真・恋影無想
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第10話 再会′纒メ

 

 

頭が痛い。ここはどこだ?朝…か?

 

 

「いつつ、俺どうしたんだっけ?」

 

 

そうだ。確かいきなり猫耳の子に襲われて…っ、それでどうしたんだっけ?

 

 

「お?目が覚めたのか?」

 

 

「?」

 

 

「おい!起きたぞ!医者を呼んでこい!それと曹操様に報告しろ!」

 

 

この人は、多分、警備兵かなにかか?なるほど、発見してもらえたのか…………って、今曹操様 ≠チて言ったか?

 

「す、すみません。ここは?」

 

 

「ん?あぁ、すまないがその質問は曹操様にしてくれるか?俺達は曹操様からお前が起きても何も情報を与えるなと言われてるんでな。お前の身元も分かってないし。」

 

 

華琳の指示…なるほどな。敵のスパイかもしれないから情報を与えるな、か。相変わらずだな。それにしても早いとここからでないとマズイな。多分魏の屋敷か、それとも華琳が所有してる個人的なものか。どっちにしろ華琳以外の魏の重鎮がいる可能性はかなり高い。正直これ以上魏の皆の顔を見たくはないんだけど……

 

 

コンコン お医者様がいらっしゃったぞ。

 

 

ガチャ 確かに。曹操様は?

 

 

別件で屋敷を離れてらっしゃる。後1時間もすれば戻られるだろう。

 

 

わかった。では、先生。診察の方をお願いします。

 

 

わかりました。では、退室して頂けますか?

 

 

いや、でも、あの男は身元すら判明してないんですよ?先生に何かあれば我々の首が飛びます。

 

 

ですが、これが私の診察方法ですから。お願いします。何かあれば大声を上げますから。

 

 

わ、わかりました。それでは扉の外で見張ってますので何かあればお声がけください。

 

 

 

入り口で何やら話をした後に兵士は変な真似するなよ≠ニだけ俺に告げ部屋の外へと出ていった。兵士と入れ替わりで入ってきたのは小柄な女性だった。どうやら医者らしい。

 

 

「おはようございます。お加減は?」

 

 

「まだ少し頭が痛みますが大丈夫です。」

 

 

「そうですか。では、ご自身の事わかりますか?良ければお名前や出身、職業を教えて下さい。」

 

 

「はい。名は柑奈、出身はお教えできません。職業は兵士。所属は呉です。」

 

 

医者は聞いた情報を持っている竹簡に書いていく。

 

「記憶に問題はなさそうですね。では、私の事が誰かわかりますか?」

 

 

「え?」

 

 

「ゆっくり私の目を見てくださいねー。」

 

 

彼女と俺の目が合った瞬間彼女の目の色が変わった。朱から紫色に。文字通り色が変わった=Bその瞬間俺はその目にスーッと吸い込まれるような錯覚に襲われた。

 

 

「っ!あ、あなたは管輅…さん?」

 

 

「ええ。そうです。改めて名乗りますね。私の名前は管輅。管理者達の間では神占いの管輅≠ニか神出鬼没の管輅≠ニか呼ばれてます。会いに来ましたよ。北郷一刀≠ウん?」

 

 

「ちょ、誰が聞いてるか分からないんですから辞めてくださいよ。」

 

 

「大丈夫ですよ?もうこの屋敷内に自我を持つ者はいませんから。それよりも、何が原因でそうなったのか教えて頂けますか?」

 

 

自我を持つ者はいない?どういう意味なんだ?

 

 

「あぁ、はい。突然猫の姿をした少女達に襲われて…食べられそうになって……」

 

 

「猫…南蛮の子ですか。あの子達は人は襲わないんですけどね、どうしてでしょうか…じゃれてただけってことはありませんか?」

 

 

「いえ、タレとか塩とか言ってましたし多分食べられかけてたと思います。面識もないですし…」

 

 

「そうですか…」

 

 

「管輅さんは何をなさってるんですか?」

 

 

「私は卜い以外に確たる使命はありませんから。色んなことをしながら世界を転々としてます。」

 

 

「例えば?」

 

 

「例えばこうやって医者をしたり、他の管理者達に嫌がらせしたりですかね。そのせいかはわかりませんが左慈や于吉からは特に嫌われてます…」

 

 

「そ、そうですか…」

 

なんかこの前話した時の印象とは大分違うな…

 

 

「それで、どうして俺の所に?たまたま医者として来たってわけではないでしょう?」

 

 

「ええ。伝えたいことがあってきました。と、その前に…来ましたね」

 

 

タッタッタッタッタ

 

 

バタン(扉の音)

