マイ「艦これ」「みほちん」:第6話(改2.6)<戦闘収束と憲兵>
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「陸軍と海軍の仲が悪いから」

 

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マイ「艦これ」(みほちん)

:第6話(改2.6)<戦闘収束と憲兵>

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 まだ辺りには土ぼこりや焦げた匂いが漂っていた。

 

「今度こそ大丈夫だな」

私は改めて空を仰ぎ、周りの景色を見渡した。

 

ここは空軍の滑走路以外は草地が広がっている。何事も無ければ、のどかな場所だ。

 

 でも今じゃ無数の弾孔が点在。小さな丘は無残にえぐられ木々は片っ端から、なぎ倒されていた。まるで嵐が通り過ぎた後のようだ。

 

何度見ても、この状況には、ため息が出る。

 

 艦娘であっても地上への艦砲射撃となれば破壊力がある。まして今回は敵だけでなく艦娘も『攻撃』した。

「下手したら敵の攻撃よりも被害が大きいぞ」

 

私は頭を掻いた。

「はぁ」

 

空軍周辺に人家がほとんど無いのは幸いだった。

 

 避難していた人々が防空壕から外をうかがっている。

「あ……」

 

私は壕へ引き返して、まだ残っていた乗客に声をかけた。

「もう大丈夫ですよ」

 

誰もが安堵した。車掌に手を引かれて年配の人もヨロヨロと歩み出てきた。

 

私は、あの『精神の傾いた』年配の男性を探した。彼は隅の方でジッと座っていたが私の顔を見ると、また微笑んでくれた。私も笑顔を返した。

 

外に出ると、あの少女も、こちらを見ていた。

(不思議な娘だな)

 

そのとき歓声が上がった。

「おお」

「これは凄い」

 

乗客たちだった。

 

 彼らは海軍による反撃と覚(さと)ったようで直ぐ自然に拍手が沸きあがった。同時に乗客たちからは尊敬するような視線を感じた。

 

私は面映ゆい反面ホッとしていた。

(どうやら普通の人の目には艦娘による攻撃とは区別がつかないらしい)

 

 少女は相変わらず無表情だったが私と年配の男性を交互に見ていた。

「どうかしたか?」

 

問いかけると彼女は視線を上げた。

「迎え……来た」

 

「え?」

その指差した先を見ると病院の名前が入った車が近くの道路に停車していた。そして職員が数人こちらに向かって来るところだった。

 

「よく、ここが分かったな」

「私……教えた」

「あ、そう」

反射的に『余計なことをしたな』と思った。

 

職員たちは私の前まで来ると敬礼をする。

「ご迷惑をお掛けしました、閣下」

「いや……」

 

そして彼らは年配の男性に声をかけて手を差し出した。

「ほら、戻りますよ」

 

その時、その男性が不機嫌な表情を見せた。そして抵抗する素振りを見せた。

 

 私も少々面食らったが職員たちは、もっと驚いた。

 

「ちょっと……何?」

「どうしたの?」

そして男性は何故か私に助けを求めるような哀願の目をした。その気持ちが痛いほど伝わってきたが、どうすることもできない。

 

咄嗟(とっさ)に私は少女の顔を見た。だが彼女も静かに首を振った。

「……」

 

「だめ……だよな」

このやり取りで場の空気が変わった。

 

 年配の男性は急に大人しくなり病院の職員に自ら手を出して従う様子を見せた。皆、ほっとした。

 

「では、失礼します」

他の職員は私に敬礼をして立ち去った。

 

「……」

何とも言えない気持ちになったが気を取り直し帽子を被り直すと少女に声を掛けた。

 

「行こうか?」

「……」

彼女は頷いた。私たちは逃げるようにその場から離れた。

 

 線路脇の小道を境港方面へと歩き始める。

「ここは美保鎮守府から遠いのだろうか」

「……」

 

歩きながら尋ねた。

「君の名は?」

「カヨ……」

 

急に立ち止まった彼女は直立の姿勢を取って敬礼をした。

 

(えっ)

思わず私も敬礼をした。習慣だ。

 

彼女は言った。

「駆逐艦『寛代(カヨ)』と申します!」

 

意外に低めの声。

「提督を美保鎮守府の司令官として、お迎えに参りました!」

 

(何だ? ちゃんと敬語も使えるじゃないか)

無口な感じで普段から、ほとんど喋らないのだろう。

 

「ご苦労」

私は返した。意外なことだらけだ。

 

……にしても出迎えの子が、なぜ私と一緒の列車に乗っていたのか。

(列車を間違えたのか?)

