北郷一刀と新たな英雄が紡ぐ外史 13話
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荒れに荒れた宴会が行われた次の日の朝、あれほど騒がしかった騒ぎはどこへいったのやら、みな酔いつぶれて夢の世界へと旅立っている。みんなが寝静まっている中、一刀だけはいつも通りに起床し、朝食を済ませ執務室に向かっていた。

二日酔いが多数出ることが予想出来ていた為、今日の執務は午後からとなっていて、本来であれば一刀も寝ててはいいのだが……自分が不在の間に溜まっているであろう”書類”の処理に向かおうとしている

 

曹操、孫策の助力を得て黄巾党殲滅の時間を短縮する事が出来ていたが、長期間留守にしていた事に変わりない。

仕官当時に溜まっていた書簡の量は約2か月分。以前の量ですら死ぬ思いをしながら片付けたのに、今回の不在帰還は半年。どれほどの量が溜まっているか想像すらしたくなかった

 

 

「・・・え?全部終ってる・・・?」

 

そんな憂鬱な気分になりながら、一刀は執務室の扉を開ける。開けてすぐに一刀の目に飛び込んで来たのは溜まりに溜まった書簡…………では無く、一つ残さず綺麗に処理された書簡の山だった。

一刀は積まれている書簡を確認すると、すべてに処理済の印と対応策が書かれている。その内容も素晴らしく、民の生活の内情に詳しく、今の民に何が一番必要なのかを把握した上での対応が書かれており、訂正する所が見当たらない完璧と言っても良いほどの出来だった。

何より一刀が驚いたことはこの書簡をまとめた人物の名前だった。留守番を任されていた鶸・蒼・蒲公英の名前では無く、書かれていた名前は・・・

 

「黄漢升!?」

 

そう、書かれていた人物の名は『蜀の五虎将』『弓矢の達人』『老いて益々盛ん』で知られる黄忠漢升の名前が記されていた。

 

「私がどうかしましたか」

 

一刀はいきなり声をかけられた事にビックリしながらも、声のした方に向くと一人の女性が佇んでいた。

腰付近まで伸びている紫色の綺麗な髪、チャイナドレスから見えるスラリとした足と女性を象徴する豊満な胸。

見惚れてしまうほどの美貌、すべてを優しく包むような包容力。

お姉さん気質、お母さん気質と呼べる人物、それが一刀が黄忠に抱いた第一印象である

 

「あ、申し遅れました。私の名は黄忠、字を漢升。ご縁があって馬家にお仕えする事となりました。廊下で北郷さんの姿が見えましたので、ご挨拶にと伺わせて頂きました。今後よろしくお願いしますね」

 

自分の顔をジッと見つめたまま動かない一刀に対し、見ず知らずの人物がいきなり現れて驚いてと思った黄忠は自己紹介を済ます。一刀が硬直した理由は、黄忠の容姿に見惚れていただけなのだが・・・

 

「俺の事を知っているのですか?」

 

「えぇ、お仕えするようになってから、鶸ちゃん達から色々話しを聞く機会が多かったですから。みんな北郷さんの事を褒める話ばかりなので微笑ましかったですわ」

 

どんな話を聞かされていたのか気になった一刀の機微を読み取り、悪い話は無かったと安心させる心遣いは目を張るばかりだ。一刀は恥ずかしそうにしつつも、黄忠同様に自己紹介を始めた

 

「既に知っているとは思いますが、自分の姓は北郷、名は一刀です。字と真名はありませんが、一刀と呼んで下さい。それで、この書簡は黄忠さんがまとめて下さったのですか?」

 

「新参者の私が国の内政に関わるのはどうかと思ったのですが、その……あまりにも書簡が溜まっていたので鶸ちゃん達の許可を得てから事務仕事に着手する事となりまして。余計な手出しだったでしょうか」

 

「そんな事ないです!むしろ鶸達を補佐しながら、黄忠さんがすべて片付けてくれた事に感謝してます」

 

余計な手出し所か、内政官が乏しいこの陣営において、黄忠のように事務仕事に長けた人物はかなり貴重な存在。

むしろ、馬家に仕えてくれてありがとう!と逆に感謝したいぐらいなの心境だった

 