 

 

「管輅!」

 

「ーーーーー!」

 

 

印象的だった巻き髪を綺麗に下ろし、少し背が高くなり、急いできたのがひと目でわかる程息を切らし扉を蹴り開け入ってきた人物。

 

 

華琳……か。

……ヤバイな。逃げないと。

 

 

「すいません。もう診察は終わりましたね?俺はこれで帰らせてもらいます。治療ありがとうございました。曹操様もご迷惑おかけしました。」

 

 

「ちょっと待ちなさい。」

 

 

俺はそのまま出口に歩いて行く。

 

 

「待ちなさいと言っているわ。魏王命令よ。」

 

 

「お断りします。」

 

 

「首をはねられたいの?」

 

 

「どうぞ。はねたいのであればお好きに。」

 

俺は背を向けたまま話す。

 

 

「……こちらを向きなさい。」

 

 

「嫌です。」

 

 

「いい加減になさい?私は無理難題を言っているわけではないわ。ただ、こちらを向けと言っているの。」

 

 

「嫌です。」

 

 

「あなたは子供なのかしら?どうしても嫌なら私が納得する理由を説明なさい。」

 

 

「……あなたの顔を見たくない。声も聞きたくない。近くにいたくないんです。今回の件は本当に感謝しています。この事は我が主に報告して今度、正式にお礼をさせていただきます。では。」

 

俺はそう言って部屋を出ようとした。言ってるこちらとしても心苦しい。でも、ここにいたくない。

 

 

「ーーーーっ! わかったわ。最後に一ついいかしら?。あなたの今の℃蛯ヘ誰?」

 

 

「呉王孫権様の姉君、雪蓮様です。それが何か?」

 

 

「そ、そう…引き止めて悪かったわね。行っていいわ。」

 

 

「失礼します。」

 

 

俺はそのまま屋敷を出た。屋敷自体は華琳個人が使っている屋敷で俺が倒れていたのはその裏庭の林だったようだ。屋敷の外にはセキトが座っていた。あれから1日半が経過しているのに心配だったのか待ってくれていた。

 

「待ってくれてたのかい?」

 

 

わんっ!

 

 

「心配かけてごめんな。ありがとう。」

 

俺がしゃがみこんでセキトを撫でていると

 

「大丈夫?」

 

 

声をかけられた。顔を上げるとセキトの飼い主であろう女性だった。この子も待ってくれていたようだ。

 

 

「あ、うん。とりあえず大丈夫。」

 

 

「ん、地和探したけどどこにもいなかった。ごめん。」

 

 

「いや、いいんだ。わざわざありがとう。」

 

 

「でも、とっても悲しそうな顔してる。」

 

!、この子は口数は少ないけど人の感情を読み取るのは得意なのか。いや、得意っていうよりも、もっと自然な感じかな。他人の表情とかをよく見てる。

 

「大丈夫だよ。それよりも名前聞いてなかったよね?俺の名前は柑奈。君の名前は?」

 

 

「ん、恋。」

 

 

「それ、真名だよね?普通の名前は?」

 

 

「呂布…」

 

ん?今なんて……呂布!?こんなのほほんとした可愛い女の子が呂布なのか?そんな感じ全然…あ、でも、それなら、最初に会った時の得体の知れない感じ…あの全身を包み込む尖った殺気。天下の飛将軍が放ったものなら納得が行くな。あの時俺は地和泣かせてたわけだし。理由としては充分か。

 

「呂布さんだね。ありがとう。」

 

 

「……恋でいい。」

 

 

「なんでかな?一応真名なんだし、預ける理由は?」

 

 

「理由?」

 

うーん、と呂布は首を傾げてしまった。しまった。と思った。この手のタイプの子に理由とか聞くべきじゃなかった。俺が急いで訂正しようとすると、

 

 

「……セキト懐いてる。セキト小さい頃村の人に暴力受けたことある。そのせいであまり人に懐かない。セキト人の顔を見て、いい人か悪い人か自分で判断する。柑奈のことセキト全く警戒してない。セキトが柑奈信用してる証拠。セキトが信用してるなら恋も信用する。だから真名預ける。これじゃダメ?」

 

 

スゴいな。いい主従関係だ。いや、友達か。

 

「ありがとう。そういう事なら真名で呼ばせてもらうよ。よろしく恋さん。俺の真名は優だから。」

 

 

フルフル 「恋でいい。」

 

 

「?、あぁ、そういう事か。わかったよ。よろしく。恋。」

 

「うん。」 ニコッ

 

 

「じゃあ、屋敷隣どおしだし一緒に帰るか。」

 

 

「うん……?」 クビカシゲ

 

