孤高の御遣い 北郷流無刀術阿修羅伝 君の真名を呼ぶ 23
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百合「ひいいいいいいい!!!!趨凜先生ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!!!」

 

華佗「まさか、我が五斗米道が開祖、神農が管理者だったとはな・・・・・」

 

雪蓮「そう、一刀とは入れ違いになってしまったのね・・・・・」

 

水鏡女学院の件から一日経ち、天角に戻って来た一同はお互いの情報を交換していた

 

星「まさか、三人の私塾に主が在籍していたとはな・・・・・」

 

朱里「はい、見落としていたのは、こちらの落度です・・・・・」

 

雛里「申し訳ありません・・・・・」

 

雫「面目次第もありません・・・・・」

 

祭「この年になってあそこまで怒られると、かなり凹むのう・・・・・」

 

桔梗「まったくだ・・・・・」

 

紫苑「親として、璃々に顔見せできないわ・・・・・」

 

思春「華佗、神農の言っていた事は本当なのか?」

 

華佗「ああ、本当だ・・・・・五斗米道は、その氣の強力さゆえに大昔では戦で人を滅却する為の道具として扱われていたらしい、それを嘆いた歴代の継承者達がそれを戒め、何か他の事に役立てられはしないかと験算を重ねてきた、そして辿り着いたのが、俺が今使っている五斗米道の形だ・・・・・」

 

柊「まさか、五斗米道にそんな過去があったなんて・・・・・」

 

雛罌粟「僕達も使う時は注意しないとね・・・・・」

 

桃香「そんな、華佗さんと雷刀さんが戦ったなんて・・・・・」

 

真桜「ホンマや、最初は別の誰かやと思っとったんやけど、ホンマに華佗はんやったなんてな・・・・・」

 

華佗「すまない、雷刀の実力は知っていたつもりだったんだが・・・・・流石は北郷流だ、戦闘では向こうの方が一枚上手だった・・・・・」

 

稟「しかし、雷刀殿も何を考えているのでしょうか?」

 

風「はい〜、一流の風でも裏のお兄さんの考えが読めません〜」

 

貂蝉「まさか、前から感じていた存在が、師匠のご相方だなんて・・・・・」

 

卑弥呼「むぅ、神農め、何を考えておるのだ?」

 

管輅「卑弥呼も分からないの?神農様のお心が」

 

卑弥呼「うむ、あ奴は私と別れて以来、外史の表舞台に出る事は無かったのに、どういう風の吹き回しなのかのう?」

 

秋蘭「別れただと?卑弥呼とその神農は旧知の間柄という事か?」

 

卑弥呼「うむ、かつての春秋戦国時代の外史にて私は神農と共に、始皇帝に天下を取らせ、その外史を終焉に導いた・・・・・私と神農は派手に暴れ回り、その時ほど私はあ奴の力を見せつけられたことは無い、そしてその功績を買われあ奴は管理者の長の一人となったのだ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

思いもしない強敵の出現に、一同はこれからの先行きに不安を隠せない

 

卑弥呼「(ただ・・・・・あ奴は、無類の実験好きだったからのう、これも実験の一環だとするなら、あ奴の目的は・・・・・)」

 

この中で神農の事を一番知っているのは卑弥呼だが、まだ不確定な事が多過ぎるので口には出さないでおいた

 

華琳「・・・・・それにしても、蓮華を攫われたというのに、よく落ち着いていられるわね、雪蓮」

 

雪蓮「あの子も孫武の血を引く者の一人ですもの、こういった時の心構えは出来ているわ」

 

小蓮「お姉ちゃん・・・・・」

 

亞莎「ううう、蓮華様が心配です・・・・・」

 

桔梗「杏奈、無事でおればよいが・・・・・」

 

紫苑「ええ、酷い目に合わされていなければいいけど・・・・・」

 

其々が其々に齎した情報は、どれも耳触りの良いものとは言えなかった

 

一方は雷刀に酷い目に合わされ、一方は蓮華と杏奈を攫われ、一方は一刀と入れ違いになり、おまけに水鏡大先生に大目玉を喰らうしまつ

 

