続・世界が終わりなんて間違っている 第二章第一話
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 終わるってどういうことだろう? 人によって価値観が違うから人それぞれだろうが……まず思い浮かぶのは『死』だ。人は死ねば何もできなるくなる。その先に天国や地獄など何かあるかもしれないが生者にわかることは今生きているこの世界しかないのだからその先を考えても今は意味のないことだ。

 

 だが、あの日ゾンビが発生しこの世界は変わってしまった。死してなお自分の意思なくただ人を襲うだけの怪物が世界中を埋め尽くし、生者を貪り、人から自由を奪う。これは、そんな世界で助け合いながら生きていく人間たちの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

第二章

 

 

 

 

 

 

葉 山「まずいな……このままじゃ奴らに囲まれるぞ」

 

戸 部「やっべーっ! これってあれでしょー」

 

八 幡「うっさい。戸部! そんなこと言われなくても大ピンチに決まってんだろうが!」

 

 

 オッスおら八幡。こっちの金髪イケメンが葉山で、あっちのアホそうなのが戸部だ。おれたちは千葉市立総武高等学校に通うごく普通の高校生だった。まぁごく普通という表現は微妙に間違っているかもしれないがとにかくあの日までは俺なりに普通に暮らしていた。『だった』とか『いた』といっているようにそれはあくまで過去の話である。

 

 今年の三月に突如発生したゾンビ達によって世界中の国々が大打撃を受けてしまった。当然、各国で対策を取り避難・救助活動を行っていたのだが、特殊なゾンビ(以後は変異体)の奇抜な行動・大量のゾンビ集団の襲撃で軍・警察などの治安部隊は壊滅的な被害を受けもはやその治安能力は無に近い。

 避難活動を行っていた政府も、国民を避難所である無人島・人口の少ない山岳地帯へ疎開させたが、ゾンビに感染した者を完全に見分けることができず疎開先でも感染が広まり全滅とまではいかないだろうが被害が出ている。その際、政府首脳機関も疎開先に移していたため首脳陣は全滅。つまり政治的能力まで失ったのだ。

 

 政治的能力・治安能力がなくなればおのずと国の崩壊につながる。日本だけでなく諸外国も似たような状況で救助が来ることは無に等しいだろう。つまりだ。自分たちの身は自分たちで守らないと生きていけないということである。

 

 そのせいか水道や電気といったライフラインの供給も行われなくなり、今は校舎の発電システム・貯水(屋上の貯水タンクやそれまでに確保しておいた水)ですべてを賄わなくてはいけなくなった。

 

 

 

 そして数日前、俺らが拠点としている総武高校にゾンビから追われた生存者たちが助けを求めてやってきた。まぁ水や電気が止まれば生活に支障をきたすということもあり調達に出ていてゾンビに襲われたのだろう。深夜ということもありそのことに気づくのが遅れてしまったのは痛かった。

 ゾンビ達を引き連れた生存者たちは封鎖してある校舎に入るのが難しいと考えたのだろう。そいつらはあろうことか体育館を封鎖していた鎖を持っていたもので壊し体育館を開放してしまったのだ。まぁ、後ろからは追って来ていたゾンビの集団・前からは体育館から出てきたゾンビ達と逃げ場を失い、そこで人生の終わりを迎えることになってしまったのだけれど。

 その際に問題となったのが、体育館から開放されたゾンビ達・生存者が逃げる際に引き連れてきてしまったゾンビ達・生存者が逃げ込む際出入り口の門を開けたままだったので生存者の断末魔を聞き周辺のゾンビ達が侵入していることもあり、学校の敷地内には多数のゾンビが徘徊している。

 

 幸い三月の段階で校舎の二階以上を安全区域とするため、一階から二階に上がる際通る踊り場から上を封鎖していたこともあり俺たちの仲間には被害が出ることはなかった。しかしここで誤算が起こる。それまでゾンビとは生前の記憶により行動をするという習慣があるため、時間が経てば敷地内で徘徊しているゾンビ達もいずれは外に出てしまうと勘違いしていたことである。実際は数日経っても数が激減するということもなくふらふらと彷徨い続けているのだ。話し合いの中、俺たちなりに考え付いた仮定ではゾンビは最初の頃は生前の習慣を模倣するが、時が経てばその行動をやめ本能に身を任せるのではないか? と考察している。のちに玉縄を使った実験を行ったが結果は違った。それでも玉縄は変体なので誤差があるかもと記憶の片隅に注意として覚えておく程度にとどめている。

