とある傭兵と戦闘機  第17話  災厄の卵
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 「織斑先生・・・・イギリス国防総省からの通達が来てます」

 

 「それと、前回の襲撃での学園側護衛機の見聞、改修が終わりました

 

  やはり、速度計の記録はマッハ3.7を記憶しており、

 

  スロットルも、自動制御でロックされていたらしいです」

 

 「FACSの記録は?」

 

 「システムがFー45のものだったので解析に手間取りました

 

  ただ、燃料調節システムに不明瞭なバイパスがありました

  

  システムネーム”マジックリンク”

 

  しかし・・・解読不能の文字で構成されており、どのような機能を

 

  有しているのか判らないのです」

 

 「どんですがな文字だ?」

 

 「・・・普通に見れば解読不能な象形文字・・・ですが」

 

 「?」

 

 「なんとなく見てみれば・・・魔法文字です・・・かね?」

 

 「魔法文字?」

 

 「ほら、よくアニメや漫画で描写されてるような文字ですよ

 

  魔方陣を構成する文字と言った方が正しいかもしれないですね」

 

 

 

 

私達は、フィリアの不可思議な力の真相に迫りつつあった

 

 

 

 

 

    英国某研究所

 

 

 「検体F001番から003番までの培養を完了」

 

 

 

研究室に三つ並んだカプセルのコンソールをチェックしていた研究員が

 

ボードに記録を書き込んでいく

  

 「王妃様、ここまで来られたのは貴方のお陰です

 

  我々の研究が日の出を見るのは近いですーーーですが」

 

目の前のカプセルを見る

 

 「ここまでされてでも求められる貴方はもう狂われているのです

 

  貴方個人の意思で、この子達を生み出したその責任を果たしてくれますか?」

 

いや、あの身勝手な王妃がこの結果を人として扱う訳が無い

 

結果、この子達は間違いなく不幸になる

 

不幸になるのが判っているからこそ、私はこれから逆らう

 

それが何を意味する事かも理解はしている

 

 「私が生み出してしまった禁断の生命の形・・・

 

  私が紡がなかくてはならない命の糸なのだ」

 

 

だから私は託す

 

それが皇子が残した国の結果だとするのなら

 

この国はーーー滅びなくてはならない

 

 

 

   misson1  災厄の雛鳥

 

 

 

 「本日1058にIS学園宛に英国特殊生物科学研究所より申し出があり

 

  ”サウズ・エア”と呼ばれる研究物の譲渡と

 

  ・・・研究所の物理的破壊の要請があった」

 

ブリーフィングルームに集められた二人のパイロットと関係職員の前に表示される

 

ここに専用機持ちが居ないーーー国が絡む問題ですらセシリアが呼ばれていないという事

 

これは非正規任務ーーーそして、隠密任務で破壊任務・・・奇襲攻撃略奪任務となる

 

とてもではないが、表の人間が受ける事のできるものでも耐えられるものでもない

 

 「イギリスの研究所から?また最悪だな・・・位置は幸いな事に山奥に隠匿された

 

  地下研究所だが、イギリス本国へ入る手段が限られている今、

 

  ビジネスジェットやファーストクラスでの空の旅と言う訳にはいかない

 

  もしこの作戦が日の出を見れば、外交国家問題にもなりうるという危険性を十二分に持つ

 

  よって本作戦の内容等についてはSクラスの秘匿義務が発生するという事を念頭に置いてくれ」

 

 「・・・・・・・・」

 

 「フィリア、思う所はあるだろうが今は考えるな」

 

 「・・・・・うん・・・」

 

 「では、本作戦の概要を説明する」

 

 

 

 

 

  misson 1      災の雛鳥

 

  

 

 

 

 

ゴォォォォォォ

 

 「・・・・・・・・・」

 

ゴォォォォォォ

 

 「・・・・・・・・・」

 

ゴォォォォォォ

 

 「・・・・・・・・・」

 

ゴォォォォォォ

 

 「・・・・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 「・・・・・・・うるさい」

 

 「・・・・・・・仕方ないですね」

 

唯今真っ暗で五月蝿くて超揺れる箱の中で

 

私とヘイトは寝袋をかぶって二人寄り添いあっていた

 

