after to after sidestory〜凪の想い〜
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 after to after side story凪の想い

 

 

 

 活気あふれる洛陽の街で、彼女は一人歩いていた。

 彼女の名は楽進、真名を凪という。あちらこちらに見受けられる傷は、彼女の誇りであり、コンプレックスでもあった。

 「私は・・・一刀様の妻になっていいのだろうか・・・」

 一刀にウエディングドレスと指輪を贈られた時は幸せな気持ちでいっぱいだった彼女だが、数日経つと、少しだけ嫌な考えが芽をだしてしまっていたのだ。

 「婚約の証・・・か。私は、一刀様に頂いてばかりで何もお返しできていない」

 そんなことを言う彼女だが、一刀は十分に凪からお返しを受けていたのだ。

 ――一刀のプロポーズを受けた。

 それがお返しになっていることなど露知らずの凪は溜息ばかりをこぼしていた。

 視線は左手の薬指に向けられる。銀色の指輪が陽光を反射して光る。

 「私は、これを受け取って・・・本当によかったのだろうか」

 

 ――自分は傷だらけだ。

 沙和の様におしゃれというわけでもなく、真桜の様に積極的でもない・・・そんなつまらない人間だ。料理は出来るが、流琉ほどの腕があるわけでもなし、季衣ほど食通かといえばそれほどでもない。

 では、武ならばどうかといえば、そちらはもっと絶望的だ。

 春蘭様、秋蘭様に霞様・・・そして華琳様と名だたる武人がこの国にはいる。私は、なんては中途半端なのだろう。自慢できる突出した何かがない。

 これなら、凡人であったほうがまだ救いがあったのに・・・。

 「はぁ・・・・・・」

 「・・・・・・・ぎ」

 「な・・・ちゃ・・・」

 何か聞こえる気がするが恐らく気のせいだろう。今は、周りの喧騒が煩わしい・・・静かな所にいきたい。

 そう思った凪は竹筒に入れたお茶、点心をいくつか購入して街を離れて行った。

 

 「凪、ま〜たアホなこと考えとるみたいや」

 「沙和たちの声、聞こえてなかったみたいなの〜」

 呆れた溜息をつく真桜と沙和であった。

 

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 ところ変わって、ここは森の中にある川のほとり、鳥のさえずりと川の流れる音が実に心地よい場所だった。

 「・・・・・・」

 空に指輪をかざしてみたも悩みが消えるわけでもなかったが、そうせずにはいられなかった。

 

 ――今までは、こんな悩みとは無縁だろうと思っていた。真桜たちと一緒に過ごすだけだろうと思っていたのに、秋蘭様に出会い・・・華琳様に出会い・・・・そして、一刀様と出会った。

 正直を言うのなら、最初は胡散くさくて仕方がなかった。特に強いわけでもなく、智に富んだわけでもない。そんな男が、何故自分たちの上司なのだろうと思っていたのに・・・・・・。

 ――いつの間にか、あの人を目で追うようになっていた。

 ――あの人がいるだけで心が穏やかになっていた。

 ――あの人の役に立ちたいと考えるようになっていた。

 ――あの人のモノにして欲しいと思うようになって。

 

 ――一刀様は、私にとって全てになっていた。

 

 ――だから、一刀様がいなくなって・・・私からは生きる理由がなくなった。

 ――あの人のために頑張っていたのに、私には何もできなかった。

 

 「せっかくの休日だというのに・・・私は何をしているんだろう」

 自分にさえ呆れてしまう。

 自嘲気味に笑ったその時。

 「だーれだ」

 視界が暗転した。

 「きゃあああああ!!」

 背後にいる何者かに渾身の肘打ちをお見舞いした。

 ドゴォというあまりにも重い音が響いた後、吹っ飛ばされた何者かが呻き声をあげてもだえ苦しんでいた。

 「何者だ!・・・・・ってえええええ!?」

 晴れた視界でとらえたその人物は、自分の全てである北郷一刀だった。

 「ちょっと・・・た・・・おちゃ・・・めだった、んだけ・・・・・・ど、み・・・見事・・・、一・・・撃・・・ガクッ」

 「あわわわ・・・一刀様、一刀様―!!」

 見事なまでに鳩尾に入った一撃に、一刀はとうとう失神してしまったとさ。

 

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 「・・・・・・すぅ・・・すぅ・・・・・・」

 「一刀様・・・・・・」

 そっと一刀の顔を撫でる。実に穏やかな寝顔で心から安堵する凪だった。

 ここは一刀の私室。

 あの後、気絶してしまった一刀を凪が担いで連れて帰ったのだ。心配してきた華琳に凪が事情を説明したところ。

 ――「ならば貴女が世話をしなさい」

 と言われてしまったので、こうしているわけである。

 「やはり・・・私は、一刀様の妻には・・・・・・」

 指輪を一刀の机に置こうとした時。

 「相応しくないなんて思っちゃいけないよ凪」

 「一刀様」

 いつの間に目を覚ましたのだろうとも思ったが、特にそのことは気にならなかった。

 ただ真摯な眼差しに動けなかった。

 「前にさ、凪とデートした時に言ったよね。もっと自信持っていいんだって・・・凪のその傷も、真面目なところも、辛い物好きなところも、すぐに悪い方に考えちゃうところも・・・・・・俺は全部好きだ。傍にいてほしいと思うから、君にもプロポーズしたんだけど・・・もし、君が迷惑だと思っていて・・・あの時言いだせなくていたんだったら」