 

 そしてその後、多少時間がかかってしまったが敷地内からゾンビを校外に追い出すことに成功した。その際新たに分かったことがあるがそれは後程話の中で出てくるだろう。

 

 ゾンビを校外に出すことに時間がかかり、その間調達に行くこともできなかったため必要な物資が足りなくなっていたのだ。そのこともあり久しぶりの調達に出ることになったのだが……俺たちは失念してしまっていたのだ。生前の行動をやめて本能の赴くまま行動するゾンビの事を……以前までなら平日の昼間などは会社や学校などに分散していたゾンビ達も、時間に関係なく街中にあふれているのだ。最初の頃のように普段なら少ない時間帯でも餌を求めて行動している。これはライフラインの停止で食料を求めスーパーやデパートに出かける生存者が増えたことも原因の一つだ。つまりスーパーやデパートといった物資を確保できる場所には生存者もゾンビも集まってきているということである。

 

 随分話が長くなってしまったがつまりそういうことだ。調達に出向いた俺たちを待っていたのはゾンビの大群だったということである。

 

 

葉 山「比企谷! どうする? いくらなんでもこの数は相手にできないぞ」

 

 

 

 

 葉山が後ろを指しながら状況と伝えてくる。大量のゾンビ相手ではいくら武器を持っていても足止めされてしまい、その間にその先頭音を聞いたゾンビが群がってくるだろう。

 

 まぁわかりきっていることであるが俺たちの基本はまずはゾンビに見つからないよう行動する。一人で対峙しない。できることなら複数で。相手が複数でこちらの数が少ない場合はまず逃げることを考えるというもので、この状況だと逃げるしかない。だが、移動しても移動してもゾンビの姿があり最終的にはゾンビの集団に追われることになってしまった。

 

 

八 幡「どうするも何もっ……逃げるしかないだろ!」

 

戸 部「そんなこと言わずにヒキタニ君。なんかいい案でもあるんじゃないの」

 

 

 

 

 当たり前の答えを出すしかできない俺に情けない声で戸部が尋ねてくる。ないこともないのだが……リスクが大きすぎる。しかしこの状況ではやむを得ないだろう。

 

 

八 幡「……仕方ない。葉山、戸部。俺が合図を出したら全速力で出口を目指せ。俺にいい案がある」

 

葉 山「何か思いついたのか? それともただ逃げ回るだけってことかい?」

 

八 幡「いいから。そこの角を右に曲がったら出口まで一気に走るぞ!」

 

 

 

 

 出入り口に一番近いコースを指さしながら作戦を伝える。この角を右に曲がれば俺たちのバスを置いている出入り口近くまで直線となっている。そして葉山と戸部が右に曲がったことを確認すると俺は左に曲がりながら

 

 

八 幡「俺は後で合流する! おまえらはバスに戻っていつでも帰れる準備をしておけ!」

 

葉 山「……え、ちょっとまて比企谷! そっちは出口と反対側だぞ! 早くこっちへk」

 

八 幡「いいからっ。お前らは先に行け! ゾンビ共こっちだ!」

 

 

 俺はいつも調達の際に持っている金属バットの先を地面に当てて引きずりながら音を出しゾンビを誘導する。

 

 

葉 山「比企谷! クソッ! 必ずだ。必ず戻って来い!」

 

八 幡「あぁ……わかってる」

 

 

 

 ぐんぐん離れていく葉山たちを見送りながら今もなお音を立てながらゾンビ達の注意を惹く。

 

 

 

 

八 幡「……無事に逃げ切れよ。さぁゾンビ共お前らはこっちだ!」

 

 

 

 

 多分聞こえていないとは思うがあいつらの安否を気にしてしまう。ここ数か月を共にしてきたこともあり今では仲間というより家族に近しい関係となっていることに前の自分はどう思うのだろうか? 多分想像もしていなかっただろう。昔の自分だったら自己犠牲の塊と呼ばれていても正反対の葉山たちのために自分を犠牲に助けるなんて考えてもみなかっただろう。そう思いながら一気に加速してゾンビ達から距離をとるが前方からもゾンビ達がわらわらと姿を現してくる。

 

