機動戦士ガンダムSEED Destiny 凍て付く翼
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第26話 闇に現れる光

 

「後ろにはミネルバ、月にもザフトのメサイアが向かって居るか」

 

シャトルに乗るジブリールはシートに座りながら不敵な笑みを浮かべる。

危機的状況にも関わらず不安を全く感じてない彼は、備え付けられた通信機を片手に月のダイダロス基地の司令部に繋げた。

 

「私だ。手筈通りレクイエムの準備は進めて居るな?」

 

『はい、問題ありません。エネルギー充填率70パーセントを超えました』

 

「80パーセントを超えたら発射しろ。権限は私が持つ」

 

『目標は如何しますか?』

 

「プラント首都、アプリリウス。これさえあれば一撃で仕留められる。その次は地球に向けろ」

 

『地球……ですか?』

 

「そうだ。第2射でオーブを撃つ。あの小娘共が、私をコケにした報いだ」

 

『了解です。第2射、目標オーブ』

 

「デュランダル……奏でてやるよ、レクイエムを」

 

通信機を戻すジブリールは再び不敵な笑みを浮かべる。

月のダイダロス基地司令部では、エネルギー充填が完了したレクイエムの発射態勢に入った。

基地地表面に建造された巨大なシェルターがゆっくりと解放され、蓄積されたエネルギーは今にも発射される。

司令官であるレゾン・クレブルはスクリーン上に表示される座標位置、数カ所に渡り配置されて居る廃棄コロニーの角度を見た。

 

「3番のスラスター制御を急がせろ。それが終わり次第、レクイエムを発射する!!」

 

前大戦で連合はプラントを直接攻撃した。

その時に破壊し、廃棄されたコロニープラントを改良し各所に配置させる事で、戦略兵器レクイエムは更なる力を得る。

ザフトも廃棄コロニーが兵器に使用されるとは考えが及ばず、ロゴスも小規模ながら廃棄コロニーを防衛する部隊も展開させており、今から発射を食い止める事は出来ない。

ジブリールの通信から数分後にはエネルギー充填率が80パーセントを超え、廃棄コロニーの角度も整った。

 

「1、3、5番コロニーの配置完了です」

 

「良し、レクイエムを発射する!! 青き清浄なる世界の為に!!」

 

司令官の一声と同時にレクイエムの発射ボタンが押された。

月に建造された巨大な戦略兵器がそのベールを脱ぐ。

全てを焼き尽くす光。

開放されたシェルターから強力なガンマ線となって、膨大なエネルギーが発射された。

けれどもその発射線上には何もない宇宙が広がるだけ。

無数に漂うデブリを飲み込みながらも進むガンマ線。

それは意図して配置された筒状の廃棄コロニーを通ると射角を変えた。

ジブリールはシャトルの窓から見える光の筋を見て勝利を確信する。

 

「そうだ、それで良い。コーディネーターは宇宙に漂う害虫だ。塵となって消えろ!!」

 

ガンマ線が生み出す憎しみの輝きはミネルバからも確認出来た。

廃棄コロニーを通過する事で屈折し、また次の廃棄コロニーを通過する。

ブリッジでは発射されたエネルギーがどこに向かってるのかを早急にコンピューターに計算させ弾き出す。

タリアは目の前の光景に思わずシートから立ち上がり、スクリーンに映る映像に目を見開く。

 

「この光は何なの? メイリン、目標地点は?」

 

「計算結果……出ました。これは……プラント首都!? プリリウスです!!」

 

「まさか!?」

 

1度発射されたガンマ線を止める術はない。

狙われたプラント首都。

ブリッジに居るクルーはその光景をただ見る事しか出来ない。

副官であるアーサーの背中にも冷たい汗が流れ、目の前の事実に恐怖した。

 

「こ……こんな事までしてくるのか? ロゴスは? 急いでアプリリウスに通達を!!」

 

「無理、もう間に合わない」

 

「そんな!? 艦長!!」

 

「今は泣き言を言ってる時間はない!! 作戦変更、これより我が艦は敵戦略兵器の阻止に向かう」

 

「ですが、それではジブリールが!!」

 

「第2射が撃たれればプラントは壊滅的な打撃を受ける。その前に何としても阻止しないと。ここから1番近いのはミネルバだけ。行くしかない」

 

タリアの決断にアーサーは反論する事など出来る筈もなく、口を閉ざしスクリーンに映るレーダーを見る。

あれだけのエネルギーを充填させるにはそれなりの時間が必要となるが、それにどれだけ掛かるのか皆目検討が付かない。

次の発射を阻止するには今からの行動を迅速に行うしかなかった。

 

「廃棄コロニー、これに何か仕掛けてあるんだな。月のダイダロス基地から1番近い廃棄コロニーを破壊すれば、発射までの時間を更に稼ぐ事が出来る。艦長、指示を」

 

「コンディション・レッド発令、モビルスーツパイロットは各機のコクピットで待機。いつでも出られるように準備を急がせて」

 

タリアの指示に合わせて艦内に警報が響き渡る。

戦闘に備えてブリッジは遮蔽され、放送によりモビルスーツパイロットは出撃の為にパイロットスーツに着替えた。

デスティニーのパイロットであるシンもパイロットスーツに着替えるとモビルスーツデッキに急ぐ。

その最中、通路の合流地点でヒイロと対面した。

 

「ヒイロ、急ぐぞ。敵の新兵器みたいだ」

 

「わかって居る。新型のデスティニー、使いこなして見せろ」

 

「当たり前だ。俺は赤なんだぞ」

 

「そうだな。操縦マニュアルは見させて貰った。対モビルアーマー用に調整された機体だが、お前なら行ける筈だ」

 

「そうかよ」

 

2人は無重力の通路の床を蹴り、並走しながらモビルスーツデッキに向かった。

整備兵が慌ただしく動く中、新型のデスティニーとレジェンドの準備は既に完了して居る。

レイはもうコクピットへ入っており、ルナマリアもコアスプレンダーのシートに座り発進準備を完了させて居た。

シンも急ぎデスティニーのコクピットに搭乗し、コンソールパネルを叩くとコクピットハッチを閉鎖させる。

エンジン出力を全開にして前進するミネルバ。

ブリッジで指示を出すタリアは、艦尾両舷に設置されたトリスタンの砲身を迫る廃棄コロニーに向け高出力のビームを発射する。

 

「全砲門開放。トリスタン、イゾルデ、一斉射撃!!」

 

タリアの叫び声がブリッジに響く。

ミネルバの主砲、副砲が火を吹き、廃棄コロニーへと発射される。

けれどもロゴスは廃棄コロニーにも小規模ではあるが防衛部隊を展開させており、艦艇が一斉にミネルバの存在に気が付く。

ミネルバの主砲、トリスタンの高出力ビームはコロニーに直撃するが、艦艇を超える巨大な質量を前に数発程度ではビクともしない。

敵艦隊も主砲をミネルバに向け、ビームと砲撃の飛び交う艦隊戦へと移行する。

 

「モビルスーツ、全機発進させて。ミネルバ、微速前進。アーサー!!」

 

「了解です。タンホイザー、エネルギー充填開始します」

 

「ブリッジからパイロットへ。モビルスーツ全機発進。ハッチ開放、カタパルト準備」

 

インカムを通しメイリンの声がコクピットの各パイロットに伝わる。

それを聞いたレイは操縦桿を握り機体を移動させ、カタパルトに繋がるエレベーターに搭乗させた。

モビルスーツデッキからカタパルトに上昇する僅かな時間、レイの心にあるのは確固たる信念のみ。

 

「ここまで来て、ギルの邪魔を許す訳にはいかない」

 

『進路クリア。レジェンド、発進どうぞ』

 

「レイ・ザ・バレル。レジェンド、発進する!!」

 

脚部を固定したカタパルトは機体ごと高速で前進し、メインスラスターを吹かすと同時に開放、背部のエネルギーケーブルも切り離してレジェンドは一気に加速した。

もう一方のカタパルトからは、コアスプレンダーに乗り換えたルナマリアが初めての機体の感触を確かめるようにして、発進態勢に入る。

 

「シミュレーターは何度もやった。大丈夫、行ける……」

 

『進路クリア。コアスプレンダー、発進どうぞ。頑張って』

 

「メイリン……了解!! ルナマリア・ホーク、行きます!!」

 

右足でペダルを踏み込み、加速するコアスプレンダーは開放されたハッチから発進した。

続けて各フライヤーも射出され、ルナマリアはコンソールパネルを叩きガイドビーコンを照射する。

赤いレーザーに誘導されるフライヤーは、主翼を折り畳みコンパクトになるコアスプレンダーとドッキングした。

最後にフォースシルエットを背部にドッキングさせ、バッテリー電力を機体に供給させる。

灰色だった装甲はトリコロールカラーに代わり、右手にはビームライフル、左腕のシールドを展開させメインスラスターを吹かし加速した。

シンのデスティニーもカタパルトに脚部を固定させる。

開放されたハッチの先に見えるのは、ビームが生み出す幾つもの光。

 

「このデスティニーなら出来る筈だ」

 

『敵もモビルスーツを展開して来ました。デスティニー、発進どうぞ』

 

「シン・アスカ。デスティニー、行きます!!」

 

カタパルトから発進するデスティニー。

バッテリーと核エンジンのハイブリットで構成されたデスティニーとレジェンドは他の機体と比べ一線を越える性能を持つ。

ツインアイを輝かせ、背部の赤い羽を広げ光の翼を展開させるデスティニー。

3機は横並びで敵防衛部隊を補足する。

先頭に立つレイは通信を繋げると2人に指示を出した。

 

「俺とドラグーンで敵を撹乱する。ルナマリアは各個撃破、シンは先行して艦艇を叩け」

 

「わかった。シン、先に行って」

 

「了解。ヒイロの出撃、遅すぎないか?」

 

「今は3人でやるしかない。来るぞ!!」

 

展開したウィンダムとダークダガ―Lが装備したビームライフルのトリガーを引き、3機にビームの雨を浴びせて来る。

瞬時に散開する3人。

レイはレジェンドのバックパックに装備されたドラグーンを全機展開させ、迫る敵部隊の中心へ潜り込ませる。

ミネルバで1人出撃してないヒイロ。

ウイングゼロのコクピットには入ったものの、腕を組み目を閉じたまま動こうとはしない。

整備兵のヨウランはいつまで経ってもエンジンすら起動させないヒイロの所にまで急いで詰め寄って来る。

 

「何やってんだよ!! 出撃命令は出てるんだぞ!!」

 

「まだ俺が出る必要はない」

 

「はぁ? 敵はもう目の前なんだぞ!! 今出なくてどうする!!」

 

ヨウランは大声で叫ぶが、ヒイロは口を閉ざしこれ以上言葉を発しようとはしない。

どうしようもないと諦めたヨウランはハッチから離れ愚痴を零す事しか出来なかった。

 

「ガイアで勝手に出撃したかと思えば、今度は命令されても出ないと来た。やっと営倉から出して貰えたのに。次はどうなっても知らねぇかんな!!」

 

離れて行くヨウランにヒイロは見向きもしない。

見えて居るのはもっと先に起こる展開。

 

///

 

ミネルバを振り切るジブリールの乗るシャトルは月のダイダロス基地に入港した。

ジブリールは入港するとすぐに司令部に向かう。

扉のエアロックを解除し中に足を踏み入れると、司令官であるレゾン・クレブルが出迎えた。

 

「ジブリール様、よくぞご無事で」

 

「第1射はアプリリウスに向けたな?」

 

「はい、指示通りに」

 

「プラントはどの程度沈んだ?」

 

「アプリリウスに直撃。今頃、評議会は機能してないでしょう。周辺のプラントも3基まで大破。数分もすれば形を維持出来なくなり宇宙のゴミとなります」

 

「ふふふ、デュランダルの顔が目に浮かぶ。再充填までどれだけ掛かる?」

 

「残り10分です。ですが3番コロニーにザフトのミネルバが」

 

「たかが1隻でどうにか出来る訳がない。充填を急がせろ!! 終わり次第、地球のオーブに発射するんだ!!」

 

「了解です」

 

ジブリールは本気でコーディネーターをこの世から抹殺しようと企んで居る。

そして自分に歯向かう相手も全て。

レクイエム発射のエネルギーが充填されるまで、あまり時間は残されてない。

 

///

 

砲撃を続けるミネルバ。

装甲に砲弾が直撃し艦内が激しく揺れる。

シートに座るタリアは肘掛けで体を支えながらも各員に指示を出す。

 

「くっ!! 直撃を受けた、被害状況を知らせ!!」

 

「軽傷です、稼働に問題ありません」

 

「艦長、ダイダロス基地に高エネルギー反応!! 第2射が来ます!!」

 

「なんですって!? 廃棄コロニーの射角を調べて。それで大まかな狙いが掴める」

 

言われてクルーはレーダーに映る廃棄コロニーの角度から、レクイエムの着弾点を割り出す作業を急ぐ。

艦隊戦を行いながらも、数十秒後には着弾点が割り出される。

スクリーンに映し出される結果を見て、クルーの顔が青ざめた。

 

「これは……艦長!! 敵の第2射の目標は地球です!!」

 

「っ!? シン達に伝えなさい!! あの艦隊を早く突破出来なければ地球にも被害が及ぶ!!」

 

ミネルバのタンホイザーをここで撃つ事は出来ない。

モビルスーツの火力だけで廃棄コロニーを瞬時に破壊する事など到底無理。

タンホイザーを直撃させても破壊出来るかは怪しいが、この状況になってもヒイロのウイングゼロは出撃せず、それしか方法はなかった。

前線で戦うレイはビームライフルでウィンダムの胸部を撃ち抜くと、コンソールパネルに指を伸ばし通信を繋げる。

 

「わかったぞ、奴らの次の目標は地球だ」

 

「地球だって!? あんなのが打ち込まれたら、どれだけの被害が出るかわからないぞ」

 

「急ぐしかない。ルナマリア、シンを援護だ」

 

「了解!!」

 

3機のウィンダムを相手に、レジェンドのドラグーンが飛ぶ。

宇宙空間を自在に動き回る小型のドラグーンを並のパイロットでは見切る事が出来ず、発射されるビームに四脚を撃ち抜かれる。

更にはレジェンド本体からのビームライフルの砲撃。

レイはドラグーンでウィンダムの右脚部を破壊し姿勢制御が困難な相手に銃口を向け、コクピットに正確にビームを撃ち込む。

 

「お前達を相手にする時間はない。コロニーを!!」

 

レジェンドの前にはまだ2機のウィンダムが残って居る。

相手もビームを撃って来るが、新型のレジェンドにはビームシールドが装備されており、造作もなく攻撃を防ぐ。

敵の攻撃はビームシールドで防ぎながら、こちらはビームライフルとドラグーンで一方的に攻撃を仕掛ける。

全方位攻撃をそう何度も避け切る事も出来ず、片方はドラグーンのビームに手足を破壊され爆発に飲み込まれた。

射撃戦では勝てないと踏んだ相手はビームライフルを投げ捨てビームサーベルを抜く。

メインスラスターを全開にし、左腕のシールドを構えて一気に詰め寄る。

ドラグーンの追撃を振り切りレジェンドにビームサーベルを振り下ろすが、ビームシールドに防がれ眩い閃光が走った。

 