「そうですか、お役に立てたならよかったですわ。それと、私の事は今後紫苑とお呼び下さい」

 

「それって真名ですよね、初対面なのに呼んでもいいのですか?」

 

「一刀さんのお話は鶸ちゃん達から聞いてましたから初対面って感じがしないのもありますし、実際お話して真名をお預けてもいいと思えましたので」

 

武威では内政を1人で切り盛りし、遠征に出れば覇王の器である曹孟徳に絡まれ目を付けられる。そんなストレス多々の日々を送っていた一刀にとって、安心したように微笑む、真名を許してくれた目の前の女性はまさに癒しと呼べる人物かもしれない……そんな事を思った一刀の前に、更なる癒しの存在が姿を現した

 

「お母さ〜〜ん!どーーーん!!」

 

「璃々、お仕事の場に入っちゃ来ちゃ駄目って言ってるでしょ」

 

(抱きついて来たのは小さな子供で、その容姿から多分紫苑の子供かな?遊んでたら紫苑の姿が見えたから走ってきたみたい。紫苑も本気で怒ってる訳じゃなく、駄目よと注意しつつも笑顔でいる辺り、来てくれた事は嬉しいみたい)

 

「あれ、お兄ちゃんだれ?」

 

紫苑と話していた子が俺に気が付いたみたい。紫苑に挨拶しなさいと言うと、は〜い!と元気な声で返事をする姿は微笑ましい

 

「えーとね、璃々はねー!璃々って言うの!よろしくね、お兄ちゃん!」

 

「俺の名前は北郷一刀だよ、よろしくね、璃々ちゃん」

 

(璃々ちゃんは人懐っこい子のようで、初対面の俺に対しても無邪気に抱きついてきてくれるのは癒される。意味は違うけど、アニマルセラピーってこんな感じなのかな)

 

 

先ほども記したが、極度の内政官不足から朝から晩まで事務仕事に追われ、時間が空いた時も脳筋、小悪魔、不思議っこ、いきなり脱ぎだす子、可愛い子大好きの馬鹿親友などの世話に時間を割かれ、休める時は睡眠時だけという悲惨さ。

 

そんな心身共に疲れきっている一刀にとって、家族の団欒とも呼べるこの空間はまさに癒し。

このまま今日はゆっくり過ごしたい・・・そう思う一刀だが、案の定そんな癒しの空間を壊す乱入者が部屋に突入してきた

 

 

「かずぴー!!新しい女の人が来てるってほんまなん!?」

 

もちろん乱入者は酔いつぶれて寝てたはずの及川だった。

どっから紫苑の事を聞きつけたのか、紫苑の事を見に来たようだ…癒しの空間を邪魔された一刀は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべつつ、紫苑の居る方角に視線を向けた

 

「ふぉ〜〜〜〜〜!!巨乳美人きたああああああ!かずぴーかずぴー!めっちゃ美人やん!しかもあれ……馬超ちゃんよりもデカイ」

 

「真面目な顔で何言ってんだこの変態…紫苑さん、こいつは悪友の及川です」

 

「初めまして!自分は及川佑と申します!お嬢さんお名前を伺ってもいいでしょうか!!」

 

(おい、お前誰だよ。なんちゃって関西弁どこにいったんだよ…思いっきりキャラ崩壊してるし。それに、今更取り繕っても遅いし)

 

「私の名は黄忠、字を漢升、真名を紫苑。よろしくお願いしますね、及川さん」

 

紫苑の名を聞いた瞬間にはしゃいでた及川の動きが止まる。

その気持ちは解る、三国志を齧った人なら黄漢升の名前を聞いたら普通こうなるよな。これで静かになってくれればいいんだけど、及川がこの程度で静かになるはずもなく、すぐに復活して紫苑に絡みにいったし・・・

 

「むぅ〜〜!お母さんは璃々のお母さんなの!」

 

めげずに絡みに行った及川を遮るように、紫苑と及川の間に璃々ちゃんが入り込む。小さい子特有の母親を取られたくない嫉妬からの行動なのかもしれない。そんな璃々ちゃんを見て、少しは自重すると思った時期が俺にもありました

 

「美人で巨乳でスタイル抜群でしかも子持ちの人妻…なんという属性の塊!萌える、萌えるでー!」

 