 逃げ場を失った俺は取り音を立てるのをやめて立ち尽くす。これは一種の賭けになるが上手くいけば下手に動くより助かる可能性が高い。

 

 しばらくするとゾンビ達の集団も追いついてきた。だんだん奴らとの距離が迫ってくる。俺は深呼吸を二、三度行うと精神を落ち着かせ成功を祈りながらただつっ立っている。そうしている間にもゾンビ達の集団は射程距離内に達した。

 

 そして、俺の周りにはゾンビだらけになってしまった。賭けに失敗すればもう二度とあいつらの顔も見れないのかと残念に思うが……。

 

 すでに目の前まで近づいてきている。

 俺の心臓は緊張のあまり外まで聞こえているのではないかと思えるくらい体の中で音が響いている。もう逃げることもできないだろう。ならばせめて玉縄のようにあいつらを守るということだけを考えていようと思う。もしゾンビとなってもあいつらを守れるように……。

 

 目をつむり心音だけが響く世界に俺は落ちていく。できればあまり痛くない方がいいな、あいつらを守れる力がほしいなと願いつつその時を待つ。

 

 もう目と鼻の先にはゾンビの唸り声もはっきり聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 永遠と思える時間が過ぎているように思えるが実際にはそれほど時間は経ってないだろう。三十分? いや十分もたってないだろう。

 ゾンビ達の唸り声も遠のき聞こえなくなっていることからひとまずは賭けに勝つことができたのだろう。恐る恐る目を開けながら状況を確認し始める。ゾンビ達の群れは進路を変えることなく俺を素通りしていったようだ。以前から疑惑(主に雪乃あたりが言っていたのだが)があった俺はゾンビ達に認識されていないという仮説が当たっていたのだ。今までにも俺より周りの仲間がゾンビの標的になりやすいということは多々あった。しかしその際仲間同士との話す声に反応してゾンビが俺を襲ってきたのも事実である。

 

 つまりだ。ステルスヒッキー状態で音を立てないで動かなければゾンビに認識されないということだろう。詳しくはわからんが……まぁそういうことだ。

 

 

 話が脱線しかけたが思惑通りゾンビ達は俺の事を素通りしている今がチャンスだろう。俺はその場で反転すると来た道を戻りだす。音を出さないように慎重に……。葉山たちを分かれた角のところまで来ると俺たちが来た出入り口が見えてくる。そのせいで少し気が緩んでしまったのだろう。

 

 

 

 

 その角から突如飛び出してきた影に対応することができなかった。そいつは俺の目の前にスプレー缶を出すと一気に吹きかけてくる。目にそれが入ると目を開けていられないようない痛みに襲われる。あまりの痛さに手で目を覆うが、そのすきを影は見逃してくれなかったみたいで背中にビリビリ痺れるような痛みが体中に響き渡る。痛みのあまり薄れゆく意識の中で俺はその襲撃者の姿を確認することもできないまま崩れ落ちていくのだった。

 

 

 

???「なぁ……ほんとによかったのか?」

 

???「だけど、さっきのあれ見ただろう。ゾンビ達がこいつを避けていくところを」

 

???「まぁ見たけど……だからってここまでする必要なかったんじゃないか?」

 

???「いや、ゾンビ達が避けていったということはゾンビ発生のカギを握っているかもしれないだろ。もしなくてもこいつがゾンビを避けられた理由がわかれば生存率も上がるんじゃないか」

 

???「たしかにそうだけどよぉ……」

 

???「ああもっ! うっさいね! どうせもうやってしまったんだからグダグダいうんじゃないよ。男ならシャキッとしてな!」

 

???「……わかったよぉ……。っでこれリーダーに報告しないとまずいんじゃない?」

 

???「あたりまえだろ。とりあえずそいつ縛りつけてから拠点に戻るよ」

 

???「もぉ命令ばかりでうるさいんだから……少しは自分も手伝えって……」

 

???「なんか言ったか? まぁそれはどうでもいいけど早くしなよ」

 

???「わかったって……よいっしょ。うん。こっちは準備できたよ」

 

???「それじゃあいくよ」

 

 

 

