Dear My Friends!第2期 第10話 接触
[全13ページ]
-1ページ-

(次の日の朝 インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所・食堂)

 

 カチャカチャ

 

 各人、とりあえず睡眠はとれたようで、朝食のために全員が食堂に集まり、今回は会議無しで、しっかり朝食をとっていました。

 

めぐみ:えっと、皆さん、一応スケジュールだけ伝えておきます。出航は明後日の朝です。それまでにこの街で各人の買い物を済ませて置いて下さい。魔法系の方は魔法の素など、剣術の方は武器の手入れとか関係物品などの用意をお願いします。朝昼晩の食事用の食料は不要です。こちらで用意します。私と学歩は、その他にガイドに必要なマップとかの物品を揃えておきます。何か質問ありますか?

ルカ姫:はーい、冒険用の物品とか売ってますか?

めぐみ:道具屋がありますので、そちらでお願いします。この街の地図は食後に各自にお渡しします。他には?

 

テル:いや、我々はいいのだが、イアが問題なのだ。この街に尾行している連中がいるとわかった以上、絶対に一人で行動させる事はできん。イアの戦闘能力は実戦で測定していないのでわからないが、それでも個人行動は危険だ

めぐみ:そうですね。とはいえ、ここの中でずっと待っているのも可哀想です。護衛を付けたいのですが、残念ながら学歩は私と行動を共にしますので、そちら側で護衛をお願いしたいのですが…

 

アペンド:じゃあ、その3人組を“知っている”メンバーと、もし何かの時に私たちに連絡を付けられる様に、あと一人、護衛を付けるというのは?

めぐみ:すみませんが、それでお願いします

 

 テルはここの全員を見渡して、何かを決めたらしく発言した。

-2ページ-

テル:では、当人と私とリンと…そうだな、腕っ節も欲しいから、レン、頼めるか?

レン:いいですよ。僕がいないと、そのパーティ、物理攻撃に弱そうだからね

イア:皆さん、宜しくお願いします

 

アペンド:では、護衛もあるし、イアが寄りたいお店もあるだろうから、テルとリンとレンの3人、私に頼める買い物、何かある?

テル:私は大丈夫だ

リン:回復系魔法原料を少し頼みます

レン:研磨剤をお願いします。イアさんでは多分立ち寄らないと思うし

アペンド:OK!

イア:すみませんです…

テル:気にするな。今日は君の護衛と、君自身の買い物がメインだ。乗船した後だと色々大変だろうから、今日は1日、休暇のつもりでゆっくりしていくといいだろう

イア:すみませんがそうさせていただきます

 

 それを聞いていたルカ姫は、勝ち誇った顔をして、アペンドに目線を移して一言発言した。

-3ページ-

ルカ姫:ふっふっふっ、アペンド、じゃあ、その買い物も兼ねて、私のオトモ、宜しくね♪

アペンド:そう来ると思いましたよ。はいはい、オトモさせていただきます

ルカ姫:やったー!

テル:アペンド、ルカ姫のおもり、頼むぞ?

ルカ姫:“おもり”じゃないもん!

 

 ルカ姫はほっぺたを膨らませて、ちょっとふくれっ面をしたのでした。

 

めぐみ:それでは各人、準備の方、お願いします

 

 こうして、集まった面々は、それぞれの準備のために、朝食が終わった後、準備をして出かけたのでした。

-4ページ-

(同日同時刻 インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所付近のカフェ“ピット”)

 

 その同時刻、あの三人組も、宿の近くのカフェで朝食を取ってました。ゆうまはノートPCでイアを追跡しながらサンドイッチを頬張ってました。ミズキは情報の整理とこれからの計画をチェックしながらカツサンドを口に運んでいました。そして、りおんは…

 

りおん:はむほむはむほむ

 

 特に何もしないで、必至になってブルーベリーサンドを食べてました。

 

ミズキ:りおんちゃん…お腹空いてたの?

ゆうま:いや、多分、食い意地が張っているだけだと思うぞ?

りおん:朝ご飯はちゃんと食べる、これはアチシの座右の銘なのだ!

