初雪の贈り物。
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しろ。

しろ。

しろ。

 

真っ白。

 

 

 

 

 

初雪の贈り物。

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昨日の夜から降り始めた雪は、朝にはすっかり火影の里を覆いつくしていた。

もう良い年なのに、気持ちが浮き足立ってしまう。

だって、そこもかしこもまっさらなキャンバスなんだから。

 

さて。どうしよう。

 

雪の中に思い切り倒れ込んで、顔の跡でもつけてみようか。それとも、無難に雪だるまが良いか。

早朝の我が家の前で、オレはじっと考え込んだ。

 

「イルカせーんせ」

 

突然、聞き慣れた声が遠くからオレの名前を呼んだ。

 

「カカシ先生!」

 

---こんな朝っぱらから、なんでオレの家に?

驚いて声のする方向をみやると、こんなに寒いのに、いつもの忍服を身にまとって涼しげに立つカカシ先生がそこにいた。

 

真っ白に彩られた景色に、銀色の髪がさらりとなびく。

綺麗だなー。のんきにそんな事を思った。

だって本当に綺麗なのだ。

雪の白と、カカシ先生の銀色の髪。

 

「おはようございます、カカシ先生。どうされたんですか?」

「ハイ、オハヨウゴザイマス。今日はナルト達の演習の日なんですけどね。朝起きたら雪が積もってて、なんだかウキウキしちゃいましてね。家を飛び出してきました」

 

ひょうひょうとそう答えるカカシ先生だが、いまいちオレの聞きたい答えになっていない。

何故家を飛び出して、オレの家にやって来たのか。問題はそこなのだ。

 

「それでね、家を出たは良いんですけど、よく考えたらオレ、髭のクマとかムサイおかっぱとか位しか知人がいないんですよ。あんなのと雪遊びって言うのもねぇ」

 

まるでオレの心を読んだかのように、カカシ先生は説明を加えた。

それから、口当てと額当てに隠されていない右目を、にっこりと細める。

 

「ええと、それは……」

 

オレが言いよどんでいると、カカシ先生は楽しそうな口調で言い寄った。

 

「遊びまショ、イルカ先生!」

 

言いながらほんの少し小首をかしげたので、銀色の髪がさらりと揺れた。

やっぱりこの銀世界に彼の銀髪はとても良く映える。優美で趣がある。

それなのに、口調や行動はまるで子供みたいで。オレは、思わず吹き出してしまった。

 

「ハイ。オレも今、何をして遊ぼうか考えていた所なんです。一緒に雪遊びをしましょう」

 

にこやかに答えると、カカシ先生の目が輝いた。

ホント、いつものつかみ所のないカカシ先生は何処に行ってしまったんだろう。

今の彼は、まるで子供か犬のようで、とても感情がわかりやすい。初雪という非日常が、彼の心を弾ませているんだろうか。

 

「何をしましょうか! 雪だるま? 雪合戦??」

 

握り拳など作って、カカシ先生が楽しそうに提案してくる。

 

そうか、二人なら、雪合戦だって出来るんだ。

それは楽しそうだなぁ。

 

そう思った次の瞬間、オレははたと思った。この人、上忍だぞ。

で、オレは曲がりなりにも中忍だ。オレたちがやりあったら、どんな雪合戦になってしまうんだろう。

うわあ、楽しそうなような、怖いような・・・。

 

「そうですねー、雪だるまでも…」

 

考えた末そう答えようとした瞬間、遠くからまた、オレを呼ぶ声がこだました。

 

「「「イルカ先生〜〜〜!!!」」」

 

重なった三人分の声。

つい最近まで毎日聞いていた…でも、最近は聞きたくてもなかなか聞けなくなってしまったとても愛しい声たち。

弾かれるように勢いよく声の方を向くと、一面の銀世界を彩るような”橙、赤、青”が鮮やかにオレの視界に飛び込んできた。

何故だかほんの少しだけ、鼻の奥がつんとなる。

 

「ナルト! サスケ! サクラ!」

 

オレは、早朝からわざわざオレを訪ねてきてくれた3人に駆け寄り、満面の笑顔を向けた。

 

「へっへー。今日は何だか早くに目が覚めちゃってさ、外見たら真っ白で嬉しくなっちゃって、サクラちゃんたちを誘って来てみたんだってば!」

 

寒さで少し赤くなった鼻の頭を右手の人差し指でさすりながら、ナルトが誇らしげに言う。

ありがとな、とそのヒヨコのような金色でフワフワの髪をなでなでと撫でながらサスケたちをみると、二人ともニコニコしている。

サクラはともかく、サスケが笑うのって何だか珍しくて、オレはすっかり心の中が暖かくなってきた。嬉しい。凄く嬉しい。

 

「アレ、カカシ先生もいるってばよ!」

 

オレの後ろにいるカカシ先生の存在に気付き、ナルトが嬉しそうに声を上げる。

 

「よー、お前らおはよう。朝からはしゃいじゃって、楽しそうねー」

 

いつの間にやら作っていた雪玉を器用にポンポンと手のひらの中で弾ませながら、いつものひょうひょうとした口調でナルトたちに声をかける。

そんなカカシ先生もさっきまではしゃいでたのに、子供の手前、と言うやつなんだろうな。

 

「カカシ先生! 雪合戦やろうってばよ」

「良いわねー雪合戦!! それ、あたしも賛成!」

「……異議なし」

 

ナルトの提案にサクラとサスケが同意すると、カカシ先生は目を細めた。

 

「んー。良いね。言っておくけど、オレの雪合戦は凄いよ?」

 

声音がウキウキしている。

どうやらカカシ先生は、子供たちとの雪合戦に大人げない力を発揮する予定のようだ。

 

「オレたちも負けねーってばよ! イルカ先生も、一緒に雪合戦するってば!!」

 

カカシ先生に威勢良く宣戦布告しながらナルトがオレの手をギュッと引っ張る。

雪の中歩いてきたからだろう。繋いだナルトの手のひらは、ひんやりと冷たかった。

 

「何? イルカ先生、子供たちサイドなの?」

 

カカシ先生が驚いたように問いかけてくる。オレは苦笑を返しながら、「そうみたいですね」と答えた。

 

「よーし、なら4人束になってかかってきなさい!!」

 

言うが早いか、カカシ先生が勢いよく右腕を振り上げた。左手には、いつの間にか作っていた大量の雪玉を抱え込んでいる。

本気だ。本気で大人げないモード全開だ。

子供たちが慌てて蜘蛛の子を散らすように辺りを逃げ回り始める。

 

みんな楽しそうに笑っている。

 

昨日の夜雪が降り積もりかけている時は、しんしんと音のない、寂しい雰囲気だったのに。

今は、雪の中、オレたち5人の楽しそうな声がこだましている。

 

嬉しい。ウキウキする。楽しい。

これって、初雪の贈り物なんだろうか。

 

真っ白な雪玉をぶつけ合いつつ楽しげにはしゃぐカカシ先生と子供たちを眺めながら、オレはそんな事を思った。

 

 

 

 

*** end * 2008/12/08

説明
NARUTOで、カカシ先生とイルカ先生、ナルト、サスケ、サクラのほのぼのです。
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