玉座の間が沈黙に包まれる中

 

刀誠「なんじゃなんじゃ、これしきの事でへこたれおって、それだからワシは言うのじゃぞ、このままではお主達は未来永劫一刀を救う事は出来はせんと♪」

 

祭「しかし刀誠よ、蓮華様と杏奈が何処に連れ去られたか分からんのじゃぞ!」

 

桂花「そうよ!北郷も何処に行っちゃったか分からないし、私達はこれからどうすればいいのよ!?」

 

小蓮「そうだよ〜!それになんでそんなに元気なの、おじいちゃん!?」

 

華佗「ああ、話によると神農に手も足も出なかったらしいじゃないか」

 

刀誠「な〜〜〜んのこれしき♪この程度で根を上げておっては北郷流宗家などやってられんわい♪一刀の奴は、その水鏡女学院とやらで相変わらず女を侍らせとったんじゃから大丈夫じゃて♪孫権ちゃんに法正ちゃんは・・・・・ワシの勘じゃと心配ないわい」

 

冥琳「勘だと!?そんな雪蓮じゃあるまいし・・・・・」

 

穏「そんな不確かなもので蓮華様と杏奈さんの安否を決めつけないで下さい〜!」

 

刀誠「老兵の勘を侮るでない、昔からワシの勘は良く当たるのじゃぞ♪・・・・・それにこれはなにも、ワシの直観だけの判断ではない・・・・・管輅ちゃんよ、説明してやってくれんか?」

 

管輅「分かったわ・・・・・この天角に神農様が来た時にこの場に居なかった者は事情を知らないでしょうし」

 

そして、管輅はこの場に居なかった者達に事情を説明し出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管輅「・・・・・・・・・・という訳よ」

 

華琳「そう・・・・・私達は、今もなお一刀に守られているという事ね・・・・・」

 

桃香「・・・・・ご主人様ぁ」

 

まさに天の守護とはこの事である

 

一同は、改めて一刀に感謝すると共に、申し訳無さと自責の念に押し潰されそうだった

 

卑弥呼「まさか、ご主人様の因果径がここまで張り巡らされておるとはのう・・・・・」

 

貂蝉「ええ、他の外史でもここまでのものは無かったわね・・・・・」

 

華佗「因果径というのは、どういうものだ?」

 

卑弥呼「うむ、この外史を構成する核としてご主人様が存在する事はこの前話した通り、物語が進む上でその中心に居る以上、何もしなくとも周りに何らかの影響を与えるのだ、それを私達は因果径と呼んでいるのだ」

 

貂蝉「でも、この外史のご主人様の因果径は、私達の知っている中でも頂点に近いわよ、道術を極めた管理者は、外史の住人に操の術式を施す事によって、その者を意のままに操ることが出来るわ、それをはね返せるほどの因果径を皆の中に残すことが出来るなんて、私達にとっても想定の範囲外よ」

 

刀誠「なるほどのう、あ奴の氣の練度もここまで来たという事か」

 

龍奈「ということは、天の守護を受けた私は、もはや向かうところ敵なしという事ね♪」

 

管輅「浮かれていると痛い目を見るわよ、貴方はかつて荊山で裏の北郷一刀にどんな目に合わされたのか忘れたの?」

 

龍奈「う、そうだったわね・・・・・」

 

そう、一刀の寵愛を三日三晩浴びるほど得ていたというのに、龍奈は雷刀の攻撃により重傷を負ってしまった

 

天の守護も物理的な所までは働いてくれないのである

 

思春「ということは、やはり蓮華様と杏奈は危険な状況という事ではないか!!」

 

明命「その通りです、一体どんな酷い目に合わされているか分かりません!!」

 

刀誠「心配いらん、あ奴らも一刀と渡り合う為に人攫いをしたのじゃ、人質を無下に扱う事は出来ん筈じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮華「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

杏奈「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

左慈「そう睨むな、ここに居る間はお互い同居者だ、仲良くしようじゃないか」

 

于吉「ええ、先客としてもてなしますよ」

 

蓮華「何が先客よ、ふざけるな!!!!」

 