 

「ん?どうしたの?嫌だったかな。」

 

 

フルフル 「違う。恋達見られてる。嫌な視線感じる。」

 

 

「え……?」

 

気配を探ってみるが何も感じない。視線?恋は一体何を感じて…

 

「見つけた。そこ。」 ヒュン

 

恋は、見つけた。と言うと即座に移動し近くの林の中に得物を突き刺した。

 

 

(!、ぐっ!なんで…っち、退却するか。)

 

 

「手応えあった。でも視線消えた。逃げた?」

 

恋が得物を引き抜くと確かにそこには何かを突き刺したであろう証拠に血がついていた。

 

「あの視線嫌い。……?」 サイドクビカシゲ

 

 

「まだ何か感じる? 」

 

 

「違う視線増えた。2つ…どこ?」

 

今度は2つ?

 

「いた。そこから感じる。でも、優の影?」

 

 

恋は俺の影に向かって指を指す。あー、なるほど。多分…

 

「恋大丈夫だよ。そいつらは多分友達だよ。于吉、左慈おかえり。とりあえず出てきなよ。刺されるよ?」

 

 

「言われなくとも出ますよ。そんな濃い殺気を当てられれば管理者の私でもさすがにビビります。」 ガクブル

 

 

「殺気?何のことだ?」

 

 

「優、お前は感じないのか?呂布の出している俺達顔負けの強い殺気を。」

 

左慈や于吉は恋が自分達に向かって強く濃い殺気を出しているという。そんなに強いものなら俺も気づくはずだが……?

 

「とりあえず、やめさせてくれませんか?こちらも臨戦態勢を取らざる負えないので…」

 

 

「恋…?そいつらは確かに得体が知れないかもしれないけど俺の友達だ。警戒しなくても危害を加えたりしないから。」

 

 

「 …… 」 スッ

 

 

「で?俺が大変な間でお前らどこにいたの。」

 

 

「いや、そのだな、呂布が…」

 

 

「ん?恋がどした?」

 

 

「…………」 ジャキ

 

振り向くと恋が物凄い形相で武器を構えこちらを睨んでいた。しかし殺気は全く感じない。

 

 

「嫌な視線気にしてて気づかなかった。敵(?)沢山いる。恋達の周り囲まれてる。」

 

「「「え!?」」」

 

 

「 確かに…ざっと4、50人ってとこですね…私より感知が早いとは…」 コソコソ

 

 

「優のこと追いかけてきた?優のことまた¥揩ツけるの?そんなの恋が許さない。隠れてないで出てきて。恋が相手する。」 キッ! ゴゴゴゴゴ

 

 

「「「「「くっ!!!!!」」」」」

 

 

こ、これが呂布…恋の殺気か!?俺なんかとは格が違う。浴びるだけで体を切り刻まれる感覚に陥る…立って…られな… ガクッ

 

「優!大丈夫か? 」

 

 

「ごめん。左慈。しばらくこんな殺気、感じたりしなかったから耐性が弱まってるみたいだ。」

 

 

「いや、それは勘違いだ。こんな強い殺気浴びれば誰でもあてられるさ。それにお前はまだ管理者になって日が浅いからな。外史の住人に対する耐性ができてない。お前自身に不足はない。」

 

 

「どうしたの?かかってこないの?なら、恋から行くッ!」

 

「待てっ!」

 

「!?」

 

 

「恋待て。我々は恋と戦うために来たのではないぞ。」

 

突撃しようとする恋を止めたのは春蘭だった。後から出てきた連中もよく見たら昔から…あの頃から猪将軍に付き、その無茶苦茶を耐えてきた兵達だった。全員顔見知りだ。

 

「なら、なんで来たの?」

 

 

「恋。そいつを守るな。今回は我々に義がある。その後ろにいるやつの身柄をこちらに渡せ。」

 

 

フルフル 「だめ。ちゃんと理由話して。」

 

 

「そやつは、敵だ。我々は華琳様の命できている。倒れたふりをして魏内に潜り込み情報を盗み逃走。その際に魏の兵を2名殺している。」

 

 

フルフル 「それ、違う。優からは血の匂い全然しない。それに武器も持ってない。」

 

 

「こちらには目撃者も複数いるのだ。逃れようのない事実だ。恋、そいつを庇うのであればお前とて容赦はせん。」

 

「優、悪い人じゃない。何かの間違い。」

 

 

「さっきから優、優と。それの事を言っているのか?そもそも我々は華琳様より捕らえるかそれが出来ぬ場合はその場で首をはねろと言われているのだ。どの道それは断罪される。」

 

 

「「「!!!!!」」」

 

