャノン砲を呼び出し発射態勢に入る。

そこに双子の白の候補生のロムとラムが、魔法でビルを丸ごと凍らせた。例え地下にいようが屋上にいようが、普通ならこれで凍死である。

「これで、逃げられない・・・・!」

「お姉ちゃん!やっちゃって!」

「良くやったぜお前ら・・・・言われなくとも最大火力の取っておきだ!!!」

ブランは前回よりも出力を上げ、更にこれで終わらせる気でエネルギーを圧縮して、本来レーザーを放つものでエネルギー((炸裂弾|グレネード))を発射した。

着弾した瞬間に大爆発を起こし、ビルを丸ごと覆い、天まで届く程のエネルギーの柱が立った。

「・・・・・フン、手こずらせやがって・・・・おい、もう泣くな。あーその・・・・お前の姉ちゃんならこんな時「ブランさん!後ろ!」え――――」

ブランが後ろを振り向き、不器用ながらもユニを励まそうとしたその時・・・・・ユウザが背後に現れ、ブランの右腕を斬り飛ばした。

「な――――ッ!」

驚きながらも左腕で斧を振り回し、それを跳びかわして距離を取ったその時、再びキャノン砲を発射しようとした。

「テメェッ!何時からそこに――」

その時、ユウザの背後から何かが飛んでキャノン砲にの砲門に刺さって暴発させ、爆風が辺りを覆った。

爆心地の直ぐ近くに居たブランは斧で防御して踏みとどまった・・・だが、それは悪手だった。

爆風に構わずユウザがブランに突っ込み、左腕、両脚を素早く斬り落とした。四肢を一瞬で失ったブランは仰向けの状態で倒れ、状況も理解できない内に、ノワールを殺した剣で胸を貫かれた。