ゆうま:そ、そうか、でもまぁ、程々にな

りおん:はむほむはむ…

 

 そんな感じだったが、ノートPCの中のイアのシンボルが、最高裁の食堂から動き出したため、ゆうまはミズキに声をかけた。ミズキはノートPCをのぞき込みました。

-5ページ-

ゆうま:奴さん、動き出したぞ。どうやら仕度して外出するらしいな

ミズキ:私たちの事を知っている上で外出するのなら、当然、あの残り二人は最低でも護衛するわね

ゆうま:そうだろうな。で、どうする? ここか宿でも追跡出来るが、やはり宿に荷物を置いて尾行するか?

ミズキ:こちらとしては、この展開はラッキーね。乗船する前に確保できる、たぶん最後のチャンス。確保を前提とした尾行に切り替えましょう。但し! 戦闘にならないことね。ここは言ってみれば私たちにとって“完全アウェー“。騒ぎになったら、乗船すら出来ずに追い出されるからね。深追い厳禁!

ゆうま:了解だ。古来の“ニンジャ”のように、忍んで確保しよう

 

りおん:はむはむ…。ずずーーーー。ぷはぁ! ご馳走様!

ゆうま:満足したか?

りおん:満足なのだ!

ミズキ:んじゃ、そろそろ行きましょうか

ゆうま、りおん:了解!

 

 こうして、ミズキ達三人組も、行動に移したのでした。

-6ページ-

(同日午前10時 インタネ共和国内 城塞都市クリアン 道具屋)

 

 イア、テル、リン、レンの一行が、外出して最初に立ち寄ったのは道具屋でした。これはイアの意向で、小物などを収納して持ち歩けるポーチが欲しかったのです。

 

リン:イアちゃん、ポーチだったら私やルカ姫が持っている物でも良かったんじゃないの?

イア:いえ、お金は貰っていますし、何かあったときの“私の痕跡”を見つけやすいように、皆さんにも見て貰って買った物を持ち歩こうと思いまして

レン:なるほどな。良い考えだと思う

テル:で、どんなのがいいんだ? カバン専門店の方が良かったんじゃないか?

 

 確かに専門店の方がしっかりした物を置いてある、これは正論だ。

 

イア:いえ、私が買った“道具”も一緒に確認して貰って、それを入れる“袋”みたいな立場で、ポーチを確認して欲しいんです

テル:解った。時間はあるから、ゆっくり見て回ればいい。我々は護衛をしている

イア:お願いします

 

 こうしてイアは、良さそうな道具とポーチを見て回ったのでした。テル達はしっかり護衛をしていましたが、あの三人組らしき人物は店内どころか、近くにもいなかったのでした。

 

テル:(どうやら、距離を置いて尾行しているようだな。ギアもあるわけだし、当然か)

-7ページ-

 そんなこんなで道具をまず見つけていたイアは、ある道具の前で立ち止まりました。それは赤と黒の布地で折られた人形で、種別は一般的には、

 

 スケープゴートフィギュア(身代わり人形)

 

と呼ばれる物でした。それは何かあったときに身代わりになるか、自分の形見を入れて置いて、もし何かあった時に当人だと思って大切にして貰う、特殊な人形でした。

 

イア:(・・・・・・・これが必要な時が来ないといいけど、でも、生命保険はかけておくべきかな・・・・・)

 

テル:? イア、その人形買うのか? 君を作った本人だから“野暮なツッコミ”はしないでおくけど、その人形を要する時が、こないといいな

イア:ええ、でも、保険はかけておくことにします

 

 そういうと、イアは目線を人形の上の棚から吊されていた“赤と黒のストライプ柄をポーチ”に移しました。どうやらこの赤と黒の人形とセットで売られている収納ポーチのようでした。

 

イア:このセットのポーチと一緒に買います

リン:あら、可愛いね、それ

レン:(リンはそういうの好きなんだ…今度の誕生日はキマリかな)

 

テル:よし、わかった。こちらの買い物もちょっとあるから、全部まとめて籠に入れて、会計を済ませよう

 

 そういうと、イアの人形とポーチ、テルとリンの魔法の素、レンの万能紐(剣の柄用)を全部同じ籠に入れ、テルが会計を済ませたのでした。

 

 そして、お店から出た店先で、各自に買った物を手渡すと、イアはレンにナイフを貸して欲しいとお願いしました。

-8ページ-

レン:ナイフ? 何に使うの?