ヒュン

 

ザクッ

 

春蘭の言葉が終わると同時に恋の姿が消える。刹那、恋は春蘭の肩を突き刺していた。

 

 

「ぐっ。恋!貴様なんのつもりだ!それに味方するのであれば共に断罪するぞ!」

 

 

「春蘭…真名勝手に呼んだ。」

 

 

恋は春蘭の耳元で囁くように言う。

 

 

「優の真名勝手に呼んだ。この世界≠ナはどんな罪よりも重たいこと。優の罪はまだ確定してない。でも、春蘭は今、沢山人のいる中で勝手に呼んだ。それは揺るぎない事実。だから、恋、春蘭のこと、コロス=H」

 

 

ゾゾゾ ゾクッ 「ま、真名だと?そんな罪人の真名を呼んだところでなんの罪に問われる!」

 

 

「真名はその人の心を映す鏡ってここに来た時≠の人に教えられた。勝手に真名を呼ぶのはその人の鏡や魂を汚すことだって。優はもう恋にとって大事な人。その人を汚した。」

 

 

恋の様子がおかしい。さっきから妙に理論的というか…話の内容もどこか引っかかる…これは一体……なんにせよ、このままだったら本当に春蘭が殺されかねないな。どうする……?武器もないし…あ、そうだ。

 

「于吉」 コソコソ

 

「なんですか?」

 

「俺の刀ここに出せるか?」

 

「呉の自室ですか。急ぎならば1本が限界です。」

 

「片方あったらそれでいい。」

 

「紅と蒼のどちらを?」

 

「いや、隠密用の刀で大丈夫だ。」

 

「しかし、刀があったとして、それで呂布は止まるのか?こう言うのもなんだがこの中には呂布に勝てるやつは…」

 

「左慈。俺は別に恋と戦うわけじゃない。夏侯惇には悪いが怪我は覚悟して貰うしかない。俺が自ら夏侯惇とやる。俺がやるなら恋は止まる…と思う。このままじゃ簡易的な死体の山がここにできあがる…それは止めないと三国の関係的にヤバイだろ。」

 

「手は…出さない方が懸命か。」

 

「どうぞ。」 スッ

 

「ありがとう。」

 

 

 

「春蘭。本気で来て。じゃないと恋には勝てない。」

 

 

「恋!貴様!」

 

 

「やめろ!2人とも!」

 

 

「「!」」

 

「なんだ?お前、大人しく投稿する気になったのか?」

 

 

「……ふ、ふふ。ハハハハ。」

 

 

「な、なんだ?何がおかしい!」

 

 

「昔っからそうだ。相も変わらず猪か!夏侯惇!」

 

 

「な、なんだとぉ!貴様!今すぐ叩き切ってやる!」

 

 

「恋。」

 

ピクッ 「ん、」

 

「真名を汚されたのは俺だ。恋が怒ってくれるのは嬉しいけどここは俺に任せてくれないか?」

 

「優、大丈夫?」

 

「大丈夫だよ。俺、そこそこ強いから。」 ニコッ

 

 

「うおおおおおおー!チェストォ!」 ブン

 

 

キンー 「全く、人が喋ってる時に切りかかってくるなんてそれでも武人か?夏侯惇。」

 

 

「う、うるさい!(こいつ、私の全力を片手で…)」

 

 

「もしも、俺が罪人だとしても真名を汚されたのには変わりはない!訂正する事もせず切りかかってくるなど言語道断だ。 失望したよ…(ボソッ」

 

 

「せいやぁ!」

 

春蘭は1度離れた状態から即座に背後に回り込む。だが、

 

「そこか。」 ヒュン

 

 

「な!?」

 

隠密での訓練による全方位からの攻撃に慣れている優にとっては無意味だった。ましてや春蘭は先程、恋の攻撃を受けている。そんな手負い状態の春蘭が勝てるわけもない。

 

「残念だが、素直に負けを認めろ。」 キッ

 

 

「武人としてそんなことできるかァ!死ねぇ!」

 

 

「だから、猪って呼ばれるんだよ!」

 

 

縦に剣を下ろした春蘭に対し、優は既にその場にはいない。春蘭の真後ろに移動していた。

 

 

「なるほどね。よくわかったよ。」

 

 

「ちぃ!そこか!死ねぇ!」 ブン

 

 

「同じことを何度も何度も繰り返して。全く学習する気配がない。そんなことだから妹や主に迷惑をかけるんだ!はぁーーーー!」

 

 

キィーーーーーーーーーーーーンーーーー

 

 

刃物のぶつかる音が鳴り響く。

 

「なっ!な、なんだと!?」

 