「がッ・・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

ユウザが剣を突き刺したまま腹部の下までを切り開くと、ブランは悲痛な叫びを上げて、ノワールと同様に光の粒子となって剣に吸い込まれた。

爆風がおさまったときにはもうブランの姿は無く、妹の双子は目撃していないと言う僅かな希望を頼りに、もういない姉を呼んで探し回った・・・が、もう涙声だった。

そしてユニは怒りで煮えたぎっていた。ブランのキャノン砲が暴発した時に飛んだものをはっきり見えていた。

そしてユウザが【それ】を意図的に飛ばした事を確信していた。なぜなら・・・・・

ユニが見えた【それ】とは、ユウザに殺されたノワールが具現化させてユウザに飛ばしていた剣だったから。

「なんで・・・・あの技はお姉ちゃんの技なのに、何であんたが使えているのよ!!」

ユニがユウザを撃とうとした瞬間、ノワールが呼び出して使っていた剣の二本目が現れてライフルに刺さり、暴発させた。

その時生じた爆発を防いだ直後のユニの目の前に、ユウザはブランが使っていたキャノン砲の砲門を呼び出し、突きつけ、至近距離で放った。

ユニは避ける間も防御する間もなく直撃を受けて吹き飛ばされた。

「ユニちゃん!」

吹き飛ばされたユニは、女神化が解けて少女の姿になり、力なく地面にたたきつけられるところをネプギアに受け止められた。

ネプギアは揺すっても声をかけても返事をしない事を確認すると、回復魔法でユニを治した。

そしてユウザがキャノン砲を使っているところを見た双子は、その時、自分達の姉が殺されてもう居ないことを理解した。

「よくも・・・・よくもお姉ちゃ――――ぅ」

「ラムちゃ――――ぁ」

双子の片割れのラムはユウザに魔法を使おうとしたその時、背後から現れた三本目の剣に刺されて倒れた。

その続けさまにロムも四本目の剣に刺され、二人ともユニと同じように女神化が解けて、少女の姿となって倒れた。

「いい加減になさいっ!」

「やああああああああああっ!!」

「ラムちゃん!ロムちゃん!」

ネプテューヌとベールが二人がかりでユウザの相手をする間、ネプギアはユニを抱きかかえながら、急いで二人の元へ向かう。

阿吽の呼吸で繰り出されるコンビネーションは完璧で、ユウザ自身もこれが女神の本来の実力と言う事を理解した。

人相手だと言う慢心も油断も、予想外な出来事と仲間の死による焦りと乱れも無い連携攻撃に、これまでの事が嘘の様にユウザは押されていった。

これはまずいとユウザが距離を取ると、ユウザの四方八方から無数の槍が現れ取り囲んだ。

「この無数の槍で身体は愚か、魂すら残さず・・・・・消え去りなさい!」

ベールがそう言って指を鳴らすと、槍が一斉にユウザに向かって飛んで行った。

ユウザはブランの斧を呼び出して地面に叩き付け、衝撃波を起こして横周囲の槍を吹き飛ばした。

更にそこからノワールの剣を呼び出し、残りの槍も全て叩き落した。

自分の中で最大の攻撃を無傷で捌かれたベールは酷く動揺し、その隙を突かれて距離を詰められ切り込まれたが、咄嗟の判断で急速後退した為、絶命は免れた。

危ないところだった、あと少しで死ぬところだった、だが今ので完全に速さを、リズムを、動きを見切ったとベールは確信したように、絶え間なく槍を呼び出し飛ばし続ける。

「ふぅ・・・・所詮は不意打ちしか能の無い、しかもそれしか頭に無い・・・・解ってしまえば何ともあっけないですわ」

「ベール!」

「ご安心を、敵は手段こそ多彩ですがその目的は単純です、こうやって隙も無く攻撃を加えれば「違う!貴方、胸が!」胸・・・?わたくしのこの豊かな胸に何か・・・・え」

余裕満々で自分の胸に目をやると、ある事に気づいた・・・・・・【胸がない】、正しくは【ある筈の乳が無い】。

咄嗟の後退によって命は助かった、だが自分の命の次に大事なものであろう自慢の巨乳は、いつの間にか切り落とされていた・・・・後退の瞬間、気づかぬ間にもう一歩踏み込まれていたのだ。

それが周囲に発覚した瞬間、それに【今更】気づいたベールの攻撃に感情が入った。

「・・・・よくも!!!!」

一つは自分のアイデンティティを奪われたことへの激情、ぞしてもう一つはこれまで感じたことが無かった・・・・・死の恐怖。

対してユウザは顔色一つ変えることなく、堅実に、確実に、迅速に、ベールとの距離を詰めていた・・・・・・・この時、ネプテューヌが攻撃をに一切参加していない事に疑問に思わずに。