『レクイエムの邪魔はさせん!!』

 

「それはこちらも同じだ。議長の理想を実現する為に、障害となるモノは全て消し去る!!」

 

一旦引くウィンダム、そして続けざまにビームサーベルで横一閃。

レジェンドもAMBACとスラスター制御でこれを避け、距離を離そうとメインスラスターを吹かす。

だがウィンダムも逃がすつもりはない。

加速を掛け、ビームサーベルの切っ先をコクピットに伸ばした。

再び閃光が走る。

ビームシールドはその切っ先を通す事はない。

そして展開させて居たドラグーンはレジェンドのバックパックに戻ると同時にエネルギーを供給され、マウントしたまま前方に向きを変えた。

 

『っ!?』

 

「遅い!!」

 

ウィンダムは逃げる暇もなく、次の瞬間にはドラグーンの一斉射撃が白い装甲を貫いた。

両手足を吹き飛ばされ機能不全に陥る敵機に、レイはトドメの一撃を放つ。

先行するシンのデスティニーとルナマリアのインパルス。

当初の作戦通りには行かず、デスティニーは艦艇に取り付けずに居た。

 

「クソ!! 思ったよりも数が多い」

 

「時間がないってのに!!」

 

右肩にマニピュレーターを伸ばしフラッシュエッジを掴み、大きく振りかぶって投げ飛ばす。

回転するフラッシュエッジはブーメランのような軌道を描き、迫るダークダガ―Lの右膝から先を切断しデスティニーの位置を戻って来る。

態勢が崩れた所をルナマリアはすかさずビームライフルを向けトリガーを引いた。

 

「1機撃破。でもこんな事してたら撃たれる!!」

 

「もう少しだけ接近出来れば長射程ビーム砲が撃てる」

 

「だったらここはアタシが抑える。シンは早く行って!!」

 

「でもそれだと……」

 

「時間がないの。早く!!」

 

ルナマリアに急かされ、シンは艦艇に取り付く進行ルートを見出す。

光の翼を展開し、敵防衛網の中を一気に駆け抜ける。

 

「突破する。撃たせるもんかぁぁぁ!!」

 

先行するシンの背中を見守りながら、ルナマリアは残存部隊がデスティニーを追い掛けないように相手をしなければならない。

メインスラスターを全開にして、左腕のシールドを突き出しながら加速する。

背を向けるダークダガーLへ、突き出したシールドの先端をぶつけた。

 

「行かせないって言ってんでしょ!!」

 

ビームライフルの銃口を装甲に密着させてトリガーを引く。

背後から撃ち抜かれた機体は爆発し、インパルスは次の目標に照準を定める。

 

「あぁ、もう!! 右と左、上からも!?」

 

3方向からのビーム攻撃にインパルスは回避行動に移る。

発射されたビームは闇の中を通り過ぎて行くが、右舷からはダークダガーLが迫って来た。

ビームライフルの銃口を向けビームを連射。

発射されるビームは敵機に迫るがシールドに防がれてしまった。

それでもビームコーティングが施されてないシールドは一撃で破壊され、ルナマリアはトリガーを引き続けながら相手に接近する。

防ぐ手段のないダークダガーLはビームライフルを向けながらも回避行動を取るが、インパルスの機動力に追い付かれてしまう。

トリガーを引いてビームを発射するも、アンチビームコーティングのシールドに防がれてしまい、ルナマリアはそのまま左腕を横に振り払った。

シールドは敵機の頭部の装甲を歪ませ、特徴的なバイザーにヒビを入れる。

 

「落ちなさい!!」

 

頭部バルカンと胸部チェーンガンを一斉射撃。

大量に発射される弾丸は黒の装甲をズタボロに破壊し、ダークダガーLは内部から爆発した。

 

「次から次へと!!」

 

インパルスに迫る2機のダークダガーL。

ビームライフルを腰部にマウントさせ、バックパックからビームサーベルを引き抜き、ルナマリアはペダルを踏み込み機体を加速させた。

シンのデスティニーは後方をレイとルナマリアに任せて艦艇へ取り付ける距離にまで来る、

背部左ウェポンラックに装備された大型ビームランチャーを構え照準を敵艦に合わせた。

 

「艦隊を潰せばレイとルナも合流出来る。当たれぇぇぇ!!」

 

大型ビームランチャーから高エネルギービームが発射される。

赤黒く太いビームは艦艇に一直線に進むが、護衛に駆け付けたウィンダムがシールドを構えてこれを防いだ。

機体は一撃で爆散し、それでも残るエネルギーは艦艇に直撃するが破壊するには至らない。

 

「クッ!! なら接近して仕留める!!」

 

大型ビームランチャーを折り畳みウェポンラックに戻し、対艦刀アロンダイトをマニピュレーターに握らせる。

光の翼を展開し高速移動するデスティニーにビーム砲撃の雨と防衛部隊が立ち塞がった。

 

「邪魔だ、退けぇ!!」

 

大きく振り下ろされるアロンダイトは一太刀で敵機を両断し爆発の炎に包まれる。

 

「間に合わないと!! このままだと撃たれる!!」

 

シンの思いとは裏腹に敵部隊はデスティニーを阻止せんと展開する。

モビルスーツを相手にして居ては艦艇を破壊出来ない。

 

「全部で9機、抜けられるか?」

 

敵のモビルスーツは無視してでも突破を試みるシン。

だが迫り来る砲撃はデスティニーが先行するのを許さない。

ビームコーティングが施されたシールドでビームを防ぎながら、シンは決死の覚悟で防衛網の中に突入した。

 

「やるしかないんだ。デスティニーの性能なら行ける!!」

 

ペダルを踏み込み機体を加速させるシン。

一直線に敵モビルスーツ隊に突撃し、左マニピュレーターで頭部を掴む。

開放型のビームジェネレーターから発生するエネルギーがウィンダムの頭部を吹き飛ばした。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

1点だけ開いた穴から機体の機動力に任せて突き抜ける。

高い機体性能とパイロットとしてのシンの技能で、前後で挟み込まれビームを撃たれながらも、被弾する事なく敵艦艇に取り付いた。

 

「はぁぁぁッ!!」

 

全長を超える長さのアロンダイトで機首を横一閃。

激しい火花を飛ばしながら、モビルスーツによる一撃で艦艇を機能不全に追い込む。

そして大型ビームランチャーを素早く展開し、更にトリガーを引く。

高エネルギービームは艦艇を貫通し、巨大な爆発が発生する。

 

「もう少しでコロニーに!!」

 

『未確認の機体が接近してます!! 早い!? シン、気を付けて!!』

 

「未確認の機影!? 反応は2機、アレは……」

 

///

 

レクイエムの発射はいよいよ秒読み態勢に入る。

ほくそ笑むジブリールは今か今かと発射ボタンを押す瞬間を待って居た。

 

「これでオーブの忌々しい小娘にも一泡吹かせられる。そして次はメサイアだ。私はアズラエルのような小僧とは違う。今度こそ……コーディネーターを世界から抹殺する!!」

 

「エネルギー充填、完了しました」

 

「デュランダル!! 奏でてやる、貴様へのレクイエムをな!!」

 

ジブリールは今まさに発射ボタンへ指を伸ばしたその瞬間、通信士から慌てて報告が上がる。

 

「し、司令!! 3番コロニーが!?」

 

「どうした? もう発射準備は整ったのだぞ」

 

「それが……3番コロニーの機能が停止しました!!」

 

「そんな馬鹿な!! ミネルバもモビルスーツも接触出来る距離ではない筈だ!!」

 

「所属不明の機体が2機現れました。防衛部隊は壊滅状態です」

 

「すぐに状況を調べろ!! ここまで来て……」

 

///

 

どの機体よりも早く駆け抜ける白いモビルスーツ。

デスティニーが戦う戦闘領域に侵入したかと思うと、両手に握ったビームライフルとサイドスカートのレールガン、背部の翼に設置されたドラグーンを展開させる。

コクピットの球体型立体表示パネルが展開し、眼前に広がる敵機を1度にロックした。

 

「ターゲットロック、マルチロック。こんなモノはもう、必要ないんだ!!」

 

一斉に発射されるビーム。

正確な射撃は機体の武装とメインカメラなど、パイロットを殺さないようにして機能不全にする。

その中でもデスティニーだけはシールドを構えて攻撃を防ぐが、耐え切る事が出来ずに爆発し破壊されてしまう。

発射されたビームの先、シンの赤い瞳は目の前に突然現れた機体に釘付けだった。

 

「アレは……あの機体は……」

 

白い機体とは対称的に、もう1機現れた赤い機体は巨大補助兵装ミーティアを装備して廃棄コロニーに接触すると、モビルスーツの腕で操作出来るウェポンアームから巨大なビームサーベルを発生させコロニーを破壊して行く。

元々が廃棄されて居た建造物。

筒状だったコロニーは瞬く間に原型を崩し、発射されたガンマ線を屈折させる事は出来なくなってしまう。

 

「間に合った。でもアレはデータにない。ザフトの新型なのか?」

 

「デスティニー、パイロットはシンか」

 

突如現れた未確認機体。

それはシンの因縁の相手でもあり、裏切りの相手でもある。

 

「フリーダムとジャスティス!! 貴様らがぁぁぁ!!」

 

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第27話 自由と正義

 

シンの眼前に現れた2機の新型モビルスーツ。

青い翼を持ち、内部フレームが全て金色に染められたソレは、細かな箇所は変更されて居るが紛れも無くフリーダム。

そしてミーティアとドッキングするもう1機のモビルスーツ。

赤い装甲、銀色の内部フレーム。

バックパックにマウントされた航宙・航空用リフターは、2年前の大戦で使用されたジャスティスを彷彿とさせる。

 

「良くも戻って来れたな。アスラン・ザラ!!」

 

「シン、お前は!!」

 

ペダルを踏み込みメインスラスターを吹かすシン。

アスランのジャスティスもドッキングしたミーティアから分離する。

加速するデスティニーは握ったアロンダイトを構え大きく振り下ろした。

眩い閃光が走る。

左腕の実体シールドに内蔵されたビームジェネレーターから発生するビームシールド。

発生したビームの膜はデスティニーのアロンダイトの刃を通さない。

 

「アンタが裏切るから!!」

 

「聞くんだ、シン!! 議長は――」

 

「うるさい、黙れ!!」

 

一旦引くシンは右肩にマニピュレーターを伸ばしフラッシュエッジを握る。

間髪入れず腕を振るいフラッシュエッジをジャスティスに投げ付けた。

ピンク色に光るビーム刃が回転しながらアスランに迫る。

それでも、歴戦の兵士である彼の反応も早かった。

 

「この程度なら!!」

 

実体シールドの先端からビームが伸びる。

横一閃するジャスティス、迫るフラッシュエッジをはたき落とす。

頭に血が上るシン。

攻撃を防がれても尚、ジャスティスへの攻撃は止めない。

光の翼を展開しアロンダイトを構え加速する。

瞬間的に迫って来るデスティニー、ジャスティスはまた左腕のシールドを前方に突き出す。

内蔵されたワイヤーアンカーが伸び、デスティニーの左脚部に食い付く。

 

「しまった!? ぐぅっ!?」

 

「性能もわからない相手に突っ込み過ぎだ。シン!!」

 

「いいや、まだだ!!」

 

食い付いたワイヤーは強引にデスティニーの姿勢を崩し、ジャスティスの元へ引き寄せる。

右手にはビームライフル。

密着して撃たれれば新型のデスティニーでも致命傷になる。

意識を集中させるシン。

怒りに身を任せて戦って居たが、途端に頭の中がクリアになる。

反射と反応速度が飛躍的に上昇し、突き付けられるビームライフルの銃口を半身を反らし回避した。

引かれるトリガー。

発射されるビームは闇に消える。

 

「なっ!? 避けた!?」

 

一時とは言えデスティニーと交戦したアスランはその性能をわずかではあるが知って居る。

そして乗って居るパイロットの動きや癖も熟知して居るつもりだった。

絶対の自信を持って居たが、予想を上回るシンの動きに舌を巻く。

伸ばされるマニピュレーターがジャスティスが握るビームライフルを掴んだ。

 

「っ!!」

 

瞬時に反応するアスラン。

握ってたビームライフルを手放した瞬間、パルマフィオキーナが炸裂する。

至近距離で起こる爆発、同時にワイヤーアンカーもデスティニーを手放してしまう。

ヴァリアブルフェイズシフト装甲が採用されて居る両機にダメージはない。

 

「今の俺なら、どんな敵にだって勝てる!!」

 

「何を!!」

 

「アンタは裏切ったんだ。俺の敵だ!!」

 

「俺はまだ、お前にやられるつもりはない!!」

 

匠に操縦桿を操作するアスラン。

膝からつま先に掛けて設置されたビームブレード。

デスティニーを右足で蹴り上げようとする。

だがソレよりも早く、シンはパワー任せに右膝をジャスティスの股関節部にぶつけた。

 

「ぐっ!!」

 

姿勢を崩す機体、激しく揺れるコクピット。

AMBACとスラスター制御で態勢を整える。

距離を離しつつ、リフターのフォルティスビーム砲と実体シールドのビームジェネレーターからビームを撃つ。

デスティニーも左腕のビームシールドで迫るビームを防ぐ。

 

「逃がすものか!! アスラン!!」

 

追い掛けようとするシンだが、レーダーにもう1機の反応が映る。

 

「フリーダム!!」

 

「アスラン、ここは1度引こう。ミーティアを。ザフトは僕が抑える」

 

「キラ、頼む」

 

デスティニーの相手をキラに任せるアスラン、放置したミーティアとドッキングしエターナルと合流すべく大型スラスターに火を付ける。

そしてフリーダムは迫り来るデスティニーに右手のビームライフルを向けた。

 

「どうして!? 僕達が戦う理由なんて……」

 

「お前にはなくても、俺にはある!!」

 

「くっ!!」

 

発射されるビームは左腕のビームシールドに防がれる。

光の翼を広げるデスティニーは接近戦を仕掛けるべく加速するが、フリーダムも背部のドラグーンを展開させると光の翼を展開した。

戦場を駆け抜ける2つの翼が交わる事はない。

縦横無尽に飛び回るドラグーンはデスティニーを囲み全方位攻撃で攻め立てる。

素早く動かす操縦桿。

AMBACと細かなスラスター制御。

シンは卓越した集中力でドラグーンの攻撃を避け続ける。

 

「クソ!! 近付けない。それに……」

 

視界に捉えるフリーダムの姿。

その動きは新型である筈のデスティニーよりも早い。

高い機動力と運動性能を見せつけながら、両手に握るビームライフルからビームが撃たれる。

 