 

次の瞬間、春蘭の愛刀・七星餓狼は折れていた

 

「わかったか?今のお前は俺に勝つことはできない。お前はここ数年保つ努力しかしなかった。伸ばす努力をしてないな。それじゃ俺には勝てないよ。」

 

 

「うっ」 プルプル

 

 

「他の連中もだ!お前達の統率者は俺に負けた!素直に引き下がれ!それに、残念だけど俺に数の暴力は通じないから。」

 

 

「………貴様など…」

 

 

「?」

 

 

「貴様など!我が拳で充分だ!死ねぇ!」

 

 

「っ!?」

 

 

七星餓狼を折られ地面に倒れていた春蘭は突然殴りかかってきた。

 

 

「くっ!」 ビュン

 

 

ボト…

 

 

「!!!!!」

 

 

膝をつき倒れていた春蘭に背を向け他の兵達に撤退を求めていた優は突然の襲撃に反射的に体が反応し剣を振っていた。そして音を立て地面に落ちた物…それは…

 

 

「ーーーーーーーーっ!夏侯惇!」

 

 

春蘭の腕だった。優は反射的に拳を避け春蘭の腕の付け根を切っていた。

 

 

「…………」 グッタリ

 

 

「夏侯惇!返事をしろ!夏侯惇!」

 

 

腕を切られ意識を失い倒れた夏侯惇。腕の付け根からは大量の血が吹き出していた。

 

 

「于吉!大急ぎで華佗を呼んで来い!」

 

 

「わかりました!」 シュン

 

 

「馬鹿兵共!夏侯惇を運ぶのを手伝え!曹操の屋敷にはまだ医者がいるはずだ!」

 

 

ざわざわざわ

 

 

「っち!お前ら!長年あの馬鹿猪に付き従った兵達だろうが!このままじゃ夏侯惇は死ぬぞ!それでもいいのか!」

 

 

ハッ!

 

 

「す、すまない。混乱していた。俺達は何をすればいい?」

 

 

「とりあえず3人位は俺と一緒に夏侯惇を運ぶのを手伝え。ほか何人かは夏侯惇を乗せることの出来る板のようなものをもってこい!他の奴らは屋敷に戻って各々自分で考え対応しろ!」

 

 

「「「わかった!」」」

 

 

「恋!」

 

 

「…………」

 

 

「恋ッ!」

 

 

「!…なに?」

 

 

「急いで呉の屋敷に向かって事情を説明してきてくれ!左慈。一緒に行ってくれ。」

 

 

「ん。わかった。」

 

 

「わかった。」

 

 

 

 

 

10分後-

 

ダッ 「春蘭!」

 

 

「どけ!曹操!」

 

 

「あ、あなたは柑奈?どうして…」

 

 

「説明はあとだ!夏侯惇の治療が先だ!」

 

 

「優!」

 

 

「華佗か!夏侯惇を頼む!」

 

「話は于吉から聞いている。腕の修復は保証できないが命は繋げてみせる。任せろ!」

 

 

「私も一緒に治療しましょう。」

 

 

「管輅か!?まぁ、いい。この状況、お前以上に頼れるやつはいないな。他の連中は綺麗な水を大量にもってこい!急げ!」

 

 

頼んだぞ…華佗、管輅さん……

 

 

 

 

 

 

約4時間後-

 

夏侯惇…春蘭はとりあえず一命はとりとめた。腕はくっつけてはみたものの動くようになるかはわからない。とのこと。

 

呉からの迎えは来たものの俺は今日は帰らず屋敷に残ることを選んだ。雪蓮さんは後から来てくれるそうだ。華琳とは概要のみを話した。華琳はそんな指令は出していないとのことだった。春蘭が言っていたこともデタラメ。つまり、俺は無実らしい。まぁ、それでも、魏の面々からの提案で監視の隠密部隊が付いているが。ちなみに魏の面々はなぜ春蘭がそんなことをしたのか調査しているとのこと。

 

今現在、俺は屋敷の屋上にいる。今頃、下の階では俺がいなくなったと騒ぎになっている事だろう。

 

 

「あら、人の屋敷の屋上で何をしているのかしら?」

 

 

「……ちょっと黄昏たくてさ。」

 

 

「春蘭のことなら気にしなくていいわ。管輅達の話では1週間もすれば目が覚めるとのことだし。」

 

 

「それでも、だよ。」

 

 

「でしょうね。」

 

 

ダッ 「華琳様!なぜこんな所へ?」

 

 

「あら、秋蘭。そんなに急いでどうしたの?」

 

 

「柑奈が消えたそうです!隠密達のスキを突き…「ふふふ。」華琳様?」

 