 

いろいろ聞きたいが我慢して敬礼したまま固まっている彼女に命令した。

「もう良いよ、歩こう」

 

この言葉で腕を下ろした寛代。

「暫く歩くか」

「……」

 

 私は煤(スス)で汚れたカバンを軽く払って持ち直すと線路と平行に歩き始める。少女も従った。

「さて、どのくらい歩くのかなあ」

「……」

「街道筋に出ればバスが捕まるかも」

「……」

 

 敵の攻撃で忘れてた。今は真夏だ。日本海側の夏は晴天が多い。

ジリジリ照り付ける陽射しが眩しい。私は制帽を軽く持ち上げて汗を拭った。

 

 少し行くと前方に敵機の残骸が見えた。まだ黒煙を吐き、焼け焦げた悪臭と時折バチッと火花が散っている。

 

用心しながら、さらに近づく。

「ほう」

 

 改めて敵機の頑丈さと、それすら貫いた艦娘の砲撃の威力を実感した。

 

深海棲艦を至近距離で見るのは初めてだ。撃墜すれば直ぐに海へ沈む。おまけに海軍の私が陸上で戦うことは有り得ない。

 

「惜しい」

貴重な敵の情報源だが、今は鎮守府へ向かわなければ。

 

 すると寛淑が私の後ろに視線を移していた。

 

「ん?」

背後から複数台の発動機の音が近づいてきた。

 

 振り返ると先頭車両に憲兵が数名乗っていた。

 

「おや」

見ると私が米子駅で案内をして貰った親切な憲兵さんだった。

 

「閣下ぁ、ご無事でしたかァ!」

彼はニコニコと手を振っていた。相変わらず妙に明るい。

 

彼は普段から、そういう性格なのだろう。周りの陸軍からも特に注意されることがなかったくらいだ。

 

私は苦笑した。

「屈託が無いな」

 

彼の挙動には冷静な寛代が驚いたくらいだ。

 

 敵の残骸や列車の周辺に次々と車両が止まる。

憲兵と一緒に来た一団は明らかに陸軍の連中だ。車両には『米子』と書いてある。

(三柳にある駐屯地だな)

 

 彼らは車を止めて順々に降りると手短に点呼。直ぐにパラパラと敵機の周りに散らばった。そして手際よく列車の消火や後片付けを始めた。

 

「フム」

よく見ると陸軍だけでなく鉄道省の連中も混じっている。

 

 散乱している敵の機体。彼らは付近を立ち入り禁止にして何かを撮影したり計測を始めた。それを不思議そうに見詰める寛代。

 

それを見た私は何気なく彼女に語りかけた。

「陸軍には敵の情報が、あまり無いからな」

 

(そうなんだ)

……といった面持ちで私を見上げた寛代。興味を持ったらしい。

 

改めて説明を続ける。

「中央じゃ陸軍と海軍の仲が悪いからな。敵さんの情報にしても協力体制がないんだよ。だから地上に敵の機体が落ちたとなれば飛んでくる」

 

「……」

寛代は小さく頷いた。この話が理解できるなら単なる艦娘ではない。

 

そこで、さらに問いかけた。

「美保では陸軍と海軍は仲が良いのかな?」

 

「……」

別に回答は期待していなかったが当然、寛代は無言。

でも呆けてはいない。何か考えているようだ。

 

 ちょうど打ち合わせをしていた憲兵が、ばらばらと解散した。その中の一人……あの米子駅で出会った憲兵が私の前までやって来てサッと敬礼した。

「閣下、美保鎮守府まで、お送りするよう指示を受けました!」

 

「アっ、そう?」

渡りに船だが、ちょっと驚いた。

 

軽く咳払いをして改めて聞いた。

「美保鎮守府までは、ここから遠いのか?」

「いえ、近いです」

 

言いながら彼は済まなそうな顔をした。

「実は先ほど米子駅で閣下に詳しく説明する時間が足りませんで申し訳ありません」

 