杏奈「ご主人様を陥れた輩に掛けられる情けなど、ありません!!!!」

 

神農に泰山の神殿に連れ去られた蓮華と杏奈は、両腕を背中に縛られ両足を拘束され柱に縛り付けられていた

 

おまけに二人は柱に左右対称に縛られている為、お互いの声しか聞こえない

 

于吉「っ・・・・・まだ腹部が痛みますね・・・・・」

 

急所を外したといっても背後から彩の三尖刀で貫かれたのでは、流石の管理者も一日やそこらで完治という訳にもいかないようだ

 

腹部を摩りながら、ありったけの力を治癒に回す

 

シュウウと言う音の共に腹から煙が出て傷が閉じていく

 

左慈「間抜けな奴・・・・・と言いたいが、俺も今回のケースは初めてだ、致し方あるまい」

 

自分も水鏡女学院での一件があるので、于吉の失態をあーだこーだ言える立場ではない

 

蓮華「ふん!お前達が一刀に勝てる要素なんて何一つないわ!」

 

杏奈「その通りです!管輅さんから聞きました、貴方方は他の世界で他のご主人様に散々に負けて来たのでしょう!?」

 

于吉「耳の痛い話ですね、だからこそ我々は未だにこんな所でくすぶっているのですから・・・・・しかし、これは一体どういう事なんでしょうね?」

 

左慈「ああ、俺も伏龍と鳳雛の学び舎でありえない事態に遭遇した、おそらくはこいつらにも同様の現象が起こっているはずだ」

 

杏奈「・・・・・何を言っているのですか?」

 

蓮華「いったい、何の話をしているの?」

 

神農「それは、ワシが説明しようかのう」

 

その時、柱の影から蓮華と杏奈を攫った張本人が現れる

 

左慈「・・・・・ちっ」

 

于吉「これはこれは、神農様・・・・・」

 

髭を長く伸ばした老人の出現に左慈は嫌悪感を隠しきれず、于吉は恭しく頭を下げた

 

神農「ワシとしても、今回の件は興味が尽きんのでな・・・・・お主達、これまで何回あの北郷一刀と契りを交わした?」

 

蓮華「な!!?///////////」

 

杏奈「なぜそのような事を聞くんですか!!?//////////」

 

神農「今回の件でそれは大いに重要な要素じゃからだ、答えるのじゃ」

 

蓮華「答える義理は無い!!!///////////」

 

杏奈「悪趣味もいいところです、私達とご主人様の睦み事の回数を聞くなんて!!!//////////」

 

神農「十より多いか?」

 

蓮華「・・・・・////////////////」

 

杏奈「・・・・・////////////////」

 

黙秘権を行使するが、答えが顔にモロに出てしまう

 

神農「・・・・・沈黙は肯定じゃな、そうゆうことじゃ」

 

于吉「なるほど、彼女達の中に北郷一刀の因果径が入り込んでいるという事ですね」

 

蓮華「因果径?・・・・・一体、なんの話をしているの?」

 

神農「簡単に言えば、お主達は天の守護を受けている、という事じゃ」

 

杏奈「天の、守護?」

 

左慈「くそっ!!どこまで厄介なんだ!!」

 

蓮華「ちょっと、一方的に納得してないで説明しなさい!!」

 

神農「要するに、お主達は天の遣いと称される北郷一刀の寵愛を得た事によって、北郷一刀の氣を体内に宿しているという事じゃ」

 

于吉「その氣が、我々の道術から身を守っているという事です」

 

蓮華「・・・・・一刀ぉ」

 

杏奈「私達は、ご主人様にまた守られて・・・・・」

 

ここでも一刀の守護が働いている事に、蓮華と杏奈は感激すると同時に申し訳なさで一杯だった

 

神農「あの余りある氣の持ち主の北郷一刀と幾度も交われば、そういった強力な因果径がお主達の中に残ったとしても何の不思議もないわい」

 

左慈「だが、全ての道術とまではいかないようだな」

 

于吉「そうですね、最初の道術によって彼女達を含めたこの大陸の人間の記憶末梢には成功しているのですから」

 