 

「だそうよ?」

 

 

「そうか?あれでもコソコソ監視しているつもりだったのか?かくれんぼじゃないんだからさ。」

 

 

「あら?そんなのでも桂花と凪が一生懸命作り上げた部隊なのだけれど。そんなこと聞いたらあの子達泣くわよ?」

 

「荀ケと楽進かぁ、人選を間違えたね。荀ケは男嫌いだから曹操の命令でも男の事に関しては適当になりがちだし、楽進は気を操ることには長けているかもしれないけどそれとこれとは話が別。そうだなぁ。軍師は郭嘉、指導武将はそこにいる夏侯淵あたりがよかったんじゃない?」

 

「貴様…何を…」

 

どうやら秋蘭からは俺の姿は見えていないようだ。

 

「まぁ、現役隠密部隊長からのアドバイス≠セよ。」

 

 

「あら、ありがとう。参考にするわ。」

 

 

「なっ、貴様!柑奈か!?」

 

 

「柑奈?あら、そうだったの。ふふ。気づかなかったわ。」

 

「貴様がッ!姉者を!」 ギリギリギリ

 

秋蘭は俺が柑奈だとわかった瞬間、弓を構え最大の殺気を放つ。純粋な青じゃなくて怒りの赤の混じった紫色の殺気とでも言うか。恋程じゃないにしろそこは歴戦の武将。改めて感じてみると強い殺気だ。

 

 

「秋蘭。弓を下ろしなさい。」

 

 

「しかし!こいつは姉者を!」

 

 

「秋蘭!あなたもわかっているでしょう?」

 

「いいよ。曹操。魏の神弓とまで謳われた夏侯淵の弓、見てみたいし。」

 

 

「ーっ!舐めるなッ!」 ヒュン!

 

 

「秋蘭!」

 

 

ガシッ 「ふぅ。」

 

 

「「!?」」

 

「驚かせたかな。この手の訓練もやらされてね。完全に気配を絶たれていても避けれるか掴むことができるようにね。真正面からなら弓の軌道を見て掴むことは容易いよ。でも、」

 

カン

 

 

「さすがに魏の神弓の放つ弓だ。手を少し切った上に右手が完全に痺れてるよ。こんなの絶対相手にしたくないね…」

 

 

「なっ!?」

 

「ふふ。さすが部隊長ね。昔とは大違い。」

 

 

「昔?いえいえ、曹操さんとは今日初めて会ったはずですが?」

 

「さっきまで普通に話していたくせに今更遅いわよ。バカ。」

 

「それもそうか。」

 

 

「逞しくなったじゃない。」

 

 

「そっちこそキレイになったよ。」

 

 

「ふふ、ありがとう。」

 

 

「華琳様?こいつは一体…」

 

 

「あら?月の光が見えてきたわね。今夜は満月かしら。」

 

 

「満月…か…」 ヒュン

 

 

トンッ

 

 

「な、きえ…た…?ぐっ…」 バタッ

 

 

「早いわね。ぜひうちに欲しいわ。」

 

 

「無理だよ。俺はもう雪蓮の、呉の物だから。」

 

 

「本当に逞しくなって…」

 

 

「親子心か?それとも純粋な感想?」

 

 

「どっちもよ。一刀=B」

 

 

「そりゃどうも。華琳=B」

 

 

「それにしても、いいのかしら?真名なんて呼んで。私はあなたを捨てた女よ?」

 

 

クスッ 「管輅さんからさっき聞いたよ。この世界の中心である華琳だけは洗脳の影響下に陥る前に術を施したって。そもそも、最初に会った時からこの姿で見えてたんだろ?」

 

「えぇ。あなたは最初からあなたに見えていたわ。まさか、呉で隠密部隊の隊長格にまでなっているとは思ってはいなかったけれど。」

 

 

「俺も結構頑張ったよ?思春隊長は一向に真名呼んでくれないわ、雪蓮さんはお酒持って逃げ回るわで。 」

 

 

「あら、女に好かれる努力は惜しまなかったのね。種馬は何年経っても種馬かしら?」

 

 

「その時の俺にそんな感情があったと思うか?」

 

 

「いえ。思わないわ。」 キッパリ

 

 

「あーあ。俺、かなり覚悟してこの世界に戻ってきて勇気を振り絞って誓を立てたのに…こうも、あっさりさ。なんか嫉妬心みたいなものは収まったけど…」

 