私も恐縮した。

「いや、君の話を最後まで聞かずに列車に飛び乗った私の方こそ済まなかった」

 

彼は言った。

「いえ、境線が空襲されたと聞き閣下が、お乗りになっていることを上官に報告。直ぐに対処する部隊と共に中浜へ向かうよう指示を受けましたので」

 

「ほう」

(陸軍にしては機転が利くな)

私は感心した。 寛代は無言のまま。

 

憲兵は続ける。

「遠くから見えましたが、すごい戦闘でしたね。驚きました」

 

「あぁ」

さっきの艦砲射撃か。あまり触れたくない話題だ。

 

「ですが、直ぐに決着がついてホッとしました」

「そうだな」

それは私も同じ。

 

「では閣下、こちらへどうぞ」

彼は陸軍の車両を指さした。

 

「ご案内します。お乗り下さい」

「ウム」

……しかし腰の低い憲兵で感心した。地方には、こういうタイプが多いのだろうか? 私が今まで出会った憲兵は皆、高飛車だった。

 

「そうだ」

歩きかけた彼を呼び止めて私は言った。

 

「この子も一緒に頼む……おい、来い」

私は隠れるように離れていた寛代を手招きした。

 

憲兵は一瞬、不思議そうな顔をした。

「あの、閣下のお知り合いですか?」

「いや、この子も海軍の軍人だ」

 

「は?」

その反応は無理もない。まだ海軍以外では『艦娘』自体が軍事機密に近い。

 

一般市民だけでなく憲兵も含め陸軍でも、ほとんど知られていないはずだ。仮に知っていても彼女は見ただけでは普通の少女にしか見えないだろう。

 

「早くしろ」

私はボーッとした彼女の手を取ると半ば強引に車の傍に寄せた。

 

「取り敢えず鎮守府まで頼む」

「はっ」

そこで私と憲兵さんは改めて軽く敬礼した。

 

 私の動作を見てボンヤリしていた寛代も反射的に敬礼をする。私は内心苦笑した。

(これもまた軍隊の習慣性か)

 

その所作はキビキビしていて気持ちが良い。少女の敬礼を見た憲兵も彼女が兵士であると理解したようだった。少し微笑んでいる。

 

 私たちが後部座席に乗り込むと憲兵さんは発動機を起動させる。黒煙を上げて車体が震える。辺りは独特の排気臭に包まれた。

「では出発します」

 

 私たちを乗せた車は、そのまま線路を離れた。そして作業を続ける陸軍や調査員たちの間をすり抜けた。

(せっかくの機会だ、しっかり調べてくれ)

 

ここぞとばかりに出てきた憲兵や陸軍だ。

(海軍には国防の、お鉢を奪われ放しだからな)

 

 今の戦争は、ほぼ海上に限定され陸軍や空軍は何も手出しができない状況だ。同じ軍隊だから形だけ全軍で戦時体制を取っているだけだ。彼らも歯がゆいだろう。だから陸軍も空軍も常に敵の最新情報を欲しがっている。

 

 特に陸軍は海軍と見ると憲兵を通して直ぐに探りを入れて来る。私もここまでの道中、何度も憲兵に話しかけられた。だから白い海軍の制服で街をウロウロするのは苦手だ。

 

 今回も深海棲艦の機体が地上で撃墜されたと聞いたから陸軍は直ぐに飛んで来たのだろう。私を鎮守府に送るというのも邪魔物を排除したいという思惑か。

 

 さっき空軍の車も見えたのだが陸軍が活動しているのを見て、そそくさと撤退してしまった。

 

 実は海軍だって敵の情報を、ほとんど持っていない。海上で仕留めても結局『海の藻屑』となるばかりだから。

 

ただ唯一、敵と交戦した経験値だけある、といったところか。

 

それに最近は、ほとんど艦娘が戦闘を代行しているから、なおさら解り辛い。

 

 遠くの空軍基地では、焼け跡への放水が始まっていた。

 

 

 

 

以下魔除け

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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PS:「みほちん」とは

「美保鎮守府:第一部」の略称です。

 

 

説明
私たちは敵の攻撃をしのいだが、そこへ憲兵がやってきた。
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提督 艦これ 美穂鎮守府 深海棲艦 みほちん SS小説 憲兵 艦娘 駆逐艦 オリキャラ 

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