左慈「という事は、更に強い道術を掛ければこいつらを操ることが出来ると言う事か?」

 

神農「分からぬ、今回のケースはワシも初めての事じゃからな」

 

左慈「・・・・・それにしても、ずっと聞きたかったことがあるんだがな」

 

神農「む、何がじゃ?」

 

左慈「貴様、なぜこいつらを攫って来た?」

 

于吉「そうですね、こちらとしては大助かりなんですが、一体何を考えておいでですか?」

 

神農「な〜〜〜に、ちょっとしたお節介じゃ、別に今回の件でお主らに恩を売ろうなどと思うてはおらん」

 

左慈「ふざけるな!!貴様が何の見返りも無しにそんな事をするとはとても思えん!!何を企んでいるか、いい加減吐け!!」

 

神農「ふむ、まぁ少しくらい話しても良いかの・・・・・ワシはな、見てみたいのじゃ」

 

左慈「なにをだ!?」

 

神農「管理者という存在がその運命に抗い、本当に自由になれるのか、それを見てみたいと言っておるのじゃ」

 

于吉「・・・・・要するに、我々は実験材料、または観察動物と言ったところですか?」

 

神農「言い方や見方は人其々じゃ」

 

于吉「しかし良いのですか?我々が自由になれば、管理者の掟や規則が滅茶苦茶になってしまいますよ」

 

神農「それもまた一興、これだけあらゆる外史が生まれている中で、その鎖を断ち切ることが出来ればそれは称賛に値する事じゃ・・・・・かつてのあ奴のようにな」

 

左慈「あ奴、だと?」

 

于吉「その言葉使いですと、かつて我々と同じように管理者の運命に抗った者がいた、あるいは本当に自由になった者がいた、ということですか?」

 

左慈「何だと!!?それは本当か!!?」

 

神農「さてのう、お主達の想像に任せるとするわい」

 

左慈「ふざけるな!!ここまで言っておいて中途半端で終わらせる気か!!?」

 

神農「お主達こそ、自分達の力で自由になるのではなかったのか?ここでワシの力をあてにするのであれば、本気で後々どのような要求をしようかのう♪」

 

左慈「・・・・・・・・・・」

 

于吉「・・・・・・・・・・」

 

神農「さて、この二人の処遇は任せる・・・・・久々に動いて疲れたわい、ワシはまた裏で見物させてもらうとするぞい」

 

そして、神農は再び消えていった

 

左慈「・・・・・于吉、奴の考えが見えるか?」

 

于吉「いいえ、まるで見えてきません・・・・・」

 

どうにも神農の思考が理解できず、二人は困惑していた

 

蓮華「(どうやら、奴らも一枚岩ではないようね)」

 

杏奈「(そこに付け入る隙がきっとあります)」

 

柱に縛られた二人は、どうやってこの場を切り抜けるか思案していた

 

左慈「・・・・・あの腹黒野郎のことは置いておいてだ、お前達にはいろいろ協力してもらおうか」

 

于吉「ええ、あの北郷一刀の因果径を調べるうえでもなかなか良いサンプルですしね・・・・・しかし、もう少し後でよろしいですか、左慈」

 

左慈「なんだ?」

 

于吉「傷の回復にもう少し時間が掛かりそうです、今しばらくの猶予を・・・・・」

 

左慈「・・・・・分かった、仕方ない」

 

于吉「寛大な処置、ありがとうございます」

 

左慈「お前達は大人しくしていろ、間違っても逃げられるなんて思うなよ」

 

そして、左慈と于吉は神殿の奥に引っ込んだ

 

蓮華「・・・・・ふん、誰がお前達に協力するものよ!杏奈、そっちは何とかできないの!?」

 

杏奈「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!・・・・・無理です、完全に固定されてしまっています!」

 

なんとか縄を解こうとするも、きつく巻き付けられた縄は容易には外せない

 

杏奈「南海覇王で切れないんですか!?」

 

蓮華「無理よ、こんな状態では抜くことも出来ないわ!」

 

両手両足を拘束されてしまっている為、腰の南海覇王に手が届く筈も無い

 

杏奈「・・・・・蓮華さん、こうなったら奥の手を使います」

 