「ただ改修しただけじゃない。こっちも新型に乗り換えて強気になってたけど、甘かったって言うのか!!」

 

「もう止めろ!! こんな事をしても意味はない!!」

 

回避ばかりで攻撃に転じる事が出来ないシン。

デスティニーの周囲を飛び回るドラグーン。

そこにまた、別の形状をしたドラグーンが飛んで来た。

 

「ドラグーンはまだ使い慣れてないようだな」

 

「レイか!?」

 

「シン、先行しろ。ルナマリアも居る」

 

入り混じる青と灰のドラグーン。

両機とも小型ではあるが、レイの方がドラグーンの動きが洗礼されて居る。

互いに発射されるビーム。

その中で灰色のドラグーンはビームを避けながらも、フリーダムのドラグーンを2機落とす。

武装が破壊されただけだが、キラの乗るフリーダムもロールアウトされたばかりの新型。

この段階でまだ機体にダメージを通す訳には行かなかった。

 

「ドラグーンが!? 右からも来る!!」

 

展開させたドラグーンを回収しようと意識を傾けるが、レーダーには更にもう1機モビルスーツの反応。

ルナマリアの乗るインパルスは、加速しながらビームライフルのトリガーを引く。

 

「新型だからって!!」

 

「3つの敵が!?」

 

右腕のビームシールドを展開するキラはインパルスのビームを防ぐ。

だがその間にも目の前からは接近するデスティニー。

シンは右肩のフラッシュエッジを掴み大きく振り払う。

回転するビームブーメランはフリーダムに迫る。

考えるよりも前に反射的に体が動く。

展開するサイドスカートのクスィフィアスレール砲。

高速で発射される弾丸はフラッシュエッジに直撃し爆発の炎を上げる。

 

「行ける!!」

 

瞬時に機体を反転。

両手に握るビームライフルを連結させインパルスの左腕を狙う。

構えて、狙い、トリガーを引く。

常人を超えるキラのスピード。

発射されるビームは通常よりも速度と貫通力が高く、アンチビームコーティングの施されたシールドごとインパルスの左腕を貫く。

まさに一瞬、1秒と掛かってない。

ビームにより爆発する左腕はインパルスからちぎれ飛ぶ。

 

「ぐぅっ!! でも、まだぁ!!」

 

「来るのか!?」

 

被弾しても尚、ルナマリアはペダルを踏み込みインパルスを加速させる。

ビームライフルのトリガーを引くが、高い運動性能とパイロットの技量の前に全て避けられてしまう。

それでも諦めずにメインスラスターを全開にして迫るルナマリア。

フリーダムに劣りはするが、インパルスも開発されて1年と経過してないモビルスーツ。

両者の間は一気に狭まり、射撃戦の出来る距離ではなくなって居る。

左サイドスカートにマニピュレーターを伸ばすキラ。

 

「メインカメラが失くなれば」

 

一方のルナマリアはビームライフルを投げ捨て、右腕を伸ばしフリーダムに組み付く。

フリーダムが握るビームサーベルの切っ先はインパルスの頭部を貫いた。

だが両機は完全に密着しており、切り離すには破壊するしかない。

 

「今しかない!! シン、撃って!!」

 

「味方ごと撃つのか!?」

 

「大丈夫ッ!!」

 

言われてシンは左ウエポンラックから大型ビームランチャーを展開し、照準を重ね合わさる2機に合わせた。

躊躇する事なく引かれるトリガー。

高出力のビームが一直線にフリーダムとインパルスに飛ぶ。

それを見たルナマリアはコンソールパネルに指を伸ばし、コアスプレンダーと各フライヤーとを分離させた。

発射されたビームが届くよりも早く、コアスプレンダーのメインスラスターを吹かす。

 

「っ!!」

 

目を見開くキラ。

右手に握る連結ビームライフルを手放し、両腕のビームシールドを全開にして迫る高出力ビームの方向へ向き直る。

電力供給が絶たれたインパルスの装甲がビームシールドに焼かれた。

そしてデスティニーの発射したビームは背部からインパルスを貫き、フリーダムの爆発に包み込む。

 

「グゥゥッ!! アークエンジェルは?」

 

メインスラスターを吹かし、爆発から脱出するフリーダム。

コクピットを激しく揺らしたが、白い装甲にダメージはない。

アスランのジャスティスとミーティアは戦闘領域から離脱しており、アークエンジェルとミーティアも近づいて居る。

レーダーで確認したキラはこれ以上の戦闘はせず、後方部隊と合流すべくデスティニーとレジェントから背を向けた。

当然、シンは逃げるフリーダムを追い掛けようとする。

 

「逃がさないって言ってんだろ!!」

 

「待て、シン。ここはミネルバに帰艦する」

 

「何で、邪魔しないでくれ!!」

 

「いいや、ダメだ。ルナマリアのコアスプレンダーでは戦力にならない。それにこのまま近付けば艦隊戦になる。今のミネルバには時間がない。帰艦してジブリールを追う方が先だ」

 

「クッ!! 目の前に居るって言うのに……」

 

苦虫を噛み潰した表情をするシン。

フリーダムから背を向けるデスティニー、レジェンド、コアスプレンダーはミネルバへと帰艦する。

 

///

 

廃棄コロニーが破壊されて暫くの時間が経過した。

ダイダロス基地のジブリール。

この基地に逃げ込んだ事はミネルバからの報告でザフトにバレており、時間と共に増えつつあるザフト軍をモニターで見て居た。

しかしその顔は、追い詰められつつあるというのに余裕の表情。

 

「ギルバード、全軍を率いてこの私を打ち倒しにくるか。だがそう簡単にはやらせんよ」

 

ジブリールは連合軍の司令官にレクイエムのチャージを急がせる。

突如として現れた新型のフリーダムとジャスティスにより、月からもっとも近い位置の廃棄コロニーは破壊されてしまった。

それでも残された廃棄コロニーの角度を軌道修正する事で、また狙った位置にレクイエムを撃ち込む事が出来る。

 

「この私を捕まえる事にずいぶん意気込んで居るようだがそれが命取りだ!! チャージが終わった瞬間、ザフトは宇宙の塵と消える!!」

 

月の表側のアルザッヘル基地、及び戦略兵器レクイエムを死守するべく、基地内部から大部隊が発進しザフト軍を迎え撃つ。

その中には、かつてシンを苦しめたデストロイが4機も居る。

 

「いいか、なんとしても守りきれ!! 今1度レクイエムを撃つ事が出来ればこちらの勝ちだ!!」

 

基地からはブースターを装備した艦艇が次々と基地から飛び出して行く。

月の表面にも展開される大部隊。

 

「エネルギーチャージ40パーセント充填」

 

着々とチャージの進むレクイエム、ジブリールはその瞬間を今か今かと待ち望んで居る。

 

///

デュランダルは自らが機動要塞メサイアの司令部に立ち、何としてもこの戦争を終わらせようとして居た。

ザフトも部隊が集結しつつある中、通信士からロゴスに動きがあったと報告を受ける。

 

「向こうが先に動き出したか。全軍に通達、これよりダイダロス基地攻略作戦を開始する。この戦いが終われば戦争は終わる。各員の健闘に期待する」

 

デュランダルの言葉は全軍に伝わり、同時に士気が向上した。

ミネルバもデュランダルからの指示を聞き、ダイダロス基地攻略部隊との合流を急がせる。

モビルスーツのパイロットはデッキで合流後の作戦会議をして居た。

アスランが居なくなってから作戦の指揮はレイが取る事になる。

 

「もうすぐ前線部隊と合流する。初手はヒイロのウイングゼロが出てくれ。バスターライフルで敵の防衛網に穴を開ける。その隙にシンと俺で基地に取り付く。ルナマリアはミネルバの防衛と俺達が突入した後のヒイロの援護をしてくれ」

 

レイが作戦の概要を伝えるが、それに対しルナマリアが意見する。

 

「でもヒイロ1人じゃ危険じゃない? それならアタシと一緒の方が」

 

「いや、レイの作戦は正しい。お前はミネルバの防衛に専念しろ」

 

ヒイロはあくまで一人で行こうとする。

ルナマリアは心配するがそれ以上は何も言わず、レイは作戦の説明を続けた。

 

「敵の戦略兵器のデータも回って来た。アレはゲシュマイディッヒ・パンツァーを搭載した廃棄コロニーを通す事でガンマ線を屈折させる。屈折を繰り返す事で狙った位置に撃ち込む事が可能にして居る。フリーダムが廃棄コロニーの1つを破壊した事で奴らも今はまだ使えない。でもそれも時間の問題だ。第1戦で月周回軌道の敵部隊を崩して突破する。補給した後、月面のダイダロス基地だ。シン、敵はデストロイも準備して居る。今のお前とデスティニーなら行ける筈だ」

 

「わかった」

 

力強く頷くシン。

作戦の説明が終わると放送でメイリンの声が流れて来た。

 

『コンディション・レッド発令。パイロットは搭乗機で待機して下さい』

 

「行こう、レイ。もう戦いを終わらせよう」

 

立ち上がる4人はモビルスーツデッキに待機する自分の機体へ向かう。

シンも自らの搭乗機であるデスティニーに急ぐ。

ハンガーに固定された機体を確認してシンは走ろうとするが、突然誰かに後ろから肩を引かれる。

振り向いた先に居たのはヒイロの姿。

 

「どうした? 時間がないんだぞ」

 

「デスティニーは俺が乗る。お前はゼロを使え」

 

「はぁ!? お前、何言って――」

 

「ゼロシステムがお前の戦うべき敵を見出してくれる。それと、他にやる事が出来た。デスティニーの方が動きやすい」

 

「やる事って……」

 

シンの言葉も聞かずにヒイロは言葉を続ける。

そしてそのまま本来のパイロットである筈のシンを置いて、1人勝手にデスティニーのコクピットに入り込んだ。

 

「操縦系統は他と変わらない。お前なら出来る筈だ」

 

「だからって!!」

 

ヒイロはそこまでしか言わず、強引に機体のハッチを閉鎖した。

残されたシンは言われた通りにウイングゼロに乗るしか道はない。

 

「何だって言うんだよ、アイツは!? クソォォォ!!」

 

///

 

アークエンジェルとエターナルも月のダイダロス基地へ向かって居た。

それでもザフトの進軍と比べればその速度は遅い。

ブリッジではこれからの動きに付いてマリューが頭を悩ませ、彼女の隣にはキラが居る。

 

「ザフトも必死か。メサイアと投入してでも、ジブリールを撃つ気で居る」

 

「戦力は増強しましたけど、過信は出来ませんね」

 

「えぇ、両軍の動きを見てからでないと。また、2年前と同じになってしまうなんて」

 

「あの時はそれしか方法がありませんでしたから。未来はどうなるかわかりませんけれど、今度こそ良くなるようにと願って僕達はココに居る」

 

新しくなったフリーダムとジャスティス。

合流したラクスのエターナルとミーティア。

戦力は増えたが、このまま突入すればロゴスとザフトの挟み撃ちに会い勝てる見込みは全くない。

迂闊に突入する事も出来ないが、両軍が交わり合うのも時間の問題。

すると、並走するエターナルから通信が繋がって来た。

モニターに表示された先には艦長シートに座るラクスの姿。

 

『マリューさん、そちらの準備は?』

 

「こっちは問題ありません。それよりも両軍の動きが気になります」

 

『ダイダロス基地攻略にはミネルバが来てます。なんとか共闘出来れば次の発射には間に合うかもしれん』

 

「残念ですがそれは無理でしょう。ですがアレをまた撃たれれば、また甚大な被害が出ます。こちらはこちらで行動に移りましょう」

 

マリューの言葉にラクスは静かにまぶたを閉じる。

そしてまたゆっくりと開き、鋭い視線でキラに目線を移す。

 

『キラ、アレをまた撃たせる訳には参りません。厳しい戦いでしょうが頑張って下さい』

 

「わかってる。アスランにも伝えて」

 

『えぇ、わかりました。では』

 

途切れる通信。

エターナルのブリッジでラクスはシートに座ったまま首を傾けた。

その先に居るのは、ザフトから逃亡したアスラン。

 

「アスラン、聞いての通りです。次の戦場にもミネルバが来ています。また彼らとも戦う事になるでしょう。ですがわたくし達は止まる訳には参りません。ダイダロス基地を制圧出来れば、次はミネルバと戦う事になるやもしれません」

 

「覚悟は決めた。ジブリールを止める、そしてこの戦争も終わらせる。例えまた、アイツラと戦う事になろうとも」

 

決意を口にするアスランに、ラクスは何も言わない。

ロゴスとザフト、両軍の決戦の火蓋は切られようとして居た。

 

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第28話 シンが見る未来

 

月表面に展開するロゴスの防衛部隊。

ミネルバはこの防衛網に穴を開けるのが仕事だ。

開放されたハッチからは、発進準備の完了したモビルスーツが順次発進する。

 

「レイ・ザ・バレル。レジェンド、発進する」

 

カタパルトから発進するレジェンドはメインスラスターを吹かし加速する。

バッテリー電力の供給によりヴァリアブルフェイズシフト装甲を機能させ、ツインアイが輝く。

隣のハッチからはルナマリアのコアスプレンダーが発進し、各フライヤーとドッキングする事でフォースインパルスへと変形した。

カタパルトで発進態勢に入るデスティニー。

アームが自動的にマニピュレーターへビームライフルと実体シールドを運びそれを装備する。

ハッチの先に見えるのは、目前に迫る巨大な月。

 

『進路クリア、デスティニー発進どうぞ』

 

「了解した。デスティニー、出撃する」

 

『えっ!? どうしてヒイロ――』

 

モニターの向こう側では通信士のメイリンが驚きの声を上げるが、ヒイロは言うべき事だけを言うとコンソールパネルに指を伸ばし通信を切ってしまう。

両手で操縦桿を握り、ペダルを踏み込むヒイロはデスティニーで出撃する

反対側のハッチからはウイングゼロに搭乗したシン。

メイリンは急いで通信を繋げ、モニターにはヘルメットを装備したシンが映る。

 

『どうしてシンがそっちに居るの!? デスティニーは?』

 

「俺が聞きたいぐらいだよ。兎も角、今は時間がないんだ。敵部隊も展開してる。この機体で出る!!」

 

『それはそうだけど……。わかった、気を付けて』

 

「シン・アスカ、ウイングゼロで行きます!!」

 

カタパルトから発進するウイングゼロ。

初めての機体に操縦性を確かめながら動かすシンは、先行する3機と合流する。

合流した先でも、ヒイロ以外は戸惑うばかりだ。

 

「どうしてデスティニーにヒイロが乗ってるの!? シンもどうして?」

 

「そんなの俺だってわからねぇよ。ヒイロに直接聞いてくれ」

 

「俺もあまり人の事は言えないが、少し勝手が過ぎるぞ。ヒイロ、シンをウイングゼロに乗せる事に意味はあるのか?」

 