「でもね、一刀がそうでも私は怒っているわ。あの子達は確かに本当に抱かれた訳では無いわ。でもそれはそれ。これはこれよ。たまたま管理者である曹紀の性格上私達みたいな女は抱かないと決めていたからこうなったけれど、もしもどんな女でも抱く男だったら?あの子達は抱かれていないかしら。答えは否よ。あの子達は自分から洗脳に落ちてしまった。真名をかけ愛した男がいるのによ。それは絶対に許される事ではないわ。」

 

華琳はそう言った。気持ちが理解出来ないと言えば嘘になるけれど。と付け足して。

 

「なぁ?もしも華琳が管輅さんから術を施されてなかったらどうなってたと思う?」

 

 

「……そうね。洗脳には落ちなかったと思うわ。」

 

 

「へぇ?なんで?」

 

 

「なんでって、決っているでしょう?私は王であり覇王よ?自分の愛す男位自分で決めるわよ。現実にしろ、妄想にしろね。」

 

 

「そっか…流石は華琳だ。」

 

そう言った華琳の顔はとても清々しく美しい顔だった。

 

「まぁ、どっちにせよ。これで隠し事なしに華琳を守れるって事だな。他の皆にはさすがに無理だけど。」

 

 

「そうね。」

 

 

「まぁ、年に数回会うか会わないかだろうけど。俺は隠密で任務もあるし。」

 

 

「そっか……」

 

 

「ん?どうかしたか?」

 

 

「!、いえ、なんでもないわ。そうね。せいぜい私を守りなさいよ。」

 

「華琳、桂花みたいになってるぞ?」

 

 

「うるさいわね。それ以上言うと首をはねるわよ。」 スッ

 

 

げ!絶先輩!?毎度の如く一体どこから!?

 

「ごめんごめん。」

 

 

「でも、」

 

 

「?」

 

 

「1年に数回とは言わずたまには会いに来なさい?」

 

 

「へ?」

 

 

「私は寂しがり屋の女の子≠セもの。寂しくて死んじゃうわ。」 ニコッ

 

 

「ーーーーーーーっ!//」 クラッ

 

 

反則…だろ。

 

すーっ。月が雲で隠れる。

 

 

「わかりました。では、私≠ヘこれにて。夏侯淵様は私の部隊の女隊員に預けますので。」 パチン

 

 

「…………」 スッ

 

 

「頼む。」 ヒョイ

 

 

「了解しました。」 ヒュン

 

 

「では、曹操様。今日は色々とご無礼を働き、誠に申し訳ありませんでした。私は主の護衛がありますのでこれで。」

 

「そう。ならば下がっていいわ。お疲れ様。」

 

 

「有り難きお言葉。では失礼します。」 ヒュン

 

 

 

「…やっぱり逞しくなったわね。この世界がこの先どうなろうと、私はあなたを愛しているわ。一刀。覇王の名にかけてもう二度と愛していた≠ネんて言わせないわ。」

 

 

ガタッ

 

 

「…………」 シーン

 

 

「ふふふ。おやすみなさい。」

 

 

SIDE・華琳

 

一刀……あなたはそんな目に遭いながらもあの子達の事を許すのでしょう?結局どれだけ逞しくなろうともあなたは弱い。この世界には不釣り合い。私ね…最初はあなたに洗脳の事は伝えないつもりでいたの。会わないつもりでいた。その方がお互いのためになると思ったから。でも、あなたが襲われて私の屋敷に運ばれたと聞いた時、どうしても動かずにはいられなかった。

 

私は最初からあなたの事を一刀だと認識していたから柑奈の顔には見えていなかった。管輅に頼んで柑奈の状態のあなたを見せてもらったけれど…ふふ、柑奈の方が色っぽくてかっこいいわね。

 

あなたに正体を話すことを決心したのは意識が戻ったあなたと会った時だった。思ったよりも私達はあなたの心を想イ≠ニいう名の鎖で束縛していたのかしら。私と対峙したあなたはとても辛そうで、指でつついただけで脆く崩れてしまいそうで、その場から逃げ出して…あの時思ったのよ。このままじゃ近いうちに一あなたは精神崩壊を起こすって。だからこそあなたが去った後、あなたに私の事や他の子達の事を話すことを管輅に相談したの。管輅自身もその事を言うべきだと思ってたから次会ったときにでも3人で場を設けて言おうと思ってた。

 

まさか、その日中にこんな形で会うことになるとは思わなかったけれど。春蘭の件、優しいあなただからこそこの先も苦しむんでしょう。恋人の腕を切り落としたなんて常人でもたまったものじゃないもの。だから早急に、少しでも気を軽くする必要があったから管輅に話してもらったの。大丈夫。私が望まぬ限り春蘭は死んだりしないわ。

 