「本当に自重してくれ及川…さっきまで笑顔だった璃々ちゃんが凄い怒ってるよ、あんな良い子を怒らすなんてある意味凄いんだけど、そろそろ胃が痛くなってきたからマジで辞めて。。。」

 

 

唯一の救いは紫苑が全く怒ってない事だろうか。大人の余裕なのか、あらあらと言いながら上手く及川をかわしていた。一刀の胃腸が悲鳴を上げ始めた時、救世主が扉を勢い良く開けてやって来た

 

「ちょっと佑!何やってるのよ!」

 

「お前は女なら誰でもいいのか!」

 

 

凄い形相で入って来たのは、これまた酔いつぶれてるはずの翠と小蓮だった。

2人曰く、及川が凄い勢いで執務室に走っていく姿を見たと報告がきていたようで、嫌な予感がすると慌ててこちらに来たようだ

 

「わいは無実や!ちょこっとお話したただけやて!」

 

翠と小蓮は信じられないと言わんばかりにジト目で及川を睨み、真偽を確かめようと一刀に顔を向ける。及川は親友頼むで!とアイコンタクトを送ってくるが

 

 

「及川は思いっきり紫苑の事口説いてたぞ、『美人』で『巨乳』で『体系』が良くて『子持ちの人妻』の紫苑最高!結婚して!とか言いまくってた」

 

一刀の言葉を聞いた瞬間、翠が及川の左腕を、小蓮が右腕を掴み無言で部屋の外へと連れて行く。流石の及川もこれには恐怖心が勝ったようで、かずぴー助けて!と言ってくるが無視無視。

部屋から廊下、そして廊下の先で見えなくなった時に『ぎゃあああああああああ』と断末魔が聞こえた気がするが気のせいだろう

 

「やっと平和になった・・・それじゃあ馬鹿騒ぎで遅れましたが、業務を始めますので、紫苑は補佐をお願いします」

 

「お任せ下さい」

 

「璃々もお兄ちゃんの仕事のお手伝いする!」

 

 

 

 

及川が連れて行かれた後は終始何事も無く業務を進める事が出来た。

紫苑が加入してくれた事は大助かりだし、今度個人的に何かお礼しないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっちの方角に腕は曲がらない〜!とか

 

わいの頭は的やない〜〜!

 

とか聞こえるのは気のせい、気のせい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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紫苑と璃々の初登場回でした!

ようやく紫苑を出す事が出来ました。誰を加入させるか聞いたのがいつだったか忘れる程前だったので、本当にようやく出せた感が半端ないですね。

 

紫苑の加入でようやく一刀の胃の負担が軽減され始めましたね!

完全に負担開放まではいかないですがw

 

 

寂しがりやな覇王の改訂版は上書きせずに、新たに投稿していこうと思うのですが、アフター 新たな英雄 改訂版と、それぞれの続きが読みづらい状況になっちゃいますね。

順番の並び替え、小説事のグループ化が出来れば楽なんですが…

 

TINAMIって複数ID持っていいのかな?

良いのであれば、寂しがり改訂版・アフター・新たな英雄でID分けしようと思ってますので、解る方いたらコメントお願いします!

 

次回はどれを更新するかまだ未定ですが、次回投稿もお付き合いお願い致します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
一刀の癒し、紫苑母娘登場
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コメント
人和に続いて紫苑加入で一刀の負担も軽減されてきましたね。後はやはり軍師関係の補強でしょうね。そして…及川の関節はその内360°動くようになる位に曲げられそうですね(笑)。(mokiti1976-2010)
真面目にお仕事をしてくれる方がついに来ましたね。一刀君にも、これで少しは気が安らぐ日々が来るのかな……(聖龍)
この外史の一刀争奪戦に紫苑が本命候補として参戦!?(アストラナガンXD)
ようやくまともな方がw(未奈兎)
紫苑のセリフが(仕事の場に入っちゃ来ちゃ駄目)ってなってますよ(marumo )
一から読ませて頂いてやっと追いつきました。約一週間中々面白いと思っています。次回楽しみにしておりますので、頑張ってください。(Mr.X)
タグ
恋姫†無双 恋姫英雄譚 紫苑 及川 一刀 

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