モニター越しに冷静に言及するレイに、ヒイロは応える。

 

「意味を見いだせるかどうかはアイツ次第だ。俺は俺でやる事がある。その為にはデスティニーが動きやすいと判断したまでだ」

 

「やる事?」

 

「あぁ、別ルートからアークエンジェルも月へ向かって居る。奴らの動向を探る」

 

ヒイロの言葉を飲んだレイはまぶたを閉じ、ゆっくり口を開けた。

 

「わかった」

 

「ちょっとレイ!? 本当に大丈夫なの?」

 

「ここで議論した所で無駄な事だ、既に作戦は開始して居る。ルナマリアも今は自分の役目を真っ当するんだ。行くぞ!!」

 

「っ!? 了解!!」

 

前面に展開する敵モビルスーツ部隊。

レジェンドはドラグーンを展開させ、インパルスはビームライフルで敵機を狙い撃つ。

ヒイロが乗るデスティニーは翼を広げメインスラスターを全開にした。

近づく4機のウィンダム。

ビームライフルの砲撃がデスティニーに迫るも、高い運動性能と左腕の実体シールドがこれを防ぐ。

銃口を向けるヒイロはまず、中央に数発トリガーを引いた。

発射されたビームを避ける為に一時的ではあるが4機の編成が崩れる。

一気に距離を詰めるデスティニー。

バラバラに別れた1機に照準を合わせ、更にもう1発。

ビームはウィンダムが握るビームライフルを破壊して右肘から先を持って行く。

態勢が崩れた瞬間、コクピットに光が差し込む。

敵パイロットは髪の毛1本すらこの世に残さず、灼熱のビームに飲み込まれた。

 

「敵機の破壊を確認。次のターゲットに移る」

 

照準を変えるヒイロ。

ビームライフルを腰部にマウントさせ、左肩からフラッシュエッジを掴む。

ペダルを踏み込み加速するデスティニーは次のウィンダムへ接近し、短いビームサーベルを発生させると腕を振り下ろす。

シールドを構えるウィンダムだが、ビームの刃に腕ごと斬り落とされた。

ヒイロはトリガーを引く。

頭部バルカンから吐き出される弾丸は機体の胸部へと集中し、パイロットは数秒後に炎へ包まれた。

 

「残り2機。70秒で方を付ける」

 

瞬時に機体を動かす。

接近戦の強いデスティニーに残る2機はビームライフルで攻撃しながら中距離を維持する。

アンチビームコーティングの施された実体シールドでコレを防ぐ。

そして背部の翼を広げ光の翼を展開するデスティニー、残像を生み出しながらビームの中をすり抜けて行く。

ヴォワチュールリュミエールによる残像は機体の速度も然る事ながら、残像による撹乱で敵パイロットを翻弄する。

接近するヒイロはまず左のウィンダムをターゲットに設定し、握るフラッシュエッジで振り払った。

切断するビームライフル。

ウィンダムのパイロットは直ぐ様武器を投げ捨て、サイドスカートからビームサーベルを引き抜いた。

残ったエネルギーが爆発し視界を遮る。

ウィンダムはそのまま加速し爆発の煙のに突っ込み、握るビームサーベルをデスティニーに突き立てた。

 

「甘いな」

 

遮られた視界の先から半身を反らす。

ビームサーベルの切っ先は空を斬り、伸ばされた右腕をデスティニーは左マニピュレーターで掴む。

炸裂するビーム。

パルマフィオキーナがウィンダムの腕を吹き飛ばす。

 

「あと1機」

 

デスティニーの背後に迫る敵機。

ヒイロはレーダーで感知するも相手の方が動きが早い。

向けられる銃口から放たれるビームは背部に突き進む。

展開した光の翼がより一層強く輝く。

ビームはデスティニーに直撃する事はなく、寸前で屈折し装甲にダメージはない。

眼前のウィンダムが残った左腕のシールドで振り払う。

AMBACで姿勢を低くし頭上を通り過ぎる。

再び左のマニピュレーターを突き付け閃光がほとばしった。

放たれる閃光はコクピットを吹き飛ばす。

振り返り戦闘画面に映る敵機。

ビームライフルで牽制しながら後退するウィンダムに腕を大きく振り払いフラッシュエッジを投げる。

弧を描きながら飛ぶビームブーメラン。

損傷を阻止すべく、ウィンダムはライフルの銃口をフラッシュエッジに向け、兎に角トリガーを引き続ける。

何発もビームが発射された末に、フラッシュエッジは敵機の装甲に当たる事なく破壊されてしまう。

けれどもその時には光の翼を展開したデスティニーがウィンダムを通り過ぎて居た。

後を追い振り返ろうとするも、先に撃たれたビームが右脚部、そして頭部を撃ち抜く。

 

「敵部隊の壊滅を確認。来たか……」

 

レーダーに映る新たな反応。

別ルートから進んで居たアークエンジェルとエターナルから出撃するモビルスーツ。

ストライクフリーダムとインフィニットジャスティス。

そして護衛として派遣された2機のドムトルーパー。

ヒイロだけでなく、ウイングゼロに乗るシンにもレーダーで確認出来た。

 

「あいつら、性懲りもなくまた来るのか!!」

 

先行しようとするシン。

だがレイのレジェンドが肩にマニピュレーターを接触させる。

 

「止めろ、シン。今はロゴスの防衛部隊を叩く方が先だ」

 

「でも!!」

 

「奴らもこの部隊を前に突入して来る程自惚れては居ない。今動いてもフリーダムは倒せない。それどころかロゴスに挟み撃ちに合うぞ」

 

「クッ!!」

 

「今は目の前の敵と任務に集中するんだ」

 

言うとレジェンドはメインスラスターを吹かし戦線に復帰する。

シンも同様にウイングゼロで敵部隊の殲滅に掛かった。

右足でペダルを踏み込み、両翼の大型バーニアを展開し加速する。

等速運動を無視するかのような急激な加速。

コクピットに伝わるGはダイレクトにパイロットの負荷となる。

 

「グゥゥッ!!」

 

歯を食いしばり、強烈な負荷に耐えるシン。

滝のように流れる景色。

食いしばる歯茎からはいつの間にか血が滲んで居る。

 

(なんて加速だ!! こんな機体にアイツは乗ってたのか!?)

 

戦線を突き抜けるウイングゼロ。

なんとかペダルと操縦桿を戻すシンは機体の速度を減速させ、右肩からビームサーベルを引き抜く。

迫る敵部隊に接近戦で挑む。

ビームライフルで牽制して来るウィンダムに狙いを付け、シンは再び機体を加速させた。

 

「この機体のパワーなら行ける!!」

 

加速しながらも、高い運動性能で発射されるビームを回避する。

一瞬の内にウィンダムの懐に入り、握ったビームサーベルで袈裟斬り。

敵機の白い装甲は熱した包丁でバターを切るかのように簡単に破壊された。

貯蔵されたバッテリーのエネルギーが爆発するよりも早く、シンは次の敵に狙いを定める。

 

「もっとだ、もっと来い!! 俺が全部叩き斬ってやる!!」

 

四方から発射されるビームを物ともせず、シンは敵陣の中に突入する。

ウイングゼロの機動力を前に量産機では逃げる事も出来ず、接近されビームサーベルを振るわれれば防ぐ事も出来ない。

ビームサーベルで横一閃。

シールドを構えるウィンダムを何もないかのように分断する。

振り返ると同時にビームサーベルを振り下ろす。

ウィンダムが左右に別れ、次の瞬間にはウイングゼロを炎で包む。

至近距離からの爆発であるにも関わらず、白い装甲にはキズひとつ付いてない。

 

「7時の方向、敵の巡洋艦か!!」

 

モビルスーツの攻撃に混じって、艦艇から強力な主砲がウイングゼロに向けられる。

ビームが届くよりも前に主翼大型バーニアを展開し回避行動に移るシン。

艦艇の援護を受けながら更にモビルスーツが送り込まれて来た。

操縦桿のトリガーを引き、両肩に内蔵されたマシンキャノンを展開するも弾は既に使い切っており、カタカタと音をならして回転するだけ。

 

「弾切れなのかよ。だったら!!」

 

装甲に格納されるマシンキャノン。

シールドのマウントされたツインバスターライフルを向けるシンは、敵の艦艇に狙いを定める。

エネルギー出力は抑え気味にしてトリガーを引く。

発射されるビームはそれでも高出力で、艦艇の機首に突き刺さると内部から爆発し一撃で破壊してしまう。

 

「凄い……この機体ならどんな奴にだって勝てる!! アイツラにだって!!」

 

頭の中に思い浮かべるのは家族を殺した仇であるフリーダムと、自分達を裏切ったアスランの姿。

同時に発動するゼロシステムはシンに倒すべき敵を見せる。

 

「ロゴスを倒す!! そうすればあの2人も倒せる!!」

 

先行するウイングゼロは更に敵機を撃破して行く。

突き出す右手のビームサーベルはウィンダムのコクピットを貫く。

怒りを闘志に変えて戦うシンに、ゼロシステムは更なる力を与える。

 

「落ちろぉぉぉ!!」

 

袈裟斬りするウイングゼロはまた1機、敵機を破壊した。

大量のビームと弾丸、爆発が入り混じる中で、シンは敵の防衛網を崩す為にレーダーに反応する敵機を次々と撃墜する。

パイロットの脳へダイレクトに伝わるビジョン。

それは一種の幻覚を生み出す。

次にシンが見た敵は、ここに居る筈がないフリーダムの姿。

 

「フリーダム!? どうしてこんな所に!!」

 

ペダルを踏み込み加速。

握るビームサーベルで袈裟斬りするも相手の動きは早い。

切っ先は空を斬り、フリーダムが展開したドラグーンが背部を撃つ。

ビームは装甲に直撃し、激しい爆発が機体とパイロットを襲う。

 

「ぐぅっ!! まだ終わってない!!」

 

主翼大型バーニアを展開し更に加速。

再び接近し、右腕を勢い良く振り落とす。

だがフリーダムは左腕のビームシールドでコレを防ぎ、両腰のクスィフィアスが至近距離で展開する。

 

「なっ!?」

 

反応するが既に遅い。

高速で発射される弾丸は再びウイングゼロに直撃し、激しい振動がパイロットに掛かる。

それでもまだ機体は動くし、シンの闘志も衰えては居ない。

 

「今のがビームだったらやられて居た……クソッ!! 舐めやがってぇぇぇ!!」

 

シンは果敢に攻め立てるが、ビームサーベルの切っ先がフリーダムに触れる事はない。

袈裟斬り、振り払い、更に袈裟斬り。

そのどれもが空を斬り、隙を晒してしまう。

フリーダムは武器を構えずとも胸部カリドゥス砲を正面に発射する。

高出力の赤黒いビーム。

左腕のシールドで防ぐシンだが、全く反撃に移る事が出来ない。

 

「何が違う、何が足りない!! これだけの性能を持った機体でも、アイツに勝てないのか?」

 

力の差に嘆くシン。

ウイングゼロの性能を頼りにしてもフリーダムに一太刀浴びせる事も出来ない。

カリドゥス砲を受け切り視界を開けた瞬間、眼前には全ての武装を構えるフリーダム。

 

(間に合わない、死ぬ!?)

 

息を呑み目を見開く。

何本ものビームが一斉に発射され、避ける事も防ぐ事も出来ずに無数のビームの直撃を受けてしまう。

 

「うあああぁぁぁっ!!」

 

ビームの直撃を受けて流されるウイングゼロ。

コクピットでは、肩で息をしながらもなんとか操縦桿を握る手に力を入れるシン。

バイザーを閉じたヘルメットの中では粒状になった汗が幾つも浮いて居る。

 

「はぁ、はぁ、どうなってる? 俺は生きてるのか?」

 

ヘルメットに手を伸ばしバイザーを開け浮いた汗を出す。

混乱しながらも戦闘画面とレーダーを確認すると、フリーダムの姿はもうどこにもなかった。

だが、まだもう1人因縁の相手は居る。

右手にビームライフルを握る赤い機体、ジャスティスが目の前に現れた。

 

「アスラン!!」

 

「もうこんな戦いは止めるんだ、シン!!」

 

「うるさい!! アンタが裏切るから!!」

 

ジャスティスはシールドのワイヤーアンカーを射出しウイングゼロの動きを制限しようとするが、高い機動力と運動性能を駆使してシンは避けながらジャスティスに接近する。

 

「もうこんな……復讐に囚われた戦い方は止めろ!! そんな事をしても、何も戻りはしない!!」

 

「うるさい!! アンタなんかに何がわかる!! 裏切り者のくせに!!」

 

振り下ろされるビームサーベル。

ビームシールドで攻撃を防ぐジャスティスは、右手のライフルの銃口を密着させトリガーを引く。

発射されるビームで爆発が起こり、機体は激しく揺れる。

 

「まだだ、この機体ならまだ戦える!! アイツに勝てるだけの力がある!!」

 

ツインバスターライフルの銃口を向けるシン。

トリガーを引こうと指に力を入れた瞬間、死んだ筈の妹の姿がジャスティスと重なる。

 

「そんな!? どうしてマユが……」

 

「お前が求めて居たモノはなんだ? フリーダムを倒す事か? その為の力か?」

 

「俺は……俺は……グゥゥッ!!」

 

再び機体が激しく揺れる。

呼吸が荒くなり、視界もぼやけ意識が薄れる中で、シンは目の前の敵を見た。

視界に映るのはフリーダムとジャスティスの2機。

 

「はぁ、はぁ、はぁっ!! 俺が倒すべき敵……俺が求めるモノ……アイツラを倒す力!! それさえあれば!!」

 

ツインバスターライフルの出力を全開にして、銃口を眼前の敵に突き付ける。

力強く引かれたトリガー。

高出力ビームが全てを飲み込まんと発射された。

けれどもそれを遮るのは、味方である筈のルナマリアのインパルス。

 

「ルナ!? なんで、やめろォォォッ!!」

 

ビームに飲み込まれるインパルス。

装甲は一瞬の内にエネルギーの濁流の前に消え去り、ネジ1本として残さずシンの視界から居なくなる。

呆然とするシンは頭を左右に振り目の前の光景を否定した。

 

「そんな……ウソだ!! ジャスティスを……アスランを倒しても、こんな事じゃ……」

 

「勝つと言う事はこう言う事だよ」

 

ゼロシステムが見せる新たなるビジョン。

それは平和な世界を作るを宣言した男、ギルバード・デュランダル。

 

「議長……」

 

「誰がの屍を踏み付ける事で勝ちを得る。時には味方でさえも。そこまでしなければ勝ち取る事は出来ないのだよ。キミはその踏み付けた屍で何をする?」

 

「屍、ルナが!? 嫌だ……嫌だァァァ!!」

 

「ならば何も出来ないまま死ぬが良い。因縁の相手によってね」

 

見ると2丁のビームライフルを連結させたフリーダムがシンを狙って居た。

息を呑み恐怖する。

頭が混乱に体も動かない。

だがビームが撃たれる事はなく、レイのレジェンドがフリーダムへと組み付いて居た。

 