 「うん、ファーストクラスでは無かったね」

 

 「つまりビジネスクラスと?」

 

 「いや、こんな所でビジネスなんて怪しすぎるでしょ」

 

 「どう考えても密輸の取引ですね」

 

 「・・・・まあ」

 

 「・・・・そうですね・・・」

 

二人して溜息を同時に吐く

 

 「「密輸されてるのは私達なんだけどね(ですけどね)」」

 

絶賛、死んだフリして死体袋っていう名前の寝袋に包まっております

 

 「・・・葉夏さん、どうしてるんですかね?」

 

 「どうだろう・・・私達みたいにまた飛ばされているのか

 

  それとも時の流れそのままに過ごしているか」

 

 「・・・死んだり・・・してないですよね?」

 

 「わからない・・・・でも」

 

でも、私は生きていると確信がある

 

私の心が・・・心の中の何かが・・・葉夏が生きていると

 

 「葉夏は生きてる。間違いなくこの空の下で生きている」

 

心が、そう力強く訴えている

 

 

 

  IS学園プライベートジェットランウェイ地下

 

    IS学園特務航空機隊カタパルト複合型格納庫

 

 

 

IS学園の存在する人工島は、ISという希少な装備を扱う関係上で

 

自らの学園施設、装備、生徒及び関係者を部外の勢力から守るべく

 

地上に建設されている学園施設の周囲を囲む砂浜を含むその地下に

 

多数の防衛施設、装備及びその連絡路が張り巡らされている

 

その一つ・・・敵性航空勢力の無力化、及びその他この学園を利用する

 

関係者等のプライベートジェットの護衛を担当するべく設計された

 

自衛隊機用のものだったが

 

ISが発展してから、その最強の兵器がある場所にそれに対し遥かに劣る

 

現用兵器が配備される必要があるのかという議論になり

 

施設は完成したものの、部隊は配備されずにそのままもぬけの巣となっていた

 

しかし、近年のIS学園が多数のイレギュラーを抱え

 

それに応じて各国の次世代試作機の開発実験場になりつつある事を踏まえ

 

IS学園そのものの防衛力の安全性に懸念が増える事となったのだ

 

その為、学園の訓練用ISである打鉄、ラファールを主軸とした

 

IS部隊を編成するのではなく

 

現用戦力、即応戦力及び護衛戦力の確保を目的として

 

IS学園が個人的に保有する現用戦力の部隊を主軸とした

 

ISに頼らない防衛戦力の編成に辿り着いたのだ

 

しかし、近年の世界情勢として現用戦力はISに置き換えられ

 

衰退の道筋を綺麗になぞっていた

 

皮肉にも、それが要因で現用兵器が過激派勢力等に横流しになる等の

 

武器拡散が拡大する等の問題も併発しているが

 

世界は、一応の平和を保っている状態だとも言えるだろう

 

しかし、先述の通り

 

通常戦力として保有する戦力には、莫大な維持費が掛かる

 

その為、国家、組織問わず共通して私有兵力というのは少数精鋭であり

 

IS学園は国立という区分ではあるが、ISに関わらないものに関しては

 

基本的に国からの予算は配分されていない

 

防衛兵器はISの兵器を流用、叉は比較的コストのかからない

 

二世代程前かそれ以前の退役装備等を利用している状態であるのだ

 

継ぎ接ぎではあるが、それで難を凌ぐしか方法が無いのだ

 

現代世界で実戦経験を持つ歴戦の兵士は既に退役等をしており

 

それに応じて戦力の錬度も戦闘力も以前よりも圧倒的に衰退している

 

そこに、実力のみでしか生き残れない世界を最後まで生き残り

 

戦局に大きな影響を与えた空の覇者が偶然ではあるが来た事により

 

より現実的で、この世界ではあり得ない単機のみの航空機隊が発足する

 

その名は、IS学園所属特務戦闘機隊ーーー通称、ファルネーゼ隊

 

機体はF−15CガルムイーグルからF−45ガルムプラヴィティ

 

機体は米国からの試験運用改実戦配備機を四機

 

その格納庫は今、本来予定されていた戦力を大幅に超える戦力を備える

 