 その体格に似合わず気弱そうな男は縛り上げた八幡をいともたやすく肩に担ぐと、命令を出していた気の強そうな小柄な青年に愚痴りつつもついていく。

 彼らはいつも通り従業員用のエレベーターに乗り込むと四階まで上る。そう……かおりたちがゾンビ発生時に逃げ込んだ休憩室のあるところだ。今は彼らが拠点として使っている。まぁ無理もないだろう。食料を求めて外に出ればおのずとデパートやスーパーなどの食品がある場所に人が集まる。その際食料を得やすくするためそこにい浮くことは何も不可解なこともないだろう。

 

 

???「でもさぁ……たしかスタンガンって痛みを感じるだけのものが多くて基本気絶までしないんじゃないの?」

 

???「ほとんどがそうだね。ただ痛みに耐性がない人なら気絶することもあるし、今回はその前に催涙スプレーを使ったろ? 人っていうのは五感のどれかを失うとそれ以外が敏感になるってこと」

 

???「視覚を失って痛覚が敏感になった結果ってこと?」

 

???「まぁそういうことだね。しかしこれも目に痛みが分散されているから実際は目や口体を封じてから連れ去る予定だったんだけど……運がよかったんだろな」

 

???「ふぅーん。あ、四階に着いたね」

 

???「じゃあリーダーに説明しないと……」

 

 

 エレベーターのドアが開く音を聞きながら青年は休憩室を目指す。それに少し遅れる形で気弱そうな男が八幡を担いでついていく。青年は休憩室まで来るとノックを三回しながら

 

 

???「調達に出ていた綾瀬と座間、戻りました」

 

???「うん。おかえり。入って大丈夫だよ」

 

綾 瀬「失礼します。リーダー報告があるのですが……」

 

 

 中から聞こえた穏やかな声に対し青年――綾瀬 葵ははきはきとした口調で答えると休憩室に入っていく。遅れる形で気弱そうな男――座間 武明も入室していく。座間が何か担いでいる事に気づいたリーダーと呼ばれた優男――藤沢 春樹が

 

 

藤 沢「何か持っているみたいだけどそれと関係あるのかな?」

 

綾 瀬「はい。今日下の階に調達に出向いていたところ、ゾンビの集団に追われている数名を発見しました。こいつはその中の一人なんですが……」

 

 

 自分たちのリーダーである藤沢に綾瀬が報告しようとしていると、休憩室のドアをノックする音が聞こえてきた。ノックの後こちらが返事を返す前にドアが開き

 

 

???「藤沢さん。入りますよって……どうしたんですか? 座間さんが抱えているものって人?」

 

綾 瀬「今それを報告しているところなんだよ!」

 

???「へぇ……ん? まさかこの人って……」

 

 

 報告の途中で邪魔をされたことに苛立ちを覚えながら綾瀬は報告を続けていく。しかし座間が抱えている人物を見たことで見知った人物だと気づいてしまう。座間からその人物を下してもらい再度観察すると

 

 

???「やっぱりそうだ。この人も生きていたんだ」

 

 

 八幡の事を見知っていた人物の登場で話はまた動き出していくのだった。

 

 

 

 

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あとがき

 

二章で予定していた話が……知り合いに参考として教えてもらった作品に似ていて微妙に変更しないといけなくなった(汗)

まさか同じようなこと考える人いたんだなぁ(遠い目)

 

とりあえず盗作と思われないよう話を変えないと……

 

二章では話の都合上オリキャラを入れていきますがオリキャラがダメな方すみません。

 

出だしが番外編@に似ているのはもともと二章との分岐で考えていた作品だったのでご了承ください。

八幡の行動は学園黙示録で小室たちがやったゾンビを仲間から自分たちに注意を向けて逃がそうとしている行為と思ってください。

 

まぁやっと前章からの伏線?である八幡単体では何か音を出さない限りゾンビに襲われることはないという特殊な能力が出せました。気づいていた方もいるんですけどね……。ただこの設定って主人公がゾンビに認識されないというもので他にも主人公がゾンビに認識されなくなって好き勝手に動き回るという作品に似てしまう可能性があったんですよね。

 

あとがきの出だしで書きましたが「ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない」というネット小説がもとになっていて18禁の作品でPCゲームや書籍として販売もされている作品の設定に似てしまうんですよね。知人に教えてもらうまで気づかなかったんですけど……。

原作のネット小説は止まっているみたいですけど書籍版って続き書いてあるのかな?

説明
第二章第一話 新たな日々
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台本形式 ゾンビ やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 

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