「撃つんだ、シン!! 俺ごとフリーダムを!!」

 

「何で、どうして!! 俺はこんな事をしてまで倒したい訳じゃない!! 僕には撃てない!!」

 

「そうだ、それで良い」

 

「レイ……」

 

目の前から消えるビジョン。

システムの幻覚状態から逃れたシンが見た光景は、敵のウィンダムのコクピットへビームサーベルを突き立てて居た。

 

「今までのは何だったんだ? 俺は何をして居た……」

 

ビームサーベルを引き抜くと、動かなくなった機体が流れて行く。

周囲に漂うのは破壊されたモビルスーツの幾つもの残骸。

現実と幻覚との堺が曖昧な状態ではあるが、前に出過ぎて居るシンは後方部隊に合流する為に操縦桿を動かす。

 

///

 

アークエンジェル、エターナルから発進する2機のモビルスーツ。

フリーダムとジャスティスはミーティアとドッキングすると、先行して敵部隊を叩きに行く。

既にザフトとロゴスの戦いが始まって居る中で、優先すべきはロゴスにレクイエムを使わせない事。

 

「行こう、アスラン。もうこんな事は終わらせないと」

 

「あぁ、ロゴスの暗躍もここで終わらせる。その次はザフトの在り方だ。ラクスが集めた情報、そして俺がウイングゼロで見た未来。デュランダル議長の計画はなんとしても阻止する」

 

「うん。僕達はその為に来たんだ」

 

ミーティアの大型バーニアを点火させ進むフリーダムとジャスティス。

けれどもそこに近づくモビルスーツの反応が1機。

レーダーが捕らえ、戦闘画面に表示される形式番号から、接近して来るのはデスティニーだとわかる。

 

「デスティニー、シンか。まだ俺やキラに執着して居るな」

 

「あまり時間を掛けると攻め込むタイミングな失くなる。強い相手だけど、一気に決めよう」

 

進路変更を視野に入れるキラだが、エターナルから更に2機のモビルスーツが発進した。

加速する2機はドムトルーパー。

ヒルダ機は先行するフリーダムの肩にマニピュレーターを触れさせる。

 

「キラ様、ここは任せて下さい。お2人はダイダロスを」

 

「ですが、あの機体は……」

 

「撃破は無理でも時間稼ぎくらいは出来ます。急いで下さい」

 

「わかりました。気を付けて」

 

ヒルダとマーズにデスティニーを任せ、フリーダムとジャスティスは前線へと向かう。

アークエンジェルとエターナルの防衛を任された2人は、迫るデスティニーをモノアイに収める。

 

「行くよマーズ!! これからの戦いは、全てラクス様の為に捧げる!!」

 

「了解。仕掛けるぞ」

 

メインスラスターを噴射する2機。

青白い炎の線を描きながら、ドムとデスティニーが交わる。

ビームバズーカを構え、ヒルダは先制攻撃を仕掛けた。

 

「ぶっ飛びな、赤羽!!」

 

「戦闘レベル、ターゲット確認。排除開始」

 

太い銃口から放たれる高出力ビーム。

バレルロールを駆使して簡単に回避するヒイロもビームライフルを向けてトリガーを引く。

地上での動きが早いドムだが、宇宙に出てもそれは健在だ。

既存の量産機とは一線を越す性能。

難なく回避するヒルダは更にビームバズーカを撃つ。

 

「相手が新型だろうと関係ないね!! こっちだってロールアウトしたばかりの新型機だ!!」

 

「この動き……パイロットはあの時と同じか」

 

「沈みな!!」

 

次々に撃たれるビームを避けながら、時にはシールドで防ぎながらヒイロもビームライフルを撃つ。

互いに中距離戦を繰り返しながらもマーズのドムが右脇から攻める。

 

「これなら!!」

 

強化型ビームサーベルを振り落とすドム。

瞬時に反応するヒイロは振り向き左腕の実体シールドを構えるが、度重なる攻撃により消耗しており半分に分断されてしまう。

斬られたシールドが漂う中で、使えないシールドを腕からパージしてすぐにマニピュレーターを右肩に伸ばした。

フラッシュエッジを掴むデスティニーは素早く横一閃。

両者を照らす閃光。

展開するビームの刃はビームシールドに防がれる。

 

「舐めてんじゃねぇぞ!!」

 

「マーズ、そのまま押さえな!!」

 

スクリーミングニンバスを起動させ機体前面に赤い粒子を展開するヒルダ機。

強力なバリアを張りながら、接近しつつビームバズーカを撃つ。

ペダルを踏み込むヒイロはマーズ機から距離を離し回避行動に移る。

だが態勢を立て直す時間を与える2人ではない。

 

「逃がすものか!! ジェットストリームアタックで仕留めるよ!!」

 

「OKだ。スクリーミングニンバスを展開させる」

 

バリアを展開する2機のドム。

ヒイロはフラッシュエッジを戻し、背部のウェポンラックから大型ビームランチャーを展開させ、ヒルダ機に強力なビームを発射した。

一直線に突き進む赤黒いビーム。

それでもスクリーミングニンバスはその全てを受け切った。

 

「そんな攻撃に!!」

 

ビームバズーカで迎撃するヒルダにヒイロは素早く大型ビームランチャーを背部へ戻す。

再びフラッシュエッジを掴むと同時に、背中の赤い翼を大きく広げた。

目前に迫るビーム。

だが次の瞬間、デスティニーはそこに居ない。

 

「なっ!? 残像だって言うのかい!!」

 

光の翼を展開して動くデスティニーの動きに翻弄されるヒルダ。

それはマーズも同様で、ビームサーベルを振り下ろした先にあったのはミラージュコロイドが生み出す残像。

 

「早い!?」

 

「敵を挟み込み攻め落とす。戦略としては間違ってない。だが相手の力量を見誤ったな。何より機体の性能を過信し過ぎたのがお前のミスだ」

 

マーズ機の背後に回り込むデスティニーは頭部バルカンでドムの頭部をズタズタに引き裂く。

そしてフラッシュエッジでバックパックを斬り付け爆発が起こる。

姿勢を崩すマーズ機は宇宙の闇へ流されて行く。

 

「お前、よくもやってくれたね!!」

 

「甘い!!」

 

ビームバズーカを投げ捨てるヒルダはビームサーベルを引き抜くが、既に目の前にデスティニーの姿はない。

スクリーミングニンバスを展開するドムに回り込むヒイロはフラッシュエッジで右腕を斬り落とした。

 

「こんな……こんな事が!?」

 

「目標は達成した。次の任務に移る」

 

戦闘能力を失ったヒルダ機を置いてヒイロは流されて行ったマーズ機の後を追う。

残されたヒルダは悲痛の叫びを上げるが、その声は宇宙に消える。

 

「マーズ……マァァァズゥゥゥッ!!」

 

///

 

ミネルバのブリッジでタリアは戦況を分析する。

激しく揺れる艦艇の中、シートに座りながら通信士のメイリンに指示を出す。

 

「モビルスーツ隊を1度帰艦させて。補給が終わった後、再び攻め込みます。月の防衛網を破るまで後少し。各員気を引き締めて」

 

「こちらミネルバ。モビルスーツ隊はただちに帰艦して下さい」

 

出撃した4機に飛ばされる通信。

それを受けてインパルスとレジェンドは指示に従いミネルバへと戻る。

けれどもその中にデスティニーの姿はなかった。

ビームサーベルでウィンダムを斬り落としたシンは、ミネルバに帰艦すると同時にデスティニーの行方も探す。

 

「帰還命令が出てるってのに、アイツは何やってんだ? デスティニーは俺の機体なんだぞ」

 

レーダーと目視で機体を探すシン。

暫く時間が経過した後、戦闘領域から少し離れた場所にデスティニーの反応が見つかった。

ペダルを踏むシンは急いで機体の回収に向かう。

 

(この機体に乗ってわかった。俺はこの機体のパワーに引かれたけれど、戦う力を機械に求めたらダメだ。俺は自分の力で勝ち取る。そして倒すんだ、あの2機を!!)

 

戦闘画面に映るデスティニーの姿が少しずつ大きくなる。

機体の動きは完全に止まっており、ヴァリアブルフェイズシフト装甲もダウンして灰色の装甲になって居た。

 

「どうした? ヒイロ、応答しろ。ヒイロ!!」

 

コンソールパネルに指を伸ばし通信で呼び掛けるシン。

だが機体に目立った損傷箇所は見当たらないにも関わらず、デスティニーから返事は返って来ない。

機体を回収する為に急いで接触するが、動かないデスティニーのコクピットハッチは何故か開放されて居る。

カメラでコクピット内部をズームして確認するも、搭乗して居る筈のヒイロの姿はなかった。

 

「ヒイロ……」

 

ウイングゼロはパイロットが居なくなったデスティニーを抱えてミネルバに帰艦する。

ロゴスの防衛網は確実に崩壊しつつあった。

ザフト軍の猛攻、そしてミーティアとドッキングしたフリーダムとジャスティスの活躍により、ダイダロス基地への侵入経路が見えて来る。

キラとアスランはその段階まで来るとアークエンジェルとエターナルへ帰艦した。

核エンジンを搭載して居ても推進剤や実弾兵器は消耗する為、必ず補給の為に戻らなくてはならない。

モビルスーツを帰艦させたエターナルのブリッジでは、艦長であるラクスとバルトフェルドが戦況を見定めて居た。

 

「戦況はザフト側に傾いたようですね。ですが、わたくし達の目指すモノはその先にあります。ナチュラルとコーディネータ、この戦いの輪廻を断ち切らねば」

 

「あの戦略兵器の第2射は阻止しないとな。中継ポイントが復活する前にダイダロスのジブリールを叩く」

 

「バルトフェルド隊長」

 

「ダゴスタ君、何かあったか?」

 

「前方から不審なモビルスーツが流れてきます。どうしますか、迎撃しますか?」

 

「うん? ちょっと待て、アレは……」

 

ダゴスタの報告でモニターを凝視するバルトフェルド。

そこには居なくなったマーズのドムが居た。

 

「機体が損傷しているな。緊急着艦の用意、医療班も待機させてくれ」

 

ダゴスタに指示を出しドムを収容する為の準備に入る。

損傷するマーズ機は、辛うじて生きて居るバーニアを吹きながらゆっくりエターナルに向かって来た。

頭部は破壊され、メインスラスターも正常に機能しない。

右腕も失くなっており、コクピットハッチもズタズタにされて居る。

そこまで見て、バルトフェルドは異変に気付く。

 

「いや違う!! ダゴスタ、ハッチを閉じろ!!」

 

ボロボロのハッチから僅かに覗く隙間。

そこから見えるパイロットスーツはマーズのモノではない。

それに気付き急いでハッチを閉じようとするが、目前にまで迫るドムはエターナル内部に滑り込んで来た。

ボロボロの機体を壁に擦り付け、火花を上げながらカタパルトを進む。

壁に激突するとドムは動かなくなり機体から火の手が上がる。

「モビルスーツの消火作業に回れ!! 他のクルーは侵入者を逃がすな!! ダゴスタはラクスを頼む、ブリッジは狙われやすい。俺は賊を追う」

 

「了解です。さぁ、ラクス様」

 

「えぇ、お願いします」

 

ダゴスタはラクスを連れて、バルトフェルドは懐から拳銃を抜き侵入者を捕らえる為にブリッジから走る。

 

「チッ!! やってくれるな」

 

ラクスは護衛を付けて自室に向かう。

けたたましく鳴り響く警報音。

その中でも彼女はいつもの様に余裕を持って居た。

 

「ラクス様はお部屋にてお待ち下さい。ここは自分が何としても」

 

「お心遣い、ありがとうございます。ですが私は大丈夫です。ご自分の仕事に戻って下さい」

 

「しかし!!」

 

「バルトフェルドさんにはわたくしから言って置きます。心配はご無用ですわ」

 

悩むダゴスタだが、ラクスに直接言われたのでは拒否出来ない。

心残りはあるが、彼女の指示に従う事にする。

 

「わかりました。ですが何があっても部屋の扉は開けないで下さい。侵入者は必ず自分達が捕まえます」

 

「頼もしい限りです」

 

言うとラクスはダゴスタに背を向けて部屋に入ってしまう。

閉じられる扉、それそ確認してからダゴスタも侵入者の追跡に出た。

けれどもその様子を影で覗く人物が1人。

 

「警護が引いたか。作戦を遂行する」

 

それを見たヒイロは銃を構えてラクスの部屋に足音を消して走った。

周囲を警戒しつつ、壁のパネルを操作してロックを解除する。

自動開閉を機能させず、右手に銃を握ったまま残る左手で重たい扉をゆっくり音を立てずに開けた。

中へ足を踏み入れるヒイロ。

息を殺しながら進む先に彼女は居た。

ラクスは警戒心の欠片もなく、背を向けてソファーに座っている。

こちらに振り向く素振りもない。

ヒイロは握る銃をラクスの後頭部に突き付ける。

 

「動くな」

 

聞こえて来たのはヒイロの声ではない。

鋭く視線を向けた先には、黒く光る銃口が見える。

 

「アスラン・ザラか」

 

「銃を下ろすんだ。キミを撃ちたくはない」

 

こめかみに突き付けられる銃口にヒイロは構えを解き握る銃を床に落とす。

重たい鉄の音が鳴る。

それを聞いて、ラクスはソファーから立ち上がりヒイロに振り向いた。

 

「お久しぶりです、ヒイロ・ユイ。オーブの海岸で出会って以来ですね」

 

「ラクス・クライン」

 

「はい、そうでございます」

 

「何故こんな無意味な事をする? ロゴスはもう保たない。地球連合の組織の枠組みもいずれ失くなる。お前のして居る事は無意味だ」

 

ホールドアップされて居るにも関わらず威圧的に話すヒイロ。

それでもラクスは笑みを浮かべて話を続けた。

 

「えぇ、わたくしもわかっています。ですがデュランダル議長のデスティニープランをこのまま見過ごすわけには参りません」

 

「デスティニープラン?」

 

「アレは人の自由を奪う物です。たとえ今の世界から戦争が失くなろうとも、人々の未来を奪うなどと言う行為を許す訳にはいきません。ですから、わたくしは今ここに居ます」

 

「だがお前達が戦う事で戦争での犠牲は増えていく」

 

「とても悲しい事です」

 

「わかった……」

 

そう言うとヒイロは静かに目を閉じた。

アスランは持って居る手錠をヒイロの手首に掛けようとするが、ラクスがそれを静止する。

 

「待ってくださいアスラン。彼を自由にしてあげてはくれませんか?」

 

「ラクス!? でもヒイロはキミを殺しに来たんだぞ?」

 

「彼は心の優しい方です。お願いします」

 

そう言われてアスランは手錠を外した。

ラクスの計らいで、ヒイロは捕まる事もなくエターナルに居る事になる。

 

