恋姫OROCHI(仮) 肆章・弐ノ参ノ参 〜制圧〜
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「もう!桔梗、早く出陣するのだ!」

 

陽平関では鈴々が焦れていた。

敵後方に味方と思しき部隊が現れて四半刻あまり。

先ほどから戦闘が始まっている。

鈴々は早々に戦支度をしたが、桔梗は出陣に慎重だ。

罠の可能性は低いものの、自軍の兵が少ないのも事実。

賭けに出るのは危険、という判断だ。

鈴々は一人でも出ると言っているが、万が一を考えれば、ここで鈴々が動けなくなる事態は避けたい。

だが、この状態の鈴々を留め置くのも、そう長くは保たないだろう。

 

どうしたものか…

 

桔梗が頭を悩ませているところに

 

「臨」

 

という音とともに、突如として闖入者が姿を現した。

 

「うわぁっ!!ビックリなのだ!」

「何奴っ……ゆ、月!?」

 

怪しげな侵入者に抱きかかえられているのは、同陣営の月だった。

 

「お主、どうして……」

「「小波っ!!」」

 

桔梗の言葉を遮ったのは、綾那と歌夜だ。

 

「綾那さま!歌夜さま!ご無事でしたか」

 

侵入者は月を降ろしながら二人に応える。

どうやら、二人の知り合いらしい。

 

「鈴々ちゃん、桔梗さん。ご無事で何よりです」

 

華のように微笑む月。

 

「月よ、一体何が起きているというのだ。あの軍勢と戦っておるのは味方なのか?」

「星は無事なのかー!?」

 

矢継ぎ早に疑問をぶつける二人。

 

「はい。少し急いでいるので、手短ですがお答えします。綾那さんと歌夜さんも、聞いて下さい」

「え?」「は、はい…」

 

知らない人に名を呼ばれ、面を食らったようだ。

 

「お二方とも、ご安心下さい。こちらの月さまは、剣丞さまの御姉君のお一人です」

「剣丞さまのっ!?」

「やっぱり、剣丞さま来てるですか!?」

「それも含めて、お話しますね」

 

 

…………

……

 

 

「なんと…」

「そのようなことが…」

 

月の説明に、桔梗と歌夜は言葉を失った。

想像以上に、事態は深刻で複雑だ。

 

「「………………」」

 

そして、文字通り言葉を失っているのが、鈴々と綾那だ。

 

「えっと…鈴々ちゃんに綾那さん、お話、分かりましたか?」

 

不安になった月が二人に確認を取る。

 

「う〜んっと、途中はほとんどまったく全然分からなかったですけど…」

「結局、鈴々たちは敵と戦えばいいのだ?」

「そうですね。ただ、彼らは綾那さんたちのお仲間ですので、無力化する方向で、お願いします」

「それだけ分かれば充分なのです!」

「おー!綾那、気が合うのだー!」

 

武一辺倒の武辺者同士、馬があったようだ。

 

「綾那、剣丞さまのためなら、三河兵だって((殺|や))ってやるですよー!!」

「もう…だから、やっちゃダメなんだってばぁ……」

 

鼻息荒い相棒に頭を抱える歌夜。

 

「ふむ。綾那も出てくれるのなら大丈夫だろう。儂は蜀に先行している兵を連れ戻してくる。歌夜と小波とやらは、ここで月を守っていてくれんか」

「この命に代えても」「はっ」

「前線は鈴々と綾那に任せたぞ。やるからには、陽平関に兵を近付けること罷りならんぞ!」

「「応なのだ!」です!」

 

言うや綾那と鈴々は、我先にと関を駆け出していった。

背丈に倍する得物を手にして。

 

 

 

 

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陽平関から鈴々と綾那が出てきてからは、一方的な戦いだった。

前門には小覇王と鬼柴田。

後門には燕人と東国無双(仮)。

三河兵の決死の抵抗空しく、完全制圧に成功していた。

 

 

 

 