学園の切り札としてその機構を利用されているのだ

 

 

 

 「現在、二名を輸送する輸送機は順調に行程を消化中

 

  確約を取った英国ヴァルクド航空基地は本当に信用できるのでしょうか?」

 

管制コンソールに座るマヤは、後ろに居るポートマス・・・ラリーに対して

 

問いかける

 

 「それに関しては面白くねぇ位信用できる人間が居るんでな」

 

 「その人ってどんな方なんですか?」

 

 「俺達がガルム隊だった頃の整備員で

 

  あいつの機体を最初から最後まで整備していた専属整備員だ」

 

 「その方は今も整備を?」

 

 「いや、今は基地司令官だ。そしてーーーー」

 

ラリーは一呼吸置いて、思っている未来を口に出した

 

 「そいつが言ったんだ・・・

 

  ”深くは言えないが・・・俺は信じる

  

   お前達が再び世界を救ってくれると”ってな」

 

 「???」

 

 「(確かなのは・・・・そのサウズ・エアが誰かの罪の形であり

 

   イギリスという国を崩壊させるだけの熱量を持っているという事

 

   そしてその先に待っているのは・・・”逃れる事のできない戦い”だ」

   

嫌になるほどよく似た存在を

 

俺は知っている

 

そしてその本人は今、渦中へと飛んでいる

 

 

 

 

 

ラリーの言葉が意味する事を

 

マヤ達は一週間後に知る事になる

 

 

 

 

 

 

ゴロゴロゴロ・・・ウィィィン

 

 「(到着したかな?)」

 

 「(みたいですね)」

 

硬く荒っぽい地面の振動を感じながら

 

上に上がったり下がったり・・・そしてゴロゴロ運ばれている感じ

 

そして、静かになった所で私達を封印していた箱の蓋が開けられる

 

 「よう、久しぶりだなサイファー」

 

 「久しぶり。意外に早い再会だったね」

 

そこには往年の苦労が滲んでいるガルム隊専属整備士

 

ヴァルクド航空基地基地司令のカロウトと再会した

 

 「ど、どうも・・・」

 

 「おおぅ・・・またかわいいエースが棺桶から登場するシュールな絵だ」

 

 「ご、ごめんなさい・・・」

 

でもさ・・・思ったんだけど

 

 「私達行方不明になってるんでしょ?

 

  行方不明者が棺桶から登場って割と洒落にならないんじゃない?」

 

 「おう、お前はさながら地獄から鎖を喰いちぎって這い上がってきた

 

  獰猛な番犬って所で、そっちの嬢ちゃんはヴァルハラから死を運んでくる

 

  神様って所か・・・はははははっ(失笑」

 

 「(自分で言ってて失笑しないでよ)」

 

 「(この人もおかしな人だなぁ)」

 

 「でも、お前達にこれから持ち帰ってもらうのは、俺達の国の”罪”で

 

  そして・・・お前にとっての”ジョーカー”だ

 

  特に・・・サイファーにとってのな」

 

 「・・・・・・」

 

 「その三つの罪って何なのですか?」

 

 「知らない・・・ただ、それは王妃の直轄する極秘研究所の産物で

 

  国内の人道を知らないような科学者を集めて行っていたものだ

 

  そんな狂った科学者達が、こぞってその存在をお前に託したいと言うんだ

 

  他の誰でもなく、お前をだ」

 

 「私を?」

 

 「話が逸れるな。これより作戦概要を説明する

 

  これからお前達二人を輸送機航路を利用して上空からペイブロウする

 

  地上到達後、向こう側が指定した地下施設大型搬入口から強行進入

 

  以後、指定されたポイントへ向かい三つの容器を回収し

 

  上空で待機する輸送機に収容、帰還する」

 

 「・・・今回の作戦がそもそも私を誘き出すための罠じゃないという保障は?」

 

頭を切り替え、作戦に対して思考する

 

今、私はこの国ではお尋ね者状態

 

そんな私を指定して、しかも施設の破壊を許可してまで

 

・・・何の為に・・・

 

私を待っているのは・・・一体何なんだろう

 

 「とにかくやるしかないんだ。今一番基地で腕の立つ高い補助も付ける」

 