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第29話 変革へと繋がる終焉

 

月表面の防衛網を突破したザフト。

取り付くミネルバはダイダロス基地のレクイエム破壊を向かう。

だがロゴスの戦力は未だに健在だ。

基地からは複数のモビルスーツが発進し、更には巨大モビルアーマーのデストロイも投入して来る。

かつてシンを苦しめた機体。

それが1機どころか2機、3機、まだ出て来る。

歩くだけで地響きを鳴らす巨体が6機も現れた。

モニターで視認するタリアはシートの肘掛けを強く握り締め、鋭い視点を敵へ向ける。

 

「アーサー、これより本艦はダイダロス基地に攻め込みます。そのことを司令部にも通達して頂戴」

 

「えぇ〜っ!? 無理ですよ、ミネルバだけであの防衛網を突破出来る訳が――」

 

「いいから!! 中継ポイントの制圧が予定より遅れてる。このままあれを撃たれたら部隊は全滅するかもしれない。補給が完了したモビルスーツから順次発進!!」

 

「はっはい!」

 

タリアの気迫に押されて言う通りにするアーサー。

ミネルバはダイダロス基地に向けてスピードを上げる。

待機室では補給に戻ったパイロット達がわずかな休息を得ていた。

けれどもそこに、戻って来ない人物が1人。

 

「ヒイロが居ない? どう言う事?」

 

「俺にだってわからない。機体の信号をキャッチして合流した時にはもうコクピットには居なかった」

 

「戦死したって言うの?」

 

「いいや、デスティニーのバッテリも推進剤もまだ充分に残ってた。アイツの技術があれば逃げる事くらいは出来る筈だ」

 

「そっか……ねぇ、レイは何か聞かされてないの?」

 

チューブに入った水を飲むレイは視線をルナマリアに向ける。

休憩もないまま連戦をし、流石のレイの表情にも疲れが見えた。

 

「俺は何も知らない。そもそもアイツは他人に言う性格ではない。生きてるのだとしたら、独自に行動してる筈だ」

 

「勝手な奴、言ってくれれば手伝うくらい……」

 

「俺達の本命はロード・ジブリールの抹殺だ。それの障害になると考えたのかもしれない」

 

元は5人だったパイロットも今や3人にまで減ってしまった。

脱走したアスラン、行方不明のヒイロ。

だが寂しさを感じてる暇などなく、メイリンの声が放送で響く。

 

『パイロットは搭乗機にて待機して下さい。繰り返します、パイロットは搭乗機にて待機して下さい。ミネルバはこれより、ダイダロス基地への攻撃を開始します』

 

「シン、ルナマリア、行くぞ。奴は必ず仕留めなくてはならん」

 

「あぁ、この戦争を終わらせる」

 

「えぇ、必ず」

 

「敵の戦略兵器が厄介だ。まずはアレを沈める必要がある。3人で戦略兵器を目指す。1人でも取り付けば、後は基地の制圧に掛かる。そうすれば味方も合流しやすくなる」

 

「わかった」

 

「なら、アタシはブラストで出る」

 

目的を共有した3人は互いに視線を交え、一呼吸した後にモビルスーツデッキへと向かった。

集中力を高める為、通路に出てから口を開けるモノは居ない。

各自、自分の機体へ搭乗し速やかに発進態勢に入る。

シンのデスティニーも脚部をカタパルトへ固定させ、開放されたハッチから出撃した。

 

「シン・アスカ。デスティニー、行きます!!」

 

ミネルバから出撃する3機のモビルスーツ。

行く手を阻むのは、複数用意されたデストロイ。

メインスラスターから青白い炎を噴射しながら接近する3人は、目の前に展開する敵部隊に舌を巻く。

 

「敵もなりふり構わずやって来るな」

 

「デストロイの攻撃力は確かに驚異的だ。だが、あんなモノを基地周辺で使えばどうなるか……シン、ルナマリア、デストロイを相手にする必要はない。兎も角、今は戦略兵器を沈めるんだ」

 

ダイダロス基地へ乗り込む為、3機はメインスラスターを全開にする。

当然デストロイは一斉にビーム砲撃を繰り出す。

1発直撃するだけで艦艇を沈められるだけの威力があるビーム

それを前にしながらも3人は機体を加速させるのを止めない。

デスティニーとレジェンドにはビームシールドが備わっており、デストロイのビームであろうとも防ぎきる事が出来る。

インパルスは2機を壁にしながら前へと進む。

 

「ビームスパイクで隙を作る」

 

レジェンドの背部プラットフォームに装備された2基の大型ドラグーン。

スラスター制御で進むドラグーンは銃口に鋭いビーム刃を発生させて、縦横無尽に飛んで来るビームの中を掻い潜る。

デストロイの懐に潜り込んだビームスパイクはスラスターで加速し、関節部である膝に突撃した。

右脚部に穴の開くデストロイ。

その巨大なボディーと重量は片足で支えられるモノではなく、地響きを鳴らしてデストロイは陥没する。

 

「もう少しでシェルターに!!」

 

///

 

ミネルバの医務室。

真っ白なシーツが敷かれたベッドで眠るステラは、激しい振動に目を覚ました。

 

「ぅん……シン?」

 

ベッドから体を起こす彼女だが、そこにシンの姿はない。

見えるのは椅子に座る軍医だけ。

 

「目が覚めたのかい?」

 

「だれ……?」

 

「キミの治療を担当してる主治医だよ。本当なら、こんな戦艦にキミを置いておくべきではないのだろうが」

 

「シン……シン……どこ?」

 

「彼なら出撃して居る。心配しなくても彼なら――」

 

再び激しく揺れるミネルバ。

軍医は机で体を支え、ステラもベッドにしがみつく。

数秒後には揺れは収まり、ステラはベッドから立ち上がった。

ふと視線を向けた先には設置されたモニターがあり、それにはかつて自分が乗って居たデストロイが映って居る。

 

(あの機体……私……私だけじゃない。スティング?)

 

かつての仲間、今は解体されたファントムペインのモビルスーツパイロット、スティング・オークレー。

彼もステラと同じくエクステンデッドであり、強引に体を調整してデストロイに乗せる事は可能だ。

その可能性が頭に浮かんだステラは居ても立っても居られず、薄い病衣のまま医務室から走り出す。

 

「うううゥゥゥ!!」

 

「ステラ!? ここから出てはダメだ!! ステラ!!」

 

軍医の声は届かず、ステラは扉を開けて出て行ってしまう。

戦闘中の艦内の通路にはクルーの1人も居らず、彼女を止められる人間は居ない。

寝たきりの体にも関わらずその動きは俊敏で、ロゴスにより強化された体は素早く彼女を走らせる。

 

(そと、宇宙に……待ってて、スティング)

 

通路を走り抜ける彼女が向かう先はモビルスーツデッキ。

ミネルバの細かな構造は把握出来てないが、今までの任務の経験から大まかな位置はわかる。

数分も全力疾走で走り続ければ、目的の場所は見付けられた。

パイロットスーツに着替える事もなくモビルスーツデッキに入り込むステラ。

中には当然整備兵も居るが、今1番重要なのは使える機体があるかどうか。

素早く視線を左右させ周囲を見渡すステラは、まだ出撃してない1機のモビルスーツを見付けた。

 

「あれ……」

 

「うん? あの娘は……」

 

整備兵の1人であるヨウランは目立つ彼女の姿を見付けた。

慌ただしいモビルスーツデッキで自分の仕事以外には見向きもしないモノが殆ど。

ヨウランはステラの元へ近づこうとするも、それより早くに彼女は機体のすぐ傍のリフトに乗ってしまう。

 

「お、オイ!! 何やってんだ!!」

 

「じゃましないで!! スティングが居るの!!」

 

「その機体はキミが乗れるようなモノじゃない!! 兎も角、戻って来るんだ!!」

 

ステラはヨウランの言葉にも耳を貸さない。

コクピットハッチまで上昇するリフト。

開放されたままのコクピットに乗り込む彼女はシートベルトを装備してハッチを閉じる。

両手で操縦桿を握り、エンジンを起動させた。

 

「マズイ!? 親方、ウイングゼロが!!」

 

ツインアイとサーチアイが眩しく輝く。

動き出したウイングゼロはそのままエレベーターへと歩いて行く。

 

「なんだろ? 変な……感覚」

 

エレベーターで上昇するウイングゼロ。

登り切った先でハッチは開放されて居た。

報告を受けたブリッジでは、タリアの判断によりウイングゼロを外に出すことを選択する。

 

「良いのですか、艦長?」

 

「良いも悪いもない、こうするしかないでしょ!! この重要な時に!!」

 

怒りをあらわにするタリアは肘掛けを思い切り叩き付けた。

 

「ですがこのままだと撃破されるかもしれませんよ!!」

 

「中で暴れられるよりはマシだと考えなさい!! トリスタンで敵モビルスーツ部隊を迎撃、タンホイザーのチャージを急がせて!!」

 

ステラはウイングゼロに乗って戦場へと飛び出した。

背部の大型バーニアが展開しウイングゼロはする。

だが、既存の機体を遥かに超える加速性能はパイロットを容赦なくGの負荷に掛けた。

シートベルトが少女の柔肌に食い込む。

 

「ぐぅぅぅっ!? 凄い……加速……」

 

加速する限りは絶え間なく続くGの負荷。

筋肉が、骨が軋む。

集中力が切れれば意識が飛びそうになるほど。

それでもステラはスピードを落とそうとはしない。

最大加速のまま、シン達が戦う前線へと足を踏み入れる。

 

「スティング……どこ?」

 

デストロイはまだ5機存在して居る。

その中でスティングが搭乗して居る機体を見つける事など普通では出来ない。

ステラはわずかな可能性を信じて、一心不乱に外部音声で呼び掛けた。

 

「スティング……スティングゥゥゥ!!」

 

戦場で彼女の呼び掛けを聞くモノなど居ない。

前方からはウィンダムの3機編成がウイングゼロの迎撃に当たった。

 

「敵、邪魔!!」

 

右肩からビームサーベルを引き抜くウイングゼロは、そのまま腕を振り下ろし袈裟斬り。

高出力のビームは眼前のウィンダムの装甲を容易に斬り裂いた。

機体は爆発し炎に包まれる。

それでもトリコロールの装甲にダメージはない。

ウイングゼロの戦闘力を目の当たりにし、ビームライフルの銃口を向ける2機のウィンダムは距離を離しながらトリガーを引く。

 

「このくらい!!」

 

メインスラスターから青白い炎を噴射してビームを避ける。

そして逃げようとするウィンダムにステラは再び詰め寄り、ビームサーベルの切っ先をコクピットに突き立てた。

敵はシールドで防ごうとするが、アンチビームコーティングすら施されてないシールドでウイングゼロの攻撃を防ぐ事は出来ない。

シールドをバターのように一瞬で溶かし貫く切っ先は、パイロットの居るコクピットに突き刺さった。

 

「あと1機……」

 

ビームサーベルを引き抜くと、力を失くしたウィンダムは月の重力に引かれて落ちて行く。

左手に握るツインバスターライフルを残る1機に向けるステラ。

照準を合わせ、操縦桿を握る指に力を込める。

 

「っ!? なに……」

 

瞬間、視界がボヤける。

トリガーを引く事を躊躇してしまい、その間にビームの直撃がウイングゼロを襲う。

 

「ぐぅっ!! あんな奴に!!」

 

激しく揺れるコクピット。

ステラは歯を食いしばりながら、ツインバスターライフルを最大出力で発射した。

高出力のビームは一瞬の内にウィンダムを飲み込み、そしてネジ1本としてこの世に残さない。

だが、最大出力のビームはこの程度で止まる事はなく、突き進んだ先で月面に直撃した。

全てを包み込む巨大な炎、割れる大地。

 

「なに? 何なの、コレ? 私が……う゛ぅっ!?」

 

こみ上げる吐き気に思わず前屈みになってしまう。

震える体、焦点の定まらない視界。

システムが見せる幻影に彼女の精神が拒絶する。

 

「嫌ぁ……嫌、いや、イヤァァァ!! 助けて、ネオ!! ネオ!! 1人はイヤァァァ!!」

 

コクピットの中で涙を流しながら叫ぶステラ。

両手で頭を抱え、戦うのも忘れて体を振り回し暴れ回る。

次第に体を保持する為のシートベルトが肌を削り血が滲む。

それでもコクピットに居る限り、システムから逃れる事は出来ない。

割れるような頭痛が彼女を苦しめる。

 

「来るなァァァッ!! 私に触るな!! もう嫌、痛いのはイヤァァァ!! ネオ、助けて……助けてよぉ」

 

忌まわしい過去、恨むべき過去は、自身ですら手の届かぬ心の奥底に封印されて、今のステラは存在する。

それが今、システムにより無慈悲にこじ開けられた。

到底耐え切れるモノではなく意識を手放してしまいそうになるが、パイロットを勝利へ導く事だけを目的としたゼロシステムはそれを許さない。

命ある限りパイロットは最後まで戦わせる。

けれども精神が耐え切れない反動は体に現れた。

早くなる鼓動、血の流れ。

鼻からは血が溢れだし、眼球も赤く滲む。

 

(痛いのも……苦しいのも……助けて、ネオ……たすけ……て……)

 

耐え切れなくなった精神は遂に、生命維持を停止しようとした。

ゆっくりとまぶたを閉じた先に見えるのは、素顔も知らない仮面の男の姿。

 

(大丈夫、キミを守る)

 

(ほんとうに?)