 息を一度吸って、より真剣に。

 「指輪を置いて今すぐ部屋を出てほしい。でも、迷惑に思ってないなら・・・こっちに来て抱きしめさせてくれないかな」

 「一刀様の好意を・・・・・・迷惑だなんて思ったことなんて一度でもありません。私は、一刀様にこれからも甘えてもいいのでしょうか?」

 「凪の気持ちに正直になってほしい。俺は君の気持ちに従うよ」

 「一刀様・・・」

 ごく自然に、凪は寝台に腰かけている一刀にその身を委ねた。

 ――凪にとって世界で一番心が休まる場所で、一刀に抱きしめられながらそっと目を細めた。

 そこからキスにいったのはそれこそ流れの一環だ。

 「んむ・・・んはぁ・・・・・・ふぅ・・・れろ・・・ちゅ、あむ、くちゅ・・・」

 長く続く二人のキス。

 凪は自分の頭の中が、ぽーっとしていくのを感じていたが、それでも一刀の唇を求め続けた。

 ただ正直に自分の気持ちに従ったうえで凪は一刀に甘え続ける。

 「ずっと悩んでたんだね。今日はたくさん愛してあげるよ」

 「はい、一刀様・・・たくさん私をもらってください、愛してください」

 ――この夜を境に、凪は自分が一刀の妻になることを誇りに思うようになったそうだ。

 

 ちなみに、この夜に至るまでの立役者が、ことが始まる直前に静かに一刀の部屋を離れていくのだった。

 「流石は一刀や。話してみて良かったわ」

 「本当なの」

 真桜と沙和が互いの拳をコツンとぶつけ合う。

 凪が沈んだ顔で二人の呼びかけも応じずに去って行ったあの直後、警羅をしていた一刀に事情を話し、今に至ったというわけである。

 後日、二人は凪からの目いっぱいの感謝の気持ちを受け取ったそうだ。

 

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〜epilogue〜

 

 

 

 あの夜からしばらくして、凪は母親になった。丁度、翌年の三国記念祭の直前である。

 「私が母になる日が来るなんて・・・思いもしませんでした」

 産着に包まれた我が子を愛おしそうに眺めながら囁く。

 魏の第一子であるこの子は名を『鎮』という。

 「俺も・・・自分が父親になるなんて思ってもいなかったけど・・・よくよく考えてみたら、ならないほうが不思議だったもんな」

 「それは・・・そうですが」

 凪の顔が真っ赤になる。

 はっきり言って、凪に限らず魏の武将たちは一刀に愛され続けているのだから、誰がいつ一刀の子を授かってもおかしくはないのだ。

 ちなみに、真桜と沙和の子供が間もなく生まれる予定だ。

 「一刀様、きっとこの子は一刀様に似て優しい子になってくれます」

 「そして、凪に似てまっすぐな子になってくれるね」

 「///・・・そう、ですね」

 はにかむ凪がこの上なく愛らしい。改めて彼女に・・・彼女たちにプロポーズして良かったと一刀は心から思う。

 「凪」

 「ん・・・・」

 唇だけを重ねる優しいキス。凪は特に驚くことなくそれを受け入れる。

 「俺は、凪も・・・鎮も・・・皆も幸せにして見せるよ・・・・・・違うな、皆と幸せになって見せる・・・かな」

 「ええ、皆で幸せになりましょう。私も、協力を惜しみません」

 そうほほ笑んだ時、鎮が泣き声を上げた。

 「起こしてしまったみたいですね・・・・・・よしよし」

 揺りかごの様に抱えた腕を揺らすと、ほどなくして鎮が泣きやみ笑顔になって、鎮の笑顔につられて凪と一刀も一緒に笑った。

 (一刀様、私は・・・いえ、私たちはきっと三国一の幸せ者なのでしょう)

 その思いは決して間違いではないし、間違ってもいない。

 指でちょいちょいと鎮と遊ぶ一刀を見て凪はそれを確信する。

 

 ――凪の望んだ幸せの形が確かな形でそこにあった。

 

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〜あとがき〜

 書いてみましたサイドストーリー。

 ひとまず、凪です。

 他のキャラを書くかは気分次第、全員書くかはわかりません。

 さて、このお話は華琳のお話の後からしばらくしての話となっております。

 凪ならこんな風に悩んじゃうんだろうなと思い、書いた次第です。

 ああ、なんて凪は純真で優しい子なのでしょう。

 さて、いかがでしたか?

 引き続き良い作品だと言っていただけたら嬉しいです。

 それでは次の作品でまた――。

 Kanadeでした。

 

説明
書いてみましたサイドストーリー
ひとまず凪です。
全員書くかはとてもとても未定です。
ひとまずこの作品をどうぞご覧ください
感想・コメント待ってます

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コメント
いい話だよ・・!(リンドウ)
良いとしか言いようが無いよ。(乾坤一擲)
ほっとしたって書こうとしたら、↓の※も似たような感じでなんか和んだ(trigger)
なんか落ち着く(真)
やっぱ凪の話はぐっと来るΣd(温泉まんじゅう)
うむうむ、えー話だ (゚д゚)(。_。)(゚д゚)(。_。) ウンウン(cheat)
なんかほっとする(asf)
ええ話や……(タンデム)
ええのう^^(nanashiの人)
自己評価の低い凪らしい葛藤ですねw でも、だからこそピュアで可愛いwww(フィル)
いいお話でした 凪は超がつく程真っ直ぐだったのであれだけ悩んだんでしょうけど一刀が無事解決して幸せになれて良かったです(村主7)
ああ、とても純粋で・・・・真っ直ぐで、凪らしい作品でした。 次作では、一体誰との幸せな物語が見れるのか愉しみで愉しみで仕方ありません^^ 次作頑張って下さい^^w(Poussiere)
やっぱ凪最高y〜〜〜><(motomaru)
タグ
〜真・恋姫?無双  アフター 真桜 沙和  一刀 

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