 「それって・・・」

 

と、後ろのドアがノックされて扉が開く

 

そこには何やらペンギンのぬいぐるみを大事そうに抱える

 

知った顔によく似た”少女”が居た

 

 「・・・・・・リフィ?」

 

 「・・・・・・!!(コクコク!!」

 

そこには、つい一ヶ月前まで普通にお姉さんだったはずのリフテリアが

 

フィアと私の間くらいの年齢の姿になっていた

 

 「こ、こんにちわ・・・」

 

 「こ、こんにちわ」

 

また・・・意味不明な事になってるね

 

 

 

 

 「若返るのはいいけれど、こんなにちっちゃくなると不便な事が多いです」

 

それはいいんだけどさ

 

作戦概要は私、ヘイト、リフィの三人での強襲強奪任務

 

絶賛唯今輸送機内で会話中

 

 「・・・・で、何でリフィは私の膝の上に座るの?」

 

目の前で頭を揺らしている金髪少女に質問する

 

 「なんか・・・安心できるんです」

 

 「不安なの?」

 

 「不安ですよ・・・これからお母様の”罪”とよばれるものを目にするのも

 

  それを渡してしまう事も・・・」

 

 「そう・・・ごめんね・・・」

 

 「いえ、私はお母様が間違っていると思います・・・」

 

 「どうして?」

 

 「だって、こんなにも

 

  こんなにも優しくてこんなにも柔らかな雰囲気の人を怖がるなんて

 

  私は後ろめたい事があるとしか考えられません」

 

 「?」

 

 「その目です・・・その瞳がフィリアさんの心を映しています

 

  あなたの心はどこまでも真直ぐ、青空に真直ぐ伸びる飛行機雲です

 

  そして、鳥達はその風に呼応する・・・それだけです

 

  それだけで・・・私達は空を飛ぶきっかけになるのです」

 

 「・・・・・・」

 

 「あなたの瞳は、人の心に風を吹かせるんです」

 

何を言っているんだろう

 

それはまるでーーーー

 

 「私が・・・皆を戦いに引き込んでるの?」

 

私が・・・戦闘を発生させているって事?

 

 「それは絶対に違います

 

  空を飛ぶ事と、空で戦う事は全く違います

  

  その違いを・・・私達はよく知っています」

 

 「フィリアさんが、私達を戦いの無い空へ連れて行ってくれると

 

  そう信じています。そう確信しています

 

  だって・・・こんなにも空を愛していらっしゃるのですから」

 

 

そう・・・・そうなんだ

 

でも、確かに戦いの無い空を皆と飛べるのなら

 

どれだけ嬉しいのだろう

 

どれだけ幸せな事だろう

 

あの世界のみんなも、それを望んでいた

 

 

 

 

 その想いは、たとえ世界が違っても同じなんだ

 

 

 

そう思った瞬間、私の中で風が吹く

 

そしてそれは、

 

あの世界で私が手にしていた蒼き風の力が、私の体に宿った瞬間だった

 

その力の名前は

 

 

   ”魔法力”

 

     蒼裁ーーー零ノ空

 

 

 

 何を考えているの?

 

 ねぇ

 

 私の中に居るんでしょう?

 

 

 

 答えてよ

 

 

 

 教えてよ

 

 

 

   ねぇ

      

    

 

     ”フィレイア・ヴィリタニィ・リーファフロイス”

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”御機嫌よう”

 

 

 

 ”そしてはじめまして。フィリア”

 

 

 

 

 

      覚醒がーーーー始まる

  

 

 

 

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意見感想募集中

 

宜しくお願いします

 

そして嵐はリアルにも訪れる(物理)

 

 

 

 

 

 

 

説明
ようやく彼女たちに平和な日常が訪れようとした時
不穏な風が彼女らに吹く
それは彼女が捨てた母国へもう一度別の目的で行かなくてはならないという事だった

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コメント
更新お疲れ様です。どうやら大きな戦争が起きそうな予感がしてきましたよ〜!しかもここにきてストパンの要素が絡み始めてきたと。次回も首を長くして待ってます(銀ユリヤ)
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タイムスリップ クロスオーバー エースコンバット インフィニット・ストラトス 

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