どんなに槍を飛ばしても、どんなに離れても、段々と近付き、ついにユウザが目の前まで来た瞬間、ベールは自分の最後を悟ったような顔をした・・・・と見せかけて微笑んだ。

それは相手への賞賛でも近づいてくる死に発狂したわけでもない・・・・その笑みは勝利の確信だった。

「・・・・・・((起死回生の機会|おいしいところ))に目ざとい貴方なら、かならずここで来ると信じてましたわ・・・・ネプテューヌ!」

ユウザが突き刺そうと剣を逆手持ちして振り上げたその時、ネプテューヌは既に、溜めに溜め込んだ力を込めて刀を振り切っていた。

全力を込めたネプテューヌの居合い抜きは、対称を概念諸共切り捨て、消してしまうという強力な一撃は、どんなに反応速度が良くとも手遅れだった。

「・・・・・・え」

「・・・・・・・・かはっ」

だが、最速最強であったその一撃はノールックでかわされただけでなく、逆にネプテューヌのほうが剣で貫かれていた。

なんてことは無い・・・・【ユウザもこの場面で来ると信じていた】のだ。

洗脳されている間にネプテューヌの護衛を任されていたのは、もし裏切っても【一番仕事をしないから対策を取られにくいから】だった。

だがユウザはずっと見てきた・・・・【仕事をしていない間、国の皆を護るために戦っていた】事を。

そんな【普段は駄目でもやるときはやる】性格を十分な位に知っていたからこそ、((最後の希望|ジョーカーカード))にも対応できた。

「・・・・・・・・・・ッア」

ネプテューヌが剣に吸収され、完全に取り込まれたその時、ユウザの膝が崩れた。

「はーっ、はーっ、はーっ・・・・・」

息が荒く、立ち上がろうとするも何度も崩れ、これまでと打って変わって疲労を露にした。その目は血眼で血の涙を流し、鼻からは滝のように血が流れていた。

・・・・驚くことに、ユニットを装着してから今に至るまで、ユウザは呼吸をしていなかった・・・というより呼吸する事を忘れていた。

それほどまでに集中していたのか、それほどまでに女神を憎んでいたのか、或いはその両方か、他にも理由があるのか・・・・いずれにせよ、立っているのがやっとだった。

その顔を初めて見たベールは、恐怖のあまりその場でへたれ込み、退け腰になっていた。

「何ですの・・・・」

ユウザはそれを追うように、朦朧とした意識で近づく。

「何なんですの・・・・・」

何度足を踏み外そうと、転ぼうと、立ち上がって、近づく。

「貴方は一体何なんですのおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

「・・・・・人間だよ」

ベールの問いにユウザは((即答|マジレス))した。違う、そうじゃない。ベールはユウザを人間と思いたくなかった。

人の姿をした怪物、人外・・・・・化け物に見えていたそれを人間とは認められなかった。

「僕は人間だよ・・・・・((女神|おまえたち))に家族を殺された・・・・・((女神|おまえたち))に大切なものを奪われた・・・・・」

「・・・・・・・・・ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!」

恐怖のあまり過呼吸を起こしているベールにじりじりと近づき、ユウザは剣を振り上げた。

「今度は僕が・・・・僕が・・・・((女神|おまえたち))から・・・・((世界|おまえたち))から・・・・・・!!!」

「ヒッ・・・・・・・・!」

「やああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

振り下ろされようとしたその時、その時だった・・・・仲間の治療で動けなかったネプギアが、姉の死を指を咥えて見ることでしか出来なかったネプギアが、今、満を持して、殺されそうになっている((仲間|ベール))を助けるために突進した。

受け止めて防ぐ余力もかわす余力もないユウザは、あえて剣の腹で防ぐ構えをした、剣は無理が災いしたのか結構昔に作られたからかヒビが入っており、ネプギアもそれを狙うように軌道修正をしつつ更に加速した。

そして案の定ユウザの剣は砕け散ったが、ユウザはその勢いに引っ張られる形で自分の体を回転させる事で闘牛をいなすマタドールのように回避した。

そこから最後の力を振り絞って踏み込み、残っていた剣の破片ですれ違い様にネプギアの左目を切り払った。

「((世界|おまえたち))から・・・・((インターセンター|みんな))を護る・・・・・!」

破片に切られた目を抑えるネプギアの背後で、力を使い果たしたユウザはそのまま倒れた。

<そして夜も明けて・・・・>

「・・・・・・ん」

目が覚めるとそこは、どこか見慣れた場所だった。

天井、ベッド、布団に壁・・・あらゆるところが全体的に白いこの場所は・・・・・

「病室・・・・?」

窓の風景を除けば、そこは見慣れた場所だった。

実は肩にかけるより足で持つのが主流のパーピーの手紙配達、ケンタウロスの荷物配達・・・・・

飛龍に乗って世界一周を目論む為に訓練中の冒険者に、一箇所に憑依して猥談する精霊と幽霊・・・・

「夢?「残念ながらそうじゃねぇんだよなこれが「どこが残念なんだ、そこは心配しなくともだろ」るっせぇな冗談が通じぬ愚鈍野郎が」・・・・チータとデバッカ・・・・・?」

「ん?そだけど?もしかして覚えてる?いやはやあん時ゃ大変だったぜ?危篤状態のお前を助け出すの」

「突然ワーカーの遺体がこちらに現れたと聞いてな・・・・どうやら本当に思い出したようだな。」

「ああ・・・・ありがとう、二人とも」

ユウザは段々と思い出してきた。

ネプギアの左目を切って倒れた後、地を這ってでも帰ろうとしたユウザだったが、騒ぎを聞きつけて駆けつけた兵士達に取り囲まれた。

絶体絶命の危機に陥ったユウザだったが、ワーカーの遺体の帰還の騒ぎをインターセンターで聞きつけもしやと思って急行したチータとデバッカが駆けつけてくれた事で難を逃れた。