 

(本当さ、約束する)

 

(ありが……とう……シン……シン? 私はこの人の事を知ってる。覚えてる。約束……約束した!! また、一緒に星を見るって。だから……)

 

閉じられたまぶたが再び開かれる。

視界には血と涙の粒が所々に浮かんでるが、彼女は気にもせず操縦桿に手を伸ばす。

覚醒した意識はステラに力を与える。

 

「こんな所で……死ねない!! シンとの約束は守る!!」

 

大型バーニアを展開させるステラは機体を加速させ前へと進む。

 

///

 

ダイダロス基地へ取り付いた3機は各自の判断に任せて3方向に別れる。

ルナマリアのブラストインパルスも向けられる砲撃を掻い潜りながら、作戦目標であるレクイエムを目指す。

侵攻を阻止すべく駆け付ける敵モビルスーツ部隊。

 

「ウジャウジャと。時間もないのにエネルギーも節約しないといけない、コッチの身にもなりなさいよ!!」

 

バックパックに装備されたケルベロスと一体になる4連装ミサイルランチャー。

そして肩部にある2門のレールガンを前面に展開し残弾を気にせず一斉射撃。

実弾兵器の使用ではエネルギーの消耗はない。

ミサイルの直撃により爆発の炎が視界一杯に広がる。

眼前の敵部隊を薙ぎ払い、2人よりも先にレクイエムに取り付く事に成功した。

目前と迫まるレクイエムのシェルター、だが基地地下から新たにもう1機のデストロイがルナマリアの前に立ち塞がる。

 

「うそ!? 寄りにもよって!!」

 

両腕を前方に突き出すデストロイはインパルスに集中してビームを一斉射撃する。

無数のビームを前に全てを避ける事など出来ず、シールドを構えて機体を守るが、そのせいで前に進む事が出来ない。

 

「こんな所で、止まれないの!!」

 

陽電子リフレクターにビームは効果がない事はルナマリアも知って居る。

ブラストのケルベロスを使用してもデストロイを退ける事は出来ないし、接近しようにも圧倒的な火力でインパスルを寄せ付けない。

それでもルナマリアはビームジャベリンを引き抜き、メインスラスターを全開にして強引に突っ込む。

 

「こんのぉぉぉォォ!!」

 

絶え間なく発射されるビームを防ぎきるが、シールドはすぐに限界が来た。

砕け散るアンチビームコーティング性のシールド。

 

「しまった!? クッ!!」

 

防ぐ手段の失くなったインパルスに、デストロイは更に追い打ちを掛ける。

発射される大口径のビームは機体の左脚部を飲み込む。

辛うじて大破は免れたが、インパルスの動きは止まってしまう。

 

「絶体絶命ね。ゴメン、メイリン……」

目の前にそびえ立つデストロイへの恐怖でルナマリアは動く事が出来ない。

瞳に涙を浮かべ、体がすくんでしまう。

次の瞬間にはインパルスを確実に破壊するビームが発射される。

 

「ルナマリア、だめぇぇぇ!!」

 

「え……」

 

デストロイから発射されたビームの先に、インパルスの姿はない。

動けないルナマリアを助けたのは、どこからか駆け付けたウイングゼロ。

だが、その機体に乗って居るのはヒイロではない。

 

「その声……ステラなの!?」

 

「大丈夫、生きてる?」

 

「え……えぇ。でも、どうしてこんな所に?」

 

「スティングを助ける。だから、ルナマリアもこんな所で諦めないで。シンが悲しむ」

 

「そうしたいけど機体が……」

 

インパルスは脚部が破壊されたのと同時にメインスラスターにも障害が起こった。

本来の出力が出ないせいで逃げる事も出来ない。

 

「なら、私が何とかする。離れないで」

 

右マニピュレーターでインパルスの腕を掴むとウイングゼロは加速した。

ツインバスターライフルを構えて一気に接近するステラ。

2機居るにも関わらず物ともしない加速性能。

ビームの雨を掻い潜り懐に入り込むステラはツインバスターライフルの銃口を突き付けた。

 

「これなら!!」

 

けれどもステラはトリガーを引かない。

動きの止まったウイングゼロにデストロイは当然ビームを放つが、寸前の所でスラスターを吹かし回避する。

 

「なに? どうしたの、ステラ?」

 

「スティング……アレに乗ってるのはスティングだ!!」

 

「どうしてわかるの?」

 

「この機体のお陰」

 

「ウイングゼロの……」

 

「スティング、ステラだよ!! 返事して、スティング!!」

 

ステラは攻撃を仕掛けて来るデストロイに懸命に呼び掛けた。

声は届いて居るが、目の前の敵が攻撃を止める事はない。

 

「こんなの無謀過ぎる。ステラ!!」

 

「やってみないとわからない!! シンは私を助けて来れた。だったら、私にだって出来る!! スティング、攻撃を止めて!! 私の声を聞いて、スティング!!」

 

何度目かの呼び掛け。

ずっと続いて居たビームの雨がピタリと止んだ。

デストロイは力を失くしたかのように頭を垂れる。

 

「うそ!? 止まったの?」

 

「やっぱり、アレに乗ってるのはスティングなんだ!! スティング、聞こえる? ステラだよ!!」

 

喜びに満面の笑みを浮かべ、再び呼び掛けるステラ。

その声にデストロイのパイロットであるスティング・オークレーは応えた。

 

「ス……テラ……」

 

「スティング!! 良かった、無事で。待ってて、すぐに助けるから」

 

「無事じゃ……ねぇよ。へへ、酷い顔してるぞ。お前」

 

モニターに映る彼女の顔は溢れでた鼻血により、肌どころか病衣、果ては髪の毛までも汚れて居た。

それよりも、今のステラはファントムペインに所属して居た頃と比べて明確に違う部分がある。

明確な自分の意思。

ステラの瞳には強い意思が戻って居る。

体は成長して居るのに幼子のようだった彼女の姿はもうない。

インパルスを引き連れてデストロイに接近するウイングゼロ。

もう少しでコクピット部に着こうとした所で、レクイエムが発射されるシェルターが開放された。

 

「シェルター、またアレが撃たれる!? ステラ、止めて!! アレが撃たれたら」

 

「わかった!!」

 

インパルスを手放すウイングゼロは背部大型バーニアを展開してレクイエム直上に移動しようとした。

しかし、突如としてバーニアの出力が低下してしまい、目前の所で機体は動かなくなってしまう。

握る操縦桿を激しく上下に動かすが、どれだけやってもバーニアに反応はない。

 

「どうなってるの、推進剤が切れた!? なんで整備してないの!!」

 

「ビーム砲は? それだけの威力があれば撃ち抜けるでしょ」

 

「それはダメ。微調整のやり方がわからない。このまま撃ったら月ごと破壊しちゃう」

 

「そんな!? 兎に角、そこから離脱して。そんなに近い所だとエネルギーの余波で機体が危ない」

 

「完全に推進剤が失くなってAMBACしか出来ない。間に合わないよ!!」

 

ウイングゼロはジタバタと足掻くだけで前にも後ろにも進む事が出来ない。

ルナマリアのインパルスも自由に動く事が出来ず、レクイエム発射は刻一刻と迫る。

ここで動いたのはスティングのデストロイ。

 

「ちょっとアンタ、どうする気!?」

 

「ステラの奴も助けて、レクイエムの発射も阻止する。それだけだ」

 

「モビルアーマーみたいな巨体で間に合うって言うの?」

 

「間に合わせる!!」

 

地響きを鳴らしながら歩行するデストロイはレクイエム発射口へと向かう。

ボディーと同じく巨大な腕を伸ばしながら、宇宙を漂うステラに呼び掛けた。

 

「掴む事くらいなら出来るな?」

 

「うん、それぐらいなら」

 

巨大なマニピュレーターにしがみつき一命を取り留めるステラだが、スティングは進む方向を変えなかった。

 

「スティング、なにを!?」

 

「お前はこのままインパルスの母艦に回収されろ。俺はコイツを止める」

 

「あんなの……無理だよ!! いくらデストロイでも耐え切れない!!」

 

「黙って見てろ!!」

 

ウイングゼロを掴んだ腕は本体から切り離されて、スラスター制御でインパルスの元へと向かって行く。

その間にパイロットの乗るデストロイはレクイエム発射口に飛び込んだ。

 

「スティング!! 待って、スティング!!」

 

(グゥッ!? 意識が……)

 

ステラの声を聞いて一時的に解けたマインドコントロールが元に戻ろうとスティングを苦しめる。

最後の意識を振り絞りコンソールパネルに指を伸ばし、全武装をオートで発射させた。

月の引力に引かれ落ちて行く先はレクイエムの砲身内部。

 

(また1人にさせちまう。悪ぃ、ステラ……)

 

スティングが最後に見た景色は、視界一杯に広がる眩い光。

 

///

 

ダイダロス基地の司令部では、突如反乱を起こした1機のデストロイに慌てふためく。

エネルギーチャージが完了し、発射スイッチも押してしまった今、もうレクイエムを止める事はジブリールでも出来ない。

 

「どう言う事だ!! 何故、駒である筈の奴らが邪魔をする!!」

 

「ジブリール様、このままでは!? 急いで脱出を!!」

 

「間に合うモノか!! このままデストロイごと薙ぎ払うしかない!! それが出来なければ――」

 

基地全体が大きく揺れる。

エネルギーチャージの完了したレクイエムが同時に発射された。

膨大なエネルギーは巨大なデストロイをも簡単に飲み込むが、放たれる攻撃に内部部品が破壊されてしまう。

動力パイプも分断され、行き場を失ったエネルギーは基地そのモノを破壊して行く。

分厚い鉄板で作られた通路も潰され、爆発の炎が舞い上がる。

激しい振動がいつまでも続き、基地全体が地下に雪崩れ込んで行く。

司令部も例外ではなく、逃げる事の出来ないジブリールは深い闇の中へ飲み込まれた。

 

「デュランダル!! 私は、貴様をォォォ――」

 

至る所から上がる炎の手。

司令部とレクイエムの陥落、ロゴスの防衛部隊も戦線を維持出来ず、撤退するモノも現れる。

ロード・ジブリールがこの世から消えた事で、ロゴスの最後のメンバーも居なくなった。

ザフトと地球連合軍、ロゴスとの戦いも集結を迎える事となる。

けれどもこの戦争で流れた血は多く、ステラの悲しみは戦場を駆け巡った。

 

「スティング……スティング……スティング、スティングスティング……うぅっ、あ゛あ゛ああァァァ!!」

 

-5ページ-

 

第30話 デスティニープラン

 

戦いは終わった。

ロゴスの首謀であるロード・ジブリールは死に、地球連合軍が戦う理由は失くなり、同時にザフトが戦う理由も失くなる。

ジブリールがこの世から居なくなった事を確認したデュランダルは、メサイアの司令部のシートの上で安堵の息を零す。

 

「終わったか……そして始まりでもある」

 

鋭い視線を向けるデュランダルは力強くシートから立ち上がり、司令部から歩いて行く。

全世界にこの事を伝える為、カメラも設置されて居る広報室へ向かう。

扉を開けた先では既に準備が整って居る。

 

「議長、お疲れ様です。いつでも出来るように準備は出来ております」

 

「ご苦労。なら早速始めよう。この瞬間から、また新たな世界が生まれる」

 

用意されたカメラの前に立つデュランダル。

息を止め、まぶたを閉じて集中する。

そして数秒、ゆっくりと開かれる瞳と世界に向けて発せられる言葉。

メサイアからデュランダルの言葉はプラント、地球圏と、全世界へ伝えられる。

 

「皆さん、私はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルです。私は今、ここで宣言させて頂きます。ロゴスとの戦いは終焉を迎えたと。ロード・ジブリールは我々の手により抹殺されました。しかし、この戦争により失われた命は戻って来ません。何故、このような事になったのか。何故、もっと早くに戦争は終わらなかったのか。その感情は、私も皆さんと同じです。つい2年前にも戦争は起きました。その時に私達は誓った筈です。もう目の前で人が殺されるのも、戦うのも見たくはないと。こんな事はもう2度と繰り返さないと。しかし、テロリストによりユニウスセブンは地球に落とされようとした。それを切っ掛けに地球連合とプラントは、再び戦争状態となりました。我々は戦争を停止しようと努力しましたが、それも目の前の利益を前には虚しく過ぎ去られ、同じ過ち、同じ苦しみを繰り返す事になってしまいました」

 

///

 

この声明をラクス・クラインはエターナルのブリッジで聞いて居る。

すぐ傍にはバルトフェルド、ダゴスタ、そしてヒイロが居た。

 

『愚かな悲劇の繰り返し……その一旦は先にも言いましたようにロゴスの存在です。敵を作る事で戦いを引き起こし、人が大勢死ぬ事も厭わず、それを食い物にして来たロゴス。ですが、ロゴスはもうこの世に存在しません。だからこそ私は申し上げたい。私達は今度こそ、もう1つの最大の敵と戦って行かなければならない。それに打ち勝ち、開放されなければならないのです』

 

「ロゴスのロード・ジブリールが撃たれたと言うのは本当でしょうか?」

 

「あぁ、こっちでもついさっき確認した。戦略兵器レクイエムの崩落、それに巻き込まれるようにして死んだらしい。ダイダロス基地にはもう連合軍の戦力もない。残るのはザフトだけだ」

 

「そうですか。これで、わたくし達の目的の1つは達成したと言えるでしょう。ですが……」

 

「この次が問題なんだ。議長がこの宣言で何を示すのか。それに掛かってる」

 

ブリッジの巨大スクリーンに映し出されるデュランダルの姿を4人は固唾を呑んで見守るしか出来ない。

ヒイロも同様に、鋭い視線をスクリーンに向けるだけだ。

 

『有史以来、人類の歴史から戦いが失くならない理由。常に存在する最大の敵。それはいつになっても克服出来ない、私達自身の無知と欲望だと言う事を。人類が宇宙に進出して幾年が経過しても尚、人は人を信用出来て居ない。幸福を求める手は際限なく伸ばされ、燃えないゴミを増やしていく。それが今の人類です。争いの種、問題は全てそこにある』

 

「人間の欲……本能とも言えるモノ……」

 

「だが、それがなければ文明が進む事もなかった。表裏一体の存在だ。一体、何をするつもりなんだ?」

 

「わたくし達はまだ、戦う事を止められない……」

 

ラクスにはデュランダルが言おうとして居る事が予測出来た。

しかしそれは、まだ戦う事を止めてはならないと言う事でもある。

 

『だが、それももう終わりにする時が来ました。終わらせ方を私達はもう知って居る。全ての答えは、皆が自身の心に持って居る。それにより、人を知り、自分を知り、明日を知る。これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。私は人類最後の存続を掛けた防衛策として、デスティニープランの実行を今ここに宣言します!!』

 

「デスティニープラン……人々の運命を変える計画……」

 

ラクスはシートの肘掛けを強く握り締めた。

デュランダルの掲げるデスティニープラン、それは遺伝子操作により人々を統治、管理する計画。

コーディネーター技術も発達し、デュランダルの唱える計画を実行に移せる段階にまで来た。

デスティニープランを実行する事で、遺伝子から『戦う』と言う情報を取り除く。

そうして人類を管理する事で世界から戦いや争い、戦争を失くす。

 

「このプラン、要するに全人類をコーディネーター化させるって事か? 本気なのか、デュランダル議長は?」

 

「彼は本気です。そしてその為ならばどんな犠牲を払ってでも厭わぬ覚悟があります。わたくし達人類は、なまじ知性があるせいで、文明を広げすぎたのかもしれません。国、人種、性別、そして……ナチュラルとコーディネーター。2年前も、そしてこの戦いも、普通の戦争ではありませんでした。ヒイロさん」

 

視線を変えるラクスはブリッジの壁へ背中を預けているヒイロに声を掛ける。

自身を殺そうとした相手にも関わらず、向けるその評定はいつものように可憐で優雅。

 

「アナタならわかる筈です。この戦いが普通の戦争とはどう違うのかが」

 

鋭い目付きでラクスを見るヒイロ。

バルトフェルドとダゴスタはザフト兵でもあり、エターナルに侵入して来たヒイロを心良くは思ってない。

いつ、またラクスが狙われるのではないかと、常に警戒し様子を監視して居る。

ピリピリとした緊張、そしてそのまま数秒が経過して、ヒイロはようやく口を開け問い掛けに応えた。

 