いくらあなたの姿形が変わってもあなたがおかしくなろうともどれだけ手を血に染めようとも私はあなたを愛しているわ。一刀。だから、あなたの役目が終わった時は私と……

 

 

 

 

 

という訳で、第10話 再会 後編をお送りしました。

 

お久しぶり&申し訳ありません。投稿できると言った前の日に風邪を引いて4日程ダウン。それから少しリアルが忙しくなり、落ち着いたと思ったらPCがダウン。全く直る気配が無く、恋姫も書けない状態でした。Twitterの方には常時載せていたのですがやはりこちらにも何かしら書いておくべきでした。すみません。本来は修理完了後、書いて投稿するつもりだったのですが目処が立たずこれ以上皆さんをお待たせしたくもなかったのでスマートフォンで書いてました。(物凄く時間かかりましたけどね…)

 

今回少し長めですが一刀を少しずつ救済ルートに入れる形で方向を修正しました。(いつまでもシリアスしてたら書いてる自分が鬱になりそうで…)かなりグダっている部分もありますがご勘弁を…それと、スマートフォンによる作成だったので誤字、それから文章の章列などおかしな部分が多々あるかもしれません。ぜひ、ご報告下さい。

 

最後に少しだけ華琳の話を入れました。もちろんちゃんと1話分の拠点&視点の話を作るつもりなので華琳様はその時に。

 

次の投稿はまだスマホ作成になるので先かなー?いや、がんばってPC治します。まぁ、とりあえず未定としておきますね。半月以内には出します(余程のことの無い限りは確定。)。

 

それでは、月神でした。

 

 

 

PS、とある事情から暫くお休みする事になりました。多分今回はそれなりに間が開くと思われます。その間待っていてくださると嬉しいです。他サイトで別の小説を書かせていただいていますがそちらの小説は連載します。なんでやねって思うかもしれませんが少々事情がややこしいんです。スミマセン。必ず戻ってきますのでそれまでお待ちください。

 

月神でした。

 

 

説明
お久しぶりです。後編更新です。残酷な描写ありです。
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コメント
ケフカ・パラッツオさん>コメントありがとうございます。最近暑いですからね。そちらもお気をつけ下さい。まぁ、私の体調よりもPCの夏バテ早いこと治さないと…風邪(ウイルス)でもないみたいですしまだ購入してそんな経ってませんし…なんでだろ…ともかく気をつけます。それでは次の更新をお待ちください。(月神)
Mioさん>コメントありがとうございます。無理はしないです。リアルで空いた時間にスマホいじって書いてただけですから。まぁ、急いで書いていい文が出来るとも思えないのでゆっくり外史を紡ぎます( ̄∇ ̄*)ゞ(月神)
殴って退場さん>いつもコメントありがとうございます。華琳流ふるい落とし。まぁ、華琳、霞、地和以外で気づく者が出ればそうなるでしょうね。今回の話では一刀の精神的療養が目的なのであまり出てませんが華琳様、割とおこですから。この先どうなるやら……(月神)
morikyouさん>コメントありがとうございます。まぁ、さすがの華琳様ですね。個人的には三国の王の中では1番有能な気がします。他の2人も華琳より秀でている所もありますが、全体的に見た感じでですかね。救済√は元より入れるつもりではあったんですよ。鬱方面で9話続けたしそろそろ、ね?って感じです。(月神)
心は永遠の中学二年生さん>いつもコメントありがとうございます。お待たせしてスミマセン…華琳様はツンデレ。恋姫界の常識ですね。たまにそれを覆している方がいますがそれはそれでイイ!春蘭…まぁ、ちょっとあれかなぁ?とは思いましたが猪ですししょうがないですね!そういえば呉の猪枠って誰なんでしょ?やっぱ雪蓮になるのかな?(月神)
体調に気をつけてください。更新待ってます♪(ケフカ・パラッツォ)
これからの展開が楽しみですが、無理をしない程度に、楽しんで外史を紡いで下さい(^−^)(Mio)
これは華琳流のふるい落としか。一刀の愛情に対してその人物の真価が問われることになりそう。(殴って退場)
いろいろとお疲れ様です^^; なんだかんだいいつつも、さすがの華琳様と言ったところですね! 救済√に入るとのことで、これからどうなるか非常に楽しみです! 次も頑張ってください!(morikyou)
おかえりなさい!!待ちわびたぜひゃっぱー!!華琳のツンデレ化最高です!春蘭・・・華雄笑えないくらい猪じゃん・・・?今日は仕事休みだから、もう何回か読み返せる!(心は永遠の中学二年生)
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一刀(優) 後編 華琳 春蘭  グロ描写(小) 

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