イア:この人形の中に込めておく物を採取するためです

レン:そうなの、解った。はい、これ

 

 そういうとレンは、武器用ではなく女の子でも扱える小型の便利ナイフをイアに手渡しました。すると、イアは頭を少し前に屈めて、右手でナイフを持つと、自分の薄黄色の後ろ髪の先“5cm”を切り落としたのでした!

 

レン:ちょっ!

テル:!

リン:イアちゃん、何やってるの! 髪は女の子の命でしょ!

-9ページ-

 しかしイアは表情を変えず、平然として、左手に握られている“切り取った後ろ髪5cm分”を、人形の背に付いているチャックを開けて、中にしまい込むと、チャックを閉じ、また人形をポーチにしまいました。

 

イア:これでいいです。私に何かあった時は、これをスケープゴートにするか、これを私だと思って大切にしてください

リン:何縁起の悪いこと言っているの! そんな時、来るわけないでしょ!

テル:・・・・・・・わかった。“何かあった”時は、私がそのポーチを受け取る事にする。それでいいね?

イア:はい、お願いします。でも、テルさんならわかりますよね、その人形の“本当の使い道”…

テル:・・・・ああ、十分把握しているよ。でもそう言うときが来ない事を私も願っているよ

イア:優しいんですね

テル:君を作った者として、当然のことだ

 

リン、レン:(??????)

 

 こうしてイア達の買い物の1件目は終わり、一行は近くのオープンカフェに立ち寄り、昼食を取ってました。

-10ページ-

 ところで、そのカフェの店内の奥の席には、実はミズキ達一行が昼食を取りながら、ノートPCをしまって、サンドイッチをつまみながら、目視による尾行を続けていたのでした。実はこの3人、道具屋の時からずっと尾行を続けていたのでした。

 

ミズキ:予想通り、あの魔導師達が用心棒でついてきたから、道具屋には入れなかったけど、ランチの時は少し不用心みたいね…

ゆうま:まぁ、食事時ってのは、古来から注意力が散漫になるものだ。だが、それでもイアが単独になることがないな…。なかなかチャンスが作れない…

 

りおん:はぐはぐはぐ…

 

 りおんは相変わらず、ストロベリーサンドイッチを無心に食べていました。

 

ゆうま:もう突っ込まないが、とにかく目立たないように頼むよ…

 

りおん:はぐはぐはぐ…、食事をしていて、店内は満員、大通りも人が多い、こっちもおおっぴらに動けないけど、相手はもっと大立ち回りできない状態…。直接交渉するなら、今だと思うのだ。イアちゃんを確保できないけど、話し合いくらいは出来る状況だと思うのだ…

ミズキ:そうね、考えてみれば、逆にチャンスね…。じゃあ、食器を持って、行きましょうか

ゆうま:り・・・りおん・・・お前、実は・・・・・・・

 

 三人は“相席を装う”ために食器を持って、変装せず、どうどうとイア達のオープン席に向かったのでした。ちなみに三人がいた席には、すぐに他のお客さんが座ってしまったのでした。

-11ページ-

(同日お昼 インタネ共和国内 城塞都市クリアン オープンカフェ)

 

 ミズキは満員のオープン席で食事をしていたイアに話しかけたのでした。

 

ミズキ:あの、すみません、相席宜しいでしょうか? 3人なのですが…

 

 イアは食事の手を止めて、ミズキの方を向いて答えました。

 

イア:3人ですか、はい、大丈夫でs・・・・・・・・!