しかも珍しく幸運なことに、ベールはユウザが刻んだトラウマで人間恐怖症となっていたのか、駆けつけた兵士を見て暴れ出し、それを負傷中のネプギアが抑えていた事だった。

それによってチータが囮、デバッカが救出と役割分担をしても事足りるようになっていた。

今朝のニュースによると、どうやら今回の出来事が元で信仰が下がってしまっているようだ・・・・だがその代償として、ユウザの寿命が劇的に縮んでしまっていた。

後の医者の宣告によると、最高でも余命三年らしい・・・・つまりユウザは成人するまでは生きられないと言うことになる・・・・まあ女神の力を無理やり引き出したりもすれば当然かと、寧ろまだ生きれてラッキーと思うユウザであった。

だが義理の祖父や壁走りの師匠などからは「お前と言う奴はもっと先考えて行動しろ」とか「命を粗末にするな」とかものすごく怒られた。

ユウザは申し訳なさそうに、照れくさそうに謝る、そして・・・・・・・

「まあえっとその・・・・・今更だけど・・・ただいま」

そう言うとお約束のように、「おかえり」と返され、急に照れくさくなったユウザであった。

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((担徒有座|にないとゆうざ))

グレイヴに拉致られ、イストワールによって洗脳され、ユウザ・リーオンとして数ヶ月生きていたが、リンク・ワーカーとの会話によって、心の欠けた部分と失っていた記憶を全て取り戻した。ついでに幼さも取り戻し、記憶を全て保持したまま精神年齢が3歳の状態に。

3歳の時に【再教育】の披験体となっており、それを含めたあらゆる仕打ちへの怒りと憎しみを女神にぶつける。

感情を取り戻したことにより、【((技能模倣|スキルトレース))】が【((技能模倣|スキルトレース))・((我流転生|パーフェクトアレンジ))】に変化した。

そして一人称が【俺】から【僕】になり、これまで無かった目のハイライトも取り戻した。

けれど彼はまた女神と戦うだろう・・・・もう向こうが奪えなくなるその時まで

 

((継意|けいい))

人用プロセッサユニットの簡易版であり、骨格を模した装甲とコート、そして髑髏のヘルメットが特徴的な((鎧骨|がいこつ))の身体強化の出力と反動を抑え、軽量化したようなもの。

見た目は西洋の軽装備っぽい。軽装で動きを邪魔しない作りになっている。

後におやっさんの手で鎧骨(グレイヴ仕様)と合体し、【((鎧骨|がいこつ))・((継|けい))】として生まれ変わる。

その時の特徴は黒い鎧骨の装甲にライダースーツで、能力開放時はエネルギーが放出されて青いマフラーが形成され、翼として使うことで空を飛ぶ事も可能。

 

謎の剣

洗脳されていたユウザが遺跡から良さ気な気がしたので拾って以降愛用している剣。

その正体は女神の命を喰らう度に力を増すと言われる魔剣ゲハバーン。

作られた理由は諸説様々で、想いの力じゃ足りなかったとか四国が団結するなんて稀だったからとか色々ある

ユウザはそれに自分の魔力を流し込み続けて無理やり同調させることで、偶然にも喰らった女神の力を引き出すという荒業をやってのける。

ただしその代償は高くつき、余命が3年になった原因でもある。ついでに剣そのものもボロボロになって最終的に砕けたが、技術局のおやっさんの手で直される事に・・・・手元に戻る頃には多分力の引き出しも仕様になってるだろう。

改修後の名前は【ゲハバーン・カイ】で、カイには開放、回帰、改良等、いろんな意味が含まれている。

因みに女神の変わりに魔力を備蓄することが出来るという隠された機能があるが、それを知るのは同調したその時だろう。

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アンチ、ヘイト、注意
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超次元ゲイムネプテューヌ

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