「戦争とは言え人間が引き起こしたモノだ。そこには主義や主張がある。問題はその主張にある。ナチュラルもコーディネーターも、互いに唱える主張は同じだ。ナチュラルの抹殺、コーディネーターの抹殺。そこが決定的な違いだ」

 

「はい、そうです。どちらかが戦えなくなれば戦争は終結します。そしてどちらかの主張が通る事となる。ですが2年前の戦争は違います。連合とザフト、どちらかが戦えなくなったとしても戦いは終わりません。ナチュラルを、或いはコーディネーターがこの世から1人足りとも居なくなるまで戦いは終わらない。これはもはや、戦争と呼べるモノではありません」

 

「だからデスティニープランを考えた。デュランダルが目指す未来、奴はコーディネーターである事を選んだ。違いがあるから格差も生まれる。全てを統一し、更に統治する。確かにデュランダルの計画通りに進めば、今のような戦争はなくなる」

 

「そうかもしれません。ですが、わたくしは戦争根絶などと大層な主張をするつもりはありません。国と国、人と人、衝突が起こる事は必ずあります。ただそれを、元の鞘に戻したいだけなのです」

 

「その為にどうするつもりだ? ザフトと戦うか?」

 

「いいえ、出来る事なら話し合いで解決したいです」

 

「奴がお前の言葉を聞くとは思えん。話し合う段階はもう終わってる」

 

「ですが、可能性が0と言う訳ではありません。試す価値はあると思います。ダゴスタさん、機動要塞メサイアに通信を」

 

言われたダゴスタはパネルを素早く叩きメサイアに通信を繋げる。

スクリーンに表示される映像。

通信が繋がって暫くすると、そこにはデュランダルの顔が映し出された。

 

「デュランダル議長、はじめまして。わたくしはシーゲル・クラインの娘、ラクス・クラインです」

 

モニター越しに自己紹介をするラクス。

それを見るデュランダルの表情は笑みを浮かべて居た。

 

「自己紹介などして頂かなくても、アナタの事なら承知してます。ラクス嬢」

 

「デュランダル議長、先程の放送……デスティニープランは、本気で実行されるつもりですか?」

 

「えぇ、本気です。その為の宣言です」

 

「わたくしはデスティニープランの実行を容認する事は出来ません。それは人々の自由を奪う事です。全人類をコーディネーター化など」

 

「ですがそこまでしなくては人類は戦いを止める事など出来ない。2年前、そして目の前で繰り広げられた戦いを見て、アナタにも理解出来ると思ったのですが」

 

「だから人々の自由を奪うのですか?」

 

「何も奴隷にする訳ではありません。本人の意思はあります。世界から軍を失くし、兵士を失くす。そして戦争のない世界へと管理する。ニュートロンジャマーが打ち込まれたのも、血のバレンタインが起きたのも、ユニウスセブンが地球へ落とされようとしたのも、レクイエムなどの戦略兵器が作り出されたのも、全て人類の過ちだ!! もはや人類はこのような過ちを繰り返してはいけない。その為のデスティニープランだ!! そこまでしなくてはならない段階へと来て居る!!」

 

「人の業……アナタが全て背負うつもりですか?」

 

「そうです。この計画が成功すれば人類はより良き未来へ導かれます」

 

「ならわたくしは、最後まで抗ってみせます。コーディネーターとしてではありません。人としての感情を持った、1人の人間として」

 

「キラ・ヤマトと交友のあるアナタなら、わかって頂けると思ったのですが。わかりました、では」

 

スクリーンに映るデュランダルの顔が消える。

シートに体を預けるラクスは口から大きく息を吐き、体の力を抜いた。

 

「戦いはまだ続くのですね」

 

「ラクス、どうするつもりだ? キラもアスランも出撃して居る。こちらから仕掛けるには無理があるぞ」

 

「ザフトも消耗して居ます。ここは1度帰艦して貰い、改めてどう動くのかを考えます。なるべく早く。2人はどこに?」

 

「ザフトの新型と交戦中だ」

 

チラリとスクリーンに表示される座標を覗くヒイロ。

そのに映るのはデスティニーとストライクフリーダムの信号。

 

(ゼロで未来を見たシンなら、ここから先も戦える筈だ。あとは俺がどう動くか)

 

戦況は刻々と変化する。

エターナルに潜入してから状況を見守って居ただけのヒイロだが、いよいよ動き出す気配を見せた。

ブリッジを後にしようと出入り口に向かうが、ダゴスタは銃を抜くとヒイロの後頭部に照準を定める。

 

「待て、どこへ行くつもりだ? 貴様はラクス様の恩恵を受けて居るから、牢屋にも入れずに自由にした。だが、これ以上の勝手は許す訳にはいかない」

 

「俺を殺したいなら撃てば良い。ただし、少しは抵抗するがな」

 

振り向くヒイロと銃を突き付けるダゴスタ。

視線が交わる2人からは殺気すら漂う。

でもそれも一瞬の事で、シートから立ち上がるラクスがダゴスタを静止する。

 

「お止めなさい。ダゴスタさんも銃を降ろして下さい」

 

「ですがラクス様!?」

 

「彼は心の優しい方です。どうかここは、わたくしを信じて下さい」

 

「コイツが?」

 

もう1度ヒイロを見るダゴスタだが、モビルスーツを奪ってまで侵入して来た相手を信用出来る筈もない。

それでもラクスの言葉に反する事も出来ず、渋々構えた銃を降ろした。

ダゴスタから戦闘の意思が失くなったのを確認したヒイロはラクスに言葉を掛ける。

 

「何故、俺をそこまで信用する?」

 

「オーブの海岸で初めてお会いした時に感じました。アナタの瞳は悲しさを知って居ます。悲しさを知るからこそ、人に優しくする事も出来る方だと」

 

「人の事を信用し過ぎだ」

 

「そうでしょうか? わたくしはそう思ったのですが?」

 

「まぁ良い、借りは返す。俺なりのやり方でな」

 

そう言ってヒイロはブリッジから出て行ってしまう。

ラクスが向ける表情は最後まで慈愛に満ちて居た。

 

///

 

アロンダイトを構えるデスティニーは、その大きな剣を振り下ろした。

黒く分厚い装甲は引き裂かれ、目の前のデストロイは動きを止める。

トドメにコクピットへパルマフィオキーナを打ち込み、ロゴスが用意した最後のデストロイが沈んで行く。

 

「これでもう、ロゴスに戦う戦力はない。なら、あと残るのは!!」

 

レーダーに反応する機影。

因縁の相手であるストライクフリーダム。

ペダルを踏み込み、メインスラスターから青白い炎を噴射して機体を加速させる。

 

「フリーダム!! 今こそお前を落とす!!」

 

「あの機体は!?」

 

フリーダムは握るビームライフルで牽制射撃をするが、デスティニーは光の翼も展開させ更に加速する。

その動きに警戒するキラは距離を取りながら、2丁のビームライフルを連結させ頭部を狙う。

素早く発射されるビーム。

だがデスティニーは回避行動を取らず、一直線に突き進んだ。

 

「はぁァァァッ!!」

 

アロンダイトがビームを弾く。

突き進むデスティニーはアロンダイトを大きく振り下ろした。

 

「っ!?」

 

連結ビームライフルが切断され、マニピュレーターから素早く投げ捨てた。

サイドスカートからビームサーベルを両手に掴み、キラは相手に呼び掛ける。

 

「どうして!? もうこれ以上戦う理由なんて」

 

「お前にはなくても、俺にはある!! 家族の仇だ!!」

 

「仇? 僕が……キミの?」

 

「そうだ!! だが、それ以上に!!」

 

アロンダイトで袈裟斬りするデスティニーに、フリーダムはビームサーベルで振り払う。

交わるビーム刃。

激しい閃光は両者を照らし、アロンダイトは一方的に両断される。

 

「行ける!!」

 

「クッ!! ドラグーンを」

 

突き出されるマニピュレーター。

反応するキラはメインスラスターを吹かして後退しフリーダムの背部から6基のドラグーンが射出する。

次の瞬間にはデスティニーのマニピュレーターが光る。

だがフリーダムは既にそこには居らず、デスティニーの動きを封じる為にドラグーンが周囲を飛び回り、メインカメラや四脚を狙い撃つ。

四方から発射されるビーム。

けれどのデスティニーはその全てを避けた。

 

「アンタはもう、これからの未来には必要ない!! ヤキンのフリーダムはここで倒す!!」

 

意識を集中するシン。

視界がクリアになり、反射速度が飛躍的に上昇する。

腰部のビームライフルを掴み、縦横無尽に飛び回るドラグーンの1基を捉えた。

引かれるトリガー。

発射されたビームはドラグーンを撃ち抜く。

 

(今の俺なら出来る!! 次!!)

 

ビームはまた1基、ドラグーンを落とした。

卓越した技術と集中力でシンは全てのドラグーンを撃ち落とす。

それを見たキラも意識を切り替え、デスティニーを自身と対等に渡り合えるだけの実力者だと認識した。

クリアになる視界は正面にデスティニーを捉える。

腹部のカリドゥス砲を瞬時に発射された。

シンもウェポンラックから大型ビームランチャーを展開し高出力のビームを撃つ。

赤黒いビームがぶつかり合い閃光が走る。

光の先から出て来るのは、フラッシュエッジを振り下ろすデスティニー。

 

「遅い!!」

 

「僕はまだ、負ける訳にはいかないんだ!!」

 

振られるフラッシュエッジ。

フリーダムは武器を握るその腕を左手で掴み上げ、右手に握るビームサーベルで攻撃しようとする。

だが、この状況になってもまだ、キラは相手を殺さないように戦って居た。

全力を出したシンと比べ、その考えの差にわずかばかりの隙が生まれる。

デスティニーのもう片方の腕からマニピュレーターが突き出された。

パルマフィオキーナの輝きがフリーダムのコクピットを狙う。

 

(これが僕の弱さなのか? この機体のパイロットは……強い!!)

 

(もう逃さない!! 終わりだ!!)

 

「やめろぉぉぉ!!」

 

宇宙に轟く叫び。

突然に事にシンは一瞬、気をそらしてしまう。

キラはペダルを踏み込み後退、同時に2機の間へビームブーメランが高速で突撃して来た。

距離を離す2機。

その場に合流して来たのはアスランのジャスティス。

 

「止めるんだ、シン!! ロゴスが消滅した今、俺達が戦う意味はない」

 

「どういうつもりだ? まだ俺の事を味方とでも思ってるのか!!」

 

我慢出来なくなったシンはフラッシュエッジを構えてジャスティスに突っ込む。

アスランは反撃しようとはせず、実体シールドからビームシールドを発生させてコレを受け止めた。

 

「止せシン!!」

 

「うるさい!! どうして裏切った!!」

 

「確かに何も言わずに軍を抜けたのは悪いと思って居る。けれど議長の言葉を信用する事は出来ない。デスティニープランもこのまま実行させる訳にはいかないんだ」

 

「そんな事で!! じゃあ今、自分のしている事は正しいのかよ!!」

「どうしても戦うつもりか? なら!!」

 

シンを相手にアスランも全力を出す。

クリアになる視界、握るビームライフルのトリガーを連続して引いた。

光の翼を展開して回避するデスティニーだが、逃げた先にはフリーダムが先回りして居る。

 

「くっ!?」

 

レール砲が撃たれる。

瞬時に反応するシンは左腕の実体シールドで弾を防ぐが、目の前には連結ビームサーベルを振るジャスティスの姿。

息の合った連続攻撃。

振るわれる連結ビームサーベルの斬撃も実体シールドで防ぎ閃光が走る。

防がれたのを見たアスランは更にビームサーベルを振った。

尚も防ぐシン、両者を照らす閃光は激しさを増す。

 

「俺は負けない!! フリーダムにも、アンタにもだ!!」

 

「シン、お前は!!」

 

グリフォンビームブレ―ドを発生させて、ジャスティスは脚部でデスティニーを蹴る。

ビームの刃は白い装甲を容易く斬り裂き、両脚部の膝から先を切断した。

 

「ぐああァァァッ!! でも、まだだ!! デスティニーは!!」

 

両足を失っても尚、シンは戦いを諦めては居ない。

腰部からビームライフルを引き抜き銃口をジャスティスに向けるが、フリーダムがそれを許さず、レール砲により破壊されてしまう。

 

「負けられないのは俺も同じだ」

 

最後にはビームライフルにより頭部を撃ち抜かれてしまう。

武器も失い、動く事も出来ず、前を見る事すら出来ない。

戦う力を奪われるデスティニーは月の重力に引かれて落ちようとして居る。

それでもシンは操縦桿を握る手の力を弱めはしない。

 

「まだ終われない!! こんな所で終わる訳にはいかないんだ!!」

 

落下して行くデスティニー、だがそこに新たな機影が現れる。

発射される無数のビームに回避行動を取るフリーダムとジャスティス。

 

「エターナルから帰還命令が出て居る。キラ、撤退だ」

 

「わかった。フリーダムも修理しないと」

 

青白い炎を吹かしこの領域から撤退して行く2機。

デスティニーの救援に現れたのはレイが搭乗するレジェンド。

2機が離れて行くのを確認するレイは、機能不全に陥ったデスティニーの腕を掴み、ミネルバへ帰艦する為戦闘領域から離脱する。

 

「離せレイ、俺はまだ!!」

「その機体ではもう戦えない。まさか、ここで死ぬつもりか?」

 

「それは……」

 

「わかれば良い。ミネルバに帰艦する」

 

シンとレイのモビルスーツを収容したミネルバはダイダロス基地から離脱し、メサイアの本部隊と合流する。

ザフトはこの戦いで宣言通りロゴスのジブリールを撃つ事が出来た。

それにより連合軍の統率が崩れ、存続に危機にすら立たされる。

だがザフトの戦力も疲弊しており、更にはレクイエムの一撃により破壊されてしまったプラント首都アプリリウスの損害状況を把握せねばならず、現状ではもう満足に戦う事は出来ないで居た。

フリーダムのジャスティスを退けるだけの準備も整っておらず、両者はにらみ合いを続ける。

説明
コズミック・イラ73年10月。
地球連合軍とザフト軍による大戦から2年が経過し地球圏、プラント、共に平和な日々が続くかに思われた。
しかし、人類が戦いを辞める事はない。
地球へ向かって降下するユニウスセブンを止めるべくザフトの新造艦ミネルバは動く。
そこに所属するシン・アスカも新型モビルスーツ、インパルスへ搭乗しユニウスセブン落下を阻止するべく行動に移る。
激戦の最中、彼は地球へ進む一筋の流星を目にした。
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コメント
遅ればせながら投稿乙です。スティングに与えられた救い、シンが決意を改めたこと、ステラが戦うことを決意したこと、とちょっとずつ元々の結末から遠ざかってますね。ヒイロが次に問いかける相手はデュランダルでしょうか。本家でも否定されたディスティニープランにヒイロはどう返すのか。続きが気になります。(田吾作)
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