テル:…遂に来たか

 

 レンは愛剣の柄に手を回したが、テルが手で制しました。

 

テル:まて、相手もなかなかのものだ。ここでは双方ともに戦闘など出来る状況ではない…。出来ることはただ1つ、話し合いだけだ

レン:でも、それでは護身している意味が…

リン:混雑しているから逃げるのなら…

イア:いえ、この距離では私が掴まって、彼らが人混みに逃げてしまう方が先です。そうでしょ? 三人組のヤマト国の調査隊の方々?

 

 ミズキは黙って目を閉じていたが、ゆっくり目を開いて、語り始めました。

 

ミズキ:・・・・そこまで推測されてましたか。そうです、私たちはヤマト国から来ました。目的はアナタのような素材を手に入れること

イア:私はもう素材ではないですよ? 素材から作られたモノです

ミズキ:私たちの国の技術なら、逆錬金反応で戻すことが出来るのです。だから、それは反論にはならないのです

 

 そういうと、ミズキは食器をテーブルに置き、空いていた椅子にゆっくり座ると、身構えているテル、リン、レンにも目をさらっと流すと、イアに再度向かって、話し始めました。

 

ミズキ:私たちもあなた達も、ここでは戦えないし、おおっぴらな行動も出来ない。出来るのは、話し合うこと。私たちも強硬手段は取りません。船に乗る前に“こういう場”が設けられたことを感謝したいです。で、皆さんは話を聞いてくれるのですか?

 

テル:やむを得ないだろう。だが、戦闘や強奪をしないことを誓うな?

ゆうま:無論だ

-12ページ-

リン、レン:イアは渡さないよ!

りおん:とにかく話を聞くのだ

 

イア:私もあなた達に会いたかった。どう言うことなのか、教えてくれませんか?

テル:で、そんな重要な事、こんなオープンカフェでいいのか?

ミズキ:ココにいる他の人が聞いても、チンプンカンプンの内容です。無問題ですよ

 

 こうして、遂に、ヤマト国の三人組と、イアが接触したのでした。

-13ページ-

(同日お昼 インタネ共和国内 城塞都市クリアン 別のカフェ)

 

 ところでルカ姫とアペンドの一行は、全く別の場所で、沢山の買い物をして、ようやっとカフェでお昼を取っていたのでした。

 

アペンド:ぜぇ・・・ぜぇ・・・

ルカ姫:パクパク・・・・アペンド、午後からは、薬屋で回復アイテムを買うわよ〜

アペンド:まだ買うんですか!

ルカ姫:ワクワク冒険ですもの、用意はちゃんとしないとね

アペンド:(やっぱり、姫は姫だった…。おもりは大変だわ…)

 

 こうして、ルカ姫達が買い物に夢中になっている時、別の場所では、とんでもないことが起こっていたのでした。

 

(続く)

 

CAST

 

イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-

ルカ姫:巡音ルカ

魔導師アペンド:初音ミクAppend

魔導師テル:氷山キヨテル

僧侶リン:鏡音リン

勇者レン:鏡音レン

 

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ

裁判官 勇気めぐみ:GUMI

 

ヤマト国からの旅人三人組

瑞樹(ミズキ):VY1

勇馬(ゆうま):VY2

兎眠りおん(りおん):兎眠りおん

 

その他:エキストラの皆さん

説明
※今回からの新シリーズは、前作「Dear My Friends! ルカの受難」の続編です。ナンバリング的には2期になります。
現在ピアプロで連載投稿中の最新シリーズとなっております。

☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第16作目の第10話です。
☆今回も1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。現在もピアプロに続きを連載投稿しており、完結しておりません。     

☆2期では、”イアさん”と”ルカ姫”のW主人公で行っていますが、シナリオによって、軸が変わっているところもありますので、そこら辺はご愛敬で…。
☆今回はファンタジー以外にも、ちょっと違った要素も入れてます。

***

☆遂に動き出したイアを取り巻く人たち。そして接触。さぁどうなるのでしょうか!
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
859 859 0
タグ
巡音ルカ IA Append 氷山キヨテル 鏡音リン 鏡音レン インタネボカロ VY1 VY2 兎眠りおん 

enarinさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com