蓮華「奥の手ですって?それは何!?」

 

杏奈「はい、天角に戻ってきて、私はヴリトラ様に龍族の事を色々と教えてもらいました・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍奈「・・・・・龍族の力を引き出せないかですって?」

 

杏奈「はい、ヴリトラ様にはあの管理者達の道術が効かなかったんですよね、私も龍族の血によってあの二人の道術に抗っていましたし、この龍族の血を使って私もご主人様の役に立ちたいんです」

 

龍奈「・・・・・方法が無くも無いわ」

 

杏奈「それは、どんな方法ですか!?」

 

龍奈「簡単な事よ、かつて私の生血をお前にわけた事によってお前の龍族の血を活性化させてあの二人の道術を打ち破った、ならばその量を増やせばいいのよ」

 

杏奈「では恐縮ですが、ヴリトラ様の血を・・・・・」

 

龍奈「ただし、どうなるか分からないわよ」

 

杏奈「と、言いますと?」

 

龍奈「龍族の血を受け継いでいるとはいっても、お前の体は人間の血の方が濃くなっているからね、言わばお前の体は貧弱な人間と大差ないわ、そんな奴が龍族の力を覚醒させたとしてもその反動に耐えられるか分からない、と言っているのよ」

 

杏奈「・・・・・もし、耐えられなかったらどうなるんですか?」

 

龍奈「最悪その場で体が爆発、そうでなかったとしても龍族の血に意識を乗っ取られて凶暴化、ただの狂戦士に成り果てるわね」

 

杏奈「・・・・・・・・・・」

 

どちらに転んでも碌でもない話である

 

むしろ前者の方がマシかもしれない、周りに迷惑を掛けないという意味では

 

龍奈「私としてはどっちでもいいわよ、それはお前が自分で決めた事だし、その結果には自分で責任を持つ事ね」

 

杏奈「・・・・・分かりました、ヴリトラ様の血をお分けください」

 

龍奈「本当に良いのね?私は助け舟なんて出さないわよ」

 

杏奈「もちろんです、ご主人様にしてしまった事を思えば、何てことありません・・・・・それと、ヴリトラ様の心遣いに感謝します」

 

龍奈「は?心遣いですって?」

 

杏奈「はい、そうやって忠告してくれると言う事は、少なくとも私達は分かり合える可能性を有しているという事ですし♪」

 

龍奈「止めなさいよ、私はお前の質問に答えただけよ、私の血でお前がどうなろうと、知った事ではないわ」

 

杏奈「はい、自分の不始末は自分で処理します、ヴリトラ様に迷惑はお掛けしません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏奈「・・・・・ということなんです、既に私の懐にはヴリトラ様の生血を入れた徳利があります」

 

蓮華「ちょっと待ちなさい!それって、貴方は死ぬか危険な存在に成り果てるかのどちらかでしょ!?そんなもの何の解決にもならないわ!」

 

杏奈「大丈夫です、既に何回か試していますから」

 

蓮華「そ、そうなの?」

 

杏奈「はい、確かに多量を服用すれば危ないですが、量を抑えれば身体能力を急激に伸ばせることは確認しています」

 

蓮華「・・・・・本当に大丈夫なの?」

 

杏奈「お任せください・・・・・ん、んん!」

 

そして、胸の中に隠してある徳利を膝で押し出そうとする杏奈

 

何とか膝を折り曲げる事は出来る為、胸元をゆすり、膝で押し上げる

 

すると、谷間から栓をされた徳利が顔を出した

 

杏奈「出ました!後はこれを!」

 

そして、徳利に施してある栓を、口で開けようとするも

 

杏奈「〜〜〜〜〜っ!(なかなか、開きません!)」

 

中身が零れない様にきつめに栓をしたのが裏目に出てしまったようだ

 

歯を立てて抉じ開けようとするが、中々開かない

 

すると

 

神農「ふむ、御嬢さん方、何をしておるのかのう♪」

 

杏奈「っ!!!??」

 

蓮華「なっ!!!??」

 

柱の影からあの神農が現れて、二人は背筋が凍りつく

 