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陽平関組と合流した剣丞たち。

 

鈴々と桔梗は星・璃々の無事を喜び、綾那と歌夜も、剣丞たちとの再会を喜んだ。

そして小波は一度、浜松城を囲んでいる美空たちと連絡を取るために陣を離れ、綾那と歌夜には三河兵の検分を行ってもらった。

 

 

…………

……

 

 

「どうだった?」

 

検分から戻ってきた二人の顔は浮かないものだった。

が、それが何を意味しているかは分からない。

 

「はい、それが…」

 

歌夜が重たい口を開いた。

 

「部隊を率いていた酒井様に接見したのですが…私が見た限り、正気とは思えませんでした」

「そうか…」

 

正気ではない、というは誰かに操られているようだ、ということだ。

それが葵なのか、はたまた別の誰かなのかは分からないが。

 

「どうしようか。武装解除したとはいえ、この人数を拘束しながら移動するのは骨だし…」

「なら一度、管輅さんにお話を聞いてみてはいかがでしょうか〜?」

「え?」

 

間延びした風の声。

 

「よく分からない術は、よく分からない術を使う人に聞くのが一番かと〜」

「ま、それも一理ね」

 

細かい事はどうでもいい雪蓮も同調する。

 

「じゃあ、そうしようか。か…」

「それでは〜。出でよ、管輅さ〜ん」

「お呼びでしょうか」

 

バッと片腕を掲げて管輅を呼び出した形となった風。

何故かホクホク顔だ。

 

「あ〜…っと」

 

出鼻を挫かれた剣丞。

 

「今の話って聞いてた?」

「委細承知しております」

「彼らの状態は分かる?それと、可能なら治し方も教えてくれると助かる」

「はい。恐らく彼らに施された術は二次洗脳。それならば、私にも解くことが出来るかと」

「二次洗脳?」

「はい。術者による直接的な洗脳ではなく、深窓意識にまで及ばない浅い洗脳です。単純な命令を刷り込ませる程度のものです」

「なるほど…」

「それでは、処置を施します」

 

筮竹を掲げると、少し離れた所にいる三河兵の頭から、鈍い光のようなものが筮竹に吸い込まれていく。

光がなくなったところで駆けつけると…

 

「あれ…私?」

「酒井様!良かった…」

「歌夜?それに綾那も。これは一体?」

「はい、ご説明致しますね」

 

正気に戻ったらしい指揮官の縄を解きつつ、歌夜が事情を説明する。

これでこの件はどうにかなりそうだ。

そう誰もが思った、そんな矢先

 

『ご主人様っ!!』

 

剣丞の脳裏に小波の声が響いた。

 

「小波?どうした!?」

『浜松城が…浜松城が!!』

 

 

 

説明
どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、79本目です。

函谷関で、念願の紫苑救出を果たした一刀たち。
次なる舞台は漢中。

零章の時間軸ですので、よろしければお時間のある方、また忘れてしまった方は今一度お読み頂けるとスッと入れるかと思います。
http://www.tinami.com/view/713915
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コメント
いたさん>後年から見た、と言う点では秀吉の羽柴の由来エピソードと似ていますよね。セリフだけだと分かりにくいですが、一応妙齢の女性という設定ですw(DTK)
自分の知ってる話だと、四天王とは当時呼ばなかったと。 理由はフォックス様の仰有る通り、叔父でもあり身分が三人より上位だったからだと。 でも、この作品の酒井は……どうもモブのおじさんっぽい気が。(いた)
フォックスさん>そうですね。酒井忠次は少し世代が上の筆頭家老という立ち位置を想定しています。浜松城は次の話をご覧くださいm(_ _)m(DTK)
作中に酒井忠次が名前のみなのは世代が違うからなのかしら?(史実だと四天王筆頭&家康の叔父見たいですし、石川は基本信康がらみですから出ないでしょうが)この後浜松城はどうなった?(Xの駿府館見たいとか?)(フォックス)
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