神農「二人揃って、ここから逃げ出す算段か?健気じゃのう♪」

 

蓮華「くっ!」

 

杏奈「っ!」

 

神農の登場に険しい顔をする蓮華と、胸元の徳利をすぐさま隠そうとする杏奈

 

しかし

 

神農「ふむ、これは何かのう?」

 

杏奈「え!!?そんな!!?」

 

目を見開いて驚きの表情を隠せない杏奈

 

今、自分の胸の中にあるはずの徳利が神農の手に握られているのだから

 

まるで一流マジックのような鮮やかな法術の手並みだった

 

神農「ふむ、中身は何かのう♪」

 

杏奈「止めて下さい!!返して下さい!!」

 

蓮華「それを返せ、下郎!!」

 

この場を切り抜ける唯一の手段を奪われ、しかもその栓が引き抜かれようとしているため二人は焦りを隠せない

 

神農「・・・・・ふむ、この独特な臭いと色、これはあの龍の生血じゃな、どうやらこれを服用する事によって何らかの現象を起こし逃げ出そうという腹じゃな♪」

 

蓮華「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

杏奈「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

完全にやられた、向こうの方が一枚も二枚も上手だった

 

管理者、神仙の力を甘く見過ぎていた自分達の浅慮ぶりに二人の歯軋りが止まらない

 

しかし

 

神農「よかろう、飲んでみるがいい♪」

 

杏奈「え!?」

 

蓮華「どういうつもりなの!?」

 

神農「お主があの龍の末裔と言う事は分かっておる、ワシも龍の生血を飲んでその者がどうなるのか見てみたいしのう♪」

 

杏奈「・・・・・後悔することになりますよ」

 

神農「後悔させてくれるほどのものを見せてくれるのかのう、それは楽しみじゃ♪」

 

そして、神農は徳利を杏奈の口元に持っていき中身を飲ませた

 

杏奈「ん、んん・・・・・んぐああああああああああ!!!!」

 

中身を全て飲み干すと、杏奈は普段のウィスパーボイスからは想像も出来ない雄叫びを上げる

 

蓮華「杏奈!!?一体どうしたの!!?何があったの!!?」

 

柱の向かい側に居るため何が起こっているのか分からない蓮華は必死で杏奈に呼び掛ける

 

神農「ほほ♪これは凄いのう、こやつの内側の氣がみるみる増大していくわい♪」

 

体の筋組織が異常に強化され、皮膚の内側を覆っている血管が浮き出て、肌が僅かに青くなり、目が血走り、白目が黒ずんでいく

 

瓜二つとはいかないが、まさに龍族である龍奈の姿に酷似している

 

杏奈「があああああああああああああ!!!!!」

 

拘束されていた縄を引き千切り、杏奈は神農に襲い掛かった

 

蓮華「杏奈!!!杏奈!!!しっかりして、杏奈!!!」

 

理性が飛んでいるのか、蓮華の声は杏奈の耳には届いていなかった

 

龍の血の活性化によって凶暴化した杏奈はがむしゃらに神農に当身や蹴り当てを繰り出す

 

ズバババババババ!!!!

 

まさに疾風怒濤と言える杏奈の攻撃

 

しかし

 

神農「ほっほっほ、なるほどのう、そういった変化が起こるのか、興味深いのう♪」

 

そのくらえば肉が引き裂かれんばかりの杏奈の攻撃を神農は余裕綽々で躱していく

 

しかも、杏奈の体の変化を観察し、解説しながらの体捌きである

 

神農「ほれっ♪」

 

ブワアッ!!

 

杏奈「っ!!?」

 

手の平を杏奈に向けると杏奈は見えない力に押し返され壁に押し付けられる

 

神農「ふむ、龍の力を活性化させているとはいっても、法術は有効と」

 

杏奈「ぐあああああああああああ!!!!!」

 

神農「ほれほれ、これが全部か?もっと他に能力があればケチケチせんと見せてくれてよいのじゃぞ♪」

 

壁に押し付けられた杏奈は一心不乱に暴れようとするが、神農の法術を振り解くことが出来ず雄叫びを上げる事しか出来なかった

 

神農「・・・・・ふむ、どうやらもう目新しい変化は見られんのう、この程度の変化はワシもこれまで数えきれんほど見てきたからのう、期待外れもいいところじゃわい」

 

ドスッ!!

 

杏奈「うぐっ!!!・・・・・・・・・・」

 

そして、神農の当身を鳩尾に受け、杏奈は気を失った

 

神農「ワシは神仙の長の一人じゃぞ、龍の一体や二体、物の数ではないのに、なぜに龍の血を多少引き継いだ程度の人間に負ける道理がある?」

 

蓮華「杏奈!!?大丈夫なの、杏奈!!?」

 

神農「安心せい、少々お灸を据えてやっただけじゃ」

 

そして、杏奈は神農の肩に担がれた

 

左慈「なんだ、何があった!!?」

 

けたたましい杏奈の雄叫びは神殿全体に響き渡ったので、左慈が血相を変えて走り込んできた

 

神農「この子らが脱走を図ったのでな、ちょっとしたお節介じゃ♪」

 

法術で杏奈を縛り直し、神農は踵を返そうとする

 

左慈「待て!!どうしてこいつらの脱走を防いだ!!?貴様の狙いは何だ!!?」

 

神農「な〜〜〜に、ちょっとした実験の一環じゃ♪」

 

左慈「実験だと!!?何の実験だ!!?」

 

神農「それはこちらのこと、ワシはお主らのする事に干渉はしない、その代わりお主らもワシのする事に干渉はするでない、これでイーブンじゃ」

 

そして、神農は消えていった

 

左慈「・・・・・一体何の実験だというんだ」

 

やはり神農の意図が読めなく後味の悪さが残るが、左慈は蓮華に視線を移した

 

左慈「言った筈だよな、間違っても逃げられると思うなと」

 

蓮華「〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 

左慈「俺は気が長い方じゃないんだ、明日から容赦しないぞ」

 

そう吐き捨て、左慈は出て行った

 

蓮華「(一刀ぉ・・・・・私達は、あなたの為に何も出来ないの)」

 

一刀の役に立つどころか、人質同然の身となってしまった我が身を蓮華は呪うしかなかった

 

あとは舌を噛んで自決する事くらいしか出来る事はないが、それをしてしまえば一刀を悲しませるだけで、何の解決にもならない

 

蓮華「(私は、どうしたらいいの・・・・・誰か助けて・・・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、皆さんお久しぶりです

 

何故に二か月も音沙汰なかったのかと言いますと、ここ最近急激な体調悪化に悩まされていまして、毎年恒例花粉症に苦しみ、風邪はひくは、目は張れるは、下痢は止まらないはで本当に踏んだり蹴ったりでした

 

GWも家の手伝いで身動きが取れない有様でしたし、しかしこれ以上投稿を遅らせても拙いと思い殆んどヤケクソ気味で今回の投稿に踏み切りました

 

一応これで生存報告代わりと致します、それならコメントですればいいのではと思うでしょうけど、自分の戯曲を楽しみにして下さっている皆さんにはこちらの方が圧倒的に良いでしょう

 

てなわけで、人質となってしまった二人に救いはあるのでしょうか・・・・・待て!!!次回!!!

説明
藪の暗闇
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コメント
更新待ってました。(聖龍)
神農パネェ…なんか自分と同じ感じですねw自分も花粉症と風邪と下痢で毎日が辛かったですw(スネーク)
キター。(*^◯^*)(yuuki)
神農強いな〜龍の一体、二体が物の数じゃないなら一刀でも勝ち目がないぜ〜^^;(nao)
久しぶりの更新、お疲れ様です!( ̄^ ̄)ゞ おおう。 その様な事態になっていらっしゃたとは・・・・・。 季節の変わり目ですからね。 お体には十分お気を付け下さいませ。m(._.)m 体の健康が第一ですから。 次回も楽しみにしております。( ̄^ ̄)ノシ(劉邦柾棟)
ご無事でなによりです!今回一刀は出てきていないので少し寂しい感じがしますがお話が進んでくれて良かったです次回も楽